(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】作業機
(51)【国際特許分類】
E02F 9/22 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
E02F9/22 A
(21)【出願番号】P 2021213680
(22)【出願日】2021-12-28
【審査請求日】2023-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】植田 和輝
(72)【発明者】
【氏名】内藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】濱本 亮太
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-133202(JP,A)
【文献】特開2021-067147(JP,A)
【文献】特開2020-133469(JP,A)
【文献】特開2017-178168(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0222402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/00-9/28
F16H 61/14
F16H 61/38-61/64
F15B 11/00-11/22
F15B 21/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
前記原動機が設けられた機体と、
前記機体の左側に設けられた左走行装置と、
前記機体の右側に設けられた右走行装置と、
前記原動機の動力によって作動し且つ作動油を吐出する左走行ポンプと、
前記原動機の動力によって作動し且つ作動油を吐出する右走行ポンプと、
前記左走行ポンプが吐出した作動油により正転又は逆転可能で、且つ、前記左走行装置に動力を伝達可能な左走行モータと、
前記右走行ポンプが吐出した作動油により正転又は逆転可能で、且つ、前記右走行装置に動力を伝達可能な右走行モータと、
前記左走行モータ及び前記右走行モータの各回転数と各回転方向とを取得する取得装置と、
前記取得装置にて取得された前記左走行モータ及び前記右走行モータの各回転数と各回転方向とに基づいて、前記機体が直進する直進走行状態であるか前記機体が旋回する旋回走行状態であるかを判別する判別装置と、
前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転速度を第1最大速度まで増大可能な第1状態と、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転速度を前記第1最大速度よりも大きい第2最大速度まで増大可能な第2状態とに切換可能な走行切換弁と、
操作部材の操作に応じて前記左走行ポンプ及び前記右走行ポンプに作用する作動油の圧力を変更可能な操作弁を有する走行操作装置と、
前記第1状態から前記第2状態に切り換える場合又は前記第2状態から前記第1状態に切り換える場合に、前記機体の前記直進走行状態又は前記旋回走行状態に応じて、前記左走行ポンプ及び前記右走行ポンプから前記左走行モータ及び前記右走行モータへの作動油の供給量を低減させる制御装置と、
を備える作業機。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1状態から前記第2状態に切り換える場合又は前記第2状態から前記第1状態に切り換える場合に、前記機体の前記直進走行状態又は前記旋回走行状態に応じて、前記左走行ポンプ及び前記右走行ポンプに作用する作動油の圧力である走行パイロット圧を低下させることにより、前記左走行モータ及び前記右走行モータへの作動油の供給量を低減させる変速ショックの低減制御を行う請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第1状態から前記第2状態に切り換える場合又は前記第2状態から前記第1状態に切り換える場合に、前記機体の前記直進走行状態又は前記旋回走行状態に応じて、前記原動機の回転数の低下量を設定した制御信号を前記原動機に出力することで前記原動機の回転数を低下させる変速ショックの低減制御を行う請求項1に記載の作業機。
【請求項4】
前記判別装置は、前記旋回走行状態として、ピボットターンとスピンターンとを判別可能であり、
(i)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が同じであり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が「0」又は第1差未満である場合には、前記直進走行状態と判別し、
(ii)前記左走行モータ及び前記右走行モータの一方のみが回転している場合には、前記ピボットターンと判別し、
(iii)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が逆であり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が「0」又は前記第1差未満である場合には、前記スピンターンと判別し、
前記制御装置は、前記機体の前記直進走行状態、前記ピボットターン及び前記スピンターンに応じて、前記走行パイロット圧を低下させることにより、前記左走行モータ及び前記右走行モータへの作動油の供給量を低減させる請求項2に記載の作業機。
【請求項5】
前記判別装置は、前記旋回走行状態として、大回りターンと小回りターンとを判別可能であり、
(iv)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が同じであり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が前記第1差よりも大きい場合には、前記大回りターンと判別し、
(v)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が逆であり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が前記第1差よりも大きい場合には、前記小回りターンと判別し、
前記制御装置は、前記機体の前記大回りターン及び前記小回りターンに応じて、前記走行パイロット圧を低下させることにより、前記左走行モータ及び前記右走行モータへの作動油の供給量を低減させる請求項4に記載の作業機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記直進走行状態、前記大回りターン、前記ピボットターン、前記小回りターン、前記スピンターンの順に、前記走行パイロット圧の低下量が小さくなるように設定する請求項5に記載の作業機。
【請求項7】
前記制御装置は、前記直進走行状態及び前記旋回走行状態のそれぞれについて、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数を複数の範囲に区分けした複数の回転数区分ごとに、前記走行パイロット圧の低下量を予め設定してなる制御マップを備えている請求項4~5のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項8】
前記判別装置は、前記旋回走行状態として、ピボットターンとスピンターンとを判別可能であり、
(i)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が同じであり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が「0」又は第1差未満である場合には、前記直進走行状態と判別し、
(ii)前記左走行モータ及び前記右走行モータの一方のみが回転している場合には、前記ピボットターンと判別し、
(iii)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が逆であり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が「0」又は前記第1差未満である場合には、前記スピンターンと判別し、
前記制御装置は、前記機体の前記直進走行状態、前記ピボットターン及び前記スピンターンに応じて、前記原動機の回転数の低下量を設定する請求項3に記載の作業機。
【請求項9】
前記判別装置は、前記旋回走行状態として、大回りターンと小回りターンとを判別可能であり、
(iv)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が同じであり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が前記第1差よりも大きい場合には、前記大回りターンと判別し、
(v)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が逆であり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が前記第1差よりも大きい場合には、前記小回りターンと判別し、
前記制御装置は、前記機体の前記大回りターン及び前記小回りターンに応じて、前記原動機の回転数の低下量を設定する請求項8に記載の作業機。
【請求項10】
前記制御装置は、前記直進走行状態、前記大回りターン、前記ピボットターン、前記小
回りターン、前記スピンターンの順に、前記原動機の回転数の低下量が小さくなるように設定する請求項9に記載の作業機。
【請求項11】
前記制御装置は、前記直進走行状態及び前記旋回走行状態のそれぞれについて、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数を複数の範囲に区分けした複数の回転数区分ごとに、前記原動機の回転数の低下量を予め設定してなる制御マップを備えている請求項8~10のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項12】
前記取得装置は、前記左走行モータ及び前記右走行モータの各回転数と各回転方向とを検出する回転検出センサである請求項1~11のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項13】
前記取得装置は、前記左走行モータ及び前記右走行モータの各回転数を検出する回転数検出センサと、操作部材の操作方向を検出する操作方向検出センサとを備え、
前記判別装置は、前記操作方向検出センサにて検出された前記操作部材の操作方向に基づいて前記直進走行状態又は前記旋回走行状態を判別する請求項1~11のいずれか1項に記載の作業機。
【請求項14】
前記制御装置は、手動変速モード又は自動変速モードを設定し、前記手動変速モードのときの前記操作弁への供給量を低減させる低減幅に比べて、前記自動変速モードのときの前記供給量を低減させる低減幅を大きいとしている請求項1~13のいずれか1項に記載の作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スキッドステアローダ、コンパクトトラックローダ、バックホー等の作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機において減速及び増速の際の変速ショックを低減する技術として特許文献1に示されているものがある。特許文献1の作業機の油圧システムは、原動機と、原動機の動力によって作動し且つ作動油を吐出する走行ポンプと、走行ポンプが吐出した作動油により回転可能な走行モータと、原動機、走行ポンプ及び走行モータが設けられた機体と、機体の走行速度を検出可能な走行検出装置と、走行モータの回転速度を第1最大速度まで増大可能な第1状態と、走行モータの回転速度を第1最大速度よりも大きい第2最大速度まで増大可能な第2状態とに切換可能な走行切換弁と、第1状態から第2状態に切り換える増速、及び、第2状態から第1状態に切り換える減速のいずれかに切り換える場合に、機体の走行検出装置で検出された走行速度に対応する原動機の回転数の低下量を設定し、設定した低下量に対応して原動機の回転数を低下させる制御装置と、を備えている。これにより、減速及び増速の際の変速ショックを低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の作業機では、減速及び増速の際に、機体の走行速度に応じて原動機の回転数の低下量を設定するだけであり、機体が旋回走行状態である場合の変速ショックを適切に低減することができない。また、特許文献1の作業機では、機体の走行状態が直進走行状態であるか、旋回走行状態であるかを正確に判別することができない。このため、特許文献1の作業機では、機体の走行状態が直進走行状態であるか、旋回走行状態であるかに応じて、変速ショックの低減を適切に行うことができない。
【0005】
本発明は、上記したような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、直進走行状態及び旋回走行状態において変速ショックの低減を適切に行うことができる作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
技術的課題を解決するために本発明が講じた技術的手段は、以下の通りである。
本発明の一態様の作業機は、原動機と、前記原動機が設けられた機体と、前記機体の左側に設けられた左走行装置と、前記機体の右側に設けられた右走行装置と、前記原動機の動力によって作動し且つ作動油を吐出する左走行ポンプと、前記原動機の動力によって作動し且つ作動油を吐出する右走行ポンプと、前記左走行ポンプが吐出した作動油により正転又は逆転可能で、且つ、前記左走行装置に動力を伝達可能な左走行モータと、前記右走行ポンプが吐出した作動油により正転又は逆転可能で、且つ、前記右走行装置に動力を伝達可能な右走行モータと、前記左走行モータ及び前記右走行モータの各回転数と各回転方向とを取得する取得装置と、前記取得装置にて取得された前記左走行モータ及び前記右走行モータの各回転数と各回転方向とに基づいて、前記機体が直進する直進走行状態であるか前記機体が旋回する旋回走行状態であるかを判別する判別装置と、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転速度を第1最大速度まで増大可能な第1状態と、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転速度を前記第1最大速度よりも大きい第2最大速度まで増大可能な第2状態とに切換可能な走行切換弁と、操作部材の操作に応じて前記左走行ポンプ及び前記右走行ポンプに作用する作動油の圧力を変更可能な操作弁を有する走行操作装置と、前記第1状態から前記第2状態に切り換える場合又は前記第2状態から前記第1状態に切り換える場合に、前記機体の前記直進走行状態又は前記旋回走行状態に応じて、前記左走行ポンプ及び前記右走行ポンプから前記左走行モータ及び前記右走行モータへの作動油の供給量を低減させる制御装置と、を備える。
【0007】
また、本発明の一態様の作業機では、前記制御装置は、前記第1状態から前記第2状態に切り換える場合又は前記第2状態から前記第1状態に切り換える場合に、前記機体の前記直進走行状態又は前記旋回走行状態に応じて、前記左走行ポンプ及び前記右走行ポンプに作用する作動油の圧力である走行パイロット圧を低下させることにより、前記左走行モータ及び前記右走行モータへの作動油の供給量を低減させる変速ショックの低減制御を行う。
【0008】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記第1状態から前記第2状態に切り換える場合又は前記第2状態から前記第1状態に切り換える場合に、前記機体の前記直進走行状態又は前記旋回走行状態に応じて、前記原動機の回転数の低下量を設定した制御信号を前記原動機に出力することで前記原動機の回転数を低下させる変速ショックの低減制御を行う。
【0009】
また、本発明の一態様では、前記判別装置は、前記旋回走行状態として、ピボットターンとスピンターンとを判別可能であり、(i)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が同じであり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が「0」又は第1差未満である場合には、前記直進走行状態と判別し、(ii)前記左走行モータ及び前記右走行モータの一方のみが回転している場合には、前記ピボットターンと判別し、(iii)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が逆であり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が「0」又は前記第1差未満である場合には、前記スピンターンと判別し、前記制御装置は、前記機体の前記直進走行状態、前記ピボットターン及び前記スピンターンに応じて、前記走行パイロット圧を低下させることにより、前記左走行モータ及び前記右走行モータへの作動油の供給量を低減させる。
【0010】
また、本発明の一態様では、前記判別装置は、前記旋回走行状態として、大回りターンと小回りターンとを判別可能であり、(iv)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が同じであり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が前記第1差よりも大きい場合には、前記大回りターンと判別し、(v)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が逆であり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が前記第1差よりも大きい場合には、前記小回りターンと判別し、前記制御装置は、前記機体の前記大回りターン及び前記小回りターンに応じて、前記走行パイロット圧を低下させることにより、前記左走行モータ及び前記右走行モータへの作動油の供給量を低減させる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記直進走行状態、前記大回りターン、前記ピボットターン、前記小回りターン、前記スピンターンの順に、前記走行パイロット圧の低下量が小さくなるように設定する。
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記直進走行状態及び前記旋回走行状態のそれぞれについて、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数を複数の範囲に区分けした複数の回転数区分ごとに、前記走行パイロット圧の低下量を予め設定してなる制御マップを備えている。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記判別装置は、前記旋回走行状態として、ピボットターンとスピンターンとを判別可能であり、(i)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が同じであり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が「0」又は第1差未満である場合には、前記直進走行状態と判別し、(ii)前記左走行モータ及び前記右走行モータの一方のみが回転している場合には、前記ピボットターンと判別し、(iii)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が逆であり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が「0」又は前記第1差未満である場合には、前記スピンターンと判別し、前記制御装置は、前記機体の前記直進走行状態、前記ピボットターン及び前記スピンターンに応じて、前記原動機の回転数の低下量を設定する。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記判別装置は、前記旋回走行状態として、大回りターンと小回りターンとを判別可能であり、(iv)前記左走行モータ及び前記右走行モータの
回転方向が同じであり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が前記第1差よりも大きい場合には、前記大回りターンと判別し、(v)前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転方向が逆であり、且つ、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数の差が前記第1差よりも大きい場合には、前記小回りターンと判別し、前記制御装置は、前記機体の前記大回りターン及び前記小回りターンに応じて、前記原動機の回転数の低下量を設定する。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記直進走行状態、前記大回りターン、前記ピボットターン、前記小回りターン、前記スピンターンの順に、前記原動機の回転数の低下量が小さくなるように設定する。
また、本発明の一態様では、前記制御装置は、前記直進走行状態及び前記旋回走行状態のそれぞれについて、前記左走行モータ及び前記右走行モータの回転数を複数の範囲に区分けした複数の回転数区分ごとに、前記原動機の回転数の低下量を予め設定してなる制御マップを備えている。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記取得装置は、前記左走行モータ及び前記右走行モータの各回転数と各回転方向とを検出する回転検出センサである。
また、本発明の一態様では、前記取得装置は、前記左走行モータ及び前記右走行モータの各回転数を検出する回転数検出センサと、操作部材の操作方向を検出する操作方向検出センサとを備え、前記判別装置は、前記操作方向検出センサにて検出された前記操作部材の操作方向に基づいて前記直進走行状態又は前記旋回走行状態を判別する。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記作業機は、手動変速モード又は自動変速モードを選択するモード選択装置を備え、前記制御装置は、前記手動変速モードのときの前記操作弁への供給量を低減させる低減幅に比べて、前記自動変速モードのときの前記供給量を低減させる低減幅を大きいとしている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、直進走行状態及び旋回走行状態において変速ショックの低減を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態の作業機の油圧システム(油圧回路)を示す図である。
【
図3A】機体の直進走行状態と旋回走行状態(大回りターン及びピボットターン)との判別方法を示す図である。
【
図3B】機体の旋回走行状態(ピボットターン、小回りターン及びスピンターン)の判別方法を示す図である。
【
図3C】直進走行状態及び旋回走行状態ごとのモータ回転数とゲイン率との関係を示す制御マップを示す図である。
【
図3D】直進走行状態及び旋回走行状態ごとのモータ回転数とゲイン率との関係を示す図である。
【
図4】変速ショックの低減制御を示すフローチャートである。
【
図5】走行モータを増速した場合の原動機の回転数と走行モータの切換との関係を示した図である。
【
図6】変形例の場合の原動機の回転数と走行モータの切換との関係を示した図である。
【
図7】走行モータを減速した場合の原動機の回転数と走行モータの切換との関係を示した図である。
【
図8】走行モータを増速した場合の原動機の回転数と走行モータの切換との関係を示した図である。
【
図9】走行モータを減速した場合の原動機の回転数と走行モータの切換との関係を示した図である。
【
図10A】走行モータを増速した場合の低減量のパラメータを示す図である。
【
図10B】走行モータを減速した場合の低減量のパラメータを示す図である。
【
図11】変形例のパラメータマップを示す図である。
【
図12】操作装置をジョイスティック等の電気的に作動する操作装置に変更した構成を示す図である。
【
図13】第4実施形態の作業機の油圧システム(油圧回路)を示す図である。
【
図14】作業機の一例であるトラックローダを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る作業機及びこの作業機の油圧システムの好適な実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。
(第1実施形態)
図14は、本発明に係る作業機の側面図を示している。
図14では、作業機の一例として、コンパクトトラックローダを示している。但し、本発明に係る作業機はコンパクトトラックローダに限定されず、例えば、スキッドステアローダ等の他の種類のローダ作業機であってもよい。また、ローダ作業機以外の作業機であってもよい。
【0020】
作業機1は、
図14に示すように、作業機1は、機体2と、キャビン3と、作業装置4と、走行装置5とを備えている。本発明の第1実施形態において、作業機1の運転席8に着座した運転者が向く方向(
図14の左側)を前方といい、その反対方向(
図14の右側)を後方という。また、運転者の左側(
図14の手前側)を左方といい、運転者の右側(
図14の奥側)を右方という。なお、前後の方向に直交する方向である水平方向を機体幅方向といい、機体2の中央部から右部或いは左部へ向かう方向を機体外方という。言い換えれば、機体外方とは、機体幅方向であって、機体2から離れる方向である。機体外方とは反対の方向を、機体内方という。言い換えれば、機体内方とは、機体幅方向であって、機体2に近づく方向である。
【0021】
キャビン3は、機体2に搭載されている。このキャビン3には運転席8が設けられている。作業装置4は機体2に装着されている。走行装置5は、機体2の外側に設けられている。機体2内の後部には、原動機32が搭載されている。
作業装置4は、ブーム10と、作業具の一例であるバケット11と、リフトリンク12と、制御リンク13と、ブームシリンダ14と、バケットシリンダ15とを有している。
【0022】
ブーム10は、キャビン3の右側及び左側に上下揺動自在に設けられている。バケット11は、ブーム10の先端部(前端部)に上下揺動自在に設けられている。リフトリンク12及び制御リンク13は、ブーム10が上下揺動自在となるように、ブーム10の基部(後部)を支持している。ブームシリンダ14は、伸縮することによりブーム10を昇降させる。バケットシリンダ15は、伸縮することによりバケット11を揺動させる。
【0023】
左側及び右側の各ブーム10の前部同士は、異形の連結パイプで連結されている。各ブーム10の基部(後部)同士は、円形の連結パイプで連結されている。
リフトリンク12、制御リンク13及びブームシリンダ14は、左側と右側の各ブーム10に対応して機体2の左側と右側にそれぞれ設けられている。
リフトリンク12は、各ブーム10の基部の後部に、縦向きに設けられている。このリフトリンク12の上部(一端側)は、各ブーム10の基部の後部寄りに枢支軸(例えば第1枢支軸16)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。また、リフトリンク12の下部(他端側)は、機体2の後部寄りに枢支軸(例えば第2枢支軸17)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第2枢支軸17は、第1枢支軸16の下方に設けられている。
【0024】
ブームシリンダ14の上部は、枢支軸(例えば第3枢支軸18)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第3枢支軸18は、各ブーム10の基部であって、当該基部の前部に設けられている。ブームシリンダ14の下部は、枢支軸(例えば第4枢支軸19)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第4枢支軸19は、機体2の後部の下部寄りであって第3枢支軸18の下方に設けられている。
【0025】
制御リンク13は、リフトリンク12の前方に設けられている。この制御リンク13の一端は、枢支軸(例えば第5枢支軸20)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第5枢支軸20は、機体2であって、リフトリンク12の前方に対応する位置に設けられている。制御リンク13の他端は、枢支軸(例えば第6枢支軸21)を介して横軸回りに回転自在に枢支されている。第6枢支軸21は、ブーム10であって、第2枢支軸17の前方で且つ第2枢支軸17の上方に設けられている。
【0026】
ブームシリンダ14を伸縮することにより、リフトリンク12及び制御リンク13によって各ブーム10の基部が支持されながら、各ブーム10が第1枢支軸16回りに上下揺動し、各ブーム10の先端部が昇降する。制御リンク13は、各ブーム10の上下揺動に伴って第5枢支軸20回りに上下揺動する。リフトリンク12は、制御リンク13の上下揺動に伴って第2枢支軸17回りに前後揺動する。
【0027】
ブーム10の前部には、バケット11の代わりに別の作業具が装着可能とされている。別の作業具としては、例えば、油圧圧砕機、油圧ブレーカ、アングルブルーム、アースオーガ、パレットフォーク、スイーパー、モア、スノウブロア等のアタッチメント(予備アタッチメント)である。
左側のブーム10の前部には、接続部材50が設けられている。接続部材50は、予備アタッチメントに装備された油圧機器と、ブーム10に設けられたパイプ等の第1管材とを接続する装置である。具体的には、接続部材50の一端には、第1管材が接続可能で、他端には、予備アタッチメントの油圧機器に接続された第2管材が接続可能である。これにより、第1管材を流れる作動油は、第2管材を通過して油圧機器に供給される。
【0028】
バケットシリンダ15は、各ブーム10の前部寄りにそれぞれ配置されている。バケットシリンダ15を伸縮することで、バケット11が揺動される。
左側及び右側の各走行装置(左走行装置、右走行装置)5は、第1実施形態ではクローラ型(セミクローラ型を含む)の走行装置が採用されている。なお、前輪及び後輪を有する車輪型の走行装置を採用してもよい。
【0029】
原動機32は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、電動モータ等である。第1実施形態では、原動機32は、ディーゼルエンジンであるが限定はされない。
次に、作業機の油圧システムについて説明する。
図1に示すように、第1実施形態の作業機の油圧システムは、走行装置5を駆動することが可能である。作業機の油圧システムは、第1走行ポンプ53Lと、第2走行ポンプ53Rと、第1走行モータ36Lと、第2走行モータ36Rとを備えている。
【0030】
第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rは、原動機32の動力によって駆動するポンプである。具体的には、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rは、原動機32の動力によって駆動される斜板形可変容量アキシャルポンプである。第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rは、パイロット圧が作用する受圧部53aと受圧部53bとを有しており、受圧部53a、53bに作用するパイロット圧によって斜板の角度が変更される。斜版の角度を変更することによって、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rは、出力(作動油の吐出量)や作動油の吐出方向を変えることができる。
【0031】
第1走行ポンプ53Lと、第1走行モータ36Lとは、循環油路57hによって接続され、第1走行ポンプ53Lが吐出した作動油が第1走行モータ36Lに供給される。第2走行ポンプ53Rと、第2走行モータ36Rとは、循環油路57iによって接続され、第2走行ポンプ53Rが吐出した作動油が第2走行モータ36Rに供給される。
第1走行モータ36Lは、機体2の左側に設けられた走行装置5の駆動軸に動力を伝達するモータである。第1走行モータ36Lは、第1走行ポンプ53Lから吐出した作動油により回転が可能であり、作動油の流量によって、回転速度(回転数)を変更することができる。第1走行モータ36Lには、斜板切換シリンダ37Lが接続され、当該斜板切換シリンダ37Lを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても第1走行モータ36Lの回転速度(回転数)を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Lを収縮した場合には、第1走行モータ36Lの回転数は低速(第1最大速度までの第1速度域:以下、適宜に「第1速度」と略称する)に設定され、斜板切換シリンダ37Lを伸長した場合には、第1走行モータ36Lの回転数は高速(第1最大速度よりも大きい第2最大速度までの第2速度域:以下、適宜に「第2速度」と略称する)に設定される。つまり、第1走行モータ36Lの回転数は、低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに変更
が可能である。
【0032】
第2走行モータ36Rは、機体2の右側に設けられた走行装置5の駆動軸に動力を伝達するモータである。第2走行モータ36Rは、第2走行ポンプ53Rから吐出した作動油により回転が可能であり、作動油の流量によって、回転速度(回転数)を変更することができる。第2走行モータ36Rには、斜板切換シリンダ37Rが接続され、当該斜板切換シリンダ37Rを一方側或いは他方側に伸縮させることによっても第2走行モータ36Rの回転速度(回転数)を変更することができる。即ち、斜板切換シリンダ37Rを収縮した場合には、第2走行モータ36Rの回転数は低速(第1速度)に設定され、斜板切換シリンダ37Rを伸長した場合には、第2走行モータ36Rの回転数は高速(第2速度)に設定される。つまり、第2走行モータ36Rの回転数は、低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに変更が可能である。
【0033】
図1に示すように、作業機の油圧システムは、走行切換弁34を備えている。走行切換弁34は、走行モータ(第1走行モータ36L、第2走行モータ36R)の回転速度(回転数)を第1最大速度まで増大可能な第1状態と、第1最大速度よりも大きい第2最大速度まで増大可能な第2状態とに切換可能である。走行切換弁34は、第1切換弁71L、71Rと、第2切換弁72と、を有している。
【0034】
第1切換弁71Lは、第1走行モータ36Lの斜板切換シリンダ37Lに油路を介して接続されていて、第1位置71L1及び第2位置71L2に切り換わる二位置切換弁である。第1切換弁71Lは、第1位置71L1である場合、斜板切換シリンダ37Lを収縮し、第2位置71L2である場合、斜板切換シリンダ37Lを伸長する。
第1切換弁71Rは、第2走行モータ36Rの斜板切換シリンダ37Rに油路を介して接続されていて、第1位置71R1及び第2位置71R2に切り換わる二位置切換弁である。第1切換弁71Rは、第1位置71R1である場合、斜板切換シリンダ37Rを収縮し、第2位置71R2である場合、斜板切換シリンダ37Rを伸長する。
【0035】
第2切換弁72は、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを切り換える電磁弁であって、励磁により第1位置72aと第2位置72bとに切り換え可能な二位置切換弁である。第2切換弁72、第1切換弁71L及び第1切換弁71Rは、油路41により接続されている。第2切換弁72は、第1位置72aである場合に第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第1位置71L1、71R1に切り換え、第2位置72bである場合に第1切換弁71L及び第1切換弁71Rを第2位置71L2、71R2に切り換える。
【0036】
つまり、第2切換弁72が第1位置72a、第1切換弁71Lが第1位置71L1、第1切換弁71Rが第1位置71R1である場合に、走行切換弁34は第1状態になり、走行モータ(第1走行モータ36L、第2走行モータ36R)の回転速度を第1速度にする。第2切換弁72が第2位置72b、第1切換弁71Lが第2位置71L2、第1切換弁71Rが第2位置71R2である場合に、走行切換弁34は第2状態になり、走行モータ(第1走行モータ36L、第2走行モータ36R)の回転速度を第2速度にする。
【0037】
したがって、走行切換弁34によって、走行モータ(第1走行モータ36L、第2走行モータ36R)を低速側である第1速度と、高速側である第2速度とに切り換えることができる。
走行モータにおける第1速度と、第2速度との切換は、切換部によって行うことができる。切換部は、例えば、制御装置60に接続された切換スイッチ61であり、運転者が操作することができる。切換部(切換スイッチ61)は、第1速度(第1状態)から第2速度(第2状態)に切り換える増速と、第2速度(第2状態)から第1速度(第1状態)に切り換える減速とのいずれかに切り換えることができる。
【0038】
図1に示すように、作業機の油圧システムは、制御装置60を備えている。制御装置60は、CPU、MPU等の半導体、電気電子回路等から構成されている。制御装置60は、切換スイッチ61の切換操作に基づいて、走行切換弁34を切り換える。切換スイッチ61は、プッシュスイッチである。切換スイッチ61は、例えば、走行モータが第1速度の状態で押圧されると、当該走行モータを第2速度にする指令(走行切換弁34を第2状態にする指令)が制御装置60に出力される。また、切換スイッチ61は、走行モータが第2速度の状態で押圧すると、当該走行モータを第1速度にする指令(走行切換弁34を第1状態にする指令)が制御装置60に出力される。なお、切換スイッチ61は、ON/OFFに保持可能なプッシュスイッチであってもよく、OFFである場合には、走行モータを第1速度に保持する指令が制御装置60に出力され、ONである場合には、走行モータを第2速度に保持する指令が制御装置60に出力される。
【0039】
制御装置60は、走行切換弁34を第1状態にする指令を取得した場合には、第2切換弁72のソレノイドを消磁することで、走行切換弁34を第1状態にする。また、制御装置60は、走行切換弁34を第2状態にする指令を取得した場合には、第2切換弁72のソレノイドを励磁することで、走行切換弁34を第2状態にする。
さて、作業機の油圧システムは、第1油圧ポンプP1と、第2油圧ポンプP2、走行操作装置54とを備えている。第1油圧ポンプP1は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第1油圧ポンプP1は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能である。特に、第1油圧ポンプP1は、主に制御に用いる作動油を吐出する。説明の便宜上、作動油を貯留するタンク22のことを作動油タンクということがある。また、第1油圧ポンプP1から吐出した作動油のうち、制御用として用いられる作動油のことをパイロット油といい、パイロット油の圧力のことをパイロット圧ということがある。
【0040】
第2油圧ポンプP2は、原動機32の動力によって駆動するポンプであって、定容量型のギヤポンプによって構成されている。第2油圧ポンプP2は、タンク22に貯留された作動油を吐出可能であって、例えば、作業系の油路に作動油を供給する。例えば、第2油圧ポンプP2は、ブーム10を作動させるブームシリンダ14、バケット11を作動させるバケットシリンダ15、予備油圧アクチュエータを作動させる予備油圧アクチュエータを制御する制御弁(流量制御弁)に作動油を供給する。
【0041】
走行操作装置54は、走行ポンプ(第1走行ポンプ53L、第2走行ポンプ53R)を操作する装置であり、走行ポンプの斜板の角度(斜板角度)を変更可能である。走行操作装置54は、操作レバー等の操作部材59と、複数の操作弁55とを含んでいる。
操作部材59は、操作弁55に支持され、左右方向(機体幅方向)、前後方向又は斜め方向に揺動する操作レバーである。即ち、操作部材59は、中立位置Nを基準とすると、中立位置Nから右方及び左方に操作可能であり、中立位置Nから前方及び後方に操作可能であり、中立位置Nから右斜め前方、左斜め前方、左斜め後方、及び右斜め後方に操作可能である。なお、説明の便宜上、前方及び後方の双方向、即ち、前後方向のことを第1方向という。また、右方及び左方の双方向、即ち、左右方向(機体幅方向)のことを第2方向ということがある。
【0042】
また、複数の操作弁55は、共通、即ち、1本の操作部材59によって操作される。複数の操作弁55は、操作部材59の揺動に基づいて作動する。複数の操作弁55には、吐出油路40が接続され、当該吐出油路40を介して、第1油圧ポンプP1からの作動油(パイロット油)が供給可能である。複数の操作弁55は、操作弁55A、操作弁55B、操作弁55C及び操作弁55Dである。
【0043】
操作弁55Aは、前後方向(第1方向)のうち、操作部材59を前方(一方)に揺動した場合(前操作した場合)に、前操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Bは、前後方向(第1方向)のうち、操作部材59を後方(他方)に揺動した場合(後操作した場合)に、後操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。左右方向(第2方向)のうち、操作弁55Cは、操作部材59を右方(一方)に揺動した場合(右操作した場合)に、右操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。操作弁55Dは、左右方向(第2方向)のうち、操作部材59を、左方(他方)に揺動した場合(左操作した場合)に、左操作の操作量(操作)に応じて出力する作動油の圧力が変化する。
【0044】
複数の操作弁55と、走行ポンプ(第1走行ポンプ53L,第2走行ポンプ53R)とは、走行油路45によって接続されている。言い換えれば、走行ポンプ(第1走行ポンプ53L,第2走行ポンプ53R)は、操作弁55(操作弁55A、操作弁55B、操作弁
55C、操作弁55D)から出力した作動油によって作動可能な油圧機器である。
走行油路45は、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dと、第5走行油路45eとを有している。第1走行油路45aは、第1走行ポンプ53Lの受圧部53aに接続された油路である。第2走行油路45bは、第1走行ポンプ53Lの受圧部53bに接続された油路である。第3走行油路45cは、第2走行ポンプ53Rの受圧部53aに接続された油路である。第4走行油路45dは、第2走行ポンプ53Rの受圧部53bに接続された油路である。第5走行油路45eは、操作弁55、第1走行油路45a、第2走行油路45b、第3走行油路45c、第4走行油路45dを接続する油路である。走行油路45の圧力は、走行パイロット圧と呼ばれる。
【0045】
作業機1(機体2)の走行状態は、直進走行状態と、旋回走行状態とに大別される。直進走行状態としては、前進又は後進の直進走行状態がある。旋回走行状態としては、スピンターン(超信地旋回)、小回りターン(小回り旋回)、ピボットターン(信地旋回)、及び大回りターン(大回り旋回)があり、この順に、旋回半径が大きくなっている。例えば、スピンターン(超信地旋回)では、作業機1がその場で回転するため、旋回半径が最小(例えば「0」)である。
【0046】
<前方直進>
操作部材59を前方(
図1、
図2では矢印A1方向)に揺動させると、操作弁55Aが操作されて該操作弁55Aからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して第1走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第3走行油路45cを介して第2走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用する。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rが正転(前進回転)して作業機1が前方に直進する。
【0047】
<後方直進>
操作部材59を後方(
図1、
図2では矢印A2方向)に揺動させると、操作弁55Bが操作されて該操作弁55Bからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第2走行油路45bを介して第1走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用すると共に第4走行油路45dを介して第2走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rが逆転(後進回転)して作業機1が後方に直進する。
【0048】
<スピンターン>
操作部材59を右方(
図1、
図2では矢印A3方向)に揺動させると、操作弁55Cが操作されて該操作弁55Cからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は、第1走行油路45aを介して第1走行ポンプ53Lの受圧部53aに作用すると共に第4走行油路45dを介して第2走行ポンプ53Rの受圧部53bに作用する。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、第1走行モータ36Lが正転し且つ第2走行モータ36Rが逆転して作業機1が右側にスピンターン(超信地旋回)する。
【0049】
また、操作部材59を左方(
図1、
図2では矢印A4方向)に揺動させると、操作弁55Dが操作されて該操作弁55Dからパイロット圧が出力される。このパイロット圧は第3走行油路45cを介して第2走行ポンプ53Rの受圧部53aに作用すると共に第2走行油路45bを介して第1走行ポンプ53Lの受圧部53bに作用する。これにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度が変更され、第1走行モータ36Lが逆転し且つ第2走行モータ36Rが正転して作業機1が左側にスピンターン(超信地旋回)する。
【0050】
<ピボットターン>
操作部材59を斜め方向(
図2では矢印A5方向)に揺動させると、受圧部53aと受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右側にピボットターン(信地旋回)又は左側にピボットターン(信地旋回)する。
【0051】
すなわち、操作部材59を左斜め前方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対
応した速度で作業機1が前進しながら左側にピボットターン(信地旋回)し、操作部材59を右斜め前方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右側にピボットターン(信地旋回)し、操作部材59を左斜め後方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左側にピボットターン(信地旋回)し、操作部材59を右斜め後方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右側にピボットターン(信地旋回)する。
【0052】
<大回りターン>
操作部材59を前後軸寄りの斜め方向(
図2では矢印A6方向)に揺動させると、受圧部53aと受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右側に大回りターン(大回り旋回)又は左側に大回りターン(大回り旋回)する。
【0053】
すなわち、操作部材59を前後軸寄りの左斜め前方方向に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左側に大回りターンし、操作部材59を前後軸寄りの右斜め前方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右側に大回りターンし、操作部材59を前後軸寄りの左斜め後方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左側に大回りターンし、操作部材59を前後軸寄りの右斜め後方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右側に大回りターンする。
【0054】
<小回りターン>
操作部材59を左右軸寄りの斜め方向(
図2では矢印A7方向)に揺動させると、受圧部53aと受圧部53bとに作用するパイロット圧の差圧によって、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向及び回転速度が決定され、作業機1が前進又は後進しながら右側に小回りターン(小回り旋回)又は左側に小回りターン(小回り旋回)する。
【0055】
すなわち、操作部材59を左右軸寄りの左斜め前方方向に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら左側に小回りターンし、操作部材59を左右軸寄りの右斜め前方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が前進しながら右側に小回りターンし、操作部材59を左右軸寄りの左斜め後方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら左側に小回りターンし、操作部材59を左右軸寄りの右斜め後方に揺動操作すると該操作部材59の揺動角度に対応した速度で作業機1が後進しながら右側に小回りターンする。
【0056】
制御装置60には、原動機32の目標回転数を設定するアクセル65が接続されている。アクセル65は、運転席8の近傍に設けられている。アクセル65は、揺動自在に支持されたアクセルレバー、揺動自在に支持されたアクセルペダル、回転自在に支持されたアクセルボリューム、スライド自在に支持されたアクセルスライダー等である。なお、アクセル65は、上述した例に限定されない。また、制御装置60には、原動機32の実回転数を検出する回転検出装置66が接続されている。回転検出装置66によって、制御装置60は、原動機32の実回転数を把握することができる。制御装置60は、アクセル65の操作量に基づいて、目標回転数を設定して、設定した目標回転数になるように実回転数を制御する。
【0057】
さて、制御装置60は、走行切換弁34を第1状態から第2状態に切り換える際と、走行切換弁34を第2状態から第1状態に切り換える際とにおいて、即ち、走行モータの回転速度を第1速度から第2速度に増速する場合と第2速度から第1速度に減速する場合とにおいて、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rから第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rへの作動油の供給量を低減させる変速ショックの低減制御を行う。
【0058】
具体的には、制御装置60は、第1状態から第2状態に切り換える場合又は第2状態から第1状態に切り換える場合に、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、作動弁69の開度の低下量を設定した制御信号を作動弁69に出力することで作動弁69の開度を低下させることにより、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rから第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rへの作動油の供給量を低減させる変速ショックの低減制御を行う。
【0059】
図1に示すように、制御装置60は、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、作動弁69の開度を制御することにより、変速ショックを低減する。作動弁69は、分岐後の吐出油路40であって走行操作装置54に至る区間40a、即ち、操作弁55の上流側に接続されている。なお、作動弁69は、操作弁55の下流側、走行油路45に接続されていてもよい。
【0060】
作動弁69は、電磁比例弁(比例弁)であって、制御装置60から出力された制御信号によって開度が変更可能である。制御信号は、例えば、電圧、電流等である。作動弁69は、制御装置60から出力された制御信号(電圧、電流)が大きくなるにつれて開度が大きくなり、制御信号(電圧、電流)が小さくなるにつれて開度が小さくなる弁である。
即ち、制御装置60は、変速ショックの低減制御において、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、作動弁69へ出力する制御信号を変更することによって、作動弁69の開度を低下させる。
【0061】
図1に示すように、作業機の油圧システムは、取得装置67と、判別装置70とを備え、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態を判別することができる。
取得装置67は、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの各回転数と各回転方向とを取得する。第1実施形態では、取得装置67は、第1走行モータ36Lの回転数と回転方向とを検出する回転検出センサ67Lと、第2走行モータ36Rの回転数と回転方向とを検出する回転検出センサ67Rとからなる。
【0062】
判別装置70は、CPU、MPU等の半導体、電気電子回路等から構成されている。判別装置70は、取得装置67にて取得された第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの各回転数と各回転方向とに基づいて、機体2が直進する直進走行状態であるか機体2が旋回する旋回走行状態であるかを判別する。また、判別装置70は、旋回走行状態として、ピボットターンとスピンターンと大回りターンと小回りターンとを判別する。
【0063】
具体的には、判別装置70は、(i)第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転数の差が「0」又は予め定められた第1差未満である場合には、直進走行状態と判別する。なお、ここでは、回転数の差は、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転数の差の絶対値のことであり、第1差は、5rpmであるとする。第1差は、5rpmに限定されず、例えば、5rpm未満の任意の値であってもよいし、10rpm以下の任意の値であってもよい。判別装置70は、例えば
図3Aに示すように、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1走行モータ36Lの回転数が150rpmであり、第2走行モータ36Rが150rpmであった場合には、両値の差が「0」であると判定し、直進走行状態と判別する。また、判別装置70は、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1走行モータ36Lの回転数が148rpmであり、第2走行モータ36Rが150rpmであった場合には、両値の差が「2rpm」であり、この差(2rpm)が予め定められた第1差(5rpm)未満であると判定し、直進走行状態と判別する。
【0064】
判別装置70は、(ii)第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの一方のみが回転している場合には、ピボットターンと判別する。判別装置70は、例えば
図3Aに示すように、第1走行モータ36Lのみが100rpmで回転し、第2走行モータ36Rの回転が停止している場合には、ピボットターンと判別する。
判別装置70は、(iii)第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転数の差が「0」又は第1差未満である場合には、スピンターンと判別する。判別装置70は、例えば
図3Bに示すように、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1走行モータ36Lの回転数が200rpmであり、第2走行モータ36Rが200rpmであった場合には、両値の差が「0」であると判定し、スピンターンと判別する。また、判別装置70は、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1走行モータ36Lの回転数が98rpmであり、第2走行モータ36Rが100rpmであった場合には、両値の差が「2rpm」であり、この差(2rpm)が予め定められた第1差(5rpm)未満であると判定し、スピンターンと判別する。
【0065】
判別装置70は、(iv)第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転数の差が第1差よりも大きい場合には、大回りターンと判別する。判別装置70は、例えば
図3Aに示すように、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1走行モータ36Lの回転数が150rpmであり、第2走行モータ36Rが200rpmであった場合には、両値の差が「50rpm」であり、この差(50rpm)が予め定められた第1差(5rpm)よりも大きいと判定し、大回りターンと判別する。
【0066】
判別装置70は、(v)第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転数の差が第1差よりも大きい場合には、小回りターンと判別する。判別装置70は、例えば
図3Bに示すように、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1走行モータ36Lの回転数が150rpmであり、第2走行モータ36Rが200rpmであった場合には、両値の差が「50rpm」であり、この差(50rpm)が予め定められた第1差(5rpm)よりも大きいと判定し、小回りターンと判別する。
【0067】
制御装置60は、判別装置70にて判別された機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)に応じて、第1、第2走行ポンプ53L、53Rに作用する作動油の圧力である走行パイロット圧を低下させることにより、第1、第2走行モータ36L、36Rへの作動油の供給量を低減させる。例えば、制御装置60は、判別装置70にて判別された機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)に応じて、変の低下量が小さくなるように設定する。作動弁69の開度の低下量ΔF11を設定する。例えば、制御装置60は、直進走行状態と旋回走行状態との順に、作動弁69の開度の低下量ΔF11が小さくなるように設定する。また、制御装置60は、旋回走行状態についても、例えば、大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターンの順に、作動弁69の開度の低下量ΔF11を小さくなるように設定する。つまり、制御装置60は、直進走行状態、大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターンの順に、走行パイロット圧の低下量が小さくなるように設定している。
【0068】
具体的には、制御装置60は、
図3Cに示すように、直進走行状態及び旋回走行状態のそれぞれについて、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転数を複数(例えば4個)の範囲に区分けした複数(例えば4個)の回転数区分ごとに、作動弁69の開度の低下量を予め設定してなる制御マップを備えている。
図3Cに示す制御マップには、走行状態が「直進」で、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転数が200rpmであった場合の低下量が、低下量ΔF11に予め設定されている。また、
図3Cに示す制御マップには、走行状態として、直進走行状態を示す「直進」と、旋回走行状態を示す「ピボットターン」、「スピンターン」、「大回りターン」及び「小回りターン」のそれぞれについて、モータ回転数を4個に区分けした区分(50,100,150,200rpm)毎に、ゲイン率が設定され、ゲイン率を低下量ΔF11に乗じた値が低下量として設定される。例えば、制御装置60は、走行状態が「直進」で、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が200rpmであった場合には、低下量ΔF11にゲイン率(=100%)を乗算した値を低下量「ΔF11×1」として決定する。また、制御装置60は、走行状態が「ピボットターン」で、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が200rpmであった場合には、低下量ΔF11にゲイン率(=60%)を乗算した値を低下量「ΔF11×0.6」として決定する。また、制御装置60は、走行状態が「スピンターン」で、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が150rpmであった場合には、低下量ΔF11にゲイン率(=20%)を乗算した値を低下量「ΔF11×0.2」として決定する。
【0069】
図3Dに示すように、ゲイン率は、モータ回転数が50~100rpmの範囲では、直進走行状態の「直進」、旋回走行状態の「大回りターン」、「ピボットターン」及び「小回りターン」、「スピンターン」の順に小さくなっている。そして、ゲイン率は、モータ回転数が100rpmを超えた範囲では、直進走行状態の「直進」、旋回走行状態の「大回りターン」、「ピボットターン」、「小回りターン」、「スピンターン」の順に小さくなっている。つまり、この制御マップは、上記複数の回転数区分ごとに、走行パイロット圧の低下量を予め設定してなるものである。
【0070】
以下、増速及び減速の際における変速ショックの低減制御について、
図4に示すフローチャートを用いて詳しく説明する。
まず、増速の際における変速ショックの低減制御について説明する。
制御装置60は、運転者によって切換スイッチ(切換SW)61が操作されると、機体2(作業機)の増速の有無を判定する(S11)。具体的には、切換スイッチ61は、走行モータが第1速度の状態であるときに、運転者によって押圧されると、第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)にする増速指令(2速指令)を制御装置60に出力する。一方、切換スイッチ61は、走行モータが第2速度の状態であるときに、運転者によって押圧されると、第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)にする減速指令(1速指令)を制御装置60に出力する。ここでは、切換スイッチ61は2速指令を出力したとする。制御装置60は、2速指令を受けると、機体2(作業機)の増速であると判定し(S11でYES)、判別装置70に判別指定を出力する。
【0071】
判別装置70は、判別指令を受けると、取得装置67にて取得された第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの各回転数と各回転方向とに基づいて、機体2が直進走行状態又は旋回走行状態のいずれであるかを判別する(S12)。
なお、判別装置70は、切換スイッチ61が操作されると、機体2(作業機)の増速の有無を判定し(S11)、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)のいずれであるかを判別する(S12)としてもよい。
【0072】
制御装置60は、判別装置70にて判別された機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)に応じて、増速の際における作動弁69の開度の低下量ΔF11を、
図3Cに示す制御マップを用いて演算する(S13)。制御装置60は、この演算した低下量ΔF11による変速ショックの低減制御を実行する(S14)。
【0073】
図5は、増速時における変速ショックの低減制御を行う場合において、直進、ピボットターン及びスピンターンの3つの制御信号の各制御値(低減値W24a、W24b、W24c)と、走行モータの切換との関係を示した図である。
図5では、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が200rpmであった場合についての直進の低減値W24a、ピボットターンの低減値W24b、及びスピンターンの低減値W24cを示している。
【0074】
ここでは、機体2が直進走行状態であるときの増速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)にする増速指令(2速指令)を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2が直進走行状態であると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、直進走行状態が「直進」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(100%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「1=100%」を乗じて、低下量ΔF11a(=低下量ΔF11×1)を演算する。
図5に示すように、制御装置60は、機体2が直進走行状態である場合、時点Q11において、低下量ΔF11aを設定する。
【0075】
次に、機体2がピボットターンであるときの増速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、2速指令を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2がピボットターンであると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、旋回走行状態が「ピボットターン」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(60%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「0.6=60%」を乗じて、低下量ΔF11b(=低下量ΔF11×0.6)を演算する。
図5に示すように、制御装置60は、機体2がピボットターンである場合、時点Q11において、低下量ΔF11bを設定する。
【0076】
次に、機体2がスピンターンであるときの増速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、2速指令を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2がスピンターンであると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、旋回走行状態が「スピンターン」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(30%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「0.3=30%」を乗じて、低下量ΔF11b(=低下量ΔF11×0.3)を演算する。
図5に示すように、制御装置60は、機体2がスピンターンである場合、時点Q11において、低下量ΔF11cを設定する。
【0077】
制御装置60は、低下量ΔF11の設定を行うと、低減直前の制御信号の制御値W22aから、低下量ΔF11(ΔF11a、ΔF11b、ΔF11c)を減算した値を、変速ショックの低減制御における低減値W24a、W24b、W24cに設定する。例えば、制御装置60は、機体2が直進走行状態である場合、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11aを減算した値W24aを低減値に設定する。或いは、制御装置60は、機体2がピボットターンである場合、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11bを減算した値W24bを低減値に設定する。或いは、制御装置60は、機体2がスピンターンである場合、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11bを減算した値W24cを低減値に設定する。
【0078】
制御装置60は、低減値W24a、W24b、W24cの設定を行うと、作動弁69に出力する制御値を、低減値W24a、W24b、W24cに達するまで低下させる。
具体的には、時点Q11において、機体2が直進走行状態である場合、制御装置60は、ラインW31aに示すように、制御値を低減値W24aに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31aに示すように、時点Q12aにおいて、低減値W24aに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)に切り換える。また、時点Q12aの以降は、ラインW31aに示すように、低減前の制御値W22aに向けて復帰させる。
【0079】
或いは、時点Q11において、機体2がピボットターンである場合、制御装置60は、ラインW31bに示すように、制御値を低減値W24bに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31bに示すように、時点Q12bにおいて、低減値W24bに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)に切り換える。また、時点Q12bの以降は、ラインW31bに示すように、低減前の制御値W22aに向けて復帰させる。
【0080】
或いは、時点Q11において、機体2がスピンターンである場合、制御装置60は、ラインW31cに示すように、制御値を低減値W24cに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31cに示すように、時点Q12cにおいて、低減値W24cに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)に切り換える。また、時点Q12cの以降は、ラインW31bに示すように、低減前の制御値W22aに向けて復帰させる。
【0081】
さて、制御信号の制御値を低下させる始点である時点Q11から制御信号の制御値を低下させる終点である時点Q12a、Q12b、Q12cまでの低減区間Ta、Tb、Tc、即ち、制御信号の制御値が低減値W24a、W24b、W24cに達するまでの低減区間Ta、Tb、Tcに着目すると、制御装置60は、制御値の第1低下速度を一定にしている。即ち、低減区間Ta、Tb、Tcにおいて、制御装置60は、ラインW31a、W31b、W31cの傾きを一定にしている。
【0082】
また、時点Q12a、Q12b、Q12cのそれぞれにおいて、走行切換弁34が第1状態から第2状態に切り換わることから、制御装置60は、直進、ピボットターン及びスピンターンに応じて走行切換弁34を第1状態から第2状態に切り換える場合のタイミングを異なるように設定している。
なお、
図5では、大回りターン及び小回りターンの場合については図示していないが、制御装置60は、大回りターン及び小回りターンの場合についても上記と同様に低下量ΔF11を設定できる。例えば、制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、機体2が大回りターンであり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(80%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「0.8=80%」を乗じて、低下量ΔF11×0.8とした低下量を演算する。制御装置60は、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11×0.8を減算した値(W24aとW24bの中間値)を低減値に設定する。また、制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、機体2が小回りターンであり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(40%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「0.4=40%」を乗じて、低下量ΔF11×0.4とした低下量を演算する。制御装置60は、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11×0.4を減算した値(W24bとW24cの中間値)を低減値に設定する。
【0083】
上述した第1実施形態では、低減区間Ta、Tb、Tcのそれぞれにおいて、低減区間Ta、Tb、Tcの始点から終点まで一様に制御信号の制御値(開度)の低下速度を一定にしていたが、例えば
図6に示すように、途中で低下速度を変更してもよい。
図6は、低減区間Taにおいて、制御信号の制御値の低下速度を途中で変更した変形例を示している。
【0084】
制御装置60は、2速指令を取得し、直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、低減値W24aを演算すると、
図6に示すように、低減区間Taの始点から中途までの区間(第1区間)Ta1の制御値の低下速度を第2低下速度に設定し、中途から終点までの区間(第2区間)Ta2の制御値の低下速度を第3低下速度に設定する。即ち、制御装置60は、低減区間Taにおいて制御値を示すラインW31aにおいて、第1区間Ta1における第2低下速度をラインW31a1の傾きによって設定し、第2区間Ta2における第3低下速度をラインW31a2の傾きによって設定する。制御装置60は、第2低下速度(ラインW31a1の傾き)を第3低下速度(ラインW31a2の傾き)よりも大きく設定する。
【0085】
なお、変形例では、ラインW31aについて説明をしているが、他のラインW31b、11cもラインW31aと同様に、第2低下速度、第3低下速度を設定してもよい。この場合、低減値W24aを、低減値W24b、W24c、低減区間Taを低減区間Tb、Tc、ラインW31aをラインW31b、W31c、ラインW31a1をラインW31b1、ラインW31c1、ラインW31a2をラインW31b2、ラインW31c2、第1区間Ta1を、第1区間Tb1、Tc1、第2区間Ta2を第2区間Tb2、Tc2に読み替えればよい。
【0086】
次に、減速時における変速ショックの低減制御について説明する。ここでは、
図4のS11において、切換スイッチ61は減速指令(1速指令)を出力したとする。このため、制御装置60は、切換スイッチ61から1速指令を取得していたため、機体2(作業機)の増速でないと判定し(S11でNO)、機体2(作業機)の減速であると判定し(S15でYES)、判別装置70に判別指定を出力する。なお、制御装置60は、機体2(作業機)の減速でないと判定した場合(S15でNO)、S11に戻る。
【0087】
判別装置70は、判別指令を受けると、取得装置67にて取得された第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの各回転数と各回転方向とに基づいて、機体2が直進走行状態又は旋回走行状態のいずれであるかを判別する(S16)。
なお、判別装置70は、切換スイッチ61が操作されると、機体2(作業機)の減速の有無を判定し(S15)、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)のいずれであるかを判別する(S16)と
してもよい。
【0088】
制御装置60は、判別装置70にて判別された機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)に応じて、減速の際における作動弁69の開度の低下量ΔF11を、
図3Cに示す制御マップを用いて演算する(S13)。制御装置60は、この演算した低下量ΔF11による変速ショックの低減制御を実行する(S17)。なお、直進走行状態、旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターンについての減速時の作動弁69の開度の低下量ΔF11は、増速の場合と同様に演算される。このため、減速時の低下量についての説明を省略する。制御装置60は、減速時の低下量ΔF11による変速ショックの低減制御を実行する(S14)。
【0089】
図7は、減速時における変速ショックの低減制御を行う場合において、直進、ピボットターン及びスピンターンの3つの制御信号の各制御値(低減値W24a、W24b、W24c)と、走行モータの切換との関係を示した図である。
図7では、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が200rpmであった場合についての直進の低減値W24a、ピボットターンの低減値W24b、及びスピンターンの低減値W24cを示している。
【0090】
ここでは、機体2が直進走行状態であるときの減速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)にする減速指令(1速指令)を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2が直進走行状態であると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、直進走行状態が「直進」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(100%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「1=100%」を乗じて、低下量ΔF11a(=低下量ΔF11×1)を演算する。
図7に示すように、制御装置60は、機体2が直進走行状態である場合、時点Q11において、低下量ΔF11aを設定する。
【0091】
次に、機体2がピボットターンであるときの減速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、1速指令を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2がピボットターンであると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、旋回走行状態が「ピボットターン」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(60%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「0.6=60%」を乗じて、低下量ΔF11b(=低下量ΔF11×0.6)を演算する。
図7に示すように、制御装置60は、機体2がピボットターンである場合、時点Q11において、低下量ΔF11bを設定する。
【0092】
次に、機体2がスピンターンであるときの減速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、2速指令を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2がスピンターンであると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、旋回走行状態が「スピンターン」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(30%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「0.3=30%」を乗じて、低下量ΔF11b(=低下量ΔF11×0.3)を演算する。
図7に示すように、制御装置60は、機体2がスピンターンである場合、時点Q11において、低下量ΔF11cを設定する。
【0093】
制御装置60は、低下量ΔF11の設定を行うと、低減直前の制御信号の制御値W22aから、低下量ΔF11(ΔF11a、ΔF11b、ΔF11c)を減算した値を、変速ショックの低減制御における低減値W24a、24b、24cに設定する。例えば、制御装置60は、機体2が直進走行状態である場合、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11aを減算した値W24aを低減値に設定する。或いは、制御装置60は、機体2がピボットターンである場合、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11bを減算した値W24bを低減値に設定する。或いは、制御装置60は、機体2がスピンターンである場合、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11bを減算した値W24cを低減値に設定する。
【0094】
制御装置60は、低減値W24a、W24b、W24cの設定を行うと、作動弁69に出力する制御値を、低減値W24a、W24b、W24cに達するまで低下させる。
具体的には、時点Q11において、機体2が直進走行状態である場合、制御装置60は、ラインW31aに示すように、制御値を低減値W24aに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31aに示すように、時点Q12aにおいて、低減値W24aに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)に切り換える。また、時点Q12aの以降は、ラインW31aに示すように、低減前の制御値W22aに向けて復帰させる。
【0095】
或いは、時点Q11において、機体2がピボットターンである場合、制御装置60は、ラインW31bに示すように、制御値を低減値W24bに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31bに示すように、時点Q12bにおいて、低減値W24bに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)に切り換える。また、時点Q12bの以降は、ラインW31bに示すように、低減前の制御値W22aに向けて復帰させる。
【0096】
或いは、時点Q11において、機体2がスピンターンである場合、制御装置60は、ラインW31cに示すように、制御値を低減値W24cに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31cに示すように、時点Q12cにおいて、低減値W24cに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)に切り換える。また、時点Q12cの以降は、ラインW31bに示すように、低減前の制御値W22aに向けて復帰させる。
【0097】
さて、制御信号の制御値を低下させる始点である時点Q11から制御信号の制御値を低下させる終点である時点Q12a、Q12b、Q12cまでの低減区間Ta、Tb、Tc、即ち、制御信号の制御値が低減値W24a、W24b、W24cに達するまでの低減区間Ta、Tb、Tcに着目すると、制御装置60は、制御値の第1低下速度を一定にしている。即ち、低減区間Ta、Tb、Tcにおいて、制御装置60は、ラインW31a、W31b、W31cの傾きを一定にしている。
【0098】
また、時点Q12a、Q12b、Q12cのそれぞれにおいて、走行切換弁34が第2状態から第1状態に切り換わることから、制御装置60は、直進、ピボットターン及びスピンターンに応じて走行切換弁34を第2状態から第1状態に切り換える場合のタイミングを異なるように設定している。
なお、
図7では、大回りターン及び小回りターンの場合については図示していないが、大回りターン及び小回りターンの場合についても上記と同様に低下量ΔF11を設定できる。例えば、制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、機体2が大回りターンであり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(80%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「0.8=80%」を乗じて、低下量ΔF11×0.8とした低下量を演算する。制御装置60は、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11×0.8を減算した値(W24aとW24bの中間値)を低減値に設定する。また、制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、機体2が小回りターンであり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(40%)を特定し、低下量ΔF11にゲイン率である「0.4=40%」を乗じて、低下量ΔF11×0.4とした低下量を演算する。制御装置60は、低減直前の制御値W22aから低下量ΔF11×0.4を減算した値(W24bとW24cの中間値)を低減値に設定する。
【0099】
上述した第1実施形態の作業機は、機体2と、第1、第2走行ポンプ53L、53Rと、第1、第2走行モータ36L、36Rの各回転数と各回転方向とを取得する取得装置67と、取得装置67にて取得された第1、第2走行モータ36L、36Rの各回転数と各回転方向とに基づいて、機体2が直進走行状態であるか旋回走行状態であるかを判別する判別装置70と、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転速度を第1最大速度まで増大可能な第1状態から、第1最大速度よりも大きい第2最大速度まで増大可能な第2状態に切り換える場合又は第2状態から第1状態に切り換える場合に、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、第1、第2走行ポンプ53L、53Rから第1、第2走行モータ36L、36Rへの作動油の供給量を低減させる制御装置60と、を備える。
【0100】
この構成によれば、判別装置70は、第1、第2走行モータ36L、36Rの各回転数と各回転方向とに基づいて、機体2が直進する直進走行状態であるか機体2が旋回する旋回走行状態であるかを判別する。このため、機体2の走行状態が直進走行状態であるか、旋回走行状態であるかを正確に判別することができる。また、制御装置60は、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、第1、第2走行ポンプ53L、53Rから第1、第2走行モータ36L、36Rへの作動油の供給量を低減させる。このため、直進・旋回走行状態毎に変速ショックの低減制御の低減値を適切な値にすることができる。したがって、直進走行状態及び旋回走行状態において変速ショックの低減を適切に行うことができる。
【0101】
なお、機体2の直進度に応じて変速ショックの低減制御を行う構成として、第1~第4走行油路45a~45dの作動油の圧力(走行パイロット圧)をそれぞれ検出する圧力検出装置を設け、圧力検出装置で検出された4つの走行パイロット圧の前後・左右の比にから機体2の直進度を間接的に算出し、この間接的に算出した直進度に応じて変速ショックの低減制御を行う構成が考えられる。しかし、この構成では、間接的に算出した直進度に応じて変速ショックの低減制御を行うので、変速ショックの低減を適切に行うことができない場合がある。その理由は、この構成では、機体2の車速を正確に把握することができないこと、機体2の走行状態が直進走行状態であるか、旋回走行状態であるかを正確に判別することができないからである。これに対して、第1実施形態の作業機では、機体2の走行状態が直進走行状態であるか、旋回走行状態であるかを正確に判別することができ、機体2の車速を正確に把握することができるので、直進走行状態及び旋回走行状態において変速ショックの低減を適切に行うことができる。
【0102】
また、制御装置60は、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、第1、第2走行ポンプ53L、53Rに作用する作動油の圧力である走行パイロット圧を低下させることにより、第1、第2走行モータ36L、36Rへの作動油の供給量を低減させる。したがって、直進走行状態のみならず、旋回走行状態においても変速ショックの低減制御を適切に行うことができる。具体的には、制御装置60は、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、作動弁69の開度の低下量を設定する。このため、直進・旋回走行状態毎に変速ショックの低減制御の低減値を適切な値にすることができる。
【0103】
また、判別装置70は、(i)第1、第2走行モータ36L、36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数の差が「0」又は予め定められた第1差未満である場合には、直進走行状態と判別し、(ii)第1、第2走行モータ36L、36Rの一方のみが回転している場合には、ピボットターンと判別し、(iii)第1、第2走行モータ36L、36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数の差が「0」又は第1差未満である場合には、スピンターンと判別する。このため、判別装置70は、直進走行状態と、旋回走行状態としてのピボットターンとスピンターンとを正確に判別することができる。また、制御装置60は、機体2の直進走行状態、ピボットターン及びスピンターンに応じて、作動弁69の開度の低下量を設定するので、直進走行状態とピボットターンとスピンターンとについて変速ショックの低減制御の低減値を適切な値にすることができる。このため、直進走行状態のみならず、複数の旋回走行状態、つまり、ピボットターンとスピンターンとについても変速ショックの低減制御を適切に行うことができる。
【0104】
また、判別装置70は、(iv)第1、第2走行モータ36L、36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数の差が第1差よりも大きい場合には、大回りターンと判別し、(v)第1、第2走行モータ36L、36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数の差が第1差よりも大きい場合には、小回りターンと判別する。このため、判別装置70は、旋回走行状態としての大回りターンと小回りターンとを正確に判別することができる。また、制御装置60は、機体2の大回りターン及び小回りターンに応じて、作動弁69の開度の低下量を設定するので、大回りターンと小回りターンとについて変速ショックの低減制御の低減値
を適切な値にすることができる。このため、複数の旋回走行状態、つまり、大回りターンと小回りターンとについても変速ショックの低減制御を適切に行うことができる。
【0105】
また、制御装置60は、直進走行状態、大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターンの順に、作動弁69の開度の低下量が小さくなるように設定する。つまり、制御装置60は、直進走行状態、大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターンの順に、走行パイロット圧の低下量が小さくなるように設定している。このため、直進走行状態、大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターンについて変速ショックの低減制御の低減値を適切な値にすることができる。このため、直進走行状態、複数の旋回走行状態(大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターン)について、変速ショックの低減制御を適切に行うことができる。
【0106】
また、制御装置60は、直進走行状態及び旋回走行状態のそれぞれについて、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数を複数の範囲に区分けした複数の回転数区分ごとに、作動弁69の開度の低下量を予め設定してなる制御マップを備えている。この制御マップは、上記複数の回転数区分ごとに、走行パイロット圧の低下量を予め設定してなるものである。このため、直進走行状態及び旋回走行状態のそれぞれについて、複数の回転数区分ごとに作動弁69の開度の低下量を予め設定した制御マップを用いて、作動弁の開度の低下量の制御を迅速に行うことができる。
【0107】
また、取得装置67は、第1、第2走行モータ36L、36Rの各回転数と各回転方向とを検出する回転検出センサ67L、67Rである。このため、第1、第2走行モータ36L、36Rの各回転数と各回転方向とに基づいて、直進走行状態又は旋回走行状態を好適に判別することができる。
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、制御装置60は、増速指令(2速指令)又は減速指令(1速指令があった場合に、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、作動弁69の開度を低下させる変速ショックの低減制御を行っていたが、これに限定されない。第2実施形態の作業機では、制御装置60は、増速指令(2速指令)又は減速指令(1速指令があった場合に、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、原動機32の回転数を低下させる変速ショックの低減制御を行う。
【0108】
即ち、第2実施形態では、第1実施形態の作動弁69の開度を低下させることに替えて、原動機32の回転数を低下させることが、第1実施形態とは異なっている。このため、第2実施形態では、第1実施形態とは異なる部分について詳細に説明する。
制御装置60は、判別装置70にて判別された機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)に応じて、原動機32の回転数の低下量ΔF1を設定する。例えば、制御装置60は、直進走行状態と旋回走行状態との順に、原動機32の回転数の低下量ΔF1が小さくなるように設定する。また、制御装置60は、旋回走行状態についても、例えば、大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターンの順に、原動機32の回転数の低下量ΔF1を小さくなるように設定する。
【0109】
第2実施形態では、
図3Cに示す制御マップは、走行状態が「直進」で、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの回転数が200rpmであった場合の低下量が、低下量ΔF1に予め設定されている点以外は、第1実施形態と同様である。例えば、制御装置60は、走行状態が「直進」で、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が200rpmであった場合には、低下量ΔF1にゲイン率(=100%)を乗算した値を低下量「ΔF1×1」として決定する。また、制御装置60は、走行状態が「ピボットターン」で、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が200rpmであった場合には、低下量ΔF1にゲイン率(=60%)を乗算した値を低下量「ΔF1×0.6」として決定する。また、制御装置60は、走行状態が「スピンターン」で、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が150rpmであった場合には、低下量ΔF1にゲイン率(=20%)を乗算した値を低下量「ΔF1×0.2」として決定する。
【0110】
まず、増速の際における変速ショックの低減制御について説明する。
第2実施形態では、
図4に示すS13において、制御装置60は、判別装置70にて判別された機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)に応じて、増速の際における原動機32の回転数の低下量ΔF1を、
図3Cに示す制御マップを用いて演算する(S13)。制御装置60は、この演算した低下量ΔF1による変速ショックの低減制御を実行する(S14)。
【0111】
図8は、増速時における変速ショックの低減制御を行う場合において、直進、ピボットターン及びスピンターンの3つの制御信号の各制御値(低減値W14a、W14b、W14c)と、走行モータの切換との関係を示した図である。
図8では、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が200rpmであった場合についての直進の低減値W14a、ピボットターンの低減値W14b、及びスピンターンの低減値W14cを示している。
【0112】
ここでは、機体2が直進走行状態であるときの増速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)にする増速指令(2速指令)を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2が直進走行状態であると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、直進走行状態が「直進」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(100%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「1=100%」を乗じて、低下量ΔF1a(=低下量ΔF1×1)を演算する。
図8に示すように、制御装置60は、機体2が直進走行状態である場合、時点Q11において、低下量ΔF1aを設定する。
【0113】
次に、機体2がピボットターンであるときの増速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、2速指令を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2がピボットターンであると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、旋回走行状態が「ピボットターン」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(60%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「0.6=60%」を乗じて、低下量ΔF1b(=低下量ΔF1×0.6)を演算する。
図8に示すように、制御装置60は、機体2がピボットターンである場合、時点Q11において、低下量ΔF1bを設定する。
【0114】
次に、機体2がスピンターンであるときの増速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、2速指令を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2がスピンターンであると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、旋回走行状態が「スピンターン」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(30%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「0.3=30%」を乗じて、低下量ΔF1b(=低下量ΔF1×0.3)を演算する。
図8に示すように、制御装置60は、機体2がスピンターンである場合、時点Q11において、低下量ΔF1cを設定する。
【0115】
制御装置60は、低下量ΔF1の設定を行うと、低減直前の制御信号の制御値W12aから、低下量ΔF1(ΔF1a、ΔF1b、ΔF1c)を減算した値を、変速ショックの低減制御における低減値W14a、W14b、W14cに設定する。例えば、制御装置60は、機体2が直進走行状態である場合、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1aを減算した値W14aを低減値に設定する。或いは、制御装置60は、機体2がピボットターンである場合、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1bを減算した値W14bを低減値に設定する。或いは、制御装置60は、機体2がスピンターンである場合、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1bを減算した値W14cを低減値に設定する。
【0116】
制御装置60は、低減値W14a、W14b、W14cの設定を行うと、原動機32に出力する制御値を、低減値W14a、W14b、W14cに達するまで低下させる。
具体的には、時点Q11において、機体2が直進走行状態である場合、制御装置60は、ラインW31aに示すように、制御値を低減値W14aに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31aに示すように、時点Q12aにおいて、低減値W14aに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)に切り換える。また、時点Q12aの以降は、ラインW31aに示すように、低減前の制御値W12aに向けて復帰させる。
【0117】
或いは、時点Q11において、機体2がピボットターンである場合、制御装置60は、ラインW31bに示すように、制御値を低減値W14bに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31bに示すように、時点Q12bにおいて、低減値W14bに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)に切り換える。また、時点Q12bの以降は、ラインW31bに示すように、低減前の制御値W12aに向けて復帰させる。
【0118】
或いは、時点Q11において、機体2がスピンターンである場合、制御装置60は、ラインW31cに示すように、制御値を低減値W14cに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31cに示すように、時点Q12cにおいて、低減値W14cに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第1状態(第1速度)から第2状態(第2速度)に切り換える。また、時点Q12cの以降は、ラインW31bに示すように、低減前の制御値W12aに向けて復帰させる。
【0119】
さて、制御信号の制御値を低下させる始点である時点Q11から制御信号の制御値を低下させる終点である時点Q12a、Q12b、Q12cまでの低減区間Ta、Tb、Tc、即ち、制御信号の制御値が低減値W14a、W14b、W14cに達するまでの低減区間Ta、Tb、Tcに着目すると、制御装置60は、制御値の第1低下速度を一定にしている。即ち、低減区間Ta、Tb、Tcにおいて、制御装置60は、ラインW31a、W31b、W31cの傾きを一定にしている。
【0120】
また、時点Q12a、Q12b、Q12cのそれぞれにおいて、走行切換弁34が第1状態から第2状態に切り換わることから、制御装置60は、直進、ピボットターン及びスピンターンに応じて走行切換弁34を第1状態から第2状態に切り換える場合のタイミングを異なるように設定している。
なお、
図8では、大回りターン及び小回りターンの場合については図示していないが、制御装置60は、大回りターン及び小回りターンの場合についても上記と同様に低下量ΔF1を設定できる。例えば、制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、機体2が大回りターンであり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(80%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「0.8=80%」を乗じて、低下量ΔF1×0.8とした低下量を演算する。制御装置60は、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1×0.8を減算した値(W14aとW14bの中間値)を低減値に設定する。また、制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、機体2が小回りターンであり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(40%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「0.4=40%」を乗じて、低下量ΔF1×0.4とした低下量を演算する。制御装置60は、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1×0.4を減算した値(W14bとW14cの中間値)を低減値に設定する。
【0121】
図9は、減速時における変速ショックの低減制御を行う場合において、直進、ピボットターン及びスピンターンの3つの制御信号の各制御値(低減値W14a、W14b、W14c)と、走行モータの切換との関係を示した図である。
図9では、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの高い方の回転数が200rpmであった場合についての直進の低減値W14a、ピボットターンの低減値W14b、及びスピンターンの低減値W14cを示している。
【0122】
ここでは、機体2が直進走行状態であるときの減速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)にする減速指令(1速指令)を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2が直進走行状態であると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、直進走行状態が「直進」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(100%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「1=100%」を乗じて、低下量ΔF1a(=低下量ΔF1×1)を演算する。
図9に示すように、制御装置60は、機体2が直進走行状態である場合、時点Q11において、低下量ΔF1aを設定する。
【0123】
次に、機体2がピボットターンであるときの減速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、1速指令を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2がピボットターンであると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、旋回走行状態が「ピボットターン」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(60%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「0.6=60%」を乗じて、低下量ΔF1b(=低下量ΔF1×0.6)を演算する。
図9に示すように、制御装置60は、機体2がピボットターンである場合、時点Q11において、低下量ΔF1bを設定する。
【0124】
次に、機体2がスピンターンであるときの減速について説明する。制御装置60は、時点Q11において切換スイッチ61が操作され、2速指令を取得したとする。そして、判別装置70は、機体2がスピンターンであると判別する。制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、旋回走行状態が「スピンターン」であり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(30%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「0.3=30%」を乗じて、低下量ΔF1b(=低下量ΔF1×0.3)を演算する。
図9に示すように、制御装置60は、機体2がスピンターンである場合、時点Q11において、低下量ΔF1cを設定する。
【0125】
制御装置60は、低下量ΔF1の設定を行うと、低減直前の制御信号の制御値W12aから、低下量ΔF1(ΔF1a、ΔF1b、ΔF1c)を減算した値を、変速ショックの低減制御における低減値W14a、W14b、W14cに設定する。例えば、制御装置60は、機体2が直進走行状態である場合、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1aを減算した値W14aを低減値に設定する。或いは、制御装置60は、機体2がピボットターンである場合、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1bを減算した値W14bを低減値に設定する。或いは、制御装置60は、機体2がスピンターンである場合、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1bを減算した値W14cを低減値に設定する。
【0126】
制御装置60は、低減値W14a、W14b、W14cの設定を行うと、原動機32に出力する制御値を、低減値W14a、W14b、W14cに達するまで低下させる。
具体的には、時点Q11において、機体2が直進走行状態である場合、制御装置60は、ラインW31aに示すように、制御値を低減値W14aに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31aに示すように、時点Q12aにおいて、低減値W14aに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)に切り換える。また、時点Q12aの以降は、ラインW31aに示すように、低減前の制御値W12aに向けて復帰させる。
【0127】
或いは、時点Q11において、機体2がピボットターンである場合、制御装置60は、ラインW31bに示すように、制御値を低減値W14bに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31bに示すように、時点Q12bにおいて、低減値W14bに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)に切り換える。また、時点Q12bの以降は、ラインW31bに示すように、低減前の制御値W12aに向けて復帰させる。
【0128】
或いは、時点Q11において、機体2がスピンターンである場合、制御装置60は、ラインW31cに示すように、制御値を低減値W14cに向けて低下させる。制御装置60は、ラインW31cに示すように、時点Q12cにおいて、低減値W14cに達すると、走行切換弁34のソレノイドを励磁する信号を出力して、走行切換弁(切換弁)34を第2状態(第2速度)から第1状態(第1速度)に切り換える。また、時点Q12cの以降は、ラインW31bに示すように、低減前の制御値W12aに向けて復帰させる。
【0129】
さて、制御信号の制御値を低下させる始点である時点Q11から制御信号の制御値を低下させる終点である時点Q12a、Q12b、Q12cまでの低減区間Ta、Tb、Tc、即ち、制御信号の制御値が低減値W14a、W14b、W14cに達するまでの低減区間Ta、Tb、Tcに着目すると、制御装置60は、制御値の第1低下速度を一定にしている。即ち、低減区間Ta、Tb、Tcにおいて、制御装置60は、ラインW31a、W31b、W31cの傾きを一定にしている。
【0130】
また、時点Q12a、Q12b、Q12cのそれぞれにおいて、走行切換弁34が第2状態から第1状態に切り換わることから、制御装置60は、直進、ピボットターン及びスピンターンに応じて走行切換弁34を第2状態から第1状態に切り換える場合のタイミングを異なるように設定している。
なお、
図9では、大回りターン及び小回りターンの場合については図示していないが、大回りターン及び小回りターンの場合についても上記と同様に低下量ΔF1を設定できる。例えば、制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、機体2が大回りターンであり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(80%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「0.8=80%」を乗じて、低下量ΔF1×0.8とした低下量を演算する。制御装置60は、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1×0.8を減算した値(W14aとW14bの中間値)を低減値に設定する。また、制御装置60は、
図3Cに示す制御マップを用いて、機体2が小回りターンであり、且つ、モータ回転数が200rpmに対応するゲイン率(40%)を特定し、低下量ΔF1にゲイン率である「0.4=40%」を乗じて、低下量ΔF1×0.4とした低下量を演算する。制御装置60は、低減直前の制御値W12aから低下量ΔF1×0.4を減算した値(W14bとW14cの中間値)を低減値に設定する。
【0131】
上述した第2実施形態の作業機によれば、制御装置60は、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、原動機32の回転数の低下量を設定する。このため、直進・旋回走行状態毎に変速ショックの低減制御の低減値を適切な値にすることができる。したがって、直進走行状態のみならず、旋回走行状態においても変速ショックの低減制御を適切に行うことができる。
【0132】
また、判別装置70は、(i)第1、第2走行モータ36L、36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数の差が「0」又は予め定められた第1差未満である場合には、直進走行状態と判別し、(ii)第1、第2走行モータ36L、36Rの一方のみが回転している場合には、ピボットターンと判別し、(iii)第1、第2走行モータ36L、36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数の差が「0」又は第1差未満である場合には、スピンターンと判別する。このため、判別装置70は、直進走行状態と、旋回走行状態としてのピボットターンとスピンターンとを正確に判別することができる。また、制御装置60は、機体2の直進走行状態、ピボットターン及びスピンターンに応じて、原動機32の回転数の低下量を設定するので、直進走行状態とピボットターンとスピンターンとについて変速ショックの低減制御の低減値を適切な値にすることができる。このため、直進走行状態のみならず、複数の旋回走行状態、つまり、ピボットターンとスピンターンとについても変速ショックの低減制御を適切に行うことができる。
【0133】
また、判別装置70は、(iv)第1、第2走行モータ36L、36Rの回転方向が同じであり、且つ、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数の差が第1差よりも大きい場合には、大回りターンと判別し、(v)第1、第2走行モータ36L、36Rの回転方向が逆であり、且つ、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数の差が第1差よりも大きい場合には、小回りターンと判別する。このため、判別装置70は、旋回走行状態としての大回りターンと小回りターンとを正確に判別することができる。また、制御装置60は、機体2の大回りターン及び小回りターンに応じて、原動機32の回転数の低下量を設定するので、大回りターンと小回りターンとについて変速ショックの低減制御の低減値を適切な値にすることができる。このため、複数の旋回走行状態、つまり、大回りターンと小回りターンとについても変速ショックの低減制御を適切に行うことができる。
【0134】
また、制御装置60は、直進走行状態、大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターンの順に、原動機32の回転数の低下量が小さくなるように設定する。このため、直進走行状態、大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターンについて変速ショックの低減制御の低減値を適切な値にすることができる。このため、直進走行状態、複数の旋回走行状態(大回りターン、ピボットターン、小回りターン、スピンターン)について、変速ショックの低減制御を適切に行うことができる。
【0135】
また、制御装置60は、直進走行状態及び旋回走行状態のそれぞれについて、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数を複数の範囲に区分けした複数の回転数区分ごとに、原動機32の回転数の低下量を予め設定してなる制御マップを備えている。このため、直進走行状態及び旋回走行状態のそれぞれについて、複数の回転数区分ごとに原動機32の回転数の低下量を予め設定した制御マップを用いて、原動機32の回転数の低下量の制御を迅速に行うことができる。
【0136】
なお、上述した第1、第2実施形態では、制御装置60は、低下量(作動弁69の開度の低下量又は原動機32の回転数の低下量)を設定しているが、
図10A、
図10B、
図11に示すように、制御装置60は、各種のパラメータを設定するようにしてもよい。
制御装置60は、増速指令があった場合に、
図10Aに示す制御ライン(作動弁69の開度の低下又は原動機32の回転数の低下の変化の内容を示すパラメータライン)で変速ショック低減を行う。また、制御装置60は、減速指令があった場合に、
図10Bに示す制御ライン(作動弁69の開度の低下又は原動機32の回転数の低下の変化の内容を示すパラメータライン)で変速ショック低減を行う。
【0137】
図11に示すデータテーブルは、機体2の走行状態と、機体2の車速(例えば、第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数)と、パラメータマップとを含む。パラメータマップには、各種のパラメータとしての、低下量a、低下速度b、遅延時間c、復帰速度d、及び復帰までの時間eが含まれている。
例えば、制御装置60は、
図11に示すように、判別装置70にて「直進」と判別され、取得装置67にて取得された第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数が速度V1(例えば200rpm)であった場合、パラメータマップの各種のパラメータが低下量a1、低下速度b1、遅延時間c1、復帰速度d1、及び復帰までの時間e1に設定することにより、変速ショックの低減制御を行う。また、制御装置60は、
図11に示すように、判別装置70にて「スピンターン」と判別され、取得装置67にて取得された第1、第2走行モータ36L、36Rの回転数が速度V1(例えば200rpm)であった場合、パラメータマップの各種のパラメータが低下量a5、低下速度b5、遅延時間c5、復帰速度d5、及び復帰までの時間e5に設定することにより、変速ショックの低減制御を行う。
【0138】
(第3実施形態)
上述した第1、第2実施形態では、走行操作装置54は、操作弁55によって走行ポンプ(第1走行ポンプ53L,第2走行ポンプ53R)に作用するパイロット圧を変更する油圧式であったが、第3実施形態の作業機では、
図12に示す走行操作装置54は、電気的に作動する装置であってもよい。
【0139】
図12に示すように、走行操作装置54は、左右方向(機体幅方向)又は前後方向に揺動する操作部材59と、電磁比例弁から構成された操作弁55(操作弁55A、55B、55C、55D)とを備えている。制御装置60は、操作部材59の操作量及び操作方向を検出する操作検出センサが接続されている。制御装置60は、操作検出センサが検出した操作量及び操作方向に基づいて、操作弁55(操作弁55A、55B、55C、55D)を制御する。
【0140】
制御装置60は、操作部材59が前方(A1方向、
図1参照)に操作されると、操作弁55A及び操作弁55Cに制御信号を出力し、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板を正転(前進)の方向に揺動させる。
制御装置60は、操作部材59が後方(A2方向、
図1参照)に操作されると、操作弁55B及び操作弁55Dに制御信号を出力し、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板を逆転(後進)の方向に揺動させる。
【0141】
制御装置60は、操作部材59が右方(A3方向、
図1参照)に操作されると、操作弁55A及び操作弁55Dに制御信号を出力し、第1走行ポンプ53Lの斜板を正転の方向に揺動させ、第2走行ポンプ53Rの斜板を逆転の方向に揺動させる。
制御装置60は、操作部材59が左方(A4方向、
図1参照)に操作されると、操作弁55B及び操作弁55Cに制御信号を出力し、第1走行ポンプ53Lの斜板を逆転の方向に揺動させ、第2走行ポンプ53Rの斜板を正転の方向に揺動させる。
【0142】
制御装置60は、機体2の直進走行状態又は旋回走行状態に応じて、操作弁55A~操作弁55Dへの制御信号の制御値を変更することにより、操作弁55A~操作弁55Dの開度を変更し、第1走行ポンプ53L及び第2走行ポンプ53Rの斜板角度を変更し、第1、第2走行ポンプ53L、53Rから第1、第2走行モータ36L、36Rへの作動油の供給量を低減させる変速ショックの低減制御を行うようにしてもよい。
【0143】
(第4実施形態)
前述の第1~第3実施形態では、取得装置67は、回転検出センサ67L、67Rを備え、判別装置70は、回転検出センサ67Lで検出された第1走行モータ36Lの回転数及び回転方向と、回転検出センサ67Rで検出された第2走行モータ36Rの回転数及び回転方向とに基づいて、機体2が直進走行状態又は旋回走行状態を判別するとしているが、これに限定されない。
図13に示す第4実施形態の作業機としてもよい。
図13に示すように、取得装置67は、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの各回転数を検出する回転数検出センサ68L、68Rと、操作部材59の操作方向を検出する操作方向検出センサ68Aと、を備える。判別装置70は、操作方向検出センサ68Aにて検出された操作部材59の操作方向に基づいて直進走行状態又は旋回走行状態を判別する。操作方向検出センサ68Aは、操作部材59の揺動方向、つまり、
図2に示す各矢印A1~A7方向を検出可能である。判別装置70は、操作方向検出センサ68Aにて検出された操作部材59の操作方向(つまり、
図2に示す各矢印A1~A7方向)に従って、直進走行状態(前方直進、後方直進)又は旋回走行状態(大回りターン、ピボットターン、小回りターン、及びスピンターン)を判別する。各回転数検出センサ68L、68Rは、検出した第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの各回転数を制御装置60に出力する。制御装置60は、判別装置70にて判別された機体2の直進走行状態又は旋回走行状態(ピボットターン、スピンターン、大回りターン及び小回りターン)と、第1走行モータ36L及び第2走行モータ36Rの各回転数とを用いて、第1、第2走行ポンプ53L、53Rから第1、第2走行モータ36L、36Rへの作動油の供給量を低減させる変速ショックの低減制御を行う。具体的には、制御装置60は、第1実施形態のように作動弁69の開度の低下量を設定したり、第2実施形態のように原動機32の回転数の低下量を設定したり、第3実施形態のように操作弁55A~操作弁55Dへの制御信号の制御値を設定したりすることにより、第1、第2走行ポンプ53L、53Rから第1、第2走行モータ36L、36Rへの作動油の供給量を低減させる変速ショックの低減制御を行う。第4実施形態によれば、第1~第3実施形態の場合と同様の効果を有する。
【0144】
また、制御装置60は、手動変速モード又は自動変速モードを設定し、手動変速モードのときの第1、第2走行ポンプ53L、53Rから第1、第2走行モータ36L、36Rへの作動油の供給量を低減させる低減幅に比べて、前記自動変速モードのときの前記供給量を低減させる低減幅を大きいとしてもよい。例えば、変速モードを設定するスイッチを運転者が操作することで、手動変速モード又は自動変速モードが制御装置60に出力される。これによれば、自動変速モードのときの変速ショックを手動変速モードのときよりも更に低減することができるので、自動変速モードにおいて変速があったことを運転者に感じさせない又は感じ難くすることができ、円滑な自動変速を提供することができる。また、運転者は、手動変速における変速ショックを一部感じることができ、手動による操作感を得ることができる。
【0145】
なお、前述した各実施形態の制御マップは、
図3Cに示す内容に限定されない。例えば、作動弁69の開度の低下量は、旋回走行状態よりも直進走行状態の方が小さいとしてもよい。また、作動弁69の開度の低下量は、「大回りターン」、「ピボットターン」、「小回りターン」及び「スピンターン」について任意の順に小さいとしてもよい。このため、モータ回転数とゲインとの関係についても、
図3Dに示す関係に限定されない。
【0146】
また、
図3Cに示す制御マップは、「直進」、「大回りターン」、「ピボットターン」
、「小回りターン」及び「スピンターン」の全てを記憶しているが、これに限定されない。例えば、制御マップは、「直進」、「ピボットターン」及び「スピンターン」について記憶し、「大回りターン」及び「小回りターン」については記憶しないとしてもよい。この場合には、制御装置60は、「大回りターン」の低下量については、「直進」のデータと「ピボットターン」のデータとを用いて線形補完して演算し、「小回りターン」の低下量については、「ピボットターン」のデータと「スピンターン」のデータとを用いて線形補完して演算するとしてもよい。このため、モータ回転数とゲインとの関係についても、
図3Dに示す関係に限定されない。
【0147】
なお、前述した各実施形態及び変形例などでは、判別装置70は、制御装置60とは別の装置としているが、制御装置60が判別装置70の機能を備えるとしてもよい。
なお、走行切換弁34は、走行モータ(第1走行モータ36L、第2走行モータ36R)を第1速度にする第1状態と、第2速度にする第2状態とに切換可能である弁であればよく、方向切換弁とは異なる比例弁であってもよい。
【0148】
走行モータは、第1速度、第2速度との間に中立(ニュートラル)を有するモータであってもよい。
走行モータ(第1走行モータ36L、第2走行モータ36R)は、アキシャルピストンモータであってもラジアルピストンモータであってもよい。走行モータがラジアルピストンモータである場合、モータ容量が大きくなることで、第1速に切り換えることができ、モータ容量が小さくなり、第2速に切り換えることができる。
【0149】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0150】
1 :作業機
2 :機体
5 :走行装置(左走行装置、右走行装置)
32 :原動機
34 :走行切換弁
36L :第1走行モータ(左走行モータ)
36R :第2走行モータ(右走行モータ)
53L :第1走行ポンプ(左走行ポンプ)
53R :第2走行ポンプ(右走行ポンプ)
54 :走行操作装置
55 :操作弁
55A :操作弁
55B :操作弁
55C :操作弁
55D :操作弁
59 :操作部材
60 :制御装置
67 :取得装置
67L :回転検出センサ
67R :回転検出センサ
68A :操作方向検出センサ
68L :回転数検出センサ
68R :回転数検出センサ
70 :判別装置
69 :作動弁