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特許7558934温度監視デバイス、温度監視方法、及び温度監視システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】温度監視デバイス、温度監視方法、及び温度監視システム
(51)【国際特許分類】
   G01K 11/32 20210101AFI20240924BHJP
   G01M 17/007 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
G01K11/32 A ZHV
G01M17/007 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021521210
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 IB2019058859
(87)【国際公開番号】W WO2020079635
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】PL427454
(32)【優先日】2018-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】318000558
【氏名又は名称】インフォテック スポルカ ジー オグラニクゾナ オドパウイエドジアルノシア
【氏名又は名称原語表記】Inphotech spolka z ograniczona odpowiedzialnoscia
【住所又は居所原語表記】Dzika 15/12,00-172 Warszawa (PL)
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(72)【発明者】
【氏名】ナジロフスキ,トマシュ
(72)【発明者】
【氏名】ナピエラワ,マレク
(72)【発明者】
【氏名】ショストキェヴィッチ,ウカシュ
(72)【発明者】
【氏名】ドミンゲス,ロペス・アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】マルキエビッチ,クシシュトフ
(72)【発明者】
【氏名】カチョロフスキ,ヤクブ
(72)【発明者】
【氏名】ビエラ,マリウシュ
(72)【発明者】
【氏名】プワシュチコフスキ,ピオトル
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/107839(WO,A1)
【文献】特開2009-053159(JP,A)
【文献】特開2009-174987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00 - 19/00
G01M 17/007
G01D 5/353
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定光ファイバ(120)を備えるアームを有する光ファイバ干渉計(112)に接続された可変波長の光源(111)の制御入力に印加される実質的に周期的な制御波形を生成するように適合された制御システム(100)を有する温度監視デバイスであって、
前記光ファイバ干渉計(112)は、検出器(113)に接続された出力を有し、該検出器(113)は、光ファイバ長に沿った関数における温度変化を特定するように適合された信号処理モジュール(101)に接続された出力を有しており、
前記可変波長の光源(111)のコヒーレンス長は0.5mよりも長く、前記周期的な制御波形の周期は20秒以下であり、前記可変波長の光源(111)の波長調節範囲は3pmよりも長く、
前記測定光ファイバ(120)は、動作車両における発熱性デバイスに近接して配置され熱に耐えるように適合され、かつ、レイリー散乱信号を前記光ファイバ干渉計(112)に戻すように適合されており、
さらに、前記測定光ファイバ(120)は、前記測定光ファイバ(120)の端部からの反射を少なくとも20dB低減する構成要素(121)を有することを特徴とする、温度監視デバイス。
【請求項2】
前記光ファイバ干渉計(112)と前記測定光ファイバ(120)との間の接続は、シングルモード励起システム(115)を含むことを特徴とする、請求項に記載の温度監視デバイス。
【請求項3】
少なくとも1つの高次モードフィルタ(114)が前記可変波長の光源(111)と前記検出器(113)との間に相互接続されることを特徴とする、請求項1に記載の温度監視デバイス。
【請求項4】
少なくとも1つの偏光子(116)又は偏光スプリッタが前記可変波長の光源(111)と前記検出器(113)との間に配置されることを特徴とする、請求項に記載の温度監視デバイス。
【請求項5】
前記検出器(113)は、60pW*Hz-1/2以下の等価雑音電力を有することを特徴とする、請求項に記載の温度監視デバイス。
【請求項6】
前記信号処理モジュール(101)は、少なくとも6ビットの分解能及び少なくとも20kHzのサンプリングレートを有するアナログ/デジタル変換器を介して前記検出器(113)に接続されることを特徴とする、請求項に記載の温度監視デバイス。
【請求項7】
前記制御システム(100)に接続された周囲温度センサ(130)を備えることを特徴とする、請求項に記載の温度監視デバイス。
【請求項8】
指定された閾値を越えている温度を検出するステップ(205)と、前記閾値を越えている場合には警報信号を生成するステップ(206)とを含む、温度センサ(130)を使用する車両の温度監視方法であって、
前記閾値を越えている温度を検出する前記ステップ(205)は、前記温度センサとして請求項1~のいずれか1項に記載の温度監視デバイスを用いて実現され、
前記測定光ファイバ(120)が、車両における発熱性構成要素の近くに配置されており、
初期温度が設定され(201)、
次に、前記可変波長の光源(111)掃引ステップ(202)に対応する後続の調節周期において、前記測定光ファイバ(120)に沿った温度変化ΔTが求められ(203)、
後続の調節周期において、前記測定光ファイバ(120)の長さの範囲内の少なくとも1つの測定箇所の現在の温度T(d,t=n)が、求められた温度変化ΔTを使用して累積的に更新されて(204)、前記閾値と比較される、ことを特徴とする、温度監視方法。
【請求項9】
前記測定光ファイバ(120)は、車両において、燃料ポンプ、燃料マニホルド、ターボチャージャ、排気マニホルド、オルタネータ、スタータ、空気圧縮機、オイルポンプ、オイルパン、ヒータユニット、AC圧縮機、電子制御システム、電気ワイヤハーネス、バッテリ、及び燃料電池を含む群から選択された少なくとも1つの構成要素の近くに配置され、前記少なくとも1つの測定箇所は、前記少なくとも1つの構成要素の近くに配置されることを特徴とする、請求項に記載の温度監視方法。
【請求項10】
前記初期温度は、周囲温度センサ(130)の自動読み出しによって決定される(201)ことを特徴とする、請求項に記載の温度監視方法。
【請求項11】
前記初期温度は、前記制御システム(100)内に該制御システムのインタフェースを介して入力されることを特徴とする、請求項に記載の温度監視方法。
【請求項12】
前記生成される警報信号は、前記測定光ファイバ(120)のどの箇所が、前記温度T(d,t=n)が前記閾値を越えている箇所であるのかに応じて選ばれることを特徴とする、請求項に記載の温度監視方法。
【請求項13】
少なくとも1つの構成要素の近くに配置される、温度を測定する光ファイバデバイスを含む、車両構成要素の温度監視システムであって、前記光ファイバデバイスは、請求項1~のいずれか1項に記載の温度監視デバイスであることを特徴とする、温度監視システム。
【請求項14】
前記測定光ファイバ(120)が、燃料ポンプ、燃料マニホルド、ターボチャージャ、排気マニホルド、オルタネータ、スタータ、空気圧縮機、オイルポンプ、オイルパン、ヒータユニット、AC圧縮機、電子制御システム、電気ワイヤハーネス、バッテリ、及び燃料電池を含む群から選択された少なくとも1つの構成要素の近くで動作することを特徴とする、請求項13に記載の温度監視システム。
【請求項15】
温度監視に適合されたコンピュータプログラム製品であって、請求項1~のいずれか1項に記載の温度監視デバイスの前記制御システム(100)ための一連の命令を含み、請求項8~12のいずれか1項に記載の温度監視方法を実行することを特徴とする、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、温度監視デバイス、温度監視方法、及び温度監視システムである。本発明は、特にエンジンコンパートメント又は特にバッテリ用の電力貯蔵コンパートメントにおける特に早期の車両火災リスク検出において使用される。
【背景技術】
【0002】
現行技術水準において知られている光ファイバを用いた分散型温度測定の解決法は非常に多く存在する。これらの解決法は、とりわけ、レイリー散乱、ラマン散乱、及びブリュアン散乱の物理現象に基づくものである。
【0003】
レイリー散乱は、光が伝播する環境の不均質の影響を受けた光の散乱である。この現象の利用を伴う技法の1つの不利点は、検討対象の環境における温度変化についての絶対的情報が欠如していることである。
【0004】
ラマン効果は、ストークス強度及び反ストークス強度の差分解析を光ファイバ長関数において使用して温度を測定するのに使用される。光強度解析によって、絶対温度を求めることが可能になるが、残念ながら、光ファイバ長関数における分解能は比較的小さく、1mのレベルである。さらに、ラマン効果を使用して温度を監視するには、非常に感度の高い検出器又は大量の平均化処理の使用が必要となる。なぜならば、この効果はかなり弱いからである。
【0005】
ブリュアン効果を使用して温度を測定するには、強い光によって励起された光ファイバ内に生成される音波の伝播の周波数を解析することが必要となる。
【0006】
2006年3月16日に公開された「Calibrating an optical fmcw backscattering measurement system」という発明の名称の国際特許出願の国際公開第2006027369号(特許文献1)には、レイリー効果に基づいて動作する光学温度監視システムが開示されている。このシステムは、のこぎり波形を用いて調節される波長を有する光源を有し、測定光ファイバ長関数における温度変化が、光源波と干渉する反射波の検出及び解析に基づいて求められる。
【0007】
2017年5月17日に公開された「Optical health monitoring for aircraft overheat and fire detection」という発明の名称の欧州特許出願公開第3246683号(特許文献2)には、光ファイバを使用して温度を監視することによって過熱リスク及び火災リスクを検出する方法が開示されている。この方法は、温度測定と、閾値を越えているか否かを検出することと、そのような場合に警報を生成することとを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2006027369号
【文献】欧州特許出願公開第3246683号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、温度の変化、及び特に温度の上昇と相関した車両構成要素の障害の検出を可能にする、特に自動車及びバスの車両エンジンにおける温度監視に適合したデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による温度監視デバイスは、測定光ファイバがそのアームのうちの1つにおいて接続される光ファイバ干渉計に接続された可変波長を有する光源の制御入力に印加される実質的に周期的な制御波形を生成するように適合された制御システムを含む。干渉計の出力は、光ファイバ長関数における温度変化を特定するように適合された信号処理モジュールに接続された出力を有する検出器に接続される。光源のコヒーレンス長は、0.5mよりも長く、好ましくは2mよりも長く、好ましくは20mを超える。実質的に周期的な制御波形の周期は、20秒よりも短く、好ましくは10秒よりも短く、更には4秒よりも短い。そのような周期を有する周期的波形と、それぞれ≧3pm、≧8pm、及び≧17pmのそれらのそれぞれの光源波長調節とを使用することによって、それぞれ50cm未満、20cm未満、及び10cm未満の空間測定分解能を得ることが可能になる。光ファイバは、車両の動作中に車両内の発熱性(exoenergetic)デバイスの近くに配置されるように適合され、これは、とりわけ、そのケーシングが、損傷を受けることなく少なくとも70℃の温度に耐えなければならないことと、このケーシングが、少なくとも光ファイバに隣接して配置された構成要素の通常の動作温度まで、光ファイバを破壊又は劣化から保護するように選択されるべきであることとを意味する。
【0011】
好ましくは、測定光ファイバはシングルモード光ファイバである。そのような解決策によって、アルゴリズムの簡単な実施が可能になると同時に、シングルモード動作を強制する付加的なシステムが必要とされない。
【0012】
代替的に、干渉計と測定光ファイバとの間の接続は、シングルモード励起システムを通過する。
【0013】
また代替的に、シングルモード動作を確保する少なくとも1つのモードフィルタ又はデバイスが光源と検出器との間にある。
【0014】
単一の偏光を伴う動作を確保し、偏光分離システム及びその直交状態の個別の検出の使用を回避する少なくとも1つの偏光子又は偏光スプリッタが、光源と検出器との間にある。
【0015】
好ましくは、測定光ファイバは、追加のシステムを用いることなく、単一の偏光を伴う動作を確保する偏波保持光ファイバである。
【0016】
好ましくは、検出器は、60pW*Hz-1/2以下の等価雑音電力によって特徴付けられ、これによって、制御アルゴリズムの実施が簡単化され、誤差のリスクが低減される。好ましくは、等価雑音電力は20pW*Hz-1/2未満である。
【0017】
好ましくは、信号処理システムは、少なくとも6ビットの分解能及び20kHz以上のサンプルレートを有するアナログ/デジタル変換器を通じて検出器に接続され、これによって、制御アルゴリズムの実施が簡単化され、十分な分解能が提供される。
【0018】
好ましくは、デバイスは、制御システムに接続された周囲温度センサを含む。
【0019】
好ましくは、測定光ファイバは、その端部に、特に減衰構成要素を用いて反射率を低減する構成要素を含む。
【0020】
本発明による、指定された閾値を越えている温度を検出することと、この値を越えている場合に警報信号を生成することとを伴う、温度センサを使用する車両の温度監視方法が、指定された値を越えている温度が本発明によるデバイスを使用して検出されることによって特徴付けられる。測定光ファイバが、車両における発熱性構成要素の近くに配置され、初期温度が設定され、その後、後続の光源調節周期において、測定光ファイバは、この測定光ファイバに沿った温度変化を反復して監視するのに使用され、測定光ファイバの長さの範囲内の少なくとも1つの測定箇所の現在の値が累積的に更新され、この現在の値は、その後、閾値と比較される。
【0021】
好ましくは、測定光ファイバは、車両において、燃料ポンプ、燃料マニホルド、ターボチャージャ、排気マニホルド、オルタネータ、スタータ、空気圧縮機、オイルポンプ、オイルパン、ヒータユニット、AC圧縮機、電子制御システム、電気ワイヤハーネス、バッテリ、及び燃料電池を含む群からの少なくとも1つの構成要素の近くに配置され、少なくとも1つの測定箇所は、これらの構成要素のうちの少なくとも1つの近くに配置される。特に、これらの構成要素を監視することによって、火災のリスク又は介入を必要とする障害と相関した温度の上昇を検出することが可能になる。
【0022】
測定光ファイバの始点又は少なくとも1つの測定箇所からの距離を示すスケールを測定光ファイバに備え付けることによって、車両における測定光ファイバのより容易な配置及び自動車構成要素への測定箇所のより容易な割り当てが可能になる。このスケールは、光ファイバと束ねられた追加の構成要素を構成することもできるし、光ファイバの外面上のマークを構成することもできる。
【0023】
好ましくは、初期温度は、周囲温度センサの自動読み出しによって決定される。
【0024】
好ましくは、初期温度は、制御システムのインタフェースを介して制御システム内に入力される。
【0025】
好ましくは、生成される警報信号は、測定光ファイバのどの箇所が、温度が閾値を越えている箇所であるのかに応じて選ばれる。
【0026】
本発明による、車両の少なくとも1つの構成要素の近くに配置される、温度を測定する光ファイバデバイスを含む、車両の構成要素の温度を監視するシステムが、温度を測定する光ファイバデバイスが本発明によるデバイスであることによって特徴付けられる。
【0027】
好ましくは、システムは、本発明による方法の自動実施に適合したデジタルシステムを含む。このシステムは、本発明によるデバイスの制御システムと統合することができる。
【0028】
本発明によれば、温度監視に適合したコンピュータプログラム製品が、本発明によるデバイスを用いて本発明による方法の実施態様を実行する、本発明によるデバイスの制御システムの一組の命令を含む。
【0029】
本発明の対象は、図面に実施形態として提示されている。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1a】本発明の一実施形態によるデバイスのブロック図である。
図1b】本発明の代替の実施形態によるデバイスのブロック図である。
図2】本発明の一実施形態による方法のフローチャートである。
図3】本発明によるシステムの一実施形態における構成要素の動作温度及び温度の閾値を有する表である。
図4】光源の調節時間及び調節範囲の選択された好ましい値のペアを達成することが可能な最大理論空間分解能を列挙した表である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1aに示すようなブロック図を有する本発明の実施形態によるデバイスは、制御システム100によって制御される調節可能な光源111を備える。光源111によって生成される光の波長は調節を受ける。温度変化測定方法の実施態様の簡素さに起因して、最良の効果が、線形調節(linear tuning)、のこぎり歯調節(sawtooth tuning)、又は三角形調節(triangular tuning)を用いて得られている。それでもなお、他の周期的波形を用いた解決策が可能である。光源は、光が分割される干渉計112に接続される。光の伝播は、図1では、伝播の簡略化した方向を示す矢印を有する二重線を用いて示されている。
【0032】
基準ビームを構成する光の部分は、検出器113に直接又は基準アーム(図示せず)を通って誘導される一方、それ以外の部分は、測定光ファイバ120に誘導され、測定ビームを構成する。測定光ファイバに向けられた測定ビームは、その長さの全体を通してレイリー散乱を受ける。この散乱の結果、光は干渉計112に戻され、干渉計112は、この光を検出器113に誘導する。検出器113では、基準ビームと、測定光ファイバの様々な箇所で散乱された測定ビームからの光との干渉が観測される。幾つかの使用について、2つ以上の検出器を使用し、それらの出力信号を加えることが合理的である。これは、適用された光ファイバが偏光を保持しない場合には特に有用な手法である。
【0033】
光散乱箇所における温度変化は、検出器113によって検出される信号の変化をもたらす。検出器113からのこの信号は、処理モジュール101に渡され、処理モジュール101において、測定箇所の温度変化ΔTが、上記信号の変化に基づいて求められる。
【0034】
信号処理モジュール101は、制御システム100に接続されている。制御システム100は、調節可能光源111に接続されている。したがって、信号処理を光源の調節と同期させ、測定光ファイバ120の長さに沿った測定箇所のロケーションをマーキングすることが可能である。信号接続は、図1では、単線によって示されている。
【0035】
測定光ファイバ120における各箇所は、後方に誘導される光の光源として扱うことができる。基準信号とともにそのような光源から来る信号のビート周波数は、光ファイバに沿った距離に比例する。光ファイバの始点を基準とした所与の測定箇所のロケーションを求めることが基本である。温度測定は、光ファイバの指定されたセクションにおける逆フーリエ変換を解析することにその本質がある。観測されるビートの位相は温度の影響を受けて変化し、この変化は温度変化を明確に示す。したがって、測定箇所の概念は、空間分解能と等しい長さを有する光ファイバのセクションを意味し、温度変化は、解析されるセクションの長さにわたる平均温度変化として解釈される。空間分解能は、構成要素を区別する能力にも影響を及ぼす。必要に応じて、測定箇所の間の光ファイバセクションを意図的に延長すること、すなわち、必要以上に長いセクションを配置するだけでなく、同じ構成要素の近くにセクションを複数倍配置することが可能である。
【0036】
システムの動作は、構成要素121からの反射率を削減するデバイス、特に測定光ファイバの端部において戻る信号強度を削減する減衰構成要素、の使用によって改善される。そのような構成要素は、光ファイバの端部からの強い信号の反射を防止し、信号対雑音比の改善をもたらす。少なくとも6dBの反射減衰を与えることが有利である。この機能は、例えば、角度付き物理コネクタ(APC:angled physical connector)によって実施することもできるし、屈折率がガラスの屈折率と同様の物質によって覆われた角度付きカットを用いて光ファイバを終端することによって実施することもできるし、減衰器又は光アイソレータを使用することによって実施することもできる。測定精度の大幅な改善は、20dB以上の反射減衰システムを使用することによって既に得られている。60dBの減衰をもたらすデバイスは、本発明による方法の実施を大幅に簡素化した。
【0037】
光源111のコヒーレンス長は、測定光ファイバ120の少なくとも2倍の長さであるべきである。車両エンジンコンパートメント又はバッテリコンパートメントの監視に適用可能なコヒーレンス長は、通常、1m~1kmの範囲にある。これは、光源111が多くとも70MHz、好ましくは1MHz未満の帯域幅を有するべきであることを意味する。最良の効果が、100kHz未満の帯域幅を有する光源について得られている。上記帯域は、中心波長1550nmの場合の要求に規定されたコヒーレンス長条件を満たすコヒーレンス長に対応する。
【0038】
この実施形態では、調節可能光源111は0dBmのパワーを有するが、良好な効果が、パワーが-5dBm~24dBmの範囲にある光源を用いて得られている。
【0039】
本発明による方法は、光源が、よく知られた初期波長から、好ましくは少なくとも5pmの精度で既知の波長に線形に調節される場合に、実施するのが容易である。調節範囲は50pmを越えるべきである。調節箇所の初期設定の精度は、測定の不確実性に影響を及ぼす。1pmの誤差は、約0.8ケルビンの読み取り誤差につながる。この実施形態では、光源111は、少なくとも1nmの範囲を有する連続的な波長調節に適合されている。
【0040】
数個の測定箇所しか必要としないアプリケーション又はより大きなデバイスの監視を伴うアプリケーションでは、最大でも3pmの著しく狭い調節範囲を有する光源が場合に応じて使用される可能性がある。調節時間及び調節範囲の通常のペアの最大理論空間分解能値が、図4に提示された表に列挙されている。ここで、現実的な動作条件において実際に達成することができる値は、場合によっては、非常に大きく異なり、理論値から2桁以上も異なることさえあることを指摘しておく必要がある。このことは、冗長なシステム設計を正当化するものである。
【0041】
測定光ファイバ120は、1つのモードグループに対応するように適合されるべきである。測定光ファイバ120は、好ましくは、或る動作波長を有するシングルモード光ファイバ、好ましくは高い開口数、すなわち0.12以上の開口数を有するシングルモード光ファイバであるべきである。そのような開口によって、十分なレベルの逆方向信号及び許容可能なレベルの曲げ損失が確保される。良好な効果が、ITU-T G.652勧告の要件を満たすシングルモード光ファイバについて得られている。
【0042】
光ファイバケーシングは、85℃の温度における長期の作業に適合したものであるべきである。この光ファイバケーシングは、例えば、ポリアミド、アルミニウム、銅、Ormocer、又は金から作製することができる。或る特定の用途では、少なくとも200℃の耐熱性を提供する最も耐久性のあるコーティングにケーシングを限定することが必要である。例えば、銅に基づくケーシングは400℃までの耐熱性を提供する一方、金に基づくケーシングは600℃までの耐熱性を提供する。
【0043】
この実施形態では、検出器113は、8pW*Hz-1/2の等価雑音電力と、0kHz~80kHzの3dB帯域とを有する。信号処理モジュール101は、少なくとも8ビットの分解能及び少なくとも0.5MHzのサンプルレートを有するアナログ/デジタル変換器を介して検出器113に接続されている。行われた実験は、比較的単純で容易に実施されるアルゴリズムを使用して信号の変化に基づいて温度情報を取得するために、検出器及び変換器のこれらの(又はより良好な)パラメータが十分に高速で十分に正確な信号測定を可能にすることを実証している。より低い等価雑音電力及び/又はより広い帯域幅を有する検出器と、より高い分解能及び/又はより高速のサンプルレートを有する変換器とを使用すると、本発明によるデバイス及びシステムのパラメータは改善される。
【0044】
代替の実施形態が図1bに示されている。シングルモード光ファイバの使用に代えて又はシングルモード光ファイバの使用とともに、高次モードフィルタ114を光源111との間の測定経路に導入することができる。この高次モードフィルタは、検出器113の近くに配置された場合に最も良好に動作する。
【0045】
別の許容可能な代替の解決策は、1つのモードを効果的に伝播させるために、マルチモード光ファイバの前に又はマルチモード光ファイバの特殊な励起を使用することによって、高次モードの損失を選択的に増加させることである。
【0046】
さらに、干渉計と測定光ファイバとの間にシングルモード励起システム115を使用することができる。
【0047】
このデバイスの光源111と検出器113との間に偏光子116を備え付けることによって、偏光光源を使用する代替形態が構成される。そのようなシステムでは、2つの直交偏光からの信号を合計することによって信号を取得することを可能にする、直交偏光を検出する偏光スプリッタ及び検出器を使用すると、偏光を維持しないシステムにおける動作を自動的に得ることが可能である。
【0048】
代替の実施形態では、システムから偏光構成要素(偏光子又は偏光スプリッタ)を除去することを可能にする偏波保持光ファイバを使用することが可能である。使用することができる偏波保持光ファイバは、例えば、PANDA及びボウタイ(bow-tie)ファイバ、又は、現行技術水準、例えば、Noda J.他著の「Polarization-maintaining fibers and their applications」という題名の刊行物(1986, Journal of Lightwave Technology, vol. 4, issue 8)から知られている楕円コアファイバを含む。
【0049】
制御システム100に接続された付加的な周囲温度センサ130の使用によって、初期温度Tを求めることが容易になる。現在の温度は、この初期温度に対してその後のΔTの変化を求めることによって更新される。代替的に又は相補的に、ユーザによる温度値の入力、又は、デバイスから独立した外部の温度センサからの信号受信機による温度値の入力を可能にするシステムを使用することができる。
【0050】
本発明による温度監視方法は、エンジンコンパートメント又はバッテリコンパートメントにおいて温度を監視することと、全ての測定箇所に単一の閾値を指定することとによって火災のリスクを検出するのに使用することができる。そのような場合に、この閾値は、130℃~220℃の範囲から選ばれ、この実施形態では、閾値は175℃である。そのような範囲及び値の選択には、測定光ファイバのより耐熱性の高いケーシングの使用が必要とされ、この実施形態では、銅に基づくケーシングが使用される。この値を越えた場合には、警報信号が生成される。本発明によるデバイスを使用することによって、警報信号とともに、温度が記録される測定箇所を示すことが可能になる。温度は、本発明によるデバイスを使用して監視される。このデバイスの測定光ファイバ120は、エンジンコンパートメント又はバッテリコンパートメント内に配置され、発熱性構成要素の近くに設置され、その後、これらの構成要素に割り当てられ、測定光ファイバ120上に位置する測定箇所における変化が累積的に更新される。この解析方法には、初期温度の設定が必要とされる。エンジンコンパートメント内部の初期温度は、本発明によるデバイスに入力されるか、又は、周囲温度センサ130から読み取られる。或いは、温度を表す信号が受信される。光ファイバの全体における少なくとも1つの箇所の初期温度T(d)の設定は、図2に示すフローチャートにおける初期化ステージ200に含まれる。初期温度は、ステージ201において設定される。この初期温度は、手動で入力することもできるし、センサから読み取ることもできるし、センサグリッドから平均することもできるし、測候所等の別の独立した情報源から取得することもできる。その後、掃引ステージ202の間に、光源111が、のこぎり波形を用いて周期的に調節され、その波長を変化させる。これは、波長の線形変化を有する対称波形とすることもできるし、現行技術水準から知られている別の波形とすることもできる。変数nによってインデックス付けされたその後の調節周期において、測定光ファイバ120に沿った温度変化ΔTであるΔT(d)が、反復して求められ(203)、その長さ内の少なくとも1つの測定箇所の現在の値が累積的に更新され(204)、T(d,t=n)=T(d,t=n-1)+ΔTの代入が行われる。この温度は、閾値温度値、すなわちこの実施形態では175℃と比較される(205)。温度T(d,t=n)が閾値を越えている場合には、警報が生成される(206)。値が閾値を越えている測定箇所を明示することができることは負荷的な価値がある。その後、後続の(n+1)回目の掃引が実行される。この方法は、制御システム100の制御を受けて自動的に実行することができる。制御システムは、その場合に、本発明によるデバイスを使用して本発明による方法を実行するプログラムを含むメモリを備える。デバイスは、その場合に、光ファイバ長関数及び時間関数における温度変化の自律的な特定と、好ましくは警報生成とに適合されている。
【0051】
測定光ファイバ120の始点から距離dに位置する測定箇所Pにおける温度変化は、現在の反復及び基準反復(以前の反復)における信号、すなわち温度変化信号の相互相関を使用する現行技術水準のOFDR(光学周波数領域反射光測定:Optical Frequency Domain Reflectometry)方法を使用して求められる。これらの信号は、光ファイバの検討対象のセクションから来る信号の逆複素フーリエ変換を使用して求めることができる。空間分解能に対応する検出器に存在するビートの周波数のセクションのみが考慮される。2つの測定値の相互相関のオフセットは、基準信号を再生する波長のオフセットに対応する。この趣旨での様々な技法は、「Optical Frequency Domain Reflectometry: sensing range extension and enhanced temperature sensitivity」という題名のJia Songの修士論文(Ottawa - Carleton Institute for Physics University of Ottawa, Canada, 2014)に提示されている。しかしながら、当業者は、ルーチン的に、周期的に調節された波長を有する光源によって励起された測定光ファイバを使用して温度を求める他の適用可能な方法を提案することができる。
【0052】
或る特定の状況において過熱する傾向があるとともに火災を引き起こす可能性がある構成要素、例えば、燃料ポンプ、燃料マニホルド、オルタネータ、スタータ、エンジンの電子部品、ターボチャージャ、オイルパン等に隣接して測定光ファイバ120を動作させるために、車両のエンジンコンパートメントに測定光ファイバ120を配置することが推奨される。測定光ファイバ120上の測定箇所は、それらの測定箇所をこれらの構成要素に直接隣接して配置するように選択される。上述した構成要素の正常な動作温度は、図3に示す表に列挙されている。これらの温度は大きく変動するので、測定光ファイバ120の始点から様々な距離に位置する測定光ファイバ120の異なる測定箇所P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7に異なる閾値を使用することによって、本発明による方法及び本発明によるデバイスを使用する本発明によるシステムの火災検出特異性を改善することができる。正常な動作値の大きな拡散に起因して、異なる測定箇所に異なる閾値温度値を使用することは妥当である。この実施形態において使用される値も、図3に示す表に列挙されている。正常な動作温度を30℃以上越えている基準が使用される。火災リスクの検出に関係したシステムの特異性及び感度に関する要件に従って、他のより複雑な基準も同様に提案することができる。特に、特異性を改善するために、周囲温度の上昇に沿って閾値を高くすることは妥当なものとすることができる。光ファイバケーシングの選択は、どの車両構成要素が監視されるのかに依存する。例えば、燃料マニホルドを監視するには、通常、70℃を越える温度に耐性のある測定光ファイバのみが必要とされ、ターボチャージャの監視には、少なくとも140℃の温度、又は、或る特定のモデルではそれよりも高い温度に対する耐性が必要とされる。
【0053】
温度が測定される構成要素を含む構成要素群は、車両ごとに個別に選択される。上述した構成要素に加えて、この群は、排気マニホルド、空気圧縮機、オイルポンプ、ヒータユニット、AC圧縮機、電気ワイヤハーネス、並びに、電気自動車及びハイブリッド自動車の場合には、バッテリ、燃料電池、及び変換器も含むことができる。発熱性デバイスと、乗客エリアにおける火災リスクの傾向がある場所とを分析することも妥当である。
【0054】
好ましくは、測定光ファイバは、測定光ファイバの始点又は少なくとも1つの測定箇所からの距離を示すスケールを備える。そのような解決策によって、車両内での測定光ファイバの配置及び車両構成要素への測定箇所の割り当てが容易になる。
【0055】
本発明によるシステムを使用することによって、火災のリスク及び温度の上昇と相関した他の有害な現象を検出することが可能になる。そのような状況では、所与の現象に関連した閾値が使用される。例えば排気マニホルド又はターボチャージャのエリアにおける、例えば排気システムの漏れは、高温の排ガスと関連しており、これは、それ自体による介入を必要とする障害を構成する。幾つかの場合には、高温のガスは、近傍の構成要素の着火をもたらす可能性もある。空気冷却システムの閉塞は、空気圧縮機内の圧力を増加させる可能性があり、したがって、温度を上昇させる可能性があり、それによって、着火が起こる可能性もある。プーリの停止は、Vベルトがプーリとこすれることをもたらす可能性があり、これは、これらのベルトの着火をもたらす可能性がある。
【0056】
測定光ファイバが設置される方法に応じて、単一の構成要素を1つ以上の測定箇所に割り当てることができる。例えば巻きつけることによって測定光ファイバを所与の構成要素の近くに複数回設置することによって、測定箇所の数を増倍することができ、これらの箇所における温度の分布の付加的な基準を使用することができる。
【0057】
上記のデバイス、方法、及びシステムは、正常な動作温度と比較したデバイスの温度低下に相関した障害を検出するのに使用することもできる。そのような場合には、閾値温度は、正常な動作温度の低い側の範囲の近くに定められ、デバイスの温度が閾値温度よりも低い状況が検出される。2つの閾値温度が設定され、第1の閾値温度よりも高い動作温度及び第2の閾値温度よりも低い動作温度の双方が検出され、適切な警報を用いて双方の状況をマーキングするハイブリッドな解決策も可能である。
【0058】
当業者は、本明細書を読むと、ルーチン的に、測定光ファイバの配置、測定箇所の分散、閾値温度の値、又は測定箇所における温度の分布及びそれらの温度と閾値温度との関係に関連した警報を生成する複合的な条件の設定に関して、非常に多くの代替の解決策を提案することができる。
【0059】
当業者は、本明細書に示された要件及びパラメータを読むと、ルーチン的に、本発明によるデバイスの部分構成要素、特に、様々なタイプの光ファイバ及びケーシング、並びに妥当な検出器、光源、又は制御システムの非常に多くの構造上の解決策も提案することができる。制御システムは、制御波形を生成するアナログシステム、完全デジタルシステム、又はアナログ周辺デバイスを有するデジタルシステムとすることができる。特に、信号プロセッサ及びFPGA回路をこの趣旨で使用することが可能である。
【0060】
本発明による方法は、オペレータによって又は自動的に実行することができる。
【0061】
これらの発明実行変形形態及び他の発明実行変形形態は、添付の特許請求の範囲に規定されているように保護される。
【0062】
本発明は、バッテリ冷却システムにおける温度制御、及び、乗客空間又はエネルギーリソース管理システムにおける温度の測定にも適用可能である。
図1a
図1b
図2
図3
図4