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特許7558937形状記憶性樹脂、皮膚美容製品、皮膚外用具の製造方法、及び皮膚用美容製品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】形状記憶性樹脂、皮膚美容製品、皮膚外用具の製造方法、及び皮膚用美容製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A45D 44/22 20060101AFI20240924BHJP
   A61L 15/24 20060101ALI20240924BHJP
   A61L 15/42 20060101ALI20240924BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20240924BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20240924BHJP
   C08L 33/26 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
A45D44/22 C
A61L15/24 100
A61L15/42
A61L15/44 100
C08F220/56
C08L33/26
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2021525981
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020898
(87)【国際公開番号】W WO2020250677
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2019111534
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【弁理士】
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】曽我部 敦
(72)【発明者】
【氏名】文 春明
(72)【発明者】
【氏名】宮 瑾
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-057062(JP,A)
【文献】特開2014-104239(JP,A)
【文献】M. HASNAT KABIR et al.,Smart hydrogel with shape memory for biomedical applications,Journal of the Taiwan Institute of Chemical Engineers,2014年10月30日,Vol.45,Pages 3134-3138
【文献】AMANO YOSHITAKA et al.,Creation of Shape-memory Gels with Inter-crosslinking Network Structure,Chem. Lett.,2012年10月13日,Vol.41,Pages 1029-1031
【文献】MD NAHIN ISLAM SHIBLEE et al.,4D Printing of Shape-Memory Hydrogels for Soft-Robotic Functions,ADVANCED MATERIALS TECHNOLOGIES,2019年05月17日,Vol.4,Pages 190071
【文献】BILICI, Cigdem et al.,Toughness improvement and anisotropy in semicrystalline physical hydrogels,Polymer,Vol.151,2018年07月30日,Pages 208-217
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08L 1/00-101/14
A45D44/22
A61L15/24
A61L15/42
A61L15/44
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、
前記支持体に含浸されている形状記憶性樹脂と、を備える皮膚用美容製品であって、
前記形状記憶性樹脂は、
64mol%~85mol%のN-アルキルアクリルアミド成分と、
下記化1に示される構造を有する14mol%~35mol%のアクリル酸エステル成分と、
0.01mol%~6mol%の架橋成分と、を含むポリマーを含み、
前記皮膚用美容製品は、美容成分及び/又は化粧成分を含む皮膚用美容製品
【化1】
(化1に示す化学式において、Rは、水素又は炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基であり、Rは、炭素数10~20のアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。)
【請求項2】
前記N-アルキルアクリルアミド成分は、N,N-ジメチルアクリルアミド成分を含む、請求項1に記載の皮膚用美容製品
【請求項3】
前記アクリル酸エステル成分は、アクリル酸ステアリル成分、アクリル酸ラウリル成分、アクリル酸2-エチルヘキシル成分、及びアクリル酸ブチル成分からなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の皮膚用美容製品
【請求項4】
前記アクリル酸エステル成分は、アクリル酸エステル成分の総量に対して、40mol%~100mol%のアクリル酸ステアリル成分と、0mol%~60mol%のアクリル酸ラウリル成分と、を含む、請求項1~3のいずか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項5】
前記架橋成分は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド成分を含む、請求項1~4のいずか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項6】
前記ポリマーのヤング率が1MPa以下である、請求項1~5のいずか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項7】
前記ポリマーの平均ひずみは500%以上である、請求項1~6のいずか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項8】
前記形状記憶性樹脂は、ポリエチレングリコールをさらに含む、請求項1~7のいずか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項9】
前記ポリエチレングリコールの含有率は、前記形状記憶性樹脂の質量に対して、0.1質量%~1質量%である、請求項8に記載の皮膚用美容製品
【請求項10】
前記形状記憶性樹脂の含水率が、前記形状記憶性樹脂の質量に対して2質量%~40質量%である、請求項1~9のいずか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項11】
前記形状記憶性樹脂は、温度応答性の形状記憶性を有する、請求項1~10のいずか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項12】
前記形状記憶性樹脂は、可撓性を有する、請求項1~11のいずか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項13】
前記化1に示す化学式において、R は、炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基である、請求項1~12のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品。
【請求項14】
前記支持体は伸縮性を有する、請求項1~13のいずれかに記載の皮膚用美容製品
【請求項15】
前記支持体は、不織布、織物、編物、タフト、フエルト、縮絨、紙、及び含水材からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~14のいずれかに記載の皮膚用美容製品
【請求項16】
シート形状を有する、請求項15のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項17】
皮膚の面形状に沿った形状を有する、請求項16のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項18】
顔の少なくとも一部に沿った形状を有する、請求項17のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品
【請求項19】
64mol%~85mol%のN-アルキルアクリルアミド成分と、
下記化2に示される構造を有する14mol%~35mol%のアクリル酸エステル成分と、
0.01mol%~6mol%の架橋成分と、を含むポリマー、及びポリエチレングリコールを含む、形状記憶性樹脂。
【化2】
(化2に示す化学式において、R は、水素又は炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基であり、R は、炭素数10~20のアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。)
【請求項20】
前記化2に示す化学式において、R は、炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基である、請求項19に記載の形状記憶性樹脂。
【請求項21】
64mol%~85mol%のN-アルキルアクリルアミド、下記化3に示される構造を有する14mol%~35mol%のアクリル酸エステル、及び0.01mol%~6mol%の架橋剤を含むモノマーと、重合開始剤と、ポリエチレングリコールと、を混合した混合物を作製する工程と、
前記混合物を重合させてポリマーを作製する工程と、
前記ポリマーをガラス転移温度以上に加熱して拡張させる工程と、
前記ポリマーを拡張させた状態で冷却する工程と、を含む、皮膚外用具の製造方法。
【化3】
(化3に示す化学式において、R は、水素又は炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基であり、R は、炭素数10~20のアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。)
【請求項22】
前記化3に示す化学式において、R は、炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基である、請求項21に記載の皮膚外用具の製造方法。
【請求項23】
64mol%~85mol%のN-アルキルアクリルアミド、下記化に示される構造を有する14mol%~35mol%のアクリル酸エステル、及び0.01mol%~6mol%の架橋剤を含むモノマーと、重合開始剤と、を混合した混合物を作製する工程と、
型に前記混合物及び支持体を入れる工程と、
前記混合物を前記支持体に含浸させた状態で前記混合物を重合させてポリマーを作製する工程と、
前記ポリマーをガラス転移温度以上に加熱して拡張させる工程と、
前記ポリマーを拡張させた状態で冷却して皮膚用美容製品を作製する工程と、
前記皮膚用美容製品に美容成分及び/又は化粧成分を含浸させる工程と、
を含む、皮膚用美容製品の製造方法。
【化4】
(化に示す化学式において、Rは、水素又は炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基であり、Rは、炭素数10~20のアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。)
【請求項24】
前記化4に示す化学式において、R は、炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基である、請求項23に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項25】
前記支持体は伸縮性を有する、請求項23又は24に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項26】
前記支持体は、不織布、織物、編物、タフト、フエルト、縮絨、紙、及び含水材からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項23~25のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項27】
前記型は顔の一部の形状を有する、請求項23~26のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項28】
前記混合物と前記型との間に剥離シートを介在させる、請求項23~27のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項29】
前記剥離シートはポリテトラフルオロエチレンシートである、請求項28に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項30】
前記皮膚用美容製品をシート状に形成する、請求項23~29のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項31】
前記アクリル酸エステルは、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びアクリル酸ブチルからなる群から選択される少なくとも1つを含む、請求項23~30のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項32】
前記アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルの総量に対して、40mol%~100mol%のアクリル酸ステアリルと、0mol%~60mol%のアクリル酸ラウリルと、を含む、請求項23~31のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項33】
前記N-アルキルアクリルアミドは、N,N-ジメチルアクリルアミドを含む、請求項23~32のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【請求項34】
前記架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミドを含む、請求項23~33のいずれか一項に記載の皮膚用美容製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本発明は、日本国特許出願:特願2019-111534号(2019年6月14日出願)の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は引用をもって本書に組み込み記載されているものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、形状記憶性を有する樹脂に関する。本開示は、当該樹脂を有する皮膚外用具に関する。本開示は、当該皮膚外用具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
形状記憶樹脂を使用したフェイスマスクが知られている(例えば、特許文献1及び特許文献2)。
【0004】
特許文献1に記載のフェイスマスクは、形状記憶樹脂を成形したフィルムを含んでなる。また、特許文献1には、フェイスマスクの片面に、化粧水等を含浸させた布帛を積層することが開示されている。
【0005】
特許文献2に記載のフェイスマスクシートは、皮膚に密着して顔面を覆うように形成したフェイスマスクシートであって、体温に反応して収縮する形状記憶素材を少なくとも皮膚の弛緩部位に相当する部分に設け、形状記憶素材が皮膚の弛緩方向に沿って収縮するようになしてある。また、特許文献2には、含水性シート材に形状記憶素材を積層してあり、含水性シート材に化粧液を含浸してなることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-160833号公報
【文献】特開2007-143586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1及び特許文献2に記載のフェイスマスクにおいては、化粧液等を保持するための含水材を必要とする。しかしながら、含水材を必ずしも必要とすることなく、目的及び用途に応じて含水材の使用を選択できることが望まれる。
【0008】
また、特許文献1及び特許文献2に記載のフェイスマスクにおいては、形状記憶樹脂に含水材を積層させている。しかしながら、このような積層構造においては、形状記憶樹脂と含水材とが一体的に変形することはできない。例えば、形状記憶樹脂が収縮したとき、含水材が形状記憶樹脂に応じて収縮することは困難である。このような場合、例えば、含水材には撚れが生じることになる。
【0009】
特許文献1においても特許文献2においては、フェイスマスクに適用可能な形状記憶素材の具体的組成については示されていない。
【0010】
そこで、皮膚に適用可能な形状記憶樹脂、特に含水材と一体的に適用可能な形状記憶樹脂が求められている。また、化粧及び/又は美容のためにこのような形状記憶樹脂を用いる皮膚外用具、その使用方法及びその製造方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の第1視点によれば、64mol%~85mol%のN-アルキルアクリルアミド成分と、下記化1に示される構造を有する14mol%~35mol%のアクリル酸エステル成分と、0.01mol%~6mol%の架橋成分と、を含むポリマー、及びポリエチレングリコールを含む、形状記憶性樹脂が提供される。
本開示の第2視点によれば、支持体と、前記支持体に含浸されている形状記憶性樹脂と、を備える皮膚用美容製品が提供される。前記形状記憶性樹脂は、64mol%~85mol%のN-アルキルアクリルアミド成分と、下記化1に示される構造を有する14mol%~35mol%のアクリル酸エステル成分と、01mol%~6mol%の架橋成分と、を含むポリマーを含み、前記皮膚用美容製品は、美容成分及び/又は化粧成分を含む。
【0012】
化1に示す化学式において、Rは、水素又は炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基である。Rは、炭素数10~20のアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。
【0013】
【化1】
【0014】
本開示の第視点によれば、64mol%~85mol%のN-アルキルアクリルアミド、下記化2に示される構造を有する14mol%~35mol%のアクリル酸エステル、及び0.01mol%~6mol%の架橋剤を含むモノマーと、重合開始剤と、を混合した混合物を作製する工程と、型に前記混合物及び支持体を入れる工程と、前記混合物を前記支持体に含浸させた状態で前記混合物を重合させてポリマーを作製する工程と、前記ポリマーをガラス転移温度以上に加熱して拡張させる工程と、前記ポリマーを拡張させた状態で冷却して皮膚用美容製品を作製する工程と、前記皮膚用美容製品に美容成分及び/又は化粧成分を含浸させる工程と、を含む、皮膚用美容製品の製造方法が提供される。
【0015】
本開示の第視点によれば、64mol%~85mol%のN-アルキルアクリルアミド、下記化2に示される構造を有する14mol%~35mol%のアクリル酸エステル、及び0.01mol%~6mol%の架橋剤を含むモノマーと、重合開始剤と、ポリエチレングリコールと、を混合した混合物を作製する工程と、混合物を重合させてポリマーを作製する工程と、ポリマーをガラス転移温度以上に加熱して拡張させる工程と、ポリマーを拡張させた状態で冷却する工程と、を含む、皮膚外用具の製造方法が提供される。
【0016】
化2に示す化学式において、Rは、水素又は炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基である。Rは、炭素数10~20のアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。
【0017】
【化2】
【発明の効果】
【0018】
本開示の形状記憶性樹脂は、温度応答性(温度依存性)の形状記憶性を有する。例えば、本開示の形状記憶性樹脂は、人の体温で元の形状への変形を誘起させることができる。
【0019】
本開示の形状記憶性樹脂は、高い強度を有している。これにより、本開示の形状記憶性樹脂は、薄く形成することができる。例えば、フィルム状に成形することができる。
【0020】
本開示の形状記憶性樹脂は、形状記憶状態における高い経時安定性を有している。
【0021】
本開示の形状記憶性樹脂は、生体親和性を有している。これにより、本開示の形状記憶性樹脂は、肌に適用することができる。
【0022】
本開示の形状記憶性樹脂は、高い透明性を有することができる。これにより、本開示の形状記憶性樹脂は、多くの用途に適用することができる。例えば、人体に適用したとしても目立たなくすることができる。
【0023】
本開示の皮膚外用具は、皮膚を伸縮させることに適用することができる。
【0024】
本開示の皮膚外用具の製造方法によれば、第2視点に係る皮膚外用具を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上記各視点の好ましい形態を以下に記載する。
【0026】
上記第1視点の好ましい形態によれば、N-アルキルアクリルアミド成分は、N,N-ジメチルアクリルアミド成分を含む。
【0027】
上記第1視点の好ましい形態によれば、アクリル酸エステル成分は、アクリル酸ステアリル成分、アクリル酸ラウリル成分、アクリル酸2-エチルヘキシル成分、及びアクリル酸ブチル成分のうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
上記第1視点の好ましい形態によれば、アクリル酸エステル成分は、アクリル酸エステル成分の総量に対して、40mol%~100mol%のアクリル酸ステアリル成分と、0mol%~60mol%のアクリル酸ラウリル成分と、を含む。
【0029】
上記第1視点の好ましい形態によれば、架橋成分は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド成分を含む。
【0030】
上記第1視点の好ましい形態によれば、ポリマーのヤング率が1MPa以下である。
【0031】
上記第1視点の好ましい形態によれば、ポリマーの平均ひずみは500%以上である。
【0032】
上記第1視点の好ましい形態によれば、形状記憶性樹脂は、ポリエチレングリコールをさらに含む。
【0033】
上記第1視点の好ましい形態によれば、ポリエチレングリコールの含有率は、形状記憶性樹脂の質量に対して、0.1質量%~1質量%である。
【0034】
上記第1視点の好ましい形態によれば、形状記憶性樹脂の含水率が、形状記憶性樹脂の質量に対して2質量%~40質量%である。
【0035】
上記第1視点の好ましい形態によれば、形状記憶性樹脂は、温度応答性の形状記憶性を有する。
【0036】
上記第1視点の好ましい形態によれば、形状記憶性樹脂は可撓性を有する。
【0037】
上記第2視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具は、支持体をさらに備える。形状記憶性樹脂は支持体に含浸及び/又は被覆されている。
【0038】
上記第2視点の好ましい形態によれば、支持体は伸縮性を有する。
【0039】
上記第2視点の好ましい形態によれば、支持体は、不織布、織物、編物、タフト、フエルト、縮絨、紙、及び含水材のうちの少なくとも1つである。
【0040】
上記第2視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具はシート形状を有する。
【0041】
上記第2視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具は、皮膚の面形状に沿った形状を有する。
【0042】
上記第2視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具は、顔の少なくとも一部に沿った形状を有する。
【0043】
上記第2視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具は、美容用品、化粧用品、及び治療用品のうちの少なくとも1つである。
【0044】
上記第2視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具は、皮膚外用剤をさらに含む。
【0045】
上記第3視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具の製造方法は、ポリマーを作製する前に混合物を型に入れる工程をさらに含む。
【0046】
上記第3視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具の製造方法は、型に支持体を入れる工程をさらに含む。型において、混合物を支持体に含浸及び/又は被覆させた状態でポリマーを作製する。
【0047】
上記第3視点の好ましい形態によれば、支持体は伸縮性を有する。
【0048】
上記第3視点の好ましい形態によれば、支持体は、不織布、織物、編物、タフト、フエルト、縮絨、紙、及び含水材のうちの少なくとも1つである。
【0049】
上記第3視点の好ましい形態によれば、型は顔の一部の形状を有する。
【0050】
上記第3視点の好ましい形態によれば、混合物と型との間に剥離シートを介在させる。
【0051】
上記第3視点の好ましい形態によれば、剥離シートはポリテトラフルオロエチレンシートである。
【0052】
上記第3視点の好ましい形態によれば、皮膚外用具をシート状に形成する。
【0053】
上記第3視点の好ましい形態によれば、アクリル酸エステルは、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びアクリル酸ブチルのうちの少なくとも1つを含む。
【0054】
上記第3視点の好ましい形態によれば、アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルの総量に対して、40mol%~100mol%のアクリル酸ステアリルと、0mol%~60mol%のアクリル酸ラウリルと、を含む。
【0055】
上記第3視点の好ましい形態によれば、N-アルキルアクリルアミドは、N,N-ジメチルアクリルアミドを含む。
【0056】
上記第3視点の好ましい形態によれば、架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミドを含む。
【0057】
本開示の第1実施形態に係る形状記憶性樹脂について説明する。以下の説明においては、ポリマーについてモノマー単位で説明してある。
【0058】
本開示の形状記憶性樹脂は、N-アルキルアクリルアミド成分と、アクリル酸エステル成分と、架橋成分と、を含むポリマーを含む。
【0059】
[N-アルキルアクリルアミド成分]
N-アルキルアクリルアミド成分としては、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド成分を挙げることができる。N,N-ジメチルアクリルアミド成分は、N-アルキルアクリルアミド成分の総量に対して、90mol%以上、95mol%以上、又は100mol%とすることができる。
【0060】
N-アルキルアクリルアミド成分は、ポリマーにおける成分の総量に対して、64mol%以上であると好ましく、70mol%以上であるとより好ましい。N-アルキルアクリルアミド成分が64mol%未満であると、形状記憶性が低下してしまう。N-アルキルアクリルアミド成分は、ポリマーにおける成分の総量に対して、85mol%以下であると好ましく、80mol%以下であるとより好ましい。N-アルキルアクリルアミド成分が85mol%を超えると、形状記憶性が低下してしまう。
【0061】
[アクリル酸エステル成分]
アクリル酸エステル成分は、下記に示す構造を有することができる。化に示す化学式において、Rは、水素又は炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基である。Rは、炭素数10~20のアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。
【0062】
【化3】
【0063】
アクリル酸エステル成分としては、例えば、アクリル酸ステアリル成分、アクリル酸ラウリル成分、アクリル酸2-エチルヘキシル成分、及びアクリル酸ブチル成分のうちの少なくとも1つを挙げることができる。アクリル酸ステアリル成分、アクリル酸ラウリル成分、アクリル酸2-エチルヘキシル成分、及びアクリル酸ブチル成分の総量は、アクリル酸エステル成分の総量に対して、90mol%以上、95mol%以上、又は100mol%とすることができる。
【0064】
例えば、アクリル酸エステル成分は、アクリル酸ステアリル成分及びアクリル酸ラウリル成分を含むことができる。この場合、アクリル酸ステアリル成分は、アクリル酸エステル成分の総量に対して、例えば、40mol%以上、50mol%以上、60mol%以上、又は65mol%以上とすることができる。アクリル酸ステアリル成分は、アクリル酸エステル成分の総量に対して、例えば、100mol以下、95mol以下、85mol%以下、又は75mol%以下とすることができる。アクリル酸ラウリル成分は、アクリル酸エステル成分の総量に対して、例えば、5mol%以上、15mol%以上、又は25mol%以上とすることができる。アクリル酸ラウリル成分は、アクリル酸エステル成分の総量に対して、例えば、60mol以下、50mol%以下、又は40mol%以下とすることができる。アクリル酸ステアリル成分は、ガラス転移温度(Tg)を高める作用を有する。アクリル酸ラウリルはガラス転移温度を低下させる作用を有する。アクリル酸ステアリル成分及びアクリル酸ラウリル成分を混合させることによって、形状回復する収縮温度を調整することができる。
【0065】
アクリル酸エステル成分は、アクリル酸ステアリル成分及びアクリル酸ラウリル成分を含む場合、アクリル酸ステアリル成分とアクリル酸ラウリル成分のモル比は、アクリル酸ラウリル成分1molに対して、アクリル酸ステアリル成分が、1mol以上、1.5mol以上、又は2mol以上とすることができる。アクリル酸ラウリル成分1molに対して、アクリル酸ステアリル成分が、4mol以下、3.5mol以下、又は3mol以下とすることができる。
【0066】
アクリル酸エステル成分は、ポリマーにおける成分の総量に対して、14mol%以上であると好ましく、20mol%以上であるとより好ましい。アクリル酸エステル成分が14mol%未満であると、形状記憶性が低下してしまう。アクリル酸エステル成分は、ポリマーにおける成分の総量に対して、35mol%以下であると好ましく、30mol%以下であるとより好ましい。アクリル酸エステル成分が35mol%を超えると、形状記憶性が低下してしまう。
【0067】
[架橋成分]
架橋成分としては、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド成分を挙げることができる。
【0068】
架橋成分は、ポリマーにおける成分の総量に対して、0.01mol%以上、0.03mol%以上、0.05mol%以上、0.1mol%以上、0.3mol%以上、0.7mol%以上、1mol%以上、1.5mol%以上、2mol%以上、2.5mol%以上、3mol%以上、3.5mol%以上、又は4mol%以上とすることができる。架橋成分は、ポリマーにおける成分の総量に対して、6mol%以下、5mol%以下、4mol%以下、3mol%以下、2mol%以下、1mol%以下、0.8mol%以下、0.5mol%以下、0.2mol%以下、0.1mol%以下、又は0.08mol%以下とすることができる。架橋成分の含有率によって、平均ひずみ、ヤング率、及び引張強度を調整することができる。また、架橋成分を少なくすることによって、形状記憶状態の室温における経時安定性を高めることができる。
【0069】
[重合開始剤]
本開示の形状記憶性樹脂は、さらに重合開始剤を含むことができる。重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,2’-アゾビス(イソブチロニトレイト)成分、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナマイジン)ジヒドロクロライド成分、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)成分、2,2’-アゾビス(イソ酪酸ジメチル)成分のうちの少なくとも1つを挙げることができる。
【0070】
重合開始剤は、形状記憶性樹脂における各成分の総量に対して、0.02mol%以上、又は0.05mol%以上とすることができる。重合開始剤は、形状記憶性樹脂における各成分の総量に対して、0.2mol%以下、又は0.15mol%以下とすることができる。
【0071】
[含水性]
本開示の形状記憶性樹脂は、水をさらに含むことができる。水の含有率は、形状記憶性樹脂の質量に対して、例えば、2質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上、又は30質量%以上とすることができる。また、水の含有率は、形状記憶性樹脂の質量に対して、例えば、40質量%以下、30質量%以下、20質量%以下、10質量%以下、8質量%以下、又は7質量%以下とすることができる。
【0072】
[その他]
本開示の形状記憶性樹脂には、用途及び成形目的に応じて、皮膚外用剤、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料等の各種添加剤を便宜配合することができる。また、これらの添加剤成分は、重合反応工程、加工・成形工程のいずれの工程においても配合してよい。肌に適用する形状記憶性樹脂である場合には、形状記憶性樹脂は、皮膚外用剤として、例えば、保湿剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、アミノ酸、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、香料等のうちの少なくとも1つを含有することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、皮膚外用剤を水溶液の形態で含むことができる。
【0073】
本開示の形状記憶性樹脂は、アルコールを含むことができる。アルコールとしては、例えば、低級アルコール、多価アルコールを挙げることができる。多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコールを挙げることができる。ポリエチレングリコールの含有率は、例えば、形状記憶性樹脂のモノマーの総量に対して、0.001mol%以上、又は0.002mol%以上とすることができる。ポリエチレングリコールの含有率は、例えば、形状記憶性樹脂のモノマーの総量に対して、0.004mol%以下、又は0.003mol%以下とすることができる。
【0074】
本開示の形状記憶性樹脂は、例えば、シート形状を有することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、用途及び目的に応じた厚さを有することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、例えば、0.8mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、2.5mm以上、又は3mm以上の厚さを有することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、例えば、4mm以下、3.5mm以下、3mm以下、2.5mm以下、2mm以下、又は1.5mm以下の厚さを有することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、肌の面に沿った形状、例えば顔の少なくとも一部に沿った形状を有することができる。
【0075】
[物性・特性]
本開示の形状記憶性樹脂は以下のような物性ないし特性を有することができる。
【0076】
本開示の形状記憶性樹脂は、透明性又は半透明性を有することができる。
【0077】
本開示の形状記憶性樹脂は、50%以上、80%以上、100%以上、150%以上、200%以上、300%以上、400%以上、500%以上、又は600以上の破断時の平均ひずみを有することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、1000%以下、900%以下、800%以下、700%以下、600%以下、500%以下、400%以下、300%以下、200%以下、又は150%以下、の破断時の平均ひずみを有することができる。破断時の平均ひずみは、JISK6251に準拠して測定することができる。平均ひずみは架橋剤の添加量によって調整することができる。平均ひずみを大きくすることによって、形状回復による収縮効果を高めることができる。
【0078】
本開示の形状記憶性樹脂は、0.01MPa以上、0.1MPa以上、1MPa以上、2MPa以上、5MPa以上、又は10MPa以上のヤング率を有することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、20MPa以下、10MPa以下、5MPa以下、1MPa以下、0.5MPa以下、又は0.1MPa以下のヤング率を有することができる。ヤング率は、JISK6251に準拠して測定することができる。ヤング率は架橋剤の添加量によって調整することができる。ヤング率を大きくすることによって、形状回復時の収縮力を高めることができる。
【0079】
本開示の形状記憶性樹脂は、0.5MPa以上、1MPa以上、2MPa以上、3MPa以上、5MPa以上、又は7MPa以上の破断時の引張強度を有することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、15MPa以下、10MPa以下、8MPa以下、5MPa以下、又は3MPa以下の破断時の引張強度を有することができる。破断時の引張強度は、JISK6251に準拠して測定することができる。
【0080】
本開示の形状記憶性樹脂は、28℃~48℃に吸熱ピークを有する。
【0081】
[形状記憶性]
本開示の形状記憶性樹脂の形状記憶性及び本開示の形状記憶性樹脂の使用方法(形状記憶性の発現方法)について説明する。
【0082】
本開示の形状記憶性樹脂は、形状記憶性を有する。特に、本開示の樹脂組成は、温度応答性(温度依存性)の形状記憶性を有する。例えば、本開示の形状記憶性樹脂は、人の体温で元の形状への変形を誘起させることができる。
【0083】
まず、シート形状を有する形状記憶性樹脂を変形可能な温度まで加熱する。例えば、形状記憶性樹脂をガラス転移温度以上、融点以下の温度に加熱する。加熱温度は、例えば、50℃以上であると好ましい。また、加熱温度は70℃以下であると好ましい。
【0084】
次に、軟化した形状記憶性樹脂を破断しない程度に伸長させる。形状記憶性樹脂は、例えば、元の長さに対して、一方向に1.2倍以上、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、又は5倍以上に伸長させることができる。また、形状記憶性樹脂を伸長させる程度は、例えば、元の長さに対して、一方向に10倍以下であると好ましい。
【0085】
伸長方向は、一軸方向に限定されない。例えば、面方向(二軸方向)に形状記憶性樹脂を拡張させることができる。面方向に形状記憶性樹脂を拡張させる場合、元の面積に対して、1.5倍以上、2倍以上、3倍以上、又は5倍以上に拡張させることができる。また、形状記憶性樹脂を拡張させる程度は、例えば、元の面積に対して、10倍以下であると好ましい。
【0086】
次に、形状記憶性樹脂を伸長又は拡張させた状態で冷却する。例えば、形状記憶性樹脂を10℃以下、好ましくは5℃以下又は0℃以下に冷却する。これにより、形状記憶性樹脂は、伸長又は拡張させた状態に成形され、元の形状が記憶された状態となる。伸長又は拡張された状態に固定されたら、形状記憶性樹脂を室温(好ましくは25℃以下)まで戻す。
【0087】
形状記憶性を発現させるためには、形状記憶性樹脂を加温する。例えば、形状記憶性樹脂を30℃以上に加温すると好ましい。また、加温温度は、45℃以下、好ましくは40℃以下であると好ましい。例えば、形状記憶性樹脂は人の体温で温めることができる。これにより、形状記憶性樹脂は、元の形状へと収縮する。例えば、形状記憶性樹脂は、収縮前の長さに対して、伸長させた軸方向に20%~30%収縮することができる。また、形状記憶性樹脂は、収縮前の面積に対して、20%~60%収縮することができる。
【0088】
本開示の形状記憶性樹脂は以下のような形状記憶性を発現する形状記憶性樹脂であることができる。形状記憶性樹脂は、上記組成を有するもの及び/又は後述の製造方法で製造されたものとすることができる。
【0089】
長さ20mm、幅10mm及び厚さ1mmの形状記憶性樹脂のシートを準備する(第1のステップ)。第1のステップ後、シートを50℃~70℃に加熱して、形状記憶性樹脂を軟化させる(第2のステップ)。第2のステップによる軟化状態において、元の長さの1.5倍までシートを長さ方向に伸長させる(第3のステップ)。第3のステップにおいて伸長させた状態でシートを0℃まで冷却する(第4のステップ)。第4のステップ後、シートを25℃以下の室温に静置する(第5のステップ)。静置後、シートは26mm以上の長さを有する。第5のステップ後、シートを32℃~45℃に加熱する(第6のステップ)。第6ステップにおいてシートは収縮する。収縮後、シートは24mm以下の長さを有することができる。
【0090】
形状記憶性樹脂の復元後(収縮後)の長さは、伸長前の元の長さに対して、130%以下であると好ましく、120%以下であるとより好ましく、110%以下であるとさらに好ましい。
【0091】
本開示の形状記憶性樹脂によれば、樹脂に形状を記憶させることができる。形状の復元は加熱で発現させることができる。特に、人の体温によって形状を復元させることができる。これにより、本開示の形状記憶性樹脂は、人の肌に適用することによって変形させることができる。
【0092】
本開示の形状記憶性樹脂は、形状記憶状態を保持する高い形状記憶性を有している。これにより、形状記憶性樹脂を形状記憶させた状態(変形前の伸長状態)で長期間保管することができる。
【0093】
本開示の形状記憶性樹脂は含水性を有する。これにより、本開示の形状記憶性樹脂に美容成分等の皮膚外用成分を保持させることができる。
【0094】
本開示の形状記憶性樹脂は、例えば、美容製品、化粧製品、医療製品(治療製品)、衣料製品、靴製品等に適用することができる。本開示の形状記憶性樹脂は、例えばマスクに適用することができる。
【0095】
本開示の形状記憶性樹脂の製造方法について説明する。
【0096】
本開示の形状記憶性樹脂は、N-アルキルアクリルアミド、アクリル酸エステル、及び架橋剤を含むモノマーと、重合開始剤と、を混合し、モノマーを重合させることによって製造することができる。
【0097】
N-アルキルアクリルアミドは、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミドとすることができる。
【0098】
アクリル酸エステルは、例えば、下記化に示される構造を有する化合物とすることができる。化に示す化学式において、Rは、水素又は炭素数1~4のアルキル基、アルケニル基もしくはアシル基であり、Rは、炭素数10~20のアルキル基、アルケニル基、又はアシル基である。
【0099】
アクリル酸エステルは、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2-エチルヘキシル、及びアクリル酸ブチルのうちの少なくとも1つを使用することができる。特に、アクリル酸エステルは、アクリル酸ステアリル及び/又はアクリル酸ラウリルとすることができる。
【0100】
【化4】
【0101】
架橋剤は、例えば、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、2,2’-アゾビス(イソブチロニトレイト)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナマイジン)ジヒドロクロライド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、及び2,2’-アゾビス(イソ酪酸ジメチル)のうちの少なくとも1つを使用することができる。
【0102】
重合開始剤は、例えば、ベンゾフェノン、2,2’-アゾビス(イソブチロニトレイト)成分、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオナマイジン)ジヒドロクロライド成分、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)成分、2,2’-アゾビス(イソ酪酸ジメチル)成分のうちの少なくとも1つを使用することができる。
【0103】
上記モノマー及び重合開始剤の添加割合は、第1実施形態において説明した各成分の含有割合と同等とすることができる。
【0104】
本開示の形状記憶樹脂は、上記モノマーを公知の方法で重合させることによって製造することができる。
【0105】
形状記憶樹脂は、公知の方法でシート状に成形することができる。
【0106】
本開示の第2実施形態に係る皮膚外用具について説明する。
【0107】
本開示の皮膚外用具は、第1実施形態に係る形状記憶性樹脂を有する。
【0108】
本開示の皮膚外用具は、形状記憶性樹脂を支持する支持体をさらに有することができる。支持体は、形状記憶性樹脂を担持するための担持体として作用することもできる。
【0109】
支持体は、多孔性、含水性、伸縮性、及び可撓性のうちの少なくとも1つを有することができる。
【0110】
支持体は、例えば、不織布、織物、編物、タフト、フエルト、縮絨、紙、及び含水材のうちの少なくとも1つとすることができる。
【0111】
支持体は、例えば、シート形状を有することができる。支持体は、例えば、肌面に沿った形状を有することができる。支持体は、例えば、顔の少なくとも一部に沿った形状を有することができる。
【0112】
支持体は、例えば、0.5μm以上、1μm以上、5μm以上、10μm以上、20μm以上、50μm以上、100μm以上、200μm以上、500μm以上、1mm以上、又は2mm以上の厚さを有することができる。支持体は、例えば、5mm以下、2mm以下、1mm以下、500μm以下、200μm以下、100μm以下、50μm以下、又は10μm以下の厚さを有することができる。
【0113】
形状記憶性樹脂は、支持体の少なくとも一部に含浸されることができる。形状記憶性樹脂は、支持体の少なくとも一部に被覆ないし積層されていてもよい。形状記憶性樹脂は、支持体の片面に被覆・積層されていてもよいし、両面に被覆・積層されていてもよい。支持体は、形状記憶性樹脂の変形に合わせて変形可能であると好ましい。
【0114】
本開示の皮膚外用具は、皮膚外用成分をさらに含むことができる。皮膚外用成分は、形状記憶性樹脂及び/又は支持体に含まれることができる。皮膚外用成分は、以下に挙げる成分を含有する水性組成物、乳化型組成物、又は油性組成物とすることができる。皮膚外用成分は、例えば、化粧成分及び/又は美容成分とすることができる。皮膚外用成分としては、例えば、保湿剤、皮膚栄養剤、ビタミン類、消炎剤、美白剤、各種抽出物、血行促進剤、抗脂漏剤、抗炎症剤、pH調整剤、香料、治療薬等を挙げることができる。
【0115】
本開示の皮膚外用具によれば、第1実施形態に係る形状記憶性樹脂を肌に適用しやすくすることができる。また、皮膚外用成分を皮膚に適用しやすくすることができる。さらに、形状記憶性樹脂の変形を肌に伝達させやすくすることができる。
【0116】
第2実施形態に係る皮膚外用具の製造方法について説明する。以下においては、支持体に形状記憶性樹脂を含浸させた皮膚外用具の製造方法の一例について説明する。
【0117】
まず、皮膚外用具を成形するための型を準備する。型は、例えば、肌の一部の形状を有することができる。例えば、型は、顔の少なくとも一部の形状を有することができる。
【0118】
次に、型に、上述のモノマーと、重合開始剤と、支持体と、を入れる。モノマー及び重合開始剤は、上述と同様とすることができる。支持体は、上述と同様とすることができる。
【0119】
型と、モノマー及び/又は支持体との間に、皮膚外用具を型から容易に取り外せるようにするための剥離シートを介在させてもよい。剥離シートとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレンシートを使用することができる。
【0120】
次に、モノマーを重合させることによって、型の形状を有すると共に、支持体に形状記憶性樹脂が含浸及び/又は積層された皮膚外用具を作製することができる。
【0121】
上記においては、型にモノマーを入れたが、既に作成された形状記憶性樹脂と支持体とを型にいれて、ガラス転移温度又は融点以上に形状記憶性樹脂を加熱して、形状記憶性樹脂を支持体に含浸又は被覆もしくは積層させてもよい。
【0122】
次に、美容成分等の皮膚外用成分を含ませる場合には、皮膚外用成分を含む液体を皮膚外用具に含浸させることができる。
【0123】
次に、皮膚外用具の使用方法について説明する。
【0124】
皮膚外用具の使用方法は、上述の形状記憶性樹脂の使用方法と同様である。形状記憶性樹脂に元の形状を記憶させた後、皮膚外用具を所望の肌に貼り付ける。そして、体温で形状記憶性樹脂を変形させて、肌に変形力を作用させることができる。
【0125】
本開示の皮膚外用具は、例えば、美容製品、化粧製品、医療製品(治療製品)、衣料製品、靴製品等に適用することができる。本開示の皮膚外用具は、例えばマスクに適用することができる。
【0126】
本開示の形状記憶性樹脂及び皮膚外用具には、本開示の製造方法によって得られる形状記憶性樹脂及び皮膚外用具も含まれ得る。本開示の形状記憶性樹脂及び皮膚外用具における上述以外の特徴は、本開示形状記憶性樹脂及び皮膚外用具の組成、構造又は特性により直接特定することが困難なものもある。そのような場合には、本開示の形状記憶性樹脂及び皮膚外用具は、製造方法によって特定することが許されるべきものである。
【実施例
【0127】
本開示の形状記憶性樹脂について、以下に例を挙げて説明する。しかしながら、本開示の形状記憶性樹脂は以下の例に限定されるものではない。
【0128】
[試験例1~7]
組成の異なる形状記憶性樹脂を作製し、各形状記憶性樹脂の物性を測定した。表1に、作製した形状記憶性樹脂の原料の配合割合を示す。配合割合は、形状記憶性樹脂の組成と同じとみなすことができる。表1に示すモノマー、架橋剤及び開始剤の配合割合は、モノマー、架橋剤及び開始剤の総量に対する割合である。
【0129】
各組成物について、破断時の平均ひずみ、ヤング率、破断時の引張強度、経時安定性及び形状記憶性を測定した。破断時の平均ひずみ、ヤング率、及び破断時の引張強度は、JISK6251に準拠し、7号形ダンベル状試験片の両端を引張試験機で100mm/分の速度で引っ張って測定した。破断時の平均ひずみ及び引張強度は、破断した際の数値である。
【0130】
伸長性は、JISK6251の7号形ダンベル状試験片を室温で一方向に荷重を掛けて伸び率を測定し、以下の基準で評価した。
A:伸長度が、元の長さに対して200%以上であった;
B:伸長度が、元の長さに対して200%未満であった。
【0131】
経時安定性は、長さ20mm、幅10mm、厚さ1mmの試験片を50℃まで加熱して軟化させた後、元の長さの2倍(200%)まで一軸方向(長さ方向)に伸長させた。次に、伸長させた状態で試験片を0℃で冷却して、伸長状態を固定した。伸長状態の試験片を5℃の恒温槽の24時間静置し、どの程度収縮するかを以下の基準で評価した。25℃における経時安定性についても同様に試験した。経時安定性は、試験例3及び4の樹脂について試験した。試験例3の樹脂については厚さ2mmの試験片についても同様に経時安定性を確認した。
A:24時間静置後の長さは、元の長さに対して190%以上であった;
B:24時間静置後の長さは、元の長さに対して160%以上190%未満であった;
C:24時間静置後の長さは、元の長さに対して130%以上160%未満であった。
【0132】
形状記憶性については、まず、長さ20mm、幅10mm、厚さ1mmの試験片を50℃まで加熱して軟化させた後、元の長さの1.5倍(150%)まで一軸方向(長さ方向)に伸長させた。次に、伸長させた状態で試験片を0℃で冷却して、伸長状態を固定した。次に、伸長状態の試験片を40℃まで加熱し、収縮させた。元の長さに対してどの程度まで収縮したか(形状回復したか)を以下の基準で評価した。
A:形状回復後の長さは、元の長さの100%よりも長く、110%以下であった;
B:形状回復後の長さは、元の長さの110%よりも長く、120%以下であった;
C:形状回復後の長さは、元の長さの120%よりも長かった。
【0133】
表2に、測定結果を示す。平均ひずみ、ヤング率、及び引張強度は、それぞれ、5回測定した平均値である。
【0134】
表1に示す合成後の含水率は、形状記憶性樹脂を合成後、常温静置状態における含水率である。また、飽和含水率は、形状記憶性樹脂を純水に常温で2日間以上浸漬し、重さが一定になった飽和状態(平衡膨潤状態)における含水率である。含水率は、電子式水分計(島津製作所製MOC-120H)を用いて測定した。試験例4~6においては、含水率は測定していない。
【0135】
N,N-ジメチルアクリルアミドとアクリル酸ステアリルから形状記憶性樹脂を作製することができた。また、アクリル酸ラウリルをさらに添加しても形状記憶性樹脂を作製することができることも分かった。試験例1~6のいずれの樹脂も人間の体温付近における十分な形状記憶性を有することを確認することができた。
【0136】
架橋剤の添加量を多くすると、平均ひずみは低下するが、ヤング率が上昇する傾向が見られた。表2に示す物性によれば、試験例1~6の形状記憶性樹脂は、いずれも、肌に貼り付けて形状回復させた際にその変形によって肌に有意な力を作用させることができることが分かった。
【0137】
N,N-ジメチルアクリルアミド成分とアクリル酸ステアリル成分に加えてアクリル酸ラウリル成分を構成単位として有すると共に、架橋剤が0.01モル%~1モル%以下である試験例3及び4においては他の試験例よりも伸長性を高めることができた。なお、伸長性のB評価である試験例1、2、5及び6においても、少なくとも1.5倍までは伸長可能であり、上述のように形状記憶樹脂として利用可能な十分な伸長性は有している。
【0138】
形状記憶状態(伸長状態)の形状記憶性樹脂を低温(5℃)で保管すると、樹脂はほとんど収縮しないことが確認された。体温により近い温度における保管においては、ある程度の収縮が確認されたが、形状記憶性樹脂は、形状記憶樹脂として十分に使用可能な状態であった。これより、本開示の形状記憶性樹脂は、形状記憶状態(伸長状態)における経時安定性を有していることが確認できた。試験片の厚さ1mmと2mmでは、経時安定性は同等であることが確認された。また、経時安定性を高めるためには、架橋剤添加量を少なくする、例えば、0.2モル%以下、好ましくは0.1モル%以下にすると好ましいと考えられる。
【0139】
含水率は、組成に依存せず、ほぼ一定であった。合成後の形状記憶性樹脂の含水率は、4質量%~7質量%であった。また、飽和状態の含水率は、30質量%~35質量%であった。水の浸漬時間によって含水率は調整可能であると考えられる。形状記憶性樹脂に含水性があるので、形状記憶性樹脂自体に皮膚外用成分の水溶液等を保持させることができる。
【0140】
試験例1~6の形状記憶性樹脂は、いずれも半透明であった。
【0141】
【表1】

【0142】
【表2】

【0143】
本発明の形状記憶性樹脂、皮膚外用具、及びこれらの製造方法は、上記実施形態及び実施例に基づいて説明されているが、上記実施形態及び実施例に限定されることなく、本発明の範囲内において、かつ本発明の基本的技術思想に基づいて、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の請求の範囲の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【0144】
本発明のさらなる課題、目的及び形態(変更形態含む)は、請求の範囲を含む本発明の全開示事項からも明らかにされる。
【0145】
本書に記載した数値範囲については、別段の記載のない場合であっても、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし範囲が本書に具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0146】
上記実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下の記載には限定されない。各付記は、特許請求の範囲に記載の各請求項と組み合わせることもできる。
【0147】
[付記1]
シート形状を有し、
30℃以下の温度から32℃~45℃に加熱したとき、加熱前の長さの80%以下の長さに収縮する、形状記憶性樹脂。
【0148】
[付記2]
平板形状を有する前記形状記憶性樹脂のシートを32℃~45℃に加熱したとき、肌の一部の形状を有するように変形する、形状記憶性樹脂。
【0149】
[付記3]
長さ20mm、幅10mm及び厚さ1mmの前記形状記憶性樹脂のシートを準備する第1のステップと、
前記第1のステップ後、前記シートを50℃~70℃に加熱する第2のステップと、
前記第2のステップによる軟化状態において、元の長さの1.5倍まで前記シートを前記長さ方向に伸長させる第3のステップと、
前記第3のステップにおいて伸長させた状態で前記シートを0℃まで冷却する第4のステップと、
第4のステップ後、前記シートを25℃以下の室温に静置する第5のステップと、
を経たとき、前記シートは26mm以上の長さを有し、
前記5のステップ後、前記シートを32℃~45℃に加熱する第6のステップを経たとき、前記シートは収縮する、形状記憶性樹脂。
【0150】
[付記4]
前記第6のステップ後、前記シートは24mm以下の長さを有する、付記に記載の形状記憶性樹脂。
【0151】
[付記5]
前記形状記憶性樹脂を作製後、室温の空気中に静置した状態にある前記形状記憶性樹脂の含水率は、前記形状記憶性樹脂の質量に対して2質量%~8質量%である、付記に記載の形状記憶性樹脂。
【0152】
[付記6]
前記形状記憶性樹脂の飽和含水率は、前記形状記憶性樹脂の質量に対して25質量%~40質量%である、付記に記載の形状記憶性樹脂。
【0153】
[付記7]
28℃~48℃に吸熱ピークを有する、付記に記載の形状記憶性樹脂。
【0154】
[付記8]
皮膚外用剤を含む水溶液をさらに含有する、付記に記載の形状記憶性樹脂。
【0155】
[付記9]
厚さ0.01mm~3mmのシート形状を有する、付記に記載の形状記憶性樹脂。
【0156】
[付記10]
肌の面形状に沿った形状を有する、付記に記載の形状記憶性樹脂。
【0157】
[付記11]
顔の一部に沿った形状を有する、付記に記載の形状記憶性樹脂。
【0158】
[付記12]
第1実施形態に係る形状記憶性樹脂及び/又は第2実施形態に係る皮膚外用具を肌に貼付する工程を含む、化粧方法及び/又は美容方法。
【0159】
[付記13]
前記形状記憶性樹脂及び/又は皮膚外用具を顔に貼り付ける、付記に記載の化粧方法及び/又は美容方法。
【0160】
[付記14]
肌に貼付した後、前記形状記憶性樹脂及び/又は皮膚外用具が肌上において体温で収縮する、付記に記載の化粧方法及び/又は美容方法。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本開示の形状記憶性樹脂、皮膚外用具、及び皮膚外用具の製造方法は、化粧用品、美容用品、治療用品に適用することができる。