(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】液冷式シリンダヘッド
(51)【国際特許分類】
F02F 1/00 20060101AFI20240924BHJP
F02F 1/24 20060101ALI20240924BHJP
F02F 1/36 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
F02F1/00 J
F02F1/24 F
F02F1/36 A
(21)【出願番号】P 2021542361
(86)(22)【出願日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 AT2020060020
(87)【国際公開番号】W WO2020150761
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-22
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AT
(73)【特許権者】
【識別番号】597083976
【氏名又は名称】アー・ファウ・エル・リスト・ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】AVL LIST GMBH
【住所又は居所原語表記】HANS-LIST-PLATZ 1,A-8020 GRAZ,AUSTRIA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】クランプファー,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ツルク,アンドレアス
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/042955(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0340703(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0356201(US,A1)
【文献】特開2000-230456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 1/00 ~ 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室に延在する構成要素(B)を有し、
上部冷却ジャケット(O)および下部冷却ジャケット(U)が設けられ、
複数のバルブが前記構成要素(B)の周りに配置されており、
シリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が設けられる液冷式シリンダヘッド(Z)であって、
各バルブガイド(V)から前記構成要素(B)への固定接続部が設けられ、そして少なくとも1つの支持部(11)を有するリング(10)として設計されており、ここで前記支持部(11)および前記リング(10)が、少なくとも、前記シリンダヘッド(Z)のオイルデッキ(9)から、前記燃焼室を区切るファイアデッキ(12)まで延在し、前記構成要素(B)が、前記シリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)に接続され
、
前記オイルデッキ(9)は、力を伝達するために前記支持部(11)の方向に先細りに延在し、結果として、前記オイルデッキ(9)が、前記構成要素(B)に対して、110°~144°の角度(a)を取り囲むことを特徴とする、液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項2】
前記シリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、前記バルブガイド(V)に間接的に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項3】
前記リング(10)が、前記構成要素(B)を半径方向に取り囲
むことを特徴とする、請求項1または2に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項4】
前記リング(10)が、前記支持部(11)と一体的に設計され、ここで前記リング(10)が、前記バルブガイド(V)の領域において前記支持部(11)に接続されることを特徴とする、請求項3に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項5】
前記支持部(11)が、前記シリンダヘッド(Z)のシリンダ軸芯と実質的に平行に形成されることを特徴とする、請求項1から
4のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項6】
前記支持部(11)が、前記上部冷却ジャケット(O)および/または前記下部冷却ジャケット(U)を少なくとも部分的に分離する仕切り壁として設計されることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項7】
前記オイルデッキ(9)が、前記構成要素(B)に対して
、120°~135°の角度(a)を取り囲むことを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項8】
壁(7)が、各2つのシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)間に設けられ
ることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項9】
前記各壁(7)が、少なくとも、前記シリンダヘッド(Z)のオイルデッキ(9)から、前記燃焼室を区切る前記ファイアデッキ(12)まで延在することを特徴とする、請求項8に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項10】
少なくとも1つのシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、少なくとも1つのリブ(8、15、16)を介して支持部(11)に接続され
ることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項11】
少なくとも2つの対向するシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、それぞれリブ(8、15、16)を介して支持部(11)に接続されることを特徴とする、請求項10に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項12】
前記リブ(8、15、16)が、2つのシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)をそれぞれ、力の
伝達のために前記壁(7)を経由して前記リング(10)に接続することを特徴とする、請求項8
から11のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項13】
3つのリブ(8、15、16)がそれぞれ、各2つのシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)の間に、前記シリンダ軸芯に沿って設けられていることを特徴とする、請求項
8から12のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項14】
少なくとも1つの支持部(11)が、吸気ポート壁(13e)および/または排気ポート壁(13a)を形成しているか、または前記吸気ポート壁(13e)および/または前記排気ポート壁(13a)に直接接続されていることを特徴とする、請求項1から1
3のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項15】
少なくとも1つの支持部(11)が、さらなるリブ(15)に直接接続され
ることを特徴とする、請求項1から1
4のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項16】
前記さらなるリブ(15)が、前記シリンダヘッド(Z)の中間デッキ(13)に配置されていることを特徴とする、請求項15に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項17】
シリンダブロックに接続するために、少なくとも4
本のシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、設けられていることを特徴とする、請求項1から1
6のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項18】
シリンダブロックに接続するために、少なくとも6本または8本のシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、設けられていることを特徴とする、請求項1から16のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項19】
前記シリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、実質的に共通のピッチ円(T)上に配置され、前記ピッチ円(T)の中心が、前記シリンダ軸芯の領域にあることを特徴とする、請求項
17または18に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項20】
前記シリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、前記ピッチ円(T)上に均一に配置されていることを特徴とする、請求項1
9に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項21】
少なくとも2つのシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、排気ポート壁(13a)に配置されていることを特徴とする、請求項1から
20のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項22】
少なくとも2つのシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、吸気ポート壁(13e)に配置されていることを特徴とする、請求項1から
21のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項23】
2つの吸気バルブおよび2つの排気バルブが設けられ、少なくとも2つのシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、吸気部(E)と排気部(A)との間の2つのバルブブリッジを相互に接続する軸芯(a)上に配置されていることを特徴とする、請求項1から
22のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【請求項24】
すべてのシリンダヘッドねじ(1、2、3、4、5、6;14)が、壁(7)で接続され、各壁(7)が、前記シリンダ軸芯に平行な平面に配置されていることを特徴とする、請求項1から
23のいずれか一項に記載の液冷式シリンダヘッド(Z)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼室に延在する構成要素を有する液冷式シリンダヘッドであって、上部冷却ジャケットおよび下部冷却ジャケットが設けられ、複数のバルブが前記構成要素の周りに配置されており、シリンダヘッドねじ(cylinder head screws)が設けられている、シリンダヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
このようなシリンダヘッドは、先行技術で周知である。前記構成要素は、スパークプラグ、燃料噴射用のインジェクタ、またはスパークプラグのもしくはインジェクタの受けスリーブであってもよい。前記バルブとしては、吸気バルブおよび排気バルブが挙げられる。先行技術のシリンダヘッドにおいて、前記シリンダヘッドねじおよび燃焼室内での燃料の爆発的燃焼により、前記シリンダヘッドに力が導入される。この力は、導入部で局所的にしかかからず、前記シリンダヘッドにおける変形につながる。これにより、シリンダヘッドガスケットがこれらの変形により損傷し、さらに漏れが発生する可能性がある。
【0003】
さらに、局所的に力が加わるため、バルブガイドも変形の影響を受けることが多く、これにより、時にはバルブ操作時の問題、バルブディスクへの不均一な負荷、および不均一な摩耗がもたらされる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、変形が減少するシリンダヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、各バルブガイドから前記構成要素への固定接続部が設けられ、これは、少なくとも1つの支持部を有するリングとして設計されており、ここで前記支持部および前記リングが、少なくとも、前記シリンダヘッドのオイルデッキから、前記燃焼室を区切るファイアデッキまで延在し、前記構成要素が、前記シリンダヘッドねじに接続されていることにおいて、本発明による上記のシリンダヘッドにより達成される。その結果、前記シリンダヘッドねじから生じる力は、前記オイルデッキおよび/または中間デッキおよび/またはファイアデッキを介して、前記支持部に均一に伝達される。このように前記シリンダヘッドにおける力を均一に分散させることで、変形が回避される。特に、前記シリンダヘッドねじと前記バルブガイドとは直接接続されない。本発明によれば、前記シリンダヘッドねじと前記バルブガイドとの間の機械的接続は間接的に行われ、結果として前記バルブガイドおよびそれによるバルブスラグが、前記シリンダヘッドねじから強制的に切り離されるか、または少なくとも実質的に切り離される。特に好ましくは、2つのシリンダヘッドねじはそれぞれ、2つのバルブガイドに間接的に接続される。
【0006】
有利なことに、前記シリンダヘッドねじは、前記バルブガイドに間接的に接続されている。前記支持部が前記構成要素に向かって配置されているため、力はバルブガイドを介して直接導入されるのではなく、前記バルブガイドを通過して前記構成要素に導入され、そこからさらに前記支持部に導入され、前記バルブガイドの領域で排気ポート壁および/または吸気ポート壁に導入される。これにより、前記バルブガイドの変形も軽減または完全に解消される。特に好ましくは、それぞれのシリンダヘッドねじは、それぞれのバルブガイドおよび前記構成要素と共通の直線上に存在しない。その結果、前記シリンダヘッドの断面におけるすべてのバルブガイドにより形成されるバルブスターと、前記シリンダヘッドの断面のすべてのシリンダヘッドねじにより形成されるシリンダヘッドスターは、互いにオフセットして配置されている。前記バルブスターへの前記シリンダヘッドスターのこの好ましい配置は、上述の力の導入にとって有利である。結果として、力が前記シリンダヘッドねじから前記バルブガイドに直接伝達されないことが、好ましい。
【0007】
本明細書での支持部は、力が伝達され得るシリンダヘッドの、ある領域を意味する。前記支持部およびリングが、オイルデッキからファイアデッキまで延在するという記載は、両方ともそれ自体でオイルデッキからファイアデッキまで延在している必要はなく、それらが一緒に連続していることを意味する。このように、示される実施形態では、リングが最初に前記オイルデッキから前記支持部まで延在し、前記支持部が前記リングから前記ファイアデッキまで延在する。本発明の文脈において、シリンダヘッドねじは、特にシリンダヘッドねじ込みソケットを意味するとも理解される。
【0008】
力は、好ましくは、リブを介して前記バルブガイドの間から前記リングに導入され、次いで垂直支持部に導入される。これにより、バルブガイドポイントは、力の導入から切り離される。これにより、前記バルブガイドに力が導入されるときに変形が大きくなるという欠点が、大幅に回避される。本発明によれば、前記シリンダヘッドねじから前記リブを介して前記リングに、次いで前記支持部を介して垂直方向に、力の接続が行われる。前記リブは、前記バルブガイド間の接続線に対して一つの平面内の前記バルブガイド間のバルブ補強リブにおいて配置される。
【0009】
前記リングが前記構成要素を半径方向に取り囲み、好ましくは前記支持部と一体的に設計され、ここで前記リングが特に前記バルブガイド領域で前記支持部に接続される構造が提供されると有利である。これにより、作用力を均一に吸収して分散させることが最適に可能になる。他の実施形態では、リングが連続的に形成されておらず、特に前記バルブガイドスラグの領域で前記支持部に接続されている円形のリング要素のみで構成されていることが提供される。
【0010】
前記支持部が、前記シリンダヘッドのシリンダ軸芯と実質的に平行に形成されると、変形の可能性や、またその後の前記支持部の座屈に対する安全性に関して、特に好ましい設計が得られる。
【0011】
冷却液の流速を増加させるために、前記上部冷却ジャケットおよび/または前記下部冷却ジャケットを少なくとも部分的に分離する仕切り壁として前記支持部を設計し、流れ断面積を小さくすると有利である。その結果、特に前記バルブおよび前記構成要素周辺の熱負荷がより高い領域における流速がより上がり、前記シリンダヘッドから前記冷却液への強制対流熱伝達が増加する。
【0012】
1つの好ましい実施形態では、前記オイルデッキは、力を導入するために前記支持部の方向に先細り形状になっており、結果として、前記オイルデッキは、前記構成要素に対して、90°を超える、好ましくは110°~144°、特に好ましくは120°~135°の角度を形成する構造が、提供される。その結果、力は、前記支持部に対してある角度で、前記シリンダヘッドねじから前記オイルデッキに沿って伝達される。並行して、前記シリンダヘッドにおける増厚部(thickning)に沿って、前記シリンダヘッドねじから前記中間デッキへ、そしてそこから前記構成要素周辺の前記支持部へと外から斜めに力がかかる。
【0013】
各2つのシリンダヘッドねじの間に壁が設けられ、各壁が特に、少なくとも前記シリンダヘッドの前記オイルデッキから前記燃焼室を区切る前記ファイアデッキまで延在していると有利である。これにより各壁は、2本のシリンダヘッドねじを相互に接続し、前記シリンダヘッドの安定性を高める。前記シリンダヘッドねじに作用する力および/または前記シリンダヘッドねじに起因する力は、前記シリンダヘッドねじから前記壁に伝達される。特に、各壁は、前記シリンダヘッドねじ同士を接続する。
【0014】
少なくとも1つのシリンダヘッドねじがリブを介して支持部に接続され、好ましくは、少なくとも2つの対向するシリンダヘッドねじが、それぞれリブを介して支持部に接続される場合、特に有利である。前記シリンダヘッドねじを前記リブに接続し、さらに中央領域における前記シリンダ軸芯に平行に配置された前記構成要素に接続することにより、かけられる力が前記ファイアデッキまで均等に広がり、高いピーク圧力が求められる場合に局所的な応力が軽減されることが可能となる。
【0015】
前記リブが、2本のシリンダヘッドねじを、動力伝達のために、前記壁を経由して前記リングに接続すると実用的である。これにより、力は、前記シリンダヘッドねじから前記壁を経由して前記リブに伝達され、最後に前記リングに伝達され、そしてそこから前記支持部に伝達される。前記リブは、好ましくは、前記壁に対してほぼ直角に配置され、前記壁を前記リングに接続する。前記リブがそれぞれバルブブリッジに配置されると有利である。前記シリンダヘッドの変形は、この設計とそれによって引き起こされる力経路によって少なくとも軽減される。個々のシリンダヘッドねじの力の接続は、前記壁と、前記リングにおける前記リブとを介して行われ、前記支持部を介して垂直方向に力が伝達される。
【0016】
それぞれ3つのリブが、各2つのシリンダヘッドねじの間に、前記シリンダ軸芯に沿って設けられていると、特に有利である。前記リブは、前記オイルデッキ、前記中間デッキ、および前記ファイアデッキに有利に配置されており、前記シリンダヘッドねじから前記リングへの力の伝達は、これら3つの平面において行われる。
【0017】
力の導入を改善するためには、前記オイルデッキが前記リブの領域で前記構成要素に向かって増加する壁の厚さを有すると有利であり、前記構成要素での壁の厚さは、平均的なオイルデッキの厚さに対する比率が1.5~6、好ましくは3~4、特に好ましくは約3.7である。
【0018】
少なくとも1つの支持部が、吸気ポート壁および/または排気ポート壁を形成しているか、または前記吸気ポート壁および/または前記排気ポート壁に直接接続されている場合、特に好ましい形状が得られる。さらに、これにより、力が前記シリンダヘッドからそらされるため、変形がさらに減少する。吸気ポート壁および/または排気ポート壁は、特に中間デッキの領域に配置されており、前記支持部は、好ましくはバルブガイドスラグの下でそれぞれの場合にポート壁に合流する。
【0019】
代替的にまたは追加的に、少なくとも1つの支持部がさらなるリブに直接接続され、このさらなるリブが特に前記シリンダヘッドの中間デッキに配置されていると有利であり得る。特に好ましくは、前記さらなるリブは、前記吸気ポート壁および/または前記排気ポート壁の領域で、またはその内部で直接的に、終端していない支持部に設けられる。したがって、前記中間デッキに力を伝達させるために、前記支持部が、前記吸気ポート壁および/または前記排気ポート壁と、さらにリブとの両方に接続されると有利である。特に、1つの支持部が前記吸気ポート壁に、1つの支持部が前記排気ポート壁に、2つの支持部がそれぞれさらなるリブに接続されている。
【0020】
シリンダブロックに接続するために、少なくとも4本、好ましくは6本または8本のシリンダヘッドが設けられている場合、前記シリンダヘッドにおける力の導入および力の分散に関して、特にシンプルで好ましい実施形態が、得られる。
【0021】
前記シリンダヘッドねじは、実質的に正方形、正六角形、正八角形の頂点に配置されている。
【0022】
この効果は、前記シリンダヘッドねじが実質的に共通のピッチ円上に配置され、前記ピッチ円の中心が前記シリンダ軸芯の領域にある場合、および/または前記シリンダヘッドねじがこのピッチ円上に均一に配置されている場合は、更に増大させることが可能である。
【0023】
少なくとも2つのシリンダヘッドねじが排気ポート壁に配置されている実施形態、および/または少なくとも2つのシリンダヘッドねじが吸気ポート壁に配置されている実施形態によって、前記シリンダヘッドにおける材料蓄積の厚さが薄い有利な形状が得られる。
【0024】
2つの吸気バルブと2つの排気バルブが設けられ、少なくとも2つのシリンダヘッドねじが、吸気部と排気部との間の2つのバルブブリッジを接続する軸上に配置されると便利である。本明細書中のバルブブリッジとは、第1排気バルブと第1吸気バルブ、第2排気バルブと第2吸気バルブとの間の材料の蓄積を意味する。この配置により、この2つのシリンダヘッドねじからの力が、前記バルブブリッジを経由して前記支持部に伝達される。
【0025】
すべてのシリンダヘッドねじが壁により接続され、各壁が前記シリンダ軸芯に平行な平面に配置されていると、特に有利である。これらの壁はシリンダ全体に延在し、前記シリンダヘッドねじからの力を前記シリンダヘッド内で特に均等に分散させることができる。
【0026】
前記シリンダヘッドねじの数が増え、均等に分散されるため、前記シリンダヘッド構造への局所的な力の導入が減少する。さらに、結果として生じる前記シリンダヘッドガスケットにかかる圧力は、前記接触面に、より均一に分散される。このようにして、局所的な変形および漏れが防止される。
【0027】
本発明は、図中の非制限的な実施形態を参照して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】第1実施形態の本発明による液冷式シリンダヘッドを、シリンダ軸芯を通る法平面に沿った断面図で示す。
【
図2】
図1に平行な断面における前記シリンダヘッドを示す。
【
図3】
図1によるIII-III線に沿った断面における前記シリンダヘッドを示す。
【
図4】
図3によるIV-IV線に沿った断面における前記シリンダヘッドを示す。
【
図5】
図3によるV-V線に沿った断面における前記シリンダヘッドを示す。
【
図6】
図3によるVI-VI線に沿った断面における前記シリンダヘッドを示す。
【
図7】
図3によるVII-VII線に沿った断面における前記シリンダヘッドを示す。
【
図8】第2実施形態における本発明によるシリンダヘッドを、
図2に類似した図で示す。
【
図9】第2実施形態における前記シリンダヘッドを、
図3に類似した断面で示す。
【
図10】第1実施形態における力曲線を模式的に示したシリンダヘッドの断面図を示す。
【
図11】第2実施形態における
図10に類似した断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1には、6本のシリンダヘッドねじ1~6によってシリンダブロック(図示されない)に連結されている、冷却されるシリンダヘッドZが示される。結果として得られる内燃エンジンは、シリンダを有する。前記シリンダヘッドねじ1~6間には壁7がある。すべてのシリンダヘッドねじ1~6は、いわゆるシリンダヘッドスター(cylinder head star)を形成する。
図1では、第1シリンダヘッドねじ1と第5シリンダヘッドねじ5との間、および第5シリンダヘッドねじ5から第3シリンダヘッドねじ3までの間に、壁7が見出され得る。さらに、第2シリンダヘッドねじ2と第6シリンダヘッドねじ6との間、および第6シリンダヘッドねじ6から第4シリンダヘッドねじ4までの間に、壁7が見出される。これらの壁7は、前記シリンダの軸芯と実質的に平行に配置されている。第3および第4シリンダヘッドねじ3、4の間に、吸気ポートEが配置されている。第1および第2シリンダヘッドねじ1、2の間に、排気ポートAが配置されている。また、
図2からわかるように、前記排気ポートAの上の領域の第1および第2シリンダヘッドねじ1、2の間、および吸気ポートE上の領域の第3および第4シリンダヘッドねじ3、4の間にもそれぞれ壁7が設けられていることがわかる。
図1では、参照記号Kを付した矢印が、この平面における力の分布を示している。
図2では、前記シリンダヘッドねじ1~6を頂点とする六角形に、この参照記号Kが割り当てられている。これは、シリンダヘッドねじ1~6の間の壁に沿った力の均等な分布を表している。
【0030】
シリンダヘッドねじ1~6で形成される六角形の中には、冷却液用の上部冷却ジャケット0、バルブガイドV、および構成要素Bが、見出され得る。4つのバルブガイドVが、構成要素Bの周りに均等に配置され、前記バルブガイドVのバルブガイドボアが、前記シリンダの軸芯に平行に配置されている。バルブガイドVは全部で、バルブスターを形成する。また、構成要素Bの回転軸芯は、前記シリンダの軸芯と平行に配置されている。前記バルブガイドVおよび構成要素Bは、支持部11を有するリング10を介して接続される。
【0031】
前記シリンダヘッドスターは、前記バルブスターに対してオフセットして配置されている、すなわち、
図1および
図2から明らかなように、前記シリンダヘッドねじ1~6は、バルブガイドVおよび構成要素Bと共通の直線上に位置していない。
【0032】
前記シリンダヘッドねじ1~6は、共通のピッチ円T上にあり、ほぼ同じ距離離間している。
【0033】
前記第1シリンダヘッドねじ1および第2シリンダヘッドねじ2は、それぞれ、前記排気ポート壁13aを介してバルブガイドVに接続され、さらに、前記支持部11を介して構成要素Bに接続されている。同様に、第3シリンダヘッドねじ3および第4シリンダヘッドねじ4は、それぞれ、前記吸気ポート壁13eを介してバルブガイドVに接続され、前記支持部11を介して構成要素Bに接続されている。
【0034】
第5および第6シリンダヘッドねじ5、6は、吸気部と排気部との間の前記2つのバルブブリッジを接続する軸芯に沿って配置されている。
図1では、前記バルブブリッジは、視認できない。
【0035】
図3は、この軸芯aに沿った断面を示しており、これは、
図1におけるIII-III線でも示される。それにおいて、リブ8が、第5シリンダヘッドねじ5および第6シリンダヘッドねじ6からオイルデッキ9における前記構成要素Bにつながっており、矢印Kに沿った力は、前記シリンダヘッドねじ5および6から前記リブ8を経由して前記構成要素Bに向かって導入され、前記支持部11を経由して下方に導入されることがわかる。前記リブ8は、構成要素Bの周囲の領域において厚さDを有しており、ここで前記リブ8は、リング10と合流し、これも厚さDに渡って延在する。
【0036】
前記リブ8は、前記オイルデッキ9の増厚部であり、前記オイルデッキ9は前記リブ8の領域において前記構成要素Bの回転軸芯に対して約135°である角度aを有する。前記リブ8は、上述の角度aに沿って前記壁7に対して円錐状に延びる。
【0037】
同様に、力は、ファイアデッキ12と中間デッキ13とに沿った矢印Kに沿って導入される。前記支持部11は、
図3の構成要素Bの隣に配置され、この断面では切断されておらず、上部冷却ジャケットOの壁の一部として見出され得る。前記上部冷却ジャケットOおよび下部冷却ジャケットUは、前記中間デッキ13によって互いに分離されている。
【0038】
前記リブは3つの面に設けられ、その結果、前記シリンダヘッドの3つの面において(前記オイルデッキ9、前記中間デッキ13および前記ファイアデッキ12において)、力が導入される。前記オイルデッキ9への力の導入用に設けられたリブには、引用符号8が付されている。前記中間デッキ13における力の導入用のリブには引用符号15が付され、前記ファイアデッキ12へのリブは、引用符号16を有する。
図4では、前記リブ8から前記支持部11への力経路Kが、示されている。前記オイルデッキ9は、前記リブ8の厚さDよりも小さい平均オイルデッキの厚さdを有する。
図5~
図7には、
図3に示すV-V線、VI線、VII-VII線に沿った断面が、示されている。
図5では、前記力経路Kが、前記リブ8から前記構成要素Bへと延び、そしてその周りを円状に回って前記支持部11へと延びているのが再びわかる。
図5での前記リブ8のうちの2つは、通路壁13aおよび13eにより形成されている。前記バルブのシートリングを冷却するために、シートリング冷却部Sが、設けられ、これは
図7においてわかる。このシートリング冷却部Sは、前記下部冷却ジャケットUの一部である。
【0039】
前記リブ8およびシリンダヘッドねじ1~6は、常に互いに対称に配置されている。
【0040】
6本または8本のねじを用いる実施形態では、その一部が前記吸気ポート壁13eまたは前記排気ポート壁13aに直接接続されているが、これは、4本のシリンダヘッドねじ14を用いる場合には当てはまらない。本発明によれば、前記リブ8が前記バルブガイドVに接続されていない構造が提供される。前記シリンダヘッドZに作用する力は、前記シリンダヘッドねじ1~6または14に伝達され、これらから前記リブ8に伝達され、その時初めてシリンダヘッドZ自体に伝達されるので、負荷がよりよく分散され、変形が回避される。前記シリンダヘッドねじ1~6または14への主な負荷は、前記バルブガイドVの周りに分散される。
【0041】
以下では、4本のシリンダヘッドねじ14を備える第2実施形態が、説明される。同一の機能を有する構成要素は、同じ参照符号を有し、違いについてのみが説明される。動作モードを理解するために、
図1~
図7の第1実施形態を参照する。
【0042】
図8には、シリンダヘッドZの第2実施形態が示されている。ここでは、4本のシリンダヘッドねじ14が、壁7を介して接続されている。力の導入Kは、前記リブ8に沿って前記壁7から実行される。
図9では、前記力の導入Kが断面図で示されている。
【0043】
図10および
図11は、本発明によるシリンダヘッドZの2つの基本的実施形態を示す。前記リング10は、前記構成要素Bの周りに配置され、リブ8を介してシリンダヘッドねじスラグおよびシリンダヘッドねじに接続されていることがわかる。
【0044】
さらに、垂直支持部11が前記通路壁13a、13eに合流することが可能な構造が提供される。通路壁13a、13bが設けられない場合、力Kを中間デッキZに向ける追加のリブ8、15、16が、設けられ得る。前記支持部11は、直接通路壁13a、13eに、部分的に接続される。