(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】紡績糸、紡績糸を生成する方法及び装置、ならびに紡績糸によって形成される製品
(51)【国際特許分類】
D02G 3/38 20060101AFI20240924BHJP
D01H 13/02 20060101ALI20240924BHJP
D02G 3/02 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
D02G3/38
D01H13/02
D02G3/02
(21)【出願番号】P 2021544778
(86)(22)【出願日】2020-01-30
(86)【国際出願番号】 NZ2020050003
(87)【国際公開番号】W WO2020159387
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-12-28
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NZ
(73)【特許権者】
【識別番号】521338709
【氏名又は名称】ティーエムシー リミティッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ワイン,アンドリュー ジョージ
【審査官】長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-058015(JP,A)
【文献】特開昭60-028528(JP,A)
【文献】特開平09-209226(JP,A)
【文献】特開平08-100341(JP,A)
【文献】特開2001-089945(JP,A)
【文献】中国実用新案第201056605(CN,Y)
【文献】米国特許第04903472(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/00-17/02
D02G1/00-3/48
D02J1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数の撚り糸を含む梳毛または準梳毛の80テックス未満の線密度の紡績糸であって、各撚り糸は、連続し
たコアと共に撚り合わされたアウターを含み、前記アウターは粗ウール繊維を含み、前記粗ウール繊維は、26ミクロンよりも大きい平均繊維径を有
し、前記粗ウール繊維は、ウールトップで100mmHauteur(mmH)以上の平均繊維長を有する、紡績糸。
【請求項2】
2つ以上の前記撚り糸を含む、請求項1に記載の紡績糸。
【請求項3】
互いに自動で撚り合わされる2つ以上の前記撚り糸を伴う自動撚り合わせの紡績糸であって、2つ以上の前記撚り糸は、s方向に撚り合わせる領域に対して交互にz方向に撚り合わせる領域を有し、撚り合わせの各領域間に撚り合わせない領域を有する、請求項2に記載の紡績糸。
【請求項4】
連続し
た前記コアは、前記紡績糸の少なくとも15重量%を構成する、請求項1~3のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項5】
80テックス未満の線密度の紡績糸であって、前記紡績糸は2つ以上の撚り糸を含み、各撚り糸は、連続し
たコアと共に撚り合わされたアウターを含み、前記アウターは粗ウール繊維を含み、前記粗ウール繊維は、26ミクロンよりも大きい平均繊維径を有
し、前記粗ウール繊維は、ウールトップで100mmHauteur(mmH)以上の平均繊維長を有する、紡績糸。
【請求項6】
60テックス未満の線密度を有する、請求項1~5のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項7】
25~60テックスの範囲の線密度を有する、請求項1~6のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項8】
前記粗ウール繊維は、30ミクロンよりも大きい平均繊維径を有する、請求項1~7のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項9】
前記粗ウール繊維は、30~40ミクロンの範囲の平均繊維径を有する、請求項1~8のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項10】
前記粗ウール繊維は、ウールトップで100mmHauteur(mmH)以上の平均繊維長を有する、請求項1~9のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項11】
前記粗ウール繊維は、ウールトップで110mmHauteur(mmH)以上の平均繊維長を有する、請求項1~10のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項12】
前記粗ウール繊維は、ウールトップで100~130mmHauteur(mmH)の範囲の平均繊維長を有する、請求項10に記載の紡績糸。
【請求項13】
前記アウターは、少なくとも10重量%の粗ウールを含む、請求項1~12のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項14】
連続し
た前記コアは、少なくとも1つの合成フィラメントを含む、請求項1~13のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項15】
前記合成フィラメントは、10~80デニールの範囲の厚さを有する、請求項14に記載の紡績糸。
【請求項16】
少なくとも1つの前記合成フィラメントは、ナイロンフィラメントまたはポリエステルフィラメントである、請求項14または15に記載の紡績糸。
【請求項17】
連続し
た前記コアは、天然繊維で形成された少なくとも1つのフィラメントまたは糸を含む、請求項1~13のうちいずれか一項に記載の紡績糸。
【請求項18】
天然繊維で形成された前記フィラメントまたは前記糸は、10~20テックスの範囲の厚さを有する、請求項17に記載の紡績糸。
【請求項19】
100%の天然繊維で形成される、請求項17または18に記載の紡績糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡績糸と、粗ウールを含む紡績糸及び生地を生成するための方法ならびに装置と、このような紡績糸から形成される製品と、に関する。
【背景技術】
【0002】
望ましい特性のため、及び石油系製品に関連付けられた望ましくない環境問題を避けるために、天然繊維を使用する要望が増加している。ウールは、温度、湿気、摩耗、滑り、香り、抗菌性、光反射、及び吸音の、好ましい特性を有する。特にアウトドア装備及びソックスに使用するための、改善された摩耗特徴を有するウール製衣服に対する要望が、一般的に存在する。
【0003】
粗ウール(クロスブレッドウールもしくはカーペットウール、またはニュージーランドにおけるストロングウールとしても知られている)は、本明細書で使用されるとき、約26ミクロンよりも大きい径を有するウールを指す。粗ウールは一般的に、室内装飾材料(粗ウールの良い等級)及びカーペット製造(粗ウールの低い等級)など、低い等級の用途にのみ好適であると考えられてきた。衣料に粗ウールを利用する試みが成されてきたが、粗ウールは厚くて心地が良くなく、洗濯の際に毛だらけになる。粗ウールの限定された低い用途価値のため、粗ウールは比較的低コスト繊維である。
【0004】
従来のリング精紡機は、ウールスライバから紡績糸を生成するため、及び径25ミクロン未満かつ90mmH(ミリメートルHauteur;当産業で使用される延長測定値)未満の延長を有する典型的な繊維を伴う、メリノウールなどの良質ウールを首尾よく処理するために、使用されている。このような機械は、(90mmHより)長い延長の繊維を良質な紡績糸に処理することができなかった。本出願人は、これは、良質な紡績糸の構成に必要な撚り合わせの程度を与えることが、長くて細い径の繊維を処理中に切断する傾向にあり得るためである、と考えている。さらに、長い繊維は、従来機械の送り込みローラ及び送り出しローラにおいて、同時に絡まる傾向があり得る。長い繊維を制御する際の他の課題は、得られた紡績糸の厚さに大きい変動をもたらし得ることである。より粗いカーペットの紡績糸は、撚り合わせの少ない、より粗くより長い繊維を用いた、(梳毛紡績処理とは反対の)紡毛紡績処理によって紡がれ得る。
【0005】
メリノウールから形成される製品は非常に人気がある一方で、メリノウールは高価で、特に耐摩耗性ではない。したがってメリノウールは、いくつかの用途に対して好適ではない。
【0006】
本出願人は、ニュージーランド国特許第552416号明細書、ニュージーランド国特許第522596号明細書、米国特許第8429889号明細書、米国特許第7752832号明細書、国際公開第2004044290号、国際公開第2008079025号で開示されたような、自動撚り合わせで紡績糸を生成するための方法(本明細書では「ニューヤーン法」と称する)、及び装置(本明細書では「ニューヤーン機」と称する)の特許を受けた。これら各々の開示は、本開示に参照として組み込まれている。ニューヤーン機及びニューヤーン法は、自動撚り合わせの紡績糸に関し、現在までは、メリノウールなどの良質ウールに使用されてきた。
【0007】
現在まで、粗ウールを、良質の紡績糸、軽生地、または高価値の衣服に使用することは考慮されなかった。処理上の課題、及びこのような用途に対して粗ウールは不適切であると理解されていたためである。このような高価値の衣服は、一般に生地重量は、400g/m2未満、より一般的には200g/m2未満である。
【0008】
良質の紡績糸、生地、及び/もしくは衣服、もしくは粗ウールをベースにした他の製品を提供すること、または大衆に有用な選択を提供することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】ニュージーランド国特許第552416号明細書
【文献】ニュージーランド国特許第522596号明細書
【文献】米国特許第8429889号明細書
【文献】米国特許第7752832号明細書
【文献】国際公開第2004044290号
【文献】国際公開第2008079025号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願人は、意外にもニューヤーン法及びニューヤーン機が、以前は実現できなかった特性を有する紡績糸及び製品を生成するよう、粗ウールを処理するために適応され得ることを見出した。この結果は、自動撚り合わせのニューヤーン技術に基づいている一方で、本発明のいくつかの態様において、紡績糸は、代替の技術(例えば適応されたリング精紡技術)を使用して、または新しい紡績機を介して、生成され得る。このような代替技術を介して生成された紡績糸は、明示的に除外しない限り、特許請求の範囲内に収まるよう意図される。
【0011】
さらに、本発明は、梳毛または準梳毛の紡績糸に限定される。ウールを紡いだ紡績糸を網羅するようには、意図されない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様において、自動撚り合わせの紡績機を使用して、粗ウールのスライバから良質の紡績糸を生成するための方法が提供される。この紡績機は、上述のニューヤーン機であってもよい。
【0013】
スライバは、平均繊維径が26ミクロンよりも大きく、かつ延長が100mmHよりも長いか、径が30ミクロンよりも大きく、かつ延長が100mmHよりも長いか、径が33ミクロンよりも大きく、かつ延長が100mmHよりも長いか、径が36ミクロンよりも大きく、かつ延長が100mmHよりも長いか、または径が36ミクロンよりも大きく、かつ延長が110mmHよりも長い、ウールの撚り糸から形成され得る。
【0014】
紡績糸は、60テックス(17Nm)未満、50テックス(20Nm)未満、40テックス(25Nm)未満、または20テックス(50Nm)~40テックス(25Nm)の線密度を有し得る。
【0015】
ウールを紡ぐ前に、ウールは、洗われ、及び/または梳かれ、及び/または櫛を入れられ、及び/または(ハーコセット処理などを使用して)スーパーウォッシュされるか、または梳毛または準梳毛の紡績糸に対して別の方法で適切に処置され得る。このような処理は、当技術分野でよく知られている。
【0016】
紡績糸は、任意の好適な処理を使用して、生地を生成するために使用され得る。例えば編み生地は、従来の平編み機を使用して形成され得る。このような生地は、直接使用され得るか、または積層または接合によって多層生地に形成され得る。撥水の化学的処理が、アウターの生地層に適用され得るか、または膜が2つの生地間に提供され、撥水及び風防の性能特質をもたらし得る。
【0017】
代替として、2つ以上の紡績糸が織り交ぜられ、粗ウールの紡績糸で主に形成される一方の層(または一方の面)と、メリノ、テンセル、ポリプロピレン、またはポリエステルなど、別の紡績糸で主に形成された他方の層(または反対側の面)と、を有する生地を形成し得る。
【0018】
このような生地は、好ましくは400g/m2未満の重量、より好ましくは200g/m2未満の重量を有する。
【0019】
この紡績糸は、ソックスを形成するためにも使用され得る。この紡績糸は、高い摩耗性の踵及び爪先領域のためのみに使用され、他の領域には他の紡績糸が使用され得る。
【0020】
別の態様において、梳毛または準梳毛の紡績糸は、1つまたは複数の撚り糸を含み得る。各撚り糸は、連続した、または実質的に連続したコアと共に撚り合わされたアウターを含み、このアウターは粗ウール繊維を含む。
【0021】
紡績糸は、梳毛の紡績糸であってよい。
【0022】
紡績糸は、2つ以上の上記の撚り糸を含み得る。撚り糸は、互いに自動撚り合わせであり得る。
【0023】
連続した、または実質的に連続したコアは、紡績糸の少なくとも15重量%で構成され得る。
【0024】
紡績糸は、80テックス(12.5Nm)未満の線密度を有し得る。
【0025】
別の提要において、梳毛または準梳毛の紡績糸は、1つまたは複数の撚り糸から形成され得る。各撚り糸は、少なくとも15重量%の、連続した、または実質的に連続したコアと、コアと共に撚り合わされたアウターとを含み、このアウターは粗ウール繊維を含む。
【0026】
紡績糸は、15~50重量%の、連続した、または実質的に連続したコアを含み得る。
【0027】
さらに別の態様において、80テックス(12.5Nm)未満の線密度の紡績糸は、2つ以上の撚り糸を含み得る。各撚り糸は、連続した、または実質的に連続したコアと共に撚り合わされたアウターを含み、このアウターは粗ウール繊維を含む。
【0028】
以下の特徴は、任意の上記の態様に適用され得る。紡績糸は、60テックス(17Nm)未満の線密度を有し得る。紡績糸は、25テックス(40Nm)~60テックス(17Nm)の線密度を有し得る。
【0029】
粗ウール繊維は、26ミクロンより大きい平均繊維径を有し得る。粗ウール繊維は、30ミクロンより大きい平均繊維径を有し得る。粗ウール繊維は、33ミクロンより大きい平均繊維径を有し得る。粗ウール繊維は、36ミクロンより大きい平均繊維径を有し得る。
【0030】
粗ウール繊維は、30~40ミクロンの範囲の平均繊維径を有し得る。粗ウール繊維は、36~38ミクロンの範囲の平均繊維径を有し得る。
【0031】
ウールトップにおける粗ウール繊維は、100mmH以上の平均繊維長を有し得る。ウールトップにおける粗ウール繊維は、110mmH以上の平均繊維長を有し得る。粗ウール繊維は、100~130mmHの範囲の平均繊維長を有し得る。
【0032】
アウターは、少なくとも10重量%の粗ウールを含み得る。アウターは、少なくとも20重量%の粗ウールを含み得る。アウターは、少なくとも30重量%の粗ウールを含み得る。
【0033】
連続した、または実質的に連続したコアは、少なくとも1つの合成フィラメントを含み得る。合成フィラメントは、10~80デニールの範囲の厚さを有し得る。この少なくとも1つの合成フィラメントは、ナイロンフィラメントであってよい。代替として、この少なくとも1つの合成フィラメントは、ポリエステルフィラメントであってよい。
【0034】
連続した、または実質的に連続したコアは、天然繊維で形成された少なくとも1つのフィラメントまたは糸を含み得る。この糸は、10テックス(100Nm)~20テックス(50Nm)の範囲の厚さを有し得る。
【0035】
紡績糸は、100%の天然繊維で形成され得る。
【0036】
別の態様において、生地は、上記の態様で説明したような任意の紡績糸を含み得る。衣服は、このような生地を含み得る。
【0037】
別の態様において、紡績糸を生成する方法は:2つ以上の撚り合わされた撚り糸を形成するステップあって、各撚り糸は、粗ウールのスライバ、及び連続した、または実質的に連続したコアを、回転軸の周りに回転させるよう、かつ回転軸に沿って相互に動かすよう適応された一対の撚り合わせローラを備えた、往復運動をする撚り合わせステージを通過させ、各撚り糸は、撚り合わせない領域によって分離された撚り合わせ領域を有する、形成するステップと;撚り糸を共に用いて、互いを自動で撚り合わせることによって紡績糸を形成するステップと、を含み得る。
【0038】
別の態様において、紡績糸を生成する方法は、連続した、または実質的に連続したコアと共に、粗ウール繊維を含んだアウターを撚り合わせるステップを含み得る。
【0039】
本発明を、添付の図面を参照して、単なる例として詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】1つの実施形態による、ウール紡績装置の概略図である。
【
図3】撚り合わせローラ駆動機構の1つの実施形態を示す図である。
【
図4】撚り合わせローラ駆動機構の別の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本明細書において繊維長を参照するとき、mmH(ミリメートルHauter、これはIWTO-17で承認されたalmeterを使用して計測される)が参照される。
【0042】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「連続した、または実質的に連続したコア」は、連続した、または実質的に連続した、天然もしくは合成の糸、またはフィラメントなどを含み、それと共に粗ウール繊維を含んだアウターは組み合わされ、紡績糸を生成中に撚り糸を形成する。コアは、単一の糸もしくはフィラメントなどを含み得るか、または2つ以上の糸もしくはフィラメントなどを含み得る。
【0043】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「アウター」は、紡績糸の生成中に撚り糸を形成するために、コアと結合される繊維を意味する。アウターは、粗ウール繊維を含む。用語「アウター」及び「コア」は、最終的な紡績糸において、必ずしもコアがアウターの中に完全に含まれる必要はないが、完全に含まれることが、いくつかの実施形態において望ましい場合がある。
【0044】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「自動撚り合わせ紡績糸(self-twist yarn、self-twisting yarn)」は、s方向に撚り合わせる領域に対して交互にz方向に撚り合わせる領域を有する、2つ以上の撚り糸を備え、撚り合わせの各領域間に撚り合わせない領域を有する紡績糸を意味する。ここで、少なくとも1つの撚り合わされた撚り糸が、少なくとも1つの他の撚り合わされた撚り糸に接触され、その結果として撚り合わされた撚り糸を共に自動で撚り合わせて(互いに巻いて)紡績糸を形成する。用語「自動撚り合わせ」は、対応した意味を有する。
【0045】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される用語「撚り糸」は、総称として、とりわけ単一の撚り糸、合い撚り紡績糸、紡いだ紡績糸、及び縛られた紡績糸を含むよう使用される。撚り糸は、連続したフィラメントの束、不連続なフィラメントの連続した形態、引張強度を増加させるために未処理または処理前である、引込んで梳いたスライバ、トウ処理によって生成された連続したフィラメントまたは例えば紡いだ紡績糸などのステープル繊維、及び1つまたは複数の連続したフィラメント、であってよい。
【0046】
計測用語「テックス」及びNmは、当技術分野における標準的意味で使用される。テックスは、紡績糸の1000メートル当たりのグラムで計測された、線密度である。Nm(すなわちナンバーメトリック)は、紡績糸1キログラム当たりのキロメートルで計測される。一般的に、テックス=1000/Nmである。
【0047】
粗ウールは、26ミクロンよりも大きい径(すなわち平均繊維径)を有するよう選択され得るが、平均径が30ミクロンより大きいか、33ミクロンよりも大きいか、または36ミクロンよりも大きいものが使用され得る。平均径は、26~40ミクロンの範囲、32~40ミクロンの範囲、または36~38ミクロンの範囲であってよい。
【0048】
粗ウール繊維は、100mmHより長い延長(すなわちウールトップにおける平均繊維長)を有し得る。延長は、110mmHより長くてもよい。延長は、100~130mmHの範囲であってもよい。
【0049】
したがって粗ウールは、比較的長く、かつ粗い。ウール繊維は、比較的まっすぐであり得るか、または「ちぢれ」が多い繊維が使用され、これらは改善された熱保持及び/または機械的緩衝を提供し得る。
【0050】
紡ぐ前に、選択されたウールは、いくつかの事前処理ステップを受ける場合がある。ウールは、獣脂、スイント、及び汚れを除去するために、洗われ得る。次にウールは、植物質などの欠点を除去するために、梳かれ得る。ウールは、必要に応じて、短い繊維を除去するために櫛を入れられ得る。次にウールは、苔を除去するため、かつウール繊維にポリマーを適用するために、好ましくはハーコセット処理などによってスーパーウォッシュされ得る。その結果、少ない収縮量及び低いレベルのピリングとなり、最終的製品を洗濯機洗い可能にする。
【0051】
ウールの、任意の他の好適な事前処理は、梳毛または準梳毛の紡績糸のために適切となるよう、実施され得る。このような処理は、当技術分野でよく知られている。
【0052】
アウター材料は、100%の粗ウールであってよい。しかし、材料の混合または他の組み合わせが、いくつかの用途に使用され得る。例えば、粗ウールの他の繊維との混合が使用され得る。例えば、粗ウールの、合成繊維、他の天然繊維、または他のウール繊維との混合(密接混合を含む)が使用され得る。粗ウール及び良質ウールの混合、例えば50:50の粗ウール及びメリノウールの混合が、使用され得る。粗ウールは、アウター材料の10~100重量%で存在し得る。アウター材料は、少なくとも10重量%、少なくとも20重量%、または少なくとも30重量%の粗ウールを含み得る。
【0053】
1つの実施形態において、アウターは、粗ウールが50重量%より多い、粗ウール/メリノウールの混合を含み得る。例えば、アウターは、90:10の重量で、粗ウール及びメリノウールの混合から形成され得る。粗ウール及びメリノウールは、混合した粗糸をもたらすために混合され得る。本明細書で開示される、粗ウール及び/またはメリノウールの特性の、任意の範囲が使用され得るが、1つの実施形態において、36~38ミクロンの範囲の平均繊維径を伴う粗ウールが使用され得る。全体的に理論に縛られることなく、本出願人は、このような混合は、改善された紡績性能及び/または改善された紡績糸特性を提供するものと考える。これは、紡績糸の延長に沿って、繊維間のさらなる結合をもたらす、より良質かつより短いメリノウール繊維によるものと、現在考えられている。これは同時に、粗ウール繊維の数を減少させ得る。これは、適切な紡績糸構造をもたらすために必要である。したがってこのような混合は、さらに良質な紡績糸(例えば2つの12.5テックスの撚り糸を伴う2層紡績糸において約25テックス、またはさらに良質なもの)を作り出すために好適であり得る。紡績糸の手触りも改善され得る。このような混合は、本明細書で説明する任意のコア材料を用いて、使用され得る。
【0054】
コアは、連続した、または実質的に連続した、天然もしくは合成の糸、またはフィラメントなどであってよい。以下で説明するように、アウター材料は、コアと紡がれ、かつ組み合わされて、撚り糸を生成する。任意の好適なコア材料が使用され得る。任意の好適な数及び重量の、コア糸またはフィラメントなどが使用され得る。
【0055】
いくつかの用途において、1つまたは複数の合成フィラメントのコアが使用され得る。コアは、任意の好適な合成物から形成され得る。ナイロン、ポリエステル、またはポリアミドは、好適であり得る。ナイロンモノフィラメントなどの、合成モノフィラメントが使用され得る。代替として、合成マルチフィラメントが使用され得る。
【0056】
合成コアフィラメントは、10~80デニールの重量を有し得るが、他の値も好適であり得る。いくつかの実施形態において、ナイロンコアフィラメントが使用され、11~30デニールの重量を有し得る。任意の好適な数及び重量のフィラメントが、各コアに使用され得る。例えば、1つの用途において、コアは11デニールのナイロンの、7つのフィラメントで構成され得る。別の用途において、コアは17デニールのナイロンの、5つのフィラメントで構成され得る。1つの実施形態において、ポリエステルコアフィラメントが使用され、20~80デニールの重量を有し得る。1つの用途において、コアは20デニールのナイロンの、12のフィラメントで構成され得る。
【0057】
他の用途において、天然繊維から形成されたコアを使用することが望ましい場合がある。天然、または非合成の紡がれたフィラメント、糸、または紡績糸が使用され得る。例えば、連続した、または実質的に連続した、綿、ウール糸/紡績糸、または他の天然繊維のコアが使用され得る。さらに、レーヨン、ビスコース、リオセル(テンセルとして販売されている)、または天然製品をベースに同様に処理されたコア材料など、処理された天然繊維が使用され得る。天然コア糸は、10テックス(100Nm)~20テックス(50Nm)の範囲の重量を有し得るが、他の値も、いくつかの用途に好適であり得る。
【0058】
任意の組み合わせのコア材料が使用され得る。例えば、コアは第1の材料の1つまたは複数のフィラメントと、第2の材料の1つまたは複数のフィラメントとを含み得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、コアは紡績糸の約15~50重量%で構成され得る。
【0060】
選択された、事前処理されたアウター材料は、上記で説明したニューヤーン機及びニューヤーン法を使用して紡がれ、かつコアと組み合わされ得る。しかし、他の機械が適応され、他の方法が使用されてもよい。スライバのもつれを避けるために、2つの供給機が利用され、撚り糸間の分離を維持し得るが、供給機間に大きい間隔が提供された場合に、より多くの数の供給機を利用することが可能となり得るか、またはスライバの互いからの分離は、別の方法で実現される。例えば、いくつかのインプットを省略すること(例えば1つおきにスライバをインプットすること)によって、スライバまたは撚り糸の間隔を増加させること;機械の幅、及び/またはスライバのインプット間の間隔を増加させることによって、スライバまたは撚り糸の間隔を増加させること;ならびに、例えば入って来るスライバまたは撚り糸の間にフィン、プレートなどの物理的スペーサを含むことにより、スライバまたは撚り糸を物理的に分離すること、のうち任意の1つまたは複数である、入ってくるスライバまたは撚り糸を適切に分離させるための、一般的な任意の好適な方法が使用され得る。
【0061】
160m/min、さらには200m/minよりも速い巻き取り速度が使用され得る。これは、エネルギー消費の大幅な減少(例えば35%)をもたらし得る。これは、従来のリング精紡機における14m/minの動作と比較して、各精紡機は200m/minで処理するので、機械の実効設置面積、及びコストも減少させ得る。
【0062】
図1は、1つの実施形態による、紡績装置1の概略図である。これは、ニューヤーン機などの自動撚り合わせ機であってよい。
【0063】
紡績装置1は、ドラフトユニット2を含み得る。ドラフトユニット2は、対向して動く、好ましくはゴム被覆ローラまたはベルトを含み、それらの間を繊維は(スライバとして)通る。示される例において、アウター材料の2つのスライバS(実線)、S’(破線)が、供給ローラ3を介してドラフトユニット2に導入され得る。アウター材料の各スライバは、ドラムまたは他のバルク供給部(図示せず)から引き出され得る。アウター材料は、粗ウールを10~100重量%の範囲で含み得る。アウター材料は、任意の好適な材料と粗ウールとの混合であってよい。
【0064】
アウター材料繊維は、ドラフトユニットによって引き出され、アウター材料のスライバの厚さは、一般に当初の厚さの1/2~1/25に減少される。厚さの減少量は、ドラフトユニットの回転速度を変化させることによって調整され得る。
【0065】
コアC(実線)を引込んだ後、C’(破線)は、アウター材料の各スライバと組み合わされ得る。連続した、または実質的に連続した各コアは、ドラム、スプール、または他のバルク供給部から引き出され、誘導部4(例えば供給リング、アイレット、または2つを共に運ぶための他のデバイス)を通して、引込まれたアウター材料と共に供給され得る。
【0066】
コアC、C’は、連続した、または実質的に連続したコアであってよい。コアは、本明細書のどこかで説明したように、任意の好適な天然もしくは合成の糸、またはフィラメントであってよい。
【0067】
組み合わされたアウター材料S、S’、及びコアC、C’は、別の供給ローラ5を通過し、往復運動をする撚り合わせステージ6に至り得る。アウター材料の各撚り糸及びコアが、誘導部4及びローラ5を通過する際に、コアは、アウター材料の撚り糸またはスライバの中に押圧されるか、または組み合わされ得る。コアは、アウター材料の中間部の中に押圧され、それによってコアは、アウター材料の繊維によって取り囲まれ得る。往復運動をする撚り合わせステージ6は、少なくとも1つの回転ローラ6aを備え得る。回転ローラ6aは、
図1の矢印Aによって示されるように前後にも往復する。この往復運動をするローラは、固定要素(平坦面など)によって対向され得るか、または
図2に示されるように、第2の回転ローラ6bによって対向され得る。第2の回転ローラは、単純に回転し得るか、またはその軸に沿って往復運動もし得る。
【0068】
アウター材料及びコアは、往復運動をする撚り合わせローラ6を通過し、かつ撚り合わされる。
【0069】
撚り合わせローラ6a、6bは、軸に沿って一方向にローラが動く際に、一方向にローラ間を通過するスライバに、撚り合わせを付与し、その後軸に沿って他方向にローラが動く際に、反対方向に撚り合わせる。スライバSの、各撚り合わせ領域の延長は、ローラ6a及び6bの、それらの前方の回転速度に対する振動運動の横断速度を制御することによって、(上記で列挙した本出願人の前の特許において説明したように)制御され得る。特定の前方の回転に対する、遅い横断速度は、初めに一方向、次に他方向に、より長いスライバの撚り合わせ領域を発生させる。
【0070】
撚り合わされた撚り糸は、撚り合わせローラ6を出て、誘導部7(例えば供給リング、アイレット、または類似のデバイス)において組み合わされる。組み合わされた撚り糸は、共に自動で撚り合わせて紡績糸Yを形成し得る。
【0071】
撚り糸は、異なる経路延長を有し、撚り合わせローラと誘導部7との間を移動し得る。撚り糸が誘導部7を出る際に、撚り糸は共に自動で撚り合わせる傾向にあるか、または代替として、別の撚り合わせ機が任意で提供され、撚り糸を共に撚り合わせる補助をして、仕上げられた紡績糸を形成する。このような別の撚り合わせ機は、個々の撚り糸が共に撚り合わされる範囲を変化させるのを可能にするよう、すなわち紡績糸の「撚り合わせ内の撚り合わせ」の制御を可能にするようよう、制御され得る。
【0072】
撚り糸は、メートル当たり、600サイクル未満または約500サイクル(すなわち一方向の撚り合わせ、及び次に他方向の撚り合わせのサイクル)の撚り合わせで、より好ましくはメートル当たり、約250~300サイクルと400~500サイクルとの間の撚り合わせで、撚り合わせられ得る。
【0073】
撚り糸の各々は、他方の撚り糸に対して異なる経路延長を通り、それによって、撚り糸の各々の撚り合わせ領域は、互いに対してずらされるか、または位相が不一致となる。この形態の紡績糸において、異なる経路延長は、各撚り糸の撚り合わせない領域が、仕上げられた紡績糸の他方の撚り糸における撚り合わせ領域で覆われるように成される。
【0074】
別の実施形態において、本発明の装置は、誘導部、アイレット、またはそれらの機械的同等物の位置を調整することが可能で、それによって個々の撚り糸を共に運んで、撚り糸の重複ポイントまたは相対位相を変化させ得る。誘導部、またはその同等物の調整も、装置におけるマイクロプロセッサベースの制御システムによって制御され得る。
【0075】
次に紡績糸Yは、巻き取りホルダH(例えばスプールなど)に巻かれ得る。その速度は、上記で列挙した本出願人の前の特許で説明したように、制御され得る。巻き取りホルダHの駆動システムは、制御システムによって制御され得る。それによって、紡績糸が巻き取りホルダに巻かれる線速度と、撚り糸が撚り合わせローラ6を出る線速度との間の比率は、制御され得る。一般的な制御システムは、撚り合わせローラ6a及び6b、ならびに巻き取りホルダHの回転速度を制御し得る。巻き取りホルダの回転速度を、撚り合わせローラの回転速度と共に制御することによって、撚り合わせステージを出る紡績糸にかかる張力を、制御し変化させることができる。
【0076】
巻き取りホルダ、及びスプールされた紡績糸の有効円周は、紡績糸が巻き取りホルダHに巻かれるほど、徐々に増加する。したがって、巻き取りホルダの回転速度が一定に保たれる場合、撚り合わせローラまたは送達ローラを出る、撚り合わされた撚り糸は、紡績糸が巻き取りホルダに巻かれるほど、増加した張力がかけられることになる。
【0077】
自動で撚り合わせる紡績糸に張力をかけるために使用される、先行技術の紡績機械の機械構成要素に、湿気などの環境要因が影響を与える場合があることも判明しており、そのため、それらの機械によって紡績糸にかけられる正の張力は、環境要因が変化すると一貫性なく加えられる。
【0078】
したがって、紡績糸が巻き取りホルダ8に巻かれる際に、巻き取りホルダが駆動されるときの速度は、紡績糸が巻き取りホルダに巻かれる線速度が一定に保たれるよう、制御される。
【0079】
撚り合わされた撚り糸が撚り合わせローラを出た後に、自動で撚り合わせる紡績糸にかけられる張力を変化させることは、上記で列挙した本出願人の前の特許で開示したように、撚り合わせ外形、紡績糸構造、及び紡績糸の特性を変化させることが見出された。詳細には、撚り合わせステージを出た後、かつ巻き取りホルダにスプールさせる前に、低い張力を受ける紡績糸(低張力紡績糸。多くの用途に好ましい場合があり、巻き取りホルダの速度は、撚り糸が撚り合わせローラを出る速度未満)は、撚り合わせステージを出た後の正の張力を受ける紡績糸(高張力紡績糸。巻き取りホルダの速度が、撚り糸が撚り合わせローラを出る速度よりも速い)に対して、異なる紡績糸の構造を有することになることが見出された。
【0080】
得られた紡績糸は、好ましくは80テックス(12Nm)未満、60テックス(17Nm)未満、または50テックス(20Nm)未満、より好ましくは40テックス未満の線密度を有する。紡績糸は、20テックス(50Nm)~70テックス(14Nm)の範囲、より好ましくは20テックス(50Nm)~40テックス(25Nm)の範囲の線密度を有し得る。
【0081】
生地は、例えば従来の平編み機または別の好適な機械の使用を含む、任意の好適な処理を使用して、生成され得る。紡績糸は、28gg(インチ当たりの針数)以下を有する機械による使用に好適であり得る。180g/m2のジャージ生地は、20ggの平編み機で生成された。
【0082】
生地は、上記で説明したように生成された紡績糸から、均一に編まれるか、または織られ得る。代替として、生地はこのような紡績糸と他の紡績糸との組み合わせから(例えば編まれるか、または織られて)形成され得る。例えば生地は、アウター面が、少なくとも大部分が粗ウールを含んだ紡績糸から形成され、一方でインナー面が、少なくとも大部分がメリノ紡績糸から形成されるように、編まれ得る。粗ウールは、耐摩耗性のアウター面を、得られた衣服にもたらす一方で、メリノは、皮膚に対してまたは皮膚の近くで良好な性能をもたらす。
【0083】
上記で生成された生地は、他の生地または層に、積層または接合され得る。例えば、粗ウール生地のアウター層は、可能なインナー層の範囲と接合され、アウター(粗ウール)層に撥水の化学処理を含み得る。または、撥水及び風防の性能特質をもたらすために、2つの生地間に膜を含み得る。粗ウールのアウター層は、有利な低い光反射、優れた伸長特性、優れた摩耗特性、吸音性、優れた熱特性、及び低い臭気を伴う、耐摩耗性のアウター面を提供する。
【0084】
他の生地も、例えば以下のように、ニューヤーンを使用して生成されてきた。
1.フリース生地(粗ウール及びメリノ)。粗ウールを含む紡績糸が、表(アウター)に編まれ、良質のミクロンメリノ(19.5ミクロン)が、裏(インナー)に編まれた。25テックス(40Nm)(ナイロンコアを伴う)及び30テックス(33Nm)(ポリエステルコア)の粗ウール紡績糸が編まれ、240~330g/m2の重量範囲のフリース生地が作られた。28~20ggの機械を使用して、200g/m2未満の重量を有するフリース生地を生成することが可能であろうと考えられる。
2.粗ウール及び合成。フリースなどの両面生地が、粗ウールのアウター層と、テンセル、ポリプロピレン、ポリエステル、またはナイロンに混合されたメリノウールで形成されたインナー層と、を用いて形成され得る。代替として、インナー層は、テンセル、ポリプロピレン、ポリエステル、またはナイロンのみであってもよい。繊維タイプの範囲は、上記の例に限定されない。
【0085】
一般的に、本出願人の紡績糸を含む生地は、185~500g/m2の範囲の重量を有し得る。本出願人の紡績糸を含む生地は、400g/m2未満、または200g/m2未満の重量を有し得る。
【0086】
本発明による、粗ウール繊維を含む生地は、摩耗抵抗において大幅な改善を示す。試験標準ASTM4966/4970、IOS5470、ISO12945-2:2016、ISO12945-2:2000に従い、マーチンデール試験機GT-C13B-4を使用して、試験が実施された。本出願人の生地のサンプルは、合成物で予想される約3.75、及びメリノで予想される約2.5と比較して、3.81~4.67の範囲の摩耗評価を示した。
【0087】
新しい粗ウールの紡績糸を使用して生成されたソックスは、3倍まで長い寿命を伴う、非常に高い摩耗抵抗を呈する。新しい粗ウールの紡績糸を使用して生成されたソックスの試験は、(合成物の一般的な3.75及びメリノの2.5と比較して)摩耗抵抗スコア5のうちの4.89を実現した。試験標準ASTM4966/4970、IOS5470、ISO12945-2:2016、ISO12945-2:2000に従い、マーチンデール試験機GT-C13B-4を使用して、試験が実施された。
【0088】
ソックスは、大きく改善された滑り止め特徴も呈する。
【0089】
新しい粗ウールの紡績糸は、ナイロン補強のない、摩耗が大きい踵及び爪先領域のみに使用され、36gg、156ニードル、33/4の靴下編み機で編まれ得る。ソックスの残り部分は、19.5~24ミクロンのメリノインナーのTerry loop(皮膚に隣接し、快適で良質なミクロンウールを提供)と、16テックス(62Nm)~60テックス(17Nm)のテックス範囲を伴う、被されたナイロンアウター(メリノウールの劣化に抗するナイロン補強)と、で形成され得る。一般的に、任意の衣服は、粗ウールを含む本出願人の紡績糸を使用したいくつかの領域と、他の紡績糸から形成された他の領域と、を含み得る。
【0090】
新しい粗ウールの紡績糸を使用して形成された衣服は、アウターウェア、ならびに上着、パンツ、及びソックスを含むアウトドア衣服を含み、以下の望ましい特徴のうち、任意の1つまたは複数を呈し得る。
・優れた摩耗特性を有する耐摩耗性アウター面
・優れた熱特性
・優れた伸長特性
・低い光反射性
・吸音性
・ソックスで使用される場合に合成物よりも滑らないこと(ナイロンが濡れると、靴またはブーツの踵及び爪先において滑り始める)
・少ない臭気
・環境にやさしい(非石油系)
・低い湿気
・より少ない細菌数
【0091】
上記で列挙した本出願人の前の特許において説明した装置を含む、任意の好適な駆動、及び制御装置が、様々なローラ、ドラフトステージ、及び巻き取りホルダなどの動きを、駆動及び/または制御するために使用され得る。以下の全て、及び機械における任意の他の好適なパラメータは、自動撚り合わせ機を使用する際に、制御され得る。
【0092】
撚り合わせない領域は、撚り糸におけるローラが方向を変えるポイントにおいて確認され得る。ローラが、それらの横断往復運動の各端部において、比較的迅速に方向を変える場合、対向する各撚り合わせ領域間で、比較的小さい、撚り合わせない領域のみが存在することになり、その一方で、ローラを、それらの横断運動の端部において、もしくは端部に向けて、比較的遅く方向を変えるか、または停止させることによって、比較的長い、撚り合わせない領域が、スライバに形成されることになる。
【0093】
横断往復運動の範囲、またはローラ6a及び6bの行程も、それらの前方の回転速度に対して変化され、所望の撚り糸の撚り合わせ程度、または所望の紡績糸の撚り合わせ外形を実現し得る。追加または代替えとして、所望の撚り合わせ程度は、撚り合わせローラ6a及び6bの回転速度を変化させることによって実現され得る。さらに追加または代替として、撚り合わせ程度または撚り合わせ外形は、撚り合わせローラの往復横断運動の速度を、(それらの回転速度に対して)調整することによって、変化され得る。
【0094】
横断運動の速度、及び/または範囲または行程、及び/または撚り合わせローラの回転速度、及び/または巻き取り速度、における任意の1つまたは複数、しかし好ましくは全ての変化は、関連したユーザインタフェースを有する、マイクロプロセッサベースの制御システムによって制御され得る。ユーザは、任意の生産工程のために、任意の所望なローラ速度、ローラの横断運動範囲、ローラの横断運動量、巻き取り速度、またはこれら全ての組み合わせを、機械にプログラムして、撚り糸または得られる多層紡績糸の所望の撚り合わせ外形を実現し得る。
【0095】
異なるローラ速度及び運動を用いて生成された紡績糸は、異なる特性を有する。この紡績糸は次に、異なる最終用途のために好適な、異なる特性を有する生地、または異なる特性を有する紡績糸から形成された、編まれるかもしくは織られた製品を生成し得る。
【0096】
図3及び
図4は、上記で列挙した本出願人の前の特許のものと類似した、撚り合わせローラを駆動するための配置の例を示す。
【0097】
図3に示される配置において、電気モータ7a及び7bは、撚り合わせローラ6a及び6bの回転を駆動する。ローラ6a及び6bの回転速度は、電気モータ7a及び7bの速度を変化させることによって、または任意の他の好適な機構によって、変化され得る。ローラ駆動モータは、ユーザがプログラム可能なマイクロプロセッサベースの制御システムなど、好適な制御器によって制御され得る。サーボモータなどの電気モータ9は、撚り合わせローラ6a及び6bの往復運動を駆動し、撚り合わせローラの往復横断運動の速度及び/または範囲を変化させるために、制御され得る。サーボモータ9またはギアは、滑車またはスプロケット(図示せず)を駆動する。滑車またはスプロケットは、回転及び反回転し、滑車またはギア13の周りに延びたケーブルまたはチェーン14に接続される。ケーブルまたはチェーン15も、滑車またはギア13の周りに延び、一方の端部をシャフト16aに、かつ他方の端部をシャフト16bに、自在軸受または類似のものを介して接続される。モータ9のアウトプットの回転、次に反回転は、ケーブル15を、矢印Cで示されるように駆動し、それによって撚り合わせローラ6a及び6bは、往復運動で前後する。すなわち、サーボモータ9による、ケーブルまたはチェーン14の反時計回り方向の運動は、サーボモータ9が方向を逆転したとき、両方のローラが回転、及び反回転する際に、ケーブルまたはチェーン15を反時計回り方向に動かし、かつローラ6aを一方の方向に横断方向に動かし、ローラ6bを反対の方向に横断方向に動かすことになる。撚り合わせローラシャフト8a及び8bは、それらの他方の端部においてケーブルまたはチェーン11に付随し、ケーブルまたはチェーン11は、自在軸受または類似のものを介して、滑車またはギア12の周りを通る。
【0098】
ローラ6a及び6bは、一方または両方の例において摺動軸受10を通過するローラシャフト8a及び8b、または類似のものによって、回転運動及び往復側方運動のために取り付けられ得る(一方の側(
図5Aの右手側)のみが示される)。ローラシャフト8a及び8bは、ローラを駆動する電気モータ7a及び7bを摺動して通過し得る一方で、ローラ駆動シャフトの側方往復運動も可能にする。代替として、伸縮自在な連結が、ローラ駆動シャフトと、回転駆動モータ7a及び7bとの間に設けられ得る。
【0099】
撚り合わせローラの、行程及び/または回転速度の変化は、サーボモータを使用せずに、他の好適な同等の機械または電気機械手段を使用することによって、実現され得る。
図4は、撚り合わせローラ6a及び6bのための、代替の駆動システムを示す。この場合、ローラは各々、電気モータ20によって回転かつ横断方向の両方に動かされる。電気モータ20は、アウトプット駆動シャフトを回転させるだけではなく、それらが回転する際にアウトプット駆動シャフトを軸方向にも動かす。モータ20各々の、軸方向または横断方向運動の回転速度及び範囲は、機械の制御システムによって、プログラム可能に制御され得る。
【0100】
別の実施形態において、追加のローラ、ドラフトステージ、及び/または撚り合わせローラは、例えば上記で列挙した本出願人の前の特許で開示されたように、使用され得る。
【0101】
本発明の最も好ましい機械は、撚り合わせローラの回転速度、撚り合わせローラの横断方向運動の速度、及び撚り合わせローラまたは複数対の撚り合わせローラの横断方向運動の範囲を、プログラムで変えることを可能にする制御システムを含み得る。広い範囲の、様々な撚り合わせ特性を有する紡績糸は、このような機械の1つで生成され得る。それは同時に、様々な生地または製品用途のための、広い範囲の様々な生地もしくは製品特性を有する紡績糸から形成された生地、または編まれるかもしくは織られた製品の生成を可能にする。紡績糸は、生地または紡績糸から生成された製品の、所望の性能特徴を最適にするために、工学的に作り出され得る。紡績糸の延長に沿って、撚り合わせのレベルを変えることは、紡績糸のかさ、または強度を最適にするのを可能にし得る。成分繊維の露出された表面は、例えば湿気または水蒸気を吸収及び脱着させるウールの機能など、特定の物理的特性を、より効果的に最適化するために、様々な撚り合わせ特性と共に変えられ得る。繊維シェディング及び/またはピリングは、成分繊維における主成分の延長未満の間隔において、短く、かつきつく撚り合わせることによって、減少され得る。ソックスにおけるテリーソール構造の衝撃吸収特性は、改善され得る。成分紡績糸間の様々な撚り合わせ(または撚り合わせない)レベルの並立を調整する機能は、成分紡績糸間の摩擦を増加、または最適化させるのを可能にし、多層紡績糸の強度を増加させ、かつ得られる紡績糸の特に望ましい表面外観を実現、または変えることを可能にし得る。コアフィラメントも紡績糸の中に組み込まれると、さらなる可変性の程度を可能にする。コアフィラメントを組み込んだ多層紡績糸に、十分な強度を与えるために必要な撚り合わせレベルを、減少させることが可能となり得る。それが、紡績糸の所与の重量に対して、かさまたは露出された繊維表面領域が増加され得るように、編まれるか、または織られるのを可能にする。高品質で軽量の、ウールの編み生地を生成するために使用する、例えば多層紡績糸は、個々のスライバまたは撚り糸が比較的長い撚り合わせ領域を有するよう、生成されてよく、そこでは撚り合わせ程度は低く、上述のように、連続したコアフィラメントの紡績糸の中に組み込まれる、撚り合わさない領域は短い。テリー生地の生成に使用する紡績糸は、紡績糸の撚り糸における撚り合わされない長い領域の間で、中位の撚り合わせの短い領域を有するよう、生成され得る。この紡績糸は、コアフィラメントも組み込み得る(撚り合わさない長い領域を生成するために、撚り合わせローラの横断往復運動は、遅いかまたは停止し得る。一方で、横断方向のローラ運動のいずれかの端部における、ローラの前方の回転は継続し、機械は、ローラが横断方向に動くときに比較的迅速にローラを動かすようプログラムされ、撚り合わせ領域の延長を減少させ得る。その間、ローラの前方の回転運動は、例えば任意で遅くなり得る)。粗ウールからフェルト生地の生成に使用される紡績糸のため、短い撚り合わせ領域は、長い撚り合わさない領域の間で形成され、フェルト処理において互いに生地を形成する紡績糸の、撚り合わせない領域における、繊維のマット仕上げを容易にし得る。
【0102】
したがって、現存の製品に対して優れた特徴を有する高価値の製品を生成するために、安価な粗ウール繊維を使用する方法が提供される。意外にも、このような高価値の紡績糸、生地、及び衣服は、安価な粗ウール繊維をベースにし得る。粗ウール繊維は、一般的に、カーペット製造などの低級用途にのみ好適であると考えられてきた。
【0103】
高いウール含有量は、合成生地の代わりに粗ウールを用いることが、衣服において可能である(例えばソックスに75%のウール)。生成された生地は、少なくとも50%、60%、または80%のウールであってよい。いくつかの用途において、100%のウール、または100%の天然生地が作り出され得る。
【0104】
より長い粗ウール繊維は、機械においてより良好かつより速く流れ、効率を改善し、装備及び製造コストを減少させる。
【0105】
得られた製品は、はるかに少ない短い繊維が存在するので、ピリングの少ない良好な外観を有する。粗ウール紡績糸を使用して生成された生地は、ピリング3級(明確な毛羽立ち)ではなく、より短い繊維のピリング4級(僅かなピリング)を有するものと評価された。
【0106】
本発明を、その実施形態の説明によって例示し、それら実施形態を詳細に説明したが、このような詳細に、添付の特許請求の範囲を制限すること、またはいかなる限定も本出願人は意図しない。さらに、上記の実施形態は個々に実施され得るか、または両立できるよう組み合わされ得る。上記の実施形態の組み合わせを含む追加の利点及び変更を、当業者は容易に想起するであろう。したがって、広義の態様における本発明は、特定の詳細、代表的な装置、及び方法、ならびに、示され説明した例示的な例に限定されない。したがって、出願者の全体的な発明コンセプトの趣旨または範囲から逸脱することなく、これらの詳細からの展開が成され得る。