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特許7558963修飾されたマイクロRNA及びがんの処置におけるその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】修飾されたマイクロRNA及びがんの処置におけるその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7105 20060101AFI20240924BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240924BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20240924BHJP
【FI】
A61K31/7105 ZNA
A61P35/00
C12N15/113 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021555254
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 US2020022519
(87)【国際公開番号】W WO2020186124
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2023-02-20
(31)【優先権主張番号】62/818,190
(32)【優先日】2019-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503035992
【氏名又は名称】ザ・リサーチ・ファウンデーション・フォー・ザ・ステイト・ユニヴァーシティ・オブ・ニューヨーク
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジンファン・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・フェスラー
【審査官】新熊 忠信
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/085198(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第106906213(CN,A)
【文献】国際公開第2017/173247(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0053275(US,A1)
【文献】New Journal of Chemistry,Vol.34, No.5,2010年,pp.918-924
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 35/00
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号2に示す配列を含む修飾されたマイクロRNAを含む核酸組成物。
【請求項2】
配列番号3に示す配列を含む修飾されたマイクロRNAを含む核酸組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の少なくとも1種の核酸組成物を含む医薬組成物。
【請求項4】
求項1又は請求項2に記載の核酸組成物の有効量を含む対象におけるがんを処置するための医薬であって、前記対象ががんを有し、前記がんの進行が阻害される、医薬
【請求項5】
前記対象が、ヒトである、請求項4に記載の医薬
【請求項6】
前記対象が、膵がん、膀胱がん、肺がん及び卵巣がんからなる群から選択されるがんを有する、請求項4に記載の医薬
【請求項7】
前記対象が、膵がんを有する、請求項6に記載の医薬
【請求項8】
核酸組成物が、配列番号2、配列番号4及びこれらの組合せからなる群から選択される配列を含む修飾されたマイクロRNAを含む、請求項4に記載の医薬
【請求項9】
前記核酸組成物が、注射によって対象に投与される、請求項4に記載の医薬
【請求項10】
前記核酸組成物が、静脈内注射される、請求項9に記載の医薬
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その内容全体を参照により本明細書に組み込む、2019年3月14日に出願された米国特許仮出願第62/818,190号の優先権の利益を主張する。
【0002】
政府支援
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金番号CA197098により政府支援の下でなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
配列表の参照による組み込み
3KBバイトの、050_9017_PCT_SequenceListing.txtと命名され、EFS-Web経由で米国特許商標庁に提出されたASCIIテキストファイルの配列表を参照により本明細書に組み込む。
【0004】
本開示の分野
本開示は、全般的には、2'2'-ジフルオロ2'デオキシシチジン(ゲムシタビン)を含む核酸組成物を対象とする。より具体的には、本開示は、1個又は複数のゲムシタビン分子を含有する修飾されたマイクロRNA組成物、及びこれを使用するための方法を提供する。更に、本願は、発明に係る核酸組成物を含む医薬組成物、及びこれを使用してがんを処置するための方法を提供する。
【背景技術】
【0005】
マイクロRNA(miRNA、miR)は、その標的遺伝子の発現を負に調節し、よって、翻訳停止、メッセンジャーRNA(mRNA)切断又はこれらの組合せを引き起こすことにより細胞又は生物における翻訳を媒介する、高度に保存された、非コード小分子リボ核酸(RNA)分子の1クラスである。Bartel DP. Cell. (2009) 136(2):215~33頁を参照されたい。複数の転写物を標的化することにより、miRNAは、アポトーシス、分化及び細胞増殖を含む広範囲の生物学的過程を調節する;よって、異常マイクロRNA機能は、がんをもたらす場合があり(Ambros V. Nature. (2004) 431、350~355頁を参照)、従って、miRNAは近年、バイオマーカー、癌遺伝子又は腫瘍抑制因子として同定された。例えば、Croce, CM. Nat Rev Genet. (2009) 10、704~714頁を参照されたい。
【0006】
世界保健機関(World Health Organization)によると、がんは、2015年に880万名の死亡を占めた、世界的に主な死因である。肺がんは、米国における男性及び女性の両方でがんによる死亡の主因であり、肺がんと診断された患者の18.6%のみが、5年間を越えて生存する。監視疫学遠隔成績プログラム(Surveillance, Epidemiology, and End Results Program)。SEER Cancer Stat Facts: Lung and Bronchus Cancer. National Cancer Institute. Bethesda、MD (2018)。2種の主要カテゴリーの肺がんが存在する:非小細胞肺がん及び小細胞肺がん。非小細胞肺がんは、組織に存在するがん細胞の型によって更に描写される。従って、非小細胞肺がんは、肺がんの次のサブクラスへと細分される:扁平上皮癌(類表皮癌とも呼ばれる)、大細胞癌、腺癌(即ち、肺胞を裏打ちする細胞に起こるがん)、多形性、カルチノイド腫瘍及び唾液腺癌。一方で、2種の主な型の小細胞肺がんが存在する:小細胞癌及び混合性小細胞癌。SEER Cancer Stat Facts: Lung and Bronchus Cancer. National Cancer Institute. Bethesda、MD (2018)。非小細胞肺がんのための最も一般的な処置は、ゲムシタビン(2',2'-ジフルオロ2'デオキシシチジン)、タキソール(例えば、パクリタキセル)、シスプラチン(DNA架橋剤)及びこれらの組合せである。しかし、多くの型の抗体に基づく治療薬もまた、非小細胞肺がんの処置に使用される(例えば、ゲフィチニブ、ペムブロリズマブ、アレクチニブ)。小細胞肺がんは一般的に、メトトレキセート、ドキソルビシン塩酸塩及びトポテカンに基づく化学療法剤によって処置される。
【0007】
乳がんは、女性の2番目に多いがんであり、最も一般的な型の乳がんは、腺管癌である。腺管癌は、腺管の細胞から始まる。対照的に、両方の乳房で見出されることが多い小葉癌は、葉又は小葉に起こる。タキソール(例えば、パクリタキセル、ドセタキセル)、ドキソルビシン塩酸塩、5-FU、ゲムシタビン塩酸塩、メトトレキセート及びタモキシフェンクエン酸塩等の細胞傷害性薬物を含むがこれらに限定されない、多くの化学療法剤が、乳がんの処置に使用される。加えて、トラスツズマブ、オラパリブ及びペルツズマブ等、多くの抗体に基づく治療剤が投与されて、様々な型の乳がんを処置する。
【0008】
膵がんは、処置が非常に困難な致命的ながんである。Siegel, RL等、Cancer J. Clin. (2015) 65、5~29頁を参照されたい。膵がんの特有の側面は、7%未満の非常に低い5年生存率、遅発型の症状、早期転移、並びに化学療法及び放射線照射に対する応答不良を含む。Maitra A及びHruban RH、Annu Rev. Pathol. (2008) 3、157~188頁を参照されたい。現在まで、ゲムシタビンに基づく化学療法(2',2'-ジフルオロ2'デオキシシチジン)は、膵がんの処置の絶対的基準であるが、治療介入の効果は、薬物抵抗性が原因で限定されている。Oettle, H等、JAMA (2013) 310、1473~1481頁。
【0009】
膀胱がんは、男性及び女性に高度に蔓延した形態のがんである。2015年に、米国には膀胱がんに苦しむ推定708,444名が存在し、男性及び女性のおよそ2.3%が、人生のある時点で膀胱がんと診断された。Noone AM等(編)、SEER Cancer Statistics Review、1975~2015年、National Cancer Institute. Bethesda、MD (2018)。膀胱がんの主要な型は、移行細胞癌;扁平上皮癌;及び腺癌である。膀胱がんの処置のために承認された薬物は、例えば、ドキソルビシン塩酸塩、シスプラチン、ゲムシタビン塩酸塩及びバルルビシンを含む。アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ及びニボルマブを含む、ある特定の抗体もまた、膀胱がんの処置に承認されている。
【0010】
卵巣がんは、米国におけるおよそ225,000名の女性に存在し、およそ12/100,000名の女性が、毎年卵巣がんと新たに診断される。Noone AM等(編)、SEER Cancer Statistics Review、1975~2015年、National Cancer Institute. Bethesda、MD (2018)。3種の主要な形態の卵巣がんが存在する。即ち、それぞれ卵巣を覆う、卵管又は腹膜を裏打ちする組織に形成する、卵巣上皮がん、卵管がん及び原発性腹膜がん。タキソール(例えば、パクリタキセル)、ドキソルビシン塩酸塩、トポテカン塩酸塩、ゲムシタビン塩酸塩、カルボプラチン及びシスプラチン等の細胞傷害性薬物を含むがこれらに限定されない、多くの化学療法剤が、卵巣がんの処置に使用される。加えて、ベバシズマブ、オラパリブ及びルカパリブカンシル酸塩等、多くの抗体に基づく治療剤が投与されて、卵巣がんを処置する。
【0011】
ゲムシタビン(即ち、2'2'-ジフルオロ2'デオキシシチジン、dFdC、dFdCyd、ジフルオロデオキシシチジン塩酸塩又はより具体的には、ゲムシタビン塩酸塩)は、よく知られたピリミジンヌクレオシドである。ゲムシタビンは、抗新生物活性を保有する、代謝拮抗薬ヌクレオシドデオキシシチジンのアナログの塩酸塩である。ゲムシタビンは、活性代謝物ジフルオロデオキシシチジン二及び三リン酸(dFdCDP、dFdCTP)に細胞内で変換される。dFdCDPは、リボヌクレオチドレダクターゼを阻害し、これにより、DNA合成に利用できるデオキシヌクレオチドプールを減少させる;dFdCTPは、DNAに取り込まれ、DNA鎖終結及びアポトーシスをもたらす。ゲムシタビンは、化学構造1-(2-オキソ-4-アミノ-1,2-ジヒドロピリミジン-1-イル)-2-デオキシ-2,2-ジフルオロリボース塩酸塩を有する。
【0012】
5-フルオロウラシル(即ち、5-FU又はより具体的には、5-フルオロ-1H-ピリミジン-2,4-ジオン)は、Carac(登録商標)クリーム、Efudex(登録商標)、Fluoroplex(登録商標)及びAdrucil(登録商標)等、多くのアジュバント化学療法薬剤において使用されるよく知られたピリミジンアンタゴニストである。5-FUが、DNA生合成における必須工程であるデオキシウリジン一リン酸(dUMP)からデオキシチミジン一リン酸(dTMP)へのメチル化を触媒する重大な酵素チミジル酸シンターゼ(TYMS又はTS)を標的とすることが十分に確立されている。Danenberg P. V.、Biochim. Biophys. Acta. (1977) 473(2):73~92頁。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際PCT出願WO/1996/041809
【非特許文献】
【0014】
【文献】Bartel DP. Cell. (2009) 136(2):215~33頁
【文献】Ambros V. Nature. (2004) 431、350~355頁
【文献】Croce, CM. Nat Rev Genet. (2009) 10、704~714頁
【文献】SEER Cancer Stat Facts: Lung and Bronchus Cancer. National Cancer Institute. Bethesda、MD (2018)
【文献】Siegel, RL等、Cancer J. Clin. (2015) 65、5~29頁
【文献】Maitra A及びHruban RH、Annu Rev. Pathol. (2008) 3、157~188頁
【文献】Oettle, H等、JAMA (2013) 310、1473~1481頁
【文献】Noone AM等(編)、SEER Cancer Statistics Review、1975~2015年、National Cancer Institute. Bethesda、MD (2018)
【文献】Danenberg P. V.、Biochim. Biophys. Acta. (1977) 473(2):73~92頁
【文献】Gottesman M. M.等、Nature Reviews Cancer、(2002) 2(1):48~58頁
【文献】Bartel、Cell、(2004)116、281~297頁
【文献】Lagos-Quintana M等、RNA. 9:175~179頁(2003)
【文献】C. M. Dunham等、Nature Methods、(2007) 4(7)、547~548頁
【文献】「Remington's Pharmaceutical Sciences」、The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Publishing Company、Easton, Pa.、(1995)
【文献】Yang, F.等、EMBO J.(2012)31:110~123頁
【文献】Carreras等、Annu. Rev. Biochem.、(1995)64:721~762頁
【文献】S.A. Scaringe、F.E. Wincott及びM.H. Caruthers、J. Am. Chem. Soc.、120 (45)、11820~11821頁(1998)
【文献】M.D. Matteucci、M.H. Caruthers、J. Am. Chem. Soc.、103、3185~3191頁(1981)
【文献】S.L. Beaucage、M.H. Caruthers、Tetrahedron Lett. 22、1859~1862頁(1981)
【文献】K. Sipa等、RNA(2007)13、1301~1316頁
【文献】Laemmli UK. Nature. 1970; 227(5259)680~685頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
そうであるにもかかわらず、現存するがん療法は依然として初期段階であり、多くの障害の改善又は克服が依然として待たれている。例えば、種々のがんの処置において相当に効果的ではあるものの、5-FU及びゲムシタビンは、実質的な毒性を保有し、多くの有害副作用を誘発し得ることがよく知られている。更に、腫瘍細胞は、5-FU及びゲムシタビン等の一般的な治療剤に対する抵抗性を生じることにより、アポトーシス経路を回避することが知られている。Gottesman M. M.等、Nature Reviews Cancer、(2002) 2(1):48~58頁を参照されたい。よって、がんの処置のためのより効果的で、安定した、且つ毒性の低い薬物療法には著しい利益があるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
いずれか1つの特定の理論に制約されることなく、本開示は、マイクロRNAのヌクレオチド配列内のシトシン塩基をゲムシタビンに置き換えることにより、ある特定の知られた化学療法剤単独及び/又はネイティブマイクロRNA分子と比較して、抗がん療法剤としてのマイクロRNA有効性が増加されるという発見を前提としている。本開示は、少なくとも1個のシトシン塩基をゲムシタビン分子に置き換えた本開示の核酸組成物(即ち、マイクロRNA)が、抗がん剤として並外れた有効性を有することを実証する。更に、本明細書におけるデータは、細胞と本開示の修飾されたマイクロRNA組成物との接触が、例えば、がん細胞成長及び生存率を低下させることにより、腫瘍発生を低下させることを示す。更に、本開示の修飾されたマイクロRNAが、標的特異性を保持し、有害且つ無効な送達媒体(例えば、ナノ粒子)を使用することなく送達することができ、ネイティブマイクロRNAの天然機能を消失させることなく、増強された効力及び安定性を示すことが示される。従って、本開示は、がんの処置のための、増強された安定性、効力及び標的特異性を有する新規の修飾されたマイクロRNA組成物を提供する。
【0017】
従って、本開示の一態様では、少なくとも1個のシトシン塩基(C、C塩基)がゲムシタビン分子によって置き換えられた修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列を含む核酸組成物が記載される。ある特定の実施形態では、修飾されたマイクロRNAは、1個よりも多い又は正確に1個のシトシンがゲムシタビンによって置き換えられている。一部の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、2、3、4、5個以上のシトシン塩基をゲムシタビン分子に置き換える。特定の実施形態では、ネイティブマイクロRNAの全シトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。
【0018】
特定の実施形態では、核酸組成物は、少なくとも1個のシトシン塩基をゲムシタビン分子に置き換えることにより修飾された、修飾されたネイティブmiR-194ヌクレオチド配列を含む。より具体的には、核酸組成物は、少なくとも次のネイティブmiR-194ヌクレオチド配列:UGUAACAGCAACUCCAUGUGGA[配列番号1]を含有し、少なくとも1、2、3、4個の又は全シトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。一実例では、修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列における的確に1個のシトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。他の実例では、修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも2個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。更に他の実例では、修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも3個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。別の実例では、修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも4個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。特定の実施形態では、修飾されたmiR-194配列における全シトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。miR-194に対する修飾は、ネイティブマイクロRNAのガイド鎖又はパッセンジャー鎖に作製することができる。好まれる実施形態では、miR-194分子に対する修飾は、ガイド鎖に対して作製される。
【0019】
例示的な実施形態では、本開示の核酸組成物は、UGUAANAGNAANUNNAUGUGGA[配列番号2](式中、Nは、ゲムシタビン分子である)の修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列を有する。
【0020】
本開示は、また、少なくとも1個のウラシル塩基(U、U塩基)が5-フルオロウラシル(5-FU)等の5-ハロウラシルによって置き換えられ、少なくとも1個のシトシン塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられたマイクロRNAが、ネイティブマイクロRNA単独又は少なくとも1個のウラシル塩基を5-FUに置き換えることにより修飾されたマイクロRNAと比較して、がん細胞における改善された治療効果を示すことを示す。
【0021】
従って、本開示の別の態様では、少なくとも1個のウラシル塩基が5-ハロウラシルによって置き換えられ、少なくとも1個のシトシン塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられた修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列を含む核酸組成物が記載されている。ある特定の実施形態では、修飾されたマイクロRNAは、1個よりも多い又は正確に1個のウラシルが5-ハロウラシルによって置き換えられており、1個よりも多い又は正確に1個のシトシンがゲムシタビンによって置き換えられている。一部の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、2、3、4又は5個のウラシル塩基を5-ハロウラシルに、2、3、4又は5個のシトシン塩基をゲムシタビン分子に置き換える。特定の実施形態では、ネイティブマイクロRNAの全ウラシル塩基が、5-ハロウラシルによって置き換えられており、ネイティブマイクロRNAの全シトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。
【0022】
一部の実施形態では、5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル又は5-ヨードウラシルである。特定の実施形態では、5-ハロウラシルは、5-フルオロウラシルである。
【0023】
ある特定の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、1個よりも多い5-ハロウラシルを含み、5-ハロウラシルのそれぞれは同じである。他の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、1個よりも多い5-ハロウラシルを含み、5-ハロウラシルのそれぞれは異なる。他の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、2個よりも多い5-ハロウラシルを含み、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、異なる5-ハロウラシルの組合せを含む。
【0024】
本開示の例示的な実施形態では、少なくとも1個のウラシルヌクレオチド塩基を5-ハロウラシルに置き換え、少なくとも1個のシトシンヌクレオチド塩基をゲムシタビン分子に置き換えることにより修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列を含有する核酸組成物が提供される。
【0025】
一実例では、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列における的確に1個のシトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられ、的確に1個のウラシル塩基が、5-ハロウラシルによって置き換えられる。他の実例では、miR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも2個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられており、的確に又は少なくとも2個のウラシル塩基がそれぞれ、5-ハロウラシルによって置き換えられている。更に他の実例では、miR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも3個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられており、的確に又は少なくとも3個のウラシル塩基がそれぞれ、5-ハロウラシルによって置き換えられている。別の実例では、miR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも4個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられており、的確に又は少なくとも4個のウラシル塩基がそれぞれ、5-ハロウラシルによって置き換えられている。特定の実施形態では、miR-194配列における全シトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられており、全ウラシル塩基がそれぞれ、5-FU等の5-ハロウラシルによって置き換えられている。
【0026】
例示的な実施形態では、本開示の核酸組成物は、UFGUFAANAGNAANUFNNAUFGUFGGA[配列番号3](式中、Nは、ゲムシタビン分子であり、UFは、ハロウラシル、特に、5-フルオロウラシルである)の修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列を有する。
【0027】
本開示はまた、本明細書に記載されている修飾されたマイクロRNA組成物の製剤、又はこれらの組合せ、即ち、少なくとも2種の異なる修飾されたマイクロRNAを含む製剤を対象とする。ある特定の実施形態では、製剤は、上述の核酸組成物、及び1種又は複数の薬学的に許容される担体等の他の知られた薬理学的薬剤を含む医薬調製物を含むことができる。
【0028】
本開示は、修飾されたマイクロRNAがそれぞれ、抗がん療法薬としての強力な有効性を示すことを明らかにする。注目すべきことに、検査した修飾されたマイクロRNA核酸組成物のそれぞれは、がん細胞生存率、腫瘍成長及び発達を低下させる。
【0029】
従って、本開示の別の態様は、本明細書に記載されている1種又は複数の核酸組成物の有効量を対象に投与する工程を含む、がんを処置するための方法を対象とする。本方法のある特定の実施形態では、核酸組成物は、修飾されたmiR-194を含み、少なくとも1、2、3、4個以上のシトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。
【0030】
特定の実施形態では、本方法は、がんを有する又はがんの素因がある対象に本開示の核酸組成物を投与する工程を含み、核酸組成物は、核酸配列UGUAANAGNAANUNNAUGUGGA[配列番号2](式中、Nは、ゲムシタビン分子である)を有する修飾されたmiR-194分子である。
【0031】
別の実施形態では、本方法は、少なくとも1、2、3、4個以上のシトシン塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられ、少なくとも1、2、3、4個以上のウラシル塩基が5-フルオロウラシル等のハロウラシルによって置き換えられた、修飾されたmiR-194を投与する工程を含む。特定の実施形態では、本方法は、シトシン塩基のそれぞれがゲムシタビン分子によって置き換えられ、ウラシルヌクレオチド塩基のそれぞれが5-ハロウラシルによって置き換えられた、修飾されたmiR-194の投与を含む。
【0032】
特定の実施形態では、本方法は、がんを有する又はがんの素因がある対象に本開示の核酸組成物を投与する工程を含み、核酸組成物は、核酸配列UFGUFAANAGNAANUFNNAUFGUFGGA[配列番号3](式中、Nは、ゲムシタビン分子であり、UFは、ハロウラシル、特に、5-フルオロウラシルである)を有する修飾されたmiR-194分子である。
【0033】
一部の実例では、本方法によって処置されている対象は、哺乳類である。ある特定の実施形態では、処置されている対象は、ヒト、イヌ、ウマ、ブタ、マウス又はラットである。特定の実施形態では、対象は、がんと診断された、又はがんを発症する素因を有すると同定されたヒトである。一部の実施形態では、処置されているがんは、例えば、膵、肺、卵巣がん、乳又は膀胱がんであり得る。特定の実施形態では、処置されているがんは、膵がんである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A】本開示の例示的な修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列の化学的表現。C塩基又はU塩基がそれぞれゲムシタビン又はハロウラシルによって置き換えられていない、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列(配列番号1)の化学的表現。描写されている各例示的な修飾されたマイクロRNAの配向は、5'から3'又は3'から5'指定によって提示されている。
図1B】本開示の例示的な修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列の化学的表現。配列番号4(UFGUFAACAGCAACUFCCAUFGUFGGA)に示す、全U塩基がハロウラシル(即ち、UF)によって置き換えられたネイティブmiR-194ヌクレオチド配列の化学的表現。描写されている各例示的な修飾されたマイクロRNAの配向は、5'から3'又は3'から5'指定によって提示されている。
図1C】本開示の例示的な修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列の化学的表現。配列番号2に示す、全シトシン塩基がゲムシタビン分子(X)に置き換えられたmiR-194の化学的表現。描写されている各例示的な修飾されたマイクロRNAの配向は、5'から3'又は3'から5'指定によって提示されている。
図1D】本開示の例示的な修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列の化学的表現。配列番号3に示す、全シトシン塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられ、各ウラシル塩基が5-FU分子によって置き換えられたmiR-194ヌクレオチド配列の化学的表現。描写されている各例示的な修飾されたマイクロRNAの配向は、5'から3'又は3'から5'指定によって提示されている。
図2A】例示的な修飾されたマイクロRNA核酸は、がん細胞に進入し、標的タンパク質発現を有効に低下させる。miR-194標的SET8、並びに対照の修飾されたmiR-194(配列番号4に示す、5-FU-miR-194)及び修飾されていないmiR-194核酸と比較した、トランスフェクション剤の存在下で細胞に進入し標的(SET8)発現を阻害する、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194)及び全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号2に示す、Gem-mir-194)の能力を示すウエスタンブロット。
図2B】例示的な修飾されたマイクロRNA核酸は、がん細胞に進入し、標的タンパク質発現を有効に低下させる。ウエスタンブロットは、トランスフェクション剤の非存在下で本開示の例示的な修飾されたマイクロRNAをトランスフェクトされた細胞において、マイクロRNAが、細胞に進入し、SET8発現を阻害する一方、対照核酸は、標的発現を阻害することができなかったことを示す。
図2C】例示的な修飾されたマイクロRNA核酸は、がん細胞に進入し、標的タンパク質発現を有効に低下させる。別の例示的なmiR-194標的(BMI1)、並びに対照の修飾されたmiR-194(配列番号4に示す、5-FU-miR-194)及び修飾されていないmiR-194核酸と比較した、トランスフェクション剤の存在下で細胞に進入し標的(BMI1)発現を阻害する、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194)及び全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号2に示す、Gem-mir-194)の能力を示すウエスタンブロット。
図2D】例示的な修飾されたマイクロRNA核酸は、がん細胞に進入し、標的タンパク質発現を有効に低下させる。ウエスタンブロットは、トランスフェクション剤の非存在下で本開示の例示的な修飾されたマイクロRNAをトランスフェクトされた細胞において、マイクロRNAが、細胞に進入し、BMI1発現を阻害する一方、修飾されていないmiR-194対照核酸は、標的発現を阻害することができなかったことを示す。
図3A】例示的な修飾されたmiR-194分子による、3種の異なる膵がん細胞株のうちASPC1における、用量依存的様式での膵がん細胞生存率の阻害を示すグラフ。全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194)及び全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号2に示す、Gem-mir-194)は、外因的に発現されたネイティブmiR-194対照及び修飾されたmiR-194(配列番号4に示す、5-FU-miR-194)と比較して、膵がん細胞生存率を阻害する。
図3B】例示的な修飾されたmiR-194分子による、3種の異なる膵がん細胞株のうちPANC1における、用量依存的様式での膵がん細胞生存率の阻害を示すグラフ。全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194)及び全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号2に示す、Gem-mir-194)は、外因的に発現されたネイティブmiR-194対照及び修飾されたmiR-194(配列番号4に示す、5-FU-miR-194)と比較して、膵がん細胞生存率を阻害する。
図3C】例示的な修飾されたmiR-194分子による、3種の異なる膵がん細胞株のうちHS766Tにおける、用量依存的様式での膵がん細胞生存率の阻害を示すグラフ。全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194)及び全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194組成物(配列番号2に示す、Gem-mir-194)は、外因的に発現されたネイティブmiR-194対照及び修飾されたmiR-194(配列番号4に示す、5-FU-miR-194)と比較して、膵がん細胞生存率を阻害する。
図4】例示的な修飾されたマイクロRNA核酸組成物によるin vivo全身処置は、膵がん転移及び腫瘍成長を阻害する。転移性ヒト膵がん細胞の尾静脈注射により、膵がん転移マウスモデルを確立した。転移確立4日後に、80μgの配列番号2に示す修飾されたmiR-194核酸組成物を、2週間にわたる1日おきに1回の注射の処置頻度の静脈内注射によって送達した。例示的な修飾されたmiR-194核酸は、対照と比較して、転移性膵がん成長を阻害することができた。修飾されたmiR-194核酸で処置されたマウスは、いかなる毒性も示さなかった。
【発明を実施するための形態】
【0035】
TABLE 1(表1)。膵がん細胞株における各例示的な修飾されたマイクロRNAのIC50。ASPC1膵がん細胞において、全U塩基を5-FUに置き換えた修飾されたmiR-194(5-FU-mIR-194、配列番号4)のIC50は、6.06nMであり;全C塩基をゲムシタビンに置き換えた修飾されたmiR-194(配列番号2に示す、Gem-mir-194)のIC50は、4.29nMであり、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた修飾されたmiR-194(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194) 5のIC50は、2.88nMであった。PANC1膵がん細胞において、全U塩基を5-FUに置き換えた修飾されたmiR-194 (5-FU-mIR-194、配列番号4)のIC50は、16nMであり;全C塩基をゲムシタビンに置き換えた修飾されたmiR-194(配列番号2に示す、Gem-mir-194)のIC50は、1.92nMであり、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた修飾されたmiR-194(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194)のIC50は、0.93nMであった。HS766T膵がん細胞において、全U塩基を5-FUに置き換えた修飾されたmiR-194(5-FU-mIR-194、配列番号4)のIC50は、26.45nMであり;全C塩基をゲムシタビンに置き換えた修飾されたmiR-194(配列番号2に示す、Gem-mir-194)のIC50は、3.57nMであり、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた修飾されたmiR-194(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194) 5のIC50は、2.46nMであった。
【0036】
本開示は、1個又は複数のゲムシタビン分子を取り込む核酸組成物を提供する。いずれか1つの特定の理論に制約されることなく、驚くべきことに、本開示は、ゲムシタビン分子によるマイクロRNAオリゴヌクレオチド配列内のシトシンヌクレオチドの置換えが、がん発達、進行及び腫瘍発生を阻害するマイクロRNAの能力を増加させることを明らかにする。更に、本明細書におけるデータは、がん細胞を本開示の修飾されたマイクロRNA組成物と接触させることが、ネイティブマイクロRNA単独、又はウラシル塩基を5-FUに置き換えることにより修飾されたマイクロRNAと比較して、用量依存的様式でがん細胞の生存率を低下させることを示す。更に、本開示の修飾されたマイクロRNAが、標的特異性を保持し、有害且つ無効な送達媒体(例えば、ナノ粒子)を使用することなく送達することができ、ネイティブマイクロRNAの天然機能を消失させることなく、増強された効力及び安定性を示すことが示される。従って、本開示は、その核酸配列に1個又は複数のゲムシタビン分子を取り込んだ様々な核酸(例えば、マイクロRNA)組成物、及びがんを処置するためにこれを使用するための方法を提供する。本開示は、修飾された核酸組成物を含む医薬組成物等の製剤、及びそれを必要とする対象へのその投与を含む、がんを処置するための方法を更に提供する。
【0037】
核酸組成物
用語「マイクロRNA」又は「miRNA」又は「miR」は、メッセンジャーRNA分子(mRNA)、DNA又はタンパク質との相互作用により遺伝子の発現を調節することができる、小分子非コードリボース核酸(RNA)分子を指すように互換的に使用される。典型的には、マイクロRNAは、約19~25ヌクレオチド(塩基)の核酸配列で構成され、哺乳類細胞に見出される。成熟マイクロRNA分子は、局所的ヘアピン構造を形成する二本鎖前駆体転写物からプロセシングされた一本鎖RNA分子である。ヘアピン構造は典型的に、ダイサー酵素によって切断されて、二本鎖マイクロRNA二重鎖を形成する。例えば、Bartel、Cell、(2004)116、281~297頁を参照されたい。マイクロRNAという用語は、本明細書において、5'から3'方向及び相補鎖の3'から5'方向の両方における二重鎖(即ち、二本鎖miR)及び一本鎖miR(即ち、成熟miR)の両方を取り込む。特定の実施形態では、本開示の修飾されたmiRは、一本鎖成熟miRで構成される。
【0038】
通常、マイクロRNA二重鎖の2本の鎖の一方は、マイクロRNAリボヌクレオタンパク質複合体(マイクロRNP)にパッケージングされる。例えば、ヒトにおけるマイクロRNPは、タンパク質eIF2C2/アルゴノート(Ago2)、ヘリカーゼGemin3及びGemin4も含む。Ago1、3及び4等、アルゴノートタンパク質ファミリーの他のメンバーも、マイクロRNAと会合し、マイクロRNPを形成する。
【0039】
用語「修飾されたマイクロRNA」、「修飾されたmiRNA」、「修飾されたmiR」又は「ミミック」は、ネイティブ又は内在性マイクロRNA(修飾されていないマイクロRNA)ポリヌクレオチドとは異なるマイクロRNAを指すように本明細書で互換的に使用される。より具体的には、本開示において、修飾されたマイクロRNAは、変更されていない又は修飾されていないマイクロRNA核酸配列とは、1個又は複数の塩基が異なる。本開示の一部の実施形態では、本開示の修飾されたマイクロRNAは、少なくとも1個のシトシン(C)ヌクレオチド塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられている。他の実施形態では、本開示の修飾されたマイクロRNAは、少なくとも1個のウラシル(U)ヌクレオチド塩基が5-ハロウラシルによって置き換えられ、少なくとも1個のシトシン(C)ヌクレオチド塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられている。
【0040】
用語「ゲムシタビン」は、本明細書において、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン、2',2'-ジフルオロデオキシシチジン、4-アミノ-1-((2R,4R,5R)-3,3-ジフルオロ-4-ヒドロキシ-5-(ヒドロキシメチル)-テトラヒドロフラン-2-イル)ピリミジン-2(1H)-オン、ゲムシタビン塩酸塩、dFdC、dFdCyd及びジフルオロデオキシシチジン塩酸塩と同義である。ゲムシタビンは、化学療法として使用されるヌクレオシド(ピリミジン)アナログである。ゲムシタビンは、Gemzar(登録商標)として販売されている。ゲムシタビンは、次の構造を有する。
【0041】
【化1】
【0042】
ゲムシタビンは、複製の際にDNA内に取り込むことにより、腫瘍成長を停止することが知られている。ゲムシタビンは、非小細胞肺がん、膵がん、膀胱がん、乳がん及び卵巣がんを含む様々な型のがんの処置に承認されている。
【0043】
本開示の一態様では、少なくとも1個のシトシン塩基(C)がゲムシタビン分子に置き換えられた、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列を含む核酸組成物が記載されている。本明細書で更に記述される通り、本開示の核酸組成物は、少なくともがんの処置において有用である。特に、本開示の例示的な修飾されたマイクロRNAは、膵がんの処置において有効であることが本明細書で示された。
【0044】
ある特定の実施形態では、修飾されたマイクロRNAは、1個よりも多い又は正確に1個のシトシンがゲムシタビンによって置き換えられている。一部の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、2、3、4又は5個のシトシン塩基をゲムシタビン分子に置き換える。特定の実施形態では、ネイティブマイクロRNAの全シトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。
【0045】
特定の実施形態では、核酸組成物は、少なくとも1個のシトシン塩基をゲムシタビン分子に置き換えることにより修飾された、修飾されたネイティブmiR-194ヌクレオチド配列を含む。
【0046】
用語「miR-194」は、本明細書において、用語「マイクロRNA-194」又は「miRNA-194」と同義であることを意図し、次のヌクレオチド配列:UGUAACAGCAACUCCAUGUGGA[配列番号1]を有するオリゴヌクレオチドを指す。前述のヌクレオチド配列は、他に指定がなければmiR-194無修飾(即ち、「ネイティブ」)配列と本明細書で称される。一部の実施形態では、miR-194は、ステムループ含有二本鎖マイクロRNAについては受託番号MI0000488又はMI0000732を有するhsa-miR-194;受託番号MIMAT0000460に示す成熟miR 5'から3'鎖についてはhsa-miR-194-5p;及び受託番号MIMAT0004671によって示す二重鎖分子の3'から5'相補鎖についてはhsa-miR-194-3pと当分野で称することができる。miR-194は、よく知られており、詳細に研究されている。例えば、Lagos-Quintana M等、RNA. 9:175~179頁(2003)を参照されたい。上述の修飾されたマイクロRNAの場合のように、miR-194ミミックを作製するための方法は、当業者に知られている。他に記述がなければ、かかる修飾されたmiR-194核酸形態は全て、本明細書において、用語「miR-194ミミック」の範囲内であると本明細書で考慮される。
【0047】
一般に、修飾されたmiR-194(即ち、miR-194ミミック)は、miR-194ネイティブ配列に共有結合により付け加えられた、1、2、3、4又は5個以下の追加的なヌクレオチドを含有し、追加的な塩基は、C、U、G及びAから独立に選択される、又は追加的な塩基は、排他的に、C、U、G若しくはAのうちの1種であり得る。典型的には、miR-194ミミックは、一本鎖形態で使用されるが、二本鎖バージョンも本明細書で考慮される。
【0048】
より具体的には、修飾されたマイクロRNA組成物は、少なくともネイティブmiR-194ヌクレオチド配列を含有し、少なくとも1、2、3、4個の又は全シトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。一実例では、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列における的確に1個のシトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。他の実例では、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも2個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。更に他の実例では、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも3個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。別の実例では、miR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも4個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。特定の実施形態では、ネイティブmiR-194配列のガイド鎖における全シトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。
【0049】
例示的な実施形態では、本開示の核酸組成物は、UGUAANAGNAANUNNAUGUGGA[配列番号2](式中、Nは、ゲムシタビン分子である)の修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列を有する。
【0050】
本開示は、また、少なくとも1個のウラシル塩基が5-フルオロウラシル(5-FU)等の5-ハロウラシルによって置き換えられ、少なくとも1個のシトシン塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられたマイクロRNAが、ネイティブマイクロRNA単独又は少なくとも1個のウラシル塩基を5-FUに置き換えることにより修飾されたマイクロRNAと比較して、がん細胞における改善された治療効果を示すことを示す。
【0051】
従って、本開示は、少なくとも1個のウラシル塩基が5-ハロウラシルによって置き換えられ、少なくとも1個のシトシン塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられた、修飾されたマイクロRNAを含む核酸組成物も提供する。ある特定の実施形態では、修飾されたマイクロRNAは、1個よりも多い又は正確に1個のウラシルが5-ハロウラシルによって置き換えられており、1個よりも多い又は正確に1個のシトシンがゲムシタビンによって置き換えられている。一部の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、2、3、4又は5個のウラシル塩基を5-ハロウラシルに、2、3、4又は5個のシトシン塩基をゲムシタビン分子に置き換える。特定の実施形態では、ネイティブマイクロRNAの全ウラシル塩基が、5-ハロウラシルによって置き換えられており、ネイティブマイクロRNAの全シトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられている。
【0052】
一部の実施形態では、5-ハロウラシルは、例えば、5-フルオロウラシル、5-クロロウラシル、5-ブロモウラシル又は5-ヨードウラシルである。特定の実施形態では、5-ハロウラシルは、5-フルオロウラシルである。
【0053】
ある特定の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、1個よりも多い5-ハロウラシルを含み、5-ハロウラシルのそれぞれは同じである。他の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、1個よりも多い5-ハロウラシルを含み、5-ハロウラシルのそれぞれは異なる。他の実施形態では、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、2個よりも多い5-ハロウラシルを含み、修飾されたマイクロRNAヌクレオチド配列は、異なる5-ハロウラシルの組合せを含む。
【0054】
一部の実施形態では、核酸組成物は、ハロゲン原子と同様の効果をもたらす基により5位において少なくとも1個のウラシルヌクレオベースを誘導体化することにより修飾されたヌクレオチド配列を含有する。一部の実施形態では、同様の効果をもたらす基は、質量又は空間的寸法において、ハロゲン原子と同様のサイズ、例えば、最大で20、30、40、50、60、70、80、90若しくは80g/mol又はそれ未満の分子量を有する。ある特定の実施形態では、ハロゲン原子と同様の効果をもたらす基は、例えば、メチル基、トリハロメチル(例えば、トリフルオロメチル)基、シュードハライド(pseudohalide)(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、シアノ又はシアン酸)又は重水素(D)原子であり得る。ハロゲン原子と同様の効果をもたらす基は、マイクロRNAヌクレオチド配列における5-ハロウラシル塩基の非存在下で又はそれに加えて存在し得る。
【0055】
本開示の例示的な実施形態では、少なくとも1個のウラシルヌクレオチド塩基を5-ハロウラシルに置き換え、少なくとも1個のシトシンヌクレオチド塩基をゲムシタビン分子に置き換えることにより修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列を含有する核酸組成物が提供される。一実例では、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列の的確に1個のシトシン塩基が、ゲムシタビン分子によって置き換えられ、的確に1個のウラシル塩基が、5-ハロウラシルによって置き換えられている。他の実例では、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも2個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられ、的確に又は少なくとも2個のウラシル塩基がそれぞれ、5-ハロウラシルによって置き換えられている。更に他の実例では、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも3個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられ、的確に又は少なくとも3個のウラシル塩基がそれぞれ、5-ハロウラシルによって置き換えられている。別の実例では、ネイティブmiR-194ヌクレオチド配列における的確に又は少なくとも4個のシトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられ、的確に又は少なくとも4個のウラシル塩基がそれぞれ、5-ハロウラシルによって置き換えられている。特定の実施形態では、ネイティブmiR-194配列のガイド鎖における全シトシン塩基がそれぞれ、ゲムシタビン分子によって置き換えられ、全ウラシル塩基がそれぞれ、5-FU等の5-ハロウラシルによって置き換えられている。
【0056】
例示的な実施形態では、本開示の核酸組成物は、UFGUFAANAGNAANUFNNAUFGUFGGA[配列番号3](式中、Nは、ゲムシタビン分子であり、UFは、ハロウラシル、特に、5-フルオロウラシルである)の修飾されたmiR-194ヌクレオチド配列を有する。
【0057】
本明細書に記載されている修飾されたマイクロRNA核酸組成物は、核酸を合成するためのよく知られた方法のいずれかを使用して合成することができる。特定の実施形態では、核酸組成物は、ホスホラミダイト化学を使用したよく知られたプロセスのいずれか等、自動オリゴヌクレオチド合成によって産生される。修飾されたmiR配列(例えば、miR-194配列)に1個又は複数のゲムシタビン分子又は5-ハロウラシル塩基を導入するために、ゲムシタビン又は5-ハロウラシルヌクレオシドホスホラミダイトは、核酸配列に含まれるべき天然塩基(例えば、A、U、G及びC)を含有するヌクレオシドのホスホラミダイト誘導体と共に、前駆体塩基として含まれてよい。
【0058】
一部の実施形態では、本開示の核酸組成物は、プラスミド、PCR断片若しくは合成DNA鋳型からのin vitro RNA転写の使用又は組換え(in vivo)RNA発現方法の使用による等、生合成により産生することができる。例えば、C. M. Dunham等、Nature Methods、(2007) 4(7)、547~548頁を参照されたい。本開示の修飾されたマイクロRNA配列(例えば、miR-194配列)は、当技術分野でよく知られた技法により、ポリエチレングリコール(PEG)又は炭化水素又は標的化剤、特に、葉酸等のがん細胞標的化剤による官能化による等、更に化学修飾することができる。かかる基を含めるために、所望の官能基を付け加えるために使用することができる反応基(例えば、アミノ、アルデヒド、チオール又はカルボン酸基)が先ず、オリゴヌクレオチド配列に含まれてよい。かかる反応又は官能基は、産生されたままの(as-produced)核酸配列に取り込むことができるが、反応又は官能基は、反応基又は反応性前駆体基を含有する非ヌクレオシドホスホラミダイトが含まれる自動オリゴヌクレオチド合成を使用することにより、より容易に含めることができる。
【0059】
修飾された核酸製剤
本開示は、修飾されたマイクロRNAがそれぞれ、抗がん療法薬としての強力な有効性を示すことを明らかにする。注目すべきことに、検査した修飾されたマイクロRNA核酸組成物のそれぞれは、用量依存的様式で、がん細胞生存率、腫瘍成長及び発達を低下させる。
【0060】
従って、本開示はまた、本明細書に記載されている修飾されたマイクロRNA核酸組成物の製剤を対象とする。例えば、本核酸組成物は、薬学的使用のために製剤化することができる。ある特定の実施形態では、製剤は、本明細書に記載されている核酸組成物と、薬学的に許容される担体とを含有する医薬組成物である。
【0061】
一部の実施形態では、本開示の製剤は、少なくとも1個のシトシン塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられた、修飾されたmiR-194核酸、少なくとも1個のシトシン塩基がゲムシタビン分子によって置き換えられ、少なくとも1個のウラシル塩基がハロウラシルによって置き換えられた、修飾されたmiR-194核酸、又はこれらの組合せと、薬学的に許容される担体とを含む。
【0062】
より具体的には、次のヌクレオチド配列に示す修飾されたマイクロRNA核酸のうち1種又は複数は、薬学的適用及び使用のために製剤化することができる;UGUAAXAGXAAXUXXAUGUGGA[配列番号2]又はUFGUFAAXAGXAAXUFXXAUFGUFGGA[配列番号3]。
【0063】
用語「薬学的に許容される担体」は、薬学的に許容される希釈剤、媒体又は賦形剤と同義として本明細書で使用される。医薬組成物の型及び意図される投与機序に応じて、核酸組成物は、薬学的に許容される担体に溶解又は懸濁することができる(例えば、エマルションとして)。薬学的に許容される担体は、健全な医学的判断の範囲内で、対象の組織と接触した使用に適した、液体又は固体化合物、材料、組成物及び/又は剤形のいずれかであり得る。担体は、それが与えられる対象にとって有害ではないという意味で「許容される」べきであり、製剤の他の成分と適合性である、即ち、その生物学的又は化学的機能を変更しない。
【0064】
薬学的に許容される担体として機能し得る材料のいくつかの非限定的な例は、次のものを含む:ラクトース、グルコース及びスクロース等の糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン等のデンプン;カルボキシルメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース等のセルロース及びその誘導体;ゼラチン;タルク;ワックス;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油等の油;エチレングリコール及びプロピレングリコール等のグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコール等のポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチル等のエステル;寒天;緩衝剤;水;等張性生理食塩水;pH緩衝溶液;並びに医薬製剤に用いられる他の無毒性適合性物質。薬学的に許容される担体は、製造支援物質(例えば、滑沢剤、タルク、ステアリン酸マグネシウム、カルシウム若しくは亜鉛、又はステアリン酸)、溶媒又はカプセル封入材料を含むこともできる。所望に応じて、ある特定の甘味料及び/又は調味料及び/又は着色料を添加することができる。他の適した賦形剤は、標準薬学教科書、例えば、「Remington's Pharmaceutical Sciences」、The Science and Practice of Pharmacy、第19版、Mack Publishing Company、Easton, Pa.、(1995)に見出すことができる。
【0065】
一部の実施形態では、薬学的に許容される担体は、固体医薬組成物のかさを増加させ、医薬剤形を患者及び介護者がより取り扱い易くする、希釈剤を含むことができる。固体組成物のための希釈剤は、例えば、微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標))、超微粒セルロース、ラクトース、デンプン、アルファ化デンプン、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、糖、デキストレート(dextrate)、デキストリン、デキストロース、第二リン酸カルシウム二水和物、第三リン酸カルシウム、カオリン、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、マルトデキストリン、マンニトール、ポリメタクリレート(例えば、Eudragit(登録商標))、塩化カリウム、粉末セルロース、塩化ナトリウム、ソルビトール及びタルクを含む。
【0066】
本開示の核酸組成物は、当技術分野で知られた方法に従って組成物及び剤形へと製剤化することができる。ある特定の実施形態では、製剤化された組成物は、次のものに適応された形態を含む、固体又は液体形態での投与のために特別に製剤化することができる:(1)経口投与、例えば、錠剤、カプセル、粉末、顆粒、舌への塗布のためのペースト、水性若しくは非水性溶液若しくは懸濁液、水薬(drench)又はシロップ;(2)非経口投与、例えば、滅菌溶液又は懸濁液としての、例えば、皮下、筋肉内又は静脈内注射による;(3)局所的適用、例えば、皮膚、肺又は粘膜に適用されるクリーム、軟膏又はスプレーとして;又は(4)例えば、ペッサリー、クリーム又は泡として腟内又は直腸内に;(5)舌下又は頬側に;(6)眼球に;(7)経皮的に;又は(8)経鼻に。
【0067】
一部の実施形態では、本開示の製剤は、錠剤等の剤形になるように圧迫された固体医薬剤を含み、その機能が、圧縮後に活性成分及び他の賦形剤を一緒に結合するのに役立つことを含む、賦形剤を含むことができる。固体医薬組成物のための結合剤は、アカシア、アルギン酸、カルボマー(例えば、カーボポール(carbopol))、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、水素化植物油、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocel(登録商標))、液体グルコース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、マルトデキストリン、メチルセルロース、ポリメタクリレート、ポビドン(例えば、Kollidon(登録商標)、Plasdone(登録商標))、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム及びデンプンを含む。
【0068】
対象の胃における圧迫された固体医薬組成物の溶解速度は、組成物への崩壊剤の添加によって増加させることができる。崩壊剤は、アルギン酸、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(例えば、Ac-Di-Sol(登録商標)、Primellose(登録商標))、コロイド二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン(例えば、Kollidon(登録商標)、Polyplasdone(登録商標))、グアーガム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポラクリリン(polacrilin)カリウム、粉末セルロース、アルファ化デンプン、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム(例えば、Explotab(登録商標))及びデンプンを含む。
【0069】
従って、ある特定の実施形態では、流動促進剤を製剤に添加して、圧迫されていない固体薬剤の流動性を改善し、投薬の正確さを改善することができる。流動促進剤として機能することができる賦形剤は、コロイド二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、デンプン、タルク及び第三リン酸カルシウムを含む。
【0070】
錠剤等の剤形が、粉末組成物の圧迫によって作製される場合、組成物は、打ち抜き型からの圧力にさらされる。いくつかの賦形剤及び活性成分は、打ち抜き型の表面に接着する傾向を有し、これにより、産物に窪み及び他の表面凹凸が生じる場合がある。滑沢剤を組成物に添加して、接着を低下させ、型からの産物の放出を緩和することができる。滑沢剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、モノステアリン酸グリセリン、パルミトステアリン酸グリセリン(glyceryl palmitostearate)、水素化ヒマシ油、水素化植物油、鉱物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム(sodium stearyl fumarate)、ステアリン酸、タルク及びステアリン酸亜鉛を含む。
【0071】
打錠又はカプセル充填のための製剤化された医薬組成物は、湿式造粒によって調製することができる。湿式造粒において、粉末形態の活性成分及び賦形剤の一部又は全てがブレンドされ、次いで、粉末を顆粒へと集塊させる液体、典型的には水の存在下で更に混合される。造粒物は、ふるいにかけ及び/又は粉にし、乾燥させ、次いで所望の粒径となるまでふるいにかける及び/又は粉にする。次に、造粒物を打錠することができる、又は流動促進剤及び/若しくは滑沢剤等、他の賦形剤を打錠に先立ち添加することができる。打錠組成物は、従来、乾式ブレンドによって調製することができる。例えば、活性及び賦形剤のブレンドされた組成物は、スラグ又はシートへと圧迫し、次いで、圧迫された顆粒へと粉砕することができる。圧迫された顆粒はその後、錠剤へと圧縮することができる。
【0072】
他の実施形態では、乾式造粒の代替として、ブレンドされた組成物は、直接的圧縮技法を使用して、圧迫された剤形へと直接的に圧縮することができる。直接的圧縮は、顆粒なしでより均一な錠剤を産生する。直接的圧縮打錠に特によく適する賦形剤は、微結晶性セルロース、噴霧乾燥されたラクトース、第二リン酸カルシウム二水和物及びコロイドシリカを含む。直接的圧縮打錠における上述及び他の賦形剤の適切な使用は、直接的圧縮打錠の特定の製剤課題における経験及び技能を有する当業者に知られている。カプセル充填は、打錠に関連して記載された上述のブレンド及び造粒物のいずれかを含むことができる;しかし、これらは、最終打錠工程には付されない。
【0073】
本開示の液体医薬組成物において、薬剤及び他のいずれかの固体賦形剤は、水、注射用の水、植物油、アルコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール又はグリセリン等の液体担体に溶解又は懸濁される。液体医薬組成物は、液体担体に不溶性の活性成分又は他の賦形剤を組成物全体に均一に分散するために、乳化剤を含有することができる。液体製剤は、注射用、腸内又は皮膚軟化薬型の製剤として使用することができる。本発明の液体組成物において有用であり得る乳化剤は、例えば、ゼラチン、卵黄、カゼイン、コレステロール、アカシア、トラガント、ツノマタ(chondrus)、ペクチン、メチルセルロース、カルボマー、セトステアリルアルコール及びセチルアルコールを含む。
【0074】
一部の実施形態では、本開示の液体医薬組成物は、産物の口当たりを改善する、及び/又は胃腸管の裏層をコーティングするための粘性増強剤を含有することもできる。かかる薬剤は、アカシア、アルギン酸、ベントナイト、カルボマー、カルボキシメチルセルロースカルシウム又はナトリウム、セトステアリルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ゼラチン、グアーガム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、マルトデキストリン、ポリビニルアルコール、ポビドン、プロピレンカーボネート、プロピレングリコール、アルギン酸塩、アルギン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプン、トラガント及びキサンタンガムを含む。他の実施形態では、本開示の液体組成物は、グルコン酸、乳酸、クエン酸又は酢酸、グルコン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム又は酢酸ナトリウム等のバッファーを含有することもできる。
【0075】
ソルビトール、サッカリン、サッカリンナトリウム、スクロース、アスパルテーム、フルクトース、マンニトール及び転化糖等の甘味剤は、味を改善するために本開示のある特定の製剤に添加することができる。調味料及び風味増強薬は、剤形をより患者に受け入れ易くすることができる。本開示の組成物に含まれ得る、医薬製品のための一般的な調味料及び風味増強薬は、マルトール、バニリン、エチルバニリン、メントール、クエン酸、フマル酸、エチルマルトール及び酒石酸を含む。
【0076】
アルコール、安息香酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール及びエチレンジアミン四酢酸等の保存料及びキレート剤は、経口摂取に安全なレベルで添加して、貯蔵安定性を改善することができる。固体及び液体組成物を、いずれかの薬学的に許容される着色料を使用して染めて、それらの外観を改善する、並びに/又は製品及び単位投薬量レベルの患者による同定を容易にすることもできる。
【0077】
本開示の投薬製剤は、ハード又はソフトシェルのいずれかの内に組成物、例えば、本開示の粉末又は造粒固体組成物を含有するカプセルであり得る。シェルは、ゼラチンから作られていてよく、必要に応じて、グリセリン及びソルビトール等の可塑剤、並びに乳白剤又は着色料を含有する。
【0078】
がんを処置するための方法
上に記す通り、本開示の修飾されたマイクロRNA核酸組成物及びその製剤は、対応する無修飾ネイティブマイクロRNAの外因的発現及び/又は他の知られたがん療法によって示される活性と比較して、予想外の且つ並外れた抗がん活性を示す。従って、本開示の別の態様は、本開示の1種又は複数の修飾されたマイクロRNA核酸組成物又はその製剤の有効量を哺乳類に投与することにより、哺乳類におけるがんを処置するための方法を提供する。
【0079】
図2A図2Dに示す通り、本開示の例示的な修飾されたマイクロRNA核酸、即ち、修飾されたmiR-194は、がん細胞におけるSET8タンパク質発現(図2A及び図2B)、BMI1タンパク質発現(図2C及び図2D)及び活性を抑制する。より具体的には、図2A図2Dは、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた修飾されたマイクロRNA(配列番号2に示す、Gem-mir-194)が、トランスフェクション剤あり又はなしでがん細胞に進入し、SET8及びBMI1を阻害することを示す。更に、全C塩基をゲムシタビンに置き換え、全U塩基を5-FUに置き換えた修飾されたマイクロRNA(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194)は、トランスフェクション剤あり又はなしでがん細胞に進入し、SET8又はBMI1を阻害することができる。
【0080】
加えて、また、図3A図3Cに示す通り、本明細書に記載されている例示的な修飾されたマイクロRNAは全て、膵がん細胞生存率を低下させる。より具体的には、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた修飾されたマイクロRNA(配列番号2に示す、Gem-mir-194)は、用量依存的様式で、3種の異なる膵がん細胞株(即ち、PANC1、ASPC1及びHS766T)において膵がん細胞生存率を低下させる。同様に、全C塩基をゲムシタビンに置き換え、全U塩基を5-FUに置き換えた修飾されたマイクロRNA(配列番号3に示す、5-FU-Gem-miR-194)は、用量依存的様式で、検査した全膵がんモデルにおいて膵がん細胞生存率を阻害する。
【0081】
更に、本修飾されたmiR組成物を検査したところ、in vivoで治療上有効であることが見出された。例えば、図4は、本開示の2種の例示的な修飾されたマイクロRNA(例えば、配列番号2に示す、修飾されたmiR-194)による静脈内処置が、in vivoで腫瘍成長を阻害することによりがん(例えば、膵がん)を有効に処置することを示す。
【0082】
従って、がんを処置するための開示されている方法は、本開示の1種又は複数の修飾された核酸組成物(例えば、修飾されたmiR-194核酸等、修飾されたマイクロRNA)を対象に投与する工程を含む。ある特定の実施形態では、核酸組成物は、核酸組成物及び1種又は複数の薬学的担体を含む製剤として投与することができる。
【0083】
特定の実施形態では、本開示の核酸組成物は、送達媒体又は薬学的担体の非存在下(即ち、ネイキッド)で投与することができる。例えば、図2B及び図2Dを参照されたい。
【0084】
用語「対象」は、本明細書において、いずれかの哺乳類を指す。哺乳類は、いかなる哺乳類であってもよいが、本明細書における方法は、より典型的には、ヒトを対象とする。語句「それを必要とする対象」は、本明細書において、対象という用語の内に含まれ、処置を必要とする、特に、がんを有する、又はがん性若しくは前がん性状態の医学的に決定されたリスク上昇を有する、いずれかの哺乳類対象を指す。特定の実施形態では、対象は、ヒトがん患者を含む。
【0085】
用語「処置」、「処置する」及び「処置すること」は、用語「有効量を投与する」と同義である。これらの用語は、がん等の疾患、病態若しくは障害の1種若しくは複数の症状を治癒、寛解、安定化、低下させる、又はかかる疾患、病態若しくは障害を予防する意図で対象の医学的管理を意味するものとする。これらの用語は、互換的に使用され、活性処置、即ち、特に、疾患、病態又は障害の改善に向けられた処置を含み、また、原因処置、即ち、関連する疾患、病態又は障害の原因の除去を目的とする処置も含む。加えて、処置することは、対症処置、即ち、疾患、病態又は障害の治癒よりも寧ろ、症状の軽減のために設計された処置;予防的処置、即ち、関連する疾患、病態又は障害の発症の最小化又は部分的若しくは完全阻害を対象とする処置;及び支持的処置、即ち、関連する疾患、病態又は障害の改善を目的とする別の特異的治療法の補充に用いられる処置を含む。処置は、疾患、病態若しくは障害を治癒、寛解、安定化又は予防することが意図されるが、治癒、寛解、安定化又は予防を実際にもたらす必要はないことが理解される。処置の効果は、関与する疾患、病態又は障害に適するように、本明細書に記載され当技術分野で知られている通りに、測定又は評価することができる。かかる測定及び評価は、定性的及び/又は定量的観点から行うことができる。よって、例えば、疾患、病態若しくは障害、及び/又は疾患、病態若しくは障害の症状の特徴又は特色は、いずれかの効果まで又はいずれかの量まで低下させることができる。特定の実施形態では、がん等の疾患の処置は、がん細胞の増殖の阻害を含む。一部の実施形態では、がんの処置は、対象における増殖するがん細胞の量の低下、腫瘍成長又は腫瘍サイズの低下を検出することにより決定することができる。
【0086】
ある特定の実施形態では、本開示の核酸組成物は、がんの処置に使用される。
【0087】
用語「がん」は、本明細書において、例えば、腫瘍の悪性及び転移性成長を含む、異常細胞の制御されない分裂及び成長に起因するいずれかの疾患を含む。用語「がん」は、前がん性状態、又はがん性若しくは前がん性状態のリスク上昇によって特徴付けられる状態も含む。がん又は前がん(新生物状態)は、内臓及び皮膚を含む、身体のいずれかの部分に位置することができる。よく知られているように、がんは、リンパ節及び血管を経由して、また、腫瘍が対象の静脈、毛細血管及び動脈に侵入した後は血液により、腫瘍を囲む正常な非がん性組織に侵入することにより、対象の全身に拡散する。がん細胞が、原発性腫瘍から離脱する(「転移する」)場合、続発性腫瘍が、罹患した対象の全身に生じ、転移性病変を形成する。
【0088】
本方法を使用した処置に適用可能ながん細胞のいくつかの非限定的な例は、肺、乳房、膵臓、膀胱及び卵巣を含む。がん又は新生物は、1種又は複数の癌腫、肉腫、リンパ腫、芽細胞腫又は奇形腫(生殖細胞腫瘍)の存在を含むこともできる。
【0089】
一部の実施形態では、対象は、膵がんを有する、又は例えば慢性膵炎と診断される等の膵がんを得る医学的に決定されたリスク上昇を有する。
【0090】
ある特定の実施形態では、本開示の対象は、乳がんを有する、又は乳がんを得ることの医学的に決定されたリスク上昇を有する。特定の実施形態では、乳がんは、三種陰性乳がん、腺管癌又は小葉癌である。
【0091】
他の実施形態では、対象は、卵巣がんを有する、又は卵巣がんを得ることの医学的に決定されたリスク上昇を有する。
【0092】
更に他の実施形態では、対象は、膀胱がんを有する、又は膀胱がんを得ることの医学的に決定されたリスク上昇を有する。
【0093】
具体例では、本開示の修飾されたマイクロRNAは、膵がんの処置に使用される。図3A図3C及び図4に示す通り、修飾されたmiR-194マイクロRNAのそれぞれを使用して、膵がんを処置することができる。膵がんは、膵上皮内新生物又はPanINと呼ばれる前駆病変から生じる。このような病変は典型的に、膵外分泌の小型の管に位置し、細胞学的非定型性の程度に応じて、低悪性度異形成、中等度異形成又は高悪性度異形成病変として分類することができる。かかる病変は典型的に、KRAS遺伝子における活性化突然変異が、CDKN2A、TP53及びSMAD4におけるある特定の不活性化突然変異と共に存在することを示す。まとめると、これらの遺伝的突然変異は、浸潤性のがんの形成をもたらす。膵がんは、原発性腫瘍のサイズ、並びに膵臓の外部で成長して周囲の臓器に入ったか否か;腫瘍が近くのリンパ節に拡散したか否か、及び身体の他の臓器(例えば、肝臓、肺、腹部)に転移したか否かに基づきステージ分類される。次に、この情報は組み合わされ、特異的ステージ、即ち、0、1A、1B、2A、2B、3及び4を提供するように使用される。ステージゼロ(0)に関して、膵腫瘍は、膵管細胞の最上層に限局され、より深い組織には侵入していない。原発性腫瘍は、膵上皮内癌又は膵上皮内新生物IIIにおける等、膵臓の外部に拡散していない。ステージ1A膵腫瘍は典型的に、膵臓に限局され、2cm以下の直径である。更に、ステージ1A膵腫瘍は、近くのリンパ節又は遠隔部位に拡散していない。ステージ1B膵腫瘍は、膵臓に限局され、2cm直径よりも大きい。ステージ1B膵腫瘍は、近くのリンパ節又は遠隔部位に拡散していない。ステージ2A膵腫瘍は、膵臓の外部で成長するが主要血管又は神経には入らない腫瘍を示すが、がんは、近くのリンパ節又は遠隔部位に拡散していない。ステージ2B膵がんを示す対象は、膵臓に限局される、又は膵臓の外部で成長するが主要血管若しくは神経には入らないのいずれかであるが、近くのリンパ節に拡散した腫瘍を呈する。ステージ3膵がんを示す対象は、膵臓の外部で成長し主要血管又は神経に入るが、遠隔部位に拡散した腫瘍を呈する。ステージ4膵がんは、遠隔部位、リンパ節及び臓器に転移した。
【0094】
本開示によれば、がんを処置する方法は、当技術分野で一般的に知られた経路のいずれかによる、本発明の1種又は複数の核酸組成物の投与を含む。これには、例えば、(1)経口投与;(2)非経口投与、例えば、皮下、筋肉内又は静脈内注射による;(3)局所的投与;又は(4)腟内若しくは直腸内投与;(5)舌下若しくは頬側投与;(6)眼球投与;(7)経皮的投与;(8)経鼻投与;及び(9)それを必要とする臓器若しくは細胞への直接的投与が挙げられる。
【0095】
特定の実施形態では、本開示の修飾されたマイクロRNA組成物は、注射によって対象に投与される。一実施形態では、治療有効量の修飾されたマイクロRNA組成物は、静脈内注射される。別の実施形態では、治療有効量の修飾されたマイクロRNA組成物は、腹腔内注射される。
【0096】
投与される本開示の核酸組成物の量(投薬量)は、がんの型及びステージ、補助的又はアジュバント薬物の存在又は非存在、並びに対象の体重、年齢、健康及び薬剤に対する耐性を含むいくつかの因子に応じる。これらの様々な因子に応じて、投薬量は、例えば、約2mg/kg体重、約5mg/kg体重、約10mg/kg体重、約15mg/kg体重、約20mg/kg体重、約25mg/kg体重、約30mg/kg体重、約40mg/kg体重、約50mg/kg体重、約60mg/kg体重、約70mg/kg体重、約80mg/kg体重、約90mg/kg体重、約100mg/kg体重、約125mg/kg体重、約150mg/kg体重、約175mg/kg体重、約200mg/kg体重、約250mg/kg体重、約300mg/kg体重、約350mg/kg体重、約400mg/kg体重、約500mg/kg体重、約600mg/kg体重、約700mg/kg体重、約800mg/kg体重、約900mg/kg体重又は約1000mg/kg体重であり得、用語「約」は、指し示される値の±10%、5%、2%又は1%以内であると一般に理解される。投薬量はまた、前述の値のうちいずれか2つによって境界される範囲内であり得る。ルーチン実験法を使用して、がん性若しくは前がん性状態における化合物の効果、又はマイクロRNA発現レベル若しくは活性における効果(例えば、miR-194)、又はSET8及び/若しくはBMI1レベル若しくは活性等のその標的における効果、又は疾患病理学をモニターすることにより、患者毎に適切な投薬量レジメンを決定することができ、これらは全て、当技術分野で知られた方法に従って高頻度且つ容易にモニターすることができる。上に記述される様々な因子に応じて、上述の例示的な核酸用量のいずれかは、1日に1回、2回又は複数回投与することができる。
【0097】
本方法による使用のための、本明細書に記載されている核酸組成物及び必要に応じていずれか追加的な化学療法剤の能力は、細胞傷害性アッセイ、アポトーシス染色アッセイ、異種移植アッセイ及び結合アッセイ等、当技術分野でよく知られた薬理学的モデルを使用して決定することができる。
【0098】
本明細書に記載されている核酸組成物は、本明細書に記載されている核酸(nucleic)組成物とは異なる補助的又はアジュバント薬物であり得る1種又は複数の化学療法剤と同時投与してもしなくてもよい。
【0099】
本明細書において、「化学療法」又は語句「化学療法剤」は、がんの処置において有用な薬剤である。本明細書に記載されている方法と併せると有用な化学療法剤は、例えば、直接的又は間接的のいずれかで、BMI1をモジュレートするいずれかの薬剤を含む。化学療法剤の例は、メトトレキセート及びフルオロピリミジンに基づくピリミジンアンタゴニスト、5-フルオロウラシル(5-FU)(Carac(登録商標)クリーム、Efudex(登録商標)、Fluoroplex(登録商標)、Adrucil(登録商標))並びにS-1;ポリグルタミン酸化可能な(polyglutamatable)葉酸代謝拮抗薬化合物;ラルチトレキセド(Tomudex(登録商標))、GW1843及びペメトレキセド(Alimta(登録商標))及びポリグルタミン酸化不可能な葉酸代謝拮抗薬化合物を含む葉酸代謝拮抗薬;ノラトレキシド(nolatrexed)(Thymitaq(登録商標))、プレビトレキセド(plevitrexed)、BGC945等の代謝拮抗薬;デノプテリン(denopterin)、メトトレキセート、プテロプテリン(pteropterin)、トリメトレキセート等の葉酸アナログ;並びにフルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン(thiamiprine)、チオグアニン等のプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン等のピリミジンアナログを含む。本開示の特定の実施形態では、化学療法剤は、例えば、YAP1、BMI1、SET8、DCLK1、BCL2、チミジル酸シンターゼ又はE2F3等、異常細胞増殖又はアポトーシスに関係付けられるシグナル伝達経路に関与する遺伝子又は遺伝子産物の発現又は活性を阻害することができる化合物;及び上述のいずれかの薬学的に許容される塩、酸又は誘導体である。
【0100】
他の実施形態では、化学療法は、メトトレキセート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、シスプラチン、オキサリプラチン、ブレオマイシン(bleomycine)、ビンブラスチン、ゲムシタビン、ビンクリスチン、エピルビシン、フォリン酸、パクリタキセル及びドセタキセルのうち1種又は複数等、がん薬物のいずれかであり得る。化学療法剤は、核酸組成物による治療法を開始する前に、その間に又はその後に投与することができる。
【0101】
一部の実施形態では、化学療法剤は、抗がん薬、又は抗がん薬のための組織感作物質若しくは他の促進物質である。一部の実施形態では、共薬(co-drug)は、本開示のマイクロRNAミミック等の別の核酸若しくは別のmiRNA、ゲムシタビン又は遊離5-FUであり得る。
【0102】
特定の実施形態では、他の核酸は、BCL2 3'UTRの部分に相補的な低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、siRNA又は核酸である。
【0103】
一部の実施形態では、化学療法剤は、共薬である。
【0104】
Setドメイン含有タンパク質8、SET8又はSETD8(GenBank AF287261)は、ヒストンH5のリジン-20を主にモノメチル化するリジンメチルトランスフェラーゼである。SET8は、転写調節、ヘテロクロマチン形成、ゲノム安定性、細胞周期進行及び発生をモジュレートする。Yang, F.等、EMBO J.(2012)31:110~123頁を参照されたい。従って、SET8の発現を阻害するいずれかの薬物は、本明細書で共薬として考慮することができる。
【0105】
ポリコーム複合体タンパク質BMI-1、BMI1(RefSeq、NM_005180.8、NP_005171.4)は、ポリコーム群複合体1(PRC1)の主要成分であるリングフィンガータンパク質をコードする。この複合体は、体細胞性幹細胞における胚発生及び自己再生に関与する複数の調節遺伝子の必須エピジェネティックリプレッサーとしてクロマチンリモデリングを介して機能する。BMI1タンパク質は、DNA損傷修復における中心的役割を果たす。BMI1遺伝子は、癌遺伝子であり、異常発現は、多数のがんに関連し、ある特定の化学療法に対する抵抗性に関連する。従って、SET8の発現を阻害するいずれかの薬物は、本明細書で共薬として考慮することができる。
【0106】
E2F転写因子3、E2F3(RefSeq NG_029591.1、NM_001243076.2、NP_001230005.1)は、DNAに結合し、網膜芽細胞腫タンパク質を含むがこれらに限定されないエフェクタータンパク質と相互作用して、細胞周期調節に関与する遺伝子の発現を調節する転写因子である。従って、E2F3の発現を阻害するいずれかの薬物は、本明細書で共薬として考慮することができる。
【0107】
そのアイソフォームα(NM_000633.2、NP_000624.2)及びβ(NM_000657.2、NP_000648.2)を含むB細胞リンパ腫2(BCL2)(RefSeq NG_009361.1、NM_000633、NP_000624)は、内因性アポトーシス経路を経てミトコンドリア調節細胞死を調節する調節因子タンパク質のBCL2ファミリーのメンバーであるBcl-2 遺伝子によってコードされる。BCL2は、BAD及びBAKタンパク質に結合することによって細胞のアポトーシス死を遮断する複合的ミトコンドリア外膜タンパク質である。BCL2阻害剤の非限定的な例は、オブリメルセン(ゲナセンス;Genta Inc.社)等のアンチセンスオリゴヌクレオチド、ABT-737(Abbott Laboratories、Inc.社)、ABT-199(Abbott Laboratories、Inc.社)及びオバトクラクス(Cephalon Inc.社)を含むBH3ミメティック小分子阻害剤を含む。BCL2の発現を阻害するいずれかの薬物は、本明細書で共薬として考慮することができる。
【0108】
チミジル酸シンターゼ(RefSeq:NG_028255.1、NM_001071.2、NP_001062.1)は、dUMPの必須メチル化を触媒して、DNAを構成する4種の塩基の1種であるdTMPを生成する遍在性の酵素である。この反応は、メチル基ドナー及び特有に還元体の両方として、補因子としてのCH H4-葉酸を要求する。CH H4-葉酸の一定した要求は、チミジル酸シンターゼ活性が、細胞の葉酸プールの補充の原因となる2種の酵素:ジヒドロ葉酸レダクターゼ及びセリントランスヒドロキシメチラーゼの活性に強く関係付けられることを意味する。チミジル酸シンターゼは、30~35kDaサブユニットのホモ二量体である。活性部位は、同時に葉酸補因子及びdUMP基質の両方に結合し、dUMPは、求核性システイン残基を介して酵素に共有結合される(Carreras等、Annu. Rev. Biochem.、(1995)64:721~762頁を参照)。チミジル酸シンターゼ反応は、DNAへの取込みのためのdCTP及びdTTPを生成するピリミジン生合成経路の重大な部分である。この反応は、DNA複製及び細胞成長に要求される。チミジル酸シンターゼ活性は、従って、がん細胞等の全ての急速に分裂する細胞によって要求される。それとDNA合成、従って細胞複製との関連が原因で、チミジル酸シンターゼは長年抗がん薬の標的であった。チミジル酸シンターゼ阻害剤の非限定的な例は、5-フルオロウラシル(5-FU)等、葉酸及びdUMPアナログを含む。チミジル酸シンターゼの発現を阻害するいずれかの薬物は、本明細書で共薬として考慮することができる。
【0109】
所望に応じて、本明細書に記載されている核酸組成物の投与は、例えば、照射療法及び/又は外科手術等の1種又は複数の非薬物療法と組み合わせることができる。当技術分野でよく知られる通り、放射線療法及び/又は化学療法剤(この場合、本明細書に記載されている核酸組成物及び必要に応じていずれか追加的な化学療法剤)の投与を外科手術の前に行って、例えば、外科手術の前に腫瘍を縮小する又はがんの拡散を停止することができる。同様に当技術分野でよく知られる通り、放射線療法及び/又は化学療法剤の投与を外科手術の後に行って、残っているがんを全て破壊することができる。
【0110】
説明目的で、また、本発明のある特定の特異的実施形態を記載するために、実施例を下に示す。しかし、本発明の範囲は、決して本明細書に示す実施例によって限定されるべきではない。
【実施例
【0111】
(実施例1)
材料と方法
修飾されたマイクロRNA。修飾されたマイクロRNAは全て、自動オリゴヌクレオチド合成プロセスによって合成し、HPLCによって精製した。2本の鎖をアニールして、成熟した修飾された5-FU-miR及び/又は本開示のシトシン塩基をゲムシタビン分子によって置き換えた修飾されたmiR-194を作製した。5ハロウラシルを含有する修飾されたマイクロRNA194のため、「2'-ACE RNA合成」と称されるプロセスを使用した。2'-ACE RNA合成は、2'-ヒドロキシにおける酸に不安定なオルトエステル保護基と組み合わせて、シリルエーテルが5'-ヒドロキシル基の保護に用いられる(2'-ACE)、保護基スキームに基づく。次に、この保護基組合せは、標準ホスホラミダイト固相合成技術により使用される。例えば、これらそれぞれの内容全体を明確に本明細書に組み込む、S.A. Scaringe、F.E. Wincott及びM.H. Caruthers、J. Am. Chem. Soc.、120 (45)、11820~11821頁(1998);国際PCT出願WO/1996/041809;M.D. Matteucci、M.H. Caruthers、J. Am. Chem. Soc.、103、3185~3191頁(1981);S.L. Beaucage、M.H. Caruthers、Tetrahedron Lett. 22、1859~1862頁(1981)を参照されたい。ウラシルを5-ハロウラシルに置き換える、例示的な修飾されたmiR-194核酸又は他のいずれかの修飾されたマイクロRNAは、本明細書に示すものと同じ様式で合成することができる。
【0112】
現在使用されている保護及び官能化されたリボヌクレオシドホスホラミダイトのいくつかの例示的な構造を下に示す:
【0113】
【化2】
【0114】
そのガイド鎖におけるシトシン残基をゲムシタビン(2',2'-ジフルオロ2'-デオキシシチジン)に置き換えることによりmiR-194に取込み型ゲムシタビンを含有する修飾されたmiRは、次の通りに合成される。5'-ジメトキシトリチル-N4-ベンゾイル-2',2'-ジフルオロ-2'-デオキシシチジン(1当量、0.4mM、270mg)を無水アセトニトリル(6ml)に溶解した。無水アセトニトリルにおけるエチルチオテトラゾール(1.6当量、0.65mM、1.3ml)の0.5M溶液及び2-シアノエチル-ビス-(N, N'-ジイソプロピル)ホスホラミダイト(1.43当量、0.57mmol、0.2ml)を添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応の進行をTLC及び31P NMRによってモニターした。5'-ジメトキシトリチル-N4-ベンゾイル-2',2'-ジフルオロ-2'-デオキシシチジンが、およそ2時間で消費されたら、混合物をシリカゲルカラムにアプライし、CH2Cl2における20%ヘキサンと、続くCHCl3におけるMeOH(0~5%勾配)により産物を溶出させた。31P NMR (CDCl3):δ 154.1, 152.1によって所望の産物を同定した。無修飾及びゲムシタビン単位を含有する全RNAオリゴヌクレオチドの合成は、その内容全体を参照により本明細書に組み込むK. Sipa等、RNA(2007)13、1301~1316頁に示す通りに、Gene World DNA合成機におけるホスホラミダイトアプローチに従って行った。チミジン、シチジン、ウリジン、グアノシン、アデノシン及び2',2'-ジフルオロ-2'-デオキシシチジンの適切に保護されたホスホラミダイト誘導体、固体支持体としてのLCA-CPG、並びに活性化因子としての無水アセトニトリルにおける5-ベンジルメルカプトテトラゾール(0.25M)を使用して、200nmolスケールで合成を実行した。合成は、修飾された単位のために延長されたカップリング時間(最大600秒間)を有した。DMT-カチオンアッセイによってカップリング効率を決定した。
【0115】
細胞培養。ヒト膵がん細胞株ASPC-1、HS766T及びPanc-1は、アメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(American Type Culture Collection)(ATCC)から得て、様々な型の培地で維持した。具体的には、HS766T及びPANC1細胞は、DMEM含有培地において培養し、APSC-1細胞は、RPMI培地(Thermo Fischer社)において維持した。培地は、10%ウシ胎仔血清(Thermo Fischer社)を補充した。
【0116】
ウエスタンイムノブロット解析。トランスフェクション24時間前に、6ウェルプレートに1×105個の細胞を蒔いた。細胞に、Oligofectamine(Thermo Fischer社)を使用して又はトランスフェクション媒体なしで、50nM対照miRNA(Thermo Fischer社)、miR-194又は3種のmiR-194ミミックのうち1種をトランスフェクトした。トランスフェクション3日後に、プロテアーゼ阻害剤(Sigma社)を含有するRIPAバッファーにタンパク質を収集した。その内容全体を参照により本明細書に組み込むLaemmli UK. Nature. 1970; 227(5259)680~685頁に記載されている通り、10%ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲルにおいて等量のタンパク質(15μg)を分離した。抗SET8又はBMI1(1:500)(Cell Signaling Technologies社)及び抗GAPDH(1:100000)抗体によりタンパク質を探索した。西洋ワサビペルオキシダーゼをコンジュゲートした、マウス又はウサギに対する抗体(1:5000、Santa Cruz Biotech Inc.社)を二次抗体として使用した。SuperSignal West Pico化学発光基質(Thermo Fischer社)を使用したオートラジオグラフィーフィルムによりタンパク質バンドを可視化した。
【0117】
細胞生存率アッセイ。ウェル当たり1000個の細胞で、96ウェルプレートに細胞を蒔いた。24時間後に、50、25、12.5、6.25、3.125又は1.5625nMの対照miRNA(Thermo Fischer社)、miR-194、5-FU-miR-194、Gem-mIR-194又は5-FU-Gem-miR-194と共に、DFBSを補充した培地に、細胞培地を交換した。24時間後に、DFBSを補充した新鮮培地に、培地を再度交換した。処置6日後に、WST-1色素(Roche社)を使用して細胞数を評価した。細胞を培地100μl当たり10μlのWST-1色素と共に1時間インキュベートし、450及び630nmで吸光度を読み取った。450nmの吸光度から630nmの吸光度を引くことにより、光学密度(O.D.)を計算した。CompuSynソフトウェア(ComboSyn, Inc社)を使用して、IC50値を計算した。
【0118】
マウス皮下腫瘍植込みモデル。in vivo miRNA送達実験のため、親膵がん細胞を組換えレンチウイルスに感染させることにより、lenti-lucレポーター遺伝子を発現する膵がん細胞を作製した。ルシフェラーゼ発現HS766T細胞(マウス当たりの2.0×106個の細胞)を0.1mLのPBS溶液に懸濁し、各マウスの尾静脈経由で注射した。膵がん細胞の注射4日後に、in vivo-jet PEI(Polyplusトランスフェクション)でパッケージングされた80μgの陰性対照又は修飾されたmiRによる尾静脈注射によりマウスを処置した。2週間にわたり1日おきに(8回)マウスを処置した。処置後に、IVIS Spectrum In vivoイメージングシステム(IVIS)(PerkinElmer社)を使用してマウスをスクリーニングした。
【0119】
統計解析。全実験を少なくとも3回繰り返した。SigmaPlotソフトウェアにより全統計解析を行った。2群間の統計有意性は、スチューデントt検定(臨床試料に対する対応t検定、及び他の全試料に対する独立t検定)を使用して決定した。3群以上の比較のため、一元配置ANOVAとそれに続くボンフェローニ・ダン(Bonferroni-Dunn)検定を使用した。データは、平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表現した。統計有意性は、図の説明文に記載するか又はアステリスク(*)で指し示す。*=P<0.05;**=P<0.01;***=P<0.001。
【0120】
(実施例2)
修飾されたmiR-194核酸は、抗がん活性を有する
次の実験において、ネイティブmiR-194(配列番号1)のガイド鎖における全5個のシトシン塩基をゲムシタビンによって置き換えて、配列番号2に示す例示的な修飾されたマイクロRNAを形成した。図1Cを参照されたい。別の修飾されたマイクロRNAは、配列番号4に示す通り、ネイティブmiR-194核酸のガイド鎖における全ウラシル塩基を5-FU分子に置き換えることにより形成された。図1Bを参照されたい。一実験において、図1Dに提示する構造に示し、配列番号3に示す通り、miR-194における全U塩基を5-FUに置き換え、全シトシン(C塩基)をゲムシタビン分子によって置き換えた。
【0121】
標的特異性の解析:膵細胞におけるウエスタンイムノブロット実験の結果は、本開示の例示的な修飾されたmiR-194ポリヌクレオチドが、SET8及びBMI1に対するその標的特異性を保持することができたことを実証する。結果を図2A図2Dに示し、それによると、配列番号4に示す、全U塩基を5-FUに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(5-FU-miR-194);配列番号3に示す、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(5-FU-Gem-miR-194);及び配列番号2に示す、全C塩基をゲムシタビン分子に置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(Gem-miR-194)の結果が示される。更に意義があることに、例示的な修飾されたmiR-194核酸は、図2Aに示す通りSET8;及び図2Cに示す通りBMI1の発現レベルの低下において、無修飾(対照)miR-194よりも強力であることが見出された。トランスフェクション媒体が使用されなかった場合、上述の修飾されたmiR-194分子のそれぞれは、SET8(図2B)及びBMI1発現(図2D)を阻害する能力を保持する。このデータは、5-FU修飾及びゲムシタビン修飾の両方が、いかなるトランスフェクション媒体も用いずに、修飾されたmiR-194が細胞に進入することを可能にし、これらの修飾が、標的発現を調節するmiR-194の能力を壊さないことを実証する。
【0122】
本開示の例示的な修飾されたマイクロRNAは、腫瘍発達及び細胞生存率を阻害する。3種の異なる膵がん細胞株ASPC1、PANC1及びHS766Tにおいて、各修飾されたmiR-194分子の効果を検査し、かかる実験の結果を図3A図3Cに示す。図3Aに示す通り、ASPC1細胞において外因的に発現される場合、全3種の修飾されたmiR-194ミミックは、外因的に発現されたネイティブmiR-194と比較して、細胞生存率の阻害における有効性を示す。ASPC1細胞において、配列番号4に示す、全U塩基を5-FUに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(5-FU-miR-194)のIC50は、6.06nMであった。配列番号2に示す、全C塩基をゲムシタビン分子に置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(Gem-miR-194)のIC50は、4.29nMであり、配列番号3に示す、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(5-FU-Gem-miR-194)のIC50は、2.88nMであった(Table 1(表1))。
【0123】
図3Bに示す通り、PANC1細胞において外因的に発現される場合、配列番号2に示す、全C塩基をゲムシタビン分子に置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(Gem-miR-194)及び配列番号3に示す、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(5-FU-Gem-miR-194)の両方と比較して、全U塩基を5-FUに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(5-FU-miR-194)の効果に明らかな差があった。具体的には、5-FU-miR-194のIC50が、16nMであった一方、Gem-miR-194及び5-FU-Gem-miR-194のIC50は、それぞれ1.92及び0.93であった(Table 1(表1))。
【0124】
加えて、図3Cに示す通り、HS766T細胞において外因的に発現される場合、5-FU修飾されたmiR-194と、配列番号2に示す、全C塩基をゲムシタビン分子に置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(Gem-miR-194)及び配列番号3に示す、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えた例示的な修飾されたmiR-194核酸(5-FU-Gem-miR-194)の両方との間に最大差が観察された。そこで、5-FU-miR-194のIC50は、26.45nMであった一方、Gem-mir-194及び5-FU-Gem-miR-194のIC50は、それぞれ3.57及び2.46nMであった(Table 1(表1))。
【0125】
【表1】
【0126】
まとめると、これらのデータは、miR-194へのゲムシタビンの取込みが、U塩基を5-FUに置き換えること単独により修飾されたマイクロRNAと比較して、膵がん細胞の生存率の阻害におけるその効果を増強することを示す。更に、データは、配列番号3に示す、全U塩基を5-FUに置き換え、全C塩基をゲムシタビンに置き換えたmiR-194(5-FU-Gem-miR-194)が、膵がんの処置における最大の有効性を有することを明らかにする。
【0127】
修飾されたmiR-194は、in vivoでがん成長を阻害する。図4に示す通り、膵がん細胞を含むマウス異種移植モデルを確立した。転移確立4日後に、80μgの修飾されたmiR-194核酸組成物(配列番号2、Gem-miR-194)又は陰性対照マイクロRNA(対照)を、2週間にわたる1日おきに1回の注射の処置頻度で、静脈内注射によって送達した。例示的な修飾されたmiR-194核酸は、図4に示す通り、対照と比較して、転移性膵がん成長を阻害することができた。更に、修飾されたmiR-194核酸で処置されたマウスは、いかなる毒性も示さなかった。
【0128】
本明細書に示すデータは、他の化学療法剤の使用あり又はなしでネイティブマイクロRNA分子の化学療法機能を増強するための、ゲムシタビンがmiRNA核酸配列に取り込まれた新規修飾の実行可能性を支持する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図4
【配列表】
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