(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】積層グレージングおよびプロセス
(51)【国際特許分類】
C03C 17/34 20060101AFI20240924BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20240924BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20240924BHJP
B32B 3/02 20060101ALI20240924BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C03C17/34 Z
C03C27/12 D
B32B17/10
B32B3/02
B60J1/00 H
(21)【出願番号】P 2021557222
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 GB2020050821
(87)【国際公開番号】W WO2020193986
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-03-01
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】591229107
【氏名又は名称】ピルキントン グループ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ピーター ヴォス
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-511275(JP,A)
【文献】特開2017-165608(JP,A)
【文献】特開2019-026248(JP,A)
【文献】国際公開第2017/110782(WO,A1)
【文献】特開2016-107755(JP,A)
【文献】特開2017-122022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 17/34
C03C 27/00-29/00
B32B 1/00-43/00
B60J 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層グレージングであって、
第1の表面および第2の表面を有する第1のガラスプライと、
第3の表面および第4の表面を有する第2のガラスプライと、
前記第1のガラスプライと前記第2のガラスプライとの間に位置する少なくとも1つのポリマープライと、
前記積層グレージングの周囲の少なくとも一部の周りの隠しバンドであって、少なくとも1つのセンサーウィンドウを有し、ならびに第1の隠し層および第2の隠し層を含む、隠しバンドと、を備え、
前記第1のガラスプライは、前記第1の表面または前記第2の表面の前記周囲の少なくとも一部に付着した前記第1の隠し層を有し、前記第1の隠し層が、第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを有する少なくとも1つの第1のセンサーウィンドウ部を備える、第1のガラスプライであり、
前記第2のガラスプライは、前記第3の表面または前記第4の表面の前記周囲の少なくとも一部に付着した前記第2の隠し層を有し、前記第2の隠し層が、第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを有する少なくとも1つの第2のセンサーウィンドウ部を備える、第2のガラスプライであり、
前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みがそれぞれ制御されることにより、前記センサーウィンドウの前記光学的歪みの絶対的な大きさが、前記第1のセンサーウィンドウの光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウの光学的歪みの絶対的な大きさよりも小さ
く、
前記第1の隠し層および前記第2の隠し層が、異なる放射率または赤外線反射率を有する材料で形成されることにより、前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの制御を可能にする、積層グレージング。
【請求項2】
前記第1のセンサーウィンドウ部の形状が、前記第2のセンサーウィンドウ部の形状と異なることにより、前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを制御する、請求項1に記載の積層グレージング。
【請求項3】
前記第1のセンサーウィンドウ部
の形状および/または前記第2のセンサーウィンドウ部
の形状が、正方形、長方形、台形、楕円形、または円形である、請求項1または2に記載の積層グレージング。
【請求項4】
前記第1のセンサーウィンドウ部および/または前記第2のセンサーウィンドウ部が、各々、前記第1の隠し層および/または前記第2の隠し層によって部分的または全体的に囲まれている、請求項1~3のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項5】
前記第1のセンサーウィンドウ部または前記第2のセンサーウィンドウ部の前記周囲の少なくとも一部が、パターン化されており、任意で、ドット、ライン、フェードアウト、フェザーエッジ、または鋸歯状フェードアウトを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項6】
前記第1の隠し層の、および/または前記第2の隠し層の少なくとも一部が、800nm~2250nmの波長範囲の領域にわたって21%以上の赤外線反射率を有する、請求項1~
5のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項7】
前記第1の隠し層および/または前記第2の隠し層がエナメルを含み、該エナメルはフリットおよび無機顔料を含み、かつ、該無機顔料は、クロム鉄顔料、フェライト顔料、クロマイト顔料、またはフェライト/クロマイト(鉄クロマイトとしても知られている)顔料から選択される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項8】
前記第1の隠し層の前記エナメルおよび/または前記第2の隠し層の前記エナメルが、低放射率エナメルもしくは低赤外線反射率エナメル、または高放射率エナメルもしくは高赤外線反射率エナメルから選択されることにより、前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの制御を可能にする、請求項
7に記載の積層グレージング。
【請求項9】
前記第1のセンサーウィンドウ部または前記第2のセンサーウィンドウ部のいずれかの前記周囲が、前記
第1のガラスプライ
もしくは前記第2のガラスプライの残りの部分上の前記隠し層よりも低い(または高い)赤外線反射率の隠しフレーム部、および/または、
前記第1のガラスプライと前記第2のガラスプライのうちの他方のガラスプライ上の前記隠し層よりも低い(または高い)赤外線反射率の、隠しフレーム部を備える、請求項1~
8のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項10】
前記第2のセンサーウィンドウ部の前記周囲が、前記隠しフレーム部を備える、請求項
9に記載の積層グレージング。
【請求項11】
前記第1のセンサーウィンドウ部が、x軸寸法および/またはy軸寸法を有し、前記第2のセンサーウィンドウ部が、x軸寸法および/またはy軸寸法を有し、かつ、前記第1のセンサーウィンドウ部の前記x軸寸法および/または前記y軸寸法が、前記第2のセンサーウィンドウ部の前記x軸寸法および/または前記y軸寸法と各々異なることにより、前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの制御を可能にする、請求項1~
10のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項12】
前記第1のセンサーウィンドウ部の前記x軸寸法が、前記第2のセンサーウィンドウ部の前記x軸寸法よりも大きく、および/または、前記第1のセンサーウィンドウ部の前記y軸寸法が、前記第2のセンサーウィンドウ部の前記y軸寸法よりも大きい、請求項
11に記載の積層グレージング。
【請求項13】
前記第1のセンサーウィンドウ部と前記第2のセンサーウィンドウ部のうちの小さいほ
うが、
前記第1のセンサーウィンドウ部と前記第2のセンサーウィンドウ部のうちの大きいほ
うに対して寸法の各端部にオフセットが存在するように配置される、請求項
12に記載の積層グレージング。
【請求項14】
前記第1のセンサーウィンドウ部および/または前記第2のセンサーウィンドウ部が、-405~+405ミリジオプトリーの範囲、任意で-310~+310ミリジオプトリーの範囲、任意で-205~+205ミリジオプトリーの範囲、任意で-185~+185ミリジオプトリーの範囲、好ましくは-155~+155ミリジオプトリーの範囲の光学的歪みを有する、請求項1~
13のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項15】
前記センサーウィンドウが、-195~+195ミリジオプトリーの範囲、任意で-145~+145ミリジオプトリーの範囲の光学的歪みを有する、請求項1~
14のいずれか一項に記載の積層グレージング。
【請求項16】
成形された積層グレージングを製造するプロセスであって、
第1の表面および第2の表面を有する第1のガラス基板ならびに第3の表面および第4の表面を有する第2のガラス基板を提供するステップと、
前記第1のガラス基板の前記第1の表面または前記第2の表面の少なくとも第1の部分に第1の隠し層を適用するステップであって、該第1の隠し層が、制御された、第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを有する少なくとも1つの第1のセンサーウィンドウ部を備える、ステップと、
前記第2のガラス基板の前記第3の表面または前記第4の表面の少なくとも第1の部分に第2の隠し層を適用するステップであって、該第2の隠し層が、制御された、第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを有する少なくとも1つの第2のセンサーウィンドウ部を備える、ステップと、
任意で、前記第1のガラス基板および前記第2のガラス基板を、570℃を超える温度に加熱することにより、該第1のガラス基板および該第2のガラス基板を成形するステップと、
前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との間に少なくとも1つのポリマープライを配置するステップと、
前記第1のガラス基板、前記ポリマープライおよび前記第2のガラス基板を積層するステップと、を含み、
前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを制御することにより、センサーウィンドウの光学的歪みの絶対的な大きさが、該第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび該第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの絶対的な大きさよりも小さくされ
、
前記第1の隠し層および前記第2の隠し層が、異なる放射率または赤外線反射率を有する材料で形成されることにより、前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの制御を可能にする、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層グレージング、自動車用グレージング、およびそのようなグレージングを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック中間層(例えば、ポリビニルブチラール、PVB)によって一緒に積層された2枚のグレージング材料、通常はガラスを含む積層グレージングは、建築用、および特に自動車用グレージングに有用である。
【0003】
フロントガラスおよび普及しつつある他の自動車用グレージングは、一般に積層グレージングであり、その周囲を覆うように設けられた隠しバンド(obscuration band)を有し得る。隠しバンドは、多くの場合、黒色または非常に暗い色であり、一般に、可視光(および多くの場合、他の波長、例えばUV)を通さない。隠しバンドは、固定具などのグレージング上の構成部分を隠すのに役立ち、また、例えば、グレージングを所定の位置に固定するために用いられる接着材にUV保護を提供するのにも役立つ。
【0004】
隠しバンドは、エナメルを用いて製造し得る。このようなエナメルは、一度焼成すると、風化や摩耗に耐久性を備える。隠しバンドは、ガラス上にエナメルインクをスクリーン印刷することによって適用され得る。エナメルインクは、そのスクリーン印刷特性を向上させるために、通常、フリット(フラックス)、顔料および液体成分(オイルなど)を含む。スクリーン印刷後、エナメルインクを硬化(紫外線照射など)または乾燥(約300℃まで加熱など)させてもよく、次いで、高温に加熱し焼成してフラックスを溶かしてもよく、ガラス表面への接着性を確実にする。
【0005】
積層グレージングの表面には、グレージングが取り付けられている車両または建物の外部に面する面から数えて番号を付すのが一般的なプラクティスである。したがって、表面1は、外部に面する表面であり、露出面である。グレージング材料の2つのプライを含む積層体では、表面1は外向きのプライの外部面である。表面2は、外部プライの内向きの表面、すなわち、車両または建物の内部の方を向いている外部プライの表面である。表面2は、プラスチックの中間層と接触し、およびプラスチックの中間層で覆われているため、露出面ではない。表面3は、内部プライの外向きの表面、すなわち、車両または建物の外部の方を向いている内部プライの表面である。表面2と同様に、表面3は、プラスチックの中間層と接触し、プラスチックの中間層で覆われているため、露出面ではない。したがって、表面2および表面3は、露出されていない、または覆われた表面である。表面4は、内向きのプライの内部面、すなわち、車両または建物の内部に面する露出面である。
【0006】
積層ガラス、例えばフロントガラスにおいては、隠しバンドは、表面4または積層体の内面(例えば、表面2、積層体内部のガラス/ポリマー界面)に印刷されてもよい。1つのガラスプライに隠しバンドを備えるグレージングは、通常、エナメルをガラス基板に付与した後、各ガラス基板を高温に加熱することによって成形される。積層体の内側の表面(例えば、表面2または表面3)に隠しバンドを印刷すると、時々発生し得る透視歪み(perspective distortion)を減らし得る。WO-A-2017/159452は、積層ガラスを開示しており、表面2および表面4に印刷したある実施形態において、隠しバンドの近くで透視歪みが低減された。
【0007】
しばしば、エナメルは加熱ステップによって焼成される。成形後、ガラスの印刷領域と非印刷領域との境界に関連して、光学的歪みが発生し得る。このような光学的歪みは「バーンライン(burnline)」と呼ばれることもあり、境界に対して平行に延在する傾向がある。
【0008】
温度プロファイルなどの屈曲プロセスパラメーターを修正することによって、および/または、ガラス屈曲ツール/鋳型にシールドを設計、構築、および取り付けることによって、バーンラインを低減または排除する試みがなされてきた。
【0009】
EP-A-0415020は、ガラスの光学的品質に悪影響を与えることなく、装飾的なセラミックエナメル境界を有するガラスシートを優先的に加熱する方法を開示している。優先的な加熱は、エナメルがガラスよりも速く加熱されるように、ガラスよりもエナメルによって容易に吸収される選択波長で熱エネルギーを放射するヒーターを使用することによって達成される。1つの特定の実施形態では、セラミックエナメル境界を有するガラスは、そのひずみ点温度を超える温度に予熱される。次いで、コーティングされたガラスを石英ヒーターにさらして、エナメルをガラスに焼き付けるのに十分な高温に優先的に加熱する。次に、セラミックエナメルをガラスの残りの部分の温度まで冷却する。
【0010】
US-B-5,443,669は、特に自動車用の、単一または二重の曲率を有する積層ガラス板を製造するためのプロセス、より具体的には、印刷パターンを有するガラス板、特に、該印刷パターンが境界となり得る自動車のフロントガラス用のガラス板を製造するためのプロセスを開示している。印刷されたパターンは、エナメルインクを用いて形成される。
【0011】
残念ながら、そのように試みられた解決策では不十分であり、ツールのシールドを設計、構築、取り付け、および最適化するための高い追加コストおよび時間などの不利な点がある。また、シールドが、ガラスの残りの部分の成形に影響を与えるという理由から、一般的な光学的品質は、他のエリアにおけるガラス成形という観点において付加的に導入されたシールドによって悪影響を受け得る。さらには、その試みられた解決策は、焼成下の隠しバンドのエナメルインクによって引き起こされる美観的なさらなる問題につながりかねない。
【0012】
バーンラインの問題に対するより首尾の良い解決策は、WO-A-2017/068368で説明されているように、エナメルの特性を修正して、NIR(近赤外線)およびIR(赤外線)波長範囲でのスペクトル反射を増加させること(これは、特に中温および高温で、印刷されたガラス表面と印刷されていないガラス表面との間の放射率の差を減らすことと同等であり得る)を包含し得る。
【0013】
高度運転支援システム(ADAS)システム(Mobileyeや他のメーカーが製造したシステムなど)は、車両において一般的になりつつあり、車線逸脱警報、自動緊急ブレーキ、ハイビームアシスト、制限速度の識別その他の用途に使用され得る。これらのシステムのほとんどが、一般にフロントガラスの内面(つまり、表面4)に取り付けられている1つ以上のカメラに依存している。カメラを取り付ける好ましい位置は、フロントガラスの上端に向かって、一般的には中央に、またはフロントガラスの中心線に対して対称的に、すなわち、通常はフロントガラスの同じ部分に配置されるバックミラーの近くである。カメラは、(車両の外部から見たときに)隠しバンドの背後に配置されることが多く、したがって、カメラが車両の前方のエリアを映すことができる、隠しバンドを構成するエナメル、インクなどが無い領域を提供する必要がある。
【0014】
隠しバンドのない領域は、例えば、隠しバンドの開口またはくぼみの形態をとることができ、一般に「カメラウィンドウ」と呼ばれる。したがって、例えば、カメラウィンドウは、隠しバンドによって囲まれていてもいなくてもよい。前方視界を提供することに関する同じ考慮事項は、フロントガラスの表面4、多くの場合フロントガラスの同じ部分に配置される雨センサーまたは光センサーなどのセンサーにも当てはまるため、この用語は「センサーウィンドウ」と一般化され得る。
【0015】
カメラウィンドウに由来する光学的歪みは、カメラおよびADASを適用することの有効性を制限し得る。US-A-2018/118116は、フロントガラスの上部中央領域に配置されたブラックアウト層を含む車両用カメラシステムを開示している。EP-A-1605729は、視域を加熱して、それにより、視域を通した視界に及ぼす着氷または結露の影響を軽減する抵抗加熱要素を含む視域を通して見るための画像デバイスを備えた車両用フロントガラスを開示している。。DE202018105625U1は、2つの印刷領域を有する車両用窓ガラスを開示し、第1の印刷領域の光学効果は、第2の印刷領域の光学効果によって補償することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
積層グレージングに印刷された隠しバンド内、またはその近くのADASカメラウィンドウを含め、積層グレージングの光学的歪みをさらに低減する必要性がある。ADASの性能に対する要求が高まるにつれ、ADASカメラウィンドウで許容される光学的歪みの程度は益々低くなるので、このことは特に当てはまる。
【0017】
上記の必要性に対処することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0018】
したがって、本発明は、第1の態様では、
積層グレージングであって、該積層グレージングが、
第1の表面および第2の表面を有する第1のガラスプライと、
第3の表面および第4の表面を有する第2のガラスプライと、
前記第1のガラスプライと前記第2のガラスプライとの間に位置する少なくとも1つのポリマープライと、
前記積層グレージングの周囲の少なくとも一部の周りの隠しバンドであって、少なくとも1つのセンサーウィンドウを有し、ならびに第1の隠し層および第2の隠し層を含む、隠しバンドと、を備え、
前記第1のガラスプライは、前記第1の表面または前記第2の表面の前記周囲の少なくとも一部に付着した前記第1の隠し層を有し、前記第1の隠し層が、第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを有する少なくとも1つの第1のセンサーウィンドウ部を備える、第1のガラスプライであり、
前記第2のガラスプライは、前記第3の表面または前記第4の表面の前記周囲の少なくとも一部に付着した前記第2の隠し層を有し、前記第2の隠し層が、第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを有する少なくとも1つの第2のセンサーウィンドウ部を備える、第2のガラスプライであり、
前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みがそれぞれ制御されることにより、前記センサーウィンドウの前記光学的歪みの絶対的な大きさが、前記第1のセンサーウィンドウの光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウの光学的歪みの絶対的な大きさよりも小さい、積層グレージングを提供する。
【0019】
上記は非常に有利なことである。各プライのセンサーウィンドウ部における光学的歪み(「センサーウィンドウ部の光学的歪み」)を制御することで、センサーウィンドウ内の全体的な光学的歪みのバランスをとることができ、その結果、積層グレージングのセンサーウィンドウ全体の歪みが大幅に低減することで、例えばADASカメラシステムが、より鮮明な視界を実現できることに繋がるからである。
【0020】
グレージングにおいて、光学的歪みは通常、ピクセルシフトに繋がり得る、観察者(またはカメラその他の光学センサー)から見た画像の特性であると見なされる。光パワー(Optical power)は通常、光学的歪みを引き起こし得るグレージング(ガラスなど)の特性であると見なされる。光パワーは、一般にジオプトリー(dioptres)(1/mに相当;レンズの焦点距離の逆数P=1/f)、またはより一般的にはミリジオプトリー(millidioptres)(mdpts:1mdpt=0.001ジオプトリー)で測定される。本明細書においては、文脈上別段の必要がない限り、光学的歪みおよび光パワーは同じ意味で使用される。
【0021】
驚くべきことに、本発明の発明者は、一般に、各プライのセンサーウィンドウ部の光学的歪みが常に高いとは限らないが、その他のプライに積層すると、全体的な光パワーがより高くなり、それゆえに、光学的歪みが発生する結果となり得る、表面の不一致を起こし得ることを発見した。2つのプライ、特に各プライのセンサーウィンドウ部の光学的歪みのバランスをとることにより、本発明は、全体的な光パワー/歪みの低減を達成できる。各プライのセンサーウィンドウ部の光学的歪みのバランスをとることにより、全体的な光学的歪みが低減される。各プライのセンサーウィンドウの光学的歪みは、それらが互いにバランスをとるか補償し合うように制御され、正味の歪みを小さくする。これは、光学的歪み/光パワーの全体的な大きさを大幅に低減させる効果だけでなく、グレージング全体に光パワー/光学的歪みの急激な変化を減少させる効果もある。理想的な状況としては、2つのプライの光学的歪みが互いに相殺されるよう、該光学的歪みは等しく、かつ正反対となる。
【0022】
本発明はまた、
第1の表面および第2の表面を有する第1のガラスプライと、
第3の表面および第4の表面を有する第2のガラスプライと、
前記第1のガラスプライと前記第2のガラスプライとの間に延在する少なくとも1つのポリマー中間プライと、
グレージングの周囲の少なくとも一部の周りの隠しバンドと、
前記隠しバンドに備えられた少なくとも1つのセンサーウィンドウであって、前記隠しバンドが、前記第1のガラスプライおよび前記第2のガラスプライに備えられた第1の隠し層および第2の隠し層を備える、センサーウィンドウと、を備える、積層グレージングであって、
前記第1のガラスプライは、前記第1の表面または前記第2の表面の前記周囲の少なくとも一部に備えられた前記第1の隠し層を有し、前記第1の隠し層が、関連する光学的歪みを有する少なくとも1つの第1のセンサーウィンドウ部を備える、第1のガラスプライであり、
前記第2のガラスプライは、前記第3の表面または前記第4の表面の前記周囲の少なくとも一部に備えられた前記第2の隠し層を有し、前記第2の隠し層が、関連する光学的歪みを有する少なくとも1つの第2のセンサーウィンドウ部を備える、第2のガラスプライであり、
前記第1の隠し層および前記第2の隠し層が、エナメルで形成されており、かつ、
前記センサーウィンドウ部の構成および前記エナメルの少なくとも1つの特性が、前記センサーウィンドウ部のそれぞれに関連する前記光学的歪みが互いに補償して、前記グレージングにおける正味の光学的歪みを低減するように選択される、積層グレージングを提供する。
【0023】
好ましくは、エナメルの選択された特性は、その赤外線反射率である。
【0024】
第1のセンサーウィンドウ部および第2のセンサーウィンドウ部は、好ましくは、可視スペクトルの領域において十分に高い光透過率を有し、ADASカメラが積層グレージングを通過して見ることを可能にする。現在、ADASカメラやその他のセンサーは、一般的にフロントガラスに取り付けられており、ほとんどの国ではフロントガラスに少なくとも70%の可視光透過率を備えることが求められる。規制要件は別として、可視光透過率(例えば、ISO 9050による)は、好ましくは55%、60%を超え、より好ましくは70%を超え、および最も好ましくは75%を超える。ADASカメラの感度がさらに高くなり、ADASカメラが十分に機能するために必要な最小光透過率が減少すると、それらが他のグレージング、例えばバックライト(すなわちリアウィンドウ)に取り付けられる可能性があり、そのようなグレージングは、20%未満(プライバシーグレージングの場合)、または30%未満、または40%未満、または50%未満の可視光透過率を有し得る。
【0025】
一般に、隠し層、ゆえに隠しバンドは、グレージングの隠し層のISO 9050可視光透過率が、1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下になるように、可視光を実質的に通さないように構成されてもよい。
【0026】
各ガラスプライのガラス基板は、成形されていなくてもよい(例えば、平らなガラスでもよい)が、好ましくは成形されたガラス基板であり、厚さは、例えば、1mm~5mmなどであり得る。通常、隠し層は、例えば自動車のフロントガラスを形成するためにその後成形される平らなガラス基板に適用される。
【0027】
ポリマープライは、PVB(通常、1mm未満の厚さ、例えば0.76mmの厚さ)を含み得る。より優れた性能または機能性(例えば、ソーラーコントロール)が必要な場合は、さらにプラスチックプライを挟む2つのPVBプライ(例えば、それぞれ0.3~0.4mmの厚さ)があってもよい。例えば、さらなるプラスチックプライは、PET製であってよく、そのようなソーラーコントロールを提供するために、ソーラーコントロールコーティング(例えば、少なくとも1つの銀層および2つ以上の誘電体層を有する)を有してもよい。
【0028】
隠し層は、十分な覆い隠しを提供するために着色してもよく、好ましくは非常に暗く、より好ましくは可視色で実質的に黒であってもよい。隠し層、ゆえに隠しバンドは、通常、グレージングの周囲の少なくとも一部分の周りにバンドを形成する。
【0029】
通常、第1のセンサーウィンドウ部および第2のセンサーウィンドウ部は、実質的にエナメルフリーである。
【0030】
一実施形態では、第1のセンサーウィンドウ部の形状は、第2のセンサーウィンドウ部の形状とは異なってもよく、それによって第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを制御し得る。
【0031】
したがって、第1のセンサーウィンドウ部の形状および/または第2のセンサーウィンドウ部の形状は独立して、正方形、長方形、台形、楕円形、または円形であってもよい。
【0032】
通常、第1のセンサーウィンドウ部および/または第2のセンサーウィンドウ部は、各々、第1の隠し層および/または第2の隠し層によって部分的または全体的に囲まれている。第1の隠し層および/または第2の隠し層は、第1のセンサーウィンドウ部および/または第2のセンサーウィンドウ部の1つの側面、2つの側面、3つの側面または4つの側面にあってもよい。
【0033】
ウィンドウ部の光学的歪みの制御を改善するために、第1のセンサーウィンドウ部または第2のセンサーウィンドウ部の周囲の少なくとも一部は、パターン化されてもよく、任意で、ドット、ライン、フェードアウト、フェザーエッジ、または鋸歯状フェードアウトを含んでもよい。
【0034】
本発明の別の実施形態では、第1の隠し層および第2の隠し層は、異なる赤外線反射率を有する材料で形成されてもよく、それによって、第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの制御を可能にする。
【0035】
例えば、第1の隠し層および/または第2の隠し層は、比較的高い赤外線反射率を有し得、その結果、第1の隠し層の、および/または第2の隠し層の少なくとも一部は、800nm~2250nmの波長範囲の領域にわたって21%以上の赤外線反射率を有する。上記一部の赤外線反射率は、800nm~2250nmの波長範囲の領域にわたって、24%以上、好ましくは27%以上、より好ましくは30%以上、さらにより好ましくは32%以上、さらにより好ましくは35%以上、最も好ましくは37%以上であり得る。800nm~2250nmの波長範囲の領域は、400nm以上、好ましくは450nm以上、より好ましくは550nm以上、最も好ましくは610nm以上に及び得る。
【0036】
赤外線反射率は、分光光度計(Perkin Elmer Lambda 9500など)を用いて、上記波長範囲で測定され得る。
【0037】
重要な特性は、第1の隠し層と第2の隠し層との間の赤外線反射率の差異である。この差異は、一方の隠し層が、例えば17%~20%の領域の典型的な赤外線反射率を有するのに対し、もう一方の隠し層は、上記のように、例えば21%以上の高赤外線反射率か、もしくは例えば16%以下といった低い赤外線反射率を有し得ることに起因する結果であろう。あるいは、一方の隠し層は高赤外線反射率を有し得、他方の隠し層は低い赤外線反射率を有し得る。好ましくは、第1および第2の隠し層の間の赤外線反射率の差異は、少なくとも5%、7%、9%、12%、15%、18%または21%である。
【0038】
したがって、一般に高赤外線反射率の隠し層は、プロセス条件に応じて、30~50%の平均赤外線反射率を有し得る。特に高赤外線反射率を提供しない隠し層は、赤外線(800~2000nm)で約17%以下または20%以下の赤外線反射率を有し得るが、一方、高反射率のエナメルは、上記範囲の大部分で30%以上の反射率を有し得る。
【0039】
第2の隠し層および/または第1の隠し層は、比較的低い赤外線反射率を有し得、その結果、第1の隠し層および/または第2の隠し層の少なくとも一部は、800nm~2250nmの波長範囲の領域にわたって20%または16%以下の赤外線反射率を有する。
【0040】
第1の隠し層および/または第2の隠し層は、エナメルを含んでもよい。通常、エナメルはフリットおよび無機顔料を含む。無機顔料は、クロム鉄顔料、フェライト顔料、クロマイト顔料、またはフェライト/クロマイト(鉄クロマイトとしても知られている)顔料から選択されてもよい。
【0041】
エナメルは、適切な赤外線反射顔料および/または近赤外線反射顔料を選択し、かつ、エナメルに適量の赤外線反射顔料を含めることによって適切な(例えば、高または低)放射率特性を提供するように構成され得る。エナメルは、無機顔料を10重量%~50重量%、好ましくは10重量%~40重量%、より好ましくは12%~32%を含んでもよい。エナメルは、フリットを20重量%~80重量%含んでもよい。
【0042】
酸化物フリットは、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、フッ化物イオンを有する化合物(例えば、フルオライト、フルオラパタイト、クライオライトなど)、酸化ビスマス、酸化亜鉛、酸化ホウ素、酸化物カリウム、酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉛、酸化リチウム、酸化リン、酸化モリブデン、酸化ストロンチウム、および酸化マグネシウムから選択される少なくとも1つの化合物の粒子を含み得る。
【0043】
適切な無機顔料は、Fe/Cr顔料、Co/Al顔料、Co/Al/Cr顔料、Co/Ti顔料、Co/Cr顔料、Ni/Fe/Cr顔料、Ti/Cr/Sb顔料、Fe顔料、Cr顔料、および/またはこれらの顔料の2つ以上の混合物から選択される顔料を含み得る。
【0044】
したがって、無機顔料は、クロム鉄顔料、フェライト顔料、クロマイト顔料、またはフェライト/クロマイト(鉄クロマイトとしても知られている)顔料から選択されてもよい。
【0045】
積層グレージングの設計の性質に応じて、第1のガラスプライのエナメルおよび第2のガラスプライのエナメルは、高赤外線反射率エナメルまたは低赤外線反射率エナメルから独立して選択されてもよい。
【0046】
第1の隠し層または第2の隠し層の赤外線反射率は、異なる赤外線反射率または異なる放射率の適切なエナメルを用いることによって制御し得る。
【0047】
したがって、第1の隠し層のエナメルおよび/または第2の隠し層のエナメルは、低赤外線反射率エナメルまたは高赤外線反射率エナメルから選択されてもよく、それによって、第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの制御を可能にする。
【0048】
したがって、高赤外線反射率エナメルの赤外線反射率は、800nm~2250nmの波長範囲の領域にわたって21%以上であり得る。赤外線反射率は、800nm~2250nmの波長範囲の領域にわたって24%以上、好ましくは27%以上、より好ましくは30%以上、さらにより好ましくは32%以上、さらにより好ましくは35%以上、最も好ましくは37%以上であり得る。
【0049】
800nm~2250nmの波長範囲の領域は、400nm以上、好ましくは450nm以上、より好ましくは550nm以上、最も好ましくは610nm以上に及び得る。
【0050】
第1のセンサーウィンドウ部または第2のセンサーウィンドウ部のいずれかの周囲が、プライの残りの部分上の隠し層よりも低い(または高い)赤外線反射率の隠しフレーム部、および/または、他のガラスプライ上の隠し層よりも低い(または高い)赤外線反射率の隠しフレーム部を備える場合、光学的歪みのさらなる制御を達成し得る。
【0051】
すなわち、第2のセンサーウィンドウ部の周囲は、隠しフレーム部を備え得る。
【0052】
隠し層/隠しバンドへのセラミック/エナメルの使用は、既知のプロセスを使用し、かつエナメルの耐久性および性能が証明されているため、有利である。エナメル/セラミック層は、車両への(接着材などの)接着を保護するためにグレージングエッジで有用である可能性が高いため、セラミックを使用すると、センサーウィンドウに適用される他の方法と色を合わせる必要がなくなる。本発明は、光学的歪み/光パワーを、セラミック層を有さない成形ガラスの光学的歪み/光パワーの近くまで低減することを可能にするため、大きな利点を提供する。セラミック層(すなわちエナメル)で形成された隠し層を使用すること自体が有利だからである。
【0053】
別の実施形態では、第1および第2のセンサーウィンドウ部は、異なるサイズであってよく、すなわち、2つのセンサーウィンドウ部のうちの一方は、他方よりも大きくてもよい。例えば、第1のセンサーウィンドウ部は、第2のセンサーウィンドウ部よりも大きくてよい。より詳細には、第1のセンサーウィンドウ部は、x軸寸法および/またはy軸寸法を有し得、第2のセンサーウィンドウ部は、x軸寸法および/またはy軸寸法を有し得、かつ、第1のセンサーウィンドウ部のx軸寸法および/またはy軸寸法は、第2のセンサーウィンドウ部のx軸寸法および/またはy軸寸法と各々異なり、それによって、第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの制御を可能にする。
【0054】
第1のセンサーウィンドウ部のx軸寸法は、第2のセンサーウィンドウ部のx軸寸法よりも大きくてよく、および/または、第1のセンサーウィンドウ部のy軸寸法は、第2のセンサーウィンドウ部のy軸寸法よりも大きくてよい。
【0055】
小さいほうの上記ウィンドウ部は、大きいほうの上記ウィンドウ部に対して寸法の各端部にオフセットが存在するように配置してもよい。好ましくは、小さいほうのウィンドウ部は、大きいほうのウィンドウ部に対して寸法の各端部にオフセットが存在するように配置される。寸法の各端部のオフセットは、実質的に同じでも異なっていてもよい。
【0056】
第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび/または第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みは、センサーウィンドウの光パワー/光学的歪みに寄与すると思われる。したがって、第1のセンサーウィンドウ部および/または第2のセンサーウィンドウ部は、-405~+405ミリジオプトリーの範囲、任意で-310~+310ミリジオプトリーの範囲に制御された光学的歪みを有することが好ましい。より好ましくは、第1のセンサーウィンドウ部および/または第2のセンサーウィンドウ部は、-205~+205ミリジオプトリーの範囲、任意で-185~+185ミリジオプトリーの範囲、好ましくは-155~+155ミリジオプトリーの範囲の光学的歪みを有する。
【0057】
本発明は、非常に有利である。第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの制御(およびバランスをとること)がセンサーウィンドウの大幅な改善をもたらし、特に、±250mdpt(すなわち、センサーウィンドウの光学的歪みの絶対的な大きさが250mdpt)、±245mdpt、±205mdpt、±200mdpt、±195mdpt、±190mdpt、±175mdpt、±165mdpt、±160mdpt、±157mdpt、±152mdpt、±147mdpt、±145mdpt、±142mdpt、±137mdpt、±132mdpt、±127mdpt、±122mdpt、±117mdpt、±112mdpt、±107mdpt、±102mdpt、±97mdpt、±92mdpt、±87mdpt、±82mdpt、±77mdpt、±72mdpt、±67mdpt、±65mdpt、±62mdptまたは±60mdptの範囲の光パワー/光学的歪みを有するセンサーウィンドウをもたらし得るからである。
【0058】
光学的歪み/光パワーの範囲は、より広くまたはより狭くなり得、グレージングの傾斜角、ウィンドウサイズ、ウィンドウの設計、および屈曲プロセスに依存し得る。
【0059】
センサーウィンドウの結露および/または着氷を低減するために、1つのまたは各センサーウィンドウ部は、例えば電気抵抗加熱ワイヤーまたは他の導体を含む加熱装置、任意で電気加熱グリッドを含み得る。
【0060】
積層グレージングは、2つ以上のセンサーまたはカメラを備えて使用することが望ましい場合がある。したがって、あるケースでは、積層グレージングは2つ以上のセンサーウィンドウを含み得る。
【0061】
本発明は、第2の態様では、本発明の第1の態様に係る積層グレージングを含む自動車のフロントガラスを提供する。
【0062】
第3の態様では、本発明は、
成形された積層グレージングを製造するプロセスであって、
第1の表面および第2の表面を有する第1のガラス基板ならびに第3の表面および第4の表面を有する第2のガラス基板を提供するステップと、
前記第1のガラス基板の前記第1の表面または前記第2の表面の少なくとも第1の部分に第1の隠し層を適用するステップであって、該第1の隠し層が、制御された第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを有する少なくとも1つの第1のセンサーウィンドウ部を備える、ステップと、
前記第2のガラス基板の前記第3の表面または前記第4の表面の少なくとも第1の部分に第2の隠し層を適用するステップであって、該第2の隠し層が、制御された第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを有する少なくとも1つの第2のセンサーウィンドウ部を備える、ステップと、
任意で、前記第1のガラス基板および前記第2のガラス基板を570℃を超える温度に加熱することにより、該第1のガラス基板および該第2のガラス基板を成形するステップと、
前記第1のガラス基板と前記第2のガラス基板との間に少なくとも1つのポリマープライを配置するステップと、
前記第1のガラス基板、前記ポリマープライおよび前記第2のガラス基板を積層するステップと、を含み、
前記第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび前記第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みを制御することにより、センサーウィンドウの光学的歪みの絶対的な大きさが、該第1のセンサーウィンドウ部の光学的歪みおよび該第2のセンサーウィンドウ部の光学的歪みの絶対的な大きさよりも小さくされる、プロセスを提供する。
【0063】
本発明は、車両であろうと建物であろうと、平らなガラスに使用される任意の成形プロセスに適用可能である。例えば、成形は、プレス屈曲、すなわち対向する屈曲鋳型間で熱軟化ガラスシートをプレスすることによって、または、たるみ(重力)屈曲、すなわち、熱軟化ガラスシートを、一般にレール炉内でたるみ屈曲鋳型に支持されている間に、自重で変形させ得ることによって、実行することができる。成形は、熱軟化ガラスシートをたるみ屈曲するダイアシストたるみ屈曲によっても実行できるが、シートの一部も小さなパッドまたは鋳型によってプレスされる。
【0064】
異なる成形プロセスは、ガラスプライにおいて異なる光パワーを生み出す傾向があることが見出された。例えば、たるみ屈曲は、表面4で強度に集中したバーンラインに悩まされるが、一方、表面2で発達したバーンラインは、より適度な力とより拡散する、つまりより広い領域へと広がる傾向がある。この傾向は、表面4に赤外線反射インクを用いることによって制御することができ、それによって表面4で発生する光パワーを弱め、表面2と表面4との間の所望のバランスを達成する。このようにして、正味の光学的歪みの低減が達成される。
【0065】
一方、プレス屈曲は、表面4のバーンラインを弱める傾向があるが、一方、表面2のバーンラインは可変であり、製造される部品の特性に大きく依存しているように思われる。表面2のバーンラインが表面4よりも強い場合は、直感に反した方法であるが、表面4の赤外線反射率が低いインクを使用して、その表面の光学的歪みを実際に増やしてもよい。しかしながら、表面2の歪みをより良くバランスをとることにより、より小さな正味の光学的歪みを達成する。あるいは、表面2のバーンラインが表面4よりも弱い場合、2つの歪みの絶対的な大きさ、および使用可能なインクに応じて、表面4において反射率のより高いインクを使用するか、または表面2において反射率のより低いインクを使用してもよい。
【0066】
したがって、使用中の成形プロセスへのバーンライン、特に使用されているインクの赤外線反射率などの特性を低減するためのアプローチを選択することが望ましい。
【0067】
第1の隠し層および第2の隠し層を適用することは、エナメルインクを付与することを含み得、該エナメルインクは、無機顔料およびフリットを含む。
【0068】
第3の態様の他の特徴は、一般に、適切な修正を加えた第1の態様に関連して上記のとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0069】
ここで、本発明は、例示としてのみ、以下の添付の図面を参照して説明される:
【
図1(a)】本発明に係る積層グレージングの一実施形態の概略平面図である。
【
図1(b)】A-A線上の
図1(a)のグレージングの一部の概略断面図である。
【
図2】本発明に係る積層グレージングの別の実施形態の概略平面図である。
【
図3(a)】実施例で使用されるセンサーウィンドウの概略図(表面4の第2のウィンドウ部が、表面2の第1のウィンドウ部よりも大きく、上部、下部および側面にオフセットがある)である。
【
図3(b)】実施例で使用されるセンサーウィンドウの概略図(表面4の第2のウィンドウ部が(表面2の第1のウィンドウ部と比較して)再び大きくなり、上部および下部がフェードアウトであり、上部、下部および側面にオフセットがある)である。
【
図3(c)】実施例で使用されるセンサーウィンドウの概略図(周りのすべてにオフセットがあり(表面2の第1のウィンドウ部と比較して)、および表面4の第2のウィンドウ部の周りに高赤外線反射率/低放射率の隠しフレームがある、より大きな表面4の第2のウィンドウ部)である。
【
図4】実施例1のピクセル位置に対する光パワーのグラフである。
【
図5】実施例2のピクセル位置に対する光パワーのグラフである。
【
図6】実施例3のピクセル位置に対する光パワーのグラフである。
【
図7】実施例4のピクセル位置に対する光パワーのグラフである。
【
図8】実施例5のピクセル位置に対する光パワーのグラフである。
【
図9】様々な設計のセンサーウィンドウの代替の概略図を示し、表面2(S2)の第1のウィンドウ部および表面4(S4)の第2のウィンドウ部の形状を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0070】
図1(a)は、本発明に係る積層グレージング2を示す。積層グレージング2は、自動車用のフロントガラスである。積層グレージング2は、ガラスプライの間に延在する中間層によって一緒に積層された2つのガラスプライを備える。中間層は、ポリマープラスチック材料のプライ、例えば、ポリビニルブチラール(PVB)のプライを含む。積層グレージング2は、該グレージング2の透明部4を取り囲む周辺の隠しバンド6を有する。隠しバンド6は、光学的に不透明であり、車両の一部を隠し、また、UV光から接着材を保護する。
【0071】
フロントガラスの上端(車両に取り付けられている場合)の隠しバンド6には、光学的に透明な高度運転支援システム(ADAS)カメラセンサーウィンドウ10、つまり隠しバンド6のエナメルフリーの領域がある。車両に取り付けられると、ADASカメラセンサーウィンドウ10は、カメラがフロントガラスの上部を通して見られる画像を形成することを可能にする。
【0072】
ガラスプライを屈曲のために必要な高温に加熱すると、グレージング2の透明部4および透明カメラウィンドウ10と比較して、黒色の隠しバンド6を備えたグレージングの部分の加熱速度に違いが観察される。これら加熱速度の違いは、ガラスの局所的な温度差の発生をもたらし、これらは次いで、熱軟化ガラスの粘度の違いを引き起こす。これらの違いにより、光学的歪みが生じ得ると考えられている。光学的歪みは、透明部の周囲8にあるガラスプライの一部で、隠しバンド6の縁の近く、およびセンサーウィンドウ10において、ガラスプライの加熱/成形後に生じることがわかっている。ガラスプライの加熱/成形は、たるみ屈曲またはプレス屈曲の方法によって実行してもよく、前述のように、光学的歪みの程度および種類は、方法間で異なり得る。印刷されたガラスプライの冷却後にも光学的歪みが発生し得、これも温度差の発生が原因であると考えられている。
【0073】
図1(b)は、
図1(a)のA-A線断面を示す。積層グレージング2は、外側の第1のガラスプライ12(取り付け時に車両の外部に面する)、内側の第2のガラスプライ14、およびPVBのポリマー中間層16(通常は厚さ0.76mm)を有する。
図1(a)に示された隠しバンド6は、グレージングの表面2に1つ、および表面4に1つの計2つの隠し層を備える。黒く不透明なエナメルの表面2の隠し層18は、第1のセンサーウィンドウ部15を形成する印刷されていない、すなわち透明な領域を備え、外側の第1のガラスプライ12の表面2(すなわち、積層体の内側にあり、車両の内部に向いている第1のガラスプライ12の非露出面)に印刷される。黒く不透明なエナメルの表面4の隠し層20は、第2のセンサーウィンドウ部17を形成する、同じく印刷されていない領域を備え、第2のガラスプライ14の表面4(すなわち、取り付けられたとき車両の内部に面する内側のガラスプライ14の表面)に印刷される。第1のセンサーウィンドウ部15および第2のセンサーウィンドウ部17は一緒に、積層グレージング2においてセンサーウィンドウ10(例えば、ADASカメラ用)を形成する。
【0074】
第2のセンサーウィンドウ部17は、
図1の実施形態では、第1のセンサーウィンドウ部15よりも大きい。これにより、2つのセンサーウィンドウ部の下端の間にオフセット19が生じ、同様に上端のオフセット21、オフセット19、21が、外側ウィンドウ部15および内側ウィンドウ部17の上端および下端で、垂直(つまりy軸)寸法の差になる(
図1(a)に示すように、グレージングが取り付けられた後)。オフセット19、21は、
図1の実施形態では実質的に同じであるが、他の実施形態では異なり得る。
【0075】
図1に示される実施形態では、両方のガラスプライは、たるみ屈曲によって成形され、驚くべきことに、より大きな内側ウィンドウ部17が、表面2の隠し層18および表面4の隠し層20からの光学的歪みのバランスを互いに取らせ、センサーウィンドウ10の全体的、すなわち正味の光学的歪みを低減する傾向にある。
【0076】
図2は、本発明の別の実施形態に係る積層グレージング22を示す。積層グレージング22は、自動車用のフロントガラスである。積層グレージング22は、中間層のポリマー層、例えばポリビニルブチラール(PVB)によって一緒に積層された2つのガラスプライを備える。積層グレージング22は、グレージングの透明部24を取り囲む周辺の隠しバンド26を有する。隠しバンド26は、光学的に不透明であり、車両の一部を隠し、また、UV光から接着材を保護する。
【0077】
フロントガラスの上端(車両に取り付けられている場合)の隠しバンド26には、左センサーウィンドウ30および右センサーウィンドウ32を備える、2つの光学的に透明な高度運転支援システム(ADAS)カメラセンサーウィンドウがある。センサーウィンドウには、隠しバンド26のエナメルがない。車両に取り付けられると、センサーウィンドウ30、32は、1つ以上のカメラがフロントガラスの上部を通して見られる画像を形成することを可能にする。
【0078】
図1の実施形態のように、黒色の隠しバンド26と、グレージング24および透明なカメラウィンドウ30の透明部との加熱速度の違いにより、光学的歪みは、透明部の周囲28にあるガラスプライの一部で、隠しバンド26の縁の近く、およびセンサーウィンドウ30,32において、ガラスプライの加熱/成形後に生じ得る。ガラスプライの加熱/成形は、たるみ屈曲またはプレス屈曲の方法によって実行してもよく、光学的歪みの程度および種類は、方法間で異なり得る。
【0079】
両方の実施形態における隠しバンドは、表面にエナメルインクをスクリーン印刷し、硬化/乾燥し、次いでインクを焼成することによって形成されたエナメルを備える。エナメルは、ホウケイ酸ガラスフリットおよび少なくとも1つの無機顔料(例えば、鉄および/またはクロムを含有)を含み得る。
【0080】
図3は、実施例で使用されているカメラ/センサーウィンドウの概略図を示す。
図3(a)、3(b)および3(c)のそれぞれにおいて、隠しバンド40は、センサーウィンドウ42を有する。
図3(a)において、表面2の第1のセンサーウィンドウ部よりも大きい表面4の第2のセンサーウィンドウ部44は、上部にオフセット、5mmの側面(すなわち、表面4のセンサーウィンドウ部は、表面2のセンサーウィンドウ部よりも上面および側面が5mm大きい)および下部に8mmのオフセットを有する。
図3(b)では、
図3(a)のようにオフセットを有する、より大きい表面4の第2のセンサーウィンドウ部は、ウィンドウ部の下部および上部に鋸歯状フェードアウト46も有する。鋸歯状フェードアウト46は、上端および下端に追加され(それらから差し引かれるのではなく)、それにより、黒色のプリントは、
図3(b)の配置よりもセンサーウィンドウの中心に向かって少し延在し得る。鋸歯パターンの代わりに、ドット、ライン、またはフェザーエッジなどの他のパターンを使用してもよい。
図3(c)では、全周5mmのオフセットを有する、より大きい表面4の第2のセンサーウィンドウ部44が、隠しバンド40内の表面4の隠しフレーム48に配置され、該隠しフレーム48は、高赤外線反射率エナメル(表面4上の隠しバンドの残りの部分の赤外線反射率よりも高い赤外線反射率のもの、および表面2上のエナメルの赤外線反射率)を備える。
【0081】
これらのカメラ/センサーウィンドウの構成には多数のバリエーションが可能である。例えば、表面4のセンサーウィンドウ部は、表面2のセンサーウィンドウ部よりも小さくてもよい。さらに、オフセットは対称である必要はなく、ずらしてもよい、つまり、上下または左右、あるいはその両方でオフセットが異なってもよい。
【0082】
図9は、表面2(S2)(すなわち、第1のセンサーウィンドウ部)および表面4(S4)(すなわち、第2のセンサーウィンドウ部)の設計を示すセンサーウィンドウ部の他のいくつかの設計を示す。
図9(a)は一般に
図3(a)に示すとおりであり、
図9(b)は片側のS4センサーウィンドウ部を示し、S4に単一の下部バーを有す。
図9(c)および(e)はS4の三方の側の「帽子」または「U」の外形であり、
図9(d)は、S4の複数のバー/ブロックを示す。
【0083】
図1または
図2に示すような積層グレージングは、一般的に次のように製造し得る。平らなガラス基板(例えば、厚さ2.1mmのソーダライムフロートガラス)を、シルクスクリーンおよびエナメルインクを用いたドクターブレードによるスクリーン印刷(例えば、50~120スレッド/cmのポリエステルスクリーン、例えば、77または100スレッド/cmのポリエステルスクリーンを有するスクリーンを使用)に供し、スクリーン印刷された境界を形成し、任意で、該境界を、上記基板を300℃未満の温度で赤外線ヒーターからの赤外線放射にさらすことによって乾燥させる。次いで、外側の第1のガラスプライ12および内側の第2のガラスプライ14を形成するための2つの印刷されたガラス基板を、積み重ね、積み重ねた基板を屈曲させる。この段階では、熱源が供給され、通常、8分間以上かけて570℃の温度に加熱し、この温度で1分間保持してから、その温度のまま、プレス屈曲またはたるみ屈曲による標準の屈曲鋳型またはフレームにおいて曲げて、屈曲を行うことができる。基板同士を分離し、冷却後、PVB中間層(厚さ約0.76mm)を用いて積層される。
【0084】
グレージングは、例えば、最初にニップローラーによるプレニップを含む方法、またはガラスの第1および第2のプライの縁に適用される真空リングを使用してガラスプライおよびPVB中間層のアセンブリを脱気する方法によって、積層してもよい。次いで、第1および第2のガラスプライならびにPVB中間層は、6バール~14バールの圧力範囲および110℃~150℃の温度範囲にてオートクレーブ内で一緒に積層される。
【0085】
本発明は、以下の実施例によってさらに説明されるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0086】
実施例では、黒色エナメル(例えば、Johnson Matthey 1L530、Prince DV174100およびPrinceDV17450、高赤外線反射率エナメル)を使用し、かつ、
図3に示すように表面2および表面4上で様々なサイズおよび形状のセンサーウィンドウ部を用いて、積層ウィンドウを上記の方法に従って製造した。テストに供した別のインクは、中程度の性能のインクであるJohnson Matthey 1L4755-WF789Pである。
【0087】
かなりの数の各積層グレージングサンプルの水平および垂直光パワーを、フィルターを備えたISRAVision AG標準システムと同等の光パワー測定システムを使用して、55°の角度で測定し(比較のために60°のテスト角度に変換)、光パワー積分長を定義した(例えば、1/2/0 ISRAフィルター、光パワー測定システムの1mm/1mmフィルターに相当)。
【0088】
可視スペクトル380-780nmの光透過率は、設置角度で測定された少なくとも54%であった。
【0089】
各ウィンドウの中心線に沿った平均垂直光パワーは、上部から下部に向かって決定され、結果は
図4から
図8のグラフに示されている。x軸は、ウィンドウの中心を基準にした測定位置をmmで示しているため、ウィンドウの上部は左側(x=負)になり、ウィンドウの下部は右側(x=正)になる。y軸は、各位置で測定された光パワーをmdptで示しているが、上記で言及したように60°に変換されている。
【0090】
[実施例1]
この実施例では、標準レベルの光パワーを発生させるインクを使用している。標準のセンサーウィンドウ部が表面2および表面4に存在する場合の結果を
図4に示す。全周で5mm、下部で8mmの相対的なS2/S4オフセットが存在する(S4ウィンドウ部がより大きい)。ラインDは、表面2で発生した光パワーを示し、これは負であり、ラインEは、表面4で発生した光パワーを示し、これもウィンドウの中央では負であるが、上下に向かっては正である。ラインFは、正味の光パワーを示し、これは、ウィンドウの上部、特に下部に向かって絶対的な大きさが低減しているが、中央ではほとんど改善されていない。
図4は、隠し層に隣接する印刷面で対立する光パワーのバランスをとることで、どのように個々のプライに比べて光学的歪みを低減できるかを示している。しかしながら、表面2で発生する光パワーは、表面4で発生する光パワーよりもかなり弱いため、最適な結果は未だ達成されていない。
【0091】
[実施例2]
この実施例では、表面4に赤外線反射率の高いエナメルを使用しており、その結果を
図5に示す。フロントガラスおよびセンサーウィンドウ部の設計は、実施例1と同じであるが、オフセットが全周5mmである(S4は全周でS2よりも約5mm大きかった)。前述のように、表面4の隠し層は、高赤外線反射率のエナメルを用いている(表面2のエナメルは、実施例1のような標準的なエナメルである)。ラインDは、実施例1と同様である。ラインGは、高赤外線反射率を有するエナメルによって表面4上に発生した光パワーを示す。ラインHは、ウィンドウ内の正味の光パワーを示し;このラインがx軸の近くにあることから、光学的歪みがどれだけ低減されたかを示している。表面4に高赤外線反射インクを選択することにより、実施例1の場合よりも表面2(ラインD)の反対側にはるかに近い歪みプロファイルが生成された。その結果、組み合わされたシステムの光学的歪みはさらに大幅に低減される。比較として、ラインIは、ベースラインとして印刷されていないガラスの光パワーを示している。ウィンドウの下部に向かって正味の光パワーは、印刷されていないガラスよりも実際には優れており、上部に向かって該光パワーは、印刷されていないガラスのそれに近いことがわかる。
【0092】
[実施例3]
この実施例では、実施例1および実施例2とは異なるフロントガラスを使用している。実施例1と同様に、標準インクを使用し、結果を
図6に示す。センサーウィンドウ部の設計は、実施例1の場合と同じで、全体で5mm、下部で8mmのオフセットである。ラインJは、表面2で発生した光パワーを示し、ラインKは、表面4で発生した光パワーを示す。ラインLは、結合された光パワーを示す。異なる設計のフロントガラスが使用されたが、結果は実施例1と同様の効果を示している。表面4(ラインK)の光パワーは、表面2(ラインJ)の光パワーよりも絶対的な大きさがより上であるため、補償効果は部分的つまり、フロントガラスの下部に向かってしか達成されない。
【0093】
[実施例4]
この実施例では、実施例3のフロントガラスを使用し、表面4に高赤外線反射率のエナメルを使用している。結果を
図7に示す。フロントガラスおよびセンサーウィンドウ部の設計は、実施例3と同じであるが、オフセットが、全周で5mmであり(S4はS2よりも全周で約5mm大きかった)、表面4の隠し層は、高赤外線反射率のエナメルを使用している。ラインJは、実施例3と同じであり、ラインMは、高赤外線反射率のエナメルを使用して、表面4で達成された光パワーを示している。ラインMが、x軸を鏡として、ラインJのほぼ鏡像となっていることに注意されたい。正味の光パワーはラインNで示され、大幅に低減している。繰り返すが、これは、センサーウィンドウ部の設計および使用するインクを適切に選択した場合、個々のプライで等しくかつ正反対の光パワーが達成され、これらは、積層後に実質的に互いに打ち消し合い得ることを示している。ラインOは、比較として印刷されていないガラスのベースラインの光パワーを示している。光学的歪みは、大幅に低減され、印刷されていないガラスの光学的歪みに近くなる。
【0094】
[実施例5]
この実施例は、光学的歪み/光パワーならびにセンサーウィンドウ部の設計およびエナメルの組み合わせのバランスをとるためのかなりの数のアプローチを示している。結果を
図8に示す。フロントガラスおよびセンサーウィンドウ部の設計では、ウィンドウ部の3つの側面の周りにS4「帽子」を使用したが(
図9(c)のように)、(他の実施例のように)S2の4つの側面すべての周りについて、2~3mm(S4はS2よりも全体的に約5mm大きかった)のオフセットをつけた。センサーウィンドウの設計は、一般的に
図9(c)と同様であった。ラインPは、標準エナメルを用いた表面2の光パワーを示し、ラインQは、高赤外線反射率のエナメルを用いた表面2の光パワーを示し、ラインTは、高赤外線反射率のエナメルを用いた表面4の光パワーを示す。フロントガラスは、2つの異なる構成を使用して製造した。1つは、表面4のセンサーウィンドウ部が、表面2のセンサーウィンドウ部よりも大きい(ラインR)ものであり、もう1つは、表面2のセンサーウィンドウ部が、表面4のセンサーウィンドウ部よりも大きい(ラインS)ものである。どちらの場合も、エナメルは赤外線反射率が高かった。ラインRおよびSの両方が、個々のプライ(ラインQおよびT)にわたり改善を呈していることがわかるが、ラインRが全体的に最良の結果をもたらす。
【0095】
要約すると、本発明は、第1および第2のガラスプライの光パワープロファイルのバランスをとることにより、センサーウィンドウについて全体的な光学的歪みおよび光パワーを著しく低減させることを示す。
【符号の説明】
【0096】
[参照番号]
2:積層グレージング
4:グレージングの透明部
6:隠しバンド
8:透明部の周囲
10:センサー(例えば、ADASカメラ)ウィンドウ
12:第1の(例えば、外側の)ガラスプライ
14:第2の(例えば、内側の)ガラスプライ
15:第1のセンサーウィンドウ部
16:ポリマー中間層
17;第2のセンサーウィンドウ部
18:表面2の隠し層
19:下端のオフセット
20:表面4の隠し層
21:上端のオフセット
22:積層グレージング
24:グレージングの透明部
26:隠しバンド
28:透明部の周囲
30:左センサー(例えば、ADASカメラ)ウィンドウ
32:右センサー(例えば、ADASカメラ)ウィンドウ
40:隠しバンド
42:センサーウィンドウ
44:表面4のウィンドウ部のオフセット
46:鋸歯状フェードアウト
48:隠しフレーム(例えば、高赤外線反射率)