(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】組立式紙容器及びフィルム貼着成形機
(51)【国際特許分類】
B65D 5/56 20060101AFI20240924BHJP
B65D 5/20 20060101ALI20240924BHJP
B29C 51/30 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B65D5/56 A BRH
B65D5/20 Z
B29C51/30
(21)【出願番号】P 2021566812
(86)(22)【出願日】2020-09-01
(86)【国際出願番号】 JP2020033074
(87)【国際公開番号】W WO2021131164
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-04-13
(31)【優先権主張番号】P 2019235300
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】山口 勝
(72)【発明者】
【氏名】貝森 友一
(72)【発明者】
【氏名】成田 廣大
【審査官】森本 哲也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭50-116823(JP,U)
【文献】特開平08-119260(JP,A)
【文献】特開平04-142246(JP,A)
【文献】特開平09-254280(JP,A)
【文献】特開平11-138663(JP,A)
【文献】特開2006-088669(JP,A)
【文献】特開2002-012213(JP,A)
【文献】特開2000-079937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/00-5/76
B29C 51/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部を有した容器本体と、前記収容部の内面を被覆した樹脂製フィルムと、を備えた組立式紙容器であって、
前記容器本体は、
底面と、
前記底面から立ち上がる複数の側面と、
前記複数の側面と接続して組立て後に上面が面一となるフランジ部と、
前記フランジ部の上面上の前記樹脂製フィルムに貼着されて前記収容部を被覆するトップシールを有し、
前記フランジ部の上面には、前記ブランクシートの端面どうしが近接して生じた、前記収容部から前記容器本体の外側へ向けて延びた隙間があり、
前記樹脂製フィルムは前記フランジ部の上面を被覆し、前記隙間の上方に、前記隙間を横断するとともに当該樹脂製フィルムが凸となるように構成された突起部を有し、
前記トップシールは、前記フランジ部の上面の上方において、前記突起部と
接しつつ、前記隙間を横断して、前記樹脂製フィルムに貼着され
たこと
を特徴とする組立式紙容器。
【請求項2】
前記樹脂製フィルムは、少なくとも前記隙間の中において、3層以上に折り重なっていること
を特徴とする請求項1記載の組立式紙容器。
【請求項3】
樹脂製フィルムを、フランジ部付きの組立式紙容器に貼着するフィルム貼着成形機であって、
前記フィルム貼着成形機は、
前記組立式紙容器が載置される下型と、
前記下型に設けられ、前記下型に載置された前記組立式紙容器を介して前記樹脂製フィルムを吸引し、前記樹脂製フィルムを前記組立式紙容器に貼着する貼着部と、
前記下型と対向し、前記下型との間に前記樹脂製フィルムが挟まれる上型と、
前記上型に収容され、前記フランジ部と前記フランジ部上の樹脂製フィルムとを押さえるフランジ押え部と、
前記フランジ押え部に設けられ、前記フランジ部上の前記樹脂製フィルムの突起部形成領域を吸引し、前記フランジ部に対して凸となる突起部を前記樹脂製フィルムに成形する成形部と、
を備えたこと
を特徴とするフィルム貼着成形機。
【請求項4】
前記成形部による吸引方向は、前記貼着部の吸引方向と反対であること
を特徴とする請求項3記載のフィルム貼着成形機。
【請求項5】
前記貼着部は、前記成形部により前記突起部が成形された前記樹脂製フィルムを前記組立式紙容器に貼着すること
を特徴とする請求項3又は4に記載のフィルム貼着成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、組立式紙容器及びフィルム貼着成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
上端にフランジ部を有するトレー状の容器本体を、紙を主原料とする紙製のブランクシートから組み立てた組立式紙容器が知られている。組立式紙容器には、容器本体の内面及びフランジ部の上面に、樹脂性を有する熱可塑性の樹脂フィルムを貼り付けたものがある(特許文献1及び特許文献2)。樹脂フィルム付きの組立式紙容器は、樹脂性を有することから、主に食品等を収容するトレー又はボールとして利用される。
【0003】
また、組立式紙容器は、プラスチック容器と比較して、例えば、環境中で生じる二次マイクロプラスチックの発生等を抑制でき、環境に配慮できる製品である。さらに、樹脂フィルムは、容器本体から剥がすことも可能であり、樹脂フィルムと容器本体、即ち紙との分別も可能であり、樹脂フィルム及び容器本体のそれぞれのリサイクルも可能である。これらの利点から、組立式紙容器に、例えばMAP(Modified Atmosphere Packaging)を適用し、食品等の包装容器及び食品等の保存容器としての利用も期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-293334号公報
【文献】特開2019-172339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
組立式紙容器の容器本体には、その成形上、フランジ部の上面に、ブランクシートの端面どうしが近接して生じた隙間ができる。現状、この隙間は、容器本体の内面及びフランジ部の上面を樹脂フィルムで被覆しても、完全に埋めることは難しい。樹脂フィルムは薄い。樹脂フィルムを、例えば真空圧空により、組立式紙容器に貼着した場合、樹脂フィルムは、隙間の中に吸引される。樹脂フィルムだけで、隙間を塞ぐことは難しい。
【0006】
容器本体の収容部の中の空気を、食品に適した食品ガスに置換して包装する包装方法が開発されている(例えばMAP)。このような包装方法を、樹脂フィルム付きの組立式紙容器に適用した場合、トップシールが、フランジ部の上面上の樹脂フィルムに貼着される。しかし、トップシールも薄い。このため、トップシールを樹脂フィルムに貼着したとしても、樹脂フィルムの上面とトップシールの下面との間に、隙間に沿った空洞ができてしまう。トップシールをもってしても、空洞を完全に塞ぐことは難しい。しかも、空洞は、両端が開放されている。容器本体の収容部は、空洞を介して、容器本体の外に通じてしまう。
【0007】
以上のことから、樹脂フィルム付きの組立式紙容器には、トップシールで収容部を被覆したとしても、空洞を介して、収容部から収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しが発生する可能性がある。
【0008】
この発明の実施形態は、容器本体の収容部からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器及びその組立式紙容器を製造することが可能なフィルム貼着成形機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の第1態様に係る組立式紙容器は紙を主材料とするブランクシートから組み立てられ、収容部を有した容器本体と、前記収容部の内面を被覆した樹脂製フィルムと、を備えた組立式紙容器であって、前記容器本体は、底面と、前記底面から立ち上がる複数の側面と、前記複数の側面と接続して組立て後に上面が面一となるフランジ部と、前記フランジ部の上面上の前記樹脂製フィルムに貼着されて前記収容部を被覆するトップシールを有し、前記フランジ部の上面には、前記ブランクシートの端面どうしが近接して生じた、前記収容部から前記容器本体の外側へ向けて延びた隙間があり、前記樹脂製フィルムは前記フランジ部の上面を被覆し、前記隙間の上方に、前記隙間を横断するとともに当該樹脂製フィルムが凸となるように構成された突起部を有し、前記トップシールは、前記フランジ部の上面の上方において、前記突起部と接しつつ、前記隙間を横断して、前記樹脂製フィルムに貼着されたことを特徴とする。
【0012】
この発明の第2態様に係る組立式紙容器は、第1態様において、前記樹脂製フィルムは、少なくとも前記隙間の中において、3層以上に折り重なっていることを特徴とする。
【0013】
この発明の第3態様に係るフィルム貼着成形機は、樹脂製フィルムを、フランジ部付きの組立式紙容器に貼着するフィルム貼着成形機であって、前記フィルム貼着成形機は、前記組立式紙容器が載置される下型と、前記下型に設けられ、前記下型に載置された前記組立式紙容器を介して前記樹脂製フィルムを吸引し、前記樹脂製フィルムを前記組立式紙容器に貼着する貼着部と、前記下型と対向し、前記下型との間に前記樹脂製フィルムが挟まれる上型と、前記上型に収容され、前記フランジ部と前記フランジ部上の樹脂製フィルムとを押さえるフランジ押え部と、前記フランジ押え部に設けられ、前記フランジ部上の前記樹脂製フィルムの突起部形成領域を吸引し、前記フランジ部に対して凸となる突起部を前記樹脂製フィルムに成形する成形部と、を備えたことを特徴とする。
【0014】
この発明の第4態様に係るフィルム貼着成形機は、第3態様において、前記成形部による吸引方向は、前記貼着部の吸引方向と反対であることを特徴とする。
【0015】
この発明の第5態様に係るフィルム貼着成形機は、第3態様又は第4態様において前記貼着部は、前記成形部により前記突起部が成形された前記樹脂製フィルムを前記組立式紙容器に貼着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1態様~第2態様に係る組立式紙容器は、フランジ部の上面を被覆した樹脂製フィルムが、隙間の上方に、この隙間を横断する突起部を有する。このため、隙間の上方において、トップシールを樹脂製フィルムに、両端が開放された空洞を遮るように貼着することができる。したがって、第1態様~第2態様に係る組立式紙容器によれば、容器本体の収容部からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器を提供できる。
【0017】
第3態様~第5態様に係るフィルム貼着成形機は、フランジ部上に配置された樹脂製フィルムを吸引して、フランジ部に対して凸となる突起部を樹脂製フィルムに成形する成形部を備える。したがって、第3態様~第5態様に係るフィルム貼着成形機によれば、第1態様~第2態様に係る組立式紙容器を製造することが可能なフィルム貼着成形機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、一実施形態に係る組立式紙容器の一例を示す平面図である。
図1(b)は、一実施形態に係る組立式紙容器の一例を示す側面図である。
図1(c)は、一実施形態に係る組立式紙容器の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、ブランクシートの一例を示す平面図である。
【
図3】
図3(a)~
図3(d)は、突起部の一例を示す模式断面図である。
【
図4】
図4は、トップシールで収容部を被覆した一例を示す平面図である。
【
図5】
図5(a)~
図5(d)は、トップシールが樹脂性フィルムに貼着される様子を示す模式断面図である。
【
図6】
図6(a)~
図6(d)は、トップシールが樹脂性フィルムに貼着される様子を示す模式断面図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、フィルム貼着成形機の一例を示す模式断面図である。
【
図8】
図8(a)及び
図8(b)は、突起部の形成の様子を示す模式断面図である。
【
図9】
図9は、フィルム貼着システムの一例を示す模式ブロック図である。
【
図10】
図10(a)及び
図10(b)は、第1変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
【
図11】
図11(a)及び
図11(b)は、第2変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
【
図12】
図12(a)及び
図12(b)は、第3変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
【
図13】
図13(a)及び
図13(b)は、第4変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
【
図14】
図14(a)及び
図14(b)は、第5変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
【
図15】
図15(a)及び
図15(b)は、第6変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。各図において、共通する部分については共通する参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
(組立式紙容器)
図1(a)は、一実施形態に係る組立式紙容器の一例を示す平面図である。
図1(b)は、一実施形態に係る組立式紙容器の一例を示す側面図である。
図1(c)は、一実施形態に係る組立式紙容器の一例を示す斜視図である。
図2は、ブランクシートの一例を示す平面図である。
【0021】
図1(a)~
図1(c)に示す組立式紙容器1は、
図2に示すブランクシート2から組み立てられる。ブランクシート2は、紙を主材料とする。
図2において、点線は「谷折り」を示し、一点鎖線は「山折り」を示す。谷折り線及び山折り線は、例えば、ミシン目、ハーフカット、罫線等からなっている。また、太い実線は「切込み」を示す。ブランクシート2に「谷折り」及び「山折り」を施すことで、組立式紙容器1が得られる。
【0022】
組立式紙容器1は、容器本体11と、樹脂製フィルム3とを含む。容器本体11は、収容部12と、フランジ部13とを含む。容器本体11は、底面121と、底面121から立ち上がる複数の側面122とを持つ。収容部12は、底面121と複数の側面122とで構成される。側面122は、この実施形態では、8つある。側面122は、3つ以上あれば収容部12を構成できる。側面122は3つ以上あれば良い。
【0023】
フランジ部13は、それぞれの側面122の上端に収容部12から外向きに接続される。フランジ部13は、上面131を有する。フランジ部13の上面131は、組立て後、面一となる。フランジ部13の上面131には、隙間22がある。隙間22は、組立後、ブランクシート2の端面21どうしが近接することにより、上面131に生じる。隙間22は、収容部12から容器本体11の外側へ向けて延びる。この実施形態では、隙間22が、フランジ部13の四隅に生じた例を示す。
【0024】
樹脂
製フィルム3は、収容部12の内面、側面122の内面及びフランジ部13の上面131を被覆する。樹脂
製フィルム3には、例えば、水密性及びガス放散性を有するものが選ばれる。さらに、樹脂
製フィルム3の一例は、例えば熱可塑性樹脂のフィルムである。樹脂
製フィルム3は、隙間22の上方に、突起部31を有する。突起部31は、隙間22を横断する。この実施形態では、隙間22は4つある。突起部31も4つある。4つの突起部31は、それぞれ4つの隙間22の上方に1つずつ設けられている。突起部31は、1つの隙間22に対し、複数設けられていても良い。突起部31の形状は、
図1(a)中のIIIB-IIIBに沿った断面から見たとき、半円形状、四角形状、三角形状等いかなる形状をしていても良い。
【0025】
図3(a)~
図3(d)は、突起部の一例を示す模式断面図である。
図3(a)に示す断面は、
図1(a)中のIIIA-IIIA線に沿う。
図3(b)に示す断面は、
図1(a)中のIIIB-IIIB線に沿う。
図3(c)に示す断面は、
図1(a)中のIIIC-IIIC線に沿う。
図3(d)に示す断面は、
図1(a)中のIIID-IIID線に沿う。
【0026】
図3(a)~
図3(d)に示すように、樹脂
製フィルム3は、隙間22の中に落ち込んでいる。しかし、突起部31は、隙間22の上に、フランジ部13から上方に向けて突出している。
【0027】
なお、突起部31を成形可能な樹脂製フィルム3の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-アクリル酸共重合体、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリブテン、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。樹脂製フィルム3は、上記材料いずれかの単一フィルムであっても良く、上記材料を複数混合したフィルムであっても良い。また、樹脂製フィルム3は、単層のフィルムであっても良く、複数の層を積層した積層フィルムであっても良い。
【0028】
図4は、収容部をトップシールで被覆した一例を示す平面図である。
【0029】
図4に示すように、組立式紙容器1は、トップシール4で収容部12を被覆することにより、食品等を包装して収容することができる。トップシール4は、フランジ部13の上面131上の樹脂
製フィルム3に貼着される。これにより、トップシール4は、収容部12を被覆する。この実施形態では、トップシール4は、フランジ部13の上面131の上方において、隙間22を横断して、突起部31を潰しつつ樹脂
製フィルム3に貼着される。トップシール4を樹脂
製フィルム3に貼着する際、トップシール4は、押圧機の押圧機(例えばシールヘッド)により押圧される。押圧機は、押圧領域32に示す領域において、トップシール4を押圧する。この実施形態では、突起部31は、突起部31の全体が押圧領域32の幅の中に収まるように設計されている。これにより、突起部31は、押圧機によって、確実に潰すことができる。
【0030】
<トップシール貼着:参考例>
図5(a)~
図5(d)に、この発明の参考例として、突起部31を形成していない例を示す。
【0031】
図5(a)~
図5(d)は、トップシールが樹脂
製フィルムに貼着される様子を示す模式断面図である。
図5(a)~
図5(d)のそれぞれに示す断面は、
図3(b)に示す断面に相当する。
【0032】
図5(a)に示すように、樹脂
製フィルム3を、フランジ部13の上面131に載せる。
【0033】
次に、
図5(b)に示すように、例えば真空圧空により、樹脂
製フィルム3を容器本体11を介して吸引する。容器本体11は、紙を主材料とする。このため、吸引により、樹脂
製フィルム3は、フランジ部13に密着される。このとき、樹脂
製フィルム3は、隙間22の中に吸引され、隙間22の中に落ち込む。
【0034】
次に、
図5(c)に示すように、樹脂
製フィルム3上に、加熱されたトップシール4を載置する。
【0035】
次に、
図5(d)に示すように、加熱されたトップシール4を、押圧機により押圧して、樹脂
製フィルム3の上面33に熱圧着する。しかし、樹脂
製フィルム3は、隙間22の中に押し込まれているため、隙間22の中において、トップシール4の下面41は、樹脂
製フィルム3の上面33には届かない。このため、樹脂
製フィルム3の上面33とトップシール4の下面41との間に、空洞5ができる。空洞5は、両端が開放されているので、収容部12は、空洞5を介して、容器本体11の外に通じている。
【0036】
空洞5ができてしまうと、トップシール4で収容部12を被覆したとしても、空洞5を介して、収容部12から収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しが発生する。
【0037】
<トップシール貼着>
図6(a)~
図6(d)は、トップシールが樹脂
製フィルムに貼着される様子を示す模式断面図である。
図6(a)~
図6(d)に示す断面は、
図3(b)に示す断面に相当する。
【0038】
図6(a)に示すように、
樹脂製フィルム3を、フランジ部13の上面131に載せる。
【0039】
次に、
図6(b)に示すように、例えば真空圧空により、樹脂
製フィルム3を組立式紙容器1を介して吸引する。樹脂
製フィルム3は、フランジ部13の上面131に密着される。この実施形態においても、隙間22において、樹脂
製フィルム3は、隙間22の中に吸引され、隙間22の中に落ち込む。しかし、突起部31は、隙間22の上方へ、フランジ部13の上面131上の樹脂
製フィルム3の上面33を超えて突出したままである。なお、突起部31の成形の一例については、後述する。
【0040】
次に、
図6(c)に示すように、樹脂
製フィルム3上に、加熱されたトップシール4を載置する。
【0041】
次に、
図6(d)に示すように、加熱されたトップシール4を、押圧機により押圧する。トップシール4は、樹脂
製フィルム3の上面33に熱圧着される。このため、樹脂
製フィルム3の上面が、トップシール4の下面41と接する。
【0042】
さらに、熱圧着の過程において、突起部31は、トップシール4が押圧機により押圧されることにより潰される。突起部31は、隙間22を横断しているため、突起部31は、隙間22を横断して潰される。突起部31の一部は、樹脂
製フィルム3の上面33の一部をなす。この実施形態では、
図6(b)に示したように、突起部31は、隙間22の上方に、隙間22を横断する1つの第1角部31aを有する。突起部31の隙間22に沿った方向の断面は、三角形である。三角形の斜面312が、突起部31が潰されていく過程において、樹脂
製フィルム3の上面33となる。このため、樹脂
製フィルム3の上面は、隙間22を横断して、トップシール4の下面41と接するようになる。
【0043】
この実施形態によれば、隙間22の上方においても、トップシール4を、樹脂製フィルム3の上面33に熱圧着することができる。即ち、隙間22の上方において、トップシール4を、樹脂製フィルム3の上面に、空洞5を遮るように貼着することができる。
【0044】
また、突起部31が潰される結果、樹脂
製フィルム3の突起部31の側壁34が畳み込まれ、少なくとも隙間22の中において複数層に折り重なる。例えば
図6(d)に示す一例では、樹脂
製フィルム3が、3層に折り重なった例を示しているが、樹脂
製フィルム3は、例えば蛇腹状に、3層以上に折り重なっていても良い。樹脂
製フィルム3が、少なくとも隙間22の中において複数層に折り重なることにより、隙間22の上方においても、トップシール4を、樹脂
製フィルム3の上面33に熱圧着させやすくなる。複数層に折り重なった樹脂
製フィルム3は、押圧中のトップシール4に対して反力を与えるからである。
【0045】
また、
図6(b)に示したように、突起部31は、第1角部31aを有する。突起部31は、第1角部31aを有すると、例えば突起部31に角部31aが無い場合と比較して、潰れやすくなる、という利点も得られる。なお、第1角部31aは、角張った形状だけでなく、なだらかな形状、例えば丸みを帯びた形状であっても良い。
【0046】
このように、樹脂製フィルム3とトップシール4とによって、空洞5を遮ることが可能な一実施形態によれば、容器本体11の収容部12からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器1を提供できる。
【0047】
(フィルム貼着成形機)
図7(a)及び
図7(b)は、フィルム貼着成形機の一例を示す模式断面図である。
【0048】
フィルム貼着成形機600は、一実施形態に係る組立式紙容器1を製造することが可能な新規な成形機である。フィルム貼着成形機600は、樹脂製フィルム3を、フランジ部13付きの組立式紙容器1に貼着する。さらに、フィルム貼着成形機600は、貼着する際に、突起部31を樹脂製フィルム3に成形する。
【0049】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、フィルム貼着成形機600は、下型610と、貼着部611と、上型620と、フランジ押え部630と、成形部631とを含む。
【0050】
下型610には、組立式紙容器1が載置される。
【0051】
貼着部611は、下型610に設けられる。貼着部611は、真空ポンプ640に接続されている。貼着部611は、下型610に載置された組立式紙容器1を介して樹脂製フィルム3を吸引する。
【0052】
上型620は、下型610と対向する。上型620は、例えば上下動可能である。樹脂製フィルム3は、下型610と上型620との間に挟まれる。上型620が、下型610に、樹脂製フィルム3を間に挟んで密着されたとき、ほぼ密閉状態の処理空間が形成される。処理空間の中で、樹脂製フィルム3は、例えば真空圧空により、収容部12及びフランジ部13に貼着される。
【0053】
フランジ押え部630は、上型620内に収容されている。フランジ押え部630は、上型620の天板部621に、伸縮可能な弾性部材632により支持されている。弾性部材632の一例は、スプリングである。フランジ押え部630は、例えば真空圧空の間、フランジ部13とフランジ部13上の樹脂製フィルム3とを押さえる。
【0054】
成形部631は、フランジ押え部630に設けられている。成形部631は、真空ポンプ640に接続されている。成形部631は、フランジ部13上の樹脂製フィルム3の突起部形成領域を吸引する。突起部形成領域は、隙間22を横断するように設定される。突起部31の形成は、例えば樹脂製フィルム3を収容部12及びフランジ部13に貼着する間に行われる。成形部631による吸引方向は、貼着部611の吸引方向と反対である。この実施形態では、貼着部611は、樹脂製フィルム3を組立式紙容器1に向かう方向に吸引する。成形部631は、樹脂製フィルム3を組立式紙容器1から離れる方向に吸引する。
【0055】
図8(a)及び
図8(b)は、突起部31の形成の様子を示す模式断面図である。
【0056】
図8(a)及び
図8(b)に示すように、突起部31を吸引により成形すると、吸引前後で、樹脂
製フィルム3の厚さTが変わる。例えば、吸引後は、突起部31の樹脂
製フィルム3の厚さTが薄くなる。突起部31の樹脂
製フィルム3の厚さTが薄くなると、厚さTが厚い場合と比較して、突起部31を折り畳みやすくなる又は潰しやすくなる。これは、突起部31を、樹脂
製フィルム3を吸引することにより成形した場合の利点の1つである。
【0057】
(フィルム貼着成形機の動作例)
図7(a)及び
図7(b)に示すように、上型620を下型610から離した状態で、加熱した樹脂
製フィルム3を、上型620と下型610との間に導く。
【0058】
次に、下型610に、組立式紙容器1を載置する。
【0059】
次に、上型620を下降させ、上型620で樹脂製フィルム3を押さえる。さらに、フランジ押え部630でフランジ部13及びフランジ部13上の樹脂製フィルム3を押さえる。
【0060】
次に、貼着部611及び成形部631のそれぞれにより、樹脂製フィルム3を吸引する。これにより、樹脂製フィルム3は、収容部12の底面121、収容部12の側面122及びフランジ部13の上面131のそれぞれに貼着される。また、フランジ部13上で隙間22の上方に、フランジ部13に対して凸となる突起部31が成形される。
【0061】
また、成形部631による吸引タイミングは、貼着部611による吸引タイミングよりも早くしても良い。このように吸引タイミングをずらすと、樹脂製フィルム3がフランジ部13の上面131に貼着される前に、突起部31を成形することができる。このため、突起部31を成形しやすい、という利点が得られる。
【0062】
次に、上型620を上昇させる。そして、組立式紙容器1を樹脂製フィルム3ごと、フィルム貼着成形機から離脱させる。
【0063】
このように、フィルム貼着成形機600によれば、組立式紙容器1を製造することが可能である。
【0064】
(フィルム貼着システム)
図9は、フィルム貼着システムの一例を示す模式ブロック図である。
【0065】
フィルム貼着システム700は、送給ローラー710に巻かれた樹脂製フィルム3を巻取りローラー720で巻取りながら、フランジ部13付きの組立式紙容器1に、樹脂製フィルム3を貼着する。
【0066】
図9に示すように、フィルム貼着システム700は、送給ローラー710と、巻取りローラー720と、加熱機730と、フィルム貼着成形機600と、トリミング機740と、を含む。
【0067】
送給ローラー710には、1巻の帯状の樹脂製フィルム3が取り付けられる。
【0068】
巻取りローラー720には、帯状の樹脂製フィルム3の一端が取り付けられる。巻取りローラー720は、帯状の樹脂製フィルム3を巻き取る。帯状の樹脂製フィルム3は、送り方向Wに沿って、送給ローラー710から巻取りローラー720へ向かって進む。
【0069】
加熱機730は、送給ローラー710と巻取りローラー720との間に配置されている。加熱機730は、帯状の樹脂製フィルム3を加熱する。
【0070】
フィルム貼着成形機600は、加熱機730と巻取りローラー720との間に配置されている。フィルム貼着成形機600は、例えば、上述したフィルム貼着成形機である。
【0071】
トリミング機740は、フィルム貼着成形機600と巻取りローラー720との間に配置されている。トリミング機740は、帯状の樹脂製フィルム3に貼着された組立式紙容器1を、帯状の樹脂製フィルム3からトリミングする。これにより、組立式紙容器1は、帯状の樹脂製フィルム3から離脱される。
【0072】
このように、フィルム貼着システム700は、フィルム貼着成形機600を備える。したがって、フィルム貼着システム700によれば、組立式紙容器1を製造することが可能である。しかも、フィルム貼着システム700によれば、組立式紙容器1を、帯状の樹脂製フィルム3から連続して製造することができる。
【0073】
(突起部31の変形例)
次に、突起部31のいくつかの変形例について説明する。
【0074】
<第1変形例>
図10(a)及び
図10(b)は、第1変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
図10(a)に示す模式断面はトップシールの貼着前を示し、
図10(b)に示す模式断面はトップシールの貼着後を示す。
【0075】
図10(a)及び
図10(b)に示すように、突起部31は、隙間22の上方に、2つの第1角部31aと第2角部31bとを有していても良い。突起部31の隙間22に沿った方向の断面は、四角形である。第1変形例では、四角形の上面313が、突起部31が潰されていく過程において、樹脂
製フィルム3の上面33となる。
【0076】
第1変形例においても、樹脂製フィルム3の上面は、隙間22を横断して、トップシール4の下面41と接することができる。これにより、樹脂製フィルム3とトップシール4とによって、空洞5を遮ることが可能となる。
【0077】
したがって、第1変形例によれば、容器本体11の収容部12からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器1を提供できる。
【0078】
<第2変形例>
図11(a)及び
図11(b)は、第2変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
図11(a)に示す模式断面はトップシールの貼着前を示し、
図11(b)に示す模式断面はトップシールの貼着後を示す。
【0079】
図11(a)及び
図11(b)に示すように、突起部31の隙間22に沿った方向の断面は、台形であっても良い。第2変形例では、台形の上面314が、突起部31が潰されていく過程において、樹脂
製フィルム3の上面33となる。
【0080】
第2変形例においても、容器本体11の収容部12からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器1を提供できる。
【0081】
<第3変形例>
図12(a)及び
図12(b)は、第3変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
図12(a)に示す模式断面はトップシールの貼着前を示し、
図12(b)に示す模式断面はトップシールの貼着後を示す。
【0082】
図12(a)及び
図12(b)に示すように、突起部31の隙間22に沿った方向の断面は、2つの三角形が組み合わさった形状でも良い。第3変形例では、第1三角形の斜面315と、第2三角形の斜面316とが向き合った、いわばM字形をしている。第3変形例では、突起部31は、隙間22の上方に、第1角部31a、第2角部31b及び第3角部31cを有している。第3変形例では、第1三角形の斜面315と第2三角形の斜面316との双方が、突起部31が潰されていく過程において、樹脂
製フィルム3の上面33となる。
【0083】
第3変形例においても、容器本体11の収容部12からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器1を提供できる。
【0084】
また、第3変形例では、第1三角形の斜面315と、第2三角形の斜面316との双方が、樹脂製フィルム3の上面33となる。このため、隙間22の上方において、トップシール4と樹脂製フィルム3の上面33との接触面積を大きくしやすい。これにより、第3変形例によれば、空洞5を遮る効果を高めやすくなる、という利点が、さらに得られる。
【0085】
<第4変形例>
図13(a)及び
図13(b)は、第4変形例に係る突起部31の一例を示す模式断面図である。
図13(a)に示す模式断面はトップシール4の貼着前を示し、
図13(b)に示す模式断面はトップシール4の貼着後を示す。
【0086】
図13(a)及び
図13(b)に示すように、突起部31の隙間22に沿った方向の断面がM字形の場合、第1三角形の部分及び第2三角形の部分は、突起部31の途中まで形成されるようにしても良い。
【0087】
第4変形例においても、容器本体11の収容部12からの収容物の漏れ出し又は収容物の滲み出しを抑制することが可能な組立式紙容器1を提供できる。
【0088】
<第5変形例>
図14(a)及び
図14(b)は、第5変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
【0089】
図14(a)及び
図14(b)に示すように、例えば第1変形例において、第1角部31a及び第2角部31bは、角張った形状だけでなく、なだらかな形状、例えば図示するように丸みを帯びた形状であっても良い。なお、このことは、上記一実施形態における第1角部31a(例えば
図6(b)参照)、第2変形例における第1角部31a及び第2角部31b(例えば
図11(a)参照)、第3変形例における第1角部31a~第3角部31c(例えば
図12(a)参照)並びに第4変形例における第1角部31a~第3角部31c(例えば
図13(a)参照)についても同様である。
【0090】
<第6変形例>
図15(a)及び
図15(b)は、第6変形例に係る突起部の一例を示す模式断面図である。
【0091】
図15(a)及び
図15(b)に示すように、突起部31の先端面317は、全体的に丸みを帯びていても良い。例えば、先端面317の全体が丸みを帯びていたとしても、突起部31は、例えば蛇腹状に潰すことができる。したがって、第6変形例においても、樹脂
製フィルム3の上面33を、トップシール4に圧着することができる。
【0092】
以上、この発明の一実施形態を説明したが、上記一実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。また、この発明の実施形態は、上記一実施形態が唯一のものでもない。この発明の実施形態は、上記一実施形態の他、様々な新規な形態で実施することができる。したがって、上記一実施形態は、この発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更が可能である。このような新規な形態や変形は、この発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明、及び特許請求の範囲に記載された発明の均等物の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0093】
1 :組立式紙容器
11 :容器本体
12 :収容部
121:底面
122:側面
13 :フランジ部
131:上面
2 :ブランクシート
21 :端面
22 :隙間
3 :樹脂製フィルム
31 :突起部
31a:第1角部
31b:第2角部
31c:第3角部
312:三角形の斜面
313:四角形の上面
314:台形の上面
315:第1三角形の斜面
316:第2三角形の斜面
317:突起部の先端面
32 :押圧領域
33 :上面
34 :側壁
4 :トップシール
41 :下面
5 :空洞
600 :フィルム貼着成形機
610:下型
611:貼着部
620:上型
621:天板部
630:フランジ押え部
631:成形部
632:弾性部材
640:真空ポンプ
700 :フィルム貼着システム
710:送給ローラー
720:巻取りローラー
730:加熱機
740:トリミング機
T :厚さ
W :送り方向