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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】フード提案システム及びフード提案方法
(51)【国際特許分類】
   A01K 29/00 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
A01K29/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022104056
(22)【出願日】2022-06-28
(65)【公開番号】P2024004404
(43)【公開日】2024-01-16
【審査請求日】2023-05-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514235307
【氏名又は名称】アニコム ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【弁理士】
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【弁理士】
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【弁理士】
【氏名又は名称】大田黒 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100169236
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 貴史
(72)【発明者】
【氏名】岸田 滋史
(72)【発明者】
【氏名】卯川 尚史
(72)【発明者】
【氏名】安宅 快
(72)【発明者】
【氏名】土谷 晴佳
【審査官】大澤 元成
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-201972(JP,A)
【文献】特開2021-144738(JP,A)
【文献】国際公開第2022/099139(WO,A1)
【文献】国際公開第2022/091995(WO,A1)
【文献】特開2013-078318(JP,A)
【文献】特開2006-219415(JP,A)
【文献】特表2007-532121(JP,A)
【文献】特開2006-025605(JP,A)
【文献】特開2021-114999(JP,A)
【文献】渡部宏樹,DNNを用いたペット顔検出・品種識別,2021年03月01日,https://www.ams.giti.waseda.ac.jp/data/pdf-files/2018_watabe_mt.pdf,(掲載日については、http://web.archive.org/web/20210301194102/https://www.ams.giti.waseda.ac.jp/publ
【文献】アニコムホールディングス株式会社,アニコム家庭動物白書2021,2021年12月06日,p.1-72,https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_202112.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
愛玩動物が属する品種及び年齢の保険金請求データに基づいて、前記愛玩動物に適した
フードを提案する提案手段を備えるフード提案システムであって、
前記保険金請求データが、品種ごとの疾患別保険金請求割合に関するデータを含み、
前記提案手段が、前記愛玩動物が、前記愛玩動物の属する品種において保険金請求割合
の高い疾患の最頻値年齢と同じ年齢に達する前に、前記疾患の予防に有用なフードを提案
するものである、
フード提案システム。
【請求項2】
愛玩動物の個体情報を受け付ける受付手段を備える請求項1に記載のフード提案システム。
【請求項3】
さらに、愛玩動物の顔画像からその愛玩動物の品種を判定する判定手段を備える請求項1に記載のフード提案システム。
【請求項4】
前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、愛玩動物の顔画像からその愛玩動物の品種を判定するものであって、
前記学習済みモデルが、愛玩動物の顔画像と、その愛玩動物の品種とを教師データとして用いて学習を行い、入力を愛玩動物の顔画像とし、出力をその愛玩動物の品種とする学習済みモデルである請求項3記載のフード提案システム。
【請求項5】
前記提案手段が、以下の(A)又は(B)のフードを提案するものである請求項1記載のフード提案システム
(A)前記品種において、保険金請求割合の高い疾患の予防と関連する栄養素を含むフード、
(B)前記品種において、保険金請求割合の高い疾患の予防のために控えることが望ましい栄養素を含まないか、又は、前記栄養素の含有量が少ないフード。
【請求項6】
愛玩動物が属する品種及び年齢の保険金請求データに基づいて、コンピュータが、前記愛玩動物に適したフードを提案するフード提案方法であって、
前記保険金請求データが、品種ごとの疾患別保険金請求割合に関するデータを含み、
前記コンピュータが、前記愛玩動物が、前記愛玩動物の属する品種において保険金請求割合の高い疾患の最頻値年齢と同じ年齢に達する前に、前記疾患の予防に有用なフードを提案するものである、
フード提案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、愛玩動物向けのフード提案システム及びフード提案方法に関し、詳しくは、愛玩動物が属する品種ごとの保険金の請求割合に基づいて、当該愛玩動物に適したフードを提案するフード提案システム及びフード提案方法に関する。
【背景技術】
【0002】
愛玩動物(以下、「動物」と省略することがある。)は、人間にとってかけがえのない存在である。近年、人間が飼育する犬等の平均寿命が大幅に伸びた一方で、動物がその一生の中で何らかの疾患に罹患することが多くなり、飼育者が負担する医療費の増大が問題となっている。
【0003】
そのため、飼育する愛玩動物の健康への関心が高まっている。特に、食事は、愛玩動物の健康に重要であるとされ、様々なペットフード(以下、「フード」と省略することがある。)が提案、販売されている。
【0004】
現在市販されているフードは、それぞれ特徴的な栄養素組成、配合が謳われているが、個々の愛玩動物の体質や健康状態に対応したものとはなっていない。妊娠中の動物向け、老齢の動物向け、肥満の動物向け、というように、動物を幾つかのカテゴリーに分類し、それぞれのカテゴリーに属する動物に対する専用品として販売されているフードもあるが、一口に肥満の動物といっても、その原因や肥満の解決方法は様々であり、一概に同じ肥満用のフードを与えることが最適解となっていないことも考えられる。
【0005】
そこで、個々の愛玩動物の体質に対応したフードが求められている。
【0006】
特許文献1には、愛玩動物が保有する遺伝性疾患の予防または進行抑制に有効で、かつ安心して長期的に給与できる遺伝性疾患予防食品を提案する食品提案システムが開示されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されている食品提案システムは、提案の前提として愛玩動物の遺伝子解析が必要であり、手軽に利用することができない。また、ヒトと比べると遺伝性疾患に関する研究が進んでいないため、遺伝子解析のみから遺伝性疾患を明らかにするのは困難である。また、そもそも疾病が遺伝性ではなく、後天性の可能性もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2021-114999号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】アニコム家庭どうぶつ白書2021,アニコムホールディングス株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、遺伝性疾患かどうかが特定されていない場合であっても、個々の愛玩動物の健康増進や疾患予防に適したフードを提案することのできるフード提案システム及びフード提案方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、少なくとも保険金請求データを用いてフードを提案すれば上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は以下の[1]~[12]である。
[1]愛玩動物が属する品種の保険金請求データに基づいて、前記愛玩動物に適したフードを提案する提案手段を備えるフード提案システム。
[2]愛玩動物が属する品種及び年齢の保険金請求データに基づいて、前記愛玩動物に適したフードを提案する提案手段を備えるフード提案システム。
[3]愛玩動物の個体情報を受け付ける受付手段を備える[1]又は[2]のフード提案システム。
[4]さらに、愛玩動物の顔画像からその愛玩動物の品種を判定する判定手段を備える[1]~[3]のいずれかの記載のフード提案システム。
[5]前記判定手段が、学習済みモデルを用いて、愛玩動物の顔画像からその愛玩動物の品種を判定するものであって、
前記学習済みモデルが、愛玩動物の顔画像と、その愛玩動物の品種とを教師データとして用いて学習を行い、入力を愛玩動物の顔画像とし、出力をその愛玩動物の品種とする学習済みモデルである[4]のフード提案システム。
[6]前記保険金請求データが、品種ごとの疾患別保険金請求割合に関するデータである[1]のフード提案システム。
[7]前記提案手段が、以下の(A)又は(B)のフードを提案するものである[1]のフード提案システム
(A)前記品種において、保険金請求割合の高い疾患の予防と関連する栄養素を含むフード、
(B)前記品種において、保険金請求割合の高い疾患の予防のために控えることが望ましい栄養素を含まないか、又は、前記栄養素の含有量が少ないフード。
[8]前記提案手段が、前記愛玩動物の年齢に関するデータと、前記愛玩動物が属する品種において保険金請求割合の高い疾患の最頻値年齢に関するデータとを用いて、前記愛玩動物の年齢に応じたフードを提案するものである[2]記載のフード提案システム。
[9]前記提案手段が、前記愛玩動物が、前記愛玩動物の属する品種において保険金請求割合の高い疾患の最頻値年齢と同じ年齢に達する前に、前記疾患の予防に有用なフードを提案するものである[8]のフード提案システム。
[10]愛玩動物が属する品種の保険金請求データに基づいて、前記愛玩動物に適したフードを提案するフード提案方法。
[11]愛玩動物が属する品種及び年齢の保険金請求データに基づいて、前記愛玩動物に適したフードを提案するフード提案方法。
[12][1]のフード提案システムが提案したフード。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、個々の愛玩動物の健康増進や疾患予防に有用なフードを提案することのできるフード提案システム及びフード提案方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明のフード提案システムの一実施態様を示す構成図である。
図2】トイプードルの保険金請求割合等を示す図である。
図3】チワワの保険金請求割合等を示す図である。
図4】ミニチュア・ダックスフンドの保険金請求割合等を示す図である。
図5】柴犬の保険金請求割合等を示す図である。
図6】品種ごとに罹患しやすい疾患を示す図である。
図7】疾患に有効な原材料を示す図である。
図8】提案されるフードの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<フード提案システム>
本発明のフード提案システムは、愛玩動物に適したフードを提案するフード提案システムであって、愛玩動物の属する品種の保険金請求データに基づいて、愛玩動物に適したフードを提案する提案手段を備えるものである。これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【0016】
[愛玩動物および品種]
本発明のフード提案システムでは、ユーザーが対象となる動物の品種をシステムに入力等することで、動物に適したフードの提案が可能になる。ここで、本発明において対象となる動物は犬又は猫である。また、品種とは、生物の種以下の生物集団の単位である。例えば、犬の品種は犬種とも呼ばれ、具体的には、トイプードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフント、柴犬、ポメラニアン、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・シュナウザー、シー・ズー、フレンチ・ブルドッグ、パピヨン、マルチーズ、ラブラドール、ダルメシアン、チャウチャウ等が挙げられる。また、猫の品種は猫種とも呼ばれ、スコティッシュ・フォールド、アメリカン・ショートヘア、ノルウェージャン・フォレストキャット、ロシアンブルー、ブリティッシュ・ショートヘア、ラグドール、メイン・クーン、ペルシャ等が挙げられる。ウサギでいうと、ネザーランドドワーフ、ホーランドロップ、ロップイヤー、ミニレッキス、ドワーフロップ、アメリカンファジーロップ等が挙げられる。
【0017】
[品種判定]
また、本発明は、ユーザーが動物の顔画像(写真)を入力し、当該顔画像から品種を判定する品種判定手段を備えていてもよい。品種判定手段は、品種判定用の学習済みモデルを用いて、前記受付手段に入力された動物の画像からその動物の品種を判定する手段である。品種を判定し、その品種に応じた学習済みモデルを使用することで、個体識別の精度を上げることが可能となる。なお、品種判定手段を備えない場合は、別途利用者の端末等から品種情報を入力する仕様とすることもできる。
【0018】
画像としては静止画であっても、動画であってもよい。本明細書において「画像」と言う場合、静止画と動画の双方を含む。動画の場合、顔画像とは、顔が写っている動画である。動画の中に顔が写っている場面が含まれていればよい。動画は連続した静止画の集合であり、静止画と同様の処理が可能である。
【0019】
品種判定用の学習済みモデルとしては、人工知能(AI)が好ましい。人工知能(AI)とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムであり、具体的には、人間の使う自然言語を理解したり、論理的な推論を行ったり、経験から学習したりするコンピュータプログラムなどのことをいう。人工知能としては、汎用型、特化型のいずれであってもよく、ディープニューラルネットワーク、畳み込みニューラルネットワーク等のいずれであってもよく、公開されているソフトウェアを使用することができる。
【0020】
学習済みモデルを生成するために、人工知能を教師データを用いて学習させる。学習としては、機械学習とディープラーニング(深層学習)のいずれであってもよいが、ディープラーニングが好ましい。ディープラーニングは、機械学習を発展させたものであり、特徴量を自動的に見つけ出す点に特徴がある。
【0021】
学習済みモデルを生成するための学習方法としては、特に制限されず、公開されているソフトウェアを用いることができる。例えば、NVIDIAが公開しているDIGITS (the Deep Learning GPU Training System)を用いることができる。その他、例えば、「サポートベクターマシン入門」(共立出版)等において公開されている公知のサポートベクターマシン法(Support Vector Machine法)等によって学習させてもよい。学習用のデータセットとしては、ImageNetなど公開されているデータセットを用いることができる。
学習のための教師データは、動物の顔画像とその動物の品種である。教師データとして用いる動物の顔画像としては、動物の眼、鼻、口、耳及び顔の輪郭を含む顔全体の画像を用いることが好ましい。
【0022】
[保険金請求データ]
保険金請求データとは、動物保険に加入している動物の保険金請求に関するデータである。例えば、ある動物のある品種において、過去にどのような疾患や怪我を理由に保険金が請求されたのかに関するデータが挙げられる。好ましくは、品種ごとの疾患別の保険金請求割合のデータである。また、各品種、各疾患について、最も保険金請求の頻度が高くなる年齢、いわゆる最頻値年齢を含むことがより好ましい。また、各品種、各疾患について、年間診療費の平均値を含むことが好ましい。保険金請求データは、例えば、動物保険を提供している企業や動物病院などから入手可能であり、動物の飼い主からアンケートをとることでも取得可能である。
【0023】
[保険金請求データ解析]
保険金請求データ解析とは、動物保険に加入している動物の保険金請求データを解析して、少なくとも品種・疾患ごとの保険金請求割合や診療費などを算出するものである。保険金請求割合を明らかにすることで、一般的には知られていない遺伝性疾患や、体格(体の大きさ、足の長さ等)に起因する疾患を特定できる。また、診療費(例えば一年間に掛かる診療費)を算出することで、飼い主にとって金銭的負担の大きい疾患を特定できる。なお、本発明における疾患には、体格等に起因して被りやすい怪我も含むものとする。
【0024】
[疾患]
本発明における疾患は、システム運営者等が適宜整理し、分類することができる。例えば、循環器疾患としては、弁膜症、心筋症、不整脈、心房・室中壁欠損症等、呼吸器疾患としては、鼻炎、咽頭炎、気管炎、肺炎、横隔膜ヘルニア、喘息等、消化器疾患としては、食道炎、食道閉塞、胃炎、細菌性腸炎、回虫症等、肝/胆道計/膵の疾患としては、肝炎、胆管炎、膵炎肝/胆道/膵の腫瘍等、泌尿器疾患としては、慢性腎臓病、腎結石、膀胱炎、尿石症等、生殖器疾患としては、卵巣の疾患、子宮蓄膿症、膣炎、前立腺炎、亀頭炎等、神経疾患としては、てんかん、髄膜炎、水頭症、脳腫瘍等、眼の疾患としては、結膜炎、外傷性角膜炎、白内障、緑内障等、耳の疾患としては、細菌性外耳炎、アレルギー性外耳炎、耳血腫、中耳炎、内耳炎等、歯・口腔の疾患としては、歯周病、歯根膿瘍、唾液腺疾患、口内炎等、筋骨格疾患としては、椎間板ヘルニア、十字靭帯損傷・断裂、関節炎、骨折、捻挫、骨肉腫等、皮膚疾患としては、膿皮症、毛包虫症、アトピー性皮膚炎、黒色細胞腫・メラノーマ、爪の外傷等、血液・造血器の疾患としては、貧血、骨髄の異常、リンパ節腫大等、内分泌疾患としては、糖尿病、甲状腺機能亢進症・低下症、尿崩症等、全身性の疾患としては、アナフィラキシー、中毒、熱中症、熱傷、外傷、脱水等、その他の疾患が挙げられる。
【0025】
[フード提案]
本発明のフード提案システムは、対象となる動物の品種が入力される(後述するように、顔画像から品種を判定してもよい)と、その品種の保険金請求データに基づいて、対象となる動物が罹患しやすい疾患の予防に有用なフードを提案する。例えば、保険金請求データが、品種ごとの疾患別保険金請求割合に関するデータを含む場合、保険金請求割合の高い疾患の予防に有用なフードを提案する。ある品種において、保険金請求割合の高い疾患というのは、その品種に属する個々の動物も、同じ疾患に罹患する可能性が高いということであり、その予防が求められるからである。例えば、対象となる動物の属する品種において、骨折の保険金請求割合が高い場合、対象となる動物に対して、カルシウム分の多いフードなどの骨折予防に有用なフードが提案される。疾患とその予防に有用な栄養素やフードの対応関係は、予めデータベースに記憶させていてもよいし、外部サーバ、学術データベースやインターネットにアクセスをして、ある疾患の予防に有用な栄養素に関する情報を取得する構成としてもよい。
別の態様では、本発明のフード提案システムは、保険金請求データ解析によって、対象となる動物が罹患しやすい疾病を明らかにし、当該疾病に有効な栄養素を含む又は疾病の原因となる栄養素を取り除いたフードを提案するものである。すなわち、(A)ある品種において、保険金請求割合の高い疾患の予防と関連する栄養素、もしくは疾患の予防に有用な栄養素を含むフード、又は、(B)ある品種において、保険金請求割合の高い疾患の予防のために控えることが望ましい栄養素を含まないか、又は、前記栄養素の含有量が少ないフードを提案する。例えば、保険金請求データ解析の結果、眼の疾患になりやすいというデータが得られた場合には、アスタキサンチン、ルテイン、トコトリエノール、ビルベリーエキス等を添加したフードが提案される。また、糖尿病になりやすいというデータが得られた場合には、糖質を減らしたフードが提案される。なお、本発明にいうフードとは、ペットフードに限られず、サプリや栄養ドリンク等も含まれる。
【0026】
また、品種だけでなく、年齢、性別、体重、避妊手術歴、去勢手術歴、遺伝子検査の結果、当該動物の病歴といった個体情報に基づいて、栄養素の調整をすることもできる。例えば、対象となる動物が眼の疾患に罹患しにくい品種だったとしても、当該動物が眼の疾患に罹患した病歴がある場合には、眼の疾患を考慮した栄養素に調整することができる。さらに、ある疾患への既往歴がある場合は、別の特定の疾患への罹患可能性が高いといった傾向を反映してフードを提案することもできる。
一般的には、動物は、年齢を重ねると、罹患しやすい疾患が変化することがある。そこで、本発明のフード提案システムは、対象となる動物の年齢を用いることで、よりその個体に合ったフードを提案することが可能となる。また、保険金請求データが、品種ごと、疾患ごとの、最頻値年齢、すなわち、ある品種の動物が、ある疾患を理由に保険金請求の件数や率が最も高くなる年齢、言い換えれば、ある品種の動物が、ある疾患に最も罹患しやすくなる年齢を含む場合、対象となる動物の年齢と、保険金請求データのうち最頻値年齢を用いて、年齢を反映した精度の高いフードの提案が可能となる。好ましくは、対象となる動物が、その動物の属する品種において保険金請求割合の高い疾患の最頻値年齢と同じ年齢に達する前に、前記疾患の予防に有用なフードを提案する。最頻値年齢と同じ年齢に達する前とするのは、対象となる動物が最頻値年齢に達してしまうと、予防が間に合わないおそれがあるからである。より好ましくは、最頻値年齢の半分の年齢に達する頃に、当該疾患の予防に有用なフードを提案する。
【0027】
[出力]
本発明の提案手段による提案の出力の形式は特に限定されず、例えば、パソコンやスマートフォンなどの端末の画面上において、「ビタミンB12を多くとるようにしてください」、「脂肪分の少ないフードをとるようにしてください」というようにフードの提案内容を含んだメッセージを出力する方法が挙げられる。また、具体的なフードの材料やレシピを提案することでもよい。材料を提案する場合の例としては、「豚肉を多く含む食事をあげてください」、「鶏肉を多く含む食事をあげてください」といったメッセージによる出力が挙げられる。具体的なレシピを提案する場合、予めデータベースに記憶されたレシピの中から、最適なものをピックアップして提案することでもよい。また、市販されているフードをデータベース等に記憶しておき、その中から最適な市販のフードの商品名を選択し、提案するという構成であってもよい。
【0028】
以下、本発明のフード提案システムの一実施態様について、図1を参照しながら説明する。
図1中、端末40は、フード提案システムを利用したい者(ユーザー)が利用する端末であり、インターネット等によってサーバ10と接続されている。端末40は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォンやタブレット端末などが挙げられる。端末40は、CPUなどの処理部、ハードディスク、ROMあるいはRAMなどの記憶部、液晶パネルなどの表示部、マウス、キーボード、タッチパネルなどの入力部、ネットワークアダプタなどの通信部などを含んで構成される。
ユーザーは、端末40から、サーバ10にアクセスして品種、及び、必要に応じて、当該動物の年齢、体重、既往歴などの情報を入力、送信する。また、ユーザーは、端末40がサーバにアクセスすることによって、フードの提案結果を受信することができる。
【0029】
本実施形態においては、サーバ10はコンピュータによって構成されるが、本発明にかかる機能を有する限りにおいて、どのような装置であってもよい。
記憶部は、例えばROM、RAMあるいはハードディスクなどから構成される。記憶部には、サーバの各部を動作させるための情報処理プログラムが記憶され、特に、保険金請求データ解析手段(図示されない)及び提案手段11のためのソフトウェア、保険金請求データ12などのデータなどが記憶される。
【0030】
保険金請求データ解析手段は、ユーザーが入力した対象となる動物の品種等を入力とし、当該動物の品種に応じて罹患しやすい疾患を出力するソフトウェアであり、処理演算部によって実行される。解析手段としては、学習済みモデルであってもよい。そのような学習済みモデルは、例えば、XGBoost、CatBoost、LightGBM、或いは、ディープニューラルネットワーク又は畳み込みニューラルネットワークを含んで構成される。解析手段は、当該動物の品種に加えて、ユーザーが入力した当該動物の年齢、体重、既往歴などを用いて最適な保険金請求データを出力する構成であってもよい。
【0031】
提案手段11は、前記当該動物が罹患しやすい疾患を入力とし、疾患に対応したフードを判定し、出力するソフトウェアであり、処理演算部によって実行される。提案手段11としては、学習済みモデルであってもよい。そのような学習済みモデルは、例えば、XGBoost、CatBoost、LightGBM、或いは、ディープニューラルネットワーク又は畳み込みニューラルネットワークを含んで構成される。
【0032】
本実施形態では、提案手段や受付手段がサーバに格納され、ユーザーの端末とインターネットやLAN等の接続手段で接続される態様を説明したが、本発明はこれに限定されず、提案手段、受付手段、インターフェース部が一つのサーバや装置内に格納される態様や、端末40を必要としない態様等であってもよい。
【0033】
処理演算部20は、記憶部に記憶された保険金請求データ解析手段や提案手段11を用いて、フード提案結果を算出する。
【0034】
インターフェース部(通信部)30は、受付手段31と出力手段32を備え、ユーザーの端末から、動物の品種に関する情報やその他の情報を受け付け、ユーザーの端末に対して、フードの提案結果を出力、送信する。
【0035】
<フード提案方法>
本発明のフード提案方法は、動物に適したフードを提案するフード提案方法であって、保険金請求データ解析によって、対象となる動物が罹患しやすい疾病や怪我を明らかにして、当該疾患に有効な栄養素を含む、又は疾患の原因となる栄養素を取り除いたフードを提案する方法である。
【実施例
【0036】
図2~5は、非特許文献1からトイプードル、チワワ、ミニチュア・ダックスフンドおよび柴犬の疾患ごとの保険金請求割合、年間診療費および最頻値年齢を抜粋したデータである(非特許文献1、20~22頁、24頁)。
【0037】
前記データを根拠に、品種の入力に対して、罹患しやすい疾患を出力するソフトウェア(保険金請求データ解析手段)を構築した(図6)。具体的には、品種『トイプードル』の入力に対しては、罹患しやすい疾患『眼の疾患』、『消化器疾患』が出力される。なお、『トイプードル』の眼の疾患としては白内障(3位)と目やに(9位)が挙げられている(図2)が、個体への負担も診療費負担も白内障の方が大きく、白内障に罹患する最頻値年齢は10歳である。したがって、本実施例においては、トイプードルが白内障に罹患する最頻値年齢の半分の年齢(5歳)に達しているときに罹患しやすい疾患として『眼の疾患』を出力する仕様とした。
【0038】
次に、各疾患に有効な原材料の一覧を用意した(図7)。当該一覧を根拠に、罹患しやすい疾患の入力に対して、フードに添加すべき原材料を出力するソフトウェア(提案手段)を構築した(図7)。具体的には、品種『トイプードル』の入力に対しては、眼の疾患に有効なアスタキサンチン及びルテイン、並びに消化器疾患に有効なアスタキサンチン及びグランベリーパウダーが出力される仕様とした。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8