(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ケースと、取り外し可能なブレスレットと、及びブレスレットをケースに取り付けるシステムとを備える携行可能な物
(51)【国際特許分類】
G04B 37/16 20060101AFI20240924BHJP
A44C 5/14 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
G04B37/16 Z
A44C5/14 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022142729
(22)【出願日】2022-09-08
【審査請求日】2022-09-08
(32)【優先日】2021-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ロジェ・ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】ドーハン・シュリヒティヒ
【審査官】藤澤 和浩
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0323315(US,A1)
【文献】特開2000-253913(JP,A)
【文献】実開平6-82590(JP,U)
【文献】特開2001-112517(JP,A)
【文献】特開2019-207225(JP,A)
【文献】特開2012-168197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 37/00-37/22
A44C 5/00- 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円状の周部を備えるミドル部(21)があるケース(20)と、ブレスレット(30)と、及び前記ブレスレット(30)の各端を前記ミドル部(21)に取り外し可能に固定するための取り付けシステム(100)とを備える携行可能な物(10)であって、
前記ミドル部(21)の前記周部の内部には、摺動空間を形成するように構成している2つの縦方向空洞(110a、110b)があり、前記ミドル部(21)の前記周部は、前記ブレスレット(30)を前記ミドル部(21)に固定するための突出要素を有さず、
前記ブレスレット(30)の各端には、固定用ヘッド(31a、31b)があり、前記固定用ヘッド(31a、31b)は、前記縦方向空洞(110a、110b)のうちの1つに対して相補的な形になっており、摺動することによってその縦方向空洞(110a、110b)と連係して前記取り付けシステム(100)を形成するように構成しており、
前記携行可能な物(10)において、
前記固定用ヘッド(31a、31b)には、粘弾性材料によって作られた端フランジ(311)があり、
前記取り付けシステム(100)は、前記固定用ヘッド(31a、31b)の軸方向の運動を前記端フランジ(311)の粘弾性応答によって前記縦方向空洞(110a、110b)内にロックするための粘弾性的嵌め手段を備え、
前記粘弾性的嵌め手段は、前記縦方向空洞(110a、110b)のそれぞれにて形成された高剛性のロック用突起(210)の連係によって形成され、前記ロック用突起(210)は、前記ブレスレット(30)の挿入の際に粘弾性材料によって作られた前記端フランジ(311)を変形させるように構成しており、
前記ロック用突起(210)は、前記ブレスレット(30)の挿入の際に粘弾性材料によって作られた前記端フランジ(311)において形成された凹み(213)内に嵌まって、前記固定用ヘッド(31a、31b)の軸方向の運動をロックするように構成
され、
前記ロック用突起(210)及び前記凹み(213)は、接触面において、リリーフ角または曲線状の形を有する
ことを特徴とする携行可能な物(10)。
【請求項2】
粘弾性材料によって作られた前記端フランジ(311)は、前記固定用ヘッド(31a、31b)の端部分にある
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項3】
粘弾性材料によって作られた前記端フランジ(311)は、熱可塑性エラストマーによって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項4】
前記ブレスレット(30)の各端における前記固定用ヘッド(31a、31b)は、熱可塑性エラストマーによって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項5】
前記凹み(213)は、粘弾性材料によって作られた前記端フランジ(311)の中央領域において形成され、
前記ロック用突起(210)は、前記縦方向空洞(110a、110b)内において縦方向の中央にある
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項6】
前記ブレスレット(30)には、2つのストランド(30a、30b)があり、各ストランドには、そのストランドの端を形成する固定用ヘッド(31a、31b)があり、
前記固定用ヘッド(31a、31b)は、前記ブレスレット(30)の前記ストランド(30a、30b)と材料が一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項7】
前記ロック用突起(210)は、前記ミドル部(21)と材料が一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項8】
前記ミドル部(21)は、熱可塑性材料
によって作られる
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項9】
前記固定用ヘッド(31a、31b)の寸法は、前記縦方向空洞(110a、110b)の寸法よりも大きい
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項10】
前記取り付けシステム(100)は、前記縦方向空洞(110a、110b)の第1の端と第2の端のいずれを介しても前記ブレスレット(30)の組み付けと取り外しができるように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項11】
前記縦方向空洞(110a、110b)は、6時と12時の位置にある、前記ミドル部(21)における2つの円の区画にわたって形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【請求項12】
腕時計である
ことを特徴とする請求項1に記載の携行可能な物(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケースと、及び前記ケースに接続されるブレスレットとを備える、ユーザーの手首に着用されるように意図された携行可能な物に関する。本発明は、特に、工具を使用せずにブレスレットの組み付けと取り外しを可能にするような、携行可能な物のケースにブレスレットを取り外し可能に取り付ける取り付けデバイスに関する。
【0002】
本発明は、特に、腕時計ケースと、この腕時計ケースに接続されたブレスレットとを備える腕時計であって、この接続が前記腕時計ケースに前記ブレスレットを取り外し可能に取り付けるための取り付けデバイスを介して行われるものに関する。
【背景技術】
【0003】
ブレスレットを腕時計ケースに取り付けるために用いる取り付けデバイスは、典型的には、組み付けに必要な様々な部品の数と、これらの部品の複雑さと製造の難しさの両方の点で、非常に複雑である。
【0004】
特に、ブレスレットの各ストランドの端と腕時計ケースを互いに組み付けるために、それらが特別な形を有し加工されている必要がある。また、これらの様々な要素の組み付けには、非常に長い時間がかかり、したがって、コストがかかる。
【0005】
通常の取り付けデバイスは、腕時計ケースのミドル部の周部に設けられる2つのホーン又はその他の突出要素と、ブレスレットストランドの端に挿入される横断方向の棒体の存在に基づいており、この横断方向の棒体の両端が、各ホーンに形成された穴に挿入される。
【0006】
ブレスレットを交換できるようにするために、この種のブレスレットを腕時計ケースに取り付けるためのアタッチメントには、特定の工具が必要となる。結果として、摩耗や裂けのため、また、美的目的のために、ユーザーがブレスレットを変えることを望む場合、そのユーザーは、通常、このような交換を行うことを専門家に依頼する。これには時間がかかり、ある程度の費用が発生する。
【0007】
工業的な観点から考えると、ミドル部の周部から突き出るホーンやその他の要素によって、腕時計ケースの製造中又は仕上げプロセス中の多くの操作の自動化が妨げられてしまう。したがって、ホーンやその他の突出要素を損傷させてしまうことを防ぐために、一部の操作を手動で行う必要がある。
【0008】
ブレスレットの交換を容易にするような取り付けデバイスが知られている。しかし、このような取り付けデバイスは、典型的には、製造が複雑であり、ブレスレットをロックするために、ブレスレットストランドと腕時計ケースの間に、ばねやブレードのようなスペーサーを用いる必要がある。
【0009】
また、ブレスレットの交換を単純にする取り付けデバイスは、腕時計ケース及び/又はブレスレットの大幅な変更をすることを必要とし、これらの要素の製造が複雑になり、製造コストが増えてしまう。
【0010】
結果として、上述の既知の制約の少なくとも1つを解決するために、腕時計ケースにブレスレットを、より一般的には、携行可能な物にブレスレットを、取り外し可能に取り付ける取り付けデバイスを改善する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような状況で、本発明は、設計が単純であり、低コストであり、ブレスレットと携行可能な物のケースの間に配置する部品を必要とせず、弾性連結とロックが確実であるような、携行可能な物のケースにブレスレットを取り外し可能に取り付ける取り付けデバイスを提案することを目的とする。したがって、本発明は、ブレスレットをケースに適切な位置にて嵌めてロックするために付加的な部品を必要としない「一体的(モノブロック的)な」手法を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、工具を使用せずにブレスレットをケースに組み付け、ケースから取り外すことを可能にするような取り付けデバイスを提供することを目的とする。したがって、ユーザーは、専門家に連絡せずに、摩耗や裂けが発生した場合にブレスレットを容易に交換したり、美的特徴を変えたりすることができる。
【0013】
本発明は、さらに、ブレスレットとケースを伝統的な製造手段によって完全に自動化することができ、取り付けデバイスの手動の再加工操作を必要としないように部品の容易な製造を可能にするような、取り付けデバイスを提供することを目的とする。
【0014】
本発明に係る取り付けデバイスのおかげで、ブレスレットを組み付けるためのホーンや突出要素がミドル部にないケースを提供することができ、これによって、対称的であり容易に製造を自動化できるようなケースを得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を鑑みて、本発明は、ミドル部があるケースと、ブレスレットと、及び前記ブレスレットの各端を前記ミドル部に取り外し可能に固定するための取り付けシステムとを備える携行可能な物に関し、前記ミドル部には、摺動空間を形成するように構成している2つの縦方向空洞があり、前記ブレスレットの各端には、固定用ヘッドがあり、前記固定用ヘッドは、前記縦方向空洞に対して相補的な形になっており、摺動することによってその縦方向空洞と連係して前記取り付けシステムを形成するように構成しており、前記携行可能な物において、前記固定用ヘッドには、粘弾性材料によって作られた部分があり、前記取り付けシステムは、前記固定用ヘッドの軸方向の運動を前記部分の粘弾性応答によって前記縦方向空洞内にロックするための粘弾性的嵌め手段を備え、前記粘弾性的嵌め手段は、前記縦方向空洞のそれぞれにて形成された高剛性のロック用突起の連係によって形成され、前記ロック用突起は、前記ブレスレットの挿入の際に粘弾性材料によって作られた前記部分を変形させるように構成しており、前記ロック用突起は、前記ブレスレットの挿入の際に粘弾性材料によって作られた前記部分において形成された凹み内に嵌まって、前記固定用ヘッドの軸方向の運動をロックするように構成している。
【0016】
本発明に係る携行可能な物は、前の段落において記載した特徴に加えて、個別に又は技術的に可能な組み合わせに従って、以下の1つ以上の互いに補う特徴を有することができる。
- 粘弾性材料によって作られた前記部分は、前記固定用ヘッドの端部分にある。
- 粘弾性材料によって作られた前記部分は、端フランジを形成する。
- 粘弾性材料によって作られた前記部分は、熱可塑性エラストマーによって作られる。
- 前記ブレスレットの各端における前記固定用ヘッドは、熱可塑性エラストマーによって作られる。
- 前記凹みは、粘弾性材料によって作られた前記部分の中央領域において形成され、前記ロック用突起は、前記縦方向空洞内において縦方向の中央にある。
- 前記ブレスレットには、2つのストランドがあり、各ストランドには、そのストランドの端を形成する固定用ヘッドがあり、前記固定用ヘッドは、前記ブレスレットの前記ストランドと材料が一体的に形成されている。
- 前記ロック用突起は、前記ミドル部と材料が一体的に形成されて1つの部品を形成している。
- 前記ミドル部は、熱可塑性材料、好ましくはポリアミド11、によって作られる。
- 前記固定用ヘッドの寸法は、前記縦方向空洞の寸法よりも大きい。したがって、粘弾性材料によって作られた前記部分は、前記固定用ヘッドが前記縦方向空洞内に挿入されるときに付加的な変形を行う必要がある。
- 前記取り付けシステムは、前記縦方向空洞の第1の端と第2の端のいずれを介しても前記ブレスレットの組み付けと取り外しができるように構成している。
- 前記縦方向空洞は、前記ケースの6時と12時の位置にある前記ミドル部における2つの円の区画にわたって形成される。
【0017】
好ましくは、前記携行可能な物は、腕時計である。
【0018】
図面を参照しながら下記の詳細な説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が一層明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る携行可能な物についての実施例の第1の斜視図を示している。
【
図2】本発明に係る携行可能な物についての実施例の第2の斜視図を示しており、ブレスレットストランドがミドル部に取り付けられていない。
【
図3】ケースのyz平面における携行可能な物の断面図を示しており、縦方向空洞と、その縦方向空洞内にてロックされた固定用ヘッドの断面を示している。
【
図4】
図4~6は、本発明に係る携行可能な物のミドル部にブレスレットを取り付ける様々な段階を示している。
図4は、各ストランド30a、30bをミドル部21の縦方向空洞110a、110b内に挿入する第1の段階を示している。
【
図5】各ストランドを縦方向空洞内へと滑らせる第2の段階を示している。
【
図6】ブレスレットがケース内の適切な位置にロックされる第3の段階を示している。
【0020】
すべての図において、別途言及していないかぎり、共通の要素には同じ参照番号を割り当てている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る携行可能な物10についての実施例の第1の斜視図を示している。ここで、この携行可能な物10は、ユーザーの手首に着用するように意図された、腕時計のような計時器の形態である。また、携行可能な物10は、手首などにブレスレットを介して着用されるように意図された、歩数計、心拍数モニター又は他の携行可能な物であることができる。
【0022】
図2は、本発明に係る携行可能な物10についての実施例の第2の斜視図を示しており、ブレスレットストランドがミドル部に取り付けられていない。
【0023】
携行可能な物10には、ケース20があり、このケース20は、計時器用ムーブメント(簡明性の理由のために図示せず)などを受けるように意図されている。計時器用ムーブメントは、現在時刻のような情報を表示する手段を担持し駆動する。
【0024】
ケース20には、ミドル部21があり、このミドル部21は、下側が裏部23によって、また、上側が風防22によって、閉じられる。ケース20は、さらに、ミドル部21に取り付けられ風防22を担持することができるベゼル(図示せず)を備えることができ、このベゼルは、回転するものであることができ、また、回転しないものであることができる。
【0025】
ケース20は、主平面Pを形成し、この主平面Pは、例えば
図1において、横方向の軸xと縦方向の軸yがあるように示している。z軸は、主平面Pに対して垂直に延びており、ケース20の厚みを通り抜ける軸を形成する。主平面Pは、好ましくは、計時器用ムーブメントにあるプレートの平坦な部分と平行である。
【0026】
図示している実施例において、横方向の軸xは、3時-9時の軸と平行であり、縦方向の軸yは、6時-12時の軸と平行である。
【0027】
例として示したケース20は、概して環状の形である。しかし、ケース20は、本発明の範囲から逸脱することなく、他の既知の形態であることができる。
【0028】
携行可能な物10は、さらに、フレキシブルであり取り外し可能なブレスレット30を備え、このブレスレット30の2つの端が、取り付けシステム100を介して、ケース20のミドル部21に取り外し可能に連結されるように意図されている。取り付けシステム100は、工具を使用せずに、ブレスレット30をケース20に固定し、ブレスレット30を適切な位置にロックし、ブレスレット30を容易に交換することを可能にする。
【0029】
取り付けシステム100は、粘弾性変形によって、可逆的に、ブレスレット30を取り付けることを可能にする。結果として、本発明に係る取り付けシステム100は、ブレスレット30がケース20から取り外されているときにこの取り付けシステム100を構成する要素のうちの少なくとも1つの破壊や劣化が必然的に伴う不可逆的なスナップフィットを行うシステムと比べて特に有利である。
【0030】
本発明に係る取り付けシステム100は、スナップフィットタイプの取り付けシステムに対する代替的な形態である。粘弾性変形によるこのような取り付けシステムは、特に、このような取り付けシステムの製造を単純化させ、これは、特に、ブレスレットの粘弾性変形特性を利用する。このことによって、ブレスレット30の設計や製造が容易になる。
【0031】
ブレスレット30は、固定用デバイス(図示せず)によって互いに接続される2つのストランド30a、30bの形態であり、この固定用デバイスは、例えば、ブレスレット30の2つのストランド30a、30bをユーザーの手首のまわりに取り付ける機能を行う、クラスプ、折りたたみバックル又は任意の他の要素である。
【0032】
代替的実施形態の1つにおいて、ブレスレット30は、単一のストランドによって形成することができる。
【0033】
ミドル部21には、2つの縦方向空洞110a、110bがあり、これらの2つの縦方向空洞110a、110bは、ブレスレット30の各ストランド30a、30b、具体的には、ブレスレット30の各ストランド30a、30bの端を形成する固定用ヘッド31a、31b、の端を受けるように構成している。
図2において、第1の縦方向空洞110aを詳細に示している。
【0034】
縦方向空洞110a、110bは、ミドル部21に形成され、好ましいことに、ブレスレット30を固定するために一般的に用いられている固定用ホーンの代わりに用いることができる。縦方向空洞110a、110bは、ブレスレット30のストランド30a、30bの固定用ヘッド31a、31bと連係して、ブレスレット30の取り付けシステム100を形成する。
【0035】
このように、本発明に係るケース20のミドル部21には、ブレスレット30を取り付けるための突き出る要素がいずれもないことがわかる。結果として、ケース20の製造を完全に自動化することができる。
【0036】
縦方向空洞110a、110bは、互いに反対側にある2つの取り付け部分において形成され、これらの取り付け部分は、表盤(図示せず)の両側に位置し、好ましくは、6時と12時の位置にある。
【0037】
縦方向空洞110a、110bは、6時と12時の位置にある、ミドル部21における2つの円の区画にわたって形成される。
【0038】
縦方向空洞110a、110bは、ケース20の横方向の軸xと平行な摺動軸X-Xを形成する縦方向の軸に沿った摺動空間を形成する。
【0039】
縦方向空洞110a、110bは、ブレスレット30が取り付けられているとき又は取り外されているときに、ブレスレット30のストランド30a、30bの固定用ヘッド31a、31bを受け、摺動軸X-Xに沿って並進運動するように固定用ヘッド31a、31bをガイドするように構成している。
【0040】
したがって、ストランド30a、30bは、固定用ヘッド31a、31bをミドル部21の縦方向空洞110a、110b内にて滑らせることによって、ミドル部21に取り付けられる。
【0041】
縦方向空洞110a、110bは、端が開いており、すなわち、縦方向空洞110a、110bは、第1の端と第2の端において開いている。これによって、縦方向空洞110a、110bの第1の端及び第2の端の両方を通して、すなわち、リュウズ側(3時側)の端を介してもリュウズとは反対側(9時側)の端を介しても、滑らせることによって、ブレスレット30を挿入したり取り外したりすることができる。
【0042】
ストランド30a、30bの固定用ヘッド31a、31bは、縦方向空洞110a、110bに対して相補的な形であり、縦方向空洞110a、110b内に収容され、縦方向空洞110a、110b内において摺動軸X-Xに沿ってまっすぐに滑ることによって連係するように構成している。
【0043】
図3は、yz平面における腕時計10の部分の断面図を示しており、縦方向空洞110a、110bの断面と、縦方向空洞110a、110b内にてロックされた固定用ヘッド31a、31bの断面を示している。
【0044】
縦方向空洞110a、110bと固定用ヘッド31a、31bが、実質的にフック状の断面となっていることがわかる。
【0045】
縦方向空洞110a、110bには、この空洞の下部を形成する下面111があり、奥面112と上面113がこの空洞の上部を形成する。
【0046】
好ましいことに、縦方向空洞110a、110bには、縦方向空洞110a、110bの縦方向の軸に対応する摺動軸X-Xに沿った並進運動を除いてブレスレットの運動をブロックすることを可能にするアンダーカット部分がある。
【0047】
図示している実施例において、縦方向空洞110a、110bの上面113にアンダーカット部分を形成し、下面111は平坦である。
【0048】
1つの代替的実施形態(図示せず)において、縦方向空洞110a、110bの下面111にアンダーカット部分を形成し、上面113は平坦である。
【0049】
1つの代替的実施形態(図示せず)において、縦方向空洞110a、110bの下面111と上面113にアンダーカット部分があることができる。
【0050】
固定用ヘッド31a、31bにはそれぞれ、その固定用ヘッド31a、31bの自由端を形成する端フランジ311があり、この端フランジ311には、端面312があり、この端面312は、縦方向空洞110a、110bの奥部112に対して対向するように又は接触するように配置されるように意図されている。
【0051】
端フランジ311は、ブレスレット30のストランド30a、30bに比べて大きい付加的な材料の厚みを有する。
【0052】
このような形のおかげで、好ましいことに、摺動軸X-Xに沿って滑ることによって対応する縦方向空洞110a、110b内においてストランド30a、30bが並進運動をすることができ、かつ、他の自由度については、ストランド30a、30bの材料の厚みよりも厚い付加的な材料の厚みが固定用ヘッド31a、31bの端にあることによってブロックする。フランジ311は、縦方向空洞110a、110bのアンダーカット部分と連係し、ブレスレット30を保持するための手段を形成するような形を有する。
【0053】
当然、他の実施形態も考えられる。例えば、縦方向空洞110a、110b及びこれに対して相補的な固定用ヘッドの断面は、円形、L字形、T字形、C字形などであることができる。
【0054】
取り付けシステム100は、さらに、ミドル部21の縦方向空洞110a、110b内における各ストランド30a、30bの軸方向の運動を固定しロックするための粘弾性的嵌め手段を備え、これによって、各ストランド30a、30bの位置をいわゆるロック位置にロックする。
【0055】
この粘弾性的嵌め手段は、固定用ヘッド31a、31b、特に端フランジ311、の粘弾性変形によって、ミドル部21に対するストランド30a、30bの固定用ヘッド31a、31bの可逆的な粘弾性的嵌めを実行させるように構成している。
【0056】
このために、固定用ヘッド31a、31bの少なくとも端フランジ311は、ストランド30a、30bがケース20内に挿入されるときに粘弾性的変形を可能にするような材料によって作られる。
【0057】
粘弾性的嵌め手段には、スタッドやフィンガーのようなロック用突起210がある。好ましいことに、ロック用突起210は、各縦方向空洞110a、110b内において摺動軸X-Xに沿って、縦方向の中央にある。しかし、他のロック用突起210の位置も考えられる。
【0058】
図4は、
図2に示している携行可能な物10についての、xy平面に平行なケースの正中面に沿った断面図を示しており、縦方向空洞110a、110bと固定用ヘッド31a、31bの正中断面、特に、縦方向空洞110a、110b内にて形成されたロック用突起210を示している。
【0059】
このロック用突起210は、縦方向空洞110a、110bの奥面112に形成され、この奥面112から突き出て、ブレスレット30のストランド30a、30bの取り付けの障害を形成する。
【0060】
好ましくは、ロック用突起210は、高剛性である。
【0061】
好ましくは、ロック用突起210は、ミドル部21と材料が一体的に形成されて1つの部品を形成している。
【0062】
ロック用突起210は、固定用ヘッド31a、31bの端フランジ311の端面312と連係して、ブレスレット30が組み付けられるときに端フランジ311を粘弾性的に変形するように構成している。したがって、ブレスレット30を組み付けるために、ユーザーは、ブレスレット30が縦方向空洞110a、110b内に挿入されるときにロック用突起210が通過することを確実にするために端フランジ311の粘弾性的変形が十分に大きいことを確実にするために必要な力に起因する特定の大きさの組み付け抵抗に対抗しなければならない。
【0063】
固定用ヘッド31a、31bの端フランジ311の端面312に、凹み213が形成される。この凹み213は、ロック用突起210を受け、縦方向空洞110a、110b内におけるストランド30a、30bの軸方向の運動をブロックするブロック手段を形成するように意図されている。この凹み213は、ロック用突起210の形に対して相補的な形を有する。
【0064】
ロック用突起210は、凹み213と連係して、ブレスレット30の粘弾性的嵌め手段を形成し、固定用ヘッド31a、31bの軸方向の運動をロックする。ユーザーは、ブレスレット30を取り外すために、凹み213からロック用突起210を外して固定用ヘッド31a、31bの端フランジ311を再び変形させるために十分な力を発生しなければならない。
【0065】
好ましくは、ロック用突起210と相補的凹み213は、ブレスレット30の組み付けと取り外しを容易にするために、接触面において、リリーフ角ないし曲線状の形を有する。
【0066】
本発明に係る粘弾性的嵌め手段は、実質的にケース20の縦方向の軸yに沿って、ブレスレット30の方に、特に、ストランド30a、30bの方に、材料を押すことによって、固定用ヘッド31a、31bの端フランジ311を変形させるように構成している。
【0067】
ブレスレット30の各ストランド30a、30bの固定用ヘッド31a、31bは、ケース20のミドル部21よりもフレキシブルな材料によって作られ、これによって、ブレスレット30を組み付けているときに固定用ヘッド31a、31bの端フランジ311が変形することができる。
【0068】
好ましくは、ブレスレット30の固定用ヘッド31a、31bの少なくとも端フランジ311は、TPV(ThermoPlastic Vulcanizate:熱可塑性加硫物)、TPU(thermoplastic polyurethane:熱可塑性ポリウレタン)、TPE(thermoplastic elastomer:熱可塑性エラストマー)又はTPO(thermoplastic polyolefin:熱可塑性ポリオレフィン)のタイプの熱可塑性エラストマーによって作られる。例として、固定用ヘッド31a、31bの少なくとも端フランジ311を、Opti-Flex(商標)によって作ることができる。
【0069】
例として、ブレスレット30の固定用ヘッド31a、31bは、端フランジ311と同じ材料によって作ることができ、また、異なる材料によって作ることができ、粘弾性特性と硬度の特性が同じであることができ、また、異なることができる。
【0070】
例として、ストランド30a、30bは、ブレスレット30の固定用ヘッド31a、31bと同じ材料によって作ることができ、また、異なる材料によって作ることができ、粘弾性特性と硬度の特性が同じであることができ、また、異なることができる。
【0071】
例として、ミドル部21は、金属材料又はポリマーによって作られる。好ましくは、ミドル部21は、熱可塑性ポリマーによって作られる。例として、ミドル部21は、ポリウンデカンアミド又はナイロン11としても呼ばれるポリアミド11によって作ることができる。
【0072】
ミドル部21は、好ましくは、一体的なミドル部である。しかし、いくつかの別々に製造された部品を組み付けてミドル部を作ることもできる。
【0073】
好ましいことに、ポリマー製のミドル部は、射出成形によって作られる一体的なミドル部である。
【0074】
ケース20のミドル部21へのブレスレット30の組み付けは、以下のように行う。
図4~6は、この組み付けプロセスにおけるいくつかの異なる段階を示している。
【0075】
図4に示している第1の段階において、各ストランド30a、30bをミドル部21の縦方向空洞110a、110b内に挿入する。
【0076】
縦方向空洞110a、110bには対称性があるために、ブレスレット30を、縦方向空洞110a、110bの第1の端と第2の端のいずれを介しても、すなわち、リュウズ側に位置する端を介してもリュウズとは反対側の端を介しても、取り付けることができる。
【0077】
そして、
図5に示している第2の段階において、各ストランド30a、30bを、縦方向空洞110a、110bの摺動軸X-Xに沿って、選択された組み付け方向にて、例えば、
図5に示している方向にて、縦方向空洞110a、110b内へと滑らせる。
【0078】
ストランド30a、30bを挿入するとき、そして、ロック用突起210が端フランジ311の横方向の端と接触するときに、ユーザーは、ロック用突起210に対向する端フランジ311の部分を粘弾性的に変形させる力を与えなければならず、これによって、ロック用突起210が凹み213に到達するまで縦方向空洞110a、110b内をストランド30a、30bが摺動することを可能にして、初期の形を回復させるフランジ311における材料の粘弾性応答によってブレスレット30がロックされることを確実にする。
【0079】
ロック用突起210が凹み内に入ると、ブレスレット30がケース20内の適切な位置にロックされる。特に
図6において、このロックを行う第3の段階を示している。
【0080】
ユーザーは、ブレスレット30のロックを解除して取り外すために、凹み213からロック用突起210を外して固定用ヘッド31a、31bの端フランジ311、特に、ロック用突起210に対向する端フランジ311の部分、を再び変形させるために十分な力を発生しなければならない。
【0081】
ロック用突起210が固定用ヘッド31a、31bの端フランジ311と接触しなくなると、摺動軸X-Xに沿ってストランド30a、30bを並進運動させることによって、ストランド30a、30bは、自由に摺動して、縦方向空洞110a、110bから取り外すことができる。
【0082】
なお、端フランジ311が変形可能な材料によって作られているので、端フランジ311を過剰に変形させてケース20の縦方向の張力をブレスレット30に与えることによって、ユーザーがブレスレット30を縦方向空洞110a、110bから外してしまうことを防ぐように端フランジ311の厚みと硬度を決めなければならない。したがって、厚みが十分であれば、ストランド30a、30bに張力を与えることによってユーザーがブレスレット30の留めを外すことができないことが確実になる。
【0083】
図示していない1つの代替的実施形態において、固定用ヘッド31a、31b、そして特に端フランジ311は、縦方向空洞110a、110bの寸法よりもわずかに大きい寸法を有する。このために、固定用ヘッド31a、31bは、ストランド30a、30bが挿入されるときに、付加的な変形を行う。特に、このような代替的実施形態によって、摺動によってブレスレットを組み付けて取り外すのに必要な力を大きくすることができる。
【0084】
本発明に係るケース及びケースにブレスレットを取り付けるための取り付けシステムのおかげで、ケースを作る方法を非常に容易にすることができる。ケースに取り付け用ホーンがなく、ケース全体に対称性があるためである。したがって、ケースとブレスレットの製造を自動化することができる。このように、このようなアセンブリーとこのような携行可能な物の製造コストを減らすことができる。これは、特に、ケースに対する再加工操作がなく、また、ブレスレットをケースに取り付けるための、棒体のような付加的な要素を用いる必要がないためである。
【0085】
本発明に係る取り付けシステムのおかげで、好ましいことに、ブレスレットとケースのミドル部の間の棒体や弾性クリップのような付加的な部品やスペーサーの必要性をなくしたり、ブレスレットを固定すること及び/又は取り外すことのための工具(専用工具であるか一般的に用いられている工具であるかにかかわらず)を用いる必要性をなくすことができる。
【0086】
また、本発明に係る取り付けシステムは、ブレスレットの交換可能性を単純化し、このことによって、工具を用いずに、また、ブレスレットを取り外すときに取り付けシステムの要素の1つを損傷させずに、単純な取り扱い操作で、摩耗や裂けが発生してもブレスレットを容易に新しくすることができ、また、美的外観を変えることができる。
【0087】
本発明について、ケース及びブレスレットストランドの端の特定の実施形態を用いて説明した。しかし、他の実施形態、そして、説明した実施形態から派生する実施形態も考えられることは明らかである。
【符号の説明】
【0088】
10 携行可能な物
20 ケース
21 ミドル部
30 ブレスレット
30a、30b ストランド
31a、31b 固定用ヘッド
100 取り付けシステム
110a、110b 縦方向空洞
210 ロック用突起
213 凹み
311 端フランジ
312 端面