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特許7559040エモリエント剤を含む油中水型エマルジョン及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】エモリエント剤を含む油中水型エマルジョン及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/06 20060101AFI20240924BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240924BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240924BHJP
   A61K 8/63 20060101ALI20240924BHJP
   A61Q 1/04 20060101ALI20240924BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/81
A61K8/73
A61K8/63
A61Q1/04
A61Q1/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022501044
(86)(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-21
(86)【国際出願番号】 IB2020056889
(87)【国際公開番号】W WO2021014376
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】62/878,059
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(72)【発明者】
【氏名】レサ グエン
(72)【発明者】
【氏名】ヒナベン パテル
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-015425(JP,A)
【文献】特開2018-203729(JP,A)
【文献】特表2016-513121(JP,A)
【文献】Shiseido, Japan,VisionAiry Gel Lipstick,Mintel GNPD [online],2019年05月,Internet <URL:https://portal.mintel.com>,ID#6506251, [検索日:2024.03.08], 表題部分,成分,製品のバリエーション
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A61K 31/33-33/44
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
W/Oエマルジョン組成物であって、少なくとも1つのゲル化系、少なくとも1つのエモリエント剤、及び前記組成物の総質量に対して少なくとも15質量%の水を含み、前記少なくとも1つのゲル化系は、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤少なくとも1つの親水性ゲル化剤、及び少なくとも1つの炭化水素ゲル化剤を含み、
前記疎水性ゲル化剤が、疎水性鉱物ゲル化剤を含み、かつ
前記エモリエント剤が、ステロール誘導体である、
W/Oエマルジョン組成物。
【請求項2】
前記炭化水素ゲル化剤が、炭化水素ブロックコポリマーである、請求項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項3】
前記炭化水素ゲル化剤が、エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー、ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、又はこれらの混合物から選択される、請求項1又は2に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項4】
前記炭化水素ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して質量%~20質量%の範囲内で存在する、請求項1~3の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項5】
前記親水性ゲル化剤が、カンテン、アガロース、カラゲナン、ゲラン、アルギン酸、及びこれらの混合物から選択される、請求項1~の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項6】
前記親水性ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して0.01質量%~質量%の範囲内で存在する、請求項1~の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項7】
前記疎水性ゲル化剤が、ジステアルジモニウムヘクトライトである、請求項1~の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項8】
前記疎水性ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して質量%~10質量%の範囲内で存在する、請求項1~の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項9】
前記疎水性ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して約6質量%である、請求項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項10】
前記エモリエント剤が、前記組成物の総質量に対して0.5質量%~10質量%の範囲内で存在する、請求項1~の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項11】
前記エモリエント剤が、ダイマージリノール酸ファイトステロール/高級アルコールエステルである、請求項1~10の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項12】
水の前記量が、前記組成物の総質量に対して少なくとも25質量%である、請求項1~11の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの界面活性剤、ワックス、溶媒、質感粉末、保湿剤、顔料、又は皮膜形成剤をさらに含む、請求項1~12の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項14】
前記W/Oエマルジョンが、リップ組成物に組み込まれる、請求項1~13の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
【請求項15】
請求項1~14の何れか一項に記載の組成物を対象の角質表面に適用することを含む、角質表面の処理方法。
【請求項16】
前記角質表面が、前記対象の唇又は皮膚である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
対象の角質表面を処理するための、請求項1~14の何れか一項に記載の組成物。
【請求項18】
化粧料として用いるための、請求項1~14の何れか一項に記載の組成物。
【請求項19】
対象の角質表面を処理するための、請求項1~14の何れか一項に記載の組成物の使用。
【請求項20】
化粧料としての、請求項1~14の何れか一項に記載の組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、化粧料に用いられ得る油中水型(W/O)エマルジョン組成物全般に関する。詳細には、本開示は、クリーム状で滑らかな質感、非常に優れた被覆性、並びに基礎成分及び相が分離を起こさない安定性などの望ましい特性を維持しながら、組成物がより高いパーセントの水を含有可能となる液体W/Oエマルジョンのための改善されたゲル化系について述べる。
【背景技術】
【0002】
以下の考察は、読者が本開示を理解するための単なる補助として提供するものであり、それに対する先行技術を記載又は構成すると認めるものではない。
【0003】
現在入手可能である非固体の水含有化粧料(スキン製品及びカラー化粧料)の多くは、ヒトの皮膚の外観及び感触を改善するように設計されている。典型的には、それらは、10%を超えて水及び保湿剤を含有しており、非常に低いレベル(5%未満)の顔料を含有するエマルジョン及びゲルの形態が知られている。消費者にとって残念なことに、このような製品は、流動性が非常に高い場合があり、審美性、さらには塗布性及び被覆性が得られない可能性がある。他方、高いレベル(5%超)の顔料を含有する製品は、べとべとして、非常に多くの場合、不安定(分離及び沈降が経時で発生)であると思われる場合がある。
【0004】
したがって、長時間にわたる保湿及び冷却効果、製品の最小限の塗布量での非常に優れた被覆性が得られると同時に、クリーム状で、滑らかであり、安定であるゲルベースの化粧料が依然として求められている。本開示は、この必要性を満たすものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、ゲル化系及びエモリエント剤を含む、ソフトであり、クリーム状であり、滑らかであり、及び/又は安定である油中水型(W/O)エマルジョン組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本開示は、W/Oエマルジョン組成物であって、少なくとも1つのゲル化系、少なくとも1つのエモリエント剤、及び組成物の総質量に対して少なくとも15質量%の水を含む、W/Oエマルジョン組成物に関し、少なくとも1つのゲル化系は、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤及び少なくとも1つの親水性ゲル化剤を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、ゲル化系は、炭化水素ゲル化剤をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、炭化水素ゲル化剤は、炭化水素ブロックコポリマーである。いくつかの実施形態では、炭化水素ゲル化剤は、エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー、ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、又はこれらの混合物から選択されてよい。いくつかの実施形態では、炭化水素ゲル化剤は、組成物の総質量に対して約4質量%~約20質量%の範囲内で存在する。
【0008】
いくつかの実施形態では、親水性ゲル化剤は、カンテン、アガロース、カラゲナン、ゲラン、アルギン酸、及びこれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、親水性ゲル化剤は、組成物の総質量に対して約0.01質量%~約1質量%の範囲内で存在する。
【0009】
いくつかの実施形態では、疎水性ゲル化剤は、疎水性鉱物ゲル化剤を含む。いくつかの実施形態では、疎水性鉱物ゲル化剤は、ジステアルジモニウムヘクトライトである。いくつかの実施形態では、疎水性鉱物ゲル化剤は、組成物の総質量に対して約1質量%~約10質量%の範囲内で存在する。例えば、いくつかの実施形態では、疎水性鉱物ゲル化剤は、組成物の総質量に対して約6質量%である。
【0010】
いくつかの実施形態では、エモリエント剤は、Pandool(登録商標)などのステロール誘導体である。いくつかの実施形態では、エモリエント剤は、組成物の総質量に対して約0.5質量%~約10質量%の範囲内で存在する。いくつかの実施形態では、エモリエント剤は、ダイマージリノール酸ファイトステロール/高級アルコールエステルである。
【0011】
いくつかの実施形態では、水の量は、組成物の総質量に対して少なくとも25質量%である。
【0012】
いくつかの実施形態では、W/Oエマルジョンは、界面活性剤、ワックス、溶媒、質感粉末、保湿剤、顔料、及び皮膜形成剤から選択される少なくとも1つの追加の原料成分をさらに含んでよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、W/Oエマルジョンは、リップ組成物に組み込まれる。
【0014】
別の態様では、本開示は、上記の実施形態のうちの何れか1つの組成物を対象の角質表面に適用することを含む、角質表面の処理方法に関する。いくつかの実施形態では、角質表面は、対象(例:ヒト対象)の唇又は皮膚であってよい。
【0015】
また、本明細書において、対象の角質表面を処理するための、上記の実施形態のうちの何れか1つに従う組成物も提供される。
【0016】
また、本明細書において、化粧料として用いるための、上記の実施形態のうちの何れか1つに従う組成物も提供される。
【0017】
また、本明細書において、対象の角質表面を処理するための、上記の実施形態のうちの何れか1つに従う組成物の使用も提供される。
【0018】
また、本明細書において、化粧料としての、上記の実施形態のうちの何れか1つに従う組成物の使用も提供される。
【0019】
上記の全般的記述及び以下の詳細な記述は、例示的及び説明的なものであり、請求される本開示のさらなる説明を提供することを意図している。他の目的、利点、及び新規な特徴は、当業者であれば、以下の図面の簡単な説明及び本開示の詳細な記述から容易に明らかであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、2又は3又はそれ以上のゲル化剤を含有してよいゲル化系及びステロールベースのエモリエント剤を含むW/Oエマルジョン組成物を提供する。開示されるW/Oエマルジョンは、クリーム状の液体化粧料に組み込まれて、ソフト、滑らか、及び安定であり、皮膚又は唇などのユーザーの角質表面に容易に及び均一に適用可能である製品を提供することができる。
【0021】
様々な特許出願公開、特許、ジャーナル論文、及び/又は本が、本開示全体を通して参照され得る。これらの参考文献は、先行技術を記載又は構成すると認めるものではなく、それらの全内容が参照により本明細書に援用される。
【0022】
I.定義
方法が、記載した特定の実施形態に限定されず、そのために変動し得ることは理解されたい。また、本明細書で用いられる専門用語が、特定の実施形態を記載するだけの目的のものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。本発明の技術の範囲は、添付の請求項によってのみ限定される。
【0023】
本明細書で用いられる場合、ある特定の用語は、以下で定められる意味を有し得る。本明細書及び請求項で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていない限りは、単数及び複数の指示対象を含む。例えば、「1つの細胞」の用語には、単一の細胞、さらにはその混合物を含む複数の細胞も含まれる。
【0024】
本明細書で用いられる場合、「約」は、列挙されたちょうどの量、及びそのプラス又はマイナス10%の量を意味する。例えば、「約10」は、「10」及び「9~11」を意味するものと理解されるべきである。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「含んでいる」の用語は、組成物及び方法が、列挙された要素を含むが、他の要素を除外するものではないことを意味することを意図している。「から本質的に成る」は、組成物及び方法を定めるために用いられる場合、その組成物又は方法に対して本質的に重要である他の要素は除外されることを意味するものとする。「から成る」は、請求される組成物及び実質的な方法工程における微量を超える他の原料成分の要素は除外されることを意味するものとする。これらの移行句の各々によって定められる実施形態は、本開示の範囲内である。したがって、方法及び組成物は、追加の工程及び成分を含んでよいこと(含む)、又は別の選択肢として、重要ではない工程及び組成物を含んでもよいこと(から本質的に成る)、又は別の選択肢として、記載された方法工程若しくは組成物だけを意図すること(から成る)、を意図している。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「個体」、「患者」、又は「対象」の用語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳類(例:ウシ、イヌ、ネコ、又はウマ)、又はヒトであってよい。これらの用語は、本開示全体を通して交換可能に用いられ得る。好ましい実施形態では、個体、患者、又は対象は、ヒトである。
【0027】
本明細書で用いられる場合、「任意の」又は「任意に」は、続いて記載されるイベント又は状況が発生しても又は発生しなくてもよいこと、及びその記述が、前記イベント又は状況が発生する場合と発生しない場合とを含むこと、を意味する。
【0028】
記述の目的で、「A/B」の形態又は「A及び/又はB」の形態の語句は、(A)、(B)、又は(A及びB)を意味する。記述の目的で、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」の形態の語句は、(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)、又は(A、B、及びC)を意味する。
【0029】
「実施形態」又は「複数の実施形態」の用語が記述で用いられ得るが、これは、各々、同じ又は異なる実施形態のうちの1又は複数を意味し得る。
【0030】
パーセントは、特に断りのない限り、組成物又は記載されている特定の相の質量(重量)基準である。すべての比は、特に断りのない限り、質量比である。
【0031】
「液体化粧料」とは、組成物が、以下で述べる方法に従って測定される150000cps未満の粘度によって特徴づけられることを意味するが、これに限定されない。「角質表面」とは、本明細書で用いられる場合、スキン製品及び/又はメイクアップ製品(例:カラー化粧料)で処理される可能性のある皮膚(顔を含む)、睫毛及び眉毛を含む毛髪を意味する。
【0032】
「油相」の用語は、本明細書で用いられる場合、疎水性キャリア、典型的には油性原料成分を含有する相を意味する。適切な油としては、限定されない例として、シリコーン油(直鎖状及び環状)、エステル、ケトン、グリコールエーテル、植物油及び鉱油、合成油、パラフィン油、炭化水素、芳香族溶媒が挙げられ、限定するものではないが、本明細書で明らかにされるものを含む。油は、揮発性又は不揮発性であってよく、好ましくは、室温(25℃)で注入可能な液体の形態である。
【0033】
油相は、疎水性キャリア中に容易に組み込まれるさらなる疎水性化合物を含有していてもよい。そのような他の適用可能な疎水性化合物は、液体、固体、及び/又は半固体の形態であってよく、例えば、限定するものではないが、油溶性のワックス及び皮膜形成剤、界面活性剤、乳化剤、保存剤、増粘剤(ゲル化剤)、エモリエント剤、活性剤、ビタミン、顔料、抽出物、粉末、疎水性溶媒、並びに他の有用な原料成分が挙げられ得る。
【0034】
「揮発性」とは、油が、20℃で少なくとも約2mmHgの測定可能な蒸気圧を有することを意味する。
【0035】
「不揮発性」とは、油が、20℃で2mmHg未満の蒸気圧を有することを意味する。
【0036】
「疎水性」の用語は、典型的には、物質が、その非極性構造のために、水への溶解が困難であることを意味する。一方、「親水性」の用語は、物質が、その水素結合能のために、水又は他の極性溶媒へ溶解可能であることを意味する。
【0037】
いくつかの化合物は、疎水性及び親水性の両方の特性を有することを特徴とする場合がある。
【0038】
「安定な組成物」の用語は、処方物が、構造上の均一性を維持し、異なる相に分離しないことを意味する。
【0039】
「水相」の用語は、主要なキャリアとして水を含有する相であるものと理解される。典型的には、水相は、水溶性の皮膜形成剤、界面活性剤、乳化剤、増粘剤(ゲル化剤)、エモリエント剤、保湿剤、保存剤、活性剤、ビタミン、抽出物、粉末、親水性溶媒、及び他の有用な原料成分を例とするさらなる物質を含有していてもよい。これらの化合物は、液体、固体、及び/又は半固体の形態で組成物に導入されてよい。
【0040】
当業者であれば理解されるように、あらゆる目的において、本明細書で開示される範囲はすべて、考え得るあらゆる部分的な範囲及びその部分的な範囲の組み合わせも包含する。列挙される範囲は何れも、その範囲が少なくとも等しく2分の1、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを充分に記載しているものとして、及びそれが可能であるものとして容易に認識され得る。限定されない例として、本明細書で考察される各範囲は、下側の3分の1、中間の3分の1、及び上側の3分の1などに容易に分解され得る。当業者であればやはり理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「超」、「未満」、及び同種の言語などの言語はすべて、列挙された数字を含み、上記で考察したように、続いて部分的な範囲に分解され得る範囲を意味する。そして、当業者であれば理解されるように、範囲は、個別のメンバーの各々を含む。したがって、例えば、「1~3つのゲル化剤」を有する群とは、1つ、2つ、又は3つのゲル化剤を有する群を意味する。同様に、「1~5つのゲル化剤」を有する群とは、1つ、2つ、3つ、4つ、又は5つのゲル化剤を有する群を意味する、などである。
【0041】
II.ゲル化系及びエモリエント剤を含む油中水型エマルジョン
高いレベル(すなわち、15重量%超)の水及び保湿剤を含む非固体水含有化粧料は、本技術分野で公知である。これらの公知の組成物は、ゲル又は液体の形態であることが一般的である。高いレベルの水を含むこれらの化粧料は、顔料を含有し得るが、組成物は、典型的には不安定であり、これは顔料の沈降が起こり易いことを意味し、これらの製品では、皮膚又は唇の良好な被覆性が得られない。さらに、およそ20%の水を含有する公知のリップ製品は、クリーム状ではなく、多くの場合べとべとした重い感触であり、心地良く使用できない。
【0042】
本開示は、ゲル化系及び少なくとも1つのエモリエント剤を含む油中水型(W/O)エマルジョン組成物を提供する。先行技術のW/O化粧料及び組成物とは異なり、開示される組成物は、滑らかでクリーム状の質感を特徴とし、それによって、単一回の適用で非常に良好な被覆性を提供するが、同時に、開示される組成物は、非常に軽い/重さを感じないことによって、1日中心地良く使用できる。開示される組成物は、着色を残すことなく適用及び除去することが容易であり、開示される組成物は、長時間にわたる潤い効果をもたらすことで、長時間の使用の間、唇及び皮膚が乾燥することを防止する。加えて、開示される組成物は、通常手順の保存条件下で沈澱が分離する他の多くの製品とは対照的に、経時で分離することがない。
【0043】
高い水レベル、並びに質感粉末及び顔料の濃度にも関わらず、開示される組成物は、安定に維持され、高いメイクアップ保持力を有する。エモリエント剤を含む開示されるW/Oエマルジョンは、あらゆる種類のカラー化粧料、さらにはスキン製品における用途に有用である。
【0044】
開示されるW/Oエマルジョン組成物は、炭化水素ゲル化剤(例:Versagel(登録商標))、親水性ゲル化剤(例:Ina Agar CS-110などのカンテン)、及び疎水性鉱物ゲル化剤(例:Bentone gel)を含む2又は3つのゲル化剤を含むことが好ましいゲル化系を含む。開示されるW/Oエマルジョン組成物はさらに、ステロールベースのエモリエント剤(Plandool(登録商標)など)を含む。2つ以上のゲル化剤及びエモリエント剤の組み合わせによって、開示される組成物は、安定性を維持しながら、15%超などの高いレベルの水を保持することができる。以下で及び実施例セクションでより詳細に述べるように、成分のこの組み合わせによって、数多くの他の有益な物理的及び感覚的特徴の中でも、驚くべき安定性、潤い、及び心地良さを得ることができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、開示されるW/Oエマルジョン組成物は、(i)少なくとも1つの炭化水素ゲル化剤、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤、少なくとも親水性ゲル化剤を含むゲル化系、(ii)エモリエント剤、及び組成物の総質量に対して少なくとも15質量%の水、を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、炭化水素ゲル化剤は、約4%~約20%の量で存在する。いくつかの実施形態では、炭化水素ゲル化剤は、エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー、及び/又はブチレン/エチレン/スチレンコポリマー(Versagel(登録商標))などの炭化水素ブロックコポリマーを含んでよい。
【0047】
いくつかの実施形態では、親水性ゲル化剤は、約0.01%~約1%の量で存在する。いくつかの実施形態では、親水性ゲル化剤は、カンテンであってよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、疎水性ゲル化剤は、約1%~約10%の量で存在する。いくつかの実施形態では、疎水性ゲル化剤は、ベントン/ジステアルジモニウムヘクトライトであってよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、エモリエント剤は、約0.5%~約10%の量で存在する。いくつかの実施形態では、エモリエント剤は、ダイマージリノール酸ビスベヘニル/ファイトステリル(Plandool(登録商標))である。
【0050】
いくつかの実施形態では、水は、約15%~約50%、又は約15%~約45%、又は約15%~約40%、又は約15%~約35%の量で存在する。いくつかの実施形態では、水の量は、15%超、16%超、17%超、18%超、19%超、20%超、21%超、22%超、23%超、24%超、25%超、26%超、27%超、28%超、29%超、30%超、31%超、32%超、33%超、34%超、又は35%超であってよい。
【0051】
例えば、いくつかの実施形態では、開示されるW/Oエマルジョン組成物は、約16%の炭化水素ゲル化剤(例:エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー及び/又はブチレン/エチレン/スチレンコポリマー)、約0.35%の親水性ゲル化剤(例:カンテン)、約6%の疎水性ゲル化剤(例:ベントン/ジステアルジモニウムヘクトライト)、約4%のエモリエント剤(例:ダイマージリノール酸ビスベヘニル/ファイトステリル)、及び約25%の水を含んでよい。
【0052】
以下でより詳細に述べるように、少なくとも15%の水、ゲル化系、及びエモリエント剤を含む開示されるW/Oエマルジョン組成物の様々な実施形態は、優れた皮膚及び唇の被覆性、並外れた潤い、並びに心地良い長時間の使用をもたらす。
【0053】
A.ゲル化
本開示のW/Oエマルジョン組成物は、少なくとも2つの、好ましくは少なくとも3つのゲル化剤を含むゲル化系を含むことを特徴とする。本明細書で用いられる場合、「ゲル化剤」とは、化粧料組成物の粘度、チクソトロピー性、及び安定性(例:顔料沈澱、シネレシスの低減)を改変することに寄与する剤を意味する。したがって、開示されるゲル化系は、例えば、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤、及び少なくとも1つの親水性ゲル化剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、ゲル化系は、炭化水素ゲル化剤、親水性ゲル化剤、及び疎水性鉱物ゲル化剤を含んでよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、ゲル化系は、組成物の総質量に対して、約1.01質量%~約33質量%、好ましくは約5質量%~約25質量%、最も好ましくは約10質量%~約22質量%の範囲内である。例えば、組成物の総質量に対するゲル化系の質量は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、若しくは約33%、又はこれらの間の何れかの値であってよい。
【0055】
いくつかの実施形態では、疎水性ゲル化剤と親水性ゲル化剤との重量比は、約1.5:0.005~約12.5:1であってよく、約6.0:0.35などである。
【0056】
いくつかの実施形態では、疎水性スチレンコポリマーゲル化剤などの少なくとも1つの炭化水素ゲル化剤が組み込まれる場合、炭化水素ゲル化剤と疎水性ゲル化剤(例:疎水性鉱物ゲル化剤;ベントン/ジステアルジモニウムヘクトライト)との重量比は、約4:1~約2:1であり、約8:3などである。いくつかの実施形態では、炭化水素ゲル化剤(すなわち、キャリア中のスチレンコポリマー)対親水性ゲル化剤(例:カンテン)対疎水性ゲル化剤(例:キャリア中の鉱物ゲル化剤)の重量比は、それぞれ約4:0.01:1~約2:0.1:1であり、約16:0.35:6などである。
【0057】
i.炭化水素ゲル化剤
本開示の目的において、開示されるW/Oエマルジョン組成物のゲル化系は、少なくとも1つの炭化水素ゲル化剤を含んでよい。炭化水素ゲル化剤としては、限定するものではないが、エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー、ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、又はこれらの混合物が挙げられ得る。炭化水素ゲル化剤が存在する結果、最終製品において、数ある望ましい特性の中でも、望ましい粘度が得られる。
【0058】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤は、炭化水素ブロックコポリマーであってよい。いくつかの実施形態では、炭化水素ブロックコポリマーは、少なくとも1つのスチレンブロック、並びにブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン、及びイソプロペンから選択される単位を備えた少なくとも1つのブロック、並びに水添炭化水素ブロックコポリマー、並びにこれらの混合物を含む。適切な炭化水素ベースのブロックコポリマーの例は、参照により本明細書に援用される米国特許第5221534号明細書に記載されている。いくつかの実施形態では、炭化水素ベースのブロックコポリマーは、油相に対して可溶性又は分散性であり得る。いくつかの実施形態では、炭化水素ベースのブロックコポリマーは、スチレンとオレフィンとのアモルファスブロックコポリマーである。いくつかの実施形態では、炭化水素ブロックコポリマーは、スチレン単位又はスチレン誘導体から構成される少なくとも1つのブロックを備えたブロックポリマーから選択されるがこれらに限定するものではない、スチレンコポリマーゲル化剤であってよい。少なくとも1つのスチレンブロックを備えたコポリマーは、ジブロック若しくはトリブロックコポリマー、又はスター型若しくはラジアル型のマルチブロックコポリマーであってよい。そのようなコポリマーの限定されない例としては、米国特許第8021674号明細書の記載に従う、及び例えば米国特許第6433068号明細書に記載のような、エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー及びブチレン/エチレン/スチレンが挙げられ、これらの特許はすべて参照により本明細書に援用される。
【0059】
「ポリマー」の用語は、2種類のモノマーから得られるコポリマー、及び例えば3種類のモノマーから得られるターポリマーなど、3種類以上のモノマーから得られるものの両方を意味することを意図している。ポリマーの分子は、少なくとも1つの親水性単位及び/又は少なくとも1つの疎水性単位を含有していてよい。
【0060】
開示される組成物において有用である1つの限定されない好ましい市販のスチレンコポリマーゲル化剤は、Versagel ME 2000(INCI名:水添ポリイソブテン(及び)エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー(及び)ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー)、並びにVERSAGEL(登録商標)シリーズの下でCalumet Penrecoから市販されている他の種類のゲル化剤である。適用可能なVERSAGEL(登録商標)ゲル化剤は、例えば鉱油、イソヘキサデカン、イソドデカン、水添ポリイソブタン、C12~15アルキルベンゾエート、及びイソノナン酸イソノルニル(isonolnyl isononanoate)などの様々なキャリア中にスチレンコポリマーを含有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、炭化水素ゲル化剤(すなわち、キャリア中のスチレンコポリマー)の量は、組成物の総質量に対して、約4質量%~約20質量%、例えば約6質量%~約18質量%又は約8質量%~約16質量%の範囲内であってよい。例えば、総質量に対する質量基準での炭化水素ゲル化剤の量は、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、若しくは約20%、又はこれらの間の何れかの値であってよい。
【0062】
ii.疎水性鉱物ゲル化剤
本開示の目的において、開示されるW/Oエマルジョン組成物のゲル化系は、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤を含んでよい。疎水性ゲル化剤としては、限定するものではないが、合成及び/又は天然の増粘剤が挙げられ得る。疎水性ゲル化剤が存在する結果として、最終製品の望ましい質感、硬さ、及び/又は安定性が得られ得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤は、疎水性鉱物及びその混合物などの増粘疎水性ゲル化剤であってよい。
【0064】
疎水性ゲル化剤は、典型的には、開示される組成物の油相に組み込まれ、適切な疎水性ゲル化剤は、固体又はゲルの形態で用いられ得る。
【0065】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤は、少なくとも1つの疎水性鉱物ゲル化剤を含んでよい。開示される組成物の目的において、有用な疎水性鉱物ゲル化剤は、限定するものではないが、有機変性粘土、及び変性又は非変性ヘクトライト、及びヒュームドシリカを含む疎水性シリカから選択されてよい。したがって、いくつかの実施形態では、疎水性鉱物ゲル化剤は、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第2007/0071703号明細書に記載及び例示されているように、例えば、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、及びジメチルジステアリルアンモニウム変性モンモリロナイトなどから選択されてよい。いくつかの実施形態では、疎水性鉱物ゲル化剤は、第四級アンモニウム塩化合物が、イオン交換反応によって、ベントナイトなどの天然又は合成スメクタイト粘土鉱物に添加されているものであってよい。有機変性粘土鉱物の選択は、化粧料として許容できる限り特に限定されず、例えば、ジメチルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロリドで処理されたケイ酸マグネシウムアルミニウムを含み得る。いくつかの実施形態では、疎水性鉱物ゲル化剤は、例えば、有機溶媒中に予め分散されたベントナイト及び有機変性ヘクトライトから選択される。市販のベントナイトの限定されない例は、Elementis Specialtiesから入手可能であるBENTONE GEL(登録商標)ISD V(INCI:イソドデカン、ジステアルジモニウムヘクトライト、プロピレンカーボネート)を含むBENTONE GEL(登録商標)シリーズである。別の好ましい材料は、Eckartから入手可能であるGARAMITE 7308XR)(INCI:クオタニウム-90セピオライト及びクオタニウム-90モンモリロナイト)である。いくつかの実施形態では、適用可能な疎水性鉱物ゲル化剤は、シリカ、特にはヒュームドシリカ及びシラノール基で処理したシリカを含む。そのような疎水性シリカは、例えば、DegussaによってAEROSIL(登録商標)の名称で、及びCabotから入手可能なCAB-O-SIL(登録商標)の名称で市販されている。
【0066】
適切な鉱物ゲル化剤は、固体粉末形態又はゲルで用いられてよく、この場合、粉末は、例えば、鉱油、イソヘキサデカン、イソドデカン、水添ポリイソブタン、C12~15アルキルベンゾエート、及び/又はイソノナン酸イソノルニルなどのキャリア中に分散されている。
【0067】
いくつかの実施形態では、疎水性ゲル化剤は、組成物の総質量に対して、約1質量%~約10質量%、例えば約2質量%~約8質量%又は約4質量%~約6質量%の量で存在する。例えば、総質量に対する質量基準での疎水性ゲル化剤の量は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、若しくは約10%、又はこれらの間の何れかの値であってよい。
【0068】
iii.親水性ゲル化剤
本開示の目的において、開示されるW/Oエマルジョン組成物のゲル化系は、少なくとも1つの親水性ゲル化剤を含んでよい。親水性ゲル化剤としては、限定するものではないが、熱可逆性の多糖類、例えばカンテン、アガロース、カラゲナン、及びゲランが挙げられ得る。いくつかの実施形態では、親水性ゲル化剤は、粉末形態又はゲルで調合物中に組み込まれてよい。親水性ゲル化剤が存在することで、所望される質感及び硬さを最適化することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの親水性ゲル化剤は、参照により本明細書に援用される米国特許第8933134号明細書に記載されるようなカンテンである。開示される組成物の好ましい実施形態に有用であるカンテンは、冷水に不溶性であるが、それ自体の重量の20倍に及ぶ水を吸収して非常に膨潤し得る。それは、沸騰水中には容易に溶解し、固まって、0.50%という低い濃度で堅固なゲルとなる。別の有用な例は、95℃~100℃の温度で水及び他の溶媒に可溶性である粉末化された乾燥カンテンである。なおさらなる有用な例は、エタノール、2-プロパノール、若しくはアセトンで凝集された、又は高濃度の電解質によって塩析された、様々な溶媒中に室温で可溶性である湿潤カンテンである。いくつかの実施形態では、カンテンの好ましい形態は、粉末であるが、カンテンはまた、カンテンゲルとして組成物に導入されてもよく、その調製及び特性は、何れもその全内容が参照により本明細書に援用される米国特許第9757312号明細書及び同第8367044号明細書に開示されている。開示される組成物に関連して用いられるカンテンは、化粧料グレードさらには食品グレードのカンテンであってよく、伊那食品工業株式会社から入手可能なものを含む。
【0070】
開示される組成物に用いられるべき親水性ゲル化剤の量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約2質量%、例えば約0.1質量%~約1質量%又は約0.2質量%~約0.5質量%の範囲内である。いくつかの実施形態では、親水性ゲル化剤は、親水性ゲルを得るために水と混合されてもよい。少なくとも1つの親水性ゲルの量は、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約1質量%、例えば約0.1質量%~約0.9質量%又は約0.25質量%~約0.5質量%の範囲内であってよい。例えば、総質量に対する質量基準での親水性ゲル化剤の量は、約0.01%、約0.02%、約0.03%、約0.04%、約0.05%、約0.06%、約0.07%、約0.08%、約0.09%、約0.10%、約0.15%、約0.20%、約0.25%、約0.30%、約0.35%、約0.40%、約0.45%、約0.50%、約0.55%、約0.60%、約0.65%、約0.70%、約0.75%、約0.80%、約0.85%、約0.90%、約0.95%、約1.00%、又はこれらの間の何れかの値であってよい。
【0071】
B.エモリエント剤
水を高いレベル(例:15%超)で含有する開示される組成物を得るために、及び並外れた潤い、心地良さ、及び/又はソフト/光沢効果(soft/satin effect)をもたらすために、開示されるW/Oエマルジョン組成物は、少なくとも1つのエモリエント剤を含んでよい。本開示の目的において、適切なエモリエント剤の1つは、ステロール誘導体である。
【0072】
開示される組成物に組み込まれてよい様々なエモリエント剤としては、ステロール誘導体、ペトロラタム、ラノリン、鉱油、及びジメチコンが挙げられる。ステロール誘導体が、特に好ましいエモリエント剤であるが、当業者であれば、他の類似のエモリエント剤に置き換えられてもよいことは理解される。
【0073】
適切なステロール誘導体は、米国特許出願公開第2015/0202137号明細書に記載されるようなファイトステロール及びコレステロールである。適切なファイトステロールの例としては、ダイマージリノール酸ファイトステロール/高級アルコールエステルが挙げられる。適切な広く様々なダイマージリノール酸ファイトステロール/高級アルコールエステルが、日本精化株式会社から入手可能であるPlandool(登録商標)の名称で知られている。Plandool(登録商標)製品は、植物ベースの材料から合成されたラノリン様ペーストエステルである。Pandool(登録商標)化合物は、高い保水容量、高い屈折率、高い顔料分散能、高い酸化安定性、非常に優れたエモリエント性、非常に優れた光沢性、及びチクソトロピー流動性を有することを特徴とする。いくつかの好ましいPlandool(登録商標)化合物を、以下の表に記載する。
【表1】
【0074】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエモリエント剤は、組成物の総質量に対して、約0.5質量%~約10質量%、例えば約2質量%~約8質量%又は約4質量%~約6質量%の量で存在する。例えば、総質量に対する質量基準でのエモリエント剤の量は、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、若しくは約10%、又はこれらの間の何れかの値であってよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、特に有用なエモリエント剤は、組成物の総質量に対して、約0.5質量%~約10質量%、例えば約2質量%~約8質量%又は約4質量%~約6質量%の量で存在するビスベヘニル/ファイトステリルダイマージリノール酸エステルである。例えば、総質量に対する質量基準でのビスベヘニル/ファイトステリルダイマージリノール酸エステルの量は、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、約5%、約5.5%、約6%、約6.5%、約7%、約7.5%、約8%、約8.5%、約9%、約9.5%、若しくは約10%、又はこれらの間の何れかの値であってよい。
【0076】
C.水
開示されるW/Oエマルジョンは、水が必要であり、高い割合の水が組み込まれても(数ある望ましい特徴の中でも)安定性及び望ましい質感を維持する能力において独特であり得る。いくつかの実施形態では、開示されるW/Oエマルジョンは、約15%の水又は15%以上の水を含む。例えば、水の量は、組成物の総質量に対する質量基準で、約15%~約50%、約15%~約45%、約15%~約40%、約15%~約35%、約15%~約30%、約15%~約25%、約20%~約50%、約20%~約45%、約20%~約40%、約20%~約35%、約20%~約30%、約20%~約25%、約25%~約50%、約25%~約45%、約25%~約40%、約25%~約35%、約25%~約30%の範囲内、又はこれらの間の何れかの値であってよい。実際、いくつかの実施形態では、W/Oエマルジョンの水の量は、組成物の総質量に対する質量基準で、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、若しくは50%、又はこれらの間の何れかの値であってよい。
【0077】
D.さらなる組成物成分
開示されるW/Oエマルジョン組成物は、さらに、組成物を化粧料としての使用のために又は他の商業的目的のために適するものとするさらなる成分を含んでもよい。以下の成分が、ゲル化系、エモリエント剤、及び少なくとも15%の水を含む開示される組成物に組み込まれてよい。
【0078】
i.界面活性剤系
開示される組成物は、例えば、親水性-親油性バランス(HLB)値が14以下である少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む、少なくとも1つの界面活性剤系を含んでよい。HLB値は、一般的に乳化剤と関連付けられる。特に、HLB値は、乳化剤中の親水性基と親油性基との比に関連し、及び乳化剤の溶解性に関連する。典型的には、HLBの低い乳化剤の方が、親油性材料中又は油中での溶解性が高く、W/Oエマルジョンでの使用により適している。一方、HLBの高い乳化剤の方が、水中又は親水性材料中での溶解性が高く、水中油型(O/W)エマルジョンにより適している。
【0079】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、例えば、HLB値が2~14である少なくとも2つの非イオン性界面活性剤のブレンドを含む界面活性剤系を含んでよい。適用可能な非イオン性界面活性剤の例としては、ポリグリセロールアルキルエーテル、エステル結合界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリルエステル、グリセリルエーテル、ソルビタンエステルを含むソルビタン誘導体、シリコーンのポリエチレングリコール誘導体、ポリエチレングリコールエーテル、アルコキシル化アルコール、及び炭水化物が挙げられ得る。さらなる例として、適切な界面活性剤としては、限定するものではないが、プロピレングリコールイソステアレート、グリセリルステアレート、ポリグレセリル-3ジイソステアレート(polygleceryl-3 diisostearate)、ソルビタンイソステアレート、オレス-2、グリセリルラウレート、セテス-2、メチルグルコースセスキステアレート、ラウレス-4、セテリルグルコシド(ceteryl glucoside)、ポリソルベート85、オレス-10、及びセテス-10が挙げられ得る。
【0080】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、ジメチコンのポリエチレングリコール誘導体、具体的には、PEG-8~PEG-12ジメチコン界面活性剤、及び米国特許第7842725号明細書に記載のものを含んでよい。いくつかの実施形態では、ジメチコンのポリエチレングリコール誘導体の適切なしかし限定するものではない例は、何れも14未満のHLB値を有するPEG-12ジメチコン及びPEG-10ジメチコンである。いくつかの実施形態では、ジメチコン界面活性剤のブレンドは、PEG-12ジメチコン及びPEG-10ジメチコンを、組成物の総質量に基づいて約5:1~約1:1の質量比で含有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、若しくは少なくとも4つ、又はそれ以上の非イオン性界面活性剤を含んでよい。
【0082】
非イオン性界面活性剤の量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約4質量%、例えば約0.1質量%~約3質量%又は約0.2質量%~約2.5質量%の範囲内であってよい。グリセリルステアレート界面活性剤の量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約4質量%、例えば約0.1質量%~約3質量%又は約0.2質量%~約2.5質量%の範囲内であってよい。
【0083】
PEG-12ジメチコンの量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約4質量%、例えば約0.1質量%~約3質量%又は約0.2質量%~約2.5質量%の範囲内であってよい。
【0084】
PEG-10ジメチコンの量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約4質量%、例えば約0.1質量%~約3質量%又は約0.2質量%~約2.5質量%の範囲内であってよい。
【0085】
ii.ワックス
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、少なくとも1つのワックスを含んでよい。少なくとも1つのワックスは、限定するものではないが、室温(25℃)で固体又は半固体であるワックスから選択され得る。具体例としては、限定するものではないが、天然及び合成ワックス、例えば、ミツロウ、キャンデリラワックス、綿ロウ、カルナウバワックス、シロヤマモモロウ、虫白ロウ(イボタロウムシ(Ericerus pela)が分泌するロウ)、鯨ロウ、モンタンワックス、コメヌカロウ(ライスワックス)、カポックワックス(capok wax)、モクロウ、ラノリンアセテート、液体ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸とイソプロピルアルコールとのエステル、ヘキシルラウレート、還元ラノリン、ホホバワックス、ハードラノリン、シェラックワックス、ミツロウ、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸とポリエチレンワックスとのエステル、合成ワックス、脂肪酸グリセリド、水添ヒマシ油、ペトロラタム、及びPOE水添ラノリンアルコールエーテルが挙げられる。
【0086】
ワックスの量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約2質量%~約10質量%、例えば約2.5質量%~約8質量%又は約3質量%~約6質量%の範囲内であってよい。
【0087】
iii.溶媒
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、少なくとも1つの溶媒を含んでよい。少なくとも1つの溶媒は、限定するものではないが、引火点が50℃未満の溶媒及び引火点が70℃超の溶媒から選択されてよく、揮発性及び非揮発性の炭化水素、揮発性及び非揮発性のシリコーン、アルコール、グリコール、エステル、植物油、及び合成油が挙げられる。いくつかの好ましい溶媒としては、炭化水素及びシリコーンをベースとする溶媒が挙げられ、水添ポリイソブタン、イソドデカン、ジメチコン、及びセメチコン(semethicone)などである。市販の適切な炭化水素溶媒は、NOF Corporationから入手可能なPARLEM 4(INCI名:水添ポリイソブタン及びトコフェロール)である。
【0088】
溶媒の量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約30質量%、例えば約0.1質量%~約25質量%又は約1質量%~約20質量%の範囲内であってよい。
【0089】
iv.質感粉末
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、少なくとも1つの質感粉末を含んでよい。少なくとも1つの質感粉末は、限定するものではないが、いかなる形状であってもよい鉱物充填剤及び有機充填剤から選択されてよい。例えば、質感粉末は、限定するものではないが、シリカ、ポリマーミクロスフィア、及びアミノ酸のブレンドであってよい。例としては、限定するものではないが、マイカ、シリカ、ポリアミド粉末、デンプン、窒化ホウ素(boron nitre)、シリコーン樹脂マイクロビーズ、及びエラストマー粉末が挙げられる。
【0090】
質感粉末の量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約30質量%、例えば約0.1質量%~約25質量%又は約1質量%~約20質量%の範囲内であってよい。
【0091】
v.保湿剤
グリセリン、レシチン、及びプロピレングリコールを含む保湿剤は、皮膚の外層に水分を引き寄せる。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、米国特許第5977188号明細書に記載されるように、ジプロピレングリコール、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、エーテル、ポリオール、グリセリン、グリセリンポリマー、及びポリエチレングリコールなどのポリオール型保湿剤を含む親水性保湿剤から選択されるがこれらに限定するものではない1又は複数の保湿剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、グリセリン、及び40個までのグリセリン単位を有するグリセリンポリマーが、開示される組成物に保湿剤として組み込まれる。
【0092】
保湿剤の量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約5質量%、例えば約0.1質量%~約3質量%又は約0.2質量%~約1質量%の範囲内である。
【0093】
vi.顔料
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、限定するものではないが、有機及び無機処理顔料、並びに例えば特別な視覚効果を提供する顔料から選択される少なくとも1つの顔料を含んでよい。適切な顔料の特定の例としては、限定するものではないが、酸化鉄、赤7レーキ(red 7 lake)、及びゴニオクロマチック顔料(gonioichromatic pigments)が挙げられる。
【0094】
顔料の量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約30質量%、例えば約0.1質量%~約25質量%又は約1質量%~約20質量%の範囲内であってよい。
【0095】
vii.皮膜形成剤
いくつかの実施形態では、開示される組成物は、限定するものではないが、水溶性皮膜形成剤及び油溶性皮膜形成剤、アクリル系皮膜形成剤、シリコーン系皮膜形成剤、例えば米国特許出願公開第2009/001708号明細書に記載のもの、から選択される少なくとも1つの皮膜形成剤を含んでよい。
【0096】
「皮膜形成剤」又は「皮膜形成ポリマー」は、本明細書で用いられる場合、それが適用された基材上に、例えば皮膜形成剤に付随する溶媒が、蒸発した後に、基材中に吸収された後に、及び/又は基材上で散逸した後に、皮膜を残すポリマー又は樹脂を意味する。
【0097】
皮膜形成剤の量は、限定するものではないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約30質量%、より好ましくは約0.1質量%~約25質量%、最も好ましくは約1質量%~約20質量%の範囲内であってよい。
【0098】
開示される組成物は、さらに、有機顔料、保存剤、充填剤、活性剤、日焼け止め剤、添加剤、及び/又は追加の溶媒など、その意図する使用に適する他の成分を含んでいてもよい。
【0099】
III.エモリエント剤を含む開示されるW/Oエマルジョンの製造方法
開示される組成物は、エモリエント剤(例:Plandool(登録商標))、ワックス、及び少なくとも1つの溶媒(例:parleam 4及びvegelight C912-LC)を、均一な混合物が形成されるまで90℃で一緒に混合することによって製造され得る。他の疎水性成分が添加されてもよく、混合物は、90℃に加熱された状態のままでホモジナイズされてよい。水相のすべての要素は、別の容器中で1つにまとめられ、透明で均一な溶液が得られるまで70~80℃に加熱されてよい。水相は、続いて、組成物の残りの部分に添加され、90℃で約10分間にわたって、又は滑らかでクリーム状の質感が得られるまでブレンドされてよい。最終組成物は、適切な仕切られた部分に充填される。
【0100】
IV.エモリエント剤を含む開示されるW/Oエマルジョンの使用方法
ゲル化系、少なくとも1つのエモリエント剤、及び少なくとも15%の水を含む開示されるW/Oエマルジョン組成物の使用方法が、本明細書で開示される。具体的には、組成物は、唇又は皮膚などの角質表面を処理するために用いられ得る。方法は、色、潤い、及び/又は滑らかさを角質表面に与えるために、開示される組成物を角質表面に適用することを含む。言い換えると、本開示は、開示される組成物の化粧料としての使用方法を提供する。いくつかの実施形態では、開示される組成物は、リップグロス、リキッドリップライナー、又はリップティントの形態で適用され得る。いくつかの実施形態では、記載の組成物は、限定するものではないが、リップ製品、ファンデーション、ブラッシャー、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、スキンケア製品、サンケア製品などであってよい。開示される組成物は、様々な適用可能なアプリケーター及び容器で用いられてよく、ジャー、ペン、ペンシル、ブラシなどである。
【0101】
本明細書ではまた、化粧料として用いるための、又は角質表面に適用するための、ゲル化系、少なくとも1つのエモリエント剤、及び少なくとも15%の水を含む開示される液体W/Oエマルジョン組成物も提供される。
【0102】
本明細書ではまた、角質表面の処理のための、又は化粧料としての、ゲル化系、少なくとも1つのエモリエント剤、及び少なくとも15%の水を含む開示される液体W/Oエマルジョン組成物の使用も提供される。
【実施例
【0103】
以下の例は、本開示を例証するために与えられる。しかし、本開示が、これらの例で述べる特定の条件又は詳細内容に限定されるものではないことは理解されたい。
【0104】
例1 - エモリエント剤を含む好ましいW/Oエマルジョンの製造
以下の例は、エモリエント剤を含む開示されるW/Oエマルジョン組成物の実施形態を製造するための好ましいプロセスについて記載する。用いた成分を、以下の表2に列挙する。
【表2-1】

【表2-2】
【0105】
Aの化合物を主容器中で1つにまとめ、続いて均一な混合物が形成されるまで90℃で加熱した。次に、B、C、D、E、F、及びGの化合物を添加し、90℃で加熱した状態のままで、Robomics(特殊機化工業から供給)を4000RPMの速度で用いて2分間にわたってホモジナイズした。
【0106】
一方、水相のすべての要素(H)は、小さい容器中で1つにまとめ、透明で均一なブレンドが得られるまで70~80℃で加熱した。
【0107】
次に、この水相を、主釜中の混合物に添加し、90℃でさらに10分間、滑らかでクリーム状の質感が得られるまで一緒にブレンドした。
【0108】
例2 - エモリエント剤を含むW/Oエマルジョンの品質特性評価
以下の例を用いて、得られた組成物の物理的特性に対するゲル化系及びエモリエント剤の各成分の効果を特定した。したがって、3つのゲル化剤(すなわち、疎水性ゲル化剤、親水性ゲル化剤、及び炭化水素ゲル化剤)をエモリエント剤と共に含有する好ましいW/Oエマルジョンとして1つの組成物を製造し、及びゲル化剤又はエモリエント剤の成分のうちの1つを各々が含まない4つのコントロールを製造した。これらの組成物の各々に対する成分及び成分の濃度を、以下の表3に開示する。
【表3-1】

【表3-2】

【表3-3】
【0109】
好ましい組成物及びコントロールの製造後、それらを、質感、粘度、エマルジョン安定性、及び保存安定性を含む物理的特性を評価するための一連の試験に掛けた。
【0110】
質感は、液体リップ化粧料のユーザー2人により、好ましい組成物及びコントロールを塗布した直後に分析した。サンプルを、持続時間(すなわち、持続する長さ)、軽さ(重量)、爽快感及び清涼感、滑らかさ、クリーミーさ、被覆性、及び塗布後の心地良さについて評価した。
【0111】
粘度は、Brookfield粘度計、モデルRVを用い、スピンドルT-Dを12RPMの速度で用いて25℃/35%RMで測定した。
【0112】
エマルジョン安定性の評価では、製造直後の分離についてサンプルを目視で検査した。
【0113】
保存安定性の評価では、以下の通りの温度:-5℃、0℃、25℃、37℃、45℃、及び37℃/98%RH(相対湿度)での2週間にわたる曝露後に、分離についてサンプルを目視で検査した。これらの評価の各々に対する結果を以下の表3に示す。
【表4】
【0114】
上記の表3から分かるように、最も望ましい質感、さらには許容可能な粘度及び安定性を有することを特徴とするW/Oエマルジョンは、エモリエント剤を含むトリプルゲルのものであった。これらの結果から、考え得る最良の結果を得るためには、3つのゲル化剤及びエモリエント剤が必要であることが示唆される。
【0115】
例3 - エモリエント剤を含むW/Oエマルジョンと他の液体リップ製品との比較
開示されるエモリエント剤を含んだトリプルゲル組成物の優れた品質を確認するために(例:塗布及び除去の容易さ、被覆性、重さ、心地良さ、べとつき、仕上がり、臭気など)、例2からのエモリエント剤を含んだ好ましいトリプルゲル組成物を、水含有量の高いいくつかの市販製品(すなわち、以下で示すように、比較製品3以外はすべて15%超)に対して比較した。
【0116】
比較製品1は、水、オクチルドデカノール、トリメチルシロキシフェニルジメチコン、エチルセルロース、合成ワックス、セチルアルコール、アルコール、ポリブテン、グリセリルステアレート、ベヘニルアルコール、ステアレス-20、フェノキシエタノール、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリルステアレートシトレート、エチレンジコカミドPEG-15二硫酸二ナトリウム、ヒドロキシプロピルグアー、カルシウムアルミニウムボロシリケート、合成フルオロフロゴパイト、ステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ケイ酸マグネシウム、カルシウムナトリウムボロシリケート、水酸化アルミニウム、ナトリウムサッカリン、アルミナ、ベンジルアルコール、シリカ、酸化スズ、アニスアルコール、芳香剤、及び顔料を含むビニルクリームステイン(vinyl cream stain)である。
【0117】
比較製品2は、水、オクチルドデカノール、シクロペンタシロキサン、水添ポリイソブテン、ペンタエリスリチルテトライソステアレート、エチルセルロース、グリセリン、アルコール、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、イソドデカン、ポリグリセリル-6ポリリシノレエート、ペンチレングリコール、ポリグリセリル-2イソステアレート、フェノキシエタノール、ジステアルジモニウムヘクトライト、レシチン、ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー、トリメチロールプロパントリイソステアレート、コンドルスクリスプス(Chondrus crispus)(カラゲナン)、塩化ナトリウム、BHT、芳香剤(香料)、リンゴ酸ジイソステアリル、ポリグリセリル-3ポリリシノレエート、ステビオシド、合成フルオロフロゴパイト、サリチル酸ベンジル、リナロール、トコフェロール、アミルシンナマール、没食子酸プロピル、及び顔料を含むリップスティックである。
【0118】
比較製品3は、水、オクチルドデカノール、トリメチルシロキシシリケート、シクロペンタシロキサン、アルコール、セスキオレイン酸ソルビタン、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、ダイマージリノレイルダイマージリノール酸エステル、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、プロピレングリコール、ポリソルベート80、エチルセルロース、ポリアクリルアミド、C13~14イソパラフィン、ラウレス-7、1,2-ヘキサンジオール、フェノキシエタノール、ローズヒップ油、アボカド油、アンズ核油、マカダミアナッツ油、酢酸トコフェリル、香料、及び顔料を含むリップティントである。
【0119】
比較製品4は、水、グリセリン、ブチレングリコール、エチルヘキシルステアレート、アルコール、ヒドロキシエチルアクリレート/アクリロイルジメチルタウリンナトリウムコポリマー、ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサンクロスポリマー、スクアラン、フィロスタキス・バンブスオイデス(Phyllostachis bambusoides)抽出物、フェノキシエタノール、ポリグリセリル-2トリイソステアレート、PEG-60水添ヒマシ油、レシチン、トリメチロールプロパントリイソステアレート、ポリソルベート60、バニリン、芳香剤(香料)、クエン酸ナトリウム、ソルビタンイソステアレート、ステビオシド、PEG-7グリセリルココエート、クエン酸、ポリクオタニウム-7、没食子酸プロピル、ベンジルアルコール、BHT、メチルシラノールトリPEG-8グリセリルココエート、及び顔料を含むリップスティックである。
【0120】
エモリエント剤を含む好ましいW/Oエマルジョン組成物及び比較製品を、年齢が24~55歳の範囲の液体リップ化粧料の定期ユーザー4人の塗布によって比較した。対象は、好ましい組成物及び比較製品の各々を塗布し、以下の表4に挙げた様々なパラメータについてそれらを評価した。質問の種類に応じて、塗布の直後に評価したものもあれば、各製品の使用の1時間後に評価したものもあった。各製品の評価は、異なる日に行い、1日につき無作為に抽出した1つの製品について行った。
【表5】
【0121】
上記の表に示されるように、エモリエント剤を含むトリプルゲル品は、比較製品と比較して、すべての官能評価において良好な性能を示した。特に、開示されるエモリエント剤を含むトリプルゲル組成物は、除去が容易であり(すなわち、着色を残さず)、べとつかず重くもなく、臭気がなく、終日の使用でも心地良い。
【0122】
本発明の技術は、本出願に記載した特定の実施形態によって限定されるものではなく、記載した実施形態は、本発明の技術の個々の態様の1つの例示として意図されるものである。当業者であれば明らかであるように、本発明の技術の多くの改変及び変更が、その趣旨及び範囲から逸脱することなく可能である。本明細書で列挙するものに加えて、本発明の技術の範囲内である機能的に均等である方法及び装置は、当業者であれば上記の記述内容から明らかであろう。そのような改変及び変更は、本発明の技術の範囲内に包含されることを意図している。本発明の技術が、特定の方法、試薬、化合物組成物、又は生物学的システムに限定されないことは理解されたく、これらは当然様々に変動し得るものである。また、本明細書で用いられる専門用語が、特定の実施形態を記載するだけの目的のものであり、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0123】
当業者であれば、本開示が、その目的を成し遂げるように、並びに言及した目標及び利点、さらには本開示に固有の目標及び利点を得るように良く構成されていることは容易に理解される。本開示における改変及び他の使用は、当業者であれば思い付くであろう。これらの改変は、本開示の趣旨に包含され、請求項の範囲によって定められるものであり、本開示の限定されない実施形態を示すものである。
【0124】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群によって記載される場合、当業者であれば、本開示が、それによって、マーカッシュ群の個々のメンバー又はメンバーのサブ群の何れによっても記載されるものであることは認識されるであろう。
本発明は、下記の態様を含む:
〈態様1〉
W/Oエマルジョン組成物であって、少なくとも1つのゲル化系、少なくとも1つのエモリエント剤、及び前記組成物の総質量に対して少なくとも15質量%の水を含み、前記少なくとも1つのゲル化系は、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤及び少なくとも1つの親水性ゲル化剤を含む、W/Oエマルジョン組成物。
〈態様2〉
前記ゲル化系が、炭化水素ゲル化剤をさらに含む、態様1に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様3〉
前記炭化水素ゲル化剤が、炭化水素ブロックコポリマーである、態様2に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様4〉
前記炭化水素ゲル化剤が、エチレン/プロピレン/スチレンコポリマー、ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー、又はこれらの混合物から選択される、態様2又は3に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様5〉
前記炭化水素ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して約4質量%~約20質量%の範囲内で存在する、態様2~4の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様6〉
前記親水性ゲル化剤が、カンテン、アガロース、カラゲナン、ゲラン、アルギン酸、及びこれらの混合物から選択される、態様1~5の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様7〉
前記親水性ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して約0.01質量%~約1質量%の範囲内で存在する、態様1~6の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様8〉
前記疎水性ゲル化剤が、疎水性鉱物ゲル化剤を含む、態様1~7の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様9〉
前記疎水性ゲル化剤が、ジステアルジモニウムヘクトライトである、態様1~8の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様10〉
前記疎水性ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して約1質量%~約10質量%の範囲内で存在する、態様1~12の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様11〉
前記疎水性ゲル化剤が、前記組成物の総質量に対して約6質量%である、態様13に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様12〉
前記エモリエント剤が、ステロール誘導体である、態様1~11の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様13〉
前記エモリエント剤が、前記組成物の総質量に対して約0.5質量%~約10質量%の範囲内で存在する、態様1~12の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様14〉
前記エモリエント剤が、ダイマージリノール酸ファイトステロール/高級アルコールエステルである、態様1~13の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様15〉
水の前記量が、前記組成物の総質量に対して少なくとも25質量%である、態様1~14の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様16〉
少なくとも1つの界面活性剤、ワックス、溶媒、質感粉末、保湿剤、顔料、又は皮膜形成剤をさらに含む、態様1~14の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様17〉
前記W/Oエマルジョンが、リップ組成物に組み込まれる、態様1~19の何れか一項に記載のW/Oエマルジョン組成物。
〈態様18〉
態様1~17の何れか一項に記載の組成物を対象の角質表面に適用することを含む、角質表面の処理方法。
〈態様19〉
前記角質表面が、前記対象の唇又は皮膚である、態様18に記載の方法。
〈態様20〉
対象の角質表面を処理するための、態様1~19の何れか一項に記載の組成物。
〈態様21〉
化粧料として用いるための、態様1~19の何れか一項に記載の組成物。
〈態様22〉
対象の角質表面を処理するための、態様1~19の何れか一項に記載の組成物の使用。
〈態様23〉
化粧料としての、態様1~19の何れか一項に記載の組成物の使用。