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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電動機、ファン、及び空気調和機
(51)【国際特許分類】
   H02K 1/2746 20220101AFI20240924BHJP
   H02K 1/22 20060101ALI20240924BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20240924BHJP
【FI】
H02K1/2746
H02K1/22 A
H02K1/276
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022502709
(86)(22)【出願日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2020008019
(87)【国際公開番号】W WO2021171476
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-02-18
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116964
【弁理士】
【氏名又は名称】山形 洋一
(74)【代理人】
【識別番号】100120477
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 賢改
(74)【代理人】
【識別番号】100135921
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100203677
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 力
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隆徳
(72)【発明者】
【氏名】麻生 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】土田 和慶
(72)【発明者】
【氏名】下川 貴也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 諒伍
【合議体】
【審判長】恩田 春香
【審判官】松永 稔
【審判官】緑川 隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/085814(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K1/2746
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の磁石挿入孔及び前記第1の磁石挿入孔に隣接する第2の磁石挿入孔を有するロータコアと、前記第1の磁石挿入孔に配置された永久磁石と、第1の磁極として機能する第1の磁極領域と、前記第1の磁石挿入孔と前記第2の磁石挿入孔との間の前記ロータコアの一部によって形成される疑似磁極である第2の磁極として機能する第2の磁極領域とを有するコンシクエントポール型ロータと、
周方向に延在するコアバックと、前記コアバックから前記コンシクエントポール型ロータの第1の径方向に延在する第1のティースと、前記第1のティースに隣接している第2のティースとを有し、前記コンシクエントポール型ロータの外側に配置されたステータと
を備え、
前記第1の径方向における内側に面する前記第1の磁石挿入孔の内壁は、前記第1の径方向における外側に面する前記永久磁石の表面に接触しており、
前記コンシクエントポール型ロータの軸方向と直交する平面において、前記永久磁石の長手方向における前記表面の幅をM1とし、
前記平面において、前記第1の磁石挿入孔の前記内壁のうちの、前記永久磁石の前記表面に接触している部分の最大幅をW1とし、
前記平面において、前記第1の磁石挿入孔から前記第2の磁石挿入孔までの最小幅をW2とし、
前記第1のティースのうちの前記ロータコアに面する第1の先端面の、前記平面において前記第1の径方向と直交する第1の方向における幅をT1とし、
前記第1の先端面から前記第2のティースのうちの前記ロータコアに面する第2の先端面までの前記第1の方向における幅をT2としたとき、
W2<W1<M1、且つT1<W1<T1+2×T2
を満たし、
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通しており前記第2のティースに対向する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2とし、前記平面において、前記第2の径方向と直交する前記方向における前記第2のティースに対向する前記空隙の幅をFB1としたとき、
FB1>FB2
を満たす電動機。
【請求項2】
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通しており前記第2のティースに対向する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2としたとき、
0.14<FB2/T1<0.34
を満たす請求項1に記載の電動機。
【請求項3】
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2としたとき、
0.165<FB2/T1<0.285
を満たす請求項1に記載の電動機。
【請求項4】
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2としたとき、
0.175<FB2/T1<0.24
を満たす請求項1に記載の電動機。
【請求項5】
第1の磁石挿入孔及び前記第1の磁石挿入孔に隣接する第2の磁石挿入孔を有するロータコアと、前記第1の磁石挿入孔に配置された永久磁石と、第1の磁極として機能する第1の磁極領域と、前記第1の磁石挿入孔と前記第2の磁石挿入孔との間の前記ロータコアの一部によって形成される疑似磁極である第2の磁極として機能する第2の磁極領域とを有するコンシクエントポール型ロータと、
周方向に延在するコアバックと、前記コアバックから前記コンシクエントポール型ロータの第1の径方向に延在する第1のティースと、前記第1のティースに隣接している第2のティースとを有し、前記コンシクエントポール型ロータの外側に配置されたステータと
を備え、
前記第1の径方向における内側に面する前記第1の磁石挿入孔の内壁は、前記第1の径方向における外側に面する前記永久磁石の表面に接触しており、
前記コンシクエントポール型ロータの軸方向と直交する平面において、前記永久磁石の長手方向における前記表面の幅をM1とし、
前記平面において、前記第1の磁石挿入孔の前記内壁のうちの、前記永久磁石の前記表面に接触している部分の最大幅をW1とし、
前記平面において、前記第1の磁石挿入孔から前記第2の磁石挿入孔までの最小幅をW2とし、
前記第1のティースのうちの前記ロータコアに面する第1の先端面の、前記平面において前記第1の径方向と直交する第1の方向における幅をT1とし、
前記第1の先端面から前記第2のティースのうちの前記ロータコアに面する第2の先端面までの前記第1の方向における幅をT2とし、
前記平面において、前記最大幅W1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記コンシクエントポール型ロータの回転中心で交差する角度をθW1とし、
前記平面において、前記最小幅W2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθW2とし、
前記平面において、前記幅M1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθM1とし、
前記平面において、前記幅T1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθT1とし、
前記平面において、前記幅T2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθT2としたとき、
θW2<θW1<θM1、且つθT1<θW1<θT1+2×θT2を満たし、
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通しており前記第2のティースに対向する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2とし、前記平面において、前記第2の径方向と直交する前記方向における前記第2のティースに対向する前記空隙の幅をFB1としたとき、
FB1>FB2
を満たす電動機。
【請求項6】
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通しており前記第2のティースに対向する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2とし、
前記平面において、前記幅FB2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθFB2としたとき、
0.14<θFB2/θT1<0.34
を満たす請求項5に記載の電動機。
【請求項7】
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2とし、
前記平面において、前記幅FB2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθFB2としたとき、
0.165<θFB2/θT1<0.285
を満たす請求項5に記載の電動機。
【請求項8】
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2とし、
前記平面において、前記幅FB2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθFB2としたとき、
0.175<θFB2/θT1<0.24
を満たす請求項5に記載の電動機。
【請求項9】
羽根と、
前記羽根を駆動する請求項1からのいずれか1項に記載の電動機と
を備えたファン。
【請求項10】
室内機と、
前記室内機に接続された室外機と
を備え、
前記室内機、前記室外機、又は前記室内機及び前記室外機の両方は、請求項1からのいずれか1項に記載の電動機を有する
空気調和機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動機用のロータにおける永久磁石の使用量を減らすため、第1の極性を持つ第1の磁極部と、第2の極性を持つ疑似磁極である第2の磁極部とを有するコンシクエントポール型ロータが用いられている。例えば、特許文献1に記載のコンシクエントポール型ロータでは、ステータとロータ間の平均磁束密度を増加させるため、第1の極性を持つ第1の磁極部の占有角と、第2の極性を持つ疑似磁極である第2の磁極部の占有角とが設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-201406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術では、永久磁石が配置された孔が、その孔に隣接する空隙と連通している。この構成により、永久磁石が配置された孔と空隙との間の領域を通過する漏れ磁束が低減される。すなわち、永久磁石のN極からその永久磁石のS極に流れ込む漏れ磁束が低減される。しかしながら、従来の技術では、コンシクエントポール型ロータからステータの対象ティースに流れ込む有効磁束以外の漏れ磁束について考慮されていない。すなわち、対象ティースに隣接するティースに流れ込む漏れ磁束について考慮されていない。そのため、従来の技術では、コンシクエントポール型ロータに大きな永久磁石を配置したとしても、その永久磁石からの磁束を有効に使用できない。
【0005】
本開示の目的は、コンシクエントポール型ロータの永久磁石からステータの対象ティースへ流れ込む有効磁束を増加させ、対象ティースに隣接するティースに流れ込む漏れ磁束を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る電動機は、
第1の磁石挿入孔及び前記第1の磁石挿入孔に隣接する第2の磁石挿入孔を有するロータコアと、前記第1の磁石挿入孔に配置された永久磁石と、第1の磁極として機能する第1の磁極領域と、前記第1の磁石挿入孔と前記第2の磁石挿入孔との間の前記ロータコアの一部によって形成される疑似磁極である第2の磁極として機能する第2の磁極領域とを有するコンシクエントポール型ロータと、
周方向に延在するコアバックと、前記コアバックから前記コンシクエントポール型ロータの第1の径方向に延在する第1のティースと、前記第1のティースに隣接している第2のティースとを有し、前記コンシクエントポール型ロータの外側に配置されたステータと
を備え、
前記第1の径方向における内側に面する前記第1の磁石挿入孔の内壁は、前記第1の径方向における外側に面する前記永久磁石の表面に接触しており、
前記コンシクエントポール型ロータの軸方向と直交する平面において、前記永久磁石の長手方向における前記表面の幅をM1とし、
前記平面において、前記第1の磁石挿入孔の前記内壁のうちの、前記永久磁石の前記表面に接触している部分の最大幅をW1とし、
前記平面において、前記第1の磁石挿入孔から前記第2の磁石挿入孔までの最小幅をW2とし、
前記第1のティースのうちの前記ロータコアに面する第1の先端面の、前記平面において前記第1の径方向と直交する第1の方向における幅をT1とし、
前記第1の先端面から前記第2のティースのうちの前記ロータコアに面する第2の先端面までの前記第1の方向における幅をT2としたとき、
W2<W1<M1、且つT1<W1<T1+2×T2
を満たし、
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通しており前記第2のティースに対向する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2とし、前記平面において、前記第2の径方向と直交する前記方向における前記第2のティースに対向する前記空隙の幅をFB1としたとき、
FB1>FB2
を満たす
本開示の他の態様に係る電動機は、
第1の磁石挿入孔及び前記第1の磁石挿入孔に隣接する第2の磁石挿入孔を有するロータコアと、前記第1の磁石挿入孔に配置された永久磁石と、第1の磁極として機能する第1の磁極領域と、前記第1の磁石挿入孔と前記第2の磁石挿入孔との間の前記ロータコアの一部によって形成される疑似磁極である第2の磁極として機能する第2の磁極領域とを有するコンシクエントポール型ロータと、
周方向に延在するコアバックと、前記コアバックから前記コンシクエントポール型ロータの第1の径方向に延在する第1のティースと、前記第1のティースに隣接している第2のティースとを有し、前記コンシクエントポール型ロータの外側に配置されたステータと
を備え、
前記第1の径方向における内側に面する前記第1の磁石挿入孔の内壁は、前記第1の径方向における外側に面する前記永久磁石の表面に接触しており、
前記コンシクエントポール型ロータの軸方向と直交する平面において、前記永久磁石の長手方向における前記表面の幅をM1とし、
前記平面において、前記第1の磁石挿入孔の前記内壁のうちの、前記永久磁石の前記表面に接触している部分の最大幅をW1とし、
前記平面において、前記第1の磁石挿入孔から前記第2の磁石挿入孔までの最小幅をW2とし、
前記第1のティースのうちの前記ロータコアに面する第1の先端面の、前記平面において前記第1の径方向と直交する第1の方向における幅をT1とし、
前記第1の先端面から前記第2のティースのうちの前記ロータコアに面する第2の先端面までの前記第1の方向における幅をT2とし、
前記平面において、前記最大幅W1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記コンシクエントポール型ロータの回転中心で交差する角度をθW1とし、
前記平面において、前記最小幅W2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθW2とし、
前記平面において、前記幅M1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθM1とし、
前記平面において、前記幅T1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθT1とし、
前記平面において、前記幅T2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、前記回転中心で交差する角度をθT2としたとき、
θW2<θW1<θM1、且つθT1<θW1<θT1+2×θT2を満たし、
前記第1の磁石挿入孔は、前記永久磁石が配置された磁石配置部と、前記永久磁石の前記長手方向において前記磁石配置部に連通しており前記第2のティースに対向する空隙とを含み、
前記平面において、前記第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線と前記第1の径方向とが一致している場合において、
前記平面において、前記空隙のうちの前記第2の先端面に対向する部分の、前記コアバックから前記第2のティースが延在する第2の径方向と直交する方向における幅をFB2とし、前記平面において、前記第2の径方向と直交する前記方向における前記第2のティースに対向する前記空隙の幅をFB1としたとき、
FB1>FB2
を満たす
本開示の他の態様に係るファンは、
羽根と、
前記羽根を駆動する前記電動機と
を備える。
本開示の他の態様に係る空気調和機は、
室内機と、
前記室内機に接続された室外機と
を備え、
前記室内機、前記室外機、又は前記室内機及び前記室外機の両方は、前記電動機を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、コンシクエントポール型ロータの永久磁石からステータの対象ティースへ流れ込む有効磁束を増加させ、対象ティースに隣接するティースに流れ込む漏れ磁束を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係る電動機の構造を概略的に示す部分断面図である。
図2】電動機の構造を概略的に示す断面図である。
図3】ロータの構造を概略的に示す断面図である。
図4】ロータの構造を概略的に示す断面図である。
図5図2に示される電動機の一部を示す図である。
図6図5に示される電動機を示す図である。
図7】比較例に係る電動機を示す断面図である。
図8】第1の先端面の幅に対する第2の先端面に対向する空隙の幅の比率と電動機に生じるコギングトルクとの関係を示すグラフである。
図9】第1の先端面の幅に対する第2の先端面に対向する空隙の幅の比率とコギングトルクとの関係、及び第1の先端面の幅に対する第2の先端面に対向する空隙の幅の比率と電動機のトルクとの関係を示すグラフである。
図10】幅T1に対応する角度θT1に対する幅FB2に対応する角度θFB2の比率θFB2/θT1とコギングトルクとの関係、及び幅T1に対応する角度θT1に対する幅FB2に対応する角度θFB2の比率θFB2/θT1と電動機1のトルクとの関係を示すグラフである。
図11】実施の形態2に係るファンの構造を概略的に示す図である。
図12】実施の形態3に係る空気調和機の構成を概略的に示す図である。
図13】空気調和機の送風機としての室外機内の主要な構成要素を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1に係る電動機1について説明する。
各図に示されるxyz直交座標系において、z軸方向(z軸)は、電動機1の軸線Axと平行な方向を示し、x軸方向(x軸)は、z軸方向(z軸)に直交する方向を示し、y軸方向(y軸)は、z軸方向及びx軸方向の両方に直交する方向を示す。軸線Axは、ロータ2の回転中心、すなわち、ロータ2の回転軸である。軸線Axと平行な方向は、「ロータ2の軸方向」又は単に「軸方向」とも称する。径方向は、ロータ2又はステータ3の半径方向であり、軸線Axと直交する方向である。xy平面は、軸方向と直交する平面である。矢印D1は、軸線Axを中心とする周方向を示す。ロータ2又はステータ3の周方向を、単に「周方向」とも称する。
【0010】
〈電動機1〉
図1は、実施の形態1に係る電動機1の構造を概略的に示す部分断面図である。
図2は、電動機1の構造を概略的に示す断面図である。
電動機1は、ロータ2と、ステータ3と、回路基板4と、モールド樹脂5と、ロータ2を回転可能に保持するベアリング7a及び7bとを有する。電動機1は、例えば、永久磁石埋込型電動機(IPMモータ)などの永久磁石同期電動機である。
【0011】
〈ステータ3〉
ステータ3は、ロータ2の外側に配置されている。ステータ3は、ステータコア31と、コイル32と、インシュレータ33とを有する。ステータコア31は、周方向に延在するコアバック31aと、コアバック31aから径方向に延在する複数のティース31bとを有する環状のコアである。
【0012】
ステータコア31は、例えば、磁性を持つ複数の鉄の薄板で構成されている。本実施の形態では、ステータコア31は、軸方向に積層された複数の電磁鋼板で構成されている。ステータコア31の各電磁鋼板の厚さは、例えば、0.2mmから0.5mmである。
【0013】
コイル32(すなわち、巻線)は、ステータコア31に取り付けられたインシュレータ33に巻かれている。コイル32は、インシュレータ33によって絶縁されている。コイル32は、例えば、銅又はアルミニウムを含む材料で作られている。
【0014】
インシュレータ33は、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PolyButyleneTerephthalate:PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PolyPhenylene Sulfide:PPS)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate:PET)といった絶縁性の樹脂で作られている。樹脂で作られたインシュレータ33は、例えば、0.035mmから0.4mmの厚さの絶縁性フィルムである。
【0015】
例えば、インシュレータ33は、ステータコア31と一体的に成形される。ただし、ステータコア31とは別にインシュレータ33が成形されてもよい。この場合、インシュレータ33が成形された後に、インシュレータ33がステータコア31に嵌められる。
【0016】
本実施の形態では、ステータコア31、コイル32、及びインシュレータ33は、モールド樹脂5によって覆われている。ステータコア31、コイル32、及びインシュレータ33は、例えば、鉄を含む材料で作られた円筒状シェルによって固定されてもよい。この場合、例えば、ステータ3は、ロータ2と共に、焼き嵌めによって円筒状シェルで覆われる。
【0017】
回路基板4は、モールド樹脂5によってステータ3と共に固定されている。回路基板4は、電動機1を制御するための駆動素子を有する。
【0018】
モールド樹脂5は、回路基板4をステータ3と一体化させる。モールド樹脂5は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(BMC)、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂である。
【0019】
〈ロータ2〉
図3及び図4は、ロータ2の構造を概略的に示す断面図である。図3に示される「N」は、ロータ2のN極(具体的には、ステータ3に対して機能するN極)を示し、「S」は、ロータ2のS極(具体的には、ステータ3に対して機能するS極)を示す。
ロータ2は、ロータコア21と、複数の永久磁石22と、シャフト23と、非磁性部材24とを有する。ロータ2は、ステータ3の内側に回転可能に配置されている。具体的には、各永久磁石22がステータ3に面するように、ロータ2がステータ3の内側に配置されている。ロータ2の回転軸は、軸線Axと一致する。エアギャップがロータコア21とステータ3との間に設けられている。
【0020】
ロータコア21は、軸方向に積層された複数のコア210で構成されている。ロータコア21(すなわち、複数のコア210)は、非磁性部材24に固定されている。ロータコア21は、シャフト23に固定されていてもよい。シャフト23は、ベアリング7a及び7bによって回転可能に保持されている。電動機1が駆動すると、ロータコア21は、シャフト23と共に回転する。
【0021】
軸方向において、ロータコア21は、ステータコア31よりも長くてもよい。これにより、ロータ2(具体的には、各永久磁石22)からの磁束が、ステータコア31に効率的に流入する。
【0022】
ロータコア21(すなわち、複数のコア210)は、複数の磁石挿入孔21aと、シャフト挿入孔21bとを有する。
【0023】
本実施の形態では、ロータコア21は複数の磁石挿入孔21aを有し、少なくとも1つの永久磁石22が各磁石挿入孔21aに配置されている。
【0024】
ロータコア21は、例えば、複数の電磁鋼板によって構成されている。この場合、複数のコア210の各々は、電磁鋼板である。ただし、複数のコア210は、電磁鋼板以外のコアを含んでもよい。例えば、ロータコア21は、予め定められた形状を持つ複数の鉄のコアによって構成されてもよく、軟磁性材料及び樹脂の混合物で構成されていてもよい。
【0025】
ロータコア21の各コア210は、例えば、0.2mmから0.5mmの厚みを持つ。ロータコア21のコア210は、軸方向に積層されている。
【0026】
複数の磁石挿入孔21aは、ロータコア21の周方向に等間隔で形成されている。本実施の形態では、5個の磁石挿入孔21aがロータコア21に設けられている。各磁石挿入孔21aは、少なくとも1つの永久磁石22が配置された磁石配置部21cと、永久磁石22の長手方向において磁石配置部21cに連通する2つの空隙21dとを含む。
【0027】
シャフト挿入孔21bは、ロータコア21の中央部に設けられている。シャフト挿入孔21bは、軸方向にロータコア21を貫通している。シャフト挿入孔21bに、シャフト23が配置されている。
【0028】
ロータ2は、コンシクエントポール型ロータである。すなわち、ロータ2は、各永久磁石22によって形成される第1の磁極と、互いに隣接する2つの磁石挿入孔21aの間のロータコア21の一部によって形成される疑似磁極である第2の磁極とを持つ。すなわち、第2の磁極は、ロータコア21の周方向において各磁石挿入孔21aに隣接するロータコア21の一部によって形成される疑似磁極である。
【0029】
図4に示されるように、ロータ2は、複数の第1の磁極領域N1と、複数の第2の磁極領域S1とを有する。各第1の磁極領域N1は、xy平面において、永久磁石22の少なくとも一部及び磁石挿入孔21aの少なくとも一部を含む領域である。具体的には、各第1の磁極領域N1は、xy平面において、径方向における内側に面する磁石挿入孔21aの内壁211aに接触する永久磁石22の表面22aの両端とロータ2の回転中心とを通る2直線の間の領域である。各第2の磁極領域S1は、xy平面において、互いに隣接する2つの磁石挿入孔21aの各々の一端とロータ2の回転中心とを通る2直線の間の領域である。すなわち、各第2の磁極領域S1は、磁石挿入孔21a及び永久磁石22を含まない領域である。
【0030】
各第1の磁極領域N1と各第2の磁極領域S1との間の領域は、極間領域である。
【0031】
各永久磁石22は、ロータ2の第1の磁極としてのN極を形成する。ロータコア21の周方向において各磁石挿入孔21aに隣接するロータコア21の一部は、ロータ2の疑似磁極である第2の磁極としてのS極を形成する。この場合、各第1の磁極領域N1は、第1の磁極(本実施の形態では、ステータ3に対してN極の役目をする磁極)として機能し、各第2の磁極領域S1は、第2の磁極(本実施の形態では、ステータ3に対してS極の役目をする疑似磁極)として機能する。言い換えると、各第1の磁極領域N1は第1の極性として機能し、各第2の磁極領域S1は第1の極性とは異なる第2の極性として機能する。
【0032】
永久磁石22の数は、ロータ2の磁極の数n(nは4以上の偶数)の半分である。ロータ2の磁極の数nは、ステータ3に対してN極として機能する磁極と、ステータ3に対してS極として機能する磁極の数との合計数である。ロータ2のN極及びS極は、ロータ2の周方向に交互に位置している。本実施の形態では、n=10である。
【0033】
シャフト23は、例えば、非磁性部材24でロータコア21に固定されている。非磁性部材24は、シャフト挿入孔21bに配置されている。非磁性部材24は、シャフト23をロータコア21に連結する。
【0034】
非磁性部材24は、例えば、オーステナイト系ステンレス、アルミニウム、不飽和ポリエステル樹脂(Bulk Molding Compound:BMC)、ポリブチレンテレフタレート(PolyButyleneTerephthalate:PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PolyPhenylene Sulfide:PPS)、液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer:LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PolyEthylene Terephthalate:PET)といった非磁性材料で作られている。
【0035】
非磁性部材24は、例えば、樹脂である。この場合、非磁性部材24は、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(BMC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)といった非磁性樹脂で作られている。
【0036】
各永久磁石22は、例えば、平板状の永久磁石である。各永久磁石22は、例えば、ネオジム又はサマリウムを含む希土類磁石である。永久磁石22は、鉄を含むフェライト磁石でもよい。永久磁石22の種類は、本実施の形態の例に限られず、他の材料によって永久磁石22が形成されていてもよい。
【0037】
各磁石挿入孔21a内の永久磁石22は、径方向に磁化されており、これにより各永久磁石22からの磁束は、ステータ3に流入する。
【0038】
図5は、図2に示される電動機1の一部を示す図である。
図5において、3つの磁石挿入孔のうちの、真ん中の磁石挿入孔を「第1の磁石挿入孔211」と称し、右側の磁石挿入孔を「第2の磁石挿入孔212」と称し、左側の磁石挿入孔を「第3の磁石挿入孔213」と称する。すなわち、xy平面において、第2の磁石挿入孔212及び第3の磁石挿入孔213は、第1の磁石挿入孔211に隣接している。
【0039】
図4を参照して説明したように、図5に示されるロータコア21において、永久磁石22に接触している領域が、第1の磁極として機能する第1の磁極領域N1である。図5に示されるロータコア21において、第1の磁石挿入孔211と第2の磁石挿入孔212との間の領域が、疑似磁極である第2の磁極として機能する第2の磁極領域S1である。
【0040】
図5において、第1の磁石挿入孔211に対向するティースを「第1のティース311」と称し、第1のティース311の右側に位置するティースを「第2のティース312」と称し、第1のティース311の左側に位置するティースを「第3のティース313」と称する。すなわち、xy平面において、第2のティース312及び第3のティース313は、第1のティース311に隣接している。
【0041】
各ティース31bは、ロータコア21に面する先端面を有する。図5に示される例では、第1のティース311はロータコア21に面する先端面311aを有し、第2のティース312はロータコア21に面する先端面312aを有し、第3のティース313はロータコア21に面する先端面313aを有する。第1のティース311の先端面311aを「第1の先端面311a」とも称し、第2のティース312の先端面312aを「第2の先端面312a」とも称し、第3のティース313の先端面313aを「第3の先端面313a」とも称する。
【0042】
図5に示されるxy平面において、第1のティース311が延在する方向を「第1の径方向」と称し、第2のティース312が延在する方向を「第2の径方向」と称し、第3のティース313が延在する方向を「第3の径方向」と称する。
【0043】
xy平面において、第1の磁極の中心を示す磁極中心線C1は、永久磁石22の中心を通る。図5に示されるように、xy平面において、第1の磁極の磁極中心を通る磁極中心線C1と第1の径方向とが一致している。この場合、第1の磁石挿入孔211は、第1のティース311に対向している。
【0044】
各磁石挿入孔21aの2つの空隙21dのうちの1つは、第2のティース312に対向しており、他方は第3のティース313に対向している。
【0045】
第1の径方向における内側に面する第1の磁石挿入孔211の内壁211aは、第1の径方向における外側に面する永久磁石22の表面22aに接触している。
【0046】
幅M1は、xy平面において、永久磁石22の長手方向における表面22aの幅である。図5に示される例では、幅M1は、磁極中心線C1と直交する第1の方向における表面22aの幅である。
【0047】
幅W1は、xy平面において、第1の磁石挿入孔211の内壁211aのうちの、永久磁石22の表面22aに接触している部分の最大幅である。本実施の形態において、幅M1と幅W1の関係は、W1<M1である。
【0048】
幅W2は、xy平面において、第1の磁石挿入孔211から第2の磁石挿入孔212までの最小幅である。
【0049】
幅T1は、第1のティース311のうちの第1の先端面311aの、xy平面において第1の径方向と直交する第1の方向における幅である。上述のように、図5において、第1の方向は、磁極中心線C1と直交する方向でもある。
【0050】
幅T2は、第1の先端面311aから第2の先端面312aまでの第1の方向における幅である。幅T3は、第1の先端面311aから第3の先端面313aまでの第1の方向における幅である。本実施の形態では、T2=T3である。第2の先端面312aから第3の先端面313aまでの第1の方向における幅は、T2+T1+T3=T1+2×T2である。
【0051】
図5に示される例において、電動機1は、W2<W1<M1、且つT1<W1<T1+2×T2を満たす。
【0052】
第2のティース312に対向する空隙21dに関し、幅FB1は、xy平面において、第2の径方向と直交する第2の方向におけるその空隙21dの幅である。第2のティース312に対向する空隙21dに関し、幅FB2は、xy平面において、第2の径方向と直交する第2の方向におけるその空隙21dのうちの、第2の先端面312aに対向する部分の幅である。図5に示される例では、第2のティース312に対向する空隙21dに関し、幅FB1及び幅FB2の関係は、FB1>FB2である。
【0053】
同様に、第3のティース313に対向する空隙21dに関し、幅FB3は、xy平面において、第3の径方向と直交する第3の方向におけるその空隙21dの幅である。第3のティース313に対向する空隙21dに関し、幅FB4は、xy平面において、第3の径方向と直交する第3の方向におけるその空隙21dのうちの、第3の先端面313aに対向する部分の幅である。図5に示される例では、第3のティース313に対向する空隙21dに関し、幅FB3及び幅FB4の関係は、FB3>FB4である。
【0054】
本実施の形態では、第2のティース312に対向する空隙21dの幅FB1は、第3のティース313に対向する空隙21dの幅FB3と等しく、第2の先端面312aに対向する空隙21dの幅FB2は、第3の先端面313aに対向する空隙21dの幅FB4と等しい。
【0055】
図6は、図5に示される電動機1を示す図である。
図6に示される例において、電動機1は、θW2<θW1<θM1、且つθT1<θW1<θT1+2×θT2を満たす。
【0056】
角度θW2,θW1,θM1,θT1,θT2は、図5に示される幅W2,W1,M1,T1,T2にそれぞれ対応する角度を示す。
【0057】
具体的には、角度θW2は、xy平面において幅W2をなす2つの点(幅W2の両端)をそれぞれ通る2直線が、ロータ2の回転中心で交差する角度である。すなわち、角度θW2は、xy平面において幅W2の一端及びロータ2の回転中心を通る直線と幅W2の他端及びロータ2の回転中心を通る直線とがなす角度である。
【0058】
角度θW1は、xy平面において幅W1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、ロータ2の回転中心で交差する角度である。すなわち、角度θW1は、xy平面において幅W1の一端及びロータ2の回転中心を通る直線と幅W1の他端及びロータ2の回転中心を通る直線とがなす角度である。
【0059】
角度θM1は、xy平面において幅M1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、ロータ2の回転中心で交差する角度である。すなわち、角度θM1は、xy平面において幅M1の一端及びロータ2の回転中心を通る直線と幅M1の他端及びロータ2の回転中心を通る直線とがなす角度である。
【0060】
角度θT1は、xy平面において幅T1をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、ロータ2の回転中心で交差する角度である。すなわち、角度θT1は、xy平面において幅T1の一端及びロータ2の回転中心を通る直線と幅T1の他端及びロータ2の回転中心を通る直線とがなす角度である。
【0061】
角度θT2は、xy平面において幅T2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、ロータ2の回転中心で交差する角度である。すなわち、角度θT2は、xy平面において幅T2の一端及びロータ2の回転中心を通る直線と幅T2の他端及びロータ2の回転中心を通る直線とがなす角度である。
【0062】
同様に、角度θFB2は、図5に示される幅FB2に対応する角度を示す。具体的には、角度θFB2は、xy平面において幅FB2をなす2つの点をそれぞれ通る2直線が、ロータ2の回転中心で交差する角度である。すなわち、角度θFB2は、xy平面において幅FB2の一端及びロータ2の回転中心を通る直線と幅FB2の他端及びロータ2の回転中心を通る直線とがなす角度である。
【0063】
〈電動機1の利点〉
図7は、比較例に係る電動機1aを示す断面図である。
比較例に係る電動機1aでは、ロータ2aが、本実施の形態に係る電動機1のロータ2と異なる。具体的には、比較例に係る電動機1aのロータ2aは、コンシクエントポール型ロータではなく、通常のIPM(Interior Permanent Magnet)ロータである。すなわち、比較例に係る電動機1aのロータ2aでは、ステータ3に対して第1の磁極(例えば、N極)として機能する永久磁石22とステータ3に対して第2の磁極(例えば、S極)として機能する永久磁石22とが、周方向に交互に配列されている。
【0064】
通常、IPMロータにおいて、各永久磁石の長手方向の幅M1が大きいほど、永久磁石の磁力が増加し、ロータの出力が増加する。しかしながら、コンシクエントポール型ロータではない通常のロータでは、各永久磁石の長手方向の幅M1、具体的には、周方向における各永久磁石の幅は、最大でもL/n(L:ロータコアの円周、n:磁極数)に制限される。
【0065】
これに対して、本実施の形態に係る電動機1のロータ2は、図5に示されるように、W2<W1<M1を満たす。したがって、本実施の形態に係る電動機1のロータ2では、比較例に比べて、第1の磁極を形成する永久磁石22の幅M1を大きくすることができる。その結果、比較例に比べて少ない永久磁石22で、ロータ2の効率を改善することができる。
【0066】
本実施の形態に係る電動機1は、図5に示されるように、T1<W1を満たす。したがって、図5に示される例では、各永久磁石22から対象ティースである第1のティース311へ流れ込む有効磁束を増加させることができる。
【0067】
幅W1がT1+2×T2よりも大きい場合、永久磁石22からの磁束が対象ティースではないティースに流れ込み、漏れ磁束が増加する。幅W1がT1+2×T2よりも大きい場合、例えば、図5では、永久磁石22からの磁束が第2のティース312及び第3のティース313に流れ込み、漏れ磁束が増加する。本実施の形態に係る電動機1は、図5に示されるように、W1<T1+2×T2を満たす。したがって、図5に示される例では、対象ティースである第1のティース311に隣接する第2のティース312及び第3のティース313に流れ込む漏れ磁束を低減することができる。
【0068】
本実施の形態に係る電動機1は、W2<W1<M1、且つT1<W1<T1+2×T2を満たす。したがって、各永久磁石22から対象ティースへ流れ込む有効磁束を増加させ、対象ティースに隣接するティースに流れ込む漏れ磁束を低減することができる。
【0069】
幅FB1及び幅FB2の関係が、FB1>FB2である場合、第1の磁石挿入孔211に配置された永久磁石22から第2のティース312へ流れ込む漏れ磁束を低減することができる。したがって、各永久磁石22から対象ティースへ流れ込む有効磁束を増加させ、対象ティースに隣接するティースに流れ込む漏れ磁束を低減することができる。
【0070】
図8は、第1の先端面311aの幅T1に対する第2の先端面312aに対向する空隙21dの幅FB2の比率FB2/T1と電動機1に生じるコギングトルクとの関係を示すグラフである。
図8に示されるように、電動機1は、0.14<FB2/T1<0.34を満たすことが望ましい。この構成により、電動機1におけるコギングトルクを低減することできる。その結果、電動機1におけるコギングトルクによる振動及び騒音を低減することができる。
【0071】
図9は、第1の先端面311aの幅T1に対する第2の先端面312aに対向する空隙21dの幅FB2の比率FB2/T1とコギングトルクとの関係、及び第1の先端面311aの幅T1に対する第2の先端面312aに対向する空隙21dの幅FB2の比率FB2/T1と電動機1のトルクとの関係を示すグラフである。図9において、トルクの最大値を1.000とする。
図9に示されるように、電動機1は、0.165<FB2/T1<0.285を満たすことが望ましい。この構成により、電動機1の最大トルクを維持しながら、電動機1におけるコギングトルクを低減することできる。その結果、電動機1の最大トルクを維持しながら、電動機1におけるコギングトルクによる振動及び騒音を低減することができる。
【0072】
図9に示されるように、電動機1は、0.175<FB2/T1<0.24を満たすことがより望ましい。この構成により、電動機1の最大トルクの低下を抑えることができ、電動機1におけるコギングトルクを効果的に低減することできる。その結果、電動機1の最大トルクの低下を抑えることができ、電動機1におけるコギングトルクによる振動及び騒音を効果的に低減することができる。
【0073】
本実施の形態に係る電動機1は、図6に示されるように、θW2<θW1<θM1、且つθT1<θW1<θT1+2×θT2を満たす。したがって、図6に示される例では、各永久磁石22から対象ティースへ流れ込む有効磁束を増加させ、対象ティースである第1のティース311に隣接する第2のティース312及び第3のティース313に流れ込む漏れ磁束を低減することができる。
【0074】
図10は、幅T1に対応する角度θT1に対する幅FB2に対応する角度θFB2の比率θFB2/θT1とコギングトルクとの関係、及び幅T1に対応する角度θT1に対する幅FB2に対応する角度θFB2の比率θFB2/θT1と電動機1のトルクとの関係を示すグラフである。図10において、トルクの最大値を1.000とする。
図10に示されるように、電動機1は、0.14<θFB2/θT1<0.34を満たすことが望ましい。この構成により、電動機1におけるコギングトルクを低減することできる。その結果、電動機1におけるコギングトルクによる振動及び騒音を低減することができる。
【0075】
図10に示されるように、電動機1は、0.165<θFB2/θT1<0.285を満たすことが望ましい。この構成により、電動機1の最大トルクを維持しながら、電動機1におけるコギングトルクを低減することできる。その結果、電動機1の最大トルクを維持しながら、電動機1におけるコギングトルクによる振動及び騒音を低減することができる。
【0076】
図10に示されるように、電動機1は、0.175<θFB2/θT1<0.24を満たすことがより望ましい。この構成により、電動機1の最大トルクの低下を抑えることができ、電動機1におけるコギングトルクを効果的に低減することできる。その結果、電動機1の最大トルクの低下を抑えることができ、電動機1におけるコギングトルクによる振動及び騒音を効果的に低減することができる。
【0077】
実施の形態2.
図11は、実施の形態2に係るファン60の構造を概略的に示す図である。
ファン60は、羽根61と、電動機62とを有する。ファン60は、送風機とも称する。電動機62は、実施の形態1に係る電動機1である。羽根61は、電動機62のシャフトに固定されている。電動機62は、羽根61を駆動する。具体的には、電動機62は、羽根61を回転させる。電動機62が駆動すると、羽根61が回転し、気流が生成される。これにより、ファン60は送風することができる。
【0078】
実施の形態2に係るファン60では、電動機62に実施の形態1で説明した電動機1が適用されるので、実施の形態1で説明した利点と同じ利点を得ることができる。さらに、ファン60の効率の低下を防ぐことができる。
【0079】
実施の形態3.
実施の形態3に係る空気調和機50(冷凍空調装置又は冷凍サイクル装置とも称する)について説明する。
図12は、実施の形態3に係る空気調和機50の構成を概略的に示す図である。
図13は、空気調和機50の送風機としての室外機53内の主要な構成要素を概略的に示す図である。
【0080】
実施の形態3に係る空気調和機50は、送風機(第1の送風機)としての室内機51と、冷媒配管52と、室内機51に接続された送風機(第2の送風機)としての室外機53とを備える。例えば、室外機53は、冷媒配管52を通して室内機51に接続されている。
【0081】
室内機51は、電動機51a(例えば、実施の形態1に係る電動機1)と、電動機51aによって駆動されることにより、送風する送風部51bと、電動機51a及び送風部51bを覆うハウジング51cとを有する。送風部51bは、例えば、電動機51aによって駆動される羽根51dを有する。例えば、羽根51dは、電動機51aのシャフトに固定されており、気流を生成する。
【0082】
室外機53は、電動機53a(例えば、実施の形態1に係る電動機1)と、送風部53bと、圧縮機54と、熱交換器(図示しない)と、送風部53b、圧縮機54、及び熱交換器を覆うハウジング53cとを有する。送風部53bは、電動機53aによって駆動されることにより、送風する。送風部53bは、例えば、電動機53aによって駆動される羽根53dを有する。例えば、羽根53dは、電動機53aのシャフトに固定されており、気流を生成する。圧縮機54は、電動機54a(例えば、実施の形態1に係る電動機1)と、電動機54aによって駆動される圧縮機構54b(例えば、冷媒回路)と、電動機54a及び圧縮機構54bを覆うハウジング54cとを有する。
【0083】
空気調和機50において、室内機51及び室外機53の少なくとも1つは、実施の形態1で説明した電動機1を有する。すなわち、室内機51、室外機53、又はこれらの両方は、実施の形態1で説明した電動機1を有する。具体的には、送風部の駆動源として、電動機51a及び53aの少なくとも一方に、実施の形態1で説明した電動機1が適用される。すなわち、室内機51、室外機53、又はこれらの両方に、実施の形態1で説明した電動機1が適用される。圧縮機54の電動機54aに、実施の形態1で説明した電動機1を適用してもよい。
【0084】
空気調和機50は、例えば、室内機51から冷たい空気を送風する冷房運転、温かい空気を送風する暖房運転等の空調を行うことができる。室内機51において、電動機51aは、送風部51bを駆動するための駆動源である。送風部51bは、調整された空気を送風することができる。
【0085】
図13に示されるように、室外機53において、電動機53aは、例えば、ねじ53eによって室外機53のハウジング53cに固定されている。
【0086】
実施の形態3に係る空気調和機50では、電動機51a及び53aの少なくとも一方に、実施の形態1で説明した電動機1が適用されるので、実施の形態1で説明した利点と同じ利点を得ることができる。その結果、空気調和機50の効率の低下を防ぐことができる。
【0087】
さらに、送風機(例えば、室内機51)の駆動源として、実施の形態1に係る電動機1が用いられる場合、実施の形態1で説明した利点と同じ利点を得ることができる。その結果、送風機の効率の低下を防ぐことができる。実施の形態1に係る電動機1と電動機1によって駆動される羽根(例えば、羽根51d又は53d)とを有する送風機は、送風する装置として単独で用いることができる。この送風機は、空気調和機50以外の機器にも適用可能である。
【0088】
さらに、圧縮機54の駆動源として、実施の形態1に係る電動機1が用いられる場合、実施の形態1で説明した利点と同じ利点を得ることができる。その結果、圧縮機54の効率の低下を防ぐことができる。
【0089】
実施の形態1で説明した電動機1は、空気調和機50以外に、換気扇、家電機器、又は工作機など、駆動源を有する機器に搭載できる。
【0090】
以上に説明した各実施の形態における特徴は、互いに適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0091】
1,51a,53a,62 電動機、 2 ロータ、 3 ステータ、 21 ロータコア、 21a 磁石挿入孔、 21b シャフト挿入孔、 22 永久磁石、 24 非磁性部材、 50 空気調和機、 51 室内機、 53 室外機、 60 ファン、 61 羽根、 210 コア、 311 第1のティース、 312 第2のティース、 313 第3のティース、 311a,312a,313a 先端面、 N1 第1の磁極領域、 S1 第2の磁極領域。
図1
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図13