(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】支持構造体を有する3Dモデルに品質要件を課すこと
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240924BHJP
B29C 64/40 20170101ALI20240924BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240924BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240924BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240924BHJP
B29C 64/135 20170101ALI20240924BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/40
B33Y50/00
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/135
(21)【出願番号】P 2022511111
(86)(22)【出願日】2020-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2020071377
(87)【国際公開番号】W WO2021032425
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-07-28
(32)【優先日】2019-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515304558
【氏名又は名称】デンツプライ・シロナ・インコーポレイテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519410367
【氏名又は名称】シロナ・デンタル・システムズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】タナカ、ジーモン
(72)【発明者】
【氏名】シュタール、クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バイス、ダニエル
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007127(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0368222(US,A1)
【文献】特開2012-096426(JP,A)
【文献】特開2017-094495(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0136709(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/386
B29C 64/40
B33Y 50/00
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B29C 64/135
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3Dモデル(1)に対応する3Dオブジェクトを保持するためのプラットフォーム(3)を備える付加製造装置によって構築される支持構造体(2)を含む前記3Dモデル(1)に品質要件を課す方法であって、
前記プラットフォーム(3)に対する前記3Dモデル(1)の表面幾何学形状及び向きを定義するステップ、ここにおいて、前記表面幾何学形状が表面セグメントを含む、ステップを備える方法において、
前記支持構造体(2)のその後の除去のための後処理に対する品質度(L;H)を前記表面セグメントそれぞれに付与するステップと、
前記定義された向き、前記表面幾何学形状、及び付与された前記品質度(L;H)に基づいて、前記支持構造体(2)が追加され得る前記表面セグメント上の位置を計算するステップと、
前記計算された位置及び付与された前記品質度(L;H)に基づいて、前記支持構造体(2)を前記3Dモデル(1)に追加するステップと
を更に備え
、
前記計算するステップにおいて、i番目の表面セグメントには、前記i番目の表面セグメントの、支持構造体(2)により支持される必要性の尺度を示す量s
i
が割り当てられ、s
i
の値が大きいほど支持の必要性が強いことを示すことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ステップが、前記3Dモデル(1)の特徴を認識することが可能なニューラルネットワークを備えるコンピュータアルゴリズムにより実行され、前記ステップが、前記認識された特徴に基づいて更に実行されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付与するステップにおいて、ユーザが、前記3Dモデル(1)のディスプレイ上で、1つ又は複数の表面セグメントそれぞれに所望の品質度(L;H)を手動でマークすることができることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記品質度(L;H)が、少なくとも低品質度(L)及び高品質度(H)を備えることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記計算された位置が高品質度(H)を付与された表面セグメントに該当する前記支持構造体(2)は、前記3Dモデル(1)に追加されないことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記追加するステップにおいて、前記計算された位置が高品質度(H)を付与された表面セグメントに該当する前記支持構造体(2)は、低品質度(L)を付与された近くの表面セグメントに変位されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記計算
するステップにおいて、最初に、前記3Dモデル(1)のすべての極小値(m)の位置を求め、
前記追加するステップにおいて、前記極小値(m)の前記位置に対応する前記支持構造体(2)が、前記付与された品質度(L;H)にかかわらず前記3Dモデル(1)に追加されることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記量s
iが、構築方向に対する前記i番目の表面セグメントの傾斜の関数であるスカラー量であることを特徴とする、請求項
1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
法線ベクトルが前記構築方向に正の成分を有する表面セグメントに該当する位置において、前記3Dモデル(1)に支持構造体(2)が追加されないことを特徴とする、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記計算するステップにおいて、
前記i番目の表面セグメントへの前記量s
iの前記割り当ては、その位置に支持構造体(2)が追加された表面セグメントについてs
i=c
1となるように、かつ、隣接する表面セグメントのs
i量が
関数f(r
→)により低減されるように更新され、r
→は、前記支持構造体(2)が追加された前記表面セグメントから前記隣接する表面セグメントまでの3次元距離ベクトルであり、r
→が構築方向に成分を有さない場合、f(r
→)は1であり、
前記表面セグメントの前記更新されたs
i量が、昇順の前記付与された品質度に対応するそれぞれのグループに降順でグループ化され、
最低品質度(L)のグループから開始して最高品質度(H)のグループまで、最も大きい更新されたs
i量を有する表面セグメントに支持構造体(2)が追加され、
各グループ内の前記更新された最も高いs
i量が、前記グループにそれぞれ関連付けられた所定のレベルc
3を下回るまで、手順が繰り返され、各c
3は定数である、
ことを特徴とする、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記関数f(r
→)が、r
→の大きさが増大するにつれて漸近的に1に近づくことを特徴とする、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記関数f(r
→)が、
【数1】
により定義され、ここでc
2が正の定数であることを特徴とする、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
c
1=0であることを特徴とする、請求項
11又は12に記載の方法。
【請求項14】
CAD/CAMモジュールに請求項1~
13のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させるためのコンピュータ可読コードを備えるプログラム。
【請求項15】
請求項
14に記載のプログラムを記憶するコンピュータ可読記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付加製造方法及び装置に関する。本発明は、より具体的には、支持構造体を含む3Dモデルを付加製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
付加製造では、3Dオブジェクトが、UV放射の影響を受けて選択的に硬化される液体印刷媒体、すなわち液体光硬化性樹脂の光ベースの硬化により層ごとに印刷される。付加製造の一般に知られている変形形態では、3Dオブジェクトは、好ましくは、プラットフォームによって、バットに充填された液体光硬化性材料から上下逆さまに引き出される。付加製造の他の変形形態も当業者には既知である。
【0003】
3D印刷中、十分な支持構造体を3Dオブジェクトに取り付けなければならない。支持構造体を取り付けなければならない3Dオブジェクトの表面の場所は、3D印刷される3Dオブジェクトの幾何学形状及びプラットフォームに対する3Dオブジェクトの向きに依存する。
【0004】
所与の幾何学形状のどの点が3Dオブジェクトの所与の向きのための支持構造体を必要とするかは、当該技術分野では一般に知られている。例えば、US2015/0151492A1は、付加製造される3Dオブジェクトのための支持構造体を生成する方法を開示している。
【0005】
3D印刷、洗浄、3Dオブジェクトの熱硬化及び/又は光化学硬化の後、支持構造体を機械的に除去しなければならない。除去プロセスは、時間がかかり、例えば回転ツールで仕上げるときに、3Dオブジェクトの幾何学形状を変化させることになる可能性がある。形状精度に対する品質要件が高い歯科修復物、ドリル加工テンプレート、歯科模型、及び同様のものなどの歯科構成要素の場合、機械的後処理の結果が重要になる可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、先行技術の欠点を克服し、付加製造装置によって構築される支持構造体を含む3Dモデルに品質要件を課す方法を提供することである。
【0007】
本目的は、請求項1に規定の方法により達成された。従属請求項は、更なる展開形態に関する。
【0008】
本発明は、3Dモデルに対応する3Dオブジェクトを保持するためのプラットフォームを備える付加製造装置によって構築される支持構造体を含む3Dモデルに品質要件を課す方法を提供する。本方法は、プラットフォームに対する3Dモデルの表面幾何学形状及び向きを定義するステップと、ここにおいて、表面幾何学形状は表面セグメントを含み、支持構造体のその後の除去のための後処理に対する品質度を表面セグメントそれぞれに付与する(attributing)ステップと、定義された向き、表面幾何学形状、及び付与された品質度に基づいて、支持構造体が追加され得る表面セグメント上の位置を計算するステップと、計算された位置及び付与された品質度に基づいて、支持構造体を3Dモデルに追加するステップと、を備えるものである。
【0009】
本発明の主要な有利な効果は、3D印刷される3Dオブジェクトの他の場所と比較して、機械的後処理から保護する必要性が増しているような場所において、支持構造体を回避する又は可能な限り低減することができるということである。それによって、機械的後処理に起因する表面アーチファクト、表面損傷、変形を、3Dモデルの損傷を受けやすい表面セグメントにおいて回避又は低減することができ、支持構造体の正確な除去のための手作業による余分な作業を費やす必要性をなくす又は可能な限り低減することができる。これによって、3D印刷されたオブジェクトの手作業による後処理に必要な時間も低減することができ、コストを節約することができる。
【0010】
本発明によれば、方法ステップは、コンピュータアルゴリズムにより完全に又は少なくとも部分的に実行される。コンピュータアルゴリズムは、好ましくは、付加製造装置によって構築される3Dモデルの特徴を認識することが可能なニューラルネットワークを備える。ステップは更に、好ましくは、認識された特徴に基づいて実行される。後処理に対して損傷を受けやすい表面セグメントを認識するために、ニューラルネットワークを実際の又はシミュレートされた3Dモデルで訓練することができる。コンピュータアルゴリズムを使用していても、付与ステップにおいて、ユーザは、任意選択的に、3Dモデルのディスプレイ上で、1つ又は複数の表面セグメントそれぞれに所望の品質度を手動でマークすることが可能であり、又は選択的に付与することができる品質度の数を定義することも可能である。
【0011】
本発明によれば、品質度は、少なくとも低品質度及び高品質度を備える。低品質度は、それぞれの表面セグメントが後処理において保護する価値がないことを示す。高品質度は、それぞれの表面セグメントが後処理において保護する価値があることを示す。結果を改善するために、1つ又は複数の中間の品質度を追加的に用いてもよい。
【0012】
本発明によれば、具体的には計算ステップにおいて、各表面セグメントに対して、その表面セグメントの、支持構造体により支持される必要性の尺度を示す量が任意選択的に割り当てられる。この量の値が大きいほど、支持の必要性が強いことを示す。この量は、好ましくは、構築方向に対する表面セグメントの傾斜の関数であるスカラー量である。スカラー量は、好ましくは、表面セグメントの法線ベクトルと構築方向と反対の単位ベクトルとの内積に等しい。好ましくは、法線ベクトルが構築方向に正の成分を有する表面セグメントに該当する位置において、支持構造体は3Dモデルに追加されない。これは、構築プラットフォームから離れるほうを向く表面セグメントが、支持構造体の取り付けに好適でないことを意味する。本発明によれば、計算ステップにおいて、任意選択的に、最初に、3Dモデルのすべての極小値の位置が構築方向に対して求められ、極小値の位置に対応する支持構造体が、付与された品質度にかかわらず3Dモデルに追加される。これによって、印刷ミスのリスクを防止又は可能な限り低減することができる。本発明によれば、具体的には計算ステップにおいて、表面セグメントへの量の割り当ては、量が、その位置に支持構造体が追加された表面セグメントのための第1の定数に等しくなるように、かつ隣接する表面セグメントの量が、支持構造体が追加された表面セグメントから隣接する表面セグメントまでの3次元距離ベクトルに依存する関数である係数により低減されるように、任意選択的に更新され、ここにおいて、3次元距離ベクトルが構築方向に正の成分を有さない場合、関数は1である。この関数は、好ましくは、3次元距離ベクトルの大きさが増大するにつれて漸近的に1に近づく。その後、表面セグメントの更新された量が、昇順の付与された品質度に対応するグループに降順でグループ化される。最後に、最低品質度のグループから開始して最高品質度のグループまで、最も大きい更新された量を有する表面セグメントに支持構造体が追加される。更新された最も高い量が、グループにそれぞれ関連付けられた所定のレベルを下回るまで、各グループについてステップが繰り返される。
【0013】
本発明によれば、計算された位置が高品質度を付与された表面セグメントに該当する支持構造体は、任意選択的に3Dモデルに追加されない。これによって、後処理に対して損傷を受けやすい表面セグメントを保護することができる。
【0014】
本発明によれば、計算された位置が高品質度を付与された表面セグメントに該当する支持構造体は、代替的には任意選択的に、低品質度を付与された近くの表面セグメントに変位される。これによって、後処理に対して損傷を受けやすい表面セグメントを保護することができる。
【0015】
本発明によれば、3Dモデルの表面幾何学形状は、好ましくは三角測量により表される。このような三角測量は計算に便利である。代替的には、異なる幾何学形状を有する他のタイプのメッシュを使用してもよい。
【0016】
本発明はまた、CADモジュールに方法ステップを実行させるためのコンピュータ可読コードを有するコンピュータアルゴリズムを提供する。本発明はまた、コンピュータアルゴリズムを記憶するコンピュータ可読記憶装置を提供する。
【0017】
下記の説明において、例示的な実施形態を使用し、図面を参照することによって、本発明の更なる態様及び有利な効果についてより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】3Dモデル上の表面セグメントに追加された支持構造体を示す、
図2の細部Aの拡大図である。
【0019】
図面に示される参照番号は、以下に挙げる要素を表し、例示的な実施形態の下記の説明において参照される。
1. 3Dモデル/3Dオブジェクト
2. 支持構造体
3. プラットフォーム
L;H: 品質度
L: 低品質度
H: 高品質度
m: 極小値
i: 整数
s
i: スカラー量
【数1】
(以下、便宜上、n
i
→と表記する): i番目の表面セグメントの法線ベクトル
【数2】
(以下、便宜上、e
-z
→と表記する): プラットフォームに向けられた垂直単位ベクトル
z: 垂直方向
c
1、c
2、c
3: 定数
【数3】
(以下、便宜上、f(r
→)と表記する): 関数(係数)
【数4】
(以下、便宜上、r
→と表記する): 3次元距離ベクトル
r: r
→の大きさ
【0020】
図2は、本発明の一実施形態による3Dオブジェクト(1)の一部を示す。3Dオブジェクト(1)は、付加製造装置で部分的に構築される。構築方向はz方向である。付加製造装置は、3Dオブジェクト(1)を保持するためのプラットフォーム(3)を有する。3Dオブジェクト(1)は、プラットフォーム(3)に取り付けられた支持構造体(2)を含む。3Dオブジェクト(1)は、本発明の方法により品質要件が課された3Dモデル(1)に対応する。方法ステップは、コンピュータアルゴリズムにより実行される。コンピュータアルゴリズムは、好ましくは、3Dモデルの特徴を認識することが可能なニューラルネットワークを備える。方法ステップは、これらの認識された特徴に基づいて更に実行される。方法ステップを以下に説明する。定義ステップにおいて、3Dモデル(1)の表面幾何学形状及び向きがプラットフォーム(3)に対して定義される。表面幾何学形状は、複数の表面セグメントを含む。3Dモデル(1)の表面幾何学形状は、表面セグメントが三角形(図示せず)となるように三角測量により表される。他の表現を代替的に使用してもよい。付与ステップにおいて、支持構造体(2)のその後の除去中の後処理に対する損傷の受けやすさ及び保護の必要性を示す品質度(L;H)が表面セグメントそれぞれに付与される。品質度(L;H)は、好ましくは、少なくとも低品質度(L)及び高品質度(H)を備える。更なる品質度を任意選択的に追加してもよい。付与ステップにおいて、ユーザは、3Dモデル(1)のディスプレイ上で、1つ又は複数の表面セグメントそれぞれに所望の品質度(L;H)をマークすることが可能である。代替的には、付与ステップは、認識された特徴に基づいて、ユーザの介入なしに、コンピュータアルゴリズムによって完全に実行されることができる。
図2の例示的な実施形態に示すように、3Dモデル(1)の表面セグメント上の太線は、高品質度が付与されていることを示す。3Dモデル(1)の他の表面セグメントは、低品質度が付与されていることを示す。計算ステップにおいて、定義された向き、表面幾何学形状、及び付与された品質度(L;H)に基づいて、支持構造体(2)が追加され得る表面セグメント上の位置が計算される。計算ステップについて、
図2の細部Aの拡大図である
図1を用いてより詳細に説明する。計算ステップにおいて、
図1に示すように、i番目の表面セグメントに量s
iが割り当てられ、これはi番目の表面セグメントの、支持構造体(2)により支持される必要性の尺度を示す。iは整数を表す。s
iの値が大きいほど、支持の必要性が強いことを示す。量s
iは、構築方向に対するi番目の表面セグメントの傾斜の関数であるスカラー量である。具体的には、s
i=n
i
→・e
-z
→であり、ここで、「・」は内積を表し、n
i
→はi番目の表面セグメントの法線ベクトルを表し、e
-z
→はプラットフォーム(3)に向けられた垂直単位ベクトルを表す。s
i<0を有する、すなわちその法線ベクトルが構築方向に正の成分を有する表面セグメントに該当する位置において、3Dモデル(1)には支持構造体(2)は追加されない。計算ステップにおいて、
図2に示すように、最初に、3Dモデル(1)のすべての極小値(m)の位置を求める。追加ステップにおいて、支持構造体(2)は、計算された位置及び付与された品質度(L;H)に基づいて3Dモデル(1)に追加される。追加ステップにおいて、最初に、極小値(m)の位置に対応する支持構造体(2)が、付与された品質度(L;H)の値に関わらず3Dモデル(1)に追加される。次に、計算ステップにおいて、i番目の表面セグメントへの量s
iの割り当ては、その位置に支持構造体(2)が追加された表面セグメントについてs
i=c
1となるように、かつ隣接する表面セグメントのs
i量が、係数、すなわち関数f(r
→)により低減されるように、更新され(再割り当てされ)、ここにおいて、r
→は、支持構造体(2)が追加された表面セグメントから隣接する表面セグメントまでの3次元距離ベクトルである。関数f(r
→)は、r
→の大きさが増大するにつれて漸近的に1に近づく。
図1の点付き領域は、構築方向における係数f(r
→)の範囲を示す。
【0021】
例えば、f(r→)は、好ましくは、関数1-Exp[-r2/c2
2]により定義される。ここで、rはr→の大きさである。定数c2は、正規化のための正の定数である。また、r→が構築方向に正の成分を有さない場合、f(r→)は1である。波括弧は、構築方向における係数f(r→)の適用範囲の少なくとも一部を示す。定数c1は、好ましくは0に等しい。次に、計算ステップにおいて、表面セグメントの更新されたsi量は、付与された品質度に対応するグループに降順にグループ化される。そして、グループは更に昇順に並べられる。次に、最低品質度(L)のグループから開始して最高品質度(H)のグループまで、最も大きい更新されたsi量を有する表面セグメントに支持構造体(2)が追加される。この手順は、更新された最も高いsi量が、グループにそれぞれ関連付けられた所定のレベルc3を下回るまで、周期的に繰り返される。c3は定数であり、3Dモデル(1)がどの程度強く支持されるかを定義する。より高い品質度が付与された表面セグメント上の支持構造体(2)のより強い抑制は、より高い品質度に対してより高い定数c3を選択することによって達成することができる。更に、追加される支持構造体(2)の総数は、パラメータc2によって影響を受ける可能性がある。
【0022】
代替の実施形態では、計算された位置が高品質度(H)を付与された表面セグメントに該当する支持構造体(2)は、3Dモデル(1)に追加されない。
【0023】
別の代替の実施形態では、計算された位置が高品質度(H)を付与された表面セグメントに該当する支持構造体(2)は、低品質度(L)を付与された近くの表面セグメントに変位される。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1] 3Dモデル(1)に対応する3Dオブジェクトを保持するためのプラットフォーム(3)を備える付加製造装置によって構築される支持構造体(2)を含む前記3Dモデル(1)に品質要件を課す方法であって、
前記プラットフォーム(3)に対する前記3Dモデル(1)の表面幾何学形状及び向きを定義するステップ、ここにおいて、前記表面幾何学形状が表面セグメントを含む、ステップを備える方法において、
前記支持構造体(2)のその後の除去のための後処理に対する品質度(L;H)を前記表面セグメントそれぞれに付与するステップと、
前記定義された向き、前記表面幾何学形状、及び付与された前記品質度(L;H)に基づいて、前記支持構造体(2)が追加され得る前記表面セグメント上の位置を計算するステップと、
前記計算された位置及び付与された前記品質度(L;H)に基づいて、前記支持構造体(2)を前記3Dモデル(1)に追加するステップと
を更に備えることを特徴とする、方法。
[2] 前記ステップが、前記3Dモデル(1)の特徴を認識することが可能なニューラルネットワークを備えるコンピュータアルゴリズムにより実行され、前記ステップが、前記認識された特徴に基づいて更に実行されることを特徴とする、[1]に記載の方法。
[3] 前記付与するステップにおいて、ユーザが、前記3Dモデル(1)のディスプレイ上で、1つ又は複数の表面セグメントそれぞれに所望の品質度(L;H)を手動でマークすることができることを特徴とする、[1]又は[2]に記載の方法。
[4] 前記品質度(L;H)が、少なくとも低品質度(L)及び高品質度(H)を備えることを特徴とする、[1]~[3]のいずれか一項に記載の方法。
[5] 前記計算された位置が高品質度(H)を付与された表面セグメントに該当する前記支持構造体(2)は、前記3Dモデル(1)に追加されないことを特徴とする、[4]に記載の方法。
[6] 前記追加するステップにおいて、前記計算された位置が高品質度(H)を付与された表面セグメントに該当する前記支持構造体(2)は、低品質度(L)を付与された近くの表面セグメントに変位されることを特徴とする、[4]に記載の方法。
[7] 前記計算ステップにおいて、最初に、前記3Dモデル(1)のすべての極小値(m)の位置を求め、
前記追加するステップにおいて、前記極小値(m)の前記位置に対応する前記支持構造体(2)が、前記付与された品質度(L;H)にかかわらず前記3Dモデル(1)に追加されることを特徴とする、[1]~[4]のいずれか一項に記載の方法。
[8] 前記計算するステップにおいて、i番目の表面セグメントには、前記i番目の表面セグメントの、支持構造体(2)により支持される必要性の尺度を示す量s
i
が割り当てられ、s
i
の値が大きいほど支持の必要性が強いことを示すことを特徴とする、[1]~[7]のいずれか一項に記載の方法。
[9] 前記量s
i
が、構築方向に対する前記i番目の表面セグメントの傾斜の関数であるスカラー量であることを特徴とする、[8]に記載の方法。
[10] 法線ベクトルが前記構築方向に正の成分を有する表面セグメントに該当する位置において、前記3Dモデル(1)に支持構造体(2)が追加されないことを特徴とする、[9]に記載の方法。
[11] 前記計算するステップにおいて、
前記i番目の表面セグメントへの前記量s
i
の前記割り当ては、その位置に支持構造体(2)が追加された表面セグメントについてs
i
=c
1
となるように、かつ、隣接する表面セグメントのs
i
量が係数f(r
→
)により低減されるように更新され、r
→
は、前記支持構造体(2)が追加された前記表面セグメントから前記隣接する表面セグメントまでの3次元距離ベクトルであり、r
→
が構築方向に成分を有さない場合、f(r
→
)は1であり、
前記表面セグメントの前記更新されたs
i
量が、昇順の前記付与された品質度に対応するそれぞれのグループに降順でグループ化され、
最低品質度(L)のグループから開始して最高品質度(H)のグループまで、最も大きい更新されたs
i
量を有する表面セグメントに支持構造体(2)が追加され、
各グループ内の前記更新された最も高いs
i
量が、前記グループにそれぞれ関連付けられた所定のレベルc
3
を下回るまで、手順が繰り返され、各c
3
は定数である、
ことを特徴とする、[10]に記載の方法。
[12] 前記関数f(r
→
)が、r
→
の大きさが増大するにつれて漸近的に1に近づくことを特徴とする、[11]に記載の方法。
[13] 前記関数f(r
→
)が、
【数5】
により定義され、ここでc
2
が正の定数であることを特徴とする、[12]に記載の方法。
[14] c
1
=0であることを特徴とする、[12]~[13]のいずれか一項に記載の方法。
[15] CAD/CAMモジュールに[1]~[14]のいずれか一項に記載の方法のステップを実行させるためのコンピュータ可読コードを備えるプログラム。
[16] [15]に記載のプログラムを記憶するコンピュータ可読記憶装置。