(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】光学測定装置及び水質分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20240924BHJP
G01N 21/33 20060101ALI20240924BHJP
G01N 21/3577 20140101ALI20240924BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
G01N21/47 Z
G01N21/33
G01N21/3577
G01N33/18 A
(21)【出願番号】P 2022522571
(86)(22)【出願日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 JP2021015336
(87)【国際公開番号】W WO2021229980
(87)【国際公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020086213
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592187534
【氏名又は名称】株式会社 堀場アドバンスドテクノ
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】小林 一星
(72)【発明者】
【氏名】坂本 啓伍
(72)【発明者】
【氏名】原 康平
(72)【発明者】
【氏名】有本 公彦
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-232790(JP,A)
【文献】特表2011-513717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0077178(US,A1)
【文献】米国特許第3880526(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/01
G01N 21/17 - G01N 21/61
G01N 33/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料によって散乱された散乱光を測定することによって液体試料の濁度を測定する光学測定装置であって、
前記液体試料を収容するセルと、
前記セル内の前記液体試料に透過光測定用の光を照射する透過光測定用光源と、
前記セル内の前記液体試料に散乱光測定用の光を照射する散乱光測定用光源と、
前記透過光測定用の光の透過光及び前記散乱光測定用の光の散乱光を検出する光検出器と、
前記セルに設けられ、前記透過光測定用の光を前記セル内で反射して前記光検出器に向かわせる反射ミラーとを備え、
前記散乱光測定用光源は、前記反射ミラーによって反射されて前記光検出器に向かう前記透過光測定用の光の光路である反射後光路に向けて当該反射後光路に所定の角度で交わるように前記散乱光測定用の光を射出する、光学測定装置。
【請求項2】
前記所定の角度が、90度又は60度である、請求項1記載の光学測定装置。
【請求項3】
前記透過光を測定することによって、前記液体試料の色度を測定する、請求項1又は2記載の光学測定装置。
【請求項4】
前記透過光測定用光源、前記散乱光測定用光源及び前記光検出器は、前記セルに設けられている、請求項1乃至3の何れかに一項に記載の光学測定装置。
【請求項5】
前記散乱光測定用光源は、前記セルにおいて前記反射後光路側に設けられている、請求項4に記載の光学測定装置。
【請求項6】
前記セルの内面において前記散乱光測定用光源と前記光検出器との間に、前記散乱光測定用光源から射出される前記散乱光測定用の光が前記光検出器に直接入射することを抑制する突起部が形成されている、請求項1乃至5の何れか一項に記載の光学測定装置。
【請求項7】
前記セルの下端部に前記液体試料を導入する導入口が形成され、前記セルの上端部前記液体試料を導出する導出口が形成されており、
前記散乱光測定用光源及び前記光検出器が前記導出口を挟むように配置されており、
前記突起部が、前記導出口と前記散乱光測定用光源との間に形成されている、請求項6に記載の光学測定装置。
【請求項8】
前記セルの内面のうち前記散乱光測定用光源と対向する面が、前記散乱光測定用の光を前記光検出器に向けて反射しないように構成されている、請求項1乃至7の何れか一項に記載の光学測定装置。
【請求項9】
前記散乱光測定用光源から射出される前記散乱光測定用の光を前記反射後光路上に集光させる集光レンズをさらに備えている、請求項1乃至8の何れか一項に記載の光学測定装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか一項に記載の光学測定装置を備えた水質分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料の色度及び濁度を測定する光学測定装置及び当該光学測定装置を備えた水質分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
色度及び濁度を測定する光学測定装置(以下、色度濁度測定装置)としては、特許文献1に示すように、液体試料を透過した透過光を検出して色度及び濁度を測定するものが知られている。
【0003】
この色度濁度測定装置を、例えば水道水として供給される浄水や工場からの排水の水質管理に用いる場合等には、色度及び濁度だけでなく、水質規制の観点から残留塩素やpH、導電率等の他の水質指標も同時に測定することが求められる場合がある。
【0004】
このため、色度濁度測定装置を他の水質指標を測定する複数の光学測定装置とともに使用しやすくするために、色度濁度測定装置を小型化することが求められている。ここで、色度濁度測定装置を小型化するためには、液体試料を収容するセルを小さくすることが考えられる。
【0005】
しかしながら、セルを小さくしてしまうと光源及び光検出器の間の光路長が短くなってしまう。そうすると、色度及び濁度の変動に対する透過光強度の変化が小さくなり、分解能が悪くなってしまい、測定精度が低下するという問題がある。
【0006】
また、各国の水質基準に適合させるためには、濁度を所定の角度における散乱光で測定することが求められる場合があり、上記の色度濁度測定装置では、水質基準に適合した測定を行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような問題に鑑みてなされたものであり、小型化を図るとともに各国の水質基準に基づいた濁度測定方式を採用しながらも、色度や濁度を精度良く測定することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明に係る光学測定装置は、液体試料によって散乱された散乱光を測定することによって前記液体試料の濁度を測定する光学測定装置であって、前記液体試料を収容するセルと、前記セル内の前記液体試料に透過光測定用の光を照射する透過光測定用光源と、前記セル内の前記液体試料に散乱光測定用の光を照射する散乱光測定用光源と、前記透過光測定用の光の透過光及び前記散乱光測定用の光の散乱光を検出する光検出器と、前記セルに設けられ、前記透過光測定用の光を前記セル内で反射して前記光検出器に向かわせる反射ミラーとを備え、前記散乱光測定用光源は、前記反射ミラーによって反射されて前記光検出器に向かう前記透過光測定用の光の光路である反射後光路に向けて当該反射後光路に所定の角度で交わるように前記散乱光測定用の光を射出することを特徴とする。
【0010】
このような光学測定装置であれば、透過光測定用光源から射出された透過光測定用の光を反射ミラーで反射して光検出器に向かわせているので、セルを小型化した場合であっても、セル内での透過光測定用の光の光路長を確保することができる。その結果、例えば水道水等の浄化された水の色度又は濁度についても透過光測定によって精度良く測定することができる。
また、散乱光測定用光源が、散乱光測定用の光を透過光測定用の光の反射後光路に向けて当該反射後光路に所定の角度で交わるように射出するので、光検出器は散乱光測定用の光の所定の角度での散乱光を検出することになる。ここで、散乱光測定用の光を反射後光路に向けて射出しているので、濁度測定地点と光検出器との距離を短くすることができる。その結果、液体試料によって散乱された所定角度の散乱光が減衰する前に光検出器で検出することができ、液体試料の濁度を精度良く測定することができる。
【0011】
光学測定装置全体としての小型化をより一層図るためには、前記透過光測定用光源、散乱光測定用光源、前記光検出器は、前記セルに設けられていることが望ましい。
【0012】
透過光測定用の光の反射後光路における濁度測定地点と散乱光測定用光源との間の光路長を短くし、散乱光測定用の光の減衰を抑えつつ、所定角度の散乱光を生じさせるためには、前記散乱光測定用光源は、前記セルにおいて前記反射後光路側に設けられていることが望ましい。
【0013】
セルに濁度測定用光源及び光検出器を設けた場合には、セルの内部空間において散乱光測定用光源からの直接光が光検出器によって検出され、測定精度を低下させる恐れがある。
この問題を好適に解決して、濁度測定の精度を向上させるためには、前記セルの内面において前散乱光度測定用光源と前記光検出器との間に、前記散乱光測定用光源から射出される前記濁度測定用の光が前記光検出器に直接入射することを抑制する突起部が形成されていることが望ましい。
【0014】
液体試料が導入されるセルの場合には、セル内に気泡が滞留して測定精度を低下させる恐れがある。この気泡による測定精度の低下を防ぐためには、前記セルの下端部に前記液体試料を導入する導入口が形成され、前記セルの上端部に前記液体試料を導出する導出口が形成された構成とすることが望ましい。
この構成とした場合であっても、導出口又はその近傍に気泡が付着又は滞留してしまい、当該気泡による散乱光が測定誤差の要因となる。このため、本発明の光学測定装置は、前記散乱光測定用光源及び前記光検出器が前記導出口を挟むように配置されており、前記突起部が、前記導出口と前記散乱光測定用光源との間に形成されていることが望ましい。この構成であれば、導出口又はその近傍に気泡が付着又は滞留している場合であっても、散乱光測定用の光が気泡によって散乱されることを抑えて、濁度測定の精度の低下を防ぐことができる。
【0015】
また、本発明の光学分析装置は、前記セルの内面のうち前記散乱光測定用光源と対向する面が、前記散乱光測定用の光を前記光検出器に向けて反射しないように構成されていることが望ましい。
この構成であれば、散乱光測定用の光における所定の角度の散乱光以外の光が光検出器で検出されることを防ぎ、濁度測定の精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小型化を図るとともに各国の水質基準に基づいた濁度測定方式を採用しつつ、濁度や色度を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る水質分析システムを示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る色度濁度測定装置の平面模式図である。
【
図3】本実施形態に係る色度濁度測定装置を側方から見た断面模式図である。
【符号の説明】
【0018】
100 ・・・水質分析システム
1 ・・・色度濁度測定装置
2 ・・・セル
P1 ・・・導入口
P2 ・・・導出口
2T ・・・突起部
3 ・・・色度測定用光源
4 ・・・濁度測定用光源
5 ・・・光検出器
8 ・・・反射ミラー
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の一実施形態について、図面を用いて説明する。
本実施形態に係る光学測定装置1は、液体試料の色度及び濁度を光学的に測定する色度濁度測定装置1である。この色度濁度測定装置1は、
図1に示すように、例えば、浄水場で浄化した水を各家庭へと分配する給水管末路等に設けられて、上水道を流れる水の水質変化を監視する水質分析システム100に組み込まれて使用されるものである。
【0020】
なお、水質分析システム100には、色度濁度測定装置1の他に、例えば、液体試料の残留塩素濃度を測定する残存塩素濃度測定装置、液体試料の導電率を測定する導電率測定装置、液体試料のpHを測定するpH測定装置、圧力センサ又は温度センサ等が含まれていても良い。
【0021】
色度濁度測定装置1は、色度を測定するための色度測定光学系及び濁度を測定するための濁度測定光学系を有するものである。
【0022】
具体的に色度濁度測定装置1は、液体試料を収容するセル2と、セル2内に収容された液体試料に対して透過光測定用の光(以下、色度測定用の光ともいう。)を照射する透過光測定用光源3(以下、色度測定用光源3ともいう。)と、セル2内に収容された液体試料に対して散乱光測定用の光(以下、濁度測定用の光ともいう。)を照射する散乱光測定用光源4(以下、濁度測定用光源4ともいう。)と、色度測定用光源3から射出されて液体試料を透過した透過光L1及び濁度測定用光源4から射出されて液体試料によって散乱された散乱光L2とを検出する光検出器5とを備えている。光検出器5からの出力である光強度信号は算出部6に出力されて、当該算出部6により液体試料の色度及び濁度が算出される。算出部6により算出された色度及び濁度は、表示部7に表示される。これら各構成要素の動作を制御する制御部11をさらに備えるようにしてもよい。なお、算出部6及び/又は制御部11は、例えば、CPU、メモリ、入出力インターフェイス、AD変換器等を有するコンピュータを用いて構成されている。
【0023】
セル2は、内部に液体試料を貯留する貯留空間2Sを有するものであり、貯留空間2Sに液体試料を導入する導入口P1と、この貯留空間2Sから液体試料を外部に導出する導出口P2とを備えている。
【0024】
具体的にセル2は、
図2に示すように、内部に概略平板形状の貯留空間2Sを形成する例えば扁平した外観形状をなすものである。そして、導入口P1は、セル2の下端部に形成されており、貯留空間2Sの下端から液体試料を導入するものである。また導出口P2は、セル2の上端部に形成されており、貯留空間2Sの上端から液体試料を導出するものである。なお、導入口P1は、セル2の下端中央部に上方を向いて開口しており、導出口P2は、導入口P1の直上に側方を向いて開口しているが、これに限られない。
また、導出口P2が形成されている部分のセル2の上面は、導出口P2の出口に向けて徐々に切れ上るようにしてある。
【0025】
色度測定用光源3は、セル2に設けられ、セル2に収容された液体試料によって吸収されやすい波長帯域の光(色度測定用の光)を射出するものである。この色度測定用光源3は、例えば、200nm以上400nm以下の波長帯域の光を射出するものである。本実施形態では、一例として、375nmの波長の光を射出するLEDを用いて構成されている。
【0026】
濁度測定用光源4は、セル2に設けられ、セル2に収容された液体試料によって散乱されやすい波長帯域の光(濁度測定用の光)を射出するものである。この濁度測定用光源4は、例えば、600nm以上900nm以下、より好ましくは830nm以上890nm以下の波長の光を射出するものである。本実施形態では、一例として、870nmの波長の光を射出するLEDを用いて構成されている。
【0027】
光検出器5は、セル2に設けられ、色度測定用光源3とともに色度測定光学系を構成するとともに、濁度測定光源4とともに濁度測定光学系を構成するものである。具体的に光検出器5は、
図2に示すように、色度測定用光源3から射出され、貯留空間2S内の液体試料を透過した透過光L1を検出するとともに、濁度測定用光源4から射出され、貯留空間2S内の液体試料によって散乱された散乱光L2を検出する。本実施形態では、色度測定用光源3と濁度測定用光源4とは交互に点灯されることから、光検出器5は、色度測定用の光の透過光L1と濁度測定用の光の散乱光L2を交互に検出することになる。この光検出器5は、例えば、フォトダイオードを用いて構成することができる。
【0028】
しかして、本実施形態に係る色度濁度測定装置1は、色度測定光学系として、セル2に設けられ、色度測定用光源3から射出される光を反射して光検出器5に導く反射ミラー8をさらに備えている。
【0029】
次に、セル2における色度測定用光源3、濁度測定用光源4、光検出器5及び反射ミラー8の光学配置及びそのためのセル2の構造について説明する。
【0030】
色度測定用光源3及び光検出器5は、セル2において同一側(
図2において左側)に設けられている。具体的に、色度測定用光源3及び光検出器5は、セル2の左側壁部に設けられており、色度測定用光源3は、貯留空間2Sの長手方向に沿って色度測定用の光を照射するように配置され、光検出器5は、色度測定用光源3よりも上方に配置されている。なお、セル2には、色度測定用光源3からの色度測定用の光を貯留空間2Sに導入するための導入孔H1が形成されており、光検出器5が色度測定用の光の透過光L1及び濁度測定用の光の散乱光L2を検出するための検出孔H2が形成されている。
【0031】
また、反射ミラー8は、セル2において色度測定用光源3に対向するように、色度測定用光源3とは反対側(
図2において右側)に設けられている。具体的に反射ミラー8は、セル2の右側壁部に設けられており、貯留空間2Sの内面に露出するように設けられている。ここで、反射ミラー8は、色度測定用の光が光検出器5に向かわせる角度で配置されており、当該反射ミラー8により反射された色度測定用の光は、貯留空間2Sの長手方向に沿って通過した後に光検出器5に検出される。
【0032】
上記の配置により、色度測定光学系においては、
図2に示すように、色度測定用光源3から光検出器5までの間に色度測定用光路LPが形成される。この色度測定用光路LPは、色度測定用光源3から反射ミラー8までの反射前の光路LP1(反射前光路LP1)と、反射ミラー8から光検出器5までの反射後の光路LP2(反射後光路LP2)とからなる。
【0033】
一方で、濁度測定用光源4は、色度測定用の光の反射後光路LP2に向けて当該反射後光路LP2に所定の角度(θ)で交わるように濁度測定用の光を射出するように配置されている。本実施形態では、θは90度である。具体的に濁度測定用光源4は、セル2において反射後光路LP2側に配置されている。ここで、濁度測定用光源4は、反射前光路LP1及び反射後光路LP2から形成される平面に沿って光を射出することになる。より詳細には、セル2の上壁部に設けられている。なお、セル2の上壁部には、濁度測定用光源4からの濁度測定用の光を貯留空間2Sに導入するための導入孔H3が形成されている。
【0034】
この濁度測定用光源4を配置することにより、光検出器5の検出軸と、濁度測定用光源4の光軸とが所定の角度(θ)で交わる(直交する)ことになる。また、濁度測定用の光の90度散乱光L2の光軸と光検出器5の検出軸(反射後光路LP2)とが一致することになる。
【0035】
また、上記の配置において、濁度測定用光源4及び光検出器5が導出口P2を挟むように配置されている。ここで、濁度測定用光源4からの光が直接光検出器5に検出されないようにするために、導出口P2と濁度測定用光源4との間に突起部2Tが形成されている。当該突起部2Tは、貯留空間2Sを形成する内面を内側に突出させることにより形成されている。本実施形態の突起部2Tは、貯留空間2Sの上面から下方に向かって突出するように設けられたものであり、全体が曲面で形成されている。
【0036】
また、貯留空間2Sの内面のうち、濁度測定用光源4が取り付けられている面と対向する面は、濁度測定用光源4から射出される光を光検出器5に向けて反射しないように構成してある。本実施形態では、濁度測定用光源4が取り付けられている面と対向する面は、貯留空間2Sの底面にあたる。そこで、本実施形態では、この底面について、濁度測定用光源4からの光を光検出器5に向けて反射しない角度及び形状にしてある。また、本実施形態では、このように形成された底面で反射された光が、色度測定用光源又は濁度測定用光源の方に向かうように、底面に対する濁度測定用光源からの光の入射角を所定の角度に設定してある。
【0037】
本実施形態に係る色度濁度測定装置1が、導入孔(H1,H3)や検出孔H2と貯留空間2S内とを仕切る窓及び反射ミラー8の貯留空間2S内の液体試料と接する面への付着物等を除去する除去機構9をさらに備えていても良い。
除去機構9は、例えば、
図3に示すように、ワイパー91とこのワイパー91を駆動する駆動部92とを備えるものである。
【0038】
ワイパー91は、例えば、導入孔(H1,H3)や検出孔H2と貯留空間2S内とを仕切る窓及び反射ミラー8の試料溶液側の面に接触して、これらを払拭する弾性部材を備えるものである。
このワイパー91は、例えば、貯留空間2Sの内部形状に沿う形状のものであり、
図3に示すように、貯留空間2Sの一方の端側に配置され、測定と測定の合間等に、駆動部92から伝えられる動力によって貯留空間2Sの内面に沿って他端まで、
図3では前後方向に、移動するように構成されている。
【0039】
このように構成した色度濁度測定装置1によれば、光源からの光をセル2内で反射して光検出器5に導くミラーを備えているので、セル2を小型化した場合であっても、セル2内部での透過光L1の透過距離を十分に確保することができる。その結果、例えば、水道水などの浄化された水の色度についても精度良く測定することができる。
【0040】
濁度測定用光源4が、光検出器5に隣接するように反射後光路LP2側に配置されて、色度測定用の光の反射後光路LP2に向けて、当該反射後光路LP2に対して直交するように射出するようにしてある。そのため、光検出器5によって濁度測定用の光の90度散乱光L2を検出する場合に、濁度測定用光源4から反射後光路LP2上の濁度測定地点までの距離及び濁度測定地点から光検出器5までの距離を短くすることができる。その結果、濁度測定用の光が濁度測定地点に達するまでに減衰してしまうことを抑えることができる。また、濁度測定地点において液体試料によって散乱された光が減衰する前に光検出器5でとらえることができる。さらに、濁度測定地点でと散乱された光が各方向へ広がってしまう前に光検出器5に入るので、より多くの光を光検出器5で検出することができる。
その結果、液体試料の濁度を精度良く測定することができる。
【0041】
導出口P2が貯留空間2Sの上端に形成され、導出口P2が形成されている部分のセル2の上面が、導出口P2の出口に向けて徐々に切れ上るようにしてあるので、液体試料に気泡が含まれていたとしても、気泡を貯留空間2Sの外部へ排出しやすい。
色度測定用光源3が、光を貯留空間2Sの長手方向に沿って射出するものであり、反射ミラー8が、色度測定用光源3からの光を前記長手方向に沿って反射して前記光検出器5へ導くようにしてあるので、色度測定用の光路LPをできるだけ長くすることができる。
【0042】
色度測定用光源3、光検出器5及び濁度測定用光源4が全てセル2に設けられているので、セル2に対する色度測定用光源3、光検出器5及び濁度測定用光源4の位置関係を調整する手間を省くことができる。また、例えば、水質分析システムに色度濁度測定装置1を取り付ける場合などの取り付け作業を簡単にすることができる。
【0043】
前記色度測定用光源3、光検出器5及び濁度測定用光源4を、同じ面上に並べて配置することができるので、無駄なスペースをできるだけ省いて、他の測定装置と並べて使用しやすい。
【0044】
濁度測定用光源4と光検出器5との間に突起部2Tが形成されているので、濁度測定用光源4から射出された光が直接光検出器5に入射することを抑えて、濁度測定の精度を向上させることができる。
突起部2Tが前記導出口P2と濁度測定用光源4との間に設けられているので、導出口P2に気泡が溜まっていても、この気泡に濁度測定用光源4からの光が当たって散乱することを抑えて、色度測定や濁度測定へのノイズをさらに減らすことができる。
突起部2Tが、全体が曲面で形成されたものであるので、角が形成されることを押さえて、角の部分で光が反射することによる色度測定や濁度測定へのノイズを抑えることができる。
【0045】
濁度測定用光源4に対向する面である貯留空間2Sの底面が、濁度測定用光源4から射出された光を光検出器5に向けて反射しない角度及び形状にしてあり、かつ底面で反射された光が、色度測定用光源又は濁度測定用光源の方に向かうように、底面に対する濁度測定用光源からの光の入射角を所定の角度に設定してあるので、底面によって反射された濁度測定用光源4からの光が光検出器5に検出されることを抑えて、濁度測定への悪影響を抑えることができる。
【0046】
導入孔(H1,H3)や検出孔H2と貯留空間2S内とを仕切る窓及び反射ミラー8の貯留空間2S内2Sの液体試料と接する面の汚れを除去する除去機構9を備えているので、セルを分解して窓や反射ミラー8を掃除しなくても、これらの表面に汚れが付着することによる色度測定及び濁度測定の誤差を抑えることができる。
ワイパー91の形状を、貯留空間2Sの内部形状に沿った形状にしてあるので、窓及び反射ミラー8の貯留空間2S内の液体試料と接する面の汚れを、できるだけ簡単な構成で除去することができる。ワイパー91を1つだけにしているので、ワイパー91を複数設ける場合に比べて、光学測定装置全体を小型化することができる。
【0047】
本発明は前述した実施形態に限られるものではない。
例えば、濁度測定用光源と貯留空間との間に集光レンズを備えるようにすれば、濁度測定用光源から射出される光を反射後光路LP2上に集光させることができる。その結果、突起部を設けなくても、突起部がある場合と同様に、濁度測定用光源からの光が直接光検出器に検出されないようにすることができる。その結果、突起部を形成しなくても濁度の測定精度を向上させることができる。
【0048】
前記実施形態では、色度測定用光源の上方に光検出器を設けていたが、色度測定用光源を光検出器の上方に配置するようにしても良いし、セルや貯留空間の形状によっては、光検出器を色度測定用光源の側方に配置するようにしても良い。
また、反射ミラーの位置は、色度測定用光源からの光を光検出器に向けて反射できる位置であればよく、これらに併せて適宜変更しても良い。
濁度測定用光源の配置についても、反射後光路側であり、該反射後光路LP2に垂直な光を照射することができる位置であれば、適宜変更しても構わない。
濁度測定用光源は、反射後光路側に配置する方が濁度測定用光源と光検出器との距離をより短くできるので好ましいが、濁度測定用光源を反射前光路側に配置しても濁度を測定することは十分に可能である。
【0049】
色度測定用光源、濁度測定用光源、光検出器は必ずしもセルに設けられている必要はなく、これらをセルとは分離して配置するようにしても良い。
【0050】
前記実施形態では、液体試料を透過した透過光を測定することによって液体試料の色度を測定するものを説明したが、これに限られず、例えば、透過光測定用光源の波長を変更する等すれば、透過光を測定することによって液体試料の濁度を測定することも可能である。
【0051】
前記実施形態では、前記散乱光濁度測定用光源が、前記反射後光路に直交するように前記散乱光濁度測定用の光を射出する90度散乱方式のものを説明したが、この角度は各国の水質基準に基づいて定められた所定の角度θを採用して、例えば、60度、120度、150度等としても良い。
【0052】
水質分析システムは、給水管末路に配置されるものに限らず、例えば。浄水場の末端に配置されるものであっても良いし、浄水場で浄化される前又は浄化途中の流路等に設けられても良い。河川水や海水、工場排水などの様々な水質監視のために使用されるものとしても良い。
【0053】
色度濁度測定装置は、必ずしも他の測定装置と組みあわせて使用する必要はなく、単独で使用することもできる。
本発明の趣旨に反しない限りにおいて、種々の変形や実施形態の組合せを行ってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、小型化を図るとともに各国の水質基準に基づいた濁度測定方式を採用しながらも、色度や濁度を精度良く測定することができる。