(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】改善されたビードを備えるタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 15/04 20060101AFI20240924BHJP
B60C 9/02 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B60C15/04 C
B60C9/02 A
(21)【出願番号】P 2022536579
(86)(22)【出願日】2020-10-09
(86)【国際出願番号】 FR2020051790
(87)【国際公開番号】W WO2021123522
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-07-31
(32)【優先日】2019-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514326694
【氏名又は名称】コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】フレッセ パトリス
(72)【発明者】
【氏名】シャンブリアール フランソワ
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-126298(JP,A)
【文献】特開2016-216044(JP,A)
【文献】特開2012-126299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0348932(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-99/00
B29D 30/00-30/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転軸線(A)の周りに実質的に円環形状のタイヤ(10)であって、
クラウン(12)、2つの側壁(30)、及び2つのビード(32)を備え、各側壁(30)が、各ビード(32)を該クラウン(12)に接続し、前記タイヤ(10)は、互いの上に半径方向に重ね合わされた前記自転軸線(A)の周りのN≧2個の円周方向巻回を備える少なくとも1つの連続フィラメント状補強要素(38,39,40)を備え、該連続フィラメント状補強要素(38,39,40)が、半径方向外側自由端(E1,E3)と半径方向内側自由端(E2,E4)を備え、該連続フィラメント状補強要素(38,39,40)が、該2つのビード(32)の一方において少なくとも部分的に半径方向に延びる、
I.前記半径方向外側自由端(E1,E3)が、該半径方向外側自由端(E1,E3)の方位角(Az0;Az0’)で、
半径方向に前記半径方向外側自由端(E1,E3)の外側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の少なくとも1つの第1の部分(50,60)と、
半径方向に前記半径方向外側自由端(E1,E3)の内側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の少なくとも1つの第2の部分(52,62)と、
の間に半径方向に配置され、
II.前記半径方向内側自由端(E2,E4)が、該半径方向内側自由端(E2,E4)の方位角(Az0;Az0’’)で、
半径方向に前記半径方向内側自由端(E2,E4)の外側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の少なくとも1つの第1の部分(54,64)と、
半径方向に前記半径方向内側自由端(E2,E4)の内側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の少なくとも1つの第2の部分(56,66)と、
の間に半径方向に配置される、
という条件I及びIIのうちの少なくとも一方が満足される、
ことを特徴とするタイヤ(10)。
【請求項2】
条件Iのみが満足されることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ(10)。
【請求項3】
半径方向に前記半径方向外側自由端(E1,E3)の前記外側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の前記第1の部分(50,60)及び半径方向に該半径方向外側自由端(E1,E3)の前記内側に配置された該連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の前記第2の部分(52,62)は、半径方向に連続的であり、
半径方向に前記半径方向内側自由端(E2,E4)の前記外側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の前記第1の部分(54,64)及び半径方向に該半径方向内側自由端(E2,E4)の前記内側に配置された該連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の前記第2の部分(56,66)は、半径方向に連続的である、
ことを特徴とする請求項1から請求項2のいずれか1項に記載のタイヤ(10)。
【請求項4】
半径方向に前記半径方向外側自由端(E1,E3)の前記外側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の前記第1の部分(50,60)は、該半径方向外側自由端(E1,E3)の前記方位角(Az0;Az0’)では、該連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の半径方向最外側部分であり、
半径方向に前記半径方向内側自由端(E2,E4)の前記内側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の前記第2の部分(56,66)は、該半径方向内側自由端(E2,E4)の前記方位角(Az0;Az0’’)では、該連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の半径方向最内側部分である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ(10)。
【請求項5】
各ビード(32)内に係止され、各側壁(30)内でかつ前記クラウン(12)の内側で半径方向に延びるカーカス補強材(34)を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ(10)。
【請求項6】
前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)は、軸線方向に前記カーカス補強材(34)の外側に配置されることを特徴とする請求項5に記載のタイヤ(10)。
【請求項7】
各ビード(32)が、
軸線方向に前記カーカス補強材(34)の内側に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素(38)と、
軸線方向に前記カーカス補強材(34)の外側に配置された軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)と、
を備える、
ことを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のタイヤ(10)。
【請求項8】
前記カーカス補強材(34)が、少なくとも1つのカーカス層(36,37)を備え、該カーカス層(36,37)又は各カーカス層(36,37)が、2つの軸線方向縁部(36A,36B,37A,37B)によって軸線方向に境界が定められ、各軸線方向縁部が、前記軸線方向内側連続フィラメント状補強要素(38)の半径方向内側端部(38A)と前記軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)の半径方向内側端部(40A)との間に軸線方向に配置されることを特徴とする請求項7に記載のタイヤ(10)。
【請求項9】
前記軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)は、互いの上に半径方向に重ね合わされた前記自転軸線(A)の周りのNe≧2個の円周方向巻回を備え、該軸線方向外側フィラメント状補強要素(40)が、半径方向外側自由端(E1)と半径方向内側自由端(E2)を備える場合に、
I’’.前記軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)の前記半径方向外側自由端(E1)が、該半径方向外側自由端(E1)の前記方位角(Az0;Az0’)で、
半径方向に前記半径方向外側自由端(E1)の前記外側に配置された前記軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)の少なくとも1つの第1の部分(50)と、
半径方向に前記半径方向外側自由端(E1)の前記内側に配置された前記軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)の少なくとも1つの第2の部分(52)と、
の間に半径方向に配置され、
II’’.前記軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)の前記半径方向内側自由端(E2)が、該半径方向内側自由端(E2)の前記方位角(Az0;Az0’’)で、
半径方向に前記半径方向内側自由端(E2)の前記外側に配置された前記軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)の少なくとも1つの第1の部分(54)と、
半径方向に前記半径方向内側自由端(E2)の前記内側に配置された前記軸線方向外側連続フィラメント状補強要素(40)の少なくとも1つの第2の部分(56)と、
の間に半径方向に配置される、
という条件I’’、II’’のうちの少なくとも一方が満足されることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載のタイヤ(10)。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のタイヤ(10)を製造する方法であって、
支持体の自転軸線(B)の周りに回転対称性を実質的に示し、前記ビード(32)のうちの少なくとも一方の少なくとも一部を形成するように意図されたポリマー組成物の塊体が、該支持体上に置かれ、次に、
EI.前記半径方向外側自由端(E1,E3)が、前記ポリマー組成物の塊体との直接的な接触状態に置かれ、次に、前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)が、該半径方向外側自由端(E1,E3)が該半径方向外側自由端(E1,E3)の前記方位角(Az0;Az0’)で、
半径方向に前記半径方向外側自由端(E1,E3)の前記外側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の少なくとも前記第1の部分(50,60)と、
半径方向に前記半径方向外側自由端(E1,E3)の前記内側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の少なくとも前記第2の部分(52,62)と、
の間に半径方向に配置されるように、互いの上に重ね合わされた前記支持体の前記自転軸線(B)の周りのN≧2個の円周方向巻回を通して巻かれ、
EII.前記半径方向内側自由端(E2,E4)が、前記ポリマー組成物の塊体との直接的な接触状態に置かれ、次に、前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)が、該半径方向内側自由端(E2,E4)が該半径方向内側自由端(E2,E4)の前記方位角(Az0;Az0’’)で、
半径方向に前記半径方向内側自由端(E2,E4)の前記外側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の少なくとも前記第1の部分(54,64)と、
半径方向に前記半径方向内側自由端(E2,E4)の前記内側に配置された前記連続フィラメント状補強要素(38,39,40)の少なくとも前記第2の部分(56,66)と、
の間に半径方向に配置されるように、互いの上に重ね合わされた前記支持体の前記自転軸線(B)の周りのN≧2個の円周方向巻回を通して巻かれる、
という段階EI及びEIIの一方又は他方が実行される、
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに及びそのようなタイヤを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの回転軸線に実質的に一致する自転軸線の周りに実質的に円環形状の
図1の子午断面平面上の視野に示すタイヤは、従来技術から公知である。タイヤは、クラウンと2つの側壁及びビードとを備え、各側壁は、各ビードをクラウンに接続する。タイヤはまた、各ビード内に係止されて各側壁内を延びるかつクラウンの内側を半径方向に延びるカーカス補強材を備える。
【0003】
各ビードは、カーカス補強材の内側に軸線方向に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素と、カーカス補強材の外側に軸線方向に配置された軸線方向外側連続フィラメント状補強要素とを備える。
【0004】
図2に示すように、各軸線方向内側及び外側連続フィラメント状補強要素は、自転軸線の周りに互いの上に重ね合わされた複数の円周方向巻回を備える。各連続フィラメント状補強要素は、半径方向外側自由端E1と半径方向内側自由端E2とを備える。
【0005】
乾燥地面上のグリップを改善するために、特にサーキット上で使用される時に、このタイヤの一部のユーザは、通常はタイヤの膨張圧力を低減し、時としてタイヤ製造業者が推奨する最低閾値さえも下回るまで低減する。タイヤ上に極端な応力をもたらすこれらの使用事例では、各ビードは、極度に高い負荷を受け、これらの負荷は、各半径方向外側自由端E1及び半径方向内側自由端E2と各半径方向外側自由端E1及び半径方向内側自由端E2が埋め込まれた各エラストマー母材との間の界面で亀裂のリスクをもたらす傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2016/0167438号
【文献】国際公開第03/101713号
【文献】欧州特許出願公開第1094930号
【文献】欧州特許出願公開第1463627号
【文献】欧州特許出願公開第0976535号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、各連続フィラメント状補強要素の半径方向内側及び半径方向外側自由端の一方及び/又は他方でのあらゆる亀裂リスクを排除することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的に対して、本発明の主題は、クラウン、2つの側壁、及び2つのビードを備え、各側壁が各ビードをクラウンに接続し、自転軸線の周りに実質的に円環形状であるタイヤであり、タイヤは、半径方向に互いの上に重ね合わされた自転軸線の周りのN≧2個の円周方向巻回を備える少なくとも1つの連続フィラメント状補強要素を備え、連続フィラメント状補強要素は、半径方向外側自由端と半径方向内側自由端を備え、連続フィラメント状補強要素は、2つのビードの一方において少なくとも部分的に半径方向に延び、上記タイヤでは、条件I及びIIのうちの少なくとも一方が満足される:I.半径方向外側自由端が、半径方向外側自由端の方位角に、半径方向外側自由端の外側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第1の部分と、半径方向外側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第2の部分との間に半径方向に配置され、II.半径方向内側自由端が、半径方向内側自由端の方位角に、半径方向内側自由端の外側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第1の部分と、半径方向内側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第2の部分との間に半径方向に配置される。
【0009】
本発明の背後の本発明者は、上述した従来技術のタイヤでは、負荷は、タイヤのアーキテクチャに依存して、2つの半径方向最内側巻回を備える領域に及び/又は2つの半径方向最外側巻回を備える領域に集中することを発見した。すなわち、本発明の背後の本発明者は、応力集中が最も高い領域から自由端の一方及び/又は他方を移動することにより、あらゆる亀裂リスクを排除することが可能であることを見出した。そのようなソリューションは、特に亀裂リスクを低減するのに従来使用されるソリューション、例えば、亀裂に対して高い耐性を有するエラストマー母材の使用と比較して非常に有利である。これは、そのようなエラストマー母材は、問題を解決することを可能にする場合もあるが、それらは、それらの低い弾性率に起因してタイヤのロードホールディング、特にコーナリング剛性に対して悪影響を有するからである。
【0010】
すなわち、条件Iは、半径方向外側自由端が連続フィラメント状補強要素の2つの部分の間を通されるという事実を特徴付ける。同様に、条件IIは、半径方向内側自由端が連続フィラメント状補強要素の2つの部分の間を通されるという事実を特徴付ける。本発明の内在的な結論は、連続フィラメント状補強要素の1つの部分が連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの他の部分と交差し、交差回数が、第1及び第2の部分がどこに位置するかに依存することである。
【0011】
本発明の別の利点は、亀裂に対する改善された耐性を所与として、それが乾燥地面上のグリップを改善することを可能にすることである。すなわち、従来技術タイヤに対して推奨される圧力よりも低い圧力で走行し、その結果、乾燥地面上のグリップを改善するという推奨を与えることができると考えられる。乾燥地面上のグリップを改善することを可能にする組成物を有するタイヤトレッドを使用することもできると考えられ、グリップのこの改善は、従来技術タイヤに対して亀裂リスクを有意に増大するが、一方で本発明によるタイヤに対して影響はない。
【0012】
条件Iのみ、条件IIのみ、又は条件I及びIIを一緒に実施する選択は、亀裂に対するタイヤの感受性に依存して当業者によって決定されることになる。特に、ある一定のタイヤは、半径方向外側自由端の領域で亀裂に対してより感受性である場合があり、一方で他は半径方向内側自由端の領域で亀裂に対してより感受性である場合がある。最後に、更に他のタイヤは、半径方向内側及び外側自由端の両方の領域で亀裂に対して等しい感受性を有する場合がある。
【0013】
本発明の1つの特徴により、連続フィラメント状補強要素は、ビード内で少なくとも部分的に半径方向に延びる。すなわち、連続フィラメント状補強要素は、2つの半径方向内側及び半径方向外側半径方向端部の間を半径方向に延び、連続フィラメント状補強要素の少なくとも半径方向内側半径方向端部は、ビードの境界を半径方向に定める半径方向内側及び外側半径方向側面の間に閉じ込められる。
【0014】
表現「自由端」は、2つの半径方向内側及び外側端部が継合手段によって、例えばスリーブによって互いに接合されないことを意味する。
【0015】
用語「連続」は、フィラメント状補強要素の各構成材料がフィラメント状補強要素に沿って一体的であることを意味する。すなわち、例えば、フィラメント状補強要素は、いくつかの金属モノフィラメントのアセンブリを備えるが、各金属モノフィラメントは一体的であり、従って、フィラメント状補強要素の2つの自由端の間で途切れることはない。
【0016】
用語「フィラメント状」は、長手方向に主軸に沿って延び、主軸に対して垂直な第2の軸を有する要素を意味し、その最大寸法Gは、主軸に沿う寸法Lと比較して相対的に小さい。表現「相対的に小さい」は、L/Gが100よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは1000よりも大きいか又はそれに等しいことを意味する。この定義は、円形断面を有するフィラメント状要素と非円形断面、例えば多角形又は長円形断面を有するフィラメント状要素との両方を網羅する。非常に好ましくは、各フィラメント状要素は円形断面を有する。
【0017】
表現「軸線方向」は、タイヤの自転軸線、すなわち、タイヤの回転軸線に対して実質的に平行な方向を意味する。
【0018】
表現「円周方向」は、軸線方向に対して及びタイヤの半径に対してその両方に対して実質的に垂直である(言い換えれば、タイヤの回転軸線上に中心が定められた円に対してタンジェントな)方向を意味する。
【0019】
表現「半径方向」は、タイヤの半径に沿う方向、すなわち、タイヤの回転軸線に交差し、この軸に対して実質的に垂直であるあらゆる方向を意味する。
【0020】
表現「タイヤの正中面」(Mと表示する)は、2つのビード間の軸線方向中間に位置してクラウン補強材の軸線方向中央を通過するタイヤの自転軸線に対して垂直な平面を意味する。
【0021】
表現「タイヤの赤道円周平面」(Eと表示する)は、正中面に対して及び半径方向に対して垂直なタイヤの赤道を通過する理論的円筒面を意味する。タイヤの赤道は、子午断面平面(円周方向に対して垂直で半径方向及び軸線方向に対して平行な平面)では、タイヤの回転軸線に対して平行であり、かつ地面と接触状態になるように意図されたトレッドの半径方向最外点と支持体、例えばリムと接触状態になるように意図されたタイヤの半径方向最内点との間で等距離に位置する軸であり、これら2つの点の間の距離はHに等しい。
【0022】
表現「子午面」は、タイヤの回転軸線に対して平行でそれを閉じ込め、かつ円周方向に対して垂直な平面を意味する。
【0023】
用語「ビード」は、タイヤが装着支持体、例えば、リムを備えるホイールに取り付けられることを可能にするように意図されたタイヤの部分を意味する。すなわち、各ビードは、取りわけ、それが取り付けられることを可能にするリムのフランジと接触状態になるように意図される。
【0024】
表現「aとbの間」によって表される値のいずれの範囲も、aを超えるからb未満まで延びる(すなわち、端点a及びbを除外する)値の範囲を表し、それに対して表現「aからbまで」によって表される値のいずれの範囲も、aからbまで延びる(すなわち、厳密な端点a及びbを含む)値の範囲を意味する。
【0025】
本発明のタイヤは、好ましくは、2019年の欧州タイヤリム技術協会又は「ETRTO」規格に従って定められた乗用車を意図している。有利には、そのようなタイヤは、公称アスペクト比H/Sが百分率で表して最大で70に等しく、少なくとも25に等しく、公称断面幅Sが少なくとも205mmに等しく、最大で385mmに等しいような2019年の欧州タイヤリム技術協会又は「ETRTO」規格の意味内の断面高さHと公称断面幅Sとによって特徴付けられる断面を子午断面平面に有する。更に、タイヤの装着リムの公称直径を定めるフランジの直径Dは、少なくとも12インチに等しく、好ましくは少なくとも16インチに等しく、最大で24インチに等しい。
【0026】
以下の本文では、条件I、I’、I’’、又はEIの第1の部分及び第2の部分を参照する場合に、半径方向外側自由端に関連する第1の部分及び第2の部分を参照することを含意する。同様に、条件II、II、’、II、’’、又はEIIの第1の部分及び第2の部分場合に、半径方向内側自由端に関連する第1の部分及び第2の部分を参照することを含意する。
【0027】
特に有利な実施形態では、上記又は各フィラメント状補強要素は、いくつかの金属基本モノフィラメントのアセンブリを備える。
【0028】
表現「金属基本モノフィラメント」は、全体が1又は2以上の金属又は金属合金で製造された一体的なフィラメントを意味する。そのような金属基本モノフィラメントは、例えば、鋳造法に延伸法を続け、任意的に金属コーティング法を続けることによって生成される。そのような金属基本モノフィラメントは、好ましくは鋼鉄で、より好ましくは下記で「炭素鋼」と呼ぶパーライト(又はフェライト-パーライト)炭素鋼で、又はステンレス鋼(定義により、ステンレス鋼は、少なくとも11%のクロムと少なくとも50%の鉄とを備える)で製造される。しかし、勿論、他の鋼鉄又は他の合金を使用することができる。炭素鋼が有利に使用される時に、その炭素含有量(鋼鉄の重量%)は、好ましくは0.05%から1.2%、特に0.5%から1.1%であり、これらの含有量は、タイヤに必要とされる機械的特性と金属基本モノフィラメントの実行可能性の間の良好な妥協である。使用される金属は、それが特に炭素鋼又はステンレス鋼のいずれであるかに関わらず、それ自体に、例えば、金属基本モノフィラメントの加工性、又はグリップ特性、耐腐食特性、又は耐経年劣化特性のような金属基本モノフィラメントの消耗特性を改善する金属層を被覆することができる。好ましい実施形態により、各金属基本モノフィラメントは、黄銅(Zn-Cu合金)、亜鉛、又は青銅の層で覆われる。各金属基本モノフィラメントは、上述のように、好ましくは、炭素鋼で製造され、1000MPaから5000MPaにわたる機械強度を有する。そのような機械強度は、タイヤの分野で一般的に遭遇する鋼鉄等級、すなわち、NT(標準張力)等級、HT(高張力)等級、ST(超張力)等級、SHT(超高張力)等級、UT(ウルトラ張力)等級、UHT(ウルトラ高張力)等級、及びMT(メガ張力)等級に対応し、高機械強度の使用は、金属基本モノフィラメントを中に埋め込むことが意図される母材の補強の改善及びそのようにして補強される母材の軽量化を潜在的に可能にする。いくつかの金属基本モノフィラメントのうちの1つ又はそのアセンブリは、例えば、US20160167438に説明されているようにポリマー組成物で被覆することができる。
【0029】
他の実施形態では、それにも関わらず、上記又は各連続フィラメント状補強要素が、少なくとも1つの繊維基本モノフィラメント、好ましくはいくつかの繊維基本モノフィラメントの少なくとも1つのストランド、更に好ましくはいくつかの繊維基本モノフィラメントのいくつかのストランドのアセンブリを備えるように想定可能とすることができる。
【0030】
1つの有利な実施形態では、条件Iのみが満足される。本発明の背後の本発明者は、大多数のタイヤアーキテクチャでは、半径方向外側自由端が、亀裂リスクをもたらす可能性が非常に高い自由端であり、いずれのリスクを排除するためにもこの半径方向外側自由端のみを通すことで十分であると決定した。
【0031】
特に応力レベルが非常に高いウルトラスポーツタイヤの場合に使用可能な別の実施形態では、条件I及びIIが満足される。
【0032】
N≧1個の完全円周方向巻回と少なくとも1つの不完全円周方向巻回とを備える連続フィラメント状補強要素の嵩を最小にするために、Nは、10よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは8よりも小さいか又はそれに等しい。表現「完全円周方向巻回」は、基準方位角からタイヤ又は製造支持体の自転軸線の周りに360度に等しい角度を示す連続フィラメント状補強要素の部分を意味する。それとは対照的に、不完全円周方向巻回は、基準方位角からタイヤ又は支持体の自転軸線の周りに360°よりも小さい角度しか描かない。上記又は各連続フィラメント状補強要素は、不完全円周方向巻回T’k+1のないN個の完全円周方向巻回Tkを含むことができ、又はN個の完全円周方向巻回Tkと1つの不完全円周方向巻回T’k+1とを含むことができ、kは、条件Iの場合は半径方向外側端部から半径方向内側端部まで進行する上で1からNにわたり、条件IIの場合は半径方向内側端部から半径方向外側端部まで進行する上で1からNにわたる。
【0033】
好ましくは、半径方向外側自由端又は半径方向内側自由端が連続フィラメント状補強要素の別の部分の進路上に配置され、それによってタイヤの製造中に場合によって不安定性が引き起こされることを回避し、すなわち、亀裂に感受性を有しやすい連続フィラメント状補強要素の領域を回避するために、半径方向外側自由端の外側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の第1の部分と、半径方向外側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の第2の部分とが半径方向に連続的であり、半径方向内側自由端の外側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の第1の部分と、半径方向内側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の第2の部分とが半径方向に連続的である。
【0034】
表現「半径方向に連続」は、第1及び第2の部分が、このような自由端の方位角に、半径方向に当該自由端の外側及び内側にある各部分の間に半径方向に挟まれた当該自由端以外の連続フィラメント状補強要素の他の部分が存在しないように配置されることを意味する。
【0035】
有利には、半径方向外側自由端の外側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の第1の部分は、半径方向外側自由端の方位角に、連続フィラメント状補強要素の半径方向最外側部分であり、半径方向内側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の第2の部分は、半径方向内側自由端の方位角に、連続フィラメント状補強要素の半径方向最内側部分である。
【0036】
これは、連続フィラメント状補強要素のこれらの部分の間の交差の個数を最小にし、その結果、タイヤの各ビードでの局所過厚が最小にされる。すなわち、この場合に、カーカスフィラメント補強要素のこれら2つの部分の間に1個の交差しか存在しない。
【0037】
連続フィラメント状補強要素の半径方向高さを制限し、特に半径方向外側自由端での亀裂リスクを増大しがちな曲げ応力に連続フィラメント状補強要素を露出させないために、連続フィラメント状補強要素は、半径方向にビード内全体に延びる。言い換えれば、ビードは、その全体に連続フィラメント状補強要素を備える。すなわち、連続フィラメント状補強要素の半径方向内側半径方向端部及び半径方向外側半径方向端部の各々は、ビードの境界を半径方向に定める半径方向内側半径方向側面と半径方向外側半径方向側面の間に閉じ込められる。
【0038】
有利には、タイヤは、各ビード内に係止され、各側壁内で半径方向にクラウンの内側に延びるカーカス補強材を含む。
【0039】
連続フィラメント状補強要素は、カーカス補強材をビード内に係止することを可能にする。
【0040】
1つの特に有利な実施形態では、連続フィラメント状補強要素は、カーカス補強材の外側に軸線方向に配置されることを特徴とする。特に、本発明者は、連続フィラメント状補強要素が、リムによる応力及び負荷を最も受けるものであるカーカス補強材の軸線方向外側に配置される場合に、この軸線方向外側連続フィラメント状補強要素の自由端のうちの主として一方及び/又は他方を通すことが有利であることを識別した。
【0041】
表現「カーカス補強材の外側に軸線方向に配置」は、タイヤの子午断面平面内で、連続フィラメント状補強要素が半径方向内側及び半径方向外側の2つの半径方向端部の間を半径方向に延びる場合に、半径方向内側端部及び半径方向外側端部を通過する2つの軸線方向直線の間で半径方向に延びるカーカス補強材の部分が、軸線方向に連続フィラメント状補強要素の内側に配置されることを意味する。同様に、表現「カーカス補強材の内側に軸線方向に配置」は、タイヤの子午断面平面内で、半径方向内側軸線方向端部及び半径方向外側軸線方向端部を通過する2つの軸線方向直線の間で半径方向に延びるカーカス補強材の部分が、連続フィラメント状補強要素の外側に軸線方向に配置されることを意味する。
【0042】
カーカス補強材を実質的に係止することを可能にする実施形態では、各ビードは、カーカス補強材の内側に軸線方向に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素、及びカーカス補強材の外側に軸線方向に配置された軸線方向外側連続フィラメント状補強要素を含む。
【0043】
カーカス補強材を実質的に係止し、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素の半径方向外側自由端及び/又は半径方向内側自由端の近くでいずれの亀裂を回避することも可能にするこれらの実施形態では、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素は、自転軸線の周りに半径方向に互いの上に重ね合わされたNi≧2個の円周方向巻回を備え、更に半径方向外側自由端と半径方向内側自由端とを備え、条件I’、II’のうちの少なくとも一方が満足される:I’.軸線方向内側連続フィラメント状補強要素の半径方向外側自由端が、その方位角に、半径方向外側自由端の外側に半径方向に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第1の部分と、軸線方向内側半径方向外側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第2の部分との間に半径方向に配置され、II’.軸線方向内側連続フィラメント状補強要素の半径方向内側自由端が、その方位角に、軸線方向内側半径方向内側自由端の外側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第1の部分と、軸線方向内側半径方向内側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第2の部分との間に半径方向に配置される。
【0044】
カーカス補強材を実質的に係止し、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素の半径方向外側自由端及び/又は半径方向内側自由端の近くでいずれの亀裂を回避することも可能にするこれらの実施形態では、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素は、自転軸線の周りに半径方向に互いの上に重ね合わされたNe≧2個の円周方向巻回を備え、更に半径方向外側自由端と半径方向内側自由端とを備え、条件I’’、II’’のうちの少なくとも一方が満足される:I’’.軸線方向外側連続フィラメント状補強要素の半径方向外側自由端が、その方位角に、半径方向外側自由端の外側に半径方向に配置された軸線方向外側連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第1の部分と、軸線方向外側半径方向外側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第2の部分との間に半径方向に配置され、II’’.軸線方向外側連続フィラメント状補強要素の半径方向内側自由端が、その方位角に、軸線方向外側半径方向内側自由端の外側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第1の部分と、軸線方向外側半径方向内側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第2の部分との間に半径方向に配置される。
【0045】
補強要素の周りの少なくとも1つのカーカス層の折り返しを回避し、それによってタイヤのアーキテクチャを簡素化することを可能にする実施形態では、カーカス補強材が、少なくとも1つのカーカス層を備え、上記又は各カーカス層の境界が2つの軸線方向縁部によって軸線方向に定められ、各軸線方向縁部は、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素の半径方向内側端部と軸線方向外側連続フィラメント状補強要素の半径方向内側端部の間に軸線方向に配置される。
【0046】
表現「軸線方向にその間」は、上記又は各カーカス層の各軸線方向縁部が、タイヤの子午断面平面内で、このような連続フィラメント状補強要素の各半径方向内側端部を通過する2つの半径方向直線の間に閉じ込められることを意味する。
【0047】
第1の変形では、カーカス補強材は、単一カーカス層を備える。この第1の変形では、カーカス補強材は、この単一カーカス層以外にフィラメント状補強要素によって補強されるいずれの層も持たない。そのような被補強層がタイヤのカーカス補強材から除外されるフィラメント状補強要素は、金属フィラメント状補強要素と繊維フィラメント状補強要素とを備える。非常に好ましくは、カーカス補強材は、単一カーカス層で作られる。
【0048】
例えば、タイヤが「Extra-Load(高負荷指数)」又は「Reinforced(補強型)」のマーキングを与える要件を満足することを可能にするために、特に、カーカス補強材の追加の補強を必要とするタイヤに使用可能な第2の変形では、カーカス補強材は、半径方向内側カーカス層と、その外側に配置された半径方向外側カーカス層とを備える。
【0049】
第2の変形では、カーカス層の係止を改善するために、各ビードは、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素と軸線方向外側連続フィラメント状補強要素の間に軸線方向に配置された軸線方向中間連続フィラメント状補強要素を備え:半径方向内側カーカス層は、軸線方向に2つの軸線方向縁部によって境界が定められ、半径方向内側カーカス層の軸線方向縁部の一方は、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素の半径方向内側端部と軸線方向中間連続フィラメント状補強要素の半径方向内側端部の間に配置され、かつ半径方向外側カーカス層は、2つの軸線方向縁部によって軸線方向に境界が定められ、半径方向外側カーカス層の軸線方向縁部の一方は、軸線方向中間連続フィラメント状補強要素の半径方向内側端部と軸線方向外側連続フィラメント状補強要素の半径方向内側端部の間に配置される。
【0050】
有利には、軸線方向中間連続フィラメント状補強要素は、半径方向に互いの上に重ね合わされたNm≧2個の円周方向巻回を備えることができ、更に半径方向外側自由端と半径方向内側自由端とを備え、本発明に従うことができ、すなわち、条件I’’’及びII’’’のうちの少なくとも一方を満足することができる:I’’’.半径方向外側自由端が、その方位角に、半径方向外側自由端の外側に半径方向に配置された軸線方向中間連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第1の部分と、軸線方向中間半径方向外側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第2の部分との間に半径方向に配置され、II’’’.半径方向内側自由端が、その方位角に、半径方向内側自由端の外側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第1の部分と、軸線方向中間半径方向内側自由端の内側に半径方向に配置された連続フィラメント状補強要素の少なくとも1つの第2の部分との間に半径方向に配置される。
【0051】
タイヤがその全周の周りに予想個数の円周方向巻回を備えることを保証するために、半径方向外側自由端の方位角と半径方向内側自由端の方位角は、90°と180°の間の角度間隔だけ互いに分離される。更に、半径方向外側自由端の方位角と半径方向内側自由端の方位角を角度オフセットすることにより、連続フィラメント状補強要素の質量を分散させることでタイヤの均一性が改善される。
【0052】
ETRTOによって定められたラジアルタイヤとして公知のタイヤの性能態様を達成することを可能にする実施形態では、カーカス補強材は、少なくとも1つのカーカス層を備え、上記又は各カーカス層は、タイヤの円周方向と絶対値で60°よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは80°から90°の範囲の角度を形成する主方向に実質的に沿って各々が延びる複数のカーカスフィラメント状補強要素を備える。
【0053】
表現「フィラメント状補強要素が延びる主方向」は、フィラメント状補強要素がその最大長に沿って延びる方向を意味する。フィラメント状補強要素が延びる主方向は、直線又は曲線とすることができ、補強要素は、その主方向に沿って直線経路又は波状経路を示すことができる。
【0054】
このタイヤでは、このような角度は、基準直線、この場合はタイヤの円周方向と、このようなフィラメント状補強要素が延びる主方向との間に定められる2つの角度のうちで絶対値で小さい方の角度である。
【0055】
このタイヤでは、角度の向きは、フィラメント状補強要素が延びる主方向に到達するまでの角度を定める基準直線、この場合は支持体又はタイヤの円周方向から回転する必要がある時計周り又は反時計周りの方向を意味する。
【0056】
有利には、クラウンは、タイヤが走行している時に地面との接触状態になるように意図されたトレッド、及び半径方向にトレッドとカーカス補強材の間に配置されたクラウン補強材を備える。
【0057】
すなわち、クラウンは、トレッドとクラウン補強材を備える。トレッドは、半径方向外側に向けて地面と接触状態になるように意図された面により、半径方向内側に向けてクラウン補強材によって境界が定められたポリマー材料、好ましくは、エラストマー材料のストリップであると理解しなければならない。
【0058】
ポリマー材料のストリップは、ポリマー材料、好ましくはエラストマー材料の層から構成されるか、又はポリマー材料、好ましくはエラストマー材料のスタックから構成される。
【0059】
有利には、クラウン補強材は、少なくとも1つの作動層を備える作動補強材を備え、上記又は各作動層は、タイヤの円周方向と絶対値で厳密に10°よりも大きく、好ましくは15°から50°、より好ましくは25°から45°の範囲の角度を形成する主方向に沿って各々が延びる複数の作動フィラメント状補強要素を備える。
【0060】
タイヤのクラウンの有効な三角形分割を達成するために、作動補強材は2つの作動層を備え、作動層のうちの1つの各作動フィラメント状補強要素が延びる主方向は、タイヤの円周方向と反対向きの角度を形成する。
【0061】
高速又は高圧下でのタイヤの幾何学的一体性及び性能態様を改善するために、クラウン補強材は、少なくとも1つのフーピング層を備えるフープ補強材を備え、上記又は各フーピング層は、タイヤの円周方向と絶対値で10°よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは7°よりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは5°よりも小さいか又はそれに等しい角度を形成する上記又は各フーピングフィラメント状補強要素の主方向に沿って円周方向に螺旋状に巻かれたフーピングフィラメント状補強要素を備える。
【0062】
すなわち、フープ補強材は、半径方向に作動補強材とトレッドの間に挟まれる。
【0063】
有利な実施形態では、クラウン補強材は、単一フープ補強材と単一作動補強材を備える。すなわち、クラウン補強材は、このフープ補強材及び作動補強材以外にフィラメント状補強要素によって補強されるいずれの補強材も持たない。そのような補強材がタイヤのクラウン補強材から除外されるフィラメント状補強要素は、金属フィラメント状補強要素と繊維フィラメント状補強要素を備える。非常に好ましくは、クラウン補強材は、フープ補強材と作動補強材で構成される。
【0064】
非常に好ましい実施形態では、クラウンは、クラウン補強材以外にフィラメント状補強要素によって補強されるいずれの補強材も持たない。そのような補強材がタイヤのクラウンから除外されるフィラメント状補強要素は、金属フィラメント状補強要素と繊維フィラメント状補強要素を備える。非常に好ましくは、クラウンは、トレッドとクラウン補強材で構成される。
【0065】
非常に好ましい実施形態では、カーカス補強材は、半径方向にクラウン補強材と直接的な接触状態に置かれ、クラウン補強材は、半径方向にトレッドと直接的な接触状態に置かれる。
【0066】
表現「半径方向に直接接触状態」は、半径方向に互いに直接接触しているそのような物体、この場合は層、補強材、又はトレッドが、半径方向に互いに直接接触しているそのような物体間に半径方向に挟まれたいずれかの物体により、例えば、いずれかの層、補強材、又はストリップによって半径方向に分離されないことを意味する。
【0067】
有利には、各層のフィラメント状補強要素は、エラストマー母材内に埋め込まれる。異なる層は、同じエラストマー母材又は異なるエラストマー母材を備えることができる。
【0068】
エラストマー母材は、架橋状態でエラストマー挙動を提供する母材を意味する。そのような母材は、少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを備える組成物を架橋することによって有利に得られる。好ましくは、少なくとも1つのエラストマーと少なくとも1つの他の成分とを備える組成物は、エラストマーと、架橋システムと、充填材とを備える。これらの層に使用される組成物は、天然ゴム又はいずれかの他のジエンエラストマー、カーボンブラックのような補強充填材、加硫系、及び従来の添加物に典型的に基づく補強材をカレンダー加工するための従来の組成物である。フィラメント状補強要素とそれが埋め込まれる母材との間の接着は、例えば、従来の接着剤組成物、例えば、RFL型の接着剤又は同等の接着剤によって保証される。
【0069】
有利には、各作動フィラメント状補強要素は金属である。定義により、金属フィラメント状要素は、全体が金属材料によって製造された(100%のスレッドに対して)いくつかの基本モノフィラメントのうちの1つ又はそのアセンブリから形成されたフィラメント状要素を意味する。好ましくは、そのような金属フィラメント状要素は、鋼鉄、より好ましくは下記で「炭素鋼」と呼ぶパーライト(又はフェライト-パーライト)炭素鋼で製造されるか又はステンレス鋼(定義により、ステンレス鋼は、少なくとも11%のクロムと少なくとも50%の鉄とを備える)で製造された1又は2以上のスレッドを用いて実施される。しかし、勿論、他の鋼鉄又は他の合金を使用することができる。炭素鋼が有利に使用される時に、その炭素含有量(鋼鉄の重量%)は、好ましくは0.05%から1.2%、特に0.5%から1.1%にわたり、これらの含有量は、タイヤに必要とされる機械的特性とこれらのスレッドの実行可能性との間の良好な妥協である。使用される金属又は鋼鉄は、それが特に炭素鋼又はステンレス鋼のいずれであるかに関わらず、それ自体に、例えば、金属コード及び/又はその構成要素の加工性、又はグリップ特性、耐腐食特性、又は耐経年劣化特性のようなコード及び/又はタイヤ自体の消耗特性を改善する金属層を被覆することができる。好ましい実施形態により、使用される鋼鉄は、黄銅(Zn-Cu合金)又は亜鉛の層で覆われる。各金属基本モノフィラメントは、上述のように、好ましくは炭素鋼で製造され、1000MPaから5000MPaにわたる機械強度を有する。そのような機械強度は、タイヤの分野で一般的に遭遇する鋼鉄等級、すなわち、NT(標準張力)等級、HT(高張力)等級、ST(超張力)等級、SHT(超高張力)等級、UT(ウルトラ張力)等級、UHT(ウルトラ高張力)等級、及びMT(メガ張力)等級に対応し、高機械強度の使用は、コードを中に埋め込むことが意図される母材の補強の改善及びそのようにして補強される母材の軽量化を潜在的に可能にする。いくつかの金属基本モノフィラメントのうちの1つ又はアセンブリは、例えば、US20160167438に説明されているようにポリマー組成物で被覆することができる。
【0070】
本発明の別の主題は、上記で定めたタイヤを製造する方法であり、支持体上にビードのうちの少なくとも一方の少なくとも一部を形成するように意図され、支持体の自転軸線の周りに回転対称性を実質的に提供するポリマー組成物の塊体が配置され、次に、段階EI及びEIIの一方又は他方が実施される:EI.半径方向外側自由端が、ポリマー組成物の塊体との直接的な接触状態に置かれ、次に、半径方向外側自由端が、半径方向外側自由端の方位角に、半径方向外側自由端の外側に半径方向に配置される連続フィラメント状補強要素の少なくとも第1の部分と、半径方向外側自由端の内側に半径方向に配置される連続フィラメント状補強要素の少なくとも第2の部分との間に半径方向に配置されるように、連続フィラメント状補強要素が、支持体の自転軸線の周りに互いの上に重ね合わされたN≧2個の円周方向巻回を通して巻かれ、EII,半径方向内側自由端が、ポリマー組成物の塊体との直接的な接触状態に置かれ、次に、半径方向内側自由端が、半径方向内側自由端の方位角に、半径方向内側自由端の外側に半径方向に配置される連続フィラメント状補強要素の少なくとも第1の部分と、半径方向内側自由端の内側に半径方向に配置される連続フィラメント状補強要素の少なくとも第2の部分との間に半径方向に配置されるように、連続フィラメント状補強要素が、支持体の自転軸線の周りに互いの上に重ね合わされたN≧2個の円周方向巻回を通して巻かれる。
【0071】
そのような方法は、例えば、WO03/101713、EP1094930、EP1463627、又はEP0976535に説明されているように、特に、支持体の自転軸線の周りに実質的にトロイダル形状の変形不能な剛性支持体を用いて実施することができる。
【0072】
本方法は、通されるように意図された自由端を最初にポリマー組成物の塊体上に配置し、それを後に形成される巻回で覆うことによって捕捉することを有利に可能にする。すなわち、通されるように意図された自由端が、1又は2以上の後に形成された巻回で覆われた状態で、通されるように意図された自由端は、捕捉されて以後摺動することができず、それによってこうして形成された生タイヤのその後の容易な取り扱いを可能にする。
【0073】
本方法は、通されるように意図されない自由端で巻装が開始され、本発明によるタイヤを製造することを可能にするが、通されるように意図された自由端が最後に配置され、すなわち、捕捉されないと考えられる方法よりも有意に有利である。通されるように意図された自由端は、事前に形成された1又は2以上の巻回と軸線方向に外側で交差する必要があると考えられ、こうして形成された生タイヤ上にこの自由端を係止するための追加の手段が設けられない限り、ポリマー組成物の塊体からバラバラになるリスクを招くと考えられる。
【0074】
本発明によるポリマー組成物は、少なくとも1つのポリマーを備える組成物である。ポリマーは、1又は2以上のモノマーの重合からもたらされる高分子である。好ましいポリマーの中でも取りわけ、熱可塑性ポリマー、熱硬化ポリマー、及び共架橋可能ポリマーが挙げられる。熱可塑性ポリマーの中でも取りわけ、例えば、ポリエステル、芳香族ポリアミド、脂肪族ポリアミド、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、好ましくはジエン熱可塑性エラストマー、これらのポリマーのコポリマー、及びこれらのポリマーの混合物が挙げられる。熱硬化ポリマーの中でも取りわけ、アミノプラスト樹脂、フェノプラスト、ポリウレタン、ビニルエステル樹脂、及びこれらのポリマーの混合物が挙げられる。共架橋可能ポリマーの中でも取りわけ、少なくとも1つの不飽和又は二重結合、例えば、非常に好ましくはジエンエラストマーを備えるポリマーが挙げられる。言うまでもなく、ポリマー組成物は、更に別の構成物、例えば、架橋システム、充填材、樹脂、又はタイヤの分野で一般的に使用される他の添加物を備えることができる。
【0075】
本発明及びその利点は、以下の詳細説明及び非限定的な例示的実施形態に鑑みて、更にこれらの例に関連する
図1~
図27から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【
図1】
図2の子午断面平面1-1’上の従来技術のタイヤの図である。
【
図2】
図1のタイヤの分離された連続フィラメント状補強要素の概略図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態によるタイヤの
図1のものと類似の図である。
【
図4】クラウン内及びその下のフィラメント状補強要素の配置を示す
図3のタイヤの切り欠き図である。
【
図5】
図3のタイヤの分離された連続フィラメント状補強要素の
図2のものと類似の図である。
【
図7】
図5の子午断面平面7-7’上の
図3のタイヤのビードの図である。
【
図8】
図5の子午断面平面8-8’上の
図3のタイヤのビードの図である。
【
図9】
図3のタイヤを製造する方法の異なる段階を示す図である。
【
図10】
図3のタイヤを製造する方法の異なる段階を示す図である。
【
図11】
図3のタイヤを製造する方法の異なる段階を示す図である。
【
図12】
図3のタイヤを製造する方法の異なる段階を示す図である。
【
図13】
図3のタイヤを製造する方法の異なる段階を示す図である。
【
図14】
図3のタイヤを製造する方法の異なる段階を示す図である。
【
図15】第2の実施形態によるタイヤのビードの図である。
【
図18】本発明の第3の実施形態によるタイヤのビードの図である。
【
図19】本発明の第3の実施形態によるタイヤのビードの図である。
【
図26】第4の実施形態によるタイヤの
図3のものと類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0077】
タイヤに関するこれらの図には、タイヤの通常の軸線(Y)方向、半径(Z)方向、及び円周(X)方向にそれぞれ対応する座標系X、Y、Zを例示する。方法に関する図には、y軸の周りに実質的に円環形状の製造支持体の軸線(Y)方向、半径(Z)方向、及び円周(X)方向にそれぞれ対応する座標系X、Y、Zを例示する。
【0078】
図3は、本発明によるかつ全体参照番号10で表すタイヤを例示する。タイヤ10は、軸線方向Yに対して実質的に平行な自転軸線の周りに実質的に円環形状を有する。タイヤ10は、この場合は乗用車に関連し、275/35R20のサイズを有する。
【0079】
タイヤ10は、走行時に地面と接触するように意図されたトレッド14とクラウン12内で円周方向Xに延びるクラウン補強材16とを含むクラウン12を備える。タイヤ10はまた、タイヤ10が、装着支持体、例えばリム上に装着された状態で、タイヤ10に対する装着支持体によって閉鎖される内部キャビティの境界を定めるように意図された膨張ガスに対する気密層18を備える。気密層18はブチルを利用したものである。
【0080】
クラウン補強材16は、作動補強材20とフープ補強材22を備える。
【0081】
作動補強材16は、少なくとも1つの作動層、この場合は2つの作動層24、26を備える。この特定の事例では、作動補強材16は、2つの作動層24、26から構成される。半径方向内側作動補強材24は、半径方向外側作動層26の半径方向内側に配置される。
【0082】
フープ補強材22は、少なくとも1つのフーピング層、この場合は1つのフーピング層28を備える。フープ補強材22は、この場合はフーピング層28から構成される。
【0083】
クラウン補強材16は、半径方向にトレッド14を載せている。この場合に、フープ補強材22、この場合にフーピング層28は、作動補強材20の半径方向外側に配置され、すなわち、半径方向に作動補強材20とトレッド14の間に挟まれる。好ましくは、フープ補強材22は、作動補強材20の軸線方向幅と少なくとも同程度に大きい軸線方向幅を有し、この特定の事例での
図3に図示の実施形態では、フープ補強材22が作動補強材20の軸線方向幅よりも大きい軸線方向幅を有するように想定可能とすることができる。
【0084】
タイヤ10は、クラウン12から半径方向内向きに延びる2つの側壁30を備える。更に、タイヤ10は、側壁30の半径方向内側に2つのビード32を有する。各側壁30は、各ビード32をクラウン12に接続する。
【0085】
各側壁30は、下側半径方向側面R1と上側半径方向側面R2の間を半径方向に延びる。下側半径方向側面R1は、子午断面平面内で半径方向境界に対応する軸線方向直線であり、各境界32は、特にETRTO規格マニュアル2019によって定められるようにタイヤの取り付けに向けてリムのフランジと接触状態になるように意図されたタイヤの部分として定められることをここで思い出されるであろう。上側半径方向側面R2は、子午断面平面内でカーカス層に対して垂直であるか、又はタイヤがいくつかのカーカス層を備える場合は半径方向最内側のカーカス層に対して垂直であり、側壁30とトレッド14の間の境界に対応するタイヤ10の外面上の点Pを通過する直線である。点Pを決定するために、公称圧力まで膨張させた装着位置にあるタイヤの子午断面平面上の側壁30とトレッド14の間の移行ゾーン内の外面のいずれかの点でこの外面に対するタンジェントNが引かれる。点Pは、このタンジェントNと半径方向Zに対して実質的に平行な方向との間の角度が絶対値で60°に等しい半径方向最外側である。
【0086】
各ビード32は、上述した上側半径方向側面R1と下側半径方向側面R0とによって境界が定められる。各ビード32は、下側半径方向側面R0を定める半径方向内側端部32Aを有する。
【0087】
タイヤ10は、各ビード32内に係止されたカーカス補強材34を備える。カーカス補強材34は、各側壁30内でクラウン12の半径方向内側に延びる。クラウン補強材16は、半径方向にトレッド20とカーカス補強材34の間に配置される。カーカス補強材34は、少なくとも1つのカーカス層、この場合は単一カーカス層36を備える。この特定の事例では、カーカス補強材34は、単一カーカス層36から構成される。
【0088】
各作動層24、26、フーピング層28、及びカーカス層36は、対応する層の1又は2以上のフィラメント状補強要素が中に埋め込まれたエラストマー母材を備える。次に、
図4を参照してこれらの層を以下に説明する。
【0089】
フープ補強材22、この場合にフーピング層28は、フープ補強材22の2つの軸線方向縁部28A、28Bによって軸線方向に境界が定められる。フープ補強材22は、1又は2以上のフーピングフィラメント状補強要素280を備え、これらのフーピングフィラメント状補強要素280は、フーピング層28の軸線方向縁部28Aから他方の軸線方向縁部28Bまで各フーピングフィラメント状補強要素280の主方向D0に軸線方向に延びるように円周方向に螺旋状に巻かれる。主方向D0は、タイヤ10の円周方向Xと絶対値で10°よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは7°よりも小さいか又はそれに等しく、より好ましくは5°よりも小さいか又はそれに等しい角度AFを構成する。この場合に、AF=-5°である。本説明では、時計周り方向が正の向きの角度を定めるという慣例を採用する。
【0090】
半径方向内側作動層24は、2つの軸線方向縁部24A、24Bによって軸線方向に境界が定められる。半径方向内側作動層24は、軸線方向縁部24Aから他方の軸線方向縁部24Bまで主方向D1に沿って互いに対して実質的に平行な方式で軸線方向に延びる作動フィラメント状補強要素240を備える。同様に、半径方向外側作動層26は、2つの軸線方向縁部26A、26Bによって軸線方向に境界が定められる。半径方向外側作動層26は、軸線方向縁部26Aから他方の軸線方向縁部26Bまで主方向D2に沿って互いに対して実質的に平行な方式で軸線方向に延びる作動フィラメント状補強要素260を備える。半径方向内側作動層24の各作動フィラメント状補強要素240がそれに沿って延びる主方向D1と、他方の半径方向外側作動層26の各作動フィラメント状補強要素260がそれに沿って延びる主方向D2とは、タイヤ10の円周方向Xとそれぞれ反対の角度AT1とAT2を構成する。各主方向D1、D2は、それぞれ、タイヤ10の円周方向Xと絶対値で厳密に10°よりも大きく、好ましくは15°から50°にわたり、より好ましくは25°から45°の範囲の角度AT1、AT2を構成する。この場合に、AT1=-33°であり、AT2=+33°である。
【0091】
カーカス層36は、2つの軸線方向縁部36A、36Bによって境界が定められる。カーカス層36は、カーカス層36の軸線方向縁部36Aから他方の軸線方向縁部36Bまでタイヤ10の円周方向Xと絶対値で60°よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは80°から90°にわたり、この場合はAC=+90°である角度ACを形成する主方向D3に沿って軸線方向に延びる複数のカーカスフィラメント状補強要素360を備える。
【0092】
各フーピングフィラメント状補強要素280は、従来2つのマルチフィラメントストランドを備え、これらのマルチフィラメントストランドの一方は、脂肪族ポリアミド、この場合は140テックスに等しいスレッドカウントを有するナイロンのモノフィラメントの紡績スレッドを備え、これらのマルチフィラメントストランドのうちの他方は、芳香族ポリアミド、この場合は167テックスに等しいスレッドカウントを有するアラミドのモノフィラメントの紡績スレッドを備え、これら2つのマルチフィラメントストランドは、1つの方向に1メートル当たり290回の巻回で螺旋状に個々に巻き付けられ、次に、反対方向に1メートル当たり290回の巻回で螺旋状に互いに巻き付けられる。これら2つのマルチフィラメントストランドは、互いの周りに螺旋状に巻かれる。
【0093】
各作動フィラメント状補強要素180は、第1の方向、例えばZ方向に12.5mmのピッチで螺旋状に巻かれた鋼鉄の2つのモノフィラメントの内層と、その周りに第1の方向と反対の第2の方向、例えばS方向に12.5mmのピッチで螺旋状に巻かれた鋼鉄の4つのモノフィラメントの外層とのアセンブリであり、鋼鉄の各モノフィラメントは、0.23mmに等しい直径を有する。
【0094】
各カーカスフィラメント状補強要素340は、従来3つのマルチフィラメントストランドを備え、各マルチフィラメントストランドは、ポリエステル、この場合はPETのモノフィラメントの紡績スレッドを備え、これら3つのマルチフィラメントストランドは、1つの方向に1メートル当たり220回の巻回で螺旋状に個々に巻き付けられ、次に、反対方向に1メートル当たり220回の巻回で螺旋状に互いに巻き付けられる。これらのマルチフィラメントストランドの各々は、220テックスに等しいスレッドカウントを有する。
【0095】
タイヤ10は、少なくとも1つの円周方向補強要素を備える。この特定の事例では、タイヤ10は、軸線方向にカーカス補強材34の内側に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38と、軸線方向にカーカス補強材34の外側に配置された軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40とを備える。
図3は、それぞれ半径方向内側端部40A及び半径方向外側端部40Bを通過する軸線方向直線D40A及びD40Bを示しており、これらの2つの直線D40AとD40Bとの間を延びるカーカス補強材34の半径方向部分が軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の内側に軸線方向に配置されることを例示する。同様に、それぞれ半径方向内側端部38A及び半径方向外側端部38Bを通過する軸線方向直線D38A及びD38Bを示しており、これらの2つの直線D38AとD38Bとの間を延びるカーカス補強材34の半径方向部分が軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の外側に軸線方向に配置されることを例示する。軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38及び軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の各々は、それぞれ半径方向内側端部38A、40A及び半径方向外側端部38B、40Bを備える。すなわち、各連続フィラメント状補強要素38、40は、半径方向内側半径方向端部38A、40Aと半径方向外側半径方向端部38B、40Bとの間を半径方向に延びる。
【0096】
各連続フィラメント状補強要素38、40、特に軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40は、半径方向に各ビード32内で少なくとも部分的にこの場合は半径方向に各ビード32内全体に延びる。すなわち、各半径方向端部38A、38B、40A、40Bは、半径方向外側半径方向側面R1と半径方向内側半径方向側面R0の間に捕捉されて半径方向にビード32の境界を定める。
【0097】
カーカス層36の各軸線方向縁部36A、36Bは、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の半径方向内側端部38Aと、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の半径方向内側端部40Aとの間に軸線方向に配置される。
図3では、各半径方向内側端部38A、40Aの軸線方向側面は、2つの破線直線38C及び40Cを用いて描いている。
【0098】
軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38及び軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の各々は、いくつかの金属基本モノフィラメントのアセンブリを備え、この特定の事例では、5mmのピッチで螺旋状に巻かれた4つの0.35mm炭素鋼基本要素の内層と、10mmのピッチで内層の周りに螺旋状に巻かれた9つの0.35mm炭素鋼基本モノフィラメントの外層とのアセンブリから構成される。
【0099】
軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38は、10よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは8よりも小さいか又はそれに等しいNi個の完全円周方向巻回を備える。この場合に、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38は、自転軸線Aの周りに互いに半径方向に重ね合わされたNi=6個の完全円周方向巻回Ti1、Ti2、Ti3、Ti4、Ti5、及びTi6と、1つの不完全円周方向巻回Ti’7とを備える。軸線方向内側連続フィラメント状補強要素はまた、半径方向外側自由端E3と半径方向内側自由端E4(
図3から
図14には示していない)とを備える。
【0100】
同様に、
図5から
図14に見ることができるように、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40は、10よりも小さいか又はそれに等しく、好ましくは8よりも小さいか又はそれに等しいNe個の完全円周方向巻回を備える。この場合に、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40は、自転軸線Aの周りに互いに半径方向に重ね合わされたNe=6個の完全円周方向巻回Te1、Te2、Te3、Te4、Te5、及びTe6と、1つの不完全円周方向巻回Te’7とを備える。軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40は、半径方向外側自由端E1と半径方向内側自由端E2を備え、半径方向外側自由端E1は、半径方向に半径方向内側自由端E2の外側に配置される。
【0101】
図6を参照すると、kが軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40に沿って半径方向外側自由端E1から半径方向内側自由端E2まで増加する時に、完全円周方向巻回Te1は、半径方向外側端部E1で開始されて基準方位角Az0を定める。完全円周方向巻回Te1は、自転軸線Aの周りの完全円周方向巻回後の完全円周方向巻回Te2が次に開始する方位角Az0の前に終了する。完全円周方向巻回Te2は、自転軸線Aの周りの完全円周方向巻回後の完全円周方向巻回Te3が次に開始する方位角Az0の前に終了し、自転軸線Aの周りの完全円周方向巻回後の不完全円周方向巻回Te’7が次に開始する方位角Az0の前に終了する完全円周方向巻回Te6まで同じく続く。
【0102】
軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の軸線方向外側自由端E1は、その方位角、この場合は基準方位角Az0では、半径方向に半径方向外側自由端E1の外側に配置された軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の第1の部分50と、半径方向に半径方向外側自由端E1の内側に配置された軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の第2の部分52との間に半径方向に配置される。
【0103】
この特定の事例では、半径方向外側自由端E1は、完全円周方向巻回Te1とTe2にわたって配分された第1の部分50と、完全円周方向巻回Te2とTe3にわたって配分された第2の部分52の間に半径方向に配置される。
【0104】
第1の部分50と第2の部分52は、半径方向に連続的である。第1の部分50は、半径方向外側自由端E1の方位角Az0では、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の半径方向最外側部分である。
【0105】
すなわち、第1の実施形態によるタイヤ10は、上述した条件I及びI’’のみを満足する。
【0106】
図5の第2の平面3-3’上の断面図に対応する
図3では、端部E1は、黒塗り円の形態に示されている。
図3では、端部E1は、平面3-3’内で完全円周方向巻回Te1とTe2にわたって配分された第1の部分50と、完全円周方向巻回Te2とTe3にわたって配分された第2の部分52との間に半径方向に配置される。
【0107】
図5の断面平面7-7’、すなわち、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の2つの部分の間に軸線方向交差が存在する子午断面平面上の断面図に対応する
図7では、この平面7-7’内の巻回Te1の部分は、この同じ平面7-7’内の完全円周方向巻回Te2の部分と軸線方向に実質的に位置合わせする。
【0108】
図5の断面平面8-8’上の断面図に対応する
図8では、この平面8-8’内の巻回Te1の部分は、半径方向に完全円周方向巻回Te2の部分の外側に配置される。
【0109】
次に、
図9から
図14を参照して
図3のタイヤを製造する方法を以下に説明する。図示の方法は、非成形タイプのものであり、すなわち、変形不能な剛性製造支持体が使用される。この方式の方法は、WO03/101713、EP1094930、EP1463627、又はEP0976535に説明されている。
【0110】
第1の段階中に、製造支持体上にその自転軸線Bの周りに回転対称性を実質的に提供する気密層18が形成される。次に、気密層18上にビード32の少なくとも1つの部分を形成するように意図された第1のポリマー組成物の塊体が配置される。次に、この第1のポリマー組成物の塊体の上に軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38が配置される。更に、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38上にビード32の少なくとも1つの部分を形成するように意図された第2のポリマー組成物の塊体を軸線方向にカーカスフィラメント状補強要素360の外側に備えるカーカス層36が形成される。
【0111】
次に、第2のポリマー組成物の塊体上に軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40が配置される。この目的に対して、
図9に示すように、半径方向外側自由端E1は、第3のポリマー組成物の塊体との直接的な接触状態に置かれる。その後に、
図10から
図14に示すように、半径方向外側自由端E1がその方位角Az0で半径方向に第1の部分50と第2の部分52の間に配置されるように、連続フィラメント状補強要素40が、支持体の自転軸線Bの周りに互いの上に重ね合わされる6つの完全円周方向巻回Te1、Te2、Te3、Te4、Te5、及びTe6と不完全円周方向巻回T’e7とにわたって巻かれる。
【0112】
図5に示す軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40が得られる。すなわち、第1の実施形態による方法は、上述した条件EIのみを満足する。
【0113】
タイヤの製造は、ビード32の少なくとも1つの部分を形成するように意図され、更にタイヤ10の装着支持体、例えばリムと接触状態になるように意図された第3のポリマー組成物の塊体を半径方向外側連続フィラメント状補強要素40の上に配置することによって完了する。クラウン12は、作動補強材20、フープ補強材22、及びトレッド14を順番に敷くことによって形成される。
【0114】
図15から
図17は、本発明の第2の実施形態を示している。従来の図に例示したものと類似の要素を同じ参照番号で表示している。
【0115】
第1の実施形態とは対照的に、この場合は半径方向内側自由端E2が通される。すなわち、半径方向内側自由端E2は、方位角Az0に、半径方向に半径方向内側自由端E2の外側に配置された連続フィラメント状補強要素40の第1の部分54と、半径方向に半径方向内側自由端E2の内側に配置された連続フィラメント状補強要素40の第2の部分56との間に半径方向に配置される。
【0116】
この特定の事例では、半径方向外側自由端E2は、完全円周方向巻回Te2とTe3にわたって配分された第1の部分54と、完全円周方向巻回Te1とTe2にわたって配分された第2の部分56との間に半径方向に配置される。
【0117】
第1の部分54と第2の部分56は、半径方向に連続的である。第2の部分56は、半径方向内側自由端E2の方位角Az0では連続フィラメント状補強要素40の半径方向最内側部分である。
【0118】
すなわち、第2の実施形態によるタイヤ10は、上述した条件II及びII’’を満足する。
【0119】
第1の実施形態による方法とは対照的に、第2の実施形態によるタイヤを製造するために、半径方向内側自由端E2が、第2のポリマー組成物の塊体と直接的な接触状態に置かれ、次に、半径方向内側自由端E2が、その方位角Az0では半径方向に第1の部分54と第2の部分56の間に配置されるように、連続フィラメント状補強要素40は、支持体の自転軸線Bの周りに互いの上に重ね合わされる6つの円周方向巻回Te1、Te2、Te3、Te4、Te5、及びTe6と不完全円周方向巻回T’e7とにわたって巻かれる。
【0120】
図18から
図20は、本発明の第3の実施形態を示している。従来の図に例示したものと類似の要素を同じ参照番号で表示している。
【0121】
第3の実施形態は、第1の実施形態と第2の実施形態の組合せであり、この実施形態では、半径方向内側自由端E2及び半径方向外側自由端E1の各々が通される。
図20では、半径方向外側自由端E1の基準方位角Az0’は、半径方向内側自由端E2の基準方位角Az0’’と区別される。
図18は、
図20の断面平面18-18’上の断面図に対応し、
図19は、
図20の断面平面19-19’上の断面図に対応する。
【0122】
図21から
図25は、本発明の更に別の実施形態を示している。従来の図に例示したものと類似の要素を同じ参照番号で表示している。これらの図の実施形態では、従来の実施形態とは異なり、説明を簡易にするために半径方向外側自由端E1、E3と半径方向内側自由端E2、E4は同じ方位角Az0にある。それにも関わらず、本発明の範囲から逸脱することなく、半径方向外側自由端E1、E3と半径方向内側自由端E2、E4は、異なるか又は同じ方位角にあることが可能であると考えられ、
図21から
図25で説明する実施形態の他の特徴は再現される。
【0123】
図21は、条件I、I’、及びI’’のみが満足され、すなわち、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38及び軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の各々の各半径方向外側自由端E3、E1それぞれが通される実施形態を示している。この実施形態は、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38及び軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の各々の半径方向外側自由端でのあらゆる亀裂リスクを排除することを可能にすることで特に好ましい。
【0124】
この特定の事例では、第1の実施形態で説明した軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の特徴に加えて、このタイヤは、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の半径方向外側自由端E3が、その方位角Az0に、半径方向に半径方向外側自由端E3の外側に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の第1の部分60と、半径方向に半径方向外側自由端E3の内側に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の第2の部分62との間に半径方向に配置されるようなものである。
【0125】
図22は、条件II、II’、II’’のみが満足され、すなわち、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38及び軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の各々の各半径方向内側自由端E4、E2それぞれが通される実施形態を示している。
【0126】
この特定の事例では、第2の実施形態で説明した軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の特徴に加えて、このタイヤは、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の半径方向外側自由端E4が、その方位角Az0に、半径方向に半径方向内側自由端E4の外側に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の第1の部分64と、半径方向に半径方向内側自由端E4の内側に配置された軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の第2の部分66との間に半径方向に配置されるようなものである。
【0127】
図23は、タイヤに関して条件I、IIが両方共に満足され、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38に関して条件I’のみが満足され、すなわち、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の半径方向外側自由端E3が通され、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40に関して条件II’’のみが満足され、すなわち、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の半径方向内側自由端E2が通される実施形態を示している。
【0128】
図24は、タイヤに関して条件I、IIが両方共に満足され、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38に関して条件II’’のみが満足され、すなわち、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の半径方向内側自由端E4が通され、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40に関して条件I’’のみが満足され、すなわち、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の半径方向外側自由端E1が通される実施形態を示している。
【0129】
図25は、
図21に図示の実施形態と
図22に図示の実施形態との組合せ、又は
図23に図示の実施形態と
図24に図示の実施形態との組合せからもたらされる実施形態を示しており、すなわち、タイヤに関して条件I、IIが両方共に満足され、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38に関して条件I’、II’が両方共に満足され、すなわち、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の半径方向外側自由端E3及び半径方向内側自由端E4の各々が通され、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40に関して条件I’’、II’’が両方共に満足され、すなわち、軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の半径方向外側自由端E1及び半径方向内側自由端E2が通されることを意味する。
【0130】
図26は、本発明の第4の実施形態を示している。従来の図に例示したものと類似の要素を同じ参照番号で表示している。
【0131】
第1の実施形態とは異なり、カーカス補強材34は、2つのカーカス層を備える。この場合に、カーカス補強材34は、半径方向内側カーカス層36と、その外側に配置された半径方向外側カーカス層37とを備える。半径方向外側カーカス層37は、2つの軸線方向縁部37A、37Bによって軸線方向に境界が定められる。半径方向内側カーカス層36と同様に、半径方向外側カーカス層37は、外側カーカス層37の軸線方向縁部37Aから他方の軸線方向縁部37Bまでタイヤ10の円周方向Xと絶対値で60°よりも大きいか又はそれに等しく、好ましくは80°から90°にわたって、この場合は+90°に等しい角度を形成する主方向に沿って軸線方向に延びる複数のカーカスフィラメント状補強要素を備える。
【0132】
軸線方向内側補強要素38及び軸線方向外側補強要素40に加えて、各ビード32は、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38と軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の間に軸線方向に配置された軸線方向中間連続フィラメント状補強要素39を備える。軸線方向中間連続フィラメント状補強要素39は、半径方向内側端部39Aを備える。
図3と同様に、
図25では、各半径方向内側端部38A、39A、及び40Aの軸線方向側面を2つの破線直線38C、39C、及び40Cを用いて描いている。
【0133】
半径方向内側カーカス層36の軸線方向縁部36Aは、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38の半径方向内側端部38Aと軸線方向中間連続フィラメント状補強要素39の半径方向内側端部39Aの間に軸線方向に配置される。
【0134】
半径方向外側カーカス層37の軸線方向縁部37Aは、軸線方向中間連続フィラメント状補強要素39の半径方向内側端部39Aと軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の半径方向内側端部40Aの間に軸線方向に配置される。
【0135】
図26は、本発明の第5の実施形態を示している。従来の図に例示したものと類似の要素を同じ参照番号で表示している。
【0136】
第4の実施形態の場合のように、タイヤ10は、2つのカーカス層36、37を備える。しかし、第5の実施形態によるタイヤ10は、軸線方向内側連続フィラメント状補強要素38と軸線方向外側連続フィラメント状補強要素40の間に軸線方向に配置された軸線方向中間連続フィラメント状補強要素39を備えない。
【0137】
本発明は、上述した実施形態に限定されない。
【0138】
すなわち、例えば、上述の図に示していないが、半径方向外側自由端の方位角と半径方向内側自由端の方位角が90°と180の間、例えば120°の角度間隔だけ互いに分離されることは任意的に好ましいことになる。
【符号の説明】
【0139】
3、3’
図3の子午断面平面の断面平面
7、7’
図7の子午断面平面の断面平面
40 軸線方向外側連続フィラメント状補強要素
A 自転軸線
Az0 基準方位角