(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマー分散液
(51)【国際特許分類】
C08F 290/14 20060101AFI20240924BHJP
C08G 18/63 20060101ALI20240924BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240924BHJP
C09D 151/08 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C08F290/14
C08G18/63
C09D5/02
C09D151/08
(21)【出願番号】P 2022537457
(86)(22)【出願日】2019-12-18
(86)【国際出願番号】 US2019067016
(87)【国際公開番号】W WO2021126174
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミトラ,アミターバ
(72)【発明者】
【氏名】バーク,サラ
(72)【発明者】
【氏名】カリメンテ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ザントマイヤー,フランク
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-502771(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0305576(US,A1)
【文献】特開平08-003512(JP,A)
【文献】特開平08-092334(JP,A)
【文献】特開平03-281516(JP,A)
【文献】特開平07-277856(JP,A)
【文献】特開平09-279094(JP,A)
【文献】米国特許第05618879(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F290/00-290/14
C08G 18/00- 18/87
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和モノマーとエチレン性官能化シリコーン
樹脂との、架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液の調製方法であって、
(A) 1種以上
の(メタ)アクリル酸エステ
ルのモノマーの水性媒体中で、
(B) エチレン性不飽和ラジカル重合性基で官能化され、以下の一般式のシロキサン単位からなる少なくとも1種のシリコーン
樹脂の存在下で、
[R
1
p(OR
2)
zSiO
(4-p-z)/2] (I)、
[式中、R
1は、各場合で同一であるか又は異なっており、基R*又はEであり、ここで、
R*は、各場合で同一であるか又は異なっており、水素原子であるか、又は脂肪族多重C-C結合を含まず、1~18個の炭素原子を有し、任意に置換されていてもよい炭化水素基であり、
Eは、式-(CR
5
2)
m-Xのエチレン性不飽和基であり、ここで、
mは、1~10の整
数であり、
R
2は、各場合で同一であるか又は異なっており、水素原子であるか、又は1~18個の炭素原子を有する炭化水素基であり、
R
5は、水素原子、C
1~C
12アルキル基又はC
6~C
18アリール基であり、
Xは、エチレン性不飽和有機基であり、
R
1は、全シロキサン単位(I)の少なくとも1mol%かつ最大50mol%においてエチレン性不飽和基Eであり、
pは、0、1、2又は3であり、
zは、0、1、2又は3であり、
ここで、和p+zは、0、1、2又は3の値を有し、
ただし、シリコーン樹脂(B)中の式(I)の全シロキサン単位の少なくとも20mol%に対して、和p+zは1又は0であり、pは1又は0であり、zは0である。]、及び
(C) (A)の総重量に基づいて、6~50重量%の
量の、エチレン性不飽和基、及びフリーラジカル重合しないが、架橋できる少なくとも1つの追加の官能基を有する、少なくとも1種の化合物の存在下で
ラジカル開始ミニエマルション重合により該水性分散液が調製され、
(A)、(C)及び官能化シリコーン樹脂(B)の総重量に基づいて、(B)の割合が5~70重量%であり、
第1の工程において、1種以上の
(メタ)アクリル酸エステル(A)中で少なくとも1種のシリコーン
樹脂(B)の溶液を調製して、シリコーンインモノマー溶液を得て、
第2の工程において、得られたシリコーンインモノマー溶液を、乳化剤、任意に疎水性の共乳化剤、及び任意に早期のラジカル乳化重合を防止する重合阻害剤を用いて、水中で、粒子サイズD(50)が350nm以
下であるミニエマルションを与えるような方法で乳化し、
ただし、第1の工程においてシリコーンインモノマー溶液の調製中に、又は第2の工程においてミニエマルションを形成するための乳化中に、化合物(C)を加えるものとし、
第3の工程において、得られたミニエマルションをラジカル乳化重合に供する、ここでミニエマルション重合を、水溶性重合開始剤若しくは油溶性重合開始剤、又は水溶性重合開始剤及び油溶性重合開始剤の混合物を用いて実施する、方法。
【請求項2】
Eが式-(CH
2)
3-Xの基であり、式中、Xはエチレン性不飽和有機基であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
Xがアクリル基又はメタクリル基であることを特徴とする、請求項
1又は
2に記載の方法。
【請求項4】
シリコーン
樹脂(B)中の式(I)の全シロキサン単位の少なくとも
30モル
%について、和p+zが1又は0であり、pが1又は0であり、zが0であることを特徴とする、請求項
1、
2又は
3に記載の方法。
【請求項5】
基R*が、6~18個の炭素原子を有する炭素に富む炭化水素
基、並びに1~3個の炭素原子を有する炭素に乏しい
基の群から選択される少なくとも2つの異なる基であることを特徴とする、請求項
1~
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
化合物(C)が、以下からなる群から選択されるモノマーであることを特徴とする、請求項
1~
5のいずれか一項に記載の方法。
- エチレン性不飽和アルコール
、
- エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸並びにそれらの塩
、
- エチレン性不飽和スルホン酸及びその塩
、
- エチレン性不飽和の第一級、第二級又は第三級アミン
、
- エチレン性不飽和アミド
、
- エチレン性不飽和ホスホン酸及びその塩
、
- エチレン性不飽和エポキシド
、
- エチレン性不飽和イソシアネート
、
- エチレン性不飽和無水物
、
- 反応性カルボニル基を含有するエチレン性不飽和モノマー
、及び
- 反応性基を有するエチレン性不飽和オルガノシラ
ン。
【請求項7】
(1) 架橋可能な官能基を有す
る請求項
1~
6のいずれか一項に記載されたように製造された架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液、及び
(2) 架橋剤
を
混合することによって架橋可能な組成物
を製造する方法。
【請求項8】
(1) イソシアネート基と反応して架橋可能な官能
基を有する
、請求項
1~
6のいずれか一項に記載されたように製造された架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液、及び
(2) 架橋剤として2つ以上のイソシアネート基を有する有機化合物
を
混合することによって架橋可能な組成物
を製造する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項
7又は
8に記載
されたように製造された架橋可能な組成物を基材に塗布し、次いでそれらを架橋できるようにして、基材上にフィルムを形成する方法。
【請求項10】
請求項
1~
6のいずれか一項に記載されたように製造された、それ自身との反応により架橋可能な官能基を有する架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液を塗布し、次いでそれらを架橋できるようにして、基材上にフィルムを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水性分散液の形態のエチレン性不飽和モノマー及びエチレン性官能化シリコーンポリマーの架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマー、並びにその調製及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂のようなシリコーンポリマーは、有機ポリマーの化学修飾、又はコーティングのための結合剤として使用される。コーティング組成物としての使用のために、EP943634A1号には、シラノール基を含有するシリコーン樹脂の存在下でエチレン性不飽和モノマーを共重合することによって製造される水性ラテックスが記載されている。この場合、ポリマー鎖とポリシロキサン鎖の間に相互貫入網目構造(IPN)が形成される。
【0003】
これらの方法によって得ることができるシリコーン樹脂エマルションポリマー、及びシリコーン樹脂エマルションと有機ポリマー分散液との他の点で周知の物理的混合物は、例えば、シリコーン樹脂石造建築用塗料の領域で使用するために、シリコーン樹脂及び有機ポリマーがほぼ例外なく物理的ブレンドの形態で存在するという事実で知られている。シリコーン成分と有機成分との間の化学結合のあらゆる構築は偶然であり、加水分解を受けやすいSi-O-C結合を含む。この場合のSi-O-C結合は常にシラノール基同士の縮合によるSi-O-Siブリッジの形成と競合している。
【0004】
二重結合官能化シリコーンと有機モノマーとの共重合によるC-C結合の形成により、シリコーン構成単位の有機ポリマーへのより明確な付着が起こるはずである。直鎖状のエチレン性不飽和ポリオルガノシロキサンを用いたこの種の取り組みについては、さまざまな明細書に記載されている。例えば、EP1308468A1号は、疎水性変性コポリマーを教示しており、このコポリマーは、2つまでの重合性基を有する直鎖状シリコーンと有機モノマーとをエマルションン中で共重合させることによって得られる。同様のアプローチがEP352339A1号によって追求されており、ここではビニル末端の直鎖状ポリジメチルシロキサンを(メタ)アクリレートモノマーと共重合させる。
【0005】
EP771826A2号は、(メタ)アクリル酸エステル及びビニル芳香族化合物の乳化重合について記載しており、ここでは、架橋のためにアクリル基又はビニル基を含む二官能性シリコーンを添加する。US5,618,879A号は、この取り組みを同様に追求し、しかし少なくとも1つがエチレン性不飽和である2つの異なる官能基を有するオルガノポリシロキサンとエチレン性不飽和モノマーから形成されるグラフトコポリマーに限定される反応性水性コポリマー分散液を記載する。前記グラフトコポリマーは、官能性オルガノポリシロキサンの存在下でのエチレン性不飽和モノマーのラジカル乳化重合又はマイクロ懸濁重合によって得られる。US5,618,879A号は、原則として、直鎖状ポリオルガノシロキサン及びシリコーン樹脂の両方を可能にするが、ポリオルガノシロキサン反応物中の高度に架橋したQセグメントの割合は、US5,618,879A号において30%未満に制限される。
【0006】
しかし、有機モノマーのラジカル重合中のシリコーン樹脂の単なる存在は、シリコーンと生じる有機ポリマーとの間に化学結合も実際に生成されることを意味しない。このことを理解するためには、水性環境におけるラジカル重合の既知の機構をより詳しく調べる必要がある。シリコーンポリマーと有機ポリマーとの非相溶性が知られていることから、2相間に化学結合のないシリコーン相と有機ポリマー相からなる2相生成物の形成を想定することは明らかである。特に、ラジカル乳化重合の標準的な方法では、有機モノマーの重合反応は水相で始まり、さらに成長するミセルが形成され、ミセルは水相を経てさらなるモノマーとともに供給され、通常のラジカル乳化重合の経路では水に接近できない疎水性シリコーンオリゴマー又はシリコーンポリマー間の共重合は、真の共重合を推し進める特別な措置を講じない限り、かなり可能性が低いと思われることに留意する。ただし、前述の明細書では、そのような措置は取られていない。ラジカル乳化重合の標準的な方法では、主にエマルション調製中に形成されるエマルション液滴は、さもなければ有機モノマー中で枯渇し、最終的にシリコーンのみが残り、それはそれ自体と重合することができ、そのようにして分離相を形成する。この種の分散液を水の蒸発によって乾燥させると、結果はシリコーン相及び有機ポリマー相であり、互いに結合していない。重合過程で相分離が起こるので、この経路で得られた生成物の相互貫入網目構造の仮定は根拠がない。
【0007】
シリコーンと有機モノマー成分との間の共重合を促進又はもたらす適切な措置は、いかなる事象においても、水相を通る反応物の移動を含む排他的又は優勢な重合を除外しなければならない。換言すれば、重合は、油溶性開始剤を用いる懸濁重合の場合と同様に、反応物又はモノマーの液滴中で起こらなければならない。懸濁重合は、特に塩化ビニルポリマーの製造に一般的である。懸濁重合は、乳化重合よりも大幅に大きな粒子をもたらし(懸濁重合≧50μm、乳化重合<1μm)、大幅に大きな粒子サイズ分布をもたらす。また、懸濁重合の場合、乳化重合の場合よりも低分子量が達成される。その結果、懸濁重合の生成物は、乳化重合の生成物の場合とは異なる適用分野の領域である。
【0008】
懸濁重合(その方法に関して水中での塊状重合と見なすことができる)で比較的小粒径サイズを得るためには、その可能性は、懸濁ポリマーの予想される広い粒子サイズ分布と合わせて≧1μmの粒子サイズを可能にし、したがってすでに乳化重合の上位範囲に移動する、微細懸濁重合に存在する。よって、分布の狭いより小さな粒子サイズは、乳化重合によってのみ可能である。
【0009】
ラジカル重合により調製された、有機ポリマーとともに、粒子、及びシリコーン樹脂を含むシリコーンの小粒子コポリマー分散液は、US7,674,868B2号及びUS2018/0305576A1号により教示されている。いずれの場合も、シリコーン樹脂と有機ポリマー成分との間の共重合はミニエマルション重合で達成される。100nm未満の領域の粒子サイズが得られる。有機モノマーは、オレフィン性不飽和シリコーン樹脂の存在下で重合される。水溶性開始剤及び油溶性開始剤の組合せによって、重合がモノマー滴中及び水相中の両方で起こることが保証される。
【0010】
また、ミニエマルション重合は、危険な有機溶媒の取扱いが、多くの用途のために、例えば、水系コーティングにおいて、有機溶媒を除去する必要性のための不便さ及びコストと同様に、環境リスク及び安全リスクをもたらす溶液重合よりも利点を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】欧州特許出願公開第943634号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1308468号明細書
【文献】欧州特許出願公開第352339号明細書
【文献】欧州特許出願公開第771826号明細書
【文献】米国特許第5,618,879号明細書
【文献】米国特許第7,674,868号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0305576号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、安定な、特に貯蔵安定な、微細に分割された架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマー(シリコーンポリマーは有機ポリマー成分に結合し、問題の結合は、加水分解に対し安定なSi-C結合であり、コポリマーは、それ自身とのポスト架橋により、又は追加の架橋剤の存在下で、基材上にフィルムを形成することができる架橋可能な反応性基を付加的に含む)を、その水性分散液の形態で提供することによって、先行技術を改良することであった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は本発明によって達成される。
【0014】
本発明の主題は、エチレン性不飽和モノマーとエチレン性官能化シリコーンポリマーとの、架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液であって、
(A) 1種以上のエチレン性不飽和有機モノマー、好ましくはビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、1,3-ジエン、ビニルエーテル及びハロゲン化ビニルを包含する群からのモノマー、より好ましくはメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルの水性媒体中で、
(B) エチレン性不飽和ラジカル重合性基で官能化され、以下の一般式のシロキサン単位からなる少なくとも1種のシリコーンポリマー、好ましくはシリコーン樹脂の存在下で、
[R1
p(OR2)zSiO(4-p-z)/2] (I)、
[式中、R1は各場合で同一であるか又は異なっており、基R*又はEであり、ここで、
R*は、各場合で同一であるか又は異なっており、水素原子であるか、又は脂肪族多重C-C結合を含まず、1~18個の炭素原子、好ましくはC1~C18アルキル、C6~C18シクロアルキル又はC6~C18アリール基を有し、任意に置換されていてもよい炭化水素基であり、
Eは、式-(CR5
2)m-X、好ましくは-(CH2)3-Xのエチレン性不飽和基であり、ここで、
mは、1~10の整数、好ましくは3であり、
R2は、各場合で同一であるか又は異なっており、水素原子であるか、又は1~18の炭素原子を有する炭化水素基、好ましくはC1~C18アルキル基又はC6~C18シクロアルキル基であり、
R5は、水素原子、C1~C12アルキル基又はC6~C18アリール基、好ましくは水素原子であり、
Xは、エチレン性不飽和有機基であり、
R1は、全シロキサン単位(I)の少なくとも1mol%かつ最大50mol%においてエチレン性不飽和基Eであり、
pは、0、1、2又は3であり、
zは、0、1、2又は3であり、
ここで、和p+zは、0、1、2又は3の値を有し、
ただし、シリコーンポリマー(B)中の式(I)の全シロキサン単位の少なくとも20mol%に対して、和p+zは1又は0であり、pは1又は0であり、zは0である。]、及び
(C) (A)の総重量に基づいて、6~50重量%の量、好ましくは10~40重量%の量、より好ましくは10~20重量%の量の、エチレン性不飽和基、及びフリーラジカル重合しないが、架橋できる少なくとも1つの追加の官能基を有する、少なくとも1種の化合物の存在下で
ラジカル開始ミニエマルション重合により得ることができ、
ミニエマルション重合は、第1の工程において、1種以上のエチレン性不飽和モノマー中の少なくとも1種のシリコーンポリマー(B)の溶液を調製して、シリコーンインモノマー(silicone-in-monomer)溶液を得て、
第2の工程において、乳化剤、任意に疎水性の共乳化剤、及び任意に早期のラジカル乳化重合を防止する重合阻害剤を用いて、得られたシリコーンインモノマー溶液を水中で、粒子サイズD(50)が350nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、非常に好ましくは200nm以下であるミニエマルションを与えるような方法で乳化し、
ただし、第1の工程においてシリコーンインモノマー溶液の調製中に、又は第2の工程においてミニエマルションを形成するための乳化中に、化合物(C)を加えるものとし、
第3の工程において、得られたミニエマルションをラジカル乳化重合に供する、ここでミニエマルション重合を、水溶性重合開始剤若しくは油溶性重合開始剤、又は水溶性重合開始剤及び油溶性重合開始剤の混合物を用いて実施する。
【0015】
本発明のさらなる主題は、エチレン性不飽和モノマーとエチレン性官能化シリコーンポリマーとの、架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液の調製方法であって、
(A) 1種以上のエチレン性不飽和有機モノマー、好ましくはビニルエステル、(メタ)アクリル酸エステル、ビニル芳香族化合物、オレフィン、1,3-ジエン、ビニルエーテル及びハロゲン化ビニルを包含する群からのモノマー、より好ましくはメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルの水性媒体中で、
(B) エチレン性不飽和ラジカル重合性基で官能化され、以下の一般式のシロキサン単位からなる少なくとも1種のシリコーンポリマー、好ましくはシリコーン樹脂の存在下で、
[R1
p(OR2)zSiO(4-p-z)/2] (I)、
[式中、R1は、各場合で同一であるか又は異なっており、基R*又はEであり、ここで、
R*は、各場合で同一であるか又は異なっており、水素原子であるか、又は脂肪族多重C-C結合を含まず、1~18個の炭素原子、好ましくはC1~C18アルキル、C6~C18シクロアルキル又はC6~C18アリール基を有し、任意に置換されていてもよい炭化水素基であり、
Eは、式-(CR5
2)m-Xの基であり、好ましくは-(CH2)3-Xのエチレン性不飽和基であり、ここで、
mは、1~10の整数、好ましくは3であり、
R2は、各場合で同一であるか又は異なっており、水素原子であるか、又は1~18の炭素原子を有する炭化水素基、好ましくはC1~C18アルキル基又はC6~C18シクロアルキル基であり、
R5は、水素原子、C1~C12アルキル基又はC6~C18アリール基、好ましくは水素原子であり、
Xは、エチレン性不飽和有機基であり、
R1は、全シロキサン単位(I)の少なくとも1mol%かつ最大50mol%においてエチレン性不飽和基Eであり、
pは、0、1、2又は3であり、
zは、0、1、2又は3であり、
ここで、和p+zは、0、1、2又は3の値を有し、
ただし、シリコーンポリマー(B)中の式(I)の全シロキサン単位の少なくとも20mol%に対して、和p+zは1又は0であり、pは1又は0であり、zは0である。]、及び
(C) (A)の総重量に基づいて、6~50重量%の量、好ましくは10~40重量%の量、より好ましくは10~20重量%の量の、エチレン性不飽和基、及びフリーラジカル重合しないが、架橋できる少なくとも1つの追加の官能基を有する、少なくとも1種の化合物の存在下で
ラジカル開始ミニエマルション重合により該水性分散液が調製され、
第1の工程において、1種以上のエチレン性不飽和モノマー中で少なくとも1種のシリコーンポリマー(B)の溶液を調製して、シリコーンインモノマー溶液を得て、
第2の工程において、得られたシリコーンインモノマー溶液を乳化剤、任意に疎水性の共乳化剤、及び任意に早期のラジカル乳化重合を防止する重合阻害剤を用いて、水中で、粒子サイズD(50)が350nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、非常に好ましくは200nm以下であるミニエマルションを与えるような方法で乳化し、
ただし、第1の工程においてシリコーンインモノマー溶液の調製中に又は第2の工程においてミニエマルションを形成するための乳化中に、化合物(C)を加えるものとし、
第3の工程において、得られたミニエマルションをラジカル乳化重合に供する、ここでミニエマルション重合を、水溶性重合開始剤、若しくは油溶性重合開始剤又は水溶性重合開始剤及び油溶性重合開始剤の混合物を用いて実施する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
使用されるエチレン性不飽和モノマー(A)はビニルエステルであり、好ましくは1~15個の炭素原子を有するカルボン酸のビニルエステルである。好ましいのは、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニル2-エチルヘキサノエート、ビニルラウレート、1-メチルビニルアセテート、ビニルピバレート、及び9~11個の炭素原子を有するα-分枝モノカルボン酸のビニルエステルであり、例えば、VeoVa9(R)又はVeoVa10(R)(Resolutionの商品名)である。特に好ましいのは酢酸ビニルである。
【0017】
アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルの群からの適切なモノマーは、1~15個の炭素原子を有する非分枝又は分枝アルコールのエステルである。好ましいメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert-ブチルアクリレート、tert-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びノルボルニルアクリレートである。特に好ましいのは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びノルボルニルアクリレートである。
【0018】
好ましいビニル芳香族化合物は、スチレン、アルファ-メチルスチレン、異性体ビニルトルエン及びビニルキシレン、並びにジビニルベンゼンである。特に好ましいのはスチレンである。
【0019】
ハロゲン化ビニル化合物としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、並びにテトラフルオロエチレン、ジフルオロエチレン、ヘキシルパーフルオロエチレン、3,3,3-トリフルオロプロペン、パーフルオロプロピルビニルエーテル、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、及びフッ化ビニルが挙げられる。特に好ましいのは塩化ビニルである。
【0020】
好ましいビニルエーテルの例は、メチルビニルエーテルである。
【0021】
好ましいオレフィンは、エテン、プロペン、1-アルキルエテン、及びポリ不飽和アルケンであり、好ましいジエンは、1,3-ブタジエン及びイソプレンである。特に好ましいのは、エテン及び1,3-ブタジエンである。
【0022】
モノマー(A)として特に好ましいのは、ビニルアセテート、9~11個の炭素原子を有するα-分枝モノカルボン酸のビニルエステル、塩化ビニル、エチレン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、スチレン、及び1,3ブタジエンの群からの1種以上のモノマーである。また、コモノマー(A)として特に好ましいものは、ビニルアセテートとエチレンとの混合物、ビニルアセテートとエチレンと9~11個の炭素原子を有するα-分枝モノカルボン酸のビニルエステルとの混合物、n-ブチルアクリレートと2-エチルヘキシルアクリレート及び/又はメチルメタクリレートとの混合物、スチレンと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートの群からの1種以上のモノマーとの混合物、ビニルアセテートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートの群からの1種以上のモノマーと任意にエチレンとの混合物、及び1,3-ブタジエンとスチレン及び/又はメチルメタクリレートとの混合物であり、記載された混合物は、任意に、前述の補助モノマーの1種以上をさらに含むことができる。
【0023】
使用される化合物(C)の例は以下のモノマー(C)である。
- エチレン性不飽和アルコール、好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、より好ましくは2-ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、及びグリセロール1-アリルエーテル、
- エチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸並びにそれらの塩、好ましくはクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸及びマレイン酸、
- エチレン性不飽和スルホン酸及びその塩、好ましくはビニルスルホン酸及び2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、
- エチレン性不飽和の第一級、第二級又は第三級アミン、好ましくは2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-tert-ブチルアミノエチルメタクリレート、アリルN-(2-アミノエチル)カルバメート塩酸塩、アリルN-(6-アミノヘキシル)カルバメート塩酸塩、アリルN-(3-アミノプロピル)塩酸塩、アリルアミン及びビニルピリジン、
- エチレン性不飽和アミド、好ましくは3-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド及び3-トリメチルアンモニウムプロピルメタクリルアミドクロリド、
- エチレン性不飽和ホスホン酸及びその塩、好ましくはビニルホスホン酸、
- エチレン性不飽和エポキシド、好ましくはグリシジルメタクリレート(GMA)、
- エチレン性不飽和イソシアネート、好ましくは1-(イソシアナト-1-メチル)-3-(メチルエチル)ベンゼン、
- エチレン性不飽和無水物、好ましくは無水マレイン酸、
- 反応性カルボニル基を含有するエチレン性不飽和モノマー、例えば、アクロレイン、メタクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ジアセトンメタクリルアミド、2-ブタノンメタクリレート、ホルミルスチロール、ジアセトンアクリレート、ジアセトンメタクリレート、アセトニトリルアクリレート、アセトアセトキシエチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート及びビニルアセトアセテート、及び
- 反応性基を有するエチレン性不飽和オルガノシラン、好ましくは、メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びビニルトリメトキシシラン。
【0024】
特に好ましいモノマー(C)は、エチレン性不飽和アルコール、より好ましくはヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、特に2-ヒドロキシエチルメタクリレート及び2-ヒドロキシエチルアクリレートである。
【0025】
したがって、架橋可能な官能基としてヒドロキシアルキル基を有する架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液が好ましい。
【0026】
架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーは、それ自身と、又は架橋剤としての他の有機化合物又は無機化合物と架橋することができる。架橋は、触媒又は開始剤のような刺激剤、熱、電子ビーム照射又はUV照射の助けの有無にかかわらずもたらされ得る。また、乾燥は、pH、酸素含有率、溶媒又は担体の蒸発、又は反応を引き起こす他の変化を介して架橋ポリマーを活性化させることができる。バインダーポリマー中で架橋を達成する特定の方法は、本発明にとって重要ではない。ラテックス中で架橋を生成するために、様々な化学が当技術分野で知られている。
【0027】
架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーは、2種類の架橋可能な官能性モノマー(C)、例えば、2-アミノエチルメタクリレートなどのエチレン性不飽和第一級、第二級、又は第三級アミン、及びメタクリル酸無水物などのエチレン性不飽和無水物、又は、例えば、グリシジルメタクリレートなどのエチレン性不飽和エポキシド、及びメタクリル酸無水物などのエチレン性不飽和無水物が選択される場合、それ自体と架橋することができる。
【0028】
架橋にはまた、架橋剤を使用することができる。
【0029】
本発明のさらなる主題は、
(1) 架橋可能な官能基を有する本発明の架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液、及び
(2) 架橋剤
を含む架橋可能な組成物である。
【0030】
架橋剤(2)は、コポリマー(1)の官能基と反応できる官能基を有する。
【0031】
好ましくは、
(1) イソシアネート基と反応することにより架橋することができる官能基、好ましくはヒドロキシアルキル基を有する本発明の架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液、及び
(2) 架橋剤として2つ以上のイソシアネート基を有する有機化合物
を含む架橋可能な組成物である。
【0032】
2つ以上のイソシアネート基を有する有機化合物の例は、ジイソシアネート及びポリイソシアネートである。
【0033】
ジイソシアネートの好ましい例は、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレン2,4-ジイソシアネート、トリレン2,6-ジイソシアネート、フェニレン1,3-ジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、4,4’-メチレンビス(フェニルイソシアネート)及びジメチルフェニルジイソシアネートである。
【0034】
2を超えるイソシアネート基を有するポリイソシアネートの例としては、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及びリシントリイソシアネートのエステルが挙げられる。ジ/ポリイソシアネートの混合物を使用することができ、ウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、ウレトンイミン(uretonimine)、ウレスジオン(urethdion)又はイソシアヌレート残基の導入によって修飾されたジ/ポリイソシアネートも使用することができる。
【0035】
架橋剤のさらなる非限定的な例は、フェノール樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ベータ-ヒドロキシ(アルキル)アミド樹脂、アルキル化カルバメート樹脂、イソシアネート、ポリ酸、無水物、有機金属酸官能性材料、ポリアミン、ポリアミド、アミノプラスト、及びそれらの混合物である。
【0036】
アミノプラストの非限定的な例としては、アミン及び/又はアミドとアルデヒドとの縮合物が挙げられる。最も一般的なアミン又はアミドは、メラミン、尿素、又はベンゾグアナミンである。例えば、メラミンとホルムアルデヒドとの縮合物は、適切なアミノプラストである。しかし、他のアミン又はアミドとの縮合物、例えば、グリコールウリルのアルデヒド縮合物を使用することができる。使用されるアルデヒドはホルムアルデヒドであることが最も多いが、アセトアルデヒド、クロトンアルデヒド及びベンズアルデヒドなどの他のアルデヒドを使用してもよい。アミノプラストはメチロール基を含み、これらの基の少なくとも一部をアルコールでエーテル化して硬化反応を変更することができる。メタノール、エタノール、ブタノール、及びヘキサノールをはじめとする任意の一価アルコールをこの目的に使用することができる。使用可能な市販アミノプラストの非限定的な例としては、CYMELR 303、CYMELR 322、CYMEL(R) 327、CYMEL(R) 380、及びCYMEL(R) 1130(CYTEK Industries及び/又はALLNEXから入手可能)が挙げられる。
【0037】
架橋剤のさらなる非限定的な例はポリアミン化合物である。この種の特に適切な化合物は、2~20個の炭素原子の脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸のジヒドラジド及びトリヒドラジドである。代表的な有用なポリアミンとしては、エチレンジアミン、イソホロンジアミン、ジエチレントリアミン及びジブチレントリアミンが挙げられる。本発明の一実施形態では、ポリアミン化合物としてポリヒドラジドを利用することが有用である。代表的な有用なポリヒドラジドとしては、シュウ酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド又はテレフタル酸ジヒドラジド及びイタコン酸ジヒドラジドが挙げられる。さらに、エチレン-1、2-ジヒドラジン、プロピレン-1、3-ジヒドラジン及びブチレン-1、4-ジヒドラジンのような水溶性ヒドラジンも、架橋剤の1つとして使用することができる。
【0038】
架橋剤のさらなる非限定的な例は、ポリアジリジン、ポリカルボジイミド、オルガノシラン、例えば、前記コポリマーのヒドロキシル、シラノール又はカルボン酸官能基との縮合反応を通して架橋を形成し得るアルコキシシラン、及び多官能性アルデヒド、例えば、グリオキサール又はフルアルデヒドである。
【0039】
(1)における架橋可能な官能基との反応のための架橋剤(2)は、所望の硬化度を達成するのに必要な量でのみ存在する必要がある。架橋剤(2)は、コポリマー(1)中の架橋可能な官能基の各当量対し、(2)中の少なくとも0.1当量の官能基を提供する量で用いることが好ましい。
【0040】
より好ましくは、架橋剤(2)は、コポリマー(1)中の架橋可能な官能基の各当量に対し、(2)中の0.2~2.0当量の官能基を提供する量で使用される。
【0041】
官能基を有する本発明の架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液は、それらがそれ自体又はコポリマーの官能基と反応可能な官能基を有する架橋剤のいずれかとの反応を介して架橋することにより、基材上に塗布した後にフィルムを形成するような方法において反応性である。
【0042】
基材上のフィルムは、官能基(官能基は基材上でそれら自体と架橋することができる)を有する本発明の架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散液を塗布し、次いでそれらを架橋させることによって形成することができる。
【0043】
本発明のさらなる主題は、本発明の架橋可能な組成物を基材上に塗布し、次いでそれらを架橋させることによって、基材上にフィルムを形成するための方法である。
【0044】
基材の例は、金属基材、木材基材、プラスチック基材又は鉱物基材である。
【0045】
本発明の架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーの水性分散体は、コーティング組成物のためのバインダーとして、例えば、工業用コーティング又は装飾用コーティングの分野において使用することができ、ここで、コポリマー分散液は、主に、異なる官能基を含む架橋反応によりフィルムを形成する。硬化フィルムは、耐食性、硬さ、柔軟性、靭性、耐久性、光沢、耐温度性、汚れ忌避性、UV耐性、微生物耐性、ブロッキング防止特性、耐薬品性、及び防水性などの利点を提供する。
【0046】
本発明の水性分散液をベースとするコーティングは、コーティング産業で知られている広範囲の基材に塗布することができる。例えば、本発明のコーティングは、自動車基材、工業基材、包装基材、木材の床材及び家具、衣服、調理器具、耐熱皿、ハウジング及び回路基板をはじめとする電子機器、ガラス及び透明フィルム、又はゴルフボールをはじめとするスポーツ用品に適用することができる。
【0047】
これらの基材は、例えば、金属製又は非金属製であり得る。金属基材には、錫、電気亜鉛めっき鋼、冷間圧延鋼及び溶融亜鉛めっき鋼をはじめとする鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金、亜鉛-アルミニウム合金で被覆された鋼、及びアルミニウムめっき鋼が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
非金属基材には、ポリマー、プラスチック、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セルロース、ポリスチレン、ポリアクリル、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、EVOH、ポリ乳酸、その他の「グリーン」ポリマー基材、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリカーボネート、ポリカーボネートアクリロブタジエンスチレン(PC/ABS)、ポリアミド、木材、ベニア、木材複合材、パーティクルボード、中密度繊維板、セメント、石材、ガラス、紙、ダンボール、織物並びに合成皮革及び天然皮革の両方が挙げられる。
【0049】
特定の実施形態では、本発明のコーティングをコイルに塗布することができる。例えば、これらの実施形態のいくつかにおいて、本発明をベースとするコーティングは、亜鉛めっき鋼コイル及びアルミニウムコイルを含むが、これらに限定されない金属コイルに塗布することができる。
【0050】
本発明の水性分散液をベースとするコーティングは、エレクトロコーティング、噴霧、静電噴霧、浸漬、ローリング又はブラッシングのような当該技術分野における任意の標準的な手段によって塗布することができる。本発明のコーティングは、0.2~600μm、例えば、12μm~26μm又は21μm~25μmの乾燥フィルム厚さまで塗布することができる。
【0051】
本発明の水性分散液をベースとするコーティング組成物はまた、コーティングを配合する分野で周知の他の任意の材料を含むことができる。例えば、本発明のコーティング組成物はまた、着色剤を含むことができる。本明細書中で使用される「着色剤」とは、組成物に色及び/又は他の不透明度及び/又は他の視覚的効果を与える任意の物質を指す。着色剤は、離散粒子、分散液、溶液、及び/又はフレークのような任意の適切な形態でコーティングに添加することができる。単一の着色剤又は2種以上の着色剤の混合物を、本発明のコーティングにおいて使用することができる。
【0052】
着色剤の例には、顔料(有機又は無機)、塗料業界で使用される色素及び/又はドライカラー製造業者協会(DCMA)に収載されている色素などの染料及びkezo毛染め、並びに特殊効果組成物が含まれる。着色剤は、例えば、使用条件下で、不溶性であるが湿潤性である微細に分割された固体粉末を含むことができる。着色剤は有機又は無機であり、凝集され得るか又は凝集され得ない。アクリル粉砕ビヒクルのような粉砕ビヒクル(その使用は当業者が熟知している)の使用により、コーティングに着色剤を組み込むことができる。
【0053】
顔料及び/又は顔料組成物の例としては、カルバゾールジオキサジン粗顔料、アゾ、モノアゾ、ジアゾ、ナフトールAS、塩型(フレーク)、ベンズイミダゾロン、イソインドリノン、イソインドリン及び多環フタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、ジケトピロロピロール、チオインジゴ、アントラキノン、インダントロン、アントラピリミジン、フラバントロン、ピラントロン、アンタントロン、ジオキサジン、イリアリールカルボニウム、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロールレッド(「DPPBOレッド」)、二酸化チタン、カーボンブラック、及びそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。用語「顔料」及び「着色充填剤」は、互換的に使用することができる。
【0054】
染料の例には、溶媒及び/又は水性ベースのもの、例えば、フタログリーン又はフタロブルー、酸化鉄、バナジウム酸ビスマス、アントラキノン、及びペリレン及びキナクリドンが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
毛染めの例には、Degussa,Inc.から市販されているAQUA-CHEM 896、Eastman Chemical,Inc.のAccurate Dispersions Divisionから市販されているCHARISMA COLORANTS及びMAXITONER INDUSTRIAL COLORANTSのような水系又は水混和性担体に分散された顔料が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明の水性分散液剤をベースとするコーティング組成物とともに使用できる材料の他の非限定的な例としては、可塑剤、耐摩耗性粒子、耐食性粒子、耐食性添加剤、充填剤(マイカ、タルク、粘土、及び無機鉱物を含むが、これらに限定されない)、酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、UV光吸収剤及び安定剤、界面活性剤、流動及び表面制御剤、チキソトロープ剤、有機共溶媒、反応性希釈剤、触媒、反応阻害剤、及び他の通例の補助剤が挙げられる。
【0057】
特定の実施形態では、コーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、20~70重量%、又は30~60重量%を構成し得る顔料粒子を含む。これらの実施形態のいくつかにおいて、顔料粒子は無機顔料粒子である。
【0058】
モノマー選択(A)、又はモノマー(A)及び(C)の重量割合の選択は、ここでは、一般に、好ましくは60℃未満、より好ましくは50℃~+60℃、非常に好ましくは-30℃~+50℃、より具体的には0℃~30℃の架橋可能な反応性シリコーン有機コポリマーのガラス転移温度Tgをもたらすように行われる。ポリマーのガラス転移温度Tgは示差走査熱量測定(DSC)により既知の方法で決定できる。Tgはまた、Fox方程式を用いて、事前に近似的に計算されてもよい。Fox T.G.、Bull.Am.Physics Soc.1、3、p.123(1956)によると、1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+・・+xn/Tgn、ここでxnはモノマーnの質量割合(重量%/100)、Tgnはモノマーnのホモポリマーのケルビンにおけるガラス転移温度である。ホモポリマーのTg値は、ポリマー技術の多数の参考文献及び規格著作物、及び、例えば、「Polymer Properties, Thermal Transitions of Homopolymers」(https://www.sigmaaldrich.com/content/dam/sigma-aldrich/docs/Aldrich/General_Information/thermal_transitions_of_homopolymers.pdf))の見出し語の下でAldrichからのもののようなインターネット上で検索できる表著作物に見出すことができる。
【0059】
本発明のコポリマーの構築におけるモノマー(A)及び(C)の割合は、いずれの場合も(A)、(C)及び官能化シリコーンポリマー(B)の総重量に基づいて、好ましくは20重量%以上、より好ましくは30~95重量%である。これは、(A)、(C)及び官能化シリコーン樹脂(B)の総重量に基づいて、(B)の割合が好ましくは80%未満、より具体的には5~70重量%であることを意味する。
【0060】
特に好ましいシリコーンポリマー(B)は、以下の一般式、すなわち、
[R1
p(OR2)zSiO(4-p-z)/2] (I)
において、p及びzがp=0又は1及びz=0、1又は2の定義を有するシリコーン樹脂(B)であり、式(I)の全シロキサン単位の少なくとも20mol%については、いつもp=1及びz=0又はp=0及びz=0であり、この条件は好ましくは、p=1及びz=0については、全シロキサン単位(I)の少なくとも30mol%、より好ましくは少なくとも35mol%、より好ましくは少なくとも40mol%について満たされる。また、シロキサン単位(I)がp=0及びz=0であるいわゆるQ単位を50mol%以下含むことが好ましい。
【0061】
さらにまた、適切なものは、M単位(R3SiO1/2)、D単位(R2SiO2/2)、T単位(RSiO3/2)、及びQ単位(SiO4/2)の任意の所望の組合せからなるシリコーン樹脂であり、ここでRは基R1又は基-OR2であり、R1及びR2はそれらに対し上で示される定義を有し、ただしp=1及びz=0又はp=0及びz=0の式(I)につき、T単位又はQ単位が常に少なくとも20mol%存在するようにする。
【0062】
シリコーン樹脂(B)であって、最高に好ましいものは、本質的にT単位又はQ単位及びD単位のみから構成され、T/D単位のモル比は好ましくは50/50より大きく、より具体的には70/30より大きく、特に好ましいものはD単位を含まないT単位のみであり、T/D単位のモル比は20/80までであるものである。さらに、最も好ましいシリコーン樹脂は、主にT単位からなるもの、より具体的には少なくとも80モル%の程度までT単位からなるもの、非常に特に少なくとも90モル%の程度までT単位からなるものである。また、好ましいシリコーン樹脂は、少量のケイ素結合したアルコキシ基を有するものである。用いた合成法は加水分解可能なアルコキシ基には耐性があるので、アルコキシ基は実質的に加水分解されない。換言すれば、縮合によって水の形態で除去され、Si-O-Si単位を残すヒドロキシ基がアルコキシ基から生成することは本質的にない。それにもかかわらず、使用される官能性シリコーン樹脂がR2が式(I)に従って、それに対し上で示された定義を有するR2O型の基の低い含有率を有することが好ましい。存在するアルコキシ基の数が多いほど、シリコーン樹脂の縮合度は低い。ある置換パターンでは高い縮合度は一般に高いガラス転移温度に相当するので、高い縮合度が好ましい。ガラス転移が高いほど、コポリマーのシリコーン樹脂成分が軟化する傾向の程度が低く、このことは、比較的高いサービス温度と併せてもより低い汚れ傾向を達成できるため、建設コーティングでの利点である。
【0063】
式(I)の全シロキサン単位の少なくとも1mol%、好ましくは最大50mol%、好ましくは最大40mol%が、基R1としてエチレン性不飽和基Eを含む。
【0064】
基Xは直鎖状、分枝状又は環状である。二重結合に加えて、さらなる官能基も存在することができ、一般に、オレフィン重合に対して不活性であり、例は、ハロゲン、カルボキシル基、スルフィナト基、スルホナト基、アミノ基、アジド基、ニトロ基、エポキシ基、アルコール基、エーテル基、エステル基、チオエーテル基及びチオエステル基、並びに芳香族同素環及び複素環基である。基Xの好ましい例は、モノ不飽和C2~C10基であり、基Xとしての最も好ましいのは、アクリル基及びメタクリル基である。
【0065】
脂肪族の多重C-C結合を含まない炭化水素基R*は、例えば、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり得る。したがって基R*の例は、アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基及び2,2,4-トリメチルペンチル基などのイソオクチル基のようなオクチル基、n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、ヘキサデシル基、及びn-オクタデシル基などのオクタデシル基、シクロアルキル基、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基及びメチルシクロヘキシル基、アリール基、例えば、フェニル、ナフチル、アントリル、フェナントリル基、アルカリル基、例えば、トリル基、キシリル基、エチルフェニル基、並びにアラルキル基、例えば、ベンジル基及びβ-フェニルエチル基である。特に好ましい基R*は、メチル、イソオクチル、プロピル、及びフェニル基である。この記述は単に例示的なものであり、いかなる制限を課すものと理解すべきではない。
【0066】
基R*が置換されている場合、それらはさらにO原子、S原子、Si原子、Cl原子、F原子、Br原子、P原子又はN原子から選択される1個以上の同一の又は異なるヘテロ原子を含み得る。
【0067】
基R*の例は、基R2に対して完全に有効である。
【0068】
1~12個の炭素原子を有するアルキル基R*及び6~18個の炭素原子を有するアリール基R*の例は、C1~C12アルキル基及びC6~C18アリール基R5について完全に有効である。
【0069】
本発明の好ましい一実施形態において、シロキサン単位(I)から構成されるシリコーン樹脂中に存在する2つの異なる基R*がある。
【0070】
基R*の好ましい組合せの例としては、フェニル基とメチル基、n-ブチル基とエチル基、n-ブチル基とメチル基、エチル基とメチル基、n-オクチル基とメチル基、イソオクチル基とメチル基、イソオクチル基とフェニル基、n-オクチル基とフェニル基、n-オクチル基とエチル基、フェニル基とエチル基、イソオクチル基とエチル基であり、フェニル基とメチル基、エチル基とメチル基、イソオクチル基とメチル基、エチル基とイソオクチル基、フェニル基とイソオクチル基の組み合わせが特に有利である。2つの異なる基R*としてメチル基とイソオクチル基、及びメチル基とフェニル基の組合せが特に有効であることが証明されている。この2種の基の組合せにより、ポリマーマトリックスにおける相溶性及び高いガラス転移温度という2つの特性を最もよく制御し、設定することが可能である。また、それらは、理想的には、入手可能性及び経済性の要件を満たす。
【0071】
より炭素に富む置換基を有するシロキサン単位(I)が式(I)の全シロキサン単位の75mol%以下で存在することが好ましく、特に有利であることが証明されている。これは逆により炭素に乏しい置換基を有するシロキサン単位(I)が式(I)の全シロキサン単位の25mol%以上存在することを意味する。本発明の1つの特に好ましい実施形態において、より炭素に乏しい置換基を有する式(I)のシロキサン単位は過半数を占める、すなわち、式(I)の全シロキサン単位の50mol%を超えて存在し、したがって炭素に富む置換基は少数、すなわち、式(I)の全シロキサン単位の50mol%未満で存在する。
【0072】
炭素に富む置換基R*は、4~18個の炭素原子、好ましくは6~18個の炭素原子を有する、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基などの炭素-水素基、より好ましくはイソオクチル基及びフェニル基並びに、炭素に乏しい置換基R*は、1~3個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル基である。
【0073】
与えられた全ての比の数値は、異なる炭素に富むSi-C結合した基を有する式(I)の単位の和として100mol%まで標準化される。
【0074】
ここでイソオクチル基とメチル基との組合せの場合、イソオクチル基を有する式(I)のシロキサン単位よりもメチル基を有する式(I)のシロキサン単位が多いことが好ましい。メチル基を有する式(I)のシロキサン単位数対イソオクチル基を有する式(I)のシロキサン単位数の比は、好ましくは51:49~99:1、より好ましくは55:45~98:2、より具体的には60:40~98:2である。
【0075】
特に有効であることが証明されている比率は、60:40、70:30、90:10、及び95:5である。
【0076】
これらの数値は全て、メチル基を有する式(I)の単位及びイソオクチル基を有する式(I)の単位の和として100まで標準化される。
【0077】
フェニル基とメチル基の組合せの場合、メチル基を有する式(I)のシロキサン単位数対フェニル基を有する式(I)のシロキサン単位数に対する下の比は、好ましくは51:49~99:1、より好ましくは55:45~98:2、より具体的には60:40~98:2である。
【0078】
特に有効であることが証明されている比率は、60:40、70:30、80:20、90:10、及び95:5である。
【0079】
これらの数字は全て、メチル基を有する式(I)の単位及びフェニル基を有する式(I)の単位の和として100まで標準化される。
【0080】
2を超える異なる基の組合せも可能であり、本発明のものである。その場合、2つの異なる基の組合せについて上記の好ましい比率が、より炭素に富む置換シロキサン単位を一緒に数え、最も小さい、又は最も少ない炭素に富む置換基を有するシロキサン単位に対する比率で配置される場合、準用される。これとの関連で、芳香族置換基を含む組合せと芳香族置換基を含まない組合せとの間は上記の方法で区別される。
【0081】
式(I)の2を超える異なるシロキサン単位が存在する場合にも、好ましい組合せは、メチル基、n-プロピル基、フェニル基、n-ブチル基、n-オクチル基、及びイソオクチル基の組合せであり、より具体的にはメチル基、n-プロピル基、フェニル基、及びイソオクチル基の組合せ、特に好ましくはメチル基、フェニル基、n-プロピル基、及びイソオクチル基の組合せである。
【0082】
エチレン性不飽和基は式(II)のシランとシリコーンポリマーSとの縮合を通してシリコーンポリマーSに結合できる。
(R3O)3-n(R4)nSi-(CR5
2)m-X (II)
式中、R3は、水素原子、C1~C6アルキル基又はC6~C18アリール基であり、
R4は、水素原子、C1~C12アルキル基又はC6~C18アリール基であり、
R5及びmは、上で与えられた意味を有し、
nは0、1又は2である。
【0083】
シリコーンポリマー(B)の調製は、US2018/305576A1(参照により援用される)の6頁段落[0083]~7頁段落[0089]に開示されている。
【0084】
容易に入手できるガンマ-シラン(m=3)は、アルファ-シランと比較してガンマ-シランの反応性が低いにもかかわらず、本発明を実施するのに非常に適していることが見出されている。本発明は、シリコーンポリマーの官能化に使用される少量のガンマ-シランで原則として可能であり、使用されるシリコーンポリマーの全量に基づいて、わずか1.0重量%のシランであることがわかったが、シリコーン樹脂のより完全な取り込みの目的のためには、少なくとも1.5重量%のガンマ-シラン、好ましくは少なくとも2.0重量%、より好ましくは少なくとも2.5重量%のガンマ-シラン、より具体的には少なくとも3.0重量%のガンマ-シランを使用することが有利であり、最も好ましい量は4~8重量%の間であることが、効率及び経済の間で最良のバランスが得られるこの範囲にあることから明らかになった。
【0085】
また、ミニエマルション重合において、任意に、成分(A)及び官能化成分(B)の総重量に基づいて、3重量%までの量で存在する疎水性の共乳化剤も存在し得る。この場合、シリコーンポリマーは、しばしば共乳化剤の機能を担うことがある。共乳化剤のさらなる例としては、ヘキサデカン、セチルアルコール、オリゴマーシクロシロキサン、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又は植物油、例えば、菜種油、ヒマワリ油又はオリーブ油である。また、適切なのは、10000未満の数平均分子量Mnを有する有機又は無機ポリマーである。
【0086】
本発明に従って具体的に好ましい疎水性の共乳化剤は、重合されるべきシリコーンポリマーそれ自体、及びヘキサデカンである。
【0087】
コポリマーは、ミニエマルション重合の既知の技術によって不均一相方法で調製される。ミニエマルション重合は、乳化重合とは多くの重要な点で異なる。Kevin Mueller、Mainz 2008、pp.17~20により提示された論文「Non-aqueous emulsion polymerizations」及びその中で引用された参考文献を参照されたい。乳化重合とは対照的に、ポリマーラテックス粒子のサイズが本質的に運動過程及び格子の安定性によって決定される場合、ミニエマルション重合の基礎は、重合前のモノマーがミセル内に完全に存在し、したがって、重合中にモノマー液滴からミセルへ拡散する必要がもはやないことである。したがって、換言すれば、形成されたラテックス粒子は、出発点に存在するモノマー液滴の重合複製とみなされ得る。この結果、ラテックス粒子のサイズは、もっぱら分散方法によって、及びモノマーが充填されたミセルの安定性によって決定される。連続相を通るモノマーの輸送の必要はないので、連続相に完全に不溶性のモノマーもこのように使用できるようにすることができる。モノマー液滴の安定性を高めるには、起こるオストワルド熟成を抑制する必要がある。したがって、分散したモノマー相のミニエマルション重合の間、疎水性物質、又は逆ミニエマルションの場合には、疎油性物質が付加される。
【0088】
疎水性物質として作用し得る種の中には、任意に、その目的に適した疎水性モノマー、例えば、シリコーン成分がある。
【0089】
ここでミニエマルション重合は、懸濁重合とは2つの点で異なる。第一に、ミニエマルション方法において生じたポリマー粒子は懸濁重合のもの(1μ~1mm)よりはるかに小さい(50~500nm)。第二に、懸濁重合における成長粒子当たりの基の数、10は、ミニエマルション重合のそれ(統計的に見ると、反応中の成長粒子当たり0.5個の基が存在する)よりかなり上である。
【0090】
ラジカルミニエマルション重合を行うためには、まずビニルモノマーと混和しない連続相でビニルモノマーのミニエマルションを構築する必要がある。この目的のためには、前記モノマーは、乳化剤及び疎水性物質とともに、例えば、高圧ホモジナイザーを使用するか、又は超音波を用いるエネルギーの投入によって水中に分散される。ここでは、乳化剤及び疎水性物質の組合せは、オストワルド熟成の発生及びモノマー液滴の合体を遅らせる。第2段階では、このようにして形成されたモノマー液滴を重合させる。これは、安定なミニエマルションの調製後に添加される水溶性開始剤、若しくは開始直後にモノマー相に存在しうる油溶性開始剤、又は両者の組合せのいずれかによって引き起こされる。
【0091】
ミニエマルション中に形成されたモノマー液滴は、およそ50~500nmのサイズを有する。この小さいサイズは、大量のエネルギーの投入によって達成されたミニエマルションの均質化の結果である。個々の液滴間のモノマーの移動は、特定の種類の安定化によって抑制される。
【0092】
また、小さなモノマー液滴と平行して、ミニエマルションに遊離ミセルはもはや存在しない。したがって、従来の乳化重合とは対照的に、核形成の場になるのは主として液滴(液滴核形成)である。ミニエマルション重合の間、それゆえ、観察されたモノマーの拡散は極めてわずかであるにすぎない。ミニエマルション重合内では、その結果、各分散モノマー液滴は、ナノスコープレベルで操作される個々の反応器として説明され得る。その結果、伝統的な乳化重合及び懸濁重合とは対照的に、この方法について多くの利点がもたらされ、これらの利点は以下で強調される。
【0093】
・ モノマーが連続相、通常は水相を通って輸送される必要がないので、ミニエマルションでは、水に完全に不溶性のモノマーでさえ重合させることができる。
【0094】
・ ラテックス粒子のサイズは、通常、予め形成されたモノマー液滴のサイズに相当し、使用する乳化剤の性質及び量によりかなりの精度で調整することができる。
【0095】
・ 各モノマー液滴はその組成が均一である。したがって、特に共重合の場合には、各液滴中のモノマー比は同じであり、モノマーの拡散に違いは生じない。
【0096】
・ ミニエマルションが熱力学的ではなく動力学的にのみ安定化されるため、使用される乳化剤の量はより少ない。
【0097】
方法に不可欠な工程、すなわち微細に分割されたミニエマルションを調製する工程は、本発明の場合、以下のように実行される。
【0098】
第1の工程では、式(I)のシロキサン単位から構成される1種以上のシリコーンポリマー、好ましくはシリコーン樹脂を1種以上のエチレン性不飽和モノマーに溶解し、シリコーン樹脂インモノマー(silicone resin-in-monomer)溶液を得る。ここで特徴的なのは、式(I)のシロキサン単位から構成されるシリコーン樹脂がそれぞれのモノマー混合物に可溶であるという事実である。不溶性成分は、必要に応じてまた適切な場合濾過により分離される。本発明に従う唯一のシリコーン樹脂インモノマー溶液は、不溶性シリコーン成分を含まないものである。
【0099】
シリコーン樹脂インモノマー溶液を、任意に疎水性の共乳化剤と混合する。疎水性の共乳化剤の例は上で先に明らかにされている。
【0100】
第2の工程では、シリコーン樹脂インモノマー溶液を、水及び少なくとも1種の乳化剤、及び任意に早期なラジカル乳化重合を防止する重合阻害剤などのさらなる補助剤とともに、ミニエマルションとして知られる350nm以下の粒径D(50)を有するエマルションを得るために、好ましくは高い剪断力を適用して乳化させる。これとの関係で高い剪断力は、従来のローター-ステーターシステムのような適切な乳化装置、又は、例えば、高圧ホモジナイザー、溶解機ディスク、超音波装置、又は200nm以下の小粒径の生成を可能にする高い剪断力を発揮させる同等な乳化技術により一般的な知識である他の方法によって生成され得、350nm以下の粒径D(50)を有するミニエマルションを与える。市販のローター-ステーターシステムの場合、4000~12000、好ましくは5000~11000、より具体的には6000-10000の回転速度が特に有利であることが証明されている。連続的及び非連続的な実施形態の両方が適している。高圧ホモジナイザーの場合、好ましくは300bar~1000bar、より好ましくは350bar~900bar、より具体的には400bar~800barの圧力が有利であることが証明されている。調製物は重合可能であるため、効果的な温度の監視が重要である。すなわち、ミニエマルションの温度は好ましくは60℃を超えない、より好ましくは55℃を超えない、より具体的には50℃を超えないこととし、このような状況ではこれらの温度未満に急速に冷却されるものとする。
【0101】
本発明のシリコーン樹脂インモノマー溶液は、25℃で2~20000mPas、好ましくは25℃で5~15000mPas、より具体的には25℃で7~10000mPasの粘度を有する。本発明のミニエマルションは、25℃で2~5000mPas、具体的には25℃で3~4500mPas、より具体的には25℃で5~4000mPasの粘度を有する。
【0102】
本発明のミニエマルション中の水の量は80~20重量パーセント、好ましくは75~20、より具体的には70~25重量パーセントである。
【0103】
本発明のミニエマルション中の粒径D(50)は、350nm以下、好ましくは300nm以下、より好ましくは250nm以下、非常に好ましくは200nm以下、及び少なくとも20nm、好ましくは少なくとも30nm、より好ましくは少なくとも50nmである。
【0104】
本発明のミニエマルションは、連続水相及び分散有機相からなる。
【0105】
ミニエマルションの有機相はラジカル乳化重合方法により重合する。この場合、第3の工程において、分散したシリコーン樹脂インモノマー溶液をフリーラジカル重合に供する。このラジカル乳化重合は、水及び触媒の一部を含む初期仕込み物へのミニエマルションの計量添加によって実行されることが好ましい。さらに計量される供給物は、重合開始剤を含み、これは、任意に複数の成分を包含することができ、それらの各成分は、重合手順におけるそれらの相互作用及び機能に従って、別々に初期仕込み物に計量されるか、又は初期仕込み物に含まれる。
【0106】
ミニエマルション重合が完了したら、必要に応じて得られた分散液を所望のpHに合わせて調整し、任意に濾過し、次いでそれぞれの使用に利用可能である。
【0107】
ミニエマルション重合における反応温度は、好ましくは0℃~100℃、より好ましくは5℃~80℃、非常に好ましくは30℃~70℃である。
【0108】
分散媒のpHは2~9の間、好ましくは4~8の間である。1つの特に好ましい実施形態において、それは4.5~7.5の間である。pHは塩酸又は水酸化ナトリウム水溶液を用いて反応開始前に調整できる。重合は、反応混合物の全成分又は個々の成分を初期仕込み物に含み、反応混合物の個々の成分を初期仕込み物に部分的に含み、続いて部分的に計量するか、又は初期仕込みに含ませないで計量法によって、バッチ式又は連続的に行うことができる。計量された供給物は全て、問題の成分が消費される速度で行うことが好ましい。
【0109】
重合は、通常の水溶性開始剤又は酸化還元開始剤の組合せ、好ましくは後者によって開始される。開始剤の例は、ペルオキソ二硫酸のナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩、過酸化水素、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ペルオキソ二リン酸カリウム、tert-ブチルペルオキソピバレート、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、及びアゾビスイソブチロニトリルである。上記開始剤は、モノマーの総重量に基づいて、0.01~4.0重量%の量で使用されることが好ましい。酸化還元開始剤の組合せとして、上で識別された開始剤は還元剤とともに用いられる。適切な還元剤は、一価カチオンの亜硫酸塩及び重亜硫酸塩であり、一例は亜硫酸ナトリウム、又は亜鉛若しくはアルカリ金属ホルムアルデヒドスルホキシレートなどのスルホキシル酸の誘導体、例えば、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸である。還元剤の量は、使用するモノマー量の0.15~3重量%が好ましい。さらに、重合媒体中に可溶性であり、かつ重合条件下で金属成分が酸化還元活性である少量の金属化合物を導入することができ、この化合物は、例えば、鉄又はバナジウムをベースとする。前述の成分を含む特に好ましい開始剤系の1つは、系tert-ブチルヒドロペルオキシド/ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム/Fe(EDTA)2+/3+である。
【0110】
ミニエマルション重合法によると、クメンヒドロペルオキシド、イソプロピルベンゼンモノヒドロペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド又はアゾビスイソブチロニトリルなどの主に油溶性の開始剤を使用することも可能である。ミニエマルション重合の好ましい開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アゾビスイソブチロニトリル、及びジベンゾイルペルオキシドである。
【0111】
共重合を行った後のコポリマー内のシリコーンドメインの寸法は、好ましくは5nm~150nm、より具体的には10nm~140nm、特に好ましくは15nm~125nmの範囲である。寸法は、例えば、ポリマー分散液又はそれらから得られるポリマーフィルムについて走査型電子顕微鏡又は透過型電子顕微鏡によって決定され得る。
【実施例】
【0112】
<調製例>
本文において、物質は、機器分析によって得られたデータを報告することによって特性決定される。基礎となる測定は、公的に利用可能な規格に従って実施されるか、又は特別に開発された技術を用いて決定される。与えられた教示の明確性を確保するために、使用した方法を以下に明記する。
【0113】
全ての例において、特に指定のない限り、部及びパーセンテージの全ての数値は重量で示される。
【0114】
<粘度>
粘度は、特に指定のない限り、DIN EN ISO3219に従った回転粘度測定法を用いる測定により決定する。特に指定のない限り、粘度の数値は全て25℃、1013mbarの大気圧に関するものである。
【0115】
<分子組成>
分子組成は核磁気共鳴分光法(用語に関してはASTM E 386:High-Resolution Nuclear Magnetic Resonance Spectroscopy(NMR):terms and symbolsを参照)により決定し、1H核及び29Si核の測定を行う。
【0116】
1H NMR測定の説明
溶媒:CDCl3、99.8%d
試料濃度:5mm NMR管に約50mg/1mlのCDCl3
TMSを添加しない測定、7.24ppmでのCDCl3中の残留CHCl3によるスペクトルの参照
分光器:Bruker Avance 400
試料ヘッド:5mm BBO試料ヘッド又はSMART試料ヘッド(Bruker社製)
測定パラメータ:
Pulprog=zg30
TD=64k
NS=64又は128(試料ヘッドの感度に応じて)
SW=20.6ppm
AQ=3.17秒
D1=5秒
SFO1=500.13MHz
O1=6.175ppm
処理パラメータ:
SI=32k
WDW=EM
LB=0.3Hz
【0117】
使用される分光器の種類に応じて、測定パラメータの個々の調整が必要となる場合がある。
【0118】
29Si NMR測定の説明
溶媒:緩和剤としての1重量% Cr(ac)3を含むC6D6 99.8%d/CCl4 1:1v/v
試料濃度:10mm NMR管中の溶媒約2g/1.5ml
分光器:Bruker Avance 400
試料ヘッド:10mm 1H/13C/15N/29Si ガラスフリーQNP試料ヘッド(Bruker製)
測定パラメータ:
Pulprog=zgig60
TD=64k
NS=1024(試料ヘッドの感度による)
SW=200ppm
AQ=2.75秒
D1=4秒
SFO1=300.13MHz
O1=-50ppm
処理パラメータ:
SI=64k
WDW=EM
LB=0.3Hz
【0119】
使用される分光器の種類に応じて、測定パラメータの個々の調整が必要となる場合がある。
【0120】
<分子量分布>
分子量分布は、ポリスチレン標準及び屈折率検出器(RI検出器)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC))の方法を用いて、重量平均Mw及び数平均Mnとして決定する。別に規定するもののほか、THFを溶出液とし、DIN55672-1を用いる。多分散性は商Mw/Mnである。
【0121】
<ガラス転移温度>
ガラス転移温度はDIN53765、穴あきるつぼ、加熱速度10K/分に従い、示差走査熱量測定法(DSC)により決定する。
【0122】
<粒径の決定>
粒径はゼータ電位の決定とともに動的光散乱(DLS)の方法により測定した。Z-平均粒径はMalvern Zetasizer Nano ZS粒径分析器で測定した。粒径の多分散性(PDI)は粒径分布の幅を示す。
【0123】
<MEKダブルラブ(Rub)テスト>
本試験法は、規定の溶媒に対するフィルム抵抗性により、フィルムの硬化度を判定するために用いる。メチルエチルケトン(MEK)を溶媒として用いる。
【0124】
MEKダブルラブテストはASTM D5402に従って実施する。MEKダブルラブテストの値が高いほど、フィルムの硬化、すなわち架橋が良好である。
【0125】
エトキシ官能性フェニルシリコーン樹脂とメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(CH3O)3Si(CH2)3OC(=O)C(CH3)=CH2との縮合によるエチレン性不飽和フェニルシリコーン樹脂B1の調製
【0126】
還流冷却器、温度計、窒素入口、及びオーバーヘッド撹拌器を備えた1Lの4首フラスコに、メタノール150g、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン20.45g、及び60mol%のPhSiO3/2単位(=TPh単位)、36mol%のMeSiO3/2単位(=T単位)、及び4mol%のMe2SiO2/2単位(=D単位)からなり、14.2重量%のMeO基をT単位に対し統計学的に分布させ、1800g/molの分子量Mw及び25℃で440mPa.sの粘度を有するシリコーン樹脂319.4gを仕込む。混合物を40℃まで加熱した後、10gの脱イオン水中の0.40gの37%塩酸水溶液を5分間にわたって添加する。この混合物を65℃で2時間撹拌しながら還流した後、メタノール3.50gに希釈したメタノール中の30%ナトリウムメトキシド0.69gの溶液を加えて中和する。得られた溶液を20mbar及び55℃で蒸留し、揮発性成分を全て除去する。これにより、以下の特性を有する297gのわずかに混濁した液体が得られる。
【0127】
分子量及び不均一性:
Mw=4577g/mol
Mn=1526g/mol
PD=3.00
【0128】
1H NMR及び29Si NMRからの分子組成:
Me2SiO2/2:7.02mol%
(Ph)SiO3/2:58.65mol%
((CH2)3OC(=O)C(CH3)=CH2)SiO3/2:2.47mol%
MeO-Si:31.36mol%
【0129】
エトキシ官能性シリコーン樹脂とメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(CH3O)3Si(CH2)3OC(=O)C(CH3)=CH2との縮合によるエチレン性不飽和シリコーン樹脂B2の調製
【0130】
還流冷却器、温度計、窒素入口、及びオーバーヘッド撹拌機を備えた3Lの四つ口フラスコに、テトラエチルシリケートオリゴマー900g、ヘキサメチルジシロキサン366g、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン60g、及び平均45個のシロキサン単位を有する低粘度のOH末端ポリジメチルシロキサン313.20gを仕込む。この混合物に脱イオン水220.5g中の37%塩酸1.10gを含む溶液を加える。この混合物を60℃まで加熱し、この時点で反応は発熱して始まり、それ自体を75℃まで加熱する。加熱を再度適用して、温度を79℃にし、そこで反応を60分間撹拌しながら還流に保つ。反応混合物を50℃未満に冷却し、ロータリーエバポレーターのフラスコに移す。55℃で加熱しながら、エタノール300gを除くまで真空を徐々に加えた後、メタノールに溶かしたナトリウムメトキシドの30%溶液2.18gを加え、反応混合物を中和する。2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)400gをブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.400gとともに加え、混合物を100μmフィルターで重力を用いて濾過する。60℃、20mbarで蒸留を再開し、残存する揮発成分を除去する。これにより、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)中の透明なシリコーン樹脂溶液1433gが生成され、これは28.65重量%の2-EHA及び71.35重量%の以下の特性を有するシリコーン樹脂からなる。
【0131】
分子量及び不均一性(溶離剤としてトルエンを用いる):
Mw=2370g/mol
Mn=1447g/mol
PD=1.64
【0132】
1H NMR及び29Si NMRからの分子組成:
Me3SiO1/2:17.49mol%
Me2SiO2/2:33.80mol%
((CH2)3OC(=O)C(CH3)=CH2)SiO3/2:1.25mol%
SiO4/2:28.30mol%
EtO-Si:4.63mol%
MeO-Si:0.26mol%
【0133】
エチレン性不飽和フェニルシリコーン樹脂CB1の調製
【0134】
還流冷却器、温度計、窒素入口、及びオーバーヘッド撹拌器を備えた3Lの四首フラスコに、無水エタノール623.7g、脱イオン水41.6g、37重量%塩酸0.62g、フェニルトリエトキシシラン74.85g、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン47.77g、及び約30重量%のケイ素結合したエトキシ基を含むメチルトリエトキシシランオリゴマー(商品名TRASIL(R)、WACKER Chemie AGで入手可能)673.5gを仕込む。これらの成分を混合し、80℃で2時間還流させ、その後、メタノール中のナトリウムメトキシドの30%の溶液1.15gを加えることによって混合物を中和する。蒸留して330gのエタノールを除去し、その後100μmフィルターで反応液を濾過する。得られた溶液を80℃、20mbarで2時間蒸留して揮発性成分を除去すると、濁った高粘度のシリコーン樹脂522gが生成する。
【0135】
分子量及び不均一性(溶離剤としてトルエンを用いる):
Mw=3401g/mol
Mn=1126g/mol
PD=3.02
【0136】
エトキシ官能性シリコーン樹脂とメタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(CH3O)3Si(CH2)3OC(=O)C(CH3)=CH2との縮合によるエチレン性不飽和シリコーン樹脂CB2の調製
【0137】
還流冷却器、温度計、窒素入口、及びオーバーヘッド撹拌器を備えた3Lの四首フラスコに、テトラエチルシリケートオリゴマー900g、ヘキサメチルジシロキサン366g、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン60g、及び平均45個のシロキサン単位を有する低粘度のOH末端ポリジメチルシロキサン313.20gを仕込む。この混合物に37%塩酸1.10gに脱イオン水220.5gを加えた溶液を加える。この混合物を60℃まで加熱し、この時点で反応は発熱して始まり、75°までそれ自身を加熱する。加熱を再度行い、温度を79℃にし、そこで反応を60分間撹拌しながら還流に保つ。反応混合物を50℃未満に冷却し、ロータリーエバポレーターのフラスコに移す。55℃で加熱しながら、エタノール315gを除くまで真空を徐々に加えた後、メタノールに溶かしたナトリウムメトキシド30%溶液3.01gを加え、反応液を中和する。ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.400gとともにブチルアクリレート400gを加え、混合物を100μmフィルターで重力を用いて濾過する。60℃、20mbarで蒸留を再開し、残存する揮発成分を除去する。これによりブチルアクリレート中の透明シリコーン樹脂溶液1255gが生成され、これはブチルアクリレート17.67重量%、シリコーン82.33重量%からなり、以下の特性を有する。
【0138】
分子量及び不均一性:
Mw=7100g/mol
Mn=3130g/mol
PD=2.27
【0139】
1H NMR及び29Si NMRからの分子組成:
Me3SiO1/2:16.70mol%
Me2SiO2/2:47.50mol%
((CH2)3OC(=O)C(CH3)=CH2)SiO3/2:0.46mol%
SiO4/2:20.87mol%
EtO-Si:4.51mol%
MeO-Si:0.14mol%
【0140】
[発明例1:シリコーン樹脂B1からのコポリマー分散液E1の調製]
【0141】
工程1:ミニエマルションの調製:
シリコーン樹脂B1を(メタ)アクリルモノマーの混合物(モノマーの組み合わせには、ラジカル重合可能なメチルメタクリレート基に加えてヒドロキシ基を有する2-ヒドロキシエチルメタクリレートが含まれる)に溶解した後、高圧で均質化することにより、ミニエマルションを調製する。均質化の目的は、≦200nmのz-平均粒径を達成することである。以下は、ミニエマルションを調製するためにIKA(R) HPH 2000/5高圧ホモジナイザーを使用する例である。
【0142】
以下の成分を密封可能な容器に加え、オービタルシェーカー上で混合する。
シリコーン樹脂B1 260.00g
ブチルアクリレート 250.40g
メチルメタクリレート 202.88g
ヘキサデカン 3.51g
合計 716.79g
【0143】
得られた混合物を以下の成分の溶液と合わせ、オービタルシェーカー上で約1時間混合する。
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) 24.44g
ヒドロキノンモノメチルエーテル
(2%水溶液) 3.77g
脱イオン水 455.00g
【0144】
以下の成分を上記混合物に20gずつ1時間かけて添加し、安定なプレエマルションが形成されるまでオービタルシェーカー上で混合する。
2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA) 100.00g
合計 1300.00g
【0145】
プレエマルションを400~800barの圧力で高圧ホモジナイザーに通し、101nmのz-平均粒径(PDI=0.16)のミニエマルションを得る。
【0146】
工程2:重合
アンカー撹拌機、還流冷却器、温度計、及び窒素入口を備えた3Lの重合容器に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム塩0.108g、硫酸鉄アンモニウム六水和物0.108g、脱イオン水250.17g、及び工程1で調製したミニエマルション72gを初期仕込み物として仕込みし、50℃まで加熱する。1つの密封可能な容器(供給1)に、脱イオン水38.58gに第三ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)4.62gを加えた溶液を調製する。第2の密封可能な容器(供給2)に、ホルムアルデヒドを含まない還元剤(Bruggolite(R) FF6 M)2.31gを脱イオン水43.86gに溶かした溶液を調製する。第3の容器(供給3)にミニエマルション828gを入れる。供給1及び2は230μL/分の速度で開始し、続いて供給3を5.0mL/分の速度で開始し、165分間にわたって連続的に計量する。供給1及び2は、供給3の終了後さらに40分間継続し、その後反応を50℃でさらに90分間保持する。室温に冷却した後、アンモニア水を加えて生成物をpH8に調整し、100μmのフィルターで濾過し、以下の特性を有する分散液を得る。
比重:1.068、
ガラス転移温度:17.0℃、
固形分:42.97%、
総残留遊離モノマー:<200ppm
Z-平均粒径:173nm(PDI=0.20)
【0147】
[発明例2:シリコーン樹脂B2からのコポリマー分散液E2の調製]
【0148】
工程1:ミニエマルションの調製
エチレン性不飽和シリコーン樹脂B2を(メタ)アクリルモノマーの混合物(モノマーの組み合わせには、ラジカル重合性メチルメタクリレート基に加えてヒドロキシ基を有する2-ヒドロキシエチルメタクリレートが含まれる)に溶解した後、高圧で均質化することにより、ミニエマルションを調製する。均質化の目的は、≦200nmのz-平均粒径を達成することである。以下はIKA(R) HPH 2000/5 高圧ホモジナイザーを用いてミニエマルションを調製した例である。
【0149】
シリコーン樹脂及び(メタ)アクリレートモノマー混合物の調製:
以下の成分を密封可能な容器に加え、オービタルシェーカー上で混合する。
2-EHA中のシリコーン樹脂(B2) 364.40g
ブチルアクリレート 150.00g
メチルメタクリレート 198.88g
ヘキサデカン 3.51g
合計 716.79g
【0150】
得られた混合物を以下の成分の溶液と合わせ、オービタルシェーカー上で約1時間混合する。
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) 24.44g
ヒドロキノンモノメチルエーテル
(2%水溶液) 3.77g
脱イオン水 455.00g
【0151】
以下の成分を上記混合物に20gずつ1時間かけて添加し、安定なプレエマルションが形成されるまでオービタルシェーカー上で混合する。
2-ヒドロキシエチルメタクリレート 100.00g
合計 1300.00g
【0152】
プレエマルションを400~800barの圧力で高圧ホモジナイザーに通し、130nm(PDI=0.11)のz-平均粒径のミニエマルションを生成する。
【0153】
工程2:重合
アンカー撹拌機、還流冷却器、温度計、窒素入口を備えた3L重合容器に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム塩0.108g、硫酸鉄アンモニウム六水和物0.108g、脱イオン水250.17g、及び工程1で調製したミニエマルション72gを初期仕込み物として仕込み、50℃まで加熱する。1つの密封可能な容器(供給1)に、脱イオン水38.58g中に第三ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)4.62gを加えた溶液を調製する。第2の密封可能な容器(供給2)に、ホルムアルデヒドを含まない還元剤(Bruggolite(R) FF6 M)2.31gを脱イオン水43.86gに溶かした溶液を調製する。第3の容器(供給3)にミニエマルション828gを入れる。供給1及び2は230μL/分の速度で開始し、続いて供給3を5.0mL/分の速度で開始し、165分間にわたって連続的に計量する。供給1及び2は、供給3の終了後さらに40分間継続し、その後、反応を50℃でさらに90分間保持する。室温まで冷却した後、アンモニア水を加えて生成物をpH8に調整し、100μmのフィルターで濾過し、以下の特性を有する分散液を得る。
比重:1.058、
ガラス転移温度:16.5℃、
固形分:45.14%、
総残留遊離モノマー:<200ppm
Z-平均粒径:173nm(PDI=0.20)
【0154】
[比較例1:エチレン性不飽和フェニルシリコーン樹脂CB1からのコポリマー分散液CE1の調製]
【0155】
工程1:ミニエマルションの調製
エチレン性不飽和シリコーン樹脂CB1を(メタ)アクリルモノマーの混合物(モノマーの組み合わせは、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを含まない)に溶解した後、高圧で均質化することによって、ミニエマルションを調製する。均質化の目的は、≦200nmのz-平均粒径を達成することである。以下は、ミニエマルションを調製するために、IKA(R) HPH 2000/5高圧ホモジナイザーを使用する例である。
【0156】
シリコーン樹脂及び(メタ)アクリレートモノマー混合物の調製:
以下の成分を密封可能な容器に加え、オービタルシェーカー上で混合する。
シリコーン樹脂CB1 260.00g
ブチルアクリレート 253.24g
メチルメタクリレート 170.30g
ブチルメタクリレート 74.64g
スチレン 42.57g
メタクリル酸 11.61g
ヘキサデカン 3.87g
合計 816.23g
【0157】
得られた混合物を、以下の成分の溶液と合わせ、安定なプレエマルションが形成されるまで、約1時間オービタルシェーカー上で混合する。
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) 24.44g
ヒドロキノンモノメチルエーテル
(2%水溶液) 3.77g
脱イオン水 455.00g
合計 1300.00g
【0158】
プレエマルションを400~800barの圧力で高圧ホモジナイザーに通し、156nm(PDI=0.16)のz-平均粒径のミニエマルションを生成する。
【0159】
工程2:重合
アンカー撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素入口を備えた3L重合容器に、脱イオン水250.17g及び工程1で調製したミニエマルション72gを初期仕込み物として仕込み、50℃まで加熱する。1つの密封可能な容器(供給1)に、脱イオン水38.34g中に第三ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)4.62gを加えた溶液を調製する。第2の密封可能な容器(供給2)に、ホルムアルデヒドを含まない還元剤(Bruggolite(R) FF6 M)2.31gを脱イオン水43.86gに溶かした溶液を調製する。第3の容器(供給3)にミニエマルション828gを入れる。供給1及び2は230μL/分の速度で開始し、続いて供給3を5.0mL/分の速度で開始し、165分間にわたって連続的に計量する。供給1及び2は、供給3の終了後さらに45分間継続し、その後、反応を50℃でさらに90分間保持する。室温まで冷却した後、アンモニア水を加えて生成物をpH8に調整し、100μmのフィルターで濾過し、以下の特性を有する分散液を得る。
比重:1.070、
ガラス転移温度:17.0℃、
固形分:46.58%、
総残留遊離モノマー:<300ppm
Z-平均粒径:151nm(PDI=0.18)
【0160】
[比較例2:エチレン性不飽和フェニルシリコーン樹脂CB2からのコポリマー分散液CE2の調製]
【0161】
工程1:ミニエマルションの調製
シリコーン樹脂を(メタ)アクリルモノマーの混合物(モノマーの組み合わせは、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを含まない)に溶解した後、高圧で均質化することによって、ミニエマルションを調製する。均質化の目的は、≦200nmのz-平均粒径を達成することである。以下は、ミニエマルションを調製するためにIKA(R) HPH 2000/5高圧ホモジナイザーを使用する例である。
【0162】
以下の成分を密封可能な容器に加え、オービタルシェーカー上で混合する。
シリコーン樹脂CB2 154.74g
ブチルアクリレート 306.29g
メチルメタクリレート 350.32g
ヘキサデカン 5.45g
合計 816.80g
【0163】
得られた混合物を、以下の成分の溶液と合わせ、安定なプレエマルションが形成されるまで、約1時間オービタルシェーカー上で混合する。
ドデシル硫酸ナトリウム(SDS) 24.46g
ヒドロキノンモノメチルエーテル
(2%水溶液) 3.74g
脱イオン水 455.00g
合計 1300.00g
【0164】
プレエマルションを400~800barの圧力で高圧ホモジナイザーに通し、平均粒径206nm(PDI=0.22)のミニエマルションを生成する。
【0165】
工程2:重合
アンカー撹拌機、還流冷却器、温度計及び窒素入口を備えた3L重合容器に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム塩0.108g、硫酸鉄アンモニウム六水和物0.108g、脱イオン水250.17g、及び工程1で調製したミニエマルション72gを初期仕込み物として仕込み、50℃まで加熱した。1つの密封可能な容器(供給1)に、脱イオン水38.58g中に第三ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)4.62gを加えた溶液を調製する。第2の密封可能な容器(供給2)に、ホルムアルデヒドを含まない還元剤(Bruggolite(R) FF6 M)2.31gを脱イオン水43.86gに溶かした溶液を調製する。第3の容器(供給流3)にミニエマルション828gを入れる。供給1及び2は230μL/分の速度で開始し、続いて供給3を5.0mL/分の速度で開始し、165分間にわたって連続的に計量する。供給1及び2は、供給3の終了後さらに40分間継続し、その後、反応を50℃でさらに90分間保持する。室温まで冷却した後、アンモニア水を加えて生成物をpH8に調整し、100μmのフィルターで濾過し、以下の特性を有する分散液を得る。
比重:1.054、
ガラス転移温度:11.7℃、
固形分:45.44%、
総残留遊離モノマー:<100ppm
Z-平均粒径:131nm(PDI=0.16)
【0166】
<工業用コーティング配合物における応用>
コポリマー分散液を、ポリイソシアネート系硬化剤Bayhydur(R) XP 2547(ヘキサメチレンジイソシアネートをベースとするポリイソシアネート、Covestroで入手可能)を含有する工業用水性コーティング配合物に使用した。典型的な配合物では、イソシアネート硬化剤をコポリマー分散液とCowlesブレードを用いて1000rpmで約30秒間混合した。アルミニウムQ-パネルにバードバー(bird bar)を用いて配合物を塗布した後、室温、相対湿度50~55%で乾燥させ、フィルム(乾燥厚さ約23~27μmの間)を評価した。フィルムの耐久性はMEKダブルラブテスト(ASTM D5402)により1週間後に測定した。値が大きいほど、フィルムの耐久性が高い。配合物組成及び試験結果を表1に示す。
【0167】
【0168】
表1によれば、(モノマー(C)としての2-ヒドロキシエチルメタクリレートの使用により)架橋可能なHO官能基を有する発明のコポリマーをベースとする本発明の分散液E1及びE2の配合物F1及びF2は、架橋可能なHO官能基を有さない(2-ヒドロキシエチルメタクリレートを使用しない)本発明でないコポリマーをベースとする本発明でない分散液CE1及びCE2の配合物C1及びC2と比較して、より良好なMEKダブルラブテスト値を示した。このことは、硬化中に硬化剤のイソシアネート基と架橋を形成する反応性官能基を有するコポリマー分散液から形成されたフィルムの耐久性が良好であることを示す。
【0169】
本発明でない分散液CE1の本発明でないコポリマーは、架橋可能なHO官能基を持たない(2-ヒドロキシエチルメタクリレートを使用しない)が、少量の架橋可能な官能基(-COOH)を含む。なぜならば、フリーラジカル重合により、エチレン性不飽和モノマー(A)に基づいて、メタクリル酸が2.1重量%の少量で使用されたからである。少量のこれらの架橋可能な官能基は硬化剤のイソシアネート基との架橋には至らない。