(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】散乱粒子サイズの非破壊的推定のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20240924BHJP
G01N 11/00 20060101ALI20240924BHJP
G01N 15/02 20240101ALI20240924BHJP
G01N 21/21 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
G01N15/0227 110
G01N11/00 C
G01N15/02 D
G01N21/21 Z
(21)【出願番号】P 2022546655
(86)(22)【出願日】2021-02-01
(86)【国際出願番号】 US2021016066
(87)【国際公開番号】W WO2021155361
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-12-21
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592017633
【氏名又は名称】ザ ジェネラル ホスピタル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】ナドカルニ シーマンティニ
(72)【発明者】
【氏名】ハジャリアン-カシャニ ザイナブ
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0049354(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/0227
G01N 21/21
G01N 11/00
G01N 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するための方法において、
コヒーレント光源を使用して偏光を前記サンプルに送るステップと、
検出器を使用して、前記サンプルから反射された偏光であって平行偏光成分及び垂直偏光成分を含む偏光を取得するステップと、
プロセッサを使用して、前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するステップと、
前記プロセッサを使用して、前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記スペックル無相関率に基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップと、を含む方法。
【請求項2】
前記検出器は、前記サンプル中の複数の空間的に分布した位置に対応する複数のピクセルを備え、
前記サンプルから反射された偏光を取得するステップは、前記複数のピクセルにわたって前記サンプルから反射された偏光を取得するステップを含み、
前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するステップは、前記複数のピクセルのそれぞれごとに前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分のスペックル無相関率を決定するステップを含み、
前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップは、前記サンプル中の前記複数の空間的に分布した位置のそれぞれに対応する前記複数のピクセルのそれぞれごとに散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記サンプルから反射された偏光を取得するステップは、前記サンプルから反射された偏光を時間の関数として取得するステップを含み、
前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するステップは、前記サンプルから反射された偏光に基づいて前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を時間の関数として決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記サンプルから反射された偏光に基づいて前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を時間の関数として決定するステップは、前記サンプルから反射された偏光の前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における緩和曲線を時間の関数として決定することに基づいてスペックル無相関率を決定するステップを含み、
前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記スペックル無相関率に基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップは、前記サンプルから反射された偏光の前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における時間の関数としての緩和曲線に基づき前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記スペックル無相関率に基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記スペックル無相関率に基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップは、前記サンプルから反射された偏光の前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記緩和曲線の比率を時間の関数として決定することに基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するステップは、値のテーブルに基づいて前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記値のテーブルは、複数の粒子サイズに関するスペックル密度自己相関曲線のシミュレーションに基づいて生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記シミュレーションが偏光感度相関移動モンテカルロ光線追跡シミュレーションを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
直線偏光を前記サンプルに送るステップは、複数の波長を含む直線偏光を前記サンプルに送るステップを含み、
前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップは、複数の波長を含む直線偏光を前記サンプルに送ることに基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
直線偏光を前記サンプルに送るステップは、前記サンプルに平行偏光と垂直偏光を交互に送るステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルに平行偏光と垂直偏光を交互に送るステップは、前記平行偏光及び前記垂直偏光のうちの一方を選択するためにスイッチングミラーに基づく光アイソレータ又は偏光アイソレータと任意選択的に組み合わせて偏光変調器を使用して平行偏光と垂直偏光との間で変調するステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記偏光が直線偏光を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
サンプルにおける周波数依存弾性率の空間マップを決定するための方法において、
検出器を用い、複数の時点で、平行偏光及び垂直偏光を使用して前記サンプルの複数のスペックルフレームであってそれぞれが複数のピクセルを備える複数のスペックルフレームを取得するステップと、
プロセッサを使用して、前記複数のスペックルフレームに基づき前記平行光及び前記垂直光のそれぞれごとに前記複数のピクセルのそれぞれにおけるスペックル強度自己相関曲線を決定するステップと、
前記プロセッサを使用して、前記スペックル強度自己相関曲線に基づいて前記サンプル中の散乱粒子サイズの分布を推定するステップと、
前記プロセッサを使用して、前記スペックル強度自己相関曲線に基づいて局所散乱粒子の平均二乗変位を決定するステップと、
前記プロセッサを使用して、前記複数のピクセルのそれぞれごとに、前記サンプルにおける前記散乱粒子サイズの分布と前記平均二乗変位とに基づいて、前記サンプルにおける周波数依存剪断粘弾性率G(x,y,ω)、弾性率G’(x,y,ω)、又は粘性係数G’’(x,y,ω)のうちの少なくとも1つを決定するステップと、を含む方法。
【請求項14】
前記周波数依存剪断粘弾性率G(x,y,ω)から、前記サンプルの粘弾性パラメータの平均値(G
*
ave)、最大弾性率値(G
*
max)、又は前記サンプル中の弾性率分布の標準偏差(σ
*
G)のうちの少なくとも1つを含む微小機械指数を抽出するステップを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記微小機械指数を抽出することに基づいて不均一性指数を計算するステップを更に含み、
前記不均一性指数は、弾性率勾配若しくは傾き、エントロピー(E
G)、分散(D
G)、又はフラクタル次元(FD
G)のうちの少なくとも1つを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するための装置であって、
コヒーレント光源と、
検出器と、
前記コヒーレント光源及び前記検出器と通信するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
偏光を前記サンプルに送るように前記コヒーレント光源を制御し、
前記サンプルから反射された偏光であって平行偏光成分及び垂直偏光成分を含む偏光を取得するように前記検出器を制御し、
前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定し、
前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記スペックル無相関率に基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するように構成される、装置。
【請求項17】
前記検出器は、前記サンプル中の複数の空間的に分布した位置に対応する複数のピクセルを備え、
前記プロセッサは、前記サンプルから反射された偏光を取得するときに、前記複数のピクセルにわたって前記サンプルから反射された偏光を取得するように更に構成され、
前記プロセッサは、前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するときに、前記複数のピクセルのそれぞれごとに前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分のスペックル無相関率を決定するように更に構成され、
前記プロセッサは、前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するときに、前記サンプル中の前記複数の空間的に分布した位置のそれぞれに対応する前記複数のピクセルのそれぞれごとに散乱粒子の前記平均サイズを推定するように更に構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記プロセッサは、前記サンプルから反射された偏光を取得するときに、前記サンプルから反射された偏光を時間の関数として取得するように更に構成され、
前記プロセッサは、前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するときに、前記サンプルから反射された偏光に基づいて前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を時間の関数として決定するように更に構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記プロセッサは、前記サンプルから反射された偏光に基づいて前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を時間の関数として決定するときに、前記サンプルから反射された偏光の前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における緩和曲線を時間の関数として決定することに基づいてスペックル無相関率を決定するように更に構成され、
前記プロセッサは、前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記スペックル無相関率に基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するときに、前記サンプルから反射された偏光の前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における時間の関数としての緩和曲線に基づき前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記スペックル無相関率に基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するように更に構成される、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記プロセッサは、前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における前記スペックル無相関率に基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するときに、前記サンプルから反射された偏光の前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分における緩和曲線の比率を時間の関数として決定することに基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するように更に構成される、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記プロセッサは、前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するときに、値のテーブルに基づいて前記平行偏光成分及び前記垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するように更に構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項22】
前記値のテーブルは、複数の粒子サイズに関するスペックル密度自己相関曲線のシミュレーションに基づいて生成される、請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記シミュレーションが偏光感度相関移動モンテカルロ光線追跡シミュレーションを含む、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記プロセッサは、偏光を前記サンプルに送るときに、複数の波長を含む偏光を前記サンプルに送るように更に構成され、
前記プロセッサは、前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するときに、複数の波長を含む偏光を前記サンプルに送ることに基づいて前記サンプル中の散乱粒子の前記平均サイズを推定するように更に構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項25】
前記プロセッサは、前記サンプルに偏光を送るときに、前記サンプルに平行偏光と垂直偏光を交互に送るように更に構成される、請求項16に記載の装置。
【請求項26】
前記プロセッサは、前記サンプルに平行偏光と垂直偏光を交互に送るときに、前記平行偏光及び前記垂直偏光のうちの一方を選択するためにスイッチングミラーに基づく光アイソレータ又は偏光アイソレータと任意選択的に組み合わせて偏光変調器を使用して平行偏光と垂直偏光との間で変調するように更に構成される、請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記偏光が直線偏光を含む、請求項16に記載の装置。
【請求項28】
サンプルにおける周波数依存弾性率の空間マップを決定するための装置において、
検出器と、
前記検出器と通信するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
複数の時点で、平行偏光及び垂直偏光を使用して、前記サンプルの複数のスペックルフレームであってそれぞれが複数のピクセルを備える複数のスペックルフレームを取得するように前記検出器を制御し、
前記複数のスペックルフレームに基づき前記平行光及び前記垂直光のそれぞれごとに前記複数のピクセルのそれぞれにおけるスペックル強度自己相関曲線を決定し、
前記スペックル強度自己相関曲線に基づいて前記サンプル中の散乱粒子サイズの分布を推定し、
前記スペックル強度自己相関曲線に基づいて局所散乱粒子の平均二乗変位を決定し、
前記複数のピクセルのそれぞれごとに、前記サンプルにおける前記散乱粒子サイズの分布と前記平均二乗変位とに基づき、前記サンプルにおける周波数依存剪断粘弾性率G(x,y,ω)、弾性率G’(x,y,ω)、又は粘性係数G’’(x,y,ω)のうちの少なくとも1つを決定するように構成される、装置。
【請求項29】
前記プロセッサは、
前記周波数依存剪断粘弾性率G(x,y,ω)から、前記サンプルの粘弾性パラメータの平均値(G
*
ave)、最大弾性率値(G
*
max)、又は前記サンプル中の弾性率分布の標準偏差(σ
*
G)のうちの少なくとも1つを含む微小機械指数を抽出するように更に構成される、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
前記プロセッサは、
前記微小機械指数を抽出することに基づいて不均一性指数を計算するように更に構成され、
前記不均一性指数は、弾性率勾配若しくは傾き、エントロピー(E
G)、分散(D
G)、又はフラクタル次元(FD
G)のうちの少なくとも1つを含む、請求項29に記載の装置。
【請求項31】
サンプル中の粒子サイズの空間マップを決定するための方法において、
検出器を用い、複数の時点で、平行偏光及び垂直偏光を使用して前記サンプルの複数のスペックルフレームであってそれぞれが複数のピクセルを備える複数のスペックルフレームを取得するステップと、
プロセッサを使用して、前記複数のスペックルフレームに基づきそれぞれの前記平行光及び前記垂直光ごとに前記複数のピクセルのそれぞれにおけるスペックル強度自己相関曲線を決定するステップと、
前記プロセッサを使用して、前記スペックル強度自己相関曲線に基づいて前記サンプル中の散乱粒子サイズの分布を推定するステップと、
前記プロセッサを使用して、前記スペックル強度自己相関曲線に基づいて局所散乱粒子の平均二乗変位を決定するステップと、
前記プロセッサを使用して、前記複数のピクセルのそれぞれごとに、前記スペックル強度自己相関時間の分布に基づいて前記サンプルにおける散乱粒子サイズa(x,y)の空間マップを決定するステップと、を含む方法。
【請求項32】
前記サンプルにおける散乱粒子サイズa(x,y)の前記空間マップから、前記サンプルの粒子サイズの平均値(a
*
ave)、最大粒子サイズ(a
*
max)、又は前記サンプル中の粒子サイズ分布の標準偏差(σ
*
a)のうちの少なくとも1つを含む粒子サイズ指数を抽出するステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記粒子サイズ指数を抽出することに基づいて不均一性指数を計算するステップを更に含み、
前記不均一性指数は、粒子サイズ勾配又は傾き、エントロピー(E
a)、分散(D
a)、又は、フラクタル次元(FD
a)のうちの少なくとも1つを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
サンプル中の粒子サイズの空間マップを決定するための装置において、
検出器と、
前記検出器と通信するプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、
複数の時点で、平行偏光及び垂直偏光を使用して前記サンプルの複数のスペックルフレームであってそれぞれが複数のピクセルを備える複数のスペックルフレームを取得するように前記検出器を制御し、
前記複数のスペックルフレームに基づきそれぞれの前記平行光及び前記垂直光ごとに前記複数のピクセルのそれぞれにおけるスペックル強度自己相関曲線を決定し、
前記スペックル強度自己相関曲線に基づいて前記サンプル中の散乱粒子サイズの分布を推定し、
前記スペックル強度自己相関曲線に基づいて局所散乱粒子の平均二乗変位を決定し、
前記複数のピクセルのそれぞれごとに、前記サンプルにおける前記スペックル強度自己相関時間の分布に基づいて前記サンプルにおける散乱粒子サイズa(x,y)の空間マップを決定するように構成される、装置。
【請求項35】
前記プロセッサは、前記サンプルにおける散乱粒子サイズa(x,y)の前記空間マップから、前記サンプルの粒子サイズの平均値(a
*
ave)、最大粒子サイズ(a
*
max)、又は前記サンプル中の粒子サイズ分布の標準偏差(σ
*
a)のうちの少なくとも1つを含む粒子サイズ指数を抽出するように更に構成される、請求項34に記載の装置。
【請求項36】
前記プロセッサは、前記粒子サイズ指数を抽出することに基づいて不均一性指数を計算するように更に構成され、
前記不均一性指数は、粒子サイズ勾配又は傾き、エントロピー(E
a)、分散(D
a)、又はフラクタル次元(FD
a)のうちの少なくとも1つを含む、請求項35に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は、2020年1月31日に出願された米国特許出願第62/968,308号明細書に基づくとともに、この特許出願による優先権を主張し、前記出願の開示全体は参照により本願に組み入れられる。
【0002】
<連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載>
この発明は、NIHによって授与された助成金番号5R01HL142272の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
現在の撮像技術は、組織などの混濁材料中の散乱粒子のサイズ分布を非侵襲的に推定するのにはあまり適していない。場合によっては、研究者らは、散乱粒子サイズのサイズスケールを表す屈折率不均一性及び不一致のサイズスケールを評価するために電子顕微鏡法などの破壊的技術を使用してきた。更に、極端に希釈された液体サンプルのサイズ分布を推定できるようにする他の光学的手法が開発されてきた。それにもかかわらず、これらの技術は、生来の状態の生体組織又は生体材料と共に使用するのに適していない。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本明細書に開示される方法及びシステムは、非イオン化光線を使用して検体と接触することなく又は任意の方法で検体を操作することなく液体及び固体の検体の両方における散乱粒子のサイジングを容易にすることによって上記で特定された1つ以上の問題に対処する。
【0005】
1つの実施形態において、本発明は、サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するための方法において、コヒーレント光源を使用して、偏光、例えば直線偏光、をサンプルに送るステップと、検出器を使用して、サンプルから反射された偏光であって平行偏光成分(parallel polarized component)及び垂直偏光成分(perpendicular polarized component)を含む偏光を取得するステップと、プロセッサを使用して、平行偏光成分及び垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定するステップと、プロセッサを使用して、平行偏光成分及び垂直偏光成分におけるスペックル無相関率に基づいてサンプル中の散乱粒子の平均サイズを推定するステップとを含む方法を提供する。
【0006】
他の実施形態において、本発明は、サンプルにおける周波数依存弾性率の空間マップを決定するための方法において、検出器を用い、複数の時点で、平行偏光及び垂直偏光を使用してサンプルの複数のスペックルフレームを取得するステップであって、複数のスペックルフレームのそれぞれが複数のピクセルを備える、ステップと、プロセッサを使用して、複数のスペックルフレームに基づきそれぞれの平行光及び垂直光ごとに複数のピクセルのそれぞれにおけるスペックル強度自己相関曲線を決定するステップと、プロセッサを使用して、スペックル強度自己相関曲線に基づいてサンプル中の散乱粒子サイズの分布を推定するステップと、プロセッサを使用して、スペックル強度自己相関曲線に基づいて局所散乱粒子の平均二乗変位を決定するステップと、プロセッサを使用して、複数のピクセルのそれぞれごとに、サンプルにおける散乱粒子サイズの分布と平均二乗変位とに基づき、サンプルにおける周波数依存剪断粘弾性率G(x,y,ω)、弾性率G’(x,y,ω)、又は、粘性係数G’’(x,y,ω)のうちの少なくとも1つを決定するステップとを含む方法を提供する。
【0007】
更なる他の実施形態において、本発明は、サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するための装置であって、コヒーレント光源と、検出器と、コヒーレント光源及び検出器と通信するプロセッサとを含み、プロセッサが、直線偏光をサンプルに送るようにコヒーレント光源を制御し、サンプルから反射された偏光であって平行偏光成分及び垂直偏光成分を含む偏光を取得するように検出器を制御し、平行偏光成分及び垂直偏光成分におけるスペックル無相関率を決定し、平行偏光成分及び垂直偏光成分におけるスペックル無相関率に基づいてサンプル中の散乱粒子の平均サイズを推定するように構成される、装置を提供する。
【0008】
更なる他の実施形態において、本発明は、サンプルにおける周波数依存弾性率の空間マップを決定するための装置において、検出器と、検出器と通信するプロセッサとを備え、プロセッサは、複数の時点で、平行偏光及び垂直偏光を使用してサンプルの複数のスペックルフレームであってそれぞれが複数のピクセルを備える複数のスペックルフレームを取得するように検出器を制御し、複数のスペックルフレームに基づきそれぞれの平行光及び垂直光ごとに複数のピクセルのそれぞれにおけるスペックル強度自己相関曲線を決定し、スペックル強度自己相関曲線に基づいてサンプル中の散乱粒子サイズの分布を推定し、スペックル強度自己相関曲線に基づいて局所散乱粒子の平均二乗変位を決定し、複数のピクセルのそれぞれごとに、サンプルにおける散乱粒子サイズの前記分布と平均二乗変位とに基づき、サンプルにおける周波数依存剪断粘弾性率G(x,y,ω)、弾性率G’(x,y,ω)、又は、粘性係数G’’(x,y,ω)のうちの少なくとも1つを決定するように構成される、装置を提供する。
【0009】
更なる他の実施形態において、本発明は、サンプル中の粒子サイズの空間マップを決定するための方法において、検出器を用い、複数の時点で、平行偏光及び垂直偏光を使用してサンプルの複数のスペックルフレームであってそれぞれが複数のピクセルを備える複数のスペックルフレームを取得するステップと、プロセッサを使用して、複数のスペックルフレームに基づきそれぞれの平行光及び垂直光ごとに複数のピクセルのそれぞれにおけるスペックル強度自己相関曲線を決定するステップと、プロセッサを使用して、スペックル強度自己相関曲線に基づいてサンプル中の散乱粒子サイズの分布を推定するステップと、プロセッサを使用して、スペックル強度自己相関曲線に基づいて局所散乱粒子の平均二乗変位を決定するステップと、プロセッサを使用して、複数のピクセルのそれぞれごとに、スペックル強度自己相関時間、無相関時間、又は緩和時間の分布に基づいてサンプルにおける散乱粒子サイズa(x,y)の空間マップを決定するステップとを含む方法を提供する。
【0010】
他の実施形態において、本発明は、サンプル中の粒子サイズの空間マップを決定するための装置において、検出器と、検出器と通信するプロセッサとを備え、プロセッサが、複数の時点で、平行偏光及び垂直偏光を使用してサンプルの複数のスペックルフレームであってそれぞれが複数のピクセルを備える複数のスペックルフレームを取得するように検出器を制御し、複数のスペックルフレームに基づきそれぞれの平行光及び垂直光ごとに複数のピクセルのそれぞれにおけるスペックル強度自己相関曲線を決定し、スペックル強度自己相関曲線に基づいてサンプル中の散乱粒子サイズの分布を推定し、スペックル強度自己相関曲線に基づいて局所散乱粒子の平均二乗変位を決定し、複数のピクセルのそれぞれごとに、サンプルにおけるスペックル強度自己相関時間の分布に基づいてサンプルにおける散乱粒子サイズa(x,y)の空間マップを決定するように構成される、装置を提供する。
【0011】
開示された主題の様々な目的、特徴、及び、利点は、同様の参照番号が同様の要素を特定する以下の図面に関連して考慮される際に、開示された主題の以下の詳細な説明を参照してより完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】空間的に変化する散乱粒子サイズの測定も含むレーザスペックルマイクロレオロジー(LSM)におけるシステムの図である。
【
図1B】媒体がレーザ光で照明されるときに生じる粒状強度パターンであるレーザスペックルの現象に基づくLSMの概要を示す。スペックル画像のサンプル(左、中央)及びスペックルデータを取得するためのシステム(右)並びにスペックル画像と関連付けられるサンプルの図(中央)が示される。
【
図2A】LSM処理アルゴリズムの一実施形態のフローチャートを示す。
【
図3】生体組織に関するLSMデータの分析の概要を示す。
【
図4】スペックルダイナミクス、サンプルメカニクス、及び、粒子サイズ分布を示す生体組織に関するLSMデータの分析の概要を示す。
【
図5】共偏光拡散反射プロファイル(DRP)のモンテカルロシミュレーションを示す。
【
図6】モンテカルロ光線追跡アルゴリズムの概略図を示し、左側のパネルは、組織への及び組織を通る光の動きを示し、右側のパネルは、組織を通じて進んで受光器に衝突する単一光子の経路の図を示す。
【
図7A】スペックル強度無相関曲線及び散乱粒子サイズを示し、無偏光スペックルフレーム並びに平行偏光スペックルフレーム及び垂直偏光スペックルフレームに関する、レーザスペックル強度自己相関関数の概念形態を示す。
【
図7B】スペックル強度無相関曲線及び散乱粒子サイズを示し、散乱粒子のサイズが垂直偏光状態及び平行偏光状態でのg
2(t)曲線の対数の比率から推定され得ることを示す。
【
図7C】g
2(t)曲線の異なる緩和時間に基づいて粒子サイズ分布を取得するための手順を示す。
【
図7D】無相関率の空間マッピングに基づいて粒度分布を取得するための手順を示す。
【
図7E】ハイパースペクトルスペックル取得を利用することによってサイズ範囲を拡張するための手順を示す。
【
図8】生体組織の様々な例に関する平行偏光状態及び垂直偏光状態でのサンプル実験g
2(t)曲線を示し、パネル(A)は脂肪、γ
⊥/γ
∥=1.32、a=120nm、パネル(B)は線維、γ
⊥/γ
∥=1.5、a=100nm、パネル(C)は腫瘍組織タイプ1、γ
⊥/γ
∥=1.43、a=110nm、及び、パネル(D)は腫瘍組織タイプ2(ILC)、γ
⊥/γ
∥=1.24、a=130nmである。これらの曲線は、胸部組織の散乱粒子サイズが100nm程度であることを示し、これらの図において、「H」は水平光又は平行光を指し、「V」は鉛直光又は垂直光を指す。
【
図9A】パネル内の様々な生体組織、すなわち、脂肪又は脂質、典型的な線維組織、腫瘍組織タイプ1及び腫瘍組織タイプ2に関するLSMを使用して評価された周波数依存剪断粘弾性率Gを示す。
【
図9B】開示された手順と従来のレオロジーとの比較を示す。
【
図10A】複数の周波数で正常な脂肪組織に関してLSMを使用して評価された剪断粘弾性率Gの空間マップを示す。
【
図10B】複数の周波数における生体組織に関するLSMを使用して評価された剪断粘弾性率Gの空間マップを示す。
【
図11】エントロピー、分散、及び、フラクタル次元などの不均一性の幾つかの指数の図での表現を示す。
【
図12】生体組織ランドスケープ全体にわたる局所エントロピーを計算した結果を示し、パネル(A)はf=1Hzでの剪断弾性率の大きさのマップを示し、パネル(B)はエントロピーの空間マップを示す。良性検体と比較して悪性組織ではより高いエントロピーが予期できる。
【
図13】生体組織ランドスケープ全体にわたって不均一指数を計算した結果を示し、パネル(A)はf=1Hzでの剪断弾性率の大きさのマップを示し、パネル(B)は局所変動係数(CV)の表示を示す。CVが増大した組織不均一性の部位で最大化され得ることが観察される。
【
図14】開示される主題の幾つかの実施形態に係るサンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するための供給源を与えるためのシステムの一例を示す。
【
図15】開示された主題の幾つかの実施形態に係るコンピューティングデバイス及びサーバを実装するために使用され得るハードウェアの一例を示す。
【
図16】本開示の主題の幾つかの実施形態に係るサンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するためのプロセスの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
開示される主題の幾つかの実施形態によれば、サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するための機構(システム、方法、及び、装置を含むことができる)が提供される。
【0014】
LSMの手順が開発されており、この手順は、数分以内に数十μm、cm2スケールFoVの空間分解能で切除された軟組織における複素粘弾性率又は剪断弾性率Gを初めてマッピングできるようにする。軟組織サンプルにおけるLSM撮像を使用して、Gが組織の組織学的提示を厳密に反映することが更に実証される。更に、剪断弾性率から、潜在的な診断的意味を有する局所的な不均一性及び勾配の空間マップを計算することができる。これらの不均一性指数は、組織微小環境の粘弾性特性を予後に暗示し、治療のための新しい修正可能な標的を同定するための経路を確立する可能性が高い。
【0015】
大部分のヒト疾患の病因及び進行は、組織微小環境の機械的変換によって導かれることが益々認識されている。良性及び悪性細胞のインビトロモデルは、細胞外マトリックス(ECM)の変化した機械的特性が細胞の表現型形質転換、分化、成長及び遊走を促進することを実証する。しかしながら、これらの洞察は、インビトロ機械生物学研究の文脈においてのみ確立されている。しかしながら、これらの概念の潜在的な並進的影響については、ヒト疾患の臨床経過に関連して殆ど知られていない。
【0016】
レーザスペックルマイクロレオロジーは、組織微小環境の粘弾性特性と、疾患発症及び進行の臨床症状を伴うその空間的変動性との間の関連性を調査するための研究ツールを提供する。既存の技術の殆どは、バルクスケールで組織の弾性特性に関する情報のみを提供する。他方、LSMは、複素剪断弾性率G(ω)とも呼ばれる周波数依存粘弾性率によって最もよく特徴付けられるように、異なる負荷速度の下で粘性(液体様)挙動及び弾性(固体様)挙動の両方の非接触マッピングを可能にする。粘性形質と弾性形質との間の相互作用が、弾性のみでは説明されない方法で悪性挙動を更に改変し得ることが判明したため、これは重要である。更に、弾性及び粘性形質の空間分布は、バルク又はアンサンブル平均特性から容易には明らかではない方法で、悪性進行を更に調節する。
【0017】
したがって、本開示の実施形態は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる「組織の生体力学的特性の特性評価におけるレーザスペックルマイクロレオロジー」と題する米国特許第10,359,361号明細書のものを含む、本発明者らの以前の研究に対する改善を提供する。本開示では、レーザスペックルマイクロレオロジー(LSM)フレームワークは、異なる偏光状態で得られた時変スペックルパターンからの空間的に変化する光学特性及び光散乱粒子サイズ分布の測定に関する追加情報を用いて、生体組織の空間的に変化する周波数依存粘弾性挙動を定量化するために詳述され、検証されている。レーザスペックルは、生体組織などの濁った材料がコヒーレントな光ビームによって照明されるときに生じる粒状強度パターンである。散乱粒子のブラウン分布は、スペックル強度の変動を誘発する。したがって、スペックル変動は、これらの熱運動のスケール及び程度、ひいてはそれらの周囲環境の粘弾性特性によって変調される。粘弾性パラメータに加えて、光散乱粒子のサイズは、スペックル変動率を調節する重要な因子である。
【0018】
生物流体及びコロイド中の内因性散乱粒子の平均流体力学的サイズを推定するアルゴリズムは、以前に考案されている。従来の手法は、照明ビームの偏光状態に関して、平行偏光状態で取得された時間的に平均化されたスペックル強度を評価することによって、空間反射率プロファイルから散乱粒子の流体力学的半径を測定することに基づいていた。得られた強度パターンを用いて、平行偏光状態における拡散反射率プロファイル(DRP)を測定した。DRPは、散乱粒子の平均流体力学的半径に関連する固有の空間パターンを示した。より具体的には、粒子のサイズが100nm~3ミクロンに成長するにつれて、DRPは二葉パターンから楕円形に、そして最終的には四葉又はクローバー様の形状に進化する。それにもかかわらず、この手法は、より大きな散乱粒子を有する生物学的流体にのみ適用可能であり、未知の散乱粒子サイズ分布が有意に小さい粒子に向かって歪んでいる軟組織における散乱粒子サイズを評価するのに十分な感度を示さなかった。更に、この手法は、散乱粒子サイズが空間的に変化し、例えば腫瘍上皮対間質で異なるサイズ分布を示す不均一組織における周波数依存剪断粘弾性率G(x,y,ω)(ここで、ω=2πf、[f]=Hz、[ω]=rad/s)の空間マッピングには適していなかった。これは、そのような不均一な組織では、剪断弾性率G(x,y,ω)の空間マッピングを可能にするために、腫瘍の風景全体にわたる散乱粒子サイズ分布を知る必要があるからである。
【0019】
以下に説明するように、本発明は、不均一な軟組織における粘弾性率G及び散乱粒子サイズaの空間マッピングに関する代替的な粒子サイジング手法を記載する。更に、それは、a及びGの両方の不均一性を定量化するための方法、並びに空間的に変化する弾性率及び散乱粒子サイズの知識を用いてGの周波数依存性を調査するための方法も必要とする。
【0020】
したがって、本開示は、照明状態に対して平行及び垂直などの2つの偏光状態でスペックル強度自己相関関数を評価することに基づく粒子サイジング手法を記載する。垂直状態及び偏光状態におけるスペックル強度自己相関関数の対数の時間依存比の分析は、散乱粒子サイズ分布をもたらすと予想される。
【0021】
本開示の第2の態様は、組織から3DのG(x,y,ω)を得て、続いてG’及びG’’マップの弾性率及び粘性率の両方を得るという能力である。これは、散乱粒子サイズaの空間依存性を知ることによって可能になる。
【0022】
本開示の第3の態様は、弾性率G(x,y,ω)の不均一性及び粒子サイズ変動aを定量化することに関するものであり、これらは両方とも、癌生体力学の分野における腫瘍-間質相互作用の文脈などにおいて、有意な臨床的意義を有することが知られている。
【0023】
生体組織の光学的不透明性及び濁度は、構造繊維と細胞核との間の屈折率の不整合(nは約1.4~1.45)及びそれらの細胞質のバックグラウンド(nは約1.36)又は細胞外液のバックグラウンド(nは約1.34)に起因する。これらの屈折率の不整合は、散乱信号源及び組織の光学特性である。屈折率変動は、長さスケールの連続体として処理されるか、又は所定のサイズ分布の粒状散乱粒子と見なされ得る。本発明は、後者の手法をとる。
【0024】
図1Aは、LSM光学セットアップを示すLSMプラットフォームの一実施形態の図を示す。連続波(CW)レーザからの光が偏光スイッチに通される。この偏光スイッチでは、光が垂直に偏光される。偏光スイッチの一実施形態が挿入図で示される。この場合、偏光ビームは、ビームスプリッタ(BS)を用いて2つのビームに分割される。垂直偏光ビームのうちの1つは、偏光ビームスプリッタ(PBS)を通過して1/4波長板(QWP)に至り、円偏光に変換される。その後、ビームは、円偏光方向を反転させるミラーで反射される。その後、ビームは、同じQWPを通過し、90°回転される直線偏光に戻り、水平偏光ビームを生成する。PBSは、水平偏光ビームを代わりの方向に変向させる。一対の圧電ミラーが、垂直偏光ビーム又は水平偏光ビームのいずれかが任意の所定の時間にサンプルに入射するように、2つの偏光ビーム間の切り換えを可能にする。代替的実施形態において、偏光状態は、2つの偏光状態のうちの一方における光を選択するために任意選択的に光アイソレータ又は偏光アイソレータ及びスイッチングミラーと組み合わせた偏光変調器を使用して変調され得る。照明ビームが、対物レンズの後焦点面で拡大され、成形され、集束され、8mWの電力及び500μmの直径のコリメートされた照明ビームをサンプル部位で生成する。散乱光が、元の同じ対物レンズを通って収集され、高速CMOSカメラによってチューブレンズ及び直線偏光子を介して取得される。照明ビームに対してサンプルを平行移動させるために線形ステージが使用される。
【0025】
LSMは、レーザスペックルレオロジーの微視的実施形態であり、高解像度画像化能力(
図1B)を与えるべく光学顕微鏡プラットフォームを使用して構築される。コヒーレント光ビームが組織などの混濁検体を照明すると、光子は内因性散乱粒子から散乱し、異なる光路に沿って移動する。CMOSセンサにおける散乱光の自己干渉は、スペックルパターンと呼ばれる粒状強度パターンを形成する。散乱粒子の熱ブラウン変位は、スペックル変動を誘発する。
【0026】
スペックル変動率は、ブラウン粒子の変位のスケール及び程度に関連し、その後周囲の微小環境の粘弾性率に関連する。これは、外力を必要とせずに、熱変調スペックル変動を処理して組織の粘弾性特性を得る受動的な技術である。順応性組織では、粒子は緩い網目構造で急速なブラウン運動を実行し、迅速なスペックル強度変動を生じる。剛性組織では、高密度メッシュワーク内の制限された粒子変位は、無光沢スペックルスポットを誘発する。
【0027】
図2Aは、LSM処理アルゴリズムの一実施形態のフローチャートを示す。スペックルフレームは、平行偏光状態と垂直偏光状態の両方で取得される(ボックス1)。フレームの個々のピクセル内の強度変動の時間的相互相関は、両方の偏光におけるスペックル強度自己相関、g
2(t)、曲線を返す(ボックス2)。2つの偏光状態におけるg
2(t)曲線の対数の比を計算すると、γ係数の比が得られる(ボックス3)。スペックルフレームの時間平均により、拡散反射率プロファイル(DRP)が得られる(ボックス4)。拡散反射率を標準リフレクタの拡散反射率と比較すると、μ
a/μ
s’比が得られる(ボックス5)。局所散乱粒子の平均二乗変位(MSD)をg
2(t)曲線から推定する(ボックス6)。γ
⊥/γ
∥をルックアップテーブルと比較して、散乱粒子サイズ分布を得る(ボックス7)。MSDを一般化ストークス-アインシュタインの関係(GSER)に代入すると、周波数依存剪断粘弾性率G(ω)、並びに弾性率及び粘性係数G’及びG’’が得られる。
【0028】
この手法を使用して、周波数依存性弾性率(frequency-dependent modulus)G(x,y,w)及び粒子サイズa(x,y)の空間マップを測定して、サンプルの不均一特性に基づいて疾患過程に関連する指数を抽出することができる。
【0029】
スペックルフレームの相互相関分析は、スペックル強度自己相関関数g
2(t)をもたらす(
図2B)。指数曲線をg
2(t)にフィッティングし、スペックル無相関時定数τを計算することによって、スペックル変動の速度が定量化される。コンプライアント材料では、広範なブラウン軌跡は、短い無相関時間で急速に変動するスペックルパターンを誘発する。一方、剛性基板では、制限された粒子偏位は、微小スペックル変調及びより長い無相関率を誘発する。実際の粘弾性率を評価するために、スペックル変動は散乱粒子の変位に関連する。純粋に粘性の媒体の場合、平均二乗変位(MSD)は時間と共に線形に成長する。より剛性の弾性媒体粒子は運動が制限されており、平衡中心の周りの変位は一定である。粘弾性挙動を有する複雑な流体の場合、MSDはより複雑な形状をとることができる。一方、MSDによって定量化された粒子のブラウン変位の程度及びスケールは、周囲媒体の剛性及び力学によって決定される。実際、一般化されたストークス-アインシュタイン方程式を使用して、粘弾性率を導出することができる。その結果、同じ機械的弾性率を非接触かつ非破壊的に得ることができる。吸収係数μ
a及び低減された散乱係数μ
s’を含む組織の光学特性は、スペックル強度変動に影響を及ぼし得る。より具体的には、スペックルの無相関化は、μ
s’が増大するにつれて加速するが、μ
aが増大するにつれて減速する。したがって、スペックル変動から粒子のMSDを抽出するためには、光学特性の影響を推定して補償する必要がある。より具体的には、スペックル強度の自己相関g
2(t)は、以下のように表すことができる。
【0030】
【0031】
したがって、g2(t)からMSDを抽出するために、(3μa)/(μs’)を知る必要がある。MSDが得られると、それを一般化ストークス関係で置き換えて、以下のように周波数依存剪断粘弾性率を得ることができる。
【0032】
【0033】
ここで、Fはフーリエ変換であり、aは散乱粒子半径である。
【0034】
したがって、G(ω)を評価するための散乱粒子の平均球相当半径であるaもMSDから知るか推定する必要がある。
【0035】
図3は、脂肪組織、線維組織及び2種類の腫瘍組織の4つの組織検体を照明して得られたスペックルフレームシリーズを示す。スペックルフレームを経時的に平均することによって、組織の拡散反射率プロファイル(DRP)を得ることができることが示されている。その後、放射DRPは、照明中心から同じ距離にある点にわたる平均DRPを計算することによって得られる。次に、拡散理論から導出されたモデル関数を径方向DRPにフィッティングして、μ
a及びμ
s’を抽出することができる。このスライドの軟組織検体では、μ
a/μ
s’が比較的小さい(<0.01)ことが分かり、この所定の波長では、組織内に微小血管系が存在しない限り、光学特性を評価又は補正することは重要ではないことを示唆している。それにもかかわらず、検体が微小血管系を含む場合、この比は、血液からの吸収のためにより大きく成長し得る。その場合、光学特性を推定して補正することが重要である。
【0036】
MSDからG(ω)を評価する次のステップは、散乱粒子の平均球相当半径、すなわちa(
図4)を推定することである。前述したように、平行偏光状態でスペックルパターンを取得する場合に、DRPの方位角プロファイルからa値を抽出する手法を開発した。以前の研究では、粒子サイズが100nmから3μmに増大するにつれて、DRPが二葉パターン(例えば、
図4のa=0.1μm及び0.5μmで)からクローバー状パターン(例えば、
図4のa=1μm、2μm、及び3μmで)に進化することが示唆された。これは、スライドの右側パネルに表示され、既知のサイズの様々な微小球から再配置されたスペックルパターンを表示する。したがって、短軸及び長軸に沿った比DRP、すなわちI(0°)/I(90°)を計算することによって、散乱粒子サイズを推定することができる。右パネルの下部に見られるように、a対I(0°)/I(90°)を表にするルックアップテーブルが以前に開発されている。しかしながら、この以前の研究は、100nm~3μmの範囲の散乱粒子サイズにのみ高感度であった。
【0037】
図4の左側に示されるスペックルパターンは、脂肪、線維、及び腫瘍から除去される。図から分かるように、パターンは互いに非常に類似しており、殆どが二葉形(楕円形)である。これは、大部分の軟組織について、正確な粒子サイズを特定することは困難であるが、粒子サイズが100nm(0.1μm)に匹敵することを示している。
【0038】
この問題の原因をよりよく理解するために、様々な粒子サイズの散乱材料から再調整されたDRPパターンをシミュレートするために、偏光モンテカルロ光線追跡法が使用されている(
図5)。DRPパターンは、粒子サイズが100nmから10nmに減少するにつれて変化しないことが分かり、これは、以前の技術が、小さい平均粒子サイズを有する乳房などの生体組織への適用性を制限し得ることを示唆している。
【0039】
したがって、現在開示されている方法は、この問題を克服するために開発された。平行状態及び垂直状態でサンプルから再放射されたスペックルパターンは、同じ速度で変動しないことに留意されたい。換言すれば、平行偏光状態の方が、スペックル変動が遅い。この状態では、垂直状態に比べて単一散乱光の数が多くなるからである。散乱粒子のサイズが小さくなるにつれて、散乱は益々等方性になる。したがって、それらの初期偏光状態を保持する単一散乱線の数が増大する。更に、複数回散乱した光線は、より迅速に脱偏光する。結果として、平行偏光状態及び垂直偏光状態におけるスペックル無相関化の割合は、粒子サイズが小さくなると著しく変化する。
【0040】
偏光感受性相関移動モンテカルロ光線追跡(CT-MCRT)アルゴリズム(
図6参照)への入力は、粒子及び周囲媒質の屈折率、粒子半径、及び粒子の濃度を含む。例えばサンプルを照射する直線偏光子フィルタを使用して生成された直線偏光状態を示す光のペンシルビームを、10
6個の光子によってシミュレートした。
【0041】
入射光は、例えば、ストークスベクトルS0=[1 1 0 0]で水平偏光(直線偏光)であってもよく、例えば、ストークスベクトルS0=[1 -1 0 0]で垂直偏光(直線偏光)であってもよい。光子-粒子相互作用の際に、ストークスベクトルSをミューラー行列との乗算によって更新した。更に、運動量伝達は、q=2k0sin(θ/2)として計算された。検出器(例えば、カメラ)の撮像面に戻る光子について、初期偏光状態を保持する光の放射照度を、SとS0とのスカラー乗算を使用して計算した。また、各光子の累積運動量伝達:Y=Σq2/(2k0
2)を算出した。続いて、スペックル強度の自己相関を以下のように計算した。
【0042】
【0043】
ここで、W
iは、光子のストークスベクトルと検出偏光に対応するストークスベクトルとのスカラー積を指す。すなわち、検出偏光状態の偏光状態と整合する光子強度の成分である。このシミュレーションモデルを用いて、以下に示すように、平行状態及び垂直状態に対応するg
2(t)曲線をシミュレーションし、それらの対数の比を計算した(
図7A参照)。その後、各散乱粒子サイズについて、平行及び垂直偏光状態におけるlog(g
2(t))の比を以下のように計算した。
【0044】
【0045】
これにより、
図7Bに見られるような2つの偏光状態でのスペックル変動率から平均粒子サイズを検索することを可能にするルックアップテーブルが得られ、そのような値がグラフ化される。
【0046】
γ⊥/γ∥の比は時間の関数である。この比は、より短い経路の寄与が支配的である初期に最大であると仮定される。一方、より長い経路からの寄与が増大するより長い時間で減衰する。したがって、遅延時間の関数として比を分析することによって粒子サイズ分布を得ることが可能である。
【0047】
図7Cは、g
2(t)曲線の異なる緩和時間に基づいて粒子サイズ分布を得るための手順を示す。多分散サンプルから得られたg
2(t)曲線は、散乱粒子のサイズ分布に対応する複数の緩和時間を示す。より短い光路は、小さな粒子に対応し、g
2(t)曲線の早期の無相関化を誘発するが、より長い光路は、より大きな前方に向かう散乱中心に対応することが多い。
【0048】
平均aを評価するために、g
2(t)曲線は、フレーム内の全てのスペックルスポットのスペックル自己相関のアンサンブル平均と、時間的に進行する複数の曲線(
図7A)の時間的平均との両方によって得られる。粒子サイズ分布を得るために、スペックルフレームシリーズの時空間処理に基づいて、照明及び収集の幾何学的形状、並びに本明細書で詳述する照明波長を変更する幾つかの他の手法が想定し得る。
【0049】
図7Dは、無相関率の空間マッピングに基づいて粒度分布を得るための手順を示す。スペックル変動の時空間分析により、フレーム内の個々のピクセルのg
2(t)曲線の2Dマップが得られる。コリメートされたビームを使用して、照明し、対物レンズを介してスペックルフレームシリーズを取得することにより、スペックルダイナミクスの空間マッピングが可能になる。したがって、γ
⊥/γ
∥をサンプル全体にマッピングすることによって、散乱粒子サイズの空間マップを評価することができる。時空間分析を更に組み合わせて、サンプル全体の粒子サイズ分布のより詳細なマップを得ることができる。
【0050】
γ⊥/γ∥の時空間的変動は、多くの異なる方法で解釈することができ、空間的変動は、粒子サイズの横方向変動と、散乱粒子サイズの体積マップを得るためにより深い部分から出現するより長い経路に起因する時間的変動とを解明する。更に、照明偏光状態及び集光偏光状態は、鏡面反射を排除及び緩和するために、直線から円形及び楕円形に変化してもよい。
【0051】
図7Eは、ハイパースペクトルスペックル取得を利用することによってサイズ範囲を拡張するための手順を示す。γ
⊥/γ
∥と散乱粒子サイズとの関係は、照射波長に依存する。これは、粒子の散乱位相関数がa/λ比に依存するためである。
【0052】
a/λが小さい場合、散乱は等方性であり、γ⊥/γ∥は大きい。
【0053】
a/λが大きい場合、散乱は前方に向けられ、γ⊥/γ∥は小さい。
【0054】
複数の照明波長を組み込むことにより、より広い範囲の値を数nmからほぼ1μmまでプローブすることができる。1μmより大きい粒子の場合、この手法は、共偏光拡散反射の分析に基づく以前の手法と組み合わせることができる。一実施形態では、照明波長は633nmの光を含むことができ、様々な他の実施形態では、照明波長は400nm~1400nmの範囲の光を含むことができる。組織が特定の波長で高度に吸収しない限り、その特定の波長は照明波長の範囲に含まれ得る。
【0055】
MCRTシミュレーションの精度は、対数の比を文献に報告されている実験的に導出された値と比較することによって検証される。この曲線を使用して、良性及び悪性組織の平均散乱粒子サイズを推定した。
図8のパネルAからパネルDは、正常な脂肪組織及び線維組織並びに腫瘍組織について実験的に評価されたg
2⊥(t)曲線及びg
2∥(t)曲線を示す。実験的に導出されたγ
⊥/γ
∥は、この図に示されているサンプルについて以下の値をもたらす。これらの値は、走査型電子顕微鏡法(SEM)による散乱粒子サイズ分布の計算に関する以前の研究と一致している。
【0056】
Gの周波数依存性:LSM技術は、周波数依存複素剪断粘弾性率、すなわちG(ω)=G’(ω)+iG’’(ω)を、周波数の範囲にわたって、単一の取得で評価することを可能にする。アクセス可能な周波数の範囲は数十年に及び、実質的に無制限である。実際には、周波数範囲は、取得フレームレート及び持続時間によって決定される。対照的に、機械的試験装置は、0.1~10Hzの限られた周波数範囲にわたって、離散的な時点、例えば10~20ポイント/ディケードでG(ω)を得るために、各周波数で一度に1つずつ応力対歪み比を評価する必要がある。対照的に、LSMにアクセス可能な周波数範囲は、検出器又はカメラのスペックル画像取得速度に直接依存する複数kHzを超えて広がる。更に、LSMは、複素弾性率の粘性成分及び弾性成分の両方を推定することもできる。
【0057】
G(ω)を評価するために、散乱粒子の平均二乗変位(MSD)、<Δr2(t)>をスペックル強度変動から推定する。その後、MSDを一般化ストークス-アインシュタイン方程式で置き換えて、以下のように振動周波数(ω=2πf)の関数として複素剪断弾性率を抽出する。
【0058】
【0059】
ここで、Fはフーリエ変換であり、aは散乱粒子半径である。データ点の離散的かつ有限の性質のために、及び周波数限界での数値誤差を回避するために、フーリエ変換の代数近似が、F(Δr
2(t))を計算するために頻繁に使用される。これは、MSDをべき乗則形式、すなわち
【数6】
に適合させることによって達成され、ここで
【数7】
はMSDの対数対数勾配(log-log slope)である。これにより、
【数8】
を
【数9】
に書き換えることができる。
【0060】
この導出では以下の値を使用した。
【0061】
【0062】
続いて、複素G(ω)は、以下のように表すことができる。
【0063】
【0064】
したがって、GがGSERによって評価されると、弾性率(保存)及び粘性率(損失)の両方、すなわち弾性率の実部及び虚部は、以下のように簡単に計算することができる。
【0065】
【0066】
図9Aは、パネル内の様々な生体組織、すなわち、脂肪又は脂質、典型的な線維組織、腫瘍組織タイプ1及び腫瘍組織タイプ2に関するLSMを使用して評価された周波数依存剪断粘弾性率Gを示す。
図9Bは、開示された手順と従来のレオロジーとの比較を示す。
図10Aは、複数の周波数で正常な脂肪組織に関してLSMを使用して評価された剪断粘弾性率Gの空間マップを示す。
図10Bは、複数の周波数における生体組織に関するLSMを使用して評価された剪断粘弾性率Gの空間マップを示す。
【0067】
粘弾性パラメータG及び散乱サイズパラメータaにおける組織不均一性を評価する、すなわち、以下に開示される分析方法は、G又はG*(粘弾性率又は剛性パラメータとも呼ばれる)によって定義される粘弾性パラメータによって与えられる機械的特性における組織不均一性を抽出及び定量化する能力を実証する。以下に詳述するように、平均、エントロピー、分散、及びフラクタル次元に関連するがこれらに限定されない指数を推定するために、散乱粒子サイズaの不均一性を同様に定量化するために、比較可能な方法が使用される。同様に、不均一性メトリックは、弾性及び粘性パラメータG’及びG’’に対してそれぞれ別々に導出することができる(弾性率、粘性率、剛性、又は粘度とも呼ばれる)。
【0068】
微小機械的特徴の評価:LSMによって評価されたG(x,y,ω)から幾つかの微小機械的指数を抽出することができる。これらには、生体組織の粘弾性パラメータの平均値G
*
ave、最大弾性率値G
*
max、及び腫瘍内の弾性率分布の標準偏差σ
*
Gが含まれる。更に、弾性率不均一性の複数の指数は、以下に記載され、以下に図式的に示されるように評価される。要するに、Otsuの方法(MATLAB画像処理ツールボックス)を使用して、200Pa~40kPaの範囲の異なるコンプライアンスの領域にG
*マップをセグメント化する。続いて、以下の不均一性指数が計算される(
図11参照)。
【0069】
・エントロピー(E
G):個々のピクセルにおけるG値の平均ランダム性に対応し、全体的な弾性率の不均一性(
図12参照)を反映する。
【0070】
・分散(DG):低い値は、全体にわたって弾性率の集中パターンを有する組織微小環境を示し、高い値は、弾性率変動の分散パターンを有する組織基質を示す。
【0071】
・フラクタル次元(FDG):組織の微小環境の剪断弾性率の細部がどのように変化するかを、それが測定されるスケールと比較する複雑さの統計的指数である。FDは、評価されたパターンをカバーするのに必要な異なるサイズのボックスの数をカウントし、ボックスの数対それらのサイズを示す曲線の対数-対数勾配を計算することによって、ボックスカウントアルゴリズムを使用して計算されることが多い。
【0072】
不均一性:剪断弾性率の空間プロファイルを処理して、平均弾性率
【数13】
と、弾性率勾配又は傾きと、弾性率不均一性指数とを得ることができる。パラメータ
【数14】
は、既存の臨床技術によって評価されるメトリックと同様である。一方、弾性率勾配又は傾き及び不均一性指数は、LSMによって一意にアクセス可能であり、腫瘍内の機械的不均一性の更なる測定基準を評価する際のこの新規なプラットフォームの強度を強調する。例えば、弾性率勾配の急峻さは、不均一性メトリックの一例である。微小機械的不均一性の調査及び解釈においてLSMによって提供される多数の可能性の更なる例には、以下が含まれる。
【0073】
・情報エントロピー、E:Gマップは、0~30kPaのG値を256個の強度レベルに離散化することによって量子化される。得られた8ビットグレースケール画像のエントロピーが計算される。
【0074】
・組織断片全体の
【数15】
を評価することは別として、LSMは、組織の異なる組織学的区画内のG値、例えば、天然の間質、免疫、上皮、有糸分裂、並びに選択された数の検体中のコラーゲン及びエラスチンなどの異なる種類のECM繊維を含む様々な細胞集団内のG値を区別することを可能にする。その後、Gマップをセグメント化することができ、成分、すなわち、
【数16】
及び
【数17】
のいずれかの成分に対応する
【数18】
が計算される。これにより、様々な組織成分の微小機械特性間の違いを調べることができる。
【0075】
・弾性率の勾配及び/又は傾き:遊走及び局所浸潤を方向付ける際の弾性率勾配及びその急峻さの役割は、調節可能な弾力性の慎重に操作されたゲルを使用し、播種細胞の遊走挙動を追跡することによってインビトロで実証されている。臨床検体においてこの量を評価し、特徴付けることにより、LSMはこの機械生物学の概念を有形かつアクセス可能にする。弾性率の空間的勾配は、kPa/mm単位で報告され得る。このメトリックは、それ自体、特に様々な組織区画の交差部における腫瘍微小環境の空間的な機械的不均一性の尺度である。そのような界面及び交差は、細胞成分及び非細胞成分に対応する様々な染色によって誘発された異なる色相を分離するために、共登録された組織学スライドの色空間分析を通じて、剪断弾性率の空間分布に関して半自動及びブラインド/不可知論的手法で追跡され得る。その後、交点の輪郭を描く曲線を、Gの空間プロファイル、並びに例えば、交点に沿った区分的線形セグメントにおける空間勾配、エントロピー、分散などの値などのその不均一性指数にマッピングすることができる。
【0076】
・変動係数:Gの局所変動係数、すなわちσ
G/μ
Gを評価することによって不均一性の別のメトリックを得ることができ、ここで、μ
G及びσ
GはGの局所平均及び標準偏差である。
図13は、生体組織のGマップを示す。対応するH&E、及び局所変動係数(CV)マップも表示される。
【0077】
また、上記の不均一性メトリックは、機械的特性とは無関係の散乱粒子サイズ(a)のマップについて決定されてもよい。
【0078】
・情報エントロピーE:aマップは、1~1000nmの範囲のa値を256個の強度レベルに離散化することによって量子化される。得られた8ビットグレースケール画像のエントロピーが計算される。
【0079】
・組織断片全体の平均粒子サイズを評価することは別として、LSMは、選択された数の検体中の天然の間質、免疫、上皮、有糸分裂、並びにコラーゲン及びエラスチンなどの異なる種類のECM繊維を含む様々な細胞集団などの組織の異なる組織学的区画内の値を区別することを可能にする。その後、粒子サイズaのマップをセグメント化することができ、これらの成分のいずれか、すなわち細胞又はECMのいずれかに対応する平均粒子サイズが計算される。これにより、様々な組織成分の粒子サイズの違いを調べることができる。
【0080】
・粒子サイズ勾配及び/又は傾き:臨床検体中のこの量を評価及び特性評価することにより、空間的に変化する粒子サイズマップは、疾患の開始及び進行に関する新しい洞察を提供し得る。記録される粒子サイズの空間的勾配は、nm/mm又は任意の単位で報告され得る。このメトリックは、それ自体、特に様々な組織区画の交差部における腫瘍微小環境の空間的不均一性の尺度である。そのような界面及び交差は、細胞成分及び非細胞成分に対応する様々な染色によって誘発された異なる色相を分離するために、共位置合わせされた組織学スライドの色空間分析を通じて、粒子サイズの空間分布に関して半自動及びブラインド/不可知論的手法で追跡され得る。その後、交点の輪郭を描く曲線を、a値の空間プロファイル、並びに例えば交点に沿った区分的線形セグメントにおける空間勾配、エントロピー、分散などの値などのその不均一性指数にマッピングすることができる。
【0081】
・変動係数:aの局所変動係数、すなわちσa/μaを評価することによって、不均一性の別のメトリックを得ることができ、ここで、μa及びσaは、a値の局所平均及び標準偏差である。
【0082】
したがって、散乱粒子の平均サイズを推定するための新規な光学的手法を実行するための方法及びシステムが本明細書に開示される。この手法は、未変性状態の組織及び生体材料を操作することなく、散乱粒子の平均サイズ及びそのサイズ分布の両方を推定することを可能にする非侵襲的で非接触の全光学技術である。それは、例えばタンパク質、抗体、及びバイオマーカーのサイジング、並びに組織の細胞学的分析に基づく様々なヒト疾患の診断など、様々なライフサイエンス、バイオテクノロジー、及び臨床医学用途に潜在的に適用可能である。1つの例示的な用途は、癌性組織を同定し、正常細胞及び悪性細胞並びにそれらの核及び細胞小器官のサイズ分布の全体的な変化に基づいて良性病変と区別することである。
【0083】
開示された手順は、散乱粒子のサイズを推測するために、垂直及び平行偏光状態におけるレーザスペックル強度変動を評価することに基づいている。スペックルは、コヒーレントなレーザビームが組織などの散乱媒体から後方散乱されるときに形成される粒状強度パターンである。スペックル変動は、散乱粒子のブラウン変位、したがって周囲の組織微小環境の粘弾性特性に密接に関連している。更に、スペックル変動は、散乱粒子のサイズにも関連する。所定の粘弾性感受性の媒体では、スペックルパターンの変動率は散乱粒子サイズの増大と共に減少する。また、スペックル変動率は、照明光の偏光状態に対して、集光された光の偏光状態にも依存する。より具体的には、サンプルが直線偏光レーザビームによって照射される場合、後方散乱スペックルの平行偏光成分は、垂直偏光成分と比較して遅い変動を示すことが多い。
【0084】
この現象をシミュレートするために、偏光相関移動モンテカルロ光線追跡アルゴリズムが開発された。シミュレーションの結果は、平行及び垂直偏光状態でのスペックル無相関率の差が散乱粒子のサイズを反映することを示している。理論によって限定されるものではないが、この観察結果は、後方散乱光の平行な偏光成分がしばしば、一度だけ散乱したより短い光路を必要とすることに留意することによって直感的に説明することができる。これらの短い光軌跡の数は、散乱粒子が小さくなるにつれて増大する。これは、より小さな粒子がより等方的なパターンで光を散乱させるためである。一方、粒子サイズが大きくなるにつれて、散乱は益々前方に向けられ、単一散乱光子が検出器に戻る確率を低下させる。このように、より小さい粒子を有する検体の場合、スペックルの平行な偏光成分が変動すると、より多くの短いゆっくりと脱相関する光路が必要となる。これらの概念を使用して、スペックル強度自己相関曲線g2(t)は、異なる散乱粒子サイズの媒体について平行状態及び垂直状態でシミュレートされている。その後、各散乱粒子サイズについて、log(g2(t))の比を平行及び垂直偏光状態で計算した。これにより、2つの偏光状態でのスペックル変動率から平均粒子サイズを検索することを可能にするルックアップテーブルが得られる。
【0085】
この手法は、平行偏光状態での後方散乱光の静的拡散反射率プロファイルを利用して散乱粒子サイズを推定した本発明者らの以前の研究の拡張である。前者の手法は、100nm~3μmの範囲の正確な粒子サイズを可能にするが、新しい技術は、この範囲を10nm程度の小さい粒子に拡張することを可能にする。
【0086】
本発明の実施形態は、組織及び生体材料内の粒子の正確なサイジングのための装置及びアルゴリズムを提供する。様々な実施形態では、後方散乱信号を取得するために使用される光学装置には、以下のうちの1つ以上が含まれてもよい。
【0087】
1-少なくとも1つの波長のレーザなどのコヒーレント光源。
【0088】
2-偏光又はランダムなサンプル照明を可能にする直線又は円偏光子。
【0089】
3-サンプルのシングルモード照明を可能にするための光ファイバカプラ及びシングルモードファイバ。
【0090】
4-サンプルの集束又はコリメートされたビーム照明を可能にするためのビームエキスパンダ及びレンズ。
【0091】
5-後方散乱幾何学的形状(180度)での取得を可能にするためのビームスプリッタ。
【0092】
6-入射光強度及びコヒーレンス(ピクセル対スペックル比)を調整するための集束及び拡大レンズ及び虹彩を含むレンズ系。
【0093】
7-共偏光又は交差偏光スペックル収集を可能にする直線又は円偏光子。
【0094】
8-レーザスペックル取得のための高速CCD及び/又はCMOSカメラ。
【0095】
9-角度分解取得のために複数の極角でスペックル取得を可能にするためにカメラを取り付けるためのゴニオメータ。
【0096】
10-取得されたスペックル情報を処理するための高速コンピュータ。
【0097】
様々な実施形態において、手順は、後処理手順の以下の態様のうちの1つ以上を含むことができる。
【0098】
1-サンプル力学のその後の測定のためのスペックルダイナミクスを計算するために、時間領域又は周波数(例えば、FFTを使用する)領域のいずれかでスペックル強度相関関数g2(t)を評価するためのアルゴリズム。
【0099】
2-サンプル光学特性を推定するために時間的に平均化されたスペックル強度プロファイルを計算することを可能にするアルゴリズム。
【0100】
3-光子計数(フルエンス)プロファイルの処理を可能にして、少なくとも半径方向に平均化された又は方位角方向に分解された平均フルエンスを取得し、光学特性及び粒子サイズ分布を推定するアルゴリズム。
【0101】
4-所定のサンプルの光学的及び機械的特性、並びに照明及び集光の偏光状態について、後方散乱平均強度及びスペックル強度の無相関化をシミュレートする Polarization Sensitive Correlation Transfer Monte Carlo Ray Tracing(PSCT-MCRT)アルゴリズム。
【0102】
5-平行偏光状態及び垂直偏光状態におけるスペックル無相関率の比を抽出するアルゴリズム。
【0103】
6-異なる時間遅れでの無相関比を散乱粒子サイズ分布にマッピングするアルゴリズム。
【0104】
7-特定の遅延時間におけるスペックル無相関率比から散乱粒子の平均サイズを抽出するためのルックアップテーブル。
【0105】
8-実験的に評価された粒度分布に基づいてg2(t)から複素粘弾性率G*(ω)を抽出するアルゴリズム。
【0106】
開示された技術の実施形態は、サンプルを操作する必要なく、それらの天然状態の生体組織及び生体材料における平均粒子サイズ並びに散乱粒子サイズ分布の推定を可能にする。現在、組織などの混濁材料内の散乱粒子のサイズ分布を非侵襲的に推定するのに適した撮像技術はない。過去において、研究者らは、散乱粒子サイズのサイズスケールを表す屈折率不均一性及び不整合のサイズスケールを評価するために電子顕微鏡法などの破壊的技術を使用してきた。更に、極端に希釈された液体サンプルのサイズ分布を推定することを可能にする他の光学的手法が開発されている。それにもかかわらず、これらの技術のいずれも、生来の状態の生体組織及び生体材料に適用可能ではない。ここで提案された手法は、検体に接触したり検体を操作したりすることなく、非イオン化光線を使用して、液体及び固体の検体の両方の散乱粒子をサイジングすることを可能にする。
【0107】
様々な実施形態では、サンプルから光を収集するためのプローブを対象の皮膚表面近くに配置することができ、光を対象の皮膚を通して送って、本明細書に開示される光学データを得ることができる。これらには、例えば、皮膚病変における適用、又は乳房の表在性腫瘍などの表面下異常を検出するための適用が含まれる。他の実施形態では、プローブを皮膚の下(例えば、プローブは、小口径の針、内視鏡、又は他の手術器具を介して挿入されてもよい)に挿入することができ、皮膚自体を通して光を送る必要なく、深部の組織、典型的にはアクセスできない組織又は管腔臓器内の組織(例えば、胸部組織)から光学情報を得ることができる。
【0108】
この手法では、レーザスペックルパターンは、組織内のサイズ分布及び濃度が未知の内因性微小粒子から誘発される。これらには、細胞外マトリックス、細胞膜、細胞小器官及び核を構成する繊維及び原線維が含まれる。したがって、動的レーザスペックル変動の速度は、これらの光散乱粒子の速度論に関連する。ヒト疾患の病因は、これらの粒子のサイズスケール及び組織環境の機械的特性の両方を同時に変化させることが多く、これらはレーザスペックルダイナミクスを共に調節する。本発明は、これらの内因性光散乱中心のサイズ分布が、散乱粒子サイズの範囲に応じて、ミクロン範囲及びサブミクロン範囲の両方で時間分解又は時間平均スペックルデータのいずれかを得ることによって計算され、偏光感受性相関移動モンテカルロ光線追跡(PSCT-MCRT)アルゴリズムが、光学特性及び粒子サイズ分布の寄与を評価し、組織微小環境の粘弾性感受性の寄与から分離するために実施される装置及びアルゴリズムを提案する。この手法を使用して、散乱粒子のサイズスケール及びそれらの分布の両方、並びに組織微小環境の複素粘弾性率を抽出することが可能である。散乱粒子のサイズ分布及び複素粘弾性率G(ω)の両方を正確に評価する際のレーザスペックル変動の貴重な可能性は、とりわけ、細胞内容物及び粘弾性特性を測定する能力が非常に有益になる臨床診断、治療モニタリング、組織工学、及び薬物送達用途のための組織及び生体材料の細胞学的及び機械的分析のための新しい道を開く。
【0109】
これらの手順の様々な実施形態は、タンパク質、バイオポリマー、及びバイオマーカーのサイズ分布を推定するための、並びに幾つかのインビトロ及びインビボ診断用途のためのこの手法を様々な基礎科学並びに臨床用途に適用するために実施され得る。これらの手順の実施形態は、組織検体における粒子サイジングが、歪んだ散乱粒子サイズ分布に基づいて新生物細胞を同定できるようにする。この手法は、そもそもスペックル変動率から粘弾性率を推定できるように開発されたものである。散乱粒子サイズ分布がスペックル信号に及ぼす影響を分離することにより、この手法は粘弾性率の定量的評価も可能にする。したがって、現在の手法は、幅広い基礎科学及び臨床医学用途において、手持ち式診断センサ、プローブ、及び撮像装置、並びに組織の粒度及び粘弾性特性の両方を光学的分解能で同時にマッピングするためのベンチトップラボ顕微鏡の形態で市販され得る。
【0110】
本開示は、臨床エラストグラフィと研究グレードのナノスケール圧痕との間のギャップを埋めることを可能にする光学粘エラストグラフィ技術を提供する。光学弾性イメージングモダリティは、多くの場合、組織の物理的及び機械的属性について特定の仮定を行い、LSMは、未知の光学特性及び散乱粒子サイズの乳房病変における粘弾性率を定量的に評価し得る。しかしながら、粒子サイジングのための新たに提案された手法を以前の技術と組み合わせることにより、組織及び生体材料に適した広範囲にわたる粒子サイジングが可能になる。
【0111】
図14を参照すると、開示された主題の幾つかの実施形態に係るサンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するためのシステム(例えば、データ収集及び処理システム)の例1400が示される。幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス1410は、サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するためのシステム1404の少なくとも一部を実行し、レーザスペックルマイクロレオロジー(LSM)システム1402に関連する1つ以上の光学部品に制御信号を与えることができる。これに加えて又は代えて、幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス1410は、通信ネットワーク1406を介してサーバ1420との間で制御信号に関する情報を通信することができ、通信ネットワークは、サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するためのシステム1404の少なくとも一部を実行することができる。幾つかのそのような実施形態において、サーバ1420は、サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するためのシステム1404における制御信号に関する情報をコンピューティングデバイス1410(及び/又は任意の他の適切なコンピューティングデバイス)に返すことができる。この情報は、ユーザ(例えば、研究者、オペレータ、臨床医など)に送信及び/又は提示されてもよく、及び/又は記憶されてもよい(例えば、対象に関連する研究データベース又は医療記録の一部として)。
【0112】
幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス1410及び/又はサーバ1420は、デスクトップコンピュータ、ラップトップコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピュータ、サーバコンピュータ、物理的コンピューティングデバイスによって実行されている仮想マシンなどの任意の適切なコンピューティングデバイス又はデバイスの組み合わせとなり得る。本明細書に記載されるように、サンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するためのシステム1404は、制御信号に関する情報をユーザ(例えば、研究者及び/又は医師)に提示することができる。幾つかの実施形態において、LSMシステム1402は、本明細書に開示されているような光学部品(例えば、
図1A参照)を含むことができる。
【0113】
幾つかの実施形態において、通信ネットワーク1406は、任意の適切な通信ネットワーク又は通信ネットワークの組み合わせとすることができる。例えば、通信ネットワーク1406は、Wi-Fi(登録商標)ネットワーク(1つ以上の無線ルータ、1つ以上のスイッチなどを含むことができる)、ピアツーピアネットワーク(例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワーク)、セルラーネットワーク(例えば、CDMA、GSM、LTE、LTEアドバンスト、WiMAXなどの任意の適切な規格に準拠する3Gネットワーク、4Gネットワーク、5Gネットワークなど)、有線ネットワークなどを含むことができる。幾つかの実施形態において、通信ネットワーク1406は、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、パブリックネットワーク(例えば、インターネット)、プライベートもしくはセミプライベートネットワーク(例えば、企業又は大学のイントラネット)、任意の他の適切なタイプのネットワーク、又はネットワークの任意の適切な組み合わせとなり得る。
図14に示す通信リンクはそれぞれ、有線リンク、光ファイバリンク、Wi-Fi(登録商標)リンク、Bluetooth(登録商標)リンク、セルラーリンクなどの任意の適切な通信リンク又は通信リンクの組み合わせとなり得る。
【0114】
図15は、開示された主題の幾つかの実施形態に係るコンピューティングデバイス1410及びサーバ1420を実装するために使用することができるハードウェアの例1500を示す。
図15に示されるように、幾つかの実施形態において、コンピューティングデバイス1410は、プロセッサ1502、ディスプレイ1504、1つ以上の入力1506、1つ以上の通信システム1508、及び/又はメモリ1510を含むことができる。幾つかの実施形態において、プロセッサ1502は、中央処理装置、グラフィック処理装置などの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はプロセッサの組み合わせとなり得る。幾つかの実施形態において、ディスプレイ1504は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切なディスプレイデバイスを含むことができる。幾つかの実施形態において、入力1506は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクロフォンなどのユーザ入力を受信するために使用することができる任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。
【0115】
幾つかの実施形態において、通信システム1508は、通信ネットワーク1406及び/又は任意の他の適切な通信ネットワークを介して情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム1508は、1つ以上のトランシーバ、1つ以上の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例では、通信システム1508は、Wi-Fi(登録商標)接続、Bluetooth(登録商標)接続、セルラー接続、イーサネット接続などを確立するために使用することができるハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0116】
幾つかの実施形態において、メモリ1510は、通信システム1508などを介してサーバ1420と通信するべく、例えば、プロセッサ1502によって使用されてディスプレイ1504を用いてコンテンツを提示できる命令、値などを格納するために使用され得る任意の適切な1つ又は複数の記憶デバイスを含むことができる。メモリ1510は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、記憶装置、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1510は、RAM、ROM、EEPROM、1つ以上のフラッシュドライブ、1つ以上のハードディスク、1つ以上のソリッドステートドライブ、1つ以上の光ドライブなどを含むことができる。幾つかの実施形態において、メモリ1510は、コンピューティングデバイス1410の動作を制御するためのコンピュータプログラムを符号化することができる。そのような実施形態において、プロセッサ1502は、コンピュータプログラムの少なくとも一部を実行して、コンテンツ(例えば、画像、ユーザインターフェース、グラフィック、テーブルなど)を提示し、サーバ1420からコンテンツを受信し、サーバ1420に情報を送信することなどができる。
【0117】
幾つかの実施形態において、サーバ1420は、プロセッサ1512、ディスプレイ1514、1つ以上の入力1516、1つ以上の通信システム1518、及び/又はメモリ1520を含むことができる。幾つかの実施形態において、プロセッサ1512は、中央処理装置、グラフィック処理装置などの任意の適切なハードウェアプロセッサ又はプロセッサの組み合わせとなり得る。幾つかの実施形態において、ディスプレイ1514は、コンピュータモニタ、タッチスクリーン、テレビなどの任意の適切なディスプレイデバイスを含むことができる。幾つかの実施形態において、入力1516は、キーボード、マウス、タッチスクリーン、マイクロフォンなどのユーザ入力を受信するために使用することができる任意の適切な入力デバイス及び/又はセンサを含むことができる。
【0118】
幾つかの実施形態において、通信システム1518は、通信ネットワーク1406及び/又は任意の他の適切な通信ネットワークを介して情報を通信するための任意の適切なハードウェア、ファームウェア、及び/又はソフトウェアを含むことができる。例えば、通信システム1518は、1つ以上のトランシーバ、1つ以上の通信チップ及び/又はチップセットなどを含むことができる。より具体的な例において、通信システム1518は、Wi-Fi(登録商標)接続、Bluetooth(登録商標)接続、セルラー接続、イーサネット接続などを確立するために使用することができるハードウェア、ファームウェア及び/又はソフトウェアを含むことができる。
【0119】
幾つかの実施形態において、メモリ1520は、1つ以上のコンピューティングデバイス1410などと通信するべく、例えば、プロセッサ1512によって使用されてディスプレイ1514を用いてコンテンツを提示できる命令、値などを格納するために使用され得る任意の適切な1つ又は複数の記憶デバイスを含むことができる。メモリ1520は、任意の適切な揮発性メモリ、不揮発性メモリ、記憶装置、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むことができる。例えば、メモリ1520は、RAM、ROM、EEPROM、1つ以上のフラッシュドライブ、1つ以上のハードディスク、1つ以上のソリッドステートドライブ、1つ以上の光ドライブなどを含むことができる。幾つかの実施形態において、メモリ1520は、サーバ1420の動作を制御するためのサーバプログラムを符号化することができる。そのような実施形態において、プロセッサ1512は、サーバプログラムの少なくとも一部を実行して、情報及び/又はコンテンツ(例えば、組織の識別及び/又は分類の結果、ユーザインターフェースなど)を1つ以上のコンピューティングデバイス1410に送信し、情報及び/又はコンテンツを1つ以上のコンピューティングデバイス1410から受信し、命令を1つ以上のデバイス(例えば、パーソナルコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、スマートフォンなど)から受信することなどができる。
【0120】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載の機能及び/又はプロセスを実行するための命令を格納するために、任意の適切なコンピュータ可読媒体を使用することができる。例えば、幾つかの実施形態では、コンピュータ可読媒体が一時的又は非一時的となり得る。例えば、非一時的なコンピュータ可読媒体は、磁気媒体(例えば、ハードディスク、フロッピーディスクなど)、光学媒体(例えば、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、ブルーレイディスクなど)、半導体媒体(例えば、RAM、フラッシュメモリ、電気的にプログラム可能な読み出し専用メモリ(EPROM)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み出し専用メモリ(EEPROM)など)、一時的でない又は伝送中の永続性のいかなる表現も欠いていない任意の適切な媒体、及び/又は任意の適切な有形媒体などの媒体を含むことができる。別の例として、一時的なコンピュータ可読媒体は、ネットワーク上の信号、配線、導体、光ファイバ、回路、又は、一時的であって伝送中の永続性のいかなる部分もない任意の適切な媒体、及び/又は任意の適切な無形媒体を含むことができる。
【0121】
本明細書で使用される場合、機構という用語は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又はそれらの任意の適切な組み合わせを包含することができることに留意すべきである。
【0122】
図16は、開示される主題の幾つかの実施形態に係るサンプル中の散乱粒子の平均サイズを非破壊的に推定するためのプロセスの例1600を示す。
図16に示されるように、1602において、プロセス1600は偏光をサンプルに送ることができる。偏光は、レーザ等のコヒーレント光源を用いて送られてもよい。1604において、プロセス1600は、サンプルから反射された偏光を取得することができる。偏光は、平行偏光成分と垂直偏光成分とを含んでもよい。サンプルから反射された偏光を取得することは、カメラなどの検出器を使用して行われ得る。1606において、プロセス1600は、平行偏光成分及び垂直偏光成分のスペックル無相関率を決定することができる。スペックル無相関率の決定は、コンピュータプロセッサなどのプロセッサを使用して実行することができる。1208において、プロセス1200は、平行偏光成分及び垂直偏光成分のスペックル無相関率に基づいてサンプル中の散乱粒子の平均サイズを推定することができる。散乱粒子の平均サイズの推定は、プロセッサを使用して実行することができる。
【0123】
図16のプロセスの前述のステップは、図に示されて説明された順序及びシーケンスに限定されない任意の順序又はシーケンスで実行する又は行うことができることを理解すべきである。また、
図16のプロセスの上記ステップの幾つかは、レイテンシ及び処理時間を短縮するために、適切な場合には実質的に同時に又は並列に実行する又は行うことができる。
【0124】
以上、このように、本発明を特定の実施形態及び実施例に関連して説明してきたが、本発明は必ずしもそのように限定されず、多数の他の実施形態、例、用途、変更、並びに、実施形態、例及び使用からの逸脱は、本明細書に添付される特許請求の範囲に包含されることを意図している。