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特許7559082心臓病の治療のための心筋細胞増殖活性を有する複素環式誘導体の使用
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  • 特許-心臓病の治療のための心筋細胞増殖活性を有する複素環式誘導体の使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】心臓病の治療のための心筋細胞増殖活性を有する複素環式誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4166 20060101AFI20240924BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20240924BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240924BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240924BHJP
   C07D 405/06 20060101ALN20240924BHJP
   C07D 405/14 20060101ALN20240924BHJP
【FI】
A61K31/4166
A61P9/00
A61P43/00 107
A61K31/5377
C07D405/06
C07D405/14
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022561216
(86)(22)【出願日】2019-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 CN2019125455
(87)【国際公開番号】W WO2021114315
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】522237313
【氏名又は名称】シャンハイ イースト ホスピタル(イースト ホスピタル,トンジ ユニバーシティ スクール オブ メディシン)
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI EAST HOSPITAL(EAST HOSPITAL,TONGJI UNIVERSITY SCHOOL OF MEDICINE)
【住所又は居所原語表記】No.150 Jimo Road,Pudong New Area,Shanghai 200120,China
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イーハン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ダンダン
(72)【発明者】
【氏名】リュー,イ
(72)【発明者】
【氏名】サクヤ,スーバス マン
(72)【発明者】
【氏名】リー,リー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,フューレイ
(72)【発明者】
【氏名】チョウ,フイシン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,シャオユ
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-535180(JP,A)
【文献】J. Med. Chem.,2011年,54,pp.4172-4186
【文献】Cardiovascular Research,2019年,115,pp.20-30
【文献】J Cell Mol Med.,2019年,23,pp.7796-7809
【文献】Kouichi HASEGAWA et al.,Wnt Signaling Orchestration with a Small Molecule DYRK Inhibitor Provides Long-Term Xeno-Free Human,Stem Cells Translational Medicine,2011年12月07日,Vol. 1, No. 1,pp. 18-28,DOI:10.5966/sctm.2011-0033
【文献】Dennis SCHADE et al.,Medicinal Chemistry Approaches to Heart Regeneration,Journal of Medicinal Chemistry,2015年09月03日,Vol. 58, No. 24,pp. 9451-9479,DOI:10.1021/acs.jmedchem.5b00446
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/4166
A61P 9/00
A61P 43/00
A61K 31/5377
C07D 405/06
C07D 405/14
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心血管疾患を治療または予防するための薬物の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または立体異性体の使用であって、
前記化合物が式(I)の構造を有する、
式(I):
【化1】
ここで、
Lb、環B1、およびLaはともに
【化2】
を形成し、
環A1は、C3―C10複素環式基(heterocyclic group)、C4―C10ヘテロアリール基(heteroaryl group)、C6―C10アリール基(aryl group)からなる群から選択され、ここで、複素環式およびヘテロアリール基は、N、O、およびSから選択される1~4個のヘテロ原子を有し、
環A2は、
【化3】
または
【化4】
であり、
は、独立して、ハロゲン、―OH、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、R”、―N(R”)―、R”―O―、R”―S―、R”―S(O)―、R”―S(O)―、R”―C(O)、R”―C(O)O―、R”―OC(O)―からなる群から選択され、ここで、R”は、それぞれ独立して、H、C1―C6アルキル基(alkyl group)、C2―C6アルケニル基(alkenyl group)、C2―C6アルキニル基(alkynyl group)、C3―C8シクロアルキル基、C6―C10アリール基、4~7員ヘテロシクロアルキル基、5~7員ヘテロアリール基、―C1―C4アルキレン(alkylene)―C3―C6シクロアルキル基、―C1―C4アルキレン―C6―C10アリール基、―C1―C4アルキレン―4~7員ヘテロシクロアルキル基、および―C1―C4アルキレン―5~7員ヘテロアリール基からなる群から選択され、
は、ハロゲン、R”、およびR”-O-からなる群から選択され、ここでR”は、それぞれ独立して、H、C1~C6アルキルからなる群から選択され、
n1は、1、2、3、4、または5であり、
n2は、0、1、または2である、
または前記化合物が
【化5】
からなる群から選択される、
または前記化合物が以下の表
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】
から選択される
ことを特徴とする、前記使用。
【請求項2】
心血管疾患を治療または予防するための薬物の調製における、化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または立体異性体の使用であって前記化合物が、
【化7】
からなる群から選択される、
または前記化合物が以下の表
【化8-1】
【化8-2】
【化8-3】
【化8-4】
から選択されることを特徴とす前記使用。
【請求項3】
前記化合物が、L41、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、または立体異性体であることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
式L41:
【化9】
【請求項4】
化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または立体異性体の存在下で心筋細胞を培養する段階を含み、前記化合物が請求項1または2において定義される化合物であることを特徴とする、インビトロで心筋細胞の成長を促進する方法。
【請求項5】
前記化合物が、L41、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または立体異性体であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
式L41:
【化10】
【請求項6】
心筋細胞と化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または立体異性体とを接触させることにより、心筋細胞の増殖および/または再生を促進する段階を含み、前記化合物が請求項1または2において定義される化合物であることを特徴とする、インビトロでの心筋細胞増殖および/またはインビトロでの心筋細胞再生を促進する方法。
【請求項7】
前記化合物が、L41、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
式L41:
【化11】
【請求項8】
請求項1または3において定義される化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または立体異性体を含む、心血管疾患を治療する組成物。
【請求項9】
前記化合物が、L41、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、または立体異性体であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
式L41:
【化12】
【請求項10】
前記対象が、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を含むことを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術および医薬の分野に属し、具体的には、心臓病の治療のための心筋細胞増殖活性を有する複素環式誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓病発作につながるイベントは、致命的となる可能性がある。ほとんどの心臓病発作のイベントは、心筋細胞の死亡によって引き起こされ、これにより、心筋が血液を送り出す機能を失い、酸素不測のために臓器が窒息する。これは、最終的に臓器不全や、潜在的に死につながる可能性がある。心臓病発作の予防とは、通常、潜在的な疾患を早期に特定し、心臓病発作が発生する前に介入しようとすることを指す。心臓病発作が確実に発生した場合に、細胞を成長させて心臓の死んだ細胞を置き換えることができれば、心臓病発作は致命的ではないことが知られている。しかしながら、新生児児期の狭い増殖ウィンドウの後、成人の心筋細胞は、細胞分裂および増殖を受ける能力をほとんど失う(Science 2011、 331:1078―1080、CiRulation 2018、24:2809―2816)。このような心筋細胞の最終分化は、心筋障害の修復を厳しく制限する。生体の哺乳動物の心臓は、損傷後に繊維性瘢痕を発症し、これは、心不全、不整脈および死亡に至る可能性がある。既存の治療法は、一時的に心臓機能を改善することができるが、失われた心筋細胞を置き換えることはできない。従って、複数の研究分野は、薬物治療または幹細胞治療を通じて心臓の心筋細胞を再生する可能性のある薬剤に集中している。
【0003】
細菌の総説(J.Med.Chem.2015、58、9451―9479)は、心臓病に関連する心筋細胞の成長および増殖を治療するための多くの異なる方法を強調している。GSK b阻害剤等のいくつかのキナーゼ阻害剤は、細胞成長につながるWnT経路を活性化すると考えられる。これらの化合物のいくつかは、幹細胞分化の活性化剤でもある。別の出版物(Fiedler、L.R.et al.、MAP4K4阻害は、ヒト幹細胞由来の心筋細胞の生存を促進し、かつインビボで梗塞面積を縮小する(MAP4K4 Inhibition Promotes Survical of Human Stem Cell―Derived Cardiomyocytes and Reduces InfaRt Size In Vivo)。Cell Stem Cell 2019、24、579―591.e12)は、急性心筋梗塞で心臓を保護するMAP4K4阻害剤を強調する。他のいくつかの参照文書に記載されるように、他のキナーゼ阻害剤(例えば、DYRKおよびCLKキナーゼ阻害剤)も、細胞成長、特に膵臓細胞成長(WO2018081401およびWO2019136320)に寄与することが知られている。他には、変形性関節症で破骨細胞の成長を示し、かつ変形性関節症の治療に有用であることが示されるCLK2キナーゼ阻害剤が含まれる。
当技術分野では、心筋細胞の増殖または再生を効果的かつ迅速に促進できる新薬を開発することが急務となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、心筋細胞の増殖または再生を効果的かつ迅速に促進し、かつ心臓病発作および心筋梗塞を治療することができる新規化合物および薬物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様は、心血管疾患を治療または予防するための薬物の調製における式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグの使用を提供し、
式(I):
【化1】
ここで、
環A1および環A2は、それぞれ独立して、置換または非置換のC3―C10複素環式基(heterocyclic group)、C4―C10ヘテロアリール基(heteroaryl group)、C6―C10アリール基(aryl group)からなる群から選択され、ここで、複素環式およびヘテロアリール基は、N、O、Sから選択される1~4個のヘテロ原子を有し、
環Bは、二つのNヘテロ原子または一つのNヘテロ原子および一つのSまたはOヘテロ原子を有する置換5員ヘテロアリール基であり、ここで、一つまたは二つの環C原子は、オキソ(=O)置換基を有し、
【化2】
は、単結合または二重結合であり、
Laは、存在しないか、または置換または非置換の2価または3価の結合基であり、骨格結合原子(N、C、O)の数は、1、2または3であり、ここで、
【化3】
が二重結合である場合、Laは、3価の結合基であり、
【化4】
が単結合である場合、Laは、2価の結合基であり、
Lbは、置換または非置換の2価の結合基であり、骨格結合原子(N、C、O)の数は、1、2または3であり、
およびRは、独立して、ハロゲン(好ましくは、F、Cl、Br、I)、―OH、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、R”、―N(R”)―、R”―O―、R”―S―、R”―S(O)―、R”―S(O)―、R”―C(O)、R”―C(O)O―、R”―OC(O)―からなる群から選択され、ここで、R”は、それぞれ独立して、H、C1―C6アルキル基(alkyl group)、C2―C6アルケニル基(alkenyl group)、C2―C6アルキニル基(alkynyl group)、C3―C8シクロアルキル基、C6―C10アリール基、4~7員ヘテロシクロアルキル基、5~7員ヘテロアリール基、―C1―C4アルキレン(alkylene)―C3―C6シクロアルキル基、―C1―C4アルキレン―C6―C10アリール基、―C1―C4アルキレン―4~7員ヘテロシクロアルキル基、および―C1―C4アルキレン―5~7員ヘテロアリール基からなる群から選択され、
ここで、二つの隣接するRは、置換または非置換のC4―C8複素環式、置換または非置換のC4―C7ヘテロアリール基、置換または非置換のC6アリール基を一緒に形成することができ、
ここで、二つの隣接するRは、置換または非置換のC4―C8複素環式、置換または非置換のC4―C7ヘテロアリール基、置換または非置換のC6アリール基を一緒に形成することができ、
n1およびn2は、独立して、0、1、2、3、4または5であり、
特に明記しない限り、「置換された」という用語は、基中の一つまたは複数(好ましくは、1、2、3、4または5)の水素がR’基によって置換されることを指し、
R’は、それぞれ独立して、D、ハロゲン(好ましくは、F、Cl、Br、I)、―OH、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、R”、―N(R”)、R”―O―、R”―S―、R”―S(O)―、R”―S(O)―、R”―C(O)、R”―C(O)O―、R”―OC(O)―からなる群から選択され、ここで、R”は、それぞれ独立して、H、C1―C6アルキル基、C2―C6アルケニル基、C2―C6アルキニル基、C3―C8シクロアルキル基、C6―C10アリール基、4~7員ヘテロシクロアルキル基、5~7員ヘテロアリール基、C1―C4アルキレン―C3―C6シクロアルキル基、―C1―C4アルキレン―C6―C10アリール基、―C1―C4アルキレン―(4~7員ヘテロシクロアルキル基)、―C1―C4アルキレン―(5~7員ヘテロアリール基)からなる群から選択され、
および、R’において、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基およびヘテロアリール基は、基の全体または一部として、ハロゲン(好ましくは、F、Cl、Br、I)、C1―C4アルキル基、C1―C4アルコキシ基、C1―C4ハロアルキル基、―OH、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基およびアミノ基からなる群から選択される置換基によって置換されることができる。
【0006】
別の好ましい実施形態において、前記心血管疾患は、心臓疾患である。
別の好ましい実施形態において、前記心臓疾患は、心筋梗塞、心不全、心房細動、冠状動脈性心臓病、急性心筋梗塞、心房中隔欠損症、冠状動脈疾患およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0007】
別の好ましい実施形態において、式Iにおいて、環A1および環A2は、それぞれ独立して、置換または非置換のC3―C10複素環式基、C4―C10ヘテロアリール基、C6―C10アリール基からなる群から選択され、ここで、複素環式およびヘテロアリール基は、N、O、Sから選択される1~4個のヘテロ原子を有し、
環Bは、二つのNヘテロ原子または一つのNヘテロ原子および一つのSまたはOヘテロ原子を有する置換5員ヘテロアリール基であり、ここで、一つまたは二つの環C原子は、オキソ(=O)置換基を有し、
【化5】
は、単結合または二重結合であり、
Laは、存在しないか、または置換または非置換の2価または3価の結合基であり、骨格結合原子(N、C、O)の数は、1、2または3であり、ここで、
【化6】
が二重結合である場合、Laは、3価の結合基であり、
【化7】
が単結合である場合、Laは、2価の結合基であり、
Lbは、置換または非置換の2価の結合基であり、骨格結合原子(N、C、O)の数は、1、2または3であり、
およびRは、独立して、ハロゲン(好ましくは、F、Cl、Br、I)、―OH、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、R”、―N(R”)―、R”―O―、R”―S―、R”―S(O)―、R”―S(O)―、R”―C(O)、R”―C(O)O―、R”―OC(O)―からなる群から選択され、ここで、R”は、それぞれ独立して、H、C1―C6アルキル基、C2―C6アルケニル基、C2―C6アルキニル基、C3―C8シクロアルキル基、C6―C10アリール基、4~7員ヘテロシクロアルキル基、5~7員ヘテロアリール基、―C1―C4アルキレン―C3―C6シクロアルキル基、―C1―C4アルキレン―C6―C10アリール基、―C1―C4アルキレン―4~7員ヘテロシクロアルキル基、および―C1―C4アルキレン―5~7員ヘテロアリール基からなる群から選択され、
ここで、二つの隣接するRは、置換または非置換のC4―C8複素環式、置換または非置換のC4―C7ヘテロアリール基、置換または非置換のC6アリール基を一緒に形成することができ、
ここで、二つの隣接するRは、置換または非置換のC4―C8複素環式、置換または非置換のC4―C7ヘテロアリール基、置換または非置換のC6アリール基を一緒に形成することができ、
n1およびn2は、独立して、0、1、2、3、4または5であり、
特に明記しない限り、「置換された」という用語は、基中の一つまたは複数(好ましくは、1、2、3、4または5)の水素がR’基によって置換されることを指し、
R’は、それぞれ独立して、D、ハロゲン(好ましくは、F、Cl、Br、I)、―OH、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基、R”、―N(R”)、R”―O―、R”―S―、R”―S(O)―、R”―S(O)―、R”―C(O)、R”―C(O)O―、R”―OC(O)―からなる群から選択され、ここで、R”は、それぞれ独立して、H、C1―C6アルキル基、C2―C6アルケニル基、C2―C6アルキニル基、C3―C8シクロアルキル基、C6―C10アリール基、4~7員ヘテロシクロアルキル基、5~7員ヘテロアリール基、C1―C4アルキレン―C3―C6シクロアルキル基、―C1―C4アルキレン―C6―C10アリール基、―C1―C4アルキレン―(4~7員ヘテロシクロアルキル基)、―C1―C4アルキレン―(5~7員ヘテロアリール基)からなる群から選択され、
および、R’において、前記アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基およびヘテロアリール基は、基の全体または一部として、ハロゲン(好ましくは、F、Cl、Br、I)、C1―C4アルキル基、C1―C4アルコキシ基、C1―C4ハロアルキル基、―OH、ニトロ基、シアノ基、スルホニル基およびアミノ基からなる群から選択される置換基によって置換されることができ、
制限条件は、次のとおりであり、
(A)Lb、環Bおよび環Laが一緒に
【化8】
を形成する場合、
(P1)環A1は、置換または非置換のフェニル基ではなく、または
(P2)環A2は、
【化9】
および置換または非置換のフェニル基からなる群から選択されなく、または、
(P3)環A1および/または環A2は、
【化10】
からなる群から選択され、
または
(B)環A1も環A2も、置換または非置換のフェニル基ではなく、または
(C)環A2は、
【化11】
ではない。
【0008】
別の好ましい実施形態において、ここで、式Iの化合物は、式(B)の構造を有し、
式(B):
【化12】
ここで、
R=アルキル基、アリール基、SOアルキル基、COアルキル基であり、
R1=アルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基であり、
R3=アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基等であり、
R2=ヘテロアリール基である。
【0009】
別の好ましい実施形態において、前記化合物は、表Bから選択される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0010】
別の好ましい実施形態において、前記化合物は、L41、その薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグ、またはその誘導体化合物である。
式L41:
【化13】
【0011】
本発明の第2の態様は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグの存在下で心筋細胞を培養する段階を含む、インビトロで心筋細胞の成長を促進する方法を提供する。
本発明の第3の態様は、心筋細胞と式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグとを接触させることにより、心筋細胞の増殖および/または再生を促進する段階を含む、インビトロでの心筋細胞増殖および/またはインビトロでの心筋細胞再生を促進する方法を提供する。
【0012】
本発明の第4の態様は、必要とする対象に式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグを投与する段階を含む、心血管疾患を治療する方法を提供する。
別の好ましい実施形態において、前記対象は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を含む。
本発明の第5の態様は、式Iの化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグ、および薬学的に許容されるベクターを含む、医薬組成物を提供する。
別の好ましい実施形態において、前記医薬組成物は、心筋細胞の増殖および/または再生を促進するために使用される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記の各技術的特徴および以下で具体的に説明される各技術特徴(例えば、実施例において)は、本発明の範囲内で互いに組み合わせることにより、新しいまたは好ましい技術的解決策を構成することができることに理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】海洋薬物(Marine Drugs)、2017、15、316によって開示されたロイセチン(Leucettines)に関連する海洋天然物のいくつかの類似体を示す。
図2】海洋薬物(Marine Drugs)、2017、15、316によって開示されたロイセチン(Leucettines)に関連する海洋天然物のいくつかの類似体を示す。
図3】化合物L4が筋細胞の成長を促進することを示す。
図4】化合物L4が筋細胞の成長を促進することを示す。
図5】EDU増殖指数の検出結果を示し、これは、小分子化合物L41が新生児ラットの心筋細胞の増殖を促進することを示す。
図6】急性心筋梗塞モデル(10uM)におけるL41のインビボ試験結果を示す。
図7】急性心筋梗塞モデル(30uM)におけるL41のインビボ試験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明者らは、広範囲にわたる詳細な研究の後、式Iの化合物が心筋細胞の成長を促進する能力を有することを予期せずに発見した。心臓病発作の間、心筋細胞の死亡は、通常、心臓に不可逆的損傷を引き起こし、最終的には死に至る。生物学的実験によると、式(I)の化合物が心筋細胞の増殖および再生を効果的に刺激できることを証明する。これに基づいて、本発明を完成させた。
【0016】
用語の定義、
本明細書で使用されるように、「C1―6アルキル基」という用語は、メチル基(methyl group)、エチル基(ethyl group)、プロピル基(propyl group)、イソプロピル基(iso-propyl group)、n―ブチル基(n-butyl group)、イソブチル基(iso-butyl group)、t―ブチル基(tert-butyl group)、ペンチル基(pentyl group)、ヘキシル基(hexyl group)等の、1~6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖飽和脂肪族炭化水素基、好ましくは、1~4個の炭素原子を有するアルキル基、より好ましくは、1~3個の炭素原子を有するアルキル基を指す。
【0017】
本明細書で使用されるように、「C2―6アルケニル基」という用語は、ビニル基(ethenyl group)、プロペニル基(propenyl group)、イソプロペニル基(iso-propenyl group)、n―ブテニル基(n-butenyl group)、イソブテニル基(iso-butenyl group)、ペンテニル基(pentenyl group)、ヘキセニル基(hexenyl group)等の、2~6個(好ましくは、2~4個)の炭素原子および炭素―炭素二重結合(C=C)を有する直鎖または分岐鎖不飽和脂肪族炭化水素基を指す。
【0018】
本明細書で使用されるように、「C2―6アルキニル基」という用語は、エチニル基(ethynyl group)、プロピニル基(propynyl group)、n―ブチニル基(n-butynyl group)、イソブチニル基(iso-butynyl group)、ペンチニル基(pentynyl group)、ヘキシニル基(hexynyl group)等の、2~6個(好ましくは、2~4個)の炭素原子および炭素―炭素三重結合を有する直鎖または分岐鎖不飽和脂肪族炭化水素基を指す。
【0019】
本明細書で使用されるように、「C3―8シクロアルキル基」という用語は、シクロプロピル基(cyclopropyl group)、シクロブチル基(cyclobutyl group)、シクロペンチル基(cyclopentyl group)、シクロヘキシル基(cyclohexyl group)等の、3~8個の炭素原子を有するシクロアルキル基を指す。
本明細書で使用されるように、「C1―4アルコキシ基」という用語は、メトキシ基(methoxy group)、エトキシ基(ethoxy group)、プロポキシ基(propoxy group)、ブトキシ基(butoxy group)等の、C1―4アルキル―O―を指す。
【0020】
本明細書で使用されるように、「C6―10アリール基」という用語は、フェニル基(phenyl group)、ナフチル基(naphthyl group)等の、6~10個の炭素原子を有する芳香族炭化水素基を指す。
本明細書で使用されるように、「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0021】
本明細書で使用されるように、「2価C1―4ヒドロカルビル基」という用語は、直鎖または分岐鎖のアルキリデン(alkylidene)(または「アルキレン基(alkylene group)」)、アルケニリデン(alkenylidene)またはアルキニリデン(alkynylidene)を指し、ここで、「アルキリデン(alkylidene)」または「アルキレン基(alkylene group)」とは、メチリデン(methylidene)、エチリデン(ethylidene)等の、2価アルキル基を指し、「アルケニリデン(alkenylidene)」とは、2価アルケニル基を指す。「アルキニリデン(alkynylidene)が置換される」とは、2価直鎖または分岐鎖C1―3ヒドロカルビル基中のメチリデン(methylidene)が、本明細書で定義された基によって置換されることができることを指し、例えば、置換後は、―CH―S(O)―CH―、―CH―O―CH―、―CH―C(O)NR―CH―、―C(O)―CH―CH―、―CH―C(R)―CH―、―N(R)―CH―CH―、―C(R)―C(R)―CH―である。
特に定義しない限り、「シクロアルキル基」という用語は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ビシクロ[2.2.2]オクタン等の、二環式および多環式炭化水素環を指すことができる。
【0022】
特に定義しない限り、「ヘテロシクロアルキル基」という用語は、N、OおよびSから選択される1~5個のヘテロ原子を含むシクロアルキル基を指し、ここで、窒素および硫黄原子は、任意選択で酸化され、窒素原子は、任意選択で四級化される。前記ヘテロシクロアルキル基は、単環式、二環式または多環式系であり得る。ヘテロシクロアルキル基の非限定的な例としては、ピロリジン、イミダゾリジン、ピラゾリジン、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジン、ヒダントイン、ジオキソラン、フタルイミド、ピペリジン、1,4―ジオキサン、モルホリン、イオモルホリン、チオモルホリン―S―オキシド、チオモルホリン―S,S―オキシド、ピペラジン、ピラン、ピリドン、3―ピロリン、チオピラン、ピロン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、キヌクリジン、および類似の基を含む。ヘテロシクロアルキル基は、環炭素またはヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。
【0023】
特に定義しない限り、特に明記しない限り、「アリール基」という用語は、一緒に融合または共有結合した単環式または多環式(最大三つの環)であり得る、多価不飽和、通常は、芳香族の炭化水素基を指す。
特に定義しない限り、「ヘテロアリール基」という用語は、N、OおよびSから選択される1~5個のヘテロ原子を含むアリール基(または環)を指し、ここで、窒素および硫黄原子は、任意選択で酸化され、窒素原子は、任意選択で四級化される。ヘテロアリール基は、ヘテロ原子を介して分子の残りの部分に結合することができる。アリール基の非限定的な例としては、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基を含み、ヘテロアリール基の非限定的な例としては、ピリジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、ピリミジニル、トリアジニル基、キノリニル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、シンノリニル基(cinnolinyl)、フタラジニイル基(phthalaziniyl)、ベンゾトリアジニル基、プリニル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾピラゾリル基、ベンゾオキサゾリル基(benzooxazolyl)、ベンゾトリアゾリル基、ベンズイソキサゾリル基、イソベンゾフラニル基、イソインドリル基、インドリジニル基(indolizinyl)、ベンゾトリアジニル基、チエノピリジル基、チエノピリミジニル基、ピラゾロピリミジニル基、ピロロピリジル基、イミダゾピリジル基、ベンゾチアゾリル基(benzothiaxolyl)、ベンゾフラン基、ベンゾチエニル基、インドリル基、キノリニル基、イソキノリニル基、イソチアゾリル基、ピラゾリル基、インダゾリル基、プテリジル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、イソキサゾリル基、チアジアゾリル基、ピロリル基、チアゾール基、フラニル基、チエニル基等を含む。上記に記載される各アリール基およびヘテロアリール基環系の置換基は、以下に記載される許容される置換基から選択される。
【0024】
有効成分
本発明は、心筋細胞の増殖を促進するための新しい有効成分を提供し、これは、本発明の第1の態様に定義されるような式(I)を有する。
好ましくは、前記活性化合物は、表Bに記載される一つ、またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグである。
【0025】
好ましくは、化合物の一つのクラスは、L41の類似体である、イミダゾロン化合物の類似体である。
【化14】
ここで、式L41G、L41A1およびL41A2において、
【化15】
R=H、アルキル基、アミド基、および置換アリール基である。
本発明において、有用な別のクラスの類似体は、図1および2に示されたとおりである。
【0026】
本発明において、有用な別のクラスの類似体は、次に示されたとおりであり、
【化16】
ここで、R1=アリール基およびヘテロアリール基である。
【0027】
医薬組成物
一般に、本発明の化合物またはその薬学的に許容される塩、溶媒和物、立体異性体またはプロドラッグは、一つまたは複数の種類の薬学的に許容されるベクターと一緒に適切な剤形で投与されることができる。これらの剤形は、経口、直腸、局所、口腔投与および他の非経口投与(例えば、皮下、筋肉内、静脈内投与等)に適する。例えば、経口投与に適した剤形は、カプセル、錠剤、顆粒剤およびシロップを含む。これらの製剤に含まれる本発明の化合物は、個体粉末または顆粒、水または非水性液体中の溶液剤または懸濁剤、油中水型または水中油型エマルジョン等であり得る。そのような剤形は、一般に、活性化合物および一つまたは複数の種類のベクターまたは賦形剤を使用する従来の薬学的方法によって調製することができる。上記のベクターは、活性化合物または他の賦形剤と適合性がなければならない。個体製剤の場合、従来の非毒性ベクターは、マンニトール、ラクトース、テンプン、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、グルコース、スクロース等を含む画、これらに限定されない。液体製剤用のベクターは、水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリコール、ポリエチレングリコール等を含む。活性化合物は、上記のベクターと溶液剤または懸濁剤を形成することができる。
【0028】
本発明の組成物は、医療行為と一致する方式で調製され、投薬され、投与される。投与される化合物の「有効量」は、治療される具体的な疾患、治療される個体、病院、薬物標的、投与方法等の様々な要因に依存する。
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される塩」という用語は、薬学的に許容される酸付加塩および塩基付加塩を含む。
【0029】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される酸付加塩」という用語は、他の副作用なしに遊離塩基の生物学的有効性を保持する無機酸または有機酸で形成された塩を指す。無機酸性塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等を含むが、これらに限定されず、有機酸性塩は、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、メシレート、p―トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩等を含むが、これらに限定されない。これらの塩は、当技術分野で知られている方法によって調製されることができる。
【0030】
「薬学的に許容される塩基付加塩」は、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウム塩等の無機塩基の塩を含むが、これらに限定されず、アンモニウム塩、トリエチルアミン塩、リジン塩、アルギニン塩等の有機塩基の塩も含むが、これらに限定されない。これらの塩は、当技術分野で知られている方法によって調製されることができる。
【0031】
本明細書で使用されるように、式(I)の化合物は、一つまたは複数の種類の結晶形態で存在することができる。本発明の活性化合物は、様々な多形和その混合物を含む。
本発明で言及される「溶媒和物」とは、本発明の化合物および溶媒と形成された複合体を指す。溶媒和物は、溶媒中の反応によって、または溶媒からの沈殿または結晶化によって形成されることができる。例えば、水で形成された複合体は、「水和物」と呼ばれる。式(I)の化合物の溶媒和物は、本発明の範囲内にある。
【0032】
本発明の式(I)の化合物は、一つまたは複数のキラル中心を含むことができ、異なる光学活性形態で存在することができる。化合物に一つのキラル中心が含まれる場合、当該化合物は、エナンチオマーを含む。本発明は、二つの異性体の両方、およびラセミ混合物等のその混合物を含む。エナンチオマーは、結晶化およびキラルクロマトグラフィー等の当技術分野で知られている方法によって分解することができる。式(I)の化合物が一つ以上のキラル中心を含む場合、当該化合物は、ジアステレオマーを含むことができる。本発明は、光学的に純粋な特定の異性体、ならびにジアステレオマーの混合物への分解を含む。ジアステレオマーは、結晶化および分取クロマトグラフィー等の当技術分野で知られている方法によって分解することができる。
【0033】
本発明は、上記の化合物のプロドラッグを含む。プロドラッグは、既知のアミノ基保護基およびカルボキシル保護基を含み、それらは、生理学的条件下で加水分解されるか、または酵素反応によって放出されて親化合物を取得する。プロドラッグの具体的な調製方法は、(Saulnier、MG、Frennesson、DB、Deshpande、MS、Hansel、SBおよびVysa、DMBioorg.Med.Chem Lett.1994、4、1985―1990、ならびにGreenwald、RB、Choe、YH、Conover、CD、Shum、K.、Wu、D.、Royzen、J.Med.Chem.2000、43、475)を参照することができる。
【0034】
本明細書で使用されるように、「治療有効量」という用語は、ヒトおよび/または動物において機能または活性を生じ、かつヒトおよび/または動物によって許容される量を指す。
本発明によって提供される医薬組成物は、好ましくは、1~99重量%の有効成分を含む。好ましくは、式Iの化合物は、有効成分として、総重量の65~99重量%を占め、残りは、薬学的に許容されるベクター、希釈剤、溶液または塩溶液である。
【0035】
本発明によって提供される化合物および医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末剤、シロップ剤、溶液剤、懸濁剤、エアロゾル剤等の様々な形態であり得、適切な固体または液体ベクターまたは希釈剤、ならびに注射または点滴注入に適した消毒剤に存在することができる。
本発明の医薬組成物の様々な剤形は、製薬分野における従来の調製方法によって調製することができる。その配合物の単位用量は、0.05~200mgの式Iの化合物を含み、好ましくは、配合物の単位用量は、0.1mg~100mgの式Iの化合物を含む。
【0036】
本発明の化合物は、単独で、または他の薬学的に許容される化合物(例えば、心臓病疾患を治療する他の薬物)と併用して投与することができる。
本発明の化合物および医薬組成物は、ヒトおよび動物を含む豊丹生動物において臨床的に使用することができ、経口、経鼻、皮膚、肺または胃腸管に投与することができる。最も好ましいのは経口投与である。最も好ましい1日量は、0.01~200mg/kg体重の単回投与、または0.01~100mg/kg体重の分割投与である。使用する投与方法に関係なく、個体の最適な投与量は、具体的な治療に基づく必要がある。通常、少量から初めて、最適な用量が見つかるまで徐々に増やしていく。
【0037】
調製方法
本発明は、式(I)の化合物の調製方法を提供する。本発明の化合物は、当業者によく知られている様々な合成操作によって容易に調製することができる。これらの化合物の例示的な調製物は、以下に記載される段階を含むことができる(これらに限定されない)。
一般に、調製プロセスにおいて、各反応は、一般に不活性溶媒中で、室温から還流温度(例えば、0~150℃、好ましくは、0~100℃)下で実施される。反応時間は、通常、0.1~60時間、好ましくは、0.5~48時間である。
【0038】
好ましくは、本発明の式(I)の化合物は、以下のスキームを参照して調製することができる。実際において、方法の段階は、必要に応じて、拡張または組み合わせることができる。
スキーム1
【化17】
【0039】
スキームは、本特許で合成されたターゲットを取得するために使用できる一つのルートを示す。中間体I―1は、Rouら、N.、Bergman、J.Synthesis of the marine alkaloid leucettamine B.Tetrahedron 1999、55、14729―14738およびJ.Med.Chem.2011、54、4172―4186に説明されたルートによって調製されることができる。式I―1の化合物は、市販されるか、または文献に報告されている条件(J.Med.Chem 2015、58(17)、6889、WO2014188193、2014)下で当業者に知られている方法によって調製されることができる。標的を製造するために使用される試薬アルデヒドおよびアミンも、市販されるか、または当業者に知られている方法によって調製されることができる。
【0040】
化合物I―1は、以下の反応によって調製されることができる。
【化18】
【0041】
EtN、DIPEA、ピペリジン等の触媒塩基を使用してアルコールまたは非プロトン性溶媒中でI―1とアルデヒドとの反応を実施して、中間体I―2を得る。次に、当該中間体を、TBHP等の酸化剤およびアミン(第一級または第二級に関係なく)の存在下で反応させて、所望の標的I―4を得ることができる。言及された詳細な条件は、J.Med、Chem.2011、54、4172―486に記載されている。第一級アミン(R2=H)の場合、生成物I―4は、NaH、KCO、EtN、DIPEA等の塩基の存在下で、酸塩化物、塩化スルホニル、ハロゲン化アルキルで処理して、アミド、スルホンアミド、またはジアルキルアミノ基ターゲットIを得ることができ、ここで、R3は、COR、SOR7またはアルキル基である。
【0042】
I―2は、R3Xとアルキル化することにより、I―3を得ることもでき、ここで、R3は、アルキル基であり、Xは、ハロゲン化物またはO―スルホンである。次に、塩基(アルキルアミンまたは無機塩基)の存在下で第一級アミンまたは第二級アミンと反応させて、I―4を得ることができる。これをR6Xとさらに反応させて、アルキル化ターゲットIを得ることができ、ここで、R4もアルキル基である。R2がHである場合、R6Xでアルキル化した後はR4とR6との両方が同じになる可能性がある。
【0043】
本発明に開示される式(I)の化合物、その調製方法、医薬組成物および治療レジメンは、本発明に開示されるプロセスパラメーターの適切な改変を参照することにより当業者によって実現されることができる。そのようなすべての修正および変形は、当業者には明らかであり、本発明に含まれると見なされることが特に指摘される。本発明の製品、方法および用途の好ましい実施形態が説明され、関係者は、本発明の内容、精神および範囲から逸脱することなく、本発明の方法および使用を変更または修正および組み合わせて、本技術を実施および適用することができる。
【0044】
本発明の主な利点は、次のとおりである。
(1)本発明の化合物は、CLK1(例えば、CLK1A)およびDYRK1に対して高い阻害活性を示す。
(2)本発明の化合物は、GSKbに対して選択性を示す。
(3)最も重要なことに、本発明の化合物は、優れた筋細胞増殖活を示すため、心筋細胞に関連する心臓疾患の治療にも有用である。
(4)式Iの化合物、特にL41およびその類似体は、EDUをエンドポイントとするDNA増殖試験で活性を測定するインビトロ試験で強力なかっしえを示す。さらに、急性心筋梗塞モデルにおけるインビボ実験も、本発明の化合物(特にL41およびその類似体)が心臓疾患を治療するための優れた心筋細胞増殖活性を有することを確認した。
【0045】
以下、具体的な例を参照して、本発明をさらに説明する。これらの例は、本発明を説明することのみを意図しており、本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。以下の実施例に記載される不特定条件の実験方法は、一般に、従来の条件下で、または製造業者の支持に従って実施される。特に明記しない限り、部数およびパーセンテージは、重量によるものである。
特に定義しない限り、本明細書で使用される用語は、当業者によく知られている用語と同じである。さらに、本発明に記載される方法または材料と類似または同等の任意の方法または材料は、すべて本発明で使用されることができる。
【0046】
試薬および機器
特に規定しない限り、すべての反応は、乾燥窒素雰囲気下で行われる。反適は、TLCプレートでモニターリングされ、UV光または適切な染色剤で視覚化される。フラッシュクロマトグラフィーとは、ガラスカラムを使用したシリカゲル(40~-60μm)カラムクロマトグラフィーを指す。さらに、ISCO、Biotage SP1またはBiotage Isoleraシステムを使用して、自動クロマトグラフィーを実施し、220または254nmでUVで検出し、Biotage順相または逆相シリカカートリッジを使用して実行する。さらなる詳細については、関連する実験プロセスで見つけることができる。
【0047】
LCMSに使用されるシステムは、次のとおりである。Agilent 6120(バイナリポンプ)、Waters CORTECS C18カラム、2.7μm、4.6×30mm、45℃、1μL注入量、1.8mL/min、以下の時間勾配に従って、アセトニトリルを使用した0.05%ギ酸水溶液において、
【表2】
【0048】
UPLC(マススペクトルなし)に使用したシステムは、次のとおりである。Waters H―Class(クォータナリポンプ)、Waters ACQUITY BEH C18 1.7μm、2.1×50mm、0.5mL/min、45℃、0.05%トリフルオロ酢酸水溶液の5~95%アセトニトリルを、2分間かけて勾配を付け、次に95%アセトニトリルを0.5分間保持し、5%アセトニトリルに2.7分間、合計3.5分間再平衡化する。NMRスペクトルは、400MHz(1H)、376MHz(19F)または100MHz(13C)でブルカー(Bruker)分光計を使用して測定する。サンプルで使用された溶媒は、各化合物の実験プロセスに説明される。
【0049】
H NMR:ブルカーAVANCE―400NMR機器。内部標準は、テトラメチルシラン(TMS)である。
分取高速液体クロマトグラフィー(分取HPLC):Waters PHW007、XBridge C18カラム、4.6×150mm、3.5um。
ISCO Combiflash―Rf75またはRf200自動溶出カラム装置を使用し、Agela 4g、12g、20g、40g、80g、120gの使い捨てシリカゲルカラムを使用する。
【0050】
本発明の既知の出発材料は、当技術分野で知られている方法によって合成されるか、またはビデケミカル株式会社(Bide Chemical ltd.)、Bridge、Combi Blocks、無錫ラボネットワーク(Wuxi Lab Networks)、Acros Organics、アルドリッチケミカル会社(Aldrich Chemical Company)、アクセラ化学生物(上海)会社(Accela ChemBio Inc)およびダルイケミカルカンパニー(Darui Chemical Company)等から入手する。
【0051】
すべての実施例は、窒素またはアルゴン雰囲気下で実施され、特に明記しない限り、溶液とは、水溶液を指す。
これらの実施例において、反応プロセスは、薄層クロマトグラフィー(TLC)によってモニターリングされ、化合物は、カラムクロマトグラフィーによって精製される。カラムクロマトグラフィーまたはTLCで使用される溶離液は、ジクロロメタンおよびメタノール、n―ヘキサンおよび酢酸エチル、石油エーテルおよび酢酸エチル、またはアセトン等のシステムから選択され、ここで、溶媒の体積比は、化合物の様々な極性に応じて調節することができる。
【0052】
DMFとは、ジメチルホルムアミドを指し、DMSOとは、ジメチルスルホキシドを指し、THFとは、テトラヒドロフランを指し、DIEAとは、N,N―ジイソプロピルエチルアミンを指し、EAとは、酢酸エチルを指し、PEとは、石油エーテルを指す。BINAPとは、(2R,3S)―2,2’―ビスジフェニルホスフィン―1,1’―ビナフチルを指し、NBSとは、N―ブロモスクシンイミドを指し、NCSとは、N―クロロスクシンイミドを指し、Pd2(dba)3とは、トリ(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウムを指し、Pd(dppf)Cl2とは、[1,1’―ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]二塩化パラジウムを指す。
【0053】
本明細書で使用されるように、室温とは、約25℃を指す。
実施例1:(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―(メチル(フェニル)アミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン
【化19】
【0054】
ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメタノール(10.0g、65.7mmol)のDCM(150mL)溶液に活性化MnO(57.0g、657mmol)を加え、40℃下で混合物を17時間攪拌する。ろ過した後、ろ液を濃縮して、白色の固体であるベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―カルバルデヒド(9.8g、99%)を得、これをさらに精製せずに次の段階で使用する。LRMS(M+H)m/z計算値151.0、観測値151.0。
【化20】
【0055】
トルエン(30mL)中の2―チオイミダゾリジン―4―オン(1.9g、17mmol)およびベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―カルバルデヒド(3.0g、20.4mmol)の混合物にピペリジン(71mg、0.85mmol)を加え、120℃下で混合物を19時間攪拌する。濃縮した後、残留物をDCM(30mL)から再結晶化して、黄色の固体である(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―チオイミダゾリジン―4―オン(3.8g、90%)を得、これをさらに精製せずに次の段階で使用する。LRMS(M+H)m/z計算値249.0、観測値249.0。
【化21】
【0056】
メタノール(8mL)中の(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―チオイミダゾリジン―4―オン(600mg、2.4mmol)およびアニリン(2235mg、24mmol)の混合物にTBHP溶液(水中70%、649mg、7.2mmol)を加え、室温下で混合物を17時間攪拌する。反応混合物を濃縮して、過剰のアニリンを除去し、かつ残留物をMeOH(20mL)から再結晶化して、黄色の固体である(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―(メチル(フェニル)アミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン(65.0mg、35%)を得る。LRMS(M+H)m/z計算値322.1、観測値322.1。
【0057】
H NMR(400MHz、DMSO―d6)δ 10.96(s、1H)、7.93(d、J=1.4Hz、1H)、7.47―7.38(m、5H)、7.34―7.27(m、1H)、6.91(d、J=8.0Hz、1H)、6.37(s、1H)、6.03(s、2H)、3.48(s、3H)。
【0058】
実施例2:(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―3―ベンジル―2―(ベンジル(フェニル)アミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン
【化22】
【0059】
室温下で、THF(1mL)中の(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―(フェニルアミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン(46mg、0.15mmol)、フェニルメタノール(21mg、0.195mmol)およびトリフェニルホスフィン(59mg、0.225mmol)の混合物にDIAD(46mg、0.225mmol)を加える。N2保護下で、室温下で混合物を21時間攪拌する。反応混合物を濃縮しかつ残留物をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(EA/PE=1/1、v/v)によって精製して、黄色の固体である(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―3―ベンジル―2―(ベンジル(フェニル)アミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン(10mg、9%)を得る。
【0060】
LRMS(M+H)m/z計算値488.2、観測値488.2。H NMR(400MHz、DMSO―d6)δ 7.29―6.95(m、16H)、6.60(t、J=20.0Hz、3H)、6.08(s、2H)、4.79(s、2H)、4.34(s、2H)。
【0061】
実施例3:(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―3―メチル―2―(メチル(フェニル)アミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン
【化23】
【0062】
N2雰囲気下で、乾燥エーテル(150mL)中のメチルグリシネート塩酸塩(10g、0.08mol)、イソチオシアネート(5.84g、0.08mol)およびトリエチルアミン(8.08g、0.08mol)の懸濁液を38℃下で14時間攪拌する。真空下で溶媒を除去し、次にEtOAc(200mL)を加え、不溶性塩(EtN.HCl)を濾別しかつろ液を濃縮し、残留物をカラムクロマトグラフィー(DCM/MeOH=1/0~20/1、v/v)によって精製して、黄色の固体である3―メチル―2―チオイミダゾリジン―4―オン(6.5g、63%)を得る。LRMS(M+H)m/z計算値131.0、観測値131.0。H NMR(400MHz、DMSO―d6)δ 7.53(br、1H)、4.10(s、2H)、3.26(s、3H)。
【化24】
【0063】
トルエン(5mL)中の3―メチル―2―チオイミダゾリジン―4―オン(200mg、1.538mmol)および3,4―ジメトキシベンズアルデヒド(692mg、4.615mmol)の懸濁液にピペリジン(7mg、0.076mmol)を加え、かつ反応物をマイクロ波照射下で120℃下で1.5時間攪拌する。混合物をろ過しかつフィルターケーキをEt2Oで洗浄して、黄色の固体である(Z)―5―(3,4―ジメトキシベンジリデン)―3―メチル―2―チオイミダゾリジン―4―オン(330mg、77%)を得る。LRMS(M+H)m/z計算値263.1、観測値263.1。
【化25】
【0064】
メタノール(8mL)中の(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―3―メチル―2―チオイミダゾリジン―4―オン(628mg、2.4mmol)およびN―メチルアニリン(2568mg、24mmol)の混合物にTBHP溶液(水中70%、649mg、7.2mmol)を加える。室温下で混合物を17時間攪拌する。反応混合物を濃縮して過剰のアニリンを除去し、かつ残留物をMeOH(20mL)から再結晶化して、(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―3―メチル―2―(メチル(フェニル)アミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン(53.0mg)を得る。LRMS(M+H)m/z計算値336.1、観測値336.1。
【0065】
H NMR(400MHz、DMSO―d6)δ 8.02(d、J=1.5Hz、1H)、7.55―7.53(m、1H)、7.49―7.45(m,2H)、7.36―7.31(m,3H)、6.98(d、J=8.0Hz、1H)、6.64(s、1H)、6.07(s、2H)、3.50(s、3H)、2.44(s、3H)。
【0066】
実施例4:(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―(エチル(フェニル)アミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン
【化26】
【0067】
(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―(エチル(フェニル)アミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン(3.9mg)は、実施例1に記載された同じ段階によって調製される。LRMS(M+H)m/z計算値336.1、観測値336.2。
H NMR(400MHz、DMSO―d6)δ 10.82(s、1H)、7.92(s、1H)、7.49―7.46(m、2H)、7.38―7.34(m、4H)、6.91(d、J=8.0Hz、1H)、6.34(s、1H)、6.02(s、2H)、3.95(q、J=24Hz、2H)、1.16(t、J=12Hz、3H)。
【0068】
実施例5:(Z)―N―(4―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―5―オキソ―4,5―ジヒドロ―1H―イミダゾール―2―イル)―N―フェニルアセトアミド
【化27】
【0069】
0℃下で、(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―(フェニルアミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン(30mg、0.1mmol、1.0当量)のDCM溶液に、塩化アセチル(11.7mg、0.15mmol、1.5当量)およびTEA(30.3mg、0.3mmol、3.0当量)を加える。室温下で反応混合物を17時間攪拌する。濃縮した後、残留物を水で希釈し、DCM(10mL×3)で抽出する。合併した有機層をNa2SO4で乾燥し、濃縮する。残留物を(1mLEA)で粉砕して、黄色の固体である(Z)―N―(4―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―5―オキソ―4,5―ジヒドロ―1H―イミダゾール―2―イル)―N―フェニルアセトアミド(5.3mg、17%)をえる。LRMS(M+H)m/z計算値350.1、観測値350.1。H NMR(400MHz、DMSO―d6)δ 10.15(s、1H)、7.95(s、1H)、7.83(d、J=8.0Hz、2H)、7.54(d、J=8.0Hz、1H)、7.43(t、J=16.0Hz、2H)、7.17(t、J=16.0Hz、1H)、7.02(d、J=8.0Hz、1H)、6.76(s、1H)、6.10(s、2H)、2.63(s、3H)。
【0070】
実施例6:(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―(フェニルアミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン、L41
【化28】
【0071】
ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメタノール(10.0g、65.7mmol、1.0eq.)のDCM(150mL)溶液に活性化されたMnO(57.0g、657mmol、10当量)を加える。40℃下で混合物を17時間攪拌する。反応混合物をろ過し、かつろ液を濃縮して、白色の固体であるベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―カルバルデヒド(9.8g、収率99%)を得、これをさらに精製せずに次の段階で使用する。LRMS(M+H)m/z計算値151.0、観測値151.0。
【化29】
【0072】
トルエン(30mL)中の2―チオイミダゾリジン―4―オン(1.9g、17mmol、1.0eq.)およびベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―カルバルデヒド(3.0g、20.4mmol、1.2eq.)の混合物にピペリジン(71mg、0.85mmol、0.05eq.)を加える。120℃下で混合物を19時間攪拌し、次に濃縮する。残留物をDCM(30mL)から再結晶化しかつろ過して、黄色の固体である(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―チオイミダゾリジン―4―オン(3.8g、収率90.13%)を得、これをさらに精製せずに次の段階で使用する。LRMS(M+H)m/z計算値249.0、観測値249.0。
【化30】
【0073】
メタノール(8mL)中の(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―チオイミダゾリジン―4―オン(600mg、2.4mmol、1.0eq.)およびアニリン(2235mg、24mmol、10.0eq.)の混合物にTBHP溶液(水中70%、649mg、7.2mmol、3.0eq.)を加える。室温下で混合物を17時間攪拌する。反応混合物を濃縮して、過剰のアニリンを除去し、かつMeOH(20mL)から再結晶化して、黄色の固体(Z)―5―(ベンゾ[d][1,3]ジオキソ―ル―5―イルメチレン)―2―(フェニルアミノ)―3,5―ジヒドロ―4H―イミダゾール―4―オン(643mg、87.25%収率)を得る。LRMS(M+H)m/z計算値308.1、観測値308.1。
【0074】
H NMR(DMSO―d6,400 MHz)δ 7.94(br、1H)、7.77(d、J=8.0Hz、2H)、7.43(d、J=4.0Hz、1H)、7.37(t、J=16.0Hz、2H)、7.07(t、J=12.0Hz、1H)、6.96(d、J=12.0Hz、1H)、6.47(s、1H)、6.07(s、2H)。
【0075】
実施例7~53:
表Bの化合物の調製方法は、実施例1~6の調製方法と類似し、異なる出発化合物を使用する。実施例7~53化合物のデータは、表1に示される。
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【0076】
試験例1
(1)検出方式
1.新生児ラット心室筋細胞(NRVM)の分離および培養
新生児ラットの心室と心房を分離し、小片(約2×2mm)に切断し、次に0.125mgmL―1トリプシン(Gibco)、10μgmL―1DNase II(Sigma)および0.1mgmL―1コラゲナーゼIV型(Sigma)を含むCa2+フリーHBSSで解離させる。37℃下で5分間攪拌し続けて消化する。各消化器官の後にFBS(Gibco)で上清液を収集する。消化後、室温下で収集した上清液を1000gで10分間遠心分離し、次に細胞顆粒を、10%FBSおよび100uMの5―ブルも―2′―デオキシウリジン(Sigma)を補充したDMEM(Gibco)に再懸濁する。再懸濁した細胞をセルストレーナー(100mm、BD Falcon)に通し、37℃下で、5%CO中で、100mmのプラスチック皿に2時間接種して、繊維芽細胞を除去し、次に上清液を収集し、かつ1%ゼラチン(Sigma)でコーティングされた皿に接種する。接種の24時間後、培地を、2%FBS(Gibco)、1%インスリン―トランスフェリン―セレン(ITS、Gibco)、1%ペニシリン―ストレプトマイシン(Gibco)を含むDMEM(Gibco)に変更する。低血清培養の24時間後、6%FBS(Gibco)、1%インスリン―トランスフェリン―セレン(ITS、Gibco)、1%ペニシリン―ストレプトマイシン(Gibco)、様々な濃度の化合物(化合物は、培地で事前に希釈され、薬物濃度は、10uM、3uM、1uMであり、よく混合される)を含むDMEM(Gibco)を用いて培地を除去する。36時間後、Edu基質(Invitrogen)を製造業者の支持に従って追加し、次に12時間後に細胞を使用できるようになる。
【0077】
2.EdU測定
2.1.固定:培地を除去し、200ul中の4ulのPFA(カバーを準する)で細胞を15分間固定し、500ulのPBSで細胞をそれぞれ5分間2回洗浄する。
2.2.メンブレンの破壊:各ウェルに200ulの0.3%Triton―X100(PBSで希釈する)を加え、室温下で10~15分間(時間が長すぎないようにする)インキュベートし、次に500ulのPBSで細胞をそれぞれ5分間2回洗浄する。
2.3.ブロッキング:各ウェルに200ulの10%正常ヤギ血清(0.1%PBSTで希釈する)を加え、室温下で1時間インキュベートし、500ulの0.1%PBSTでそれぞれ5分間2回洗浄する。
2.4.一次抗体:一次抗体(abcam、ab8295)を1:200の比率でブロッキング液にブロッキングし、各ウェルに100ulを加え、室温下で1時間(おそらく2~3時間より少し長い)インキュベートし、500ulの0.1%PBSTで細胞をそれぞれ5分間2回洗浄する。
【0078】
2.5.二次抗体:蛍光標識された二次抗体(abcam、ab150117)を1:200の比率でブロッキング液に希釈し、各ウェルに100ulを加え、室温下で1時間(時間が長すぎないようにする)インキュベートし、0.1%PBSTで細胞をそれぞれ5分間2回洗浄し、プロセス全体に注意を払う。光を避ける。
2.6.Edu染色(innvitrogenC10338)
2.6.1.表3に従ってClick―iT(登録商標)反応混合物を準備する。重要なのは、表に記載される順序で成分を追加することであり、そうしないと、反応が最適に機能しない。調製後15分以内にClick―iT(登録商標)反応混合物を使用する。
【0079】
【表4】
【0080】
2.6.2.0.1mLのClick―iT(登録商標)反応混合物をカバースリップを含む各ウェルに加える。プレートを軽く振って、反応混合物がカバースリップに均一に分散するようにする。
2.6.3.室温下で暗所で30分間インキュベートする。
2.6.4.反応混合物を除去し、次に0.1%PBSTで細胞をそれぞれ5分間2回洗浄する。
2.7.DAPI染色:DAPI染色剤を1:1000の比率でPBSに希釈し、ウェルあたり100ulであり、室温下で30分間インキュベートし、PBSで細胞をそれぞれ5分間2回洗浄する。
【0081】
3.データ分析
分子デバイス(Molecular Devices)のImage X press Micro ConfOCalを使用して、ハイスループットイメージングおよびデータ分析を実施する。
【0082】
緩衝液
1.PBS緩衝液:500mlの体積を例として、25mlのPBS緩衝液(20X)(Sangon生物技術、B548117―0500)+475ml ddH2O
2.0.1%PBST:500mlを例として、25mlのPBS緩衝液(20X)(Sangon生物技術、B548117―0500)+475ml ddH2O+500ulトゥイーン(Tween)0(Sinopharm Group Chemical Reagent Co.、Ltd.、30189328)
【0083】
心筋細胞増殖試験に使用される参照文書:
1.Chen J.ら、mir―17―92クラスターは、出生後および成人の心臓で心筋細胞の増殖を誘発するために必要でありかつ十分である(mir―17―92 cluster is required for and sufficient to induce cardiomyocyte proliferation in postnatal and adult hearts)。CiR Res 112、1557―1566、doi:10.1161/CIRRESAHA.112.300658(2013)。
2.Andersson O.ら、アデノシンシグナル伝達は、インビボで膵臓β細胞の再生を促進する(Adenosine signaling promotes regeneration of pancreatic beta cells in vivo)。Cell Metab 15、885―894、doi:10.1016/j.cmet.2012.04.018(2012)。
3.Dogra D.ら、発生および修復中の心筋細胞増殖に対するアクチビン2型受容体リガンドの反対の効果(Opposite effects of Activin type 2 receptor ligands on cardiomyocyte proliferation during development and repair)。Nat Commun 8、1902、doi:10.1038/s41467―017―01950―1(2017)。
【0084】
4.Hirose K.ら、吸熱獲得中の心臓再生能力のホルモン制御の証拠(Evidence for hormonal control of heart regenerative capacity during endothermy acquisition)。Science 364、184―188、doi:10.1126/science.aar2038(2019)。
5.Lin Z.ら、Pi3kcbは、Hippo―YAPおよびPI3K―AKTシグナル伝達経路をリンクして、心筋細胞の増殖および生存を促進する(Pi3kcb links Hippo―YAP and PI3K―AKT signaling pathways to promote cardiomyocyte proliferation and survival)。CiR Res 116、35―45、doi:10.1161/CIRRESAHA.115.304457(2015)。
6.Wang J.、Cao J.、Dickson A.L. & Poss K.D.ら、心外膜の再生は、心臓の流出路およびヘッジホッグのシグナル伝達によって導かれる(EpicaRial regeneration is guided by caRiac outflow tract and Hedgehog signalling)。Nature 522、226―230、doi:10.1038/nature14325(2015)。
【0085】
7.Salic A. & Mitchison T.J.ら、インビボでのDNA合成の迅速かつ高感度な検出のための化学的方法(A chemical method for fast and sensitive detection of DNA synthesis in vivo)。PrOC Natl Acad Sci USA 105、2415―2420、doi:10.1073/pnas.0712168105(2008)。
8.Wang Q.ら、銅(I)触媒によるアジド―アルキン[3+2]付加環化反応によるバイオコンジュゲーション(BiOConjugation by copper(I)―catalyzed azide―alkyne [3 + 2] cycloaddition)。J Am Chem Soc 125、3192―3193、doi:10.1021/ja021381e(2003)。
【0086】
(2)結果
試験例1の結果は、以下の表2に示されたとおりである。
【表5-1】
【表5-2】
注意:***≧50%、**=10%~50%、*≦10%化合物を添加しない場合の空白筋細胞の増殖と比較。
【0087】
筋細胞成長検出における化合物L41の活性データは、図3~4に示されたとおりである。
異なる検出条件下でのL41の筋細胞成長測定を試験する。結果は、図5に示されるように、L41が心筋細胞の成長または増殖を促進する強力なアゴニストであることを示す。
【0088】
試験例2:キナーゼ分析方法:
以下の実験において、ヒトキナーゼ活性に対する本発明の化合物の阻害効果を評価する。
1.GSK3β酵素の検出
製造業者のプロトコルに従って、市販のADP―Glo(商標)キナーゼ検出キット((プロメガ(Promega)、カタログ番号V9102)を使用して、化合物がヒトGSK3βキナーゼ活性を阻害する能力を測定する。ADP―Glo(商標)キナーゼ検出は、発光ADP検出分析法であり、それは、キナーゼ反応で生成されるADPの量を定量化することにより、キナーゼ活性を測定するための、用途が広く、均質で、ハイスループットのスクリーニング方法を提供する。ADP―Glo(商標)キナーゼ検出法は、事実上すべてのADP産生酵素(例えば、キナーゼまたはATP酵素)の活性をモニターリングするために使用できる。
組換え全長ヒトGSK3β(N末端にHisタグが付いたSf9昆虫細胞で発現される)は、SignalChem(カタログ番号G09―10H)から購入される。GSK3基質ペプチド(配列:YRRAAVPPSPSLSRHSSPHQ(pS)EDEEE)は、SignalChem(カタログ番号G50―58)から購入される。当該検出(384ウェルプレート形態で実施する)は、ADP―Gloキナーゼ検出キットを使用して、キナーゼ活性を測定するための一般的な方法である。基本的な検出プロセスは、二つの段階を含む。(1)酵素段階:阻害剤をキナーゼとインキュベートし、次にATP(ADP―Gloキナーゼ検出キットに含まれる)およびGSK3基質ペプチドを加えて、酵素反応を開始する。(2)検出段階:キナーゼ反応後、まずADP―Glo(商標)試薬を加えて、キナーゼ反応を停止し、かつ残りのATPを枯渇させる。次に、キナーゼ検出試薬を加えて、ADPをATPに同時に変換し、ルシフェラーゼ/ルシフェリン反応を使用して、新しく合成されたATPを測定できるようにする。生成された光は、ルミノメーターで測定される。
【0089】
簡単に説明すると、GSK3β(4nM)の酵素緩衝液(40mM Tris、7.5、20mM MgCl2、0.1mg/ml BSA、50μM DTT)を、様々な濃度の阻害剤(100%DMSOに溶解する)と混合する。これらの溶液を25℃下で30分間インキュベートし、次に基質ペプチドおよびATPの混合物を加え、ペプチドおよびATPの最終濃度をそれぞれ13μMおよび25μMにする。酵素―基質―ATP―化合物の最終反応混合物を25℃下で60分間インキュベートする。
【0090】
その後、ADP―Glo(商標)試薬を加え、25℃下で混合物を60分間インキュベートする。次にキナーゼ検出試薬を加え、25℃下で最終混合物を60分間インキュベートする。Envision機器(パーキンエルマー(PerkinElmer))で最終溶液の発行シグナルを測定する。各検出プレートに含まれる最大および最小の対照ウェルの発光シグナルと比較して、化合物の各濃度の阻害率(%)を計算する。最大の対照ウェルは、0%阻害として酵素および基質を含み、最小の対照ウェルは、100%阻害として酵素を含まない基質のみを含む。試験化合物の濃度および阻害率の値の曲線をプロットし、4パラメーターのロジスティック用量反応方程式を使用して、50%阻害を達成した化合物濃度(IC50)を決定する。
【0091】
2.DYRK1A酵素の検出
製造業者のプロトコルに従って、市販のADP―Glo(商標)キナーゼ検出キット((プロメガ(Promega)、カタログ番号V9102)を使用して、化合物がヒトDYRK1Aキナーゼ活性を阻害する能力を測定する。
組換え全長DYRK1A(N末端にGSTタグが付いた大腸菌(E.Coli)細胞で発現される)は、SignalChem(カタログ番号D09―10G)から購入される。DYRK基質ペプチド(DYRKペプチド、配列:RRRFRPASPLRGPPK)は、SignalChem(カタログ番号D96―58)から購入される。当該検出(384ウェルプレート形態で実行される)は、ADP―Gloキナーゼ検出キットを使用してキナーゼ活性を測定するための一般的な方法である。基本的な検出プロセスは、二つの段階を含む。(1)酵素段階:阻害剤をキナーゼとインキュベートし、次にATP(ADP―Gloキナーゼ検出キットに含まれる)およびDYRKペプチドを加えて、酵素反応を開始する。(2)検出段階:キナーゼ反応後、まずADP―Glo(商標)試薬を加えて、キナーゼ反応を停止し、かつ残りのATPを枯渇させる。次に、キナーゼ検出試薬を加えて、ADPをATPに同時に変換し、ルシフェラーゼ/ルシフェリン反応を使用して、新しく合成されたATPを測定できるようにする。生成された光は、ルミノメーターで測定される。
【0092】
簡単に説明すると、DYRK1A(3 nM)の酵素緩衝液(40mM Tris、7.5、20mM MgCl2、0.1mg/ml BSA、50μM DTT)を、様々な濃度の阻害剤(100%DMSOに溶解する)と混合する。これらの溶液を25℃下で30分間インキュベートし、次に基質ペプチドおよびATPの混合物を加え、ペプチドおよびATPの最終濃度をそれぞれ20μMおよび60μMにする。酵素―基質―ATP―化合物の最終反応混合物を25℃下で60分間インキュベートする。
【0093】
その後、ADP―Glo(商標)試薬を加え、25℃下で混合物を60分間インキュベートする。次にキナーゼ検出試薬を加え、25℃下で最終混合物を60分間インキュベートする。Envision機器(パーキンエルマー(PerkinElmer))で最終溶液の発行シグナルを測定する。各検出プレートに含まれる最大および最小の対照ウェルの発光シグナルと比較して、化合物の各濃度の阻害率(%)を計算する。最大の対照ウェルは、0%阻害として酵素および基質を含み、最小の対照ウェルは、100%阻害として酵素を含まない基質のみを含む。試験化合物の濃度および阻害率の値の曲線をプロットし、4パラメーターのロジスティック用量反応方程式を使用して、50%阻害を達成した化合物濃度(IC50)を決定する。
【0094】
3.DYRK2酵素の検出
製造業者のプロトコルに従って、市販のADP―Glo(商標)キナーゼ検出キット((プロメガ(Promega)、カタログ番号V9102)を使用して、化合物がヒトDYRK2キナーゼ活性を阻害する能力を測定する。
組換え全長ヒトDYRK2(N末端にGSTタグが付いた大腸菌(E.Coli)細胞で発現される)は、SignalChem(カタログ番号D10―10G)から購入される。DYRKペプチド(DYRKtide)(配列:RRRFRPASPLRGPPK)は、SignalChem(カタログ番号D96―58)から購入される。当該検出(384ウェルプレート形態で実行される)は、ADP―Gloキナーゼ検出キットを使用してキナーゼ活性を測定するための一般的な方法である。基本的な検出プロセスは、二つの段階を含む。(1)酵素段階:阻害剤をキナーゼとインキュベートし、次にATP(ADP―Gloキナーゼ検出キットに含まれる)およびDYRKペプチドを加えて、酵素反応を開始する。(2)検出段階:キナーゼ反応後、まずADP―Glo(商標)試薬を加えて、キナーゼ反応を停止し、かつ残りのATPを枯渇させる。次に、キナーゼ検出試薬を加えて、ADPをATPに同時に変換し、ルシフェラーゼ/ルシフェリン反応を使用して、新しく合成されたATPを測定できるようにする。生成された光は、ルミノメーターで測定される。
【0095】
簡単に説明すると、DYRK2(6nM)の酵素緩衝液(40mM Tris、7.5、20mM MgCl2、0.1mg/ml BSA、50μM DTT)を、様々な濃度の阻害剤(100%DMSOに溶解する)と混合する。これらの溶液を25℃下で30分間インキュベートし、次に基質ペプチドおよびATPの混合物を加え、ペプチドおよびATPの最終濃度をそれぞれ25μMおよび10μMにする。酵素―基質―ATP―化合物の最終反応混合物を25℃下で60分間インキュベートする。
【0096】
その後、ADP―Glo(商標)試薬を加え、25℃下で混合物を60分間インキュベートする。次にキナーゼ検出試薬を加え、25℃下で最終混合物を60分間インキュベートする。Envision機器(パーキンエルマー(PerkinElmer))で最終溶液の発行シグナルを測定する。各検出プレートに含まれる最大および最小の対照ウェルの発光シグナルと比較して、化合物の各濃度の阻害率(%)を計算する。最大の対照ウェルは、0%阻害として酵素および基質を含み、最小の対照ウェルは、100%阻害として酵素を含まない基質のみを含む。試験化合物の濃度および阻害率の値の曲線をプロットし、4パラメーターのロジスティック用量反応方程式を使用して、50%阻害を達成した化合物濃度(IC50)を決定する。
【0097】
4.CLK1酵素の検出
製造業者のプロトコルに従って、市販のADP―Glo(商標)キナーゼ検出キット((プロメガ(Promega)、カタログ番号V9102)を使用して、化合物がヒトCLK1キナーゼ活性を阻害する能力を測定する。
組換えヒト人CLK1(129末端)(N末端にGSTタグが付いたSf9昆虫細胞で発現される)は、SignalChem(カタログ番号C57―11G)から購入される。組換え全長ヒトMBP(在大腸菌(N末端にGSTタグが付いたE.Coli)細胞で発現される)は、SignalChem(カタログ番号M42―54G)から購入される。当該検出(384ウェルプレート形態で実行される)は、ADP―Gloキナーゼ検出キットを使用してキナーゼ活性を測定するための一般的な方法である。基本的な検出プロセスは、二つの段階を含む。(1)酵素段階:阻害剤をキナーゼとインキュベートし、次にATP(ADP―Gloキナーゼ検出キットに含まれる)およびMBPタンパク質を加えて、酵素反応を開始する。(2)検出段階:キナーゼ反応後、まずADP―Glo(商標)試薬を加えて、キナーゼ反応を停止し、かつ残りのATPを枯渇させる。次に、キナーゼ検出試薬を加えて、ADPをATPに同時に変換し、ルシフェラーゼ/ルシフェリン反応を使用して、新しく合成されたATPを測定できるようにする。生成された光は、ルミノメーターで測定される。
【0098】
簡単に説明すると、CLK1(16nM)の酵素緩衝液(40mM Tris、7.5、20mM MgCl2、0.1mg/ml BSA、50μM DTT)を、様々な濃度の阻害剤(100%DMSOに溶解する)と混合する。これらの溶液を25℃下で30分間インキュベートし、次に基質ペプチドおよびATPの混合物を加え、ペプチドおよびATPの最終濃度をそれぞれ2μMおよび10μMにする。酵素―基質―ATP―化合物の最終反応混合物を25℃下で60分間インキュベートする。
【0099】
その後、ADP―Glo(商標)試薬を加え、25℃下で混合物を60分間インキュベートする。次にキナーゼ検出試薬を加え、25℃下で最終混合物を60分間インキュベートする。Envision機器(パーキンエルマー(PerkinElmer))で最終溶液の発行シグナルを測定する。各検出プレートに含まれる最大および最小の対照ウェルの発光シグナルと比較して、化合物の各濃度の阻害率(%)を計算する。最大の対照ウェルは、0%阻害として酵素および基質を含み、最小の対照ウェルは、100%阻害として酵素を含まない基質のみを含む。試験化合物の濃度および阻害率の値の曲線をプロットし、4パラメーターのロジスティック用量反応方程式を使用して、50%阻害を達成した化合物濃度(IC50)を決定する。
【0100】
5.結果
試験例2の結果は、以下の表4に示されたとおりである。
【表6】
データ定義:++++:>10000nM、+++:1000~10000nM、++:100~1000nM、+:<100nM
【0101】
試験例3:インビボ試験
1.急性心筋梗塞
6週齢のC57/BL6マウスを、チャンバー内で1%イソフルランで麻酔する。マウスを加熱パッド(37℃)の左仰臥位に置き、4番目の左肋間腔で開胸術により心臓を露出させる。次に心膜を開き、左冠状動脈を7―0縫合糸で永久的に結紮する。左心室が青白くなった時、結紮が成功したと見なされる。手術後1週間から、化合物L41または対照溶媒を1日おきに尾静脈から注射する。次に注射の6週間後にマウスを安楽死させ、心臓を組織学的に検査する。
【0102】
2.損傷領域の分割
画像の特性評価に使用される心臓組織の領域は、心臓全体、梗塞ゾーン(左心室自由壁)、境界ゾーン(左心室前壁および後壁)または遠位ゾーン(心室中隔)として記述される。
3.組織学
組織学的研究については、指定された時点で心臓を収集する。冷PBSを用いた逆行性灌流によって頂点から血液を除去した後、4℃下で4%パラホルムアルデヒド(PFA、Sigma)を使用して、心臓全体を一晩固定する。次に、エタノールの濃度を上げながら心臓を脱水し、パラフィンに包埋する。以前に公開された方法に従って、ヘマトキシリンおよびエオシン染色およびマッソンのトリクローム染色を実行する[Development 140、4683―4690(2013)]
【0103】
心臓の切片は、8μmの厚さであり、スライドは、スライドごとに五つのセクションで作成される。切片は、結紮部位から始まり、頂点に終わる(約50枚のスライド)。スライドをマッソントリクロームで染色して、繊維症の領域を特定する。瘢痕サイズは、頂点から結紮部位までの連続切片を調べ、Image Jソフトウェアを使用したマッソントリクローム染色に基づいて総面積に対する繊維性面積の平均パーセンテージを計算することによって瘢痕サイズを定量化する。
【0104】
4.結果
インビボ試験によると、実施例1~53で調製された化合物は、急性心筋梗塞モデルにおいて心筋細胞の増殖を促進し、梗塞サイズを減少させることができることを示す。特に、L41は、急性心筋梗塞モデルにおいて活性を示し、梗塞サイズを縮小させることができることを示す(図6および図7)。
本明細書で言及されるすべての刊行物は、本出願のように、個々の文書が参照として引用されたかのように、参照により組み込まれる。本発明の上記の教示を読んだ後、当業者は、様々な変更または修正を行うことができ、それらの同等物は、添付の特許請求の範囲で定義される請求範囲に含まれることも理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7