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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】皮膚処置システム
(51)【国際特許分類】
   A45D 26/00 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
A45D26/00 F
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022562628
(86)(22)【出願日】2021-04-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-26
(86)【国際出願番号】 EP2021058561
(87)【国際公開番号】W WO2021209266
(87)【国際公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】20169291.0
(32)【優先日】2020-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ブラダ イペ ベルナルドゥス
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/145466(WO,A2)
【文献】国際公開第2019/011523(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03262971(EP,A1)
【文献】特表2009-525090(JP,A)
【文献】特開2019-171033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45D 26/00
B26B 19/00~19/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚処置システムであって、
皮膚に生えている毛を脱毛する処置行為を行い、かつ前記皮膚処置システムの動作中に前記皮膚上を移動する機能部材と、
前記機能部材の動作中に前記皮膚上を移動し、かつプロセス中に前記皮膚と接触する測定部材を含む測定ユニットであって、前記測定部材と前記皮膚との相互作用に関連する少なくとも1つの力値を測定することによって、少なくとも1つの測定された力値を取得し、前記少なくとも1つの測定された力値は、前記機能部材の動作中に前記測定部材が前記皮膚上を移動する前進方向における力の値を含む、測定ユニットと、
を含む、皮膚処置システムにおいて、
皮膚の状態を評価するために、前記測定ユニットから、前記少なくとも1つの測定された力値を受信し、かつ少なくとも、前記前進方向における測定された力値に基づいて、前記皮膚の摩擦係数を表す摩擦係数値を決定するプロセッサユニットを更に含むことを特徴とする、皮膚処置システム。
【請求項2】
前記プロセッサユニットは、前記前進方向における前記測定された力値を基準力値で除算することによって前記摩擦係数値を決定する、請求項1に記載の皮膚処置システム。
【請求項3】
前記測定ユニットは、前記皮膚への前記測定部材の接触の垂直抗力の値も測定し、前記プロセッサユニットは、前記前進方向における前記測定された力値を前記垂直抗力の測定された値で除算することによって前記摩擦係数値を決定する、請求項1に記載の皮膚処置システム。
【請求項4】
前記皮膚への前記測定部材の接触の垂直抗力の調整を可能にするアレンジメント部を更に含み、前記プロセッサユニットは、前記アレンジメント部から、前記アレンジメント部によって設定された前記垂直抗力の値を受信し、前記前進方向における前記測定された力値を設定された前記垂直抗力の値で除算することによって前記摩擦係数値を決定する、請求項1に記載の皮膚処置システム。
【請求項5】
前記プロセッサユニットは更に、前記摩擦係数値が、摩擦係数値の基準範囲内にあるかどうかを決定する、請求項1から4のいずれか一項に記載の皮膚処置システム。
【請求項6】
摩擦係数値の前記基準範囲は、i)最小摩擦係数値と最大摩擦係数値との間の範囲、及びii)単一の識別摩擦係数値を上回る又は下回る範囲のうちの1つである、請求項5に記載の皮膚処置システム。
【請求項7】
摩擦係数値の前記基準範囲は、皮膚関連特徴に関連付けられた摩擦係数値の範囲である、請求項5又は6に記載の皮膚処置システム。
【請求項8】
前記皮膚関連特徴は、湿潤度、弾力性、及び粗さを含む特徴の群のうちの1つである、請求項7に記載の皮膚処置システム。
【請求項9】
ディスプレイデバイスを更に含み、前記プロセッサユニットは更に、前記皮膚関連特徴に関する出力を前記ディスプレイデバイスに提供する、請求項7又は8に記載の皮膚処置システム。
【請求項10】
前記機能部材の動作を制御する制御ユニットを更に含み、前記プロセッサユニットは更に、前記摩擦係数値に基づいて前記機能部材の動作の少なくとも1つのパラメータを決定し、前記機能部材の動作の前記少なくとも1つのパラメータに関する出力を前記制御ユニットに提供する、請求項1から9のいずれか一項に記載の皮膚処置システム。
【請求項11】
前記測定ユニットは、前記測定部材に作用する弾性部材を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の皮膚処置システム。
【請求項12】
前記測定部材に関連付けられた、位置センサ、速度センサ、及び加速度センサのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の皮膚処置システム。
【請求項13】
前記測定部材は、前記測定部材の両側に位置決めされ、かつ異なる形状の外形を有する2つの領域を含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の皮膚処置システム。
【請求項14】
前記測定ユニットは更に、前記機能部材の動作中に前記皮膚上を移動し、かつ前記プロセス中に前記皮膚と接触する少なくとも1つの追加の測定部材を含み、前記測定ユニットは、前記少なくとも1つの追加の測定部材と前記皮膚との相互作用に関連する少なくとも1つの力値を測定することによって、少なくとも1つの追加の測定された力値を取得する、請求項1から13のいずれか一項に記載の皮膚処置システム。
【請求項15】
前記機能部材及び前記測定ユニットは、ハンドヘルドアプライアンス内に組み入れられ、前記プロセッサユニットは、前記ハンドヘルドアプライアンスの外にあるリモートユニットである、請求項1から14のいずれか一項に記載の皮膚処置システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚処置システムであって、皮膚に処置行為を行い、かつ当該システムの動作中に皮膚の上を移動する機能部材を含む、皮膚処置システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冒頭の段落で説明した皮膚処置システムの例としては、皮膚から脱毛する形で皮膚処置を行う脱毛システムがある。このシステムは、機能部材として脱毛ボディを含む。従来の設計では、脱毛ボディは通常、円形の外周を有するシリンダのような形状になっている。脱毛ボディは、脱毛ボディの長手方向に延在する回転軸の周りを回転可能である。機能部材は、曲がった構成で保持可能である。更に、脱毛ボディには、少なくとも1つの毛捕捉空間が設けられており、少なくとも1つの毛捕捉空間の長手方向のサイズは、脱毛ボディの外周に沿って、又は脱毛ボディの回転中に長手方向の脱毛ボディの圧縮及び拡張によって可変である。皮膚から毛を除去するための脱毛システムの動作には、脱毛ボディを皮膚に置いた状態で回転するように脱毛ボディを駆動し、皮膚上で脱毛ボディ体を回転させて、それにより、少なくとも1つの毛捕捉空間のサイズが小さくなるにつれて毛が少なくとも1つの毛捕捉空間に捕捉され、脱毛ボディが前進するにつれて皮膚から引き抜かれることを伴う。
【0003】
脱毛システムなどの皮膚処置システムのコンテキストでは、皮膚処置行為を行うプロセスには、不都合な副作用として皮膚炎症が伴うことがある。脱毛システムの例では、脱毛システムの動作中に、脱毛ボディが皮膚上を回転することによる連続的な摩擦から皮膚炎症が生じることがある。更に、皮膚から突き出ている毛が引っ張られることから、隆起や炎症スポットを生じさせ、皮膚表面の特性を変えてしまうことがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の内容に鑑みて、皮膚処置システムによって行われる皮膚処置行為中に皮膚の特性を決定し、これにより皮膚処置システムのユーザに皮膚の状態に関する関連情報を提供する可能性、及び皮膚処置システムの1つ以上の構成要素が動作されるやり方を自動的に調整する可能性、のうちの少なくとも1つが得られる、信頼性の高いやり方を提供することが望ましい。ユーザへの情報提供は、皮膚処置行為中及び/又は皮膚処置行為後に行うことができる。皮膚処置行為中にユーザに情報を提供することで、ユーザは皮膚処置システムの使い方の調整を決定できる。一方、皮膚処置後にユーザに情報を提供することで、ユーザはまず自分の皮膚の状態を認識し、例えば肌に鎮静クリームを塗布するなど、可能な更なる皮膚処置行為についてユーザが決定できる。なお、皮膚処置システムの1つ以上の構成要素が動作するやり方を自動的に調整する可能性では、これは特に、例えば皮膚の炎症レベルが許容基準レベルを超えていることが判明した場合に、皮膚の炎症の更なる増大を防ぐことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述の内容に鑑みて、本発明は、皮膚に処置行為を行い、かつ皮膚処置システムの動作中に皮膚上を移動する機能部材と、機能部材の動作中に皮膚上を移動し、かつプロセス中に皮膚と接触する測定部材を含む測定ユニットであって、測定部材と皮膚との相互作用に関連する少なくとも1つの力値を測定することによって、少なくとも1つの測定された力値を取得し、少なくとも1つの測定された力値は、機能部材の動作中に測定部材が皮膚上を移動する前進方向における力の値を含む、測定ユニットと、測定ユニットから、少なくとも1つの測定された力値を受信し、かつ少なくとも、前進方向における測定された力値に基づいて、皮膚の摩擦係数を表す摩擦係数値を決定するプロセッサユニットとを含む、皮膚処置システムを提供する。
【0006】
前述の定義から、本発明による皮膚処置システムは、機能部材に加えて、測定ユニット及びプロセッサユニットを含むことが分かる。皮膚処置システムの動作中、測定ユニットは、前進方向、即ち、皮膚上での測定部材の移動方向における力値と、恐らくは、測定部材と皮膚との相互作用に関連する1つ以上の他の力値とを測定する。測定ユニットから得られた入力は、皮膚の摩擦係数を表す摩擦係数値を決定するプロセス中にプロセッサユニットによって使用される。機能ユニット及び測定ユニットは、ハンドヘルドアプライアンス内に組み入れられてもよい。この場合、プロセッサユニットは、ハンドヘルドアプライアンスの外にあるリモートユニットであり得る。これは、本発明が他のオプションも対象とするという事実を変えない。皮膚への処置行為は、例えば皮膚のブラッシング又は脱毛による毛の除去のうちの1つであり得る。本発明は、特定のタイプの皮膚処置に制限されないことに留意されたい。
【0007】
本発明の基礎となる知見によれば、皮膚の摩擦係数は、皮膚の状態(湿潤度、弾力性、及び粗さなど)の側面、即ち、皮膚関連特徴に関連している。皮膚の摩擦係数を表す摩擦係数値を決定することは、皮膚の状態を評価する際に有用であることがわかっている。本発明を実践すると、皮膚の状態に関する客観的な指標が得られる。皮膚処置行為中に測定結果が得られるため、別個の測定処置行為を行う必要がない。
【0008】
本発明のフレームワークでは、摩擦係数値を決定するやり方に関して、様々なオプションが適用可能である。第1のオプションによれば、プロセッサユニットは、前進方向における測定された力値を基準力値で除算することによって摩擦係数値を決定する。例えば基準力値は、ユーザが機能ユニットを皮膚に押したときの平均力を表す値である。第2のオプションによれば、測定ユニットは、皮膚への測定部材の接触の垂直抗力の値も測定し、プロセッサユニットは、前進方向における測定された力値を垂直抗力の測定された値で除算することによって摩擦係数値を決定する。第3のオプションによれば、皮膚処置システムは、皮膚への測定部材の接触の垂直抗力の調整を可能にするアレンジメント部を更に含み、プロセッサユニットは、アレンジメント部から、アレンジメント部によって設定された垂直抗力の値を受信し、前進方向における測定された力値を設定された垂直抗力の値で除算することによって摩擦係数値を決定する。
【0009】
本発明による皮膚処置システムの有利な実施形態では、プロセッサユニットは更に、摩擦係数値が、摩擦係数値の基準範囲内にあるかどうかを決定する。例えば摩擦係数値の基準範囲は、i)最小摩擦係数値と最大摩擦係数値との間の範囲、及びii)単一の識別摩擦係数値を上回る又は下回る範囲、のうちの1つである。摩擦係数値の基準範囲が、皮膚関連特徴に関連付けられた摩擦係数値の範囲であるならば実用的である。なお、皮膚関連特徴は、湿潤度、弾力性、及び粗さを含む特徴の群のうちの1つであり得る。
【0010】
皮膚処置システムにおいて、摩擦係数値が摩擦係数値の基準範囲内にあるかどうかを決定する機能を有することによって、皮膚処理システムを使用して、ユーザに皮膚状態情報を提供できる。更に、ユーザに皮膚を更に処置を行うやり方について、適切な提案を提供することもできる。この点において、皮膚処置システムがディスプレイデバイスを更に含み、プロセッサユニットが更に、皮膚関連特徴に関する出力をディスプレイデバイスに提供するならば実用的である。
【0011】
前述のように、皮膚処置システムの1つ以上の構成要素が動作するやり方を自動的に調整する可能性があることが望ましい。上記を考慮して、本発明による皮膚処置システムが更に、機能部材の動作を制御する制御ユニットを含み、プロセッサユニットが更に、摩擦係数値に基づいて機能部材の動作の少なくとも1つのパラメータを決定し、機能部材の動作の少なくとも1つのパラメータに関する出力を制御ユニットに提供するならば実用的である。例えば皮膚処置システムが脱毛システムである場合、機能部材の動作の少なくとも1つのパラメータは、脱毛ボディの回転速度を含む。一般的に、このような場合、脱毛システムの動作の制御方法は、摩擦係数値が、高いレベルの皮膚炎症を示している場合に、脱毛ボディの回転速度が低減されることによって実現される。別の実行可能なオプションによると、機能部材の動作の少なくとも1つのパラメータは、脱毛ボディを支えるハウジング部分などに対して脱毛ボディが拡張される範囲を含む。一般的に、このような場合、脱毛システムの動作の制御方法は、摩擦係数値が高いレベルの皮膚炎症を示している場合に、ハウジング部分に対して脱毛ボディが更に引き込められることによって実現される。
【0012】
本発明は、測定ユニットの任意の適切な実施形態を対象としている。例えば測定ユニットが測定部材に作用する弾性部材を含むならば実用的である。前述の弾性部材の例としては、コイルばねがある。また、皮膚処置システムが、測定部材と皮膚との相互作用に関連する少なくとも1つの力値よりも多くの測定値を得るならば実用的であり得る。例えば皮膚処置システムは、測定部材に関連付けられた、位置センサ、速度センサ、及び加速度センサのうちの少なくとも1つを更に含む。
【0013】
本発明のフレームワーク内に存在する有利なオプションによれば、測定部材は、測定部材の両側に位置決めされ、かつ異なる形状の外形を有する2つの領域を含み得る。このようにすると、皮膚上での測定部材の移動の方向に応じて、測定部材と皮膚との様々な相互作用を実現することができ、これに基づいて、様々な皮膚関連特徴に関する信頼性の高い測定結果を得ることができる。
【0014】
測定ユニットが更に、機能部材の動作中に皮膚上を移動し、かつプロセス中に皮膚と接触する少なくとも1つの追加の測定部材を含む本発明による皮膚処置システムの一実施形態が実現可能である。測定ユニットは、少なくとも1つの追加の測定部材と皮膚との相互作用に関連する少なくとも1つの力値を測定することによって、少なくとも1つの追加の測定された力値を取得する。このようにすると、測定部材の向きなどの要因の影響が小さくなるため、皮膚の摩擦係数を表す摩擦係数値を決定するプロセスの精度を高めることができる。
【0015】
本発明の上記及び他の態様は、測定ユニットを含む脱毛システムの次の詳細な説明から明らかになり、またその説明を参照して明らかにする。測定ユニット及びその構成要素の構成に関する様々な可能性について対処する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明について、図を参照してより詳細に説明する。図では、同じ又は同様の部分は同じ参照符号によって示している。
【0017】
図1図1は、本発明の実施形態による脱毛システムの一部であるハンドヘルド脱毛デバイスの正面図を図示する。
図2図2は、脱毛システムの脱毛ボディ、脱毛ボディを支えるハウジング部分、測定ユニット、プロセッサユニット、制御ユニット、及びディスプレイデバイスを図示する。
図3図3は、測定ユニットの第1の可能な構成を示す。
図4図4は、測定ユニットの第2の可能な構成を示す。
図5図5は、皮膚と、測定ユニットの測定部材との相互作用を示す。測定ユニットは、皮膚に沿った脱毛ボディの2つの反対方向の移動のための、測定部材の両側に位置決めされ、形状の異なる外形を有する2つの領域を含む。
図6図6は、皮膚と、測定ユニットの測定部材との相互作用を示す。測定ユニットは、皮膚に沿った脱毛ボディの2つの反対方向の移動のための、測定部材の両側に位置決めされ、形状の異なる外形を有する2つの領域を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、本発明の実施形態による脱毛システム1の様々な特徴について説明する。脱毛システム1は、本発明のフレームワークにおいて実現可能である多くのタイプの皮膚処置システムの一例であることに留意されたい。更に、図1を参照して、脱毛システム1がハンドヘルドアプライアンス10を含む場合に実用的であることに留意されたい。ハンドヘルドアプライアンス10は、脱毛システム1の多数の構成要素を収容するハウジング11を含む。ハンドヘルドアプライアンス10を使用することで、顔、脇、及び脚などの様々な身体部位で脱毛システム1を便利に使用できる。
【0019】
脱毛システム1は、皮膚の毛除去動作を行うために使用される。それを考慮して、脱毛システム1は、皮膚から引き抜く毛と実際に相互作用することを目的とした脱毛ボディ20を含む。毛を捕捉して把握するために、脱毛ボディ20は、毛挟み留め部材21があり、その間には毛捕捉空間22がある。図示する例では、脱毛ボディ20は通常円形の外周を有するシリンダのような形状になっている。脱毛ボディ20は、脱毛ボディの長手方向に延在する回転軸Rの周りを回転可能である。毛捕捉空間22の長手方向のサイズは、脱毛ボディ20の外周に沿って可変である。脱毛システム1は、脱毛システム1の動作中に回転軸Rの周りで回転運動を実際に行うように脱毛ボディ20を駆動する駆動メカニズム(図示せず)や、ハンドヘルドアプライアンス10がコードレスの場合の(充電式)バッテリなどの電源アレンジメント部(図示せず)などの構成要素を含むことが理解されるであろう。
【0020】
図2に示すように、脱毛システム1が、脱毛ボディ20の動作を制御する制御ユニット30を更に含む場合は、実用的である。ユーザが脱毛システム1を作動させる及び作動停止にすることを可能にするために、ハンドヘルドアプライアンス10のハウジング11にボタンなどの適切なユーザインターフェース31が設けられている。脱毛システム1が作動させられると、脱毛ボディ20は回転するように駆動される。脱毛システム1による脱毛行為を受ける皮膚2は、図1及び図2に破線で示されている。脱毛システム1を適切に使用するには、脱毛システム1を作動状態にし、脱毛ボディ20が皮膚2上を回転するようにハンドヘルドアプライアンス10を動かす必要がある。このプロセスにおいて、毛が脱毛ボディ20の毛捕捉空間22に捕捉され、脱毛ボディ20が前進するにつれて皮膚2から引き抜かれる。
【0021】
図2は、脱毛システム1が更に測定ユニット40及びプロセッサユニット50を含むことも示している。測定ユニット40には、脱毛ボディ20の動作中に脱毛ボディ20とともに皮膚2上を移動し、かつ上記プロセス中に皮膚2と接触するプローブ状の測定部材41が含まれている。この測定部材41は、測定部材41が脱毛ボディ20の動作中に皮膚2上を移動する前進方向における力の値と、場合によっては、測定部材41と皮膚2との相互作用に関連する、少なくとも1つの他の力値とを測定する。完全性を期すため、前進方向の力は摩擦に関連する力であり、前進方向と反対の符号を有することに留意されたい。脱毛システム1の動作中、測定ユニット40は、前進方向における測定された力値と、場合によっては、少なくとも1つの他の測定された力値とをプロセッサユニット50に出力し、プロセッサユニット50は、前進方向の測定された力値に少なくとも基づいて皮膚2の摩擦係数を表す摩擦係数値を決定する。
【0022】
プロセッサユニット50は、摩擦係数値を決定するのに適したやり方で構成され得る。例えば、前進方向の測定された力値を基準力値で除算することで、摩擦係数値を決定できる。また、測定部材41の皮膚2への接触の垂直抗力値を測定するか又は垂直抗力の値を設定し、前進方向の測定された力値を測定又は設定された垂直抗力値で除算することで、摩擦係数値を決定することもできる。いずれの場合も、本発明の重要な利点は、脱毛行為中に皮膚摩擦測定を行うことができるため、別個の測定を行う必要がないという点である。
【0023】
皮膚2の摩擦係数に関する情報は、皮膚2の状態の側面を構成する1つ以上の皮膚関連特徴を評価するプロセスで使用するのに適している。例えば、皮膚2の湿潤度、弾力性、及び/又は粗さの指標を、摩擦係数値から得ることができる。前述のように、皮膚状態評価プロセスにおいて少なくとも1つのステップを行うことができるように、プロセッサユニット50は更に、摩擦係数値が摩擦係数値の基準範囲内にあるかどうかを決定する。摩擦係数値の基準範囲が皮膚関連特徴に関連付けられた摩擦係数値の範囲であると仮定すると、脱毛システム1がディスプレイデバイス32を更に含み、また、プロセッサユニット50が、ディスプレイデバイス32を通じてユーザが通知されるように皮膚関連特徴に関する出力をディスプレイデバイス32に提供するように更に構成されているならば有利である。また、プロセッサユニット50が、摩擦係数値に基づいて脱毛ボディ20の動作の少なくとも1つのパラメータを決定し、制御ユニットにその少なくとも1つのパラメータに関して出力を提供するように更に構成されているならば、有利である。この場合、脱毛システム1の自己調整機能が実現される。例えば、摩擦係数値が高いレベルの皮膚炎症を示している場合、プロセッサユニット50は、脱毛ボディ20の回転速度に関する出力を制御ユニット30に提供する。具体的には、その出力は回転速度を下げることを目的とする。
【0024】
図2では、プロセッサユニット50と、制御ユニット30、ディスプレイデバイス32、及び測定ユニット40との間の信号の交換を破線で示している。プロセッサユニット50及びディスプレイデバイス32は、ハンドヘルドアプライアンス10に収容され得るが、プロセッサユニット50及びディスプレイデバイス32のうちの少なくとも一方がハンドヘルドアプライアンス10の外に配置されている場合も実用的である。
【0025】
図3を参照して、測定ユニット40の構成に関する第1のオプションの詳細について説明する。脱毛ボディ20の動作中に測定部材41が皮膚2上を移動する前進方向を、図3の上部にある矢印Aで示している。更に、図3では、皮膚2に沿った方向をX方向と示し、皮膚の法線方向をY方向と示している。測定ユニット40は、測定部材41の他に、前進方向Aの力値を測定するロードセル42と、測定部材41にのばね力を作成するばね43とを含む。ロードセル42は特に、前進方向Aにおいて作用する力の影響を受けて変形するように配置されている。ロードセルの分野から知られているように、ロードセル42の変形によって生じたロードセル42の電気抵抗の変化を電気信号に変換するために、増幅ハードウェアを使用することは実用的である。したがって、電気信号は前進方向Aにおいて作用する力の値に直接関連している。
【0026】
前述の第1のオプションに従って構成されている測定ユニット40が機能するやり方は、次のとおりである。測定ユニット40は、脱毛ボディ20が前進方向Aで皮膚2上を前進するにつれて、前進方向Aにおける力の値の測定を行うことができ、測定部材41は、自動的に同じ移動を行う。測定部材41が皮膚2に接触する位置では、力はX方向とY方向との両方で優勢である。つまり、X方向のけん引力FとY方向の垂直抗力Nである。けん引力Fは測定部材41と皮膚2との間の摩擦に関連し、垂直抗力Nはばね43によって決定される。けん引力Fは、形状、材料、及び表面特徴など、皮膚2との接触位置における測定部材41の特性の影響を受ける。したがって、必要に応じて測定プロセスを最適化するために、このような特性を選択できる。ばね43内に比較的高いプレテンションを加え、比較的低いばね定数と合わせることにより、測定部材41の圧入の変化の影響がばね力にわずかにしか及ばず、これにより、垂直抗力Nの準一定値が実現される。
【0027】
全体として見れば、脱毛システム1が、前述の第1のオプションに従って構成された測定ユニット40を備えている場合、摩擦係数値は、測定されたけん引力Fの値をばね力の値で除算することで、プロセッサユニット50によって決定できる。
【0028】
例えば、図4に示されているように、測定ユニット40が別のロードセル44を備えている場合、測定ユニット40からばね43を省略できる。図4は、測定ユニット40の構成に関して第2のオプションに関連する。具体的には、ロードセル44は、垂直抗力Nの影響を受けて変形するように配置及び構成されている。このような場合は、摩擦係数値は、測定されたけん引力Fの値を測定された垂直抗力Nの値で除算することで、プロセッサユニット50によって決定できる。ばね43を省略することを可能にする更に別のオプションは、ユーザがY方向において測定部材41に加える力の値を設定する機会を伴うオプションである。一方、ばね43と垂直抗力のロードセル44との併用が可能である。特に、ばね定数が分かっている場合、この場合に垂直抗力ロードセル44によって提供される出力から、皮膚2へのハンドヘルドアプライアンス10の角度を示すことができる。脱毛システム1の場合、これは、システム1の使用の有効性は前述の角度に関連しているため、特に有利である。
【0029】
図5及び図6を参照して、測定部材41の両側に位置決めされ、かつ異なる形状の外形を有する2つの領域45、46を含むように測定部材41を設計するオプションについて説明する。図5及び図6では、皮膚2と、領域45、46を含む測定部材41の一部とが示されている。例示のために、領域45、46は、極端に異なるように示されており、一方の領域45には曲線縁ゾーンが含まれ、もう一方の領域46には、2つの直線ゾーンが互いに90°の角度で接続される鋭角縁ゾーンが含まれている。前方に曲線縁ゾーンを含む領域45がある状態で、測定部材41を前進方向Aに移動すると、図5に示すように、測定部材41の前には皮膚2のドーム形成がほとんどない。このようにすると、皮膚2の表面特徴に関連する力の測定を行うことができる。なお、皮膚2の粗さ、皮膚2上の皮脂の存在、及び皮膚2上でのパーソナルケア製品の使用は、そのような表面特徴の例である。前方に鋭角縁ゾーンを含む領域46がある状態で、測定部材41を前進方向Aに移動すると、図6に示すように、いわゆる「耕起(ploughing)」効果がもたらされ、その結果、皮膚2は、測定部材41に対して折り畳まれる。このようにすると、皮膚2の弾力性とより深い皮膚組織の特徴に関連する力値の測定を行うことができる。
【0030】
追加又は別のオプションでは、脱毛システム1に、異なる設計の少なくとも2つの交換可能な測定部材41のセットが設けられていてもよく、これにより、ユーザは、皮膚関連特徴の1つ以上の関連するタイプを考慮して、最適な測定部材41を選択することができる。
【0031】
脱毛システム1の使用に関する更なる情報は、脱毛システム1が、加速度計などの1つ以上のセンサを備えている場合に取得できる。皮膚摩擦測定に使用される構成要素と加速度計とを組み合わせると、皮膚摩擦測定の精度が向上される。まず、加速度計を使用して、測定部材41が皮膚2に正しく配置されているかどうかを評価できる。正しく配置されていなさそうな場合、ユーザにフィードバックを提供して、測定部材41の位置決めをユーザが修正できるようにする。次に、摩擦には静的な側面と動的な側面とがあることが知られており、したがって、皮膚表面の摩擦は移動に依存する。加速度計を使用して、移動を検出し、移動速度を決定できる。更に次に、加速度計又は別のタイプの位置決め感知デバイスを使用して、測定部材41がどの身体部位に使用されているのか評価できる。皮膚表面の摩擦は異なる身体部位ごとに異なることが知られているため、このような情報を得ることは重要であり、また、実際の身体部位が分っているならば、前進方向Aにおける測定された力値を適切に修正できる。
【0032】
当業者には、本発明の範囲は前述の例に限定されず、添付の特許請求の範囲に定義されている本発明の範囲から逸脱することなく、いくつかの補正及び修正が可能であることが明らかであろう。本発明は、特許請求の範囲又はその等価物の範囲内である限り、そのようなすべての補正及び修正を含むものと解釈されることを意図している。本発明は、図及び説明に詳細に例示及び説明されているが、このような例示及び説明は、例示的又は模範的にのみ見なされるべきであって、限定的と見なされるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。図面は概略図であり、本発明を理解するために必要でない詳細は省略されている場合があり、また、必ずしも縮尺通りではない。
【0033】
開示された実施形態の変形は、図、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。特許請求の範囲において、「含む」という語は、他のステップや要素を排除するものではなく、単数形は複数を排除するものではない。特許請求の範囲における任意の参照符号は、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0034】
特定の実施形態について又はそれに関連して説明された要素及び態様は、特に明示的に述べられていない限り、他の実施形態の要素及び態様と適切に組み合わせることができる。したがって、特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用できないことを意味するものではない。
【0035】
本テキストで使用されている「有する」及び「含む」という用語は、「からなる」という用語を網羅するものとして当業者によって理解されるであろう。したがって、「有する」又は「含む」という用語は、1つの実施形態に関する限りでは「からなる」を意味する場合があるが、別の実施形態では「少なくとも定義された種及び任意選択で1つ以上の他の種を含有する/有する/備えている」を意味する場合がある。
【0036】
本発明の重要な態様は次のとおりである。脱毛システムなどの皮膚処置システム1は、皮膚2に処置行為を行い、かつ当該システム1の動作中に皮膚2上を移動する機能部材20と、機能部材20の動作中に皮膚2上を移動し、かつプロセス中に皮膚2と接触する測定部材41を含む測定ユニット40とを含む。測定ユニット40は、少なくとも、機能部材20の動作中に測定部材41が皮膚2上を移動する前進方向Aにおける力の値を測定する。測定された前進方向Aにおける力の値は、皮膚2の摩擦係数を表す摩擦係数値を決定する目的で使用され、これにより、皮膚2の状態を評価できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6