(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】ネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20240924BHJP
H01L 23/38 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H05K7/20 S
H01L23/38
(21)【出願番号】P 2023002532
(22)【出願日】2023-01-11
【審査請求日】2023-01-13
(32)【優先日】2022-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】504025778
【氏名又は名称】明泰科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】莊焜能
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-8105(JP,A)
【文献】特開2016-31850(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115047961(CN,A)
【文献】特開2002-271075(JP,A)
【文献】特開2013-254791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワーク機器のインテリジェント温度制御システムであって、
筐体プレートを有する筐体と、
前記筐体内に設けられたマザーボードであって、前記マザーボードには、システムCPU制御回路、電源駆動回路、及び
2つ以上の温度制御すべき素子が設けられ、前記システムCPU制御回路は、メモリを含み、前記メモリに各型番の温度制御すべき素子の作動温度範囲が記憶され、前記システムCPU制御回路は、前記電源駆動回路、各温度制御すべき素子にそれぞれ電気的に接続されるとともに、各温度制御すべき素子のリアルタイム温度及び型番の情報を受信し、前記システムCPU制御回路は、受信した型番と前記メモリ内の型番とを照合して、各温度制御すべき素子の作動温度範囲を取得するマザーボードと、
前記マザーボードにおける各温度制御すべき素子が設けられた部分と前記筐体プレートとの間にそれぞれ結合された
2つ以上の
加熱・冷却チップであって、各
加熱・冷却チップは、前記電源駆動回路に電気的に接続され、前記電源駆動回路によって逆極性の第一極性の電圧又は第二極性の電圧で駆動され、前記システムCPU制御回路は、各前記温度制御すべき素子のリアルタイム温度と作動温度範囲とを比較し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも高ければ、前記システムCPU制御回路は、前記電源駆動回路を、第一極性の電圧で前記
加熱・冷却チップを駆動して前記マザーボード及びその上に設けられた前記温度制御すべき素子を降温して前記筐体プレートから放熱するように制御し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも低ければ、前記電源駆動回路を、第二極性の電圧で前記
加熱・冷却チップを駆動して前記マザーボード及びその上に設けられた前記温度制御すべき素子を加熱するように制御する
2つ以上の
加熱・冷却チップとを含
み、
前記システムCPU制御回路は、CPUチップを含み、
前記CPUチップは、前記メモリに電気的に接続されて、前記メモリに記憶されたオペレーティングシステムを実行し、前記オペレーティングシステムは、前記温度制御すべき素子の各型番に対応する作動温度範囲を含み、
前記マザーボードにバックアップ監視モジュールが設けられ、前記バックアップ監視モジュールと前記システムCPU制御回路との間に通信回線が接続されるとともに、前記バックアップ監視モジュールがバックアップ回線を介して各温度制御すべき素子、前記電源駆動回路にそれぞれ電気的に接続され、前記バックアップ監視モジュールは、前記通信回線を介して前記CPUチップから前記システムCPU制御回路の状態を知り、前記システムCPU制御回路の失陥又は未起動時に起動され、前記システムCPU制御回路に取って代わって、各前記温度制御すべき素子のリアルタイム温度と前記オペレーティングシステムに含まれる作動温度範囲とを比較し、前記電源駆動回路を、駆動して逆極性の第一極性の電圧又は第二極性の電圧で各加熱・冷却チップを駆動するように制御する、ネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【請求項2】
前記マザーボードにおける何れか1つの温度制御すべき素子に隣接する位置に温度監視チップが設けられ、前記温度監視チップは、前記システムCPU制御回路に電気的に接続されるとともに、前記バックアップ回線を介して前記バックアップ監視モジュールにも電気的に接続され、前記システムCPU制御回路が受信する前記温度制御すべき素子のリアルタイム温度は、前記温度監視チップからのものである、請求項
1に記載のネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【請求項3】
前記マザーボードに警報素子が設けられ、前記警報素子は、前記バックアップ監視モジュールに電気的に接続され、前記バックアップ監視モジュールの起動時に、前記警報素子がシステム異常警報を発するように制御される、請求項
1に記載のネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【請求項4】
前記温度制御すべき素子は、前記システムCPU制御回路のCPUチップであり、前記システムCPU制御回路が受信する前記CPUチップのリアルタイム温度は、前記CPUチップからのものである、請求項1~
3の何れか一項に記載のネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【請求項5】
前記CPUチップは、前記メモリに電気的に接続されて、前記メモリに記憶されたオペレーティングシステムを実行し、前記CPUチップの型番に対応する作動温度範囲は、前記オペレーティングシステムに含まれている、請求項
4に記載のネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【請求項6】
前記CPUチップの表面にヒートシンクが結合されている、請求項
4に記載のネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【請求項7】
前記マザーボードに光ファイバモジュールのスロットコネクタがいくつか設けられ、各スロットコネクタは、前記システムCPU制御回路に電気的に接続され、前記温度制御すべき素子は、デジタル診断モニタ機能を備えた光ファイバモジュールであり、前記光ファイバモジュールは、何れか1つのスロットコネクタに差込接続され、前記システムCPU制御回路が受信する前記光ファイバモジュールのリアルタイム温度は、前記光ファイバモジュールからのものである、請求項1に記載のネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【請求項8】
前記マザーボードに光ファイバモジュールのスロットコネクタがいくつか設けられ、各スロットコネクタは、前記システムCPU制御回路に電気的に接続されるとともに、前記バックアップ回線を介して前記バックアップ監視モジュールにも電気的に接続され、前記温度制御すべき素子は、デジタル診断モニタ機能を備えた光ファイバモジュールであり、前記光ファイバモジュールは、何れか1つのスロットコネクタに差込接続され、前記バックアップ監視モジュールが受信する前記光ファイバモジュールのリアルタイム温度は、前記光ファイバモジュールからのものである、請求項
1~
3の何れか一項に記載のネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【請求項9】
各
加熱・冷却チップと前記マザーボードとの間に放熱パッドが結合されている、請求項1~
3の何れか一項に記載のネットワーク機器のインテリジェント温度制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワーク機器のシステムに関し、特に、ネットワーク機器のインテリジェント温度制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のネットワーク通信機器は、マザーボード上に設けられたチップ又は光ファイバモジュールの調整制御方式として、主に、システム内に設けられたファンから気流を吹き付けてこれらのチップ又は光ファイバモジュールの周囲を通過させて熱を奪ることで、温度に比較的敏感なこれらの電子素子が気流による放熱で温度低下可能にすることである。
【0003】
上記のファンから気流を吹き付けるという放熱手段は、システム内のチップ又は光ファイバモジュールの稼動時の温度を低下させることができるが、チップが低温で起動した場合、このようなファンの温度調整制御方式では、チップを起動直後に適切な作動温度範囲まで昇温することができない。また、ファンの降温度合を上げる必要がある場合、この方式では、風量を増やすことでしか遂行できないのに対して、ネットワーク通信機器内の各チップ又は素子が全て温度に敏感であり、降温する必要があるわけではないため、このようなむやみに降温する方式は、ネットワーク通信機器の消費電力の削減不能、ファンの寿命の短縮、及びファンの高速回転による高周波騒音の問題を引き起こしてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本発明の目的は、マザーボード上の特定の温度制御すべき素子に対して加熱・冷却チップを設け、筐体の筐体プレートを大面積の放熱プレート又はクーリングプレートとして加熱・冷却チップの一面に接触させて、加熱・冷却チップの他面による温度制御すべき素子の降温又は加熱を可能にし、温度制御すべき素子をその仕様の作動温度範囲に保持可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は、筐体、マザーボード、及び1つ以上の加熱・冷却チップを含むネットワーク機器のインテリジェント温度制御システムを提供する。前記筐体は、筐体プレートを有し、前記マザーボードは、前記筐体内に設けられ、前記マザーボードには、システムCPU制御回路、電源駆動回路、及び1つ以上の温度制御すべき素子が設けられ、前記システムCPU制御回路は、メモリを含み、前記メモリに各型番の温度制御すべき素子の作動温度範囲が記憶され、前記システムCPU制御回路は、前記電源駆動回路、各温度制御すべき素子にそれぞれ電気的に接続されるとともに、各温度制御すべき素子のリアルタイム温度及び型番の情報を受信し、前記システムCPU制御回路は、受信した型番と前記メモリ内の型番とを照合して、各温度制御すべき素子の作動温度範囲を取得する。
【0006】
各加熱・冷却チップは、前記マザーボードにおける各温度制御すべき素子が設けられた部分と前記筐体プレートとの間にそれぞれ結合され、各加熱・冷却チップは、前記電源駆動回路に電気的に接続され、前記電源駆動回路によって逆極性の第一極性の電圧又は第二極性の電圧で駆動され、前記システムCPU制御回路は、各前記温度制御すべき素子のリアルタイム温度と作動温度範囲とを比較し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも高ければ、前記システムCPU制御回路は、前記電源駆動回路を、第一極性の電圧で前記加熱・冷却チップを駆動して前記マザーボード及びその上に設けられた前記温度制御すべき素子を降温して前記筐体プレートから放熱するように制御し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも低ければ、前記電源駆動回路を、第二極性の電圧で前記加熱・冷却チップを駆動して前記マザーボード及びその上に設けられた前記温度制御すべき素子を加熱するように制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の効果としては、温度制御すべき素子が立上げ又は稼動時にその作動温度範囲よりも低いか、又はその作動温度範囲よりも高いかに関係なく、前記システムCPU制御回路によって、電源駆動回路を、対応する加熱・冷却チップを駆動して温度の調整制御を必要とされる温度制御すべき素子を降温又は加熱するように制御することができ、それに、加熱・冷却チップが筐体プレートに面接触することで降温又は加熱の効率が向上されるため、前記温度制御すべき素子は、作動温度範囲内で良好な稼動を保つことができる。システムに商用仕様、産業用仕様の異なる温度制御すべき素子が含まれている場合、温度マージンが比較的不十分な商用仕様の温度制御すべき素子を降温又は昇温することができるため、システムで使用される商用仕様の温度制御すべき素子は、産業用仕様の温度制御すべき素子に適した高温又は低温の環境で良好に稼動でき、例えばシステム内のファン回転速度を上げるなどの他の温度制御手段を増やすことなく、システムは、継続的に動作することができる。また、本発明のインテリジェント温度制御システムは、ネットワーク通信機器の温度制御のためにファンを併用した場合、加熱・冷却チップが温度の調整制御を必要とされる温度制御すべき素子を既に降温しているため、ファンが回転速度を上げて吹き付ける必要がなく、ファンの消費電力の削減、ファンの寿命の延長、及びファンの高速運転時の騒音の回避が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の1つの好ましい実施例の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の分解された筐体の一部及びヒートシンクの斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の上記好ましい実施例の平面図である。
【
図6】
図6は、本発明の上記好ましい実施例の温度制御構造のブロック図である。
【
図7】
図7は、本発明におけるCPUチップに適用される温度制御及びバックアップ監視メカニズムのフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明における光ファイバモジュールに適用されるの温度制御及びバックアップ監視メカニズムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明をより明確に説明できるように、好ましい実施例を掲示し、図面と併せて以下に詳しく説明する。
図1~
図5を参照して、本発明の1つの好ましい実施例に係るネットワーク機器のインテリジェント温度制御システムが示されており、この好ましい実施例において、前記ネットワーク機器は、ネットワークスイッチであり、前記インテリジェント温度制御システム100は、筐体10、マザーボード20、及び、前記筐体10と前記マザーボード20との間にそれぞれ結合されたいくつかの
加熱・冷却チップ30を含む。
【0010】
前記筐体10は、矩形の箱体であるとともに筐体プレート12を有し、この好ましい実施例において、前記筐体プレート12は、金属板体であるが、他の好ましい実施例において、前記筐体プレート12は、例えば熱伝導性複合材料製の板体など、良好な熱伝導効果を備えた他の板体であってもよい。
【0011】
前記マザーボード20は、前記筐体10内に設けられ、具体的に、前記マザーボード20は、複数の銅柱21による支持を介して前記筐体プレート12上に結合されている。
図4~
図6を参照して、前記マザーボード20には、システムCPU制御回路22、電源駆動回路24、及びいくつかの温度制御すべき素子26が設けられている。前記システムCPU制御回路22は、メモリ221を含み、前記メモリ221に各型番の温度制御すべき素子26の作動温度範囲が記憶され、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24、各温度制御すべき素子26にそれぞれ電気的に接続されるとともに、各温度制御すべき素子26のリアルタイム温度及び型番の情報を受信し、前記システムCPU制御回路22は、受信した型番と前記メモリ221内の型番とを照合して、各温度制御すべき素子26の作動温度範囲を取得する。
【0012】
各加熱・冷却チップ30は、前記マザーボード20における各温度制御すべき素子26が設けられた部分と前記筐体プレート12との間にそれぞれ結合され、各加熱・冷却チップ30は、前記電源駆動回路24に電気的に接続され、前記電源駆動回路24によって逆極性の第一極性の電圧又は第二極性の電圧で駆動される。前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24により各加熱・冷却チップ30を駆動するとき、前記温度制御すべき素子26のリアルタイム温度と作動温度範囲とを比較し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも高ければ、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、第一極性の電圧で前記加熱・冷却チップ30を駆動して前記マザーボード20及びその上に設けられた温度制御すべき素子26を降温して前記筐体プレート12から放熱するように制御し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも低ければ、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、第二極性の電圧で前記加熱・冷却チップ30を駆動して前記マザーボード20及びその上に設けられた温度制御すべき素子26を加熱するように制御する。
【0013】
本発明は、上記好ましい実施例において、前記マザーボード20に温度制御すべき素子26をいくつか(2つ以上を含む)設けているが、その他に、前記マザーボード20に温度制御すべき素子26を1つだけ設けてもよい。この場合、前記マザーボード20における前記温度制御すべき素子26が設けられた部位と前記筐体プレート12との間にのみ、1つの加熱・冷却チップ30が結合され、前記加熱・冷却チップ30は、前記電源駆動回路24によって駆動されて、リアルタイム温度がその作動温度範囲を超える前記温度制御すべき素子26を降温又は加熱することで、前記温度制御すべき素子26は、前記ネットワーク機器の稼動時に、作動温度範囲内で良好な稼動を継続的に保つことができる。また、この好ましい実施例において、各加熱・冷却チップ30と前記マザーボード20との間に放熱パッド31が結合されていてもよいが、他の好ましい実施例において、前記放熱パッド31は、放熱ゲル、放熱グリースに置き換えられてもよく、そして、各加熱・冷却チップ30と前記筐体プレート12との間に上記の放熱パッド、放熱ゲル、放熱グリースが設けられていてもよい。
【0014】
図4~
図6に示す本発明の好ましい実施例を参照して、前記電源駆動回路24は、パワーMOSFET(金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)駆動回路であり、前記メモリ221は、フラッシュメモリ(Flash Memory)、読取専用メモリ(ROM)又はこれら2種類のメモリを含むメモリ構造であり、前記メモリ221内に前記ネットワーク機器のオペレーティングシステムが記憶される。前記システムCPU制御回路22は、CPUチップ26Aを更に含み、前記CPUチップ26Aは、前記マザーボード20に設けられ、この好ましい実施例における温度制御すべき素子26の一種であり、前記CPUチップ26A内には、コア温度を自己感知してその数値を内部のレジスタに格納可能なサーマルダイオードが備えられており、前記CPUチップ26Aの表面には、放熱グリース又は放熱パッドを介してヒートシンク261Aが結合されている。前記CPUチップ26Aは、前記メモリ221に電気的に接続されて、前記メモリ221に記憶されたオペレーティングシステムを実行し、上記のように、各型番の温度制御すべき素子26の作動温度範囲が前記オペレーティングシステム内に含まれているため、前記CPUチップ26Aの型番に対応する作動温度範囲も、前記オペレーティングシステム内に含まれる。
【0015】
前記マザーボード20における前記CPUチップ26Aに隣接する位置に温度監視チップ28が設けられ、前記温度監視チップ28は、前記システムCPU制御回路22に電気的に接続され、前記システムCPU制御回路22が受信する前記CPUチップ26Aのリアルタイム温度は、前記CPUチップ26Aのレジスタからのもの(コア温度)又は前記温度監視チップ28からのもの(周囲温度)であり、前記システムCPU制御回路22が受信する前記CPUチップ26Aの型番は、前記CPUチップ26A自体からのものである。前記システムCPU制御回路22は、前記CPUチップ26Aから受信した型番と前記メモリ221内のオペレーティングシステムに含まれた型番とを照合して、前記CPUチップ26Aの作動温度範囲を取得し、前記作動温度範囲は、前記CPUチップ26Aが稼動する作動仕様の温度範囲である。
【0016】
前記システムCPU制御回路22は、前記CPUチップ26Aのリアルタイム温度と作動温度範囲とを比較し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも高ければ、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、第一極性の電圧で前記加熱・冷却チップ30を駆動して前記マザーボード20及びその上に設けられた前記CPUチップ26Aを降温して前記筐体プレート12から放熱するように制御し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも低ければ、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、第二極性の電圧で前記加熱・冷却チップ30を駆動して前記マザーボード20及びその上に設けられた前記CPUチップ26Aを加熱するように制御する。こうして、前記CPUチップ26Aの稼動時のリアルタイム温度は、作動温度範囲内に保つことができるため、前記CPUチップ26Aは、良好に機能することが可能となる。
【0017】
図5、
図6を参照して、システムCPU制御回路22に異常が発生したとき、各
加熱・冷却チップ30を駆動して降温又は加熱を行わせるように前記電源駆動回路24を制御する温度制御機能が失陥してしまうことを回避するために、この好ましい実施例では、前記マザーボード20にバックアップ監視モジュール40が更に設けられ、前記バックアップ監視モジュール40は、各温度制御すべき素子26のリアルタイム温度を監視する面、及び、各
加熱・冷却チップ30を駆動するように前記電源駆動回路24を制御する面において、前記システムCPU制御回路22と同等の機能を有する。前記バックアップ監視モジュール40と前記システムCPU制御回路22との間に通信回線41が接続され、通信回線41による通信を介して、前記バックアップ監視モジュール40は、CPUチップ26Aから、例えば正常稼動、失陥又は未起動など、現在の前記システムCPU制御回路22の状態を知るようになっている。こうして、前記バックアップ監視モジュール40は、前記システムCPU制御回路22の失陥又は未起動時に起動され、前記システムCPU制御回路22に取って代わって、前記電源駆動回路24を、各
加熱・冷却チップ30を駆動するように制御することが可能となる。前記マザーボード20に警報素子29が設けられ、前記バックアップ監視モジュール40は、前記警報素子29に電気的に接続され、前記バックアップ監視モジュール40が起動して前記システムCPU制御回路22に取って代わると、前記警報素子29が音響又は音光によるシステム異常警報を発するように制御される。
【0018】
前記バックアップ監視モジュール40は、バックアップ回線42を介して前記温度監視チップ28、前記電源駆動回路24、及び前記警報素子29にそれぞれ電気的に接続されている。前記システムCPU制御回路22の失陥又は未起動時に、前記バックアップ監視モジュール40は、起動されて前記システムCPU制御回路22に取って代わって各温度制御すべき素子26のリアルタイム温度に対する監視及び前記電源駆動回路24に対する制御の機能を果たし、前記バックアップ監視モジュール40は、前記温度監視チップ28又は前記CPUチップ26AのレジスタからCPUチップ26Aのリアルタイム温度を受信し、CPUチップ26Aのリアルタイム温度とその作動温度範囲とを比較した結果、リアルタイム温度が作動温度範囲を超える場合、前記電源駆動回路24を、対応する前記CPUチップ26Aの加熱・冷却チップ30を駆動して降温又は加熱を行わせるように制御して、前記CPUチップ26Aのリアルタイム温度が作動温度範囲内に維持されるようにする。
【0019】
図7には、CPUチップ26Aに適用される温度制御及びバックアップ監視メカニズムのフローチャートが示され、
図5、
図6も併せて参照されたい。開始の際、ネットワーク機器のオペレーティングシステムの立上げ手順が完了した後、システムCPU制御回路22は、前記温度
監視チップ
28又はCPUチップ26Aの内部レジスタの温度データを読み取
ることでCPUチップ26Aのリアルタイム温度を取得し、前記システムCPU制御回路22は、CPUチップ26Aからその型番を受信し、型番でオペレーティングシステムと照合してCPUチップ26Aの作動温度範囲を取得し、CPUチップ26Aのリアルタイム温度が作動温度範囲にあるかどうかを確認し、そうであれば、CPUチップ26Aの稼動中のリアルタイム温度を継続的にモニタリングし、そうでなければ、昇温を行うかどうかを確認する。
【0020】
昇温を行うかどうかを確認する場合、もしリアルタイム温度が作動温度範囲よりも高ければ、「いいえ」として降温動作を実行し、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、前記CPUチップ26Aに対応する加熱・冷却チップ30を駆動してマザーボード20及びその上に設けられたCPUチップ26Aを降温して前記筐体プレート12から放熱するように制御し、もしリアルタイム温度が作動温度範囲よりも低ければ、「はい」として昇温動作を実行し、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、前記CPUチップ26Aに対応する加熱・冷却チップ30を駆動してマザーボード20及びその上に設けられたCPUチップ26Aを加熱するように制御し、上記降温又は加熱の過程により、前記CPUチップ26Aのリアルタイム温度が作動温度範囲内に保され、CPUチップ26Aがその作動仕様の温度範囲で稼動することを確保されるとともに、システムCPU制御回路22によってCPUチップ26Aの稼動中のリアルタイム温度が継続的にモニタリングされる。
【0021】
次に、システムCPU制御回路22が正常に稼動しているかどうかを判断し、そうであれば、CPUチップ26Aのリアルタイム温度が作動温度範囲にあるかどうかを確認するステップに戻り、そうでなければ、バックアップ監視モジュール40が起動されて、システムCPU制御回路22に異常が発生した時に、前記システムCPU制御回路22に取って代わって、CPUチップ26Aのリアルタイム温度が作動温度範囲にあるかどうかを確認するステップ及びその後の昇温を行うかどうかを確認するステップを実行し、CPUチップ26Aの稼動中のリアルタイム温度を継続的にモニタリングし、前記警報素子29を、システム異常警告メッセージを発するように制御する。
【0022】
図2~
図3及び
図5、
図6に示す本発明の好ましい実施例を参照して、前記マザーボード20に光ファイバモジュールのスロットコネクタ23がいくつか設けられ、各スロットコネクタ23は、I2C(インター・インテグレイテッド回路)インターフェースを介して前記システムCPU制御回路22に電気的に接続され、これらのスロットコネクタ23に合わせて1つ以上の光ファイバモジュール26Bが設けられ、前記光ファイバモジュール26Bは、この好ましい実施例における温度制御すべき素子26の一種であり、前記光ファイバモジュール26Bは、デジタル診断モニタ(DDM、Digital Optical Monitoring)機能を備え、現在のリアルタイム温度を自己感知可能であり、何れか1つのスロットコネクタ23に1つの光ファイバモジュール26Bが差し込まれることで、前記光ファイバモジュール26Bと前記スロットコネクタ23とが接続された後、前記システムCPU制御回路22は、I2Cインターフェースを介して前記光ファイバモジュール26Bからリアルタイム温度及び前記光ファイバモジュール26Bの型番を受信し、前記型番と前記メモリ221内のオペレーティングシステムに含まれた型番とを照合して、前記光ファイバモジュール26Bの作動温度範囲を取得する。
【0023】
前記システムCPU制御回路22は、前記光ファイバモジュール26Bのリアルタイム温度と作動温度範囲とを比較し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも高ければ、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、第一極性の電圧で前記加熱・冷却チップ30を駆動して前記マザーボード20及びその上に設けられた前記光ファイバモジュール26Bを降温して前記筐体プレート12から放熱するように制御し、もしリアルタイム温度が前記作動温度範囲よりも低ければ、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、第二極性の電圧で前記加熱・冷却チップ30を駆動して前記マザーボード20及びその上に設けられた前記光ファイバモジュール26Bを加熱するように制御する。こうして、前記光ファイバモジュール26Bの稼動時のリアルタイム温度は、作動温度範囲内に保つことができるため、前記CPUチップ26Aは、良好に機能することが可能となる。
【0024】
図5、
図6を参照して、上記の光ファイバモジュール26Bは、前記マザーボード20上のスロットコネクタ23、バックアップ回線42を介して前記バックアップ監視モジュール40に電気的に接続されている。同様に、前記システムCPU制御回路22の失陥又は未起動時に、前記バックアップ監視モジュール40が起動されて前記システムCPU制御回路22に取って代わって前記電源駆動回路24を、各
加熱・冷却チップ30を駆動するように制御する場合、前記バックアップ監視モジュール40は、前記警報素子29を、音響又は音光によるシステム異常警報を発するように制御する他に、前記システムCPU制御回路22の制御機能の代わりに、前記光ファイバモジュール26Bから前記光ファイバモジュールの稼動中のリアルタイム温度を受信し、光ファイバモジュール26Bのリアルタイム温度とその作動温度範囲を比較した結果、リアルタイム温度が作動温度範囲を超えれば、前記電源駆動回路24を、前記CPUチップ26Aに対応する
加熱・冷却チップ30を駆動して降温又は加熱を行わせるように制御して、前記光ファイバモジュール26Bのリアルタイム温度が作動温度範囲内に維持されるようにする。
【0025】
上記システムCPU制御回路22に異常が発生すると、前記CPUチップ26Aが実行するオペレーティングシステムは、光ファイバモジュール26Bの追加ができなくなる。この場合、前記バックアップ監視モジュール40は、既存の光ファイバモジュール26Bのみの監視を担当し、各光ファイバモジュール26Bのリアルタイム温度と作動温度範囲との比較結果に応じて、前記電源駆動回路24を、対応する各加熱・冷却チップ30を駆動して各光ファイバモジュール26Bを降温又は加熱するように制御し、前記バックアップ監視モジュール40は、温度監視及び制御機能のみを有し、前記システムCPU制御回路22に取って代わって温度監視制御以外の他の機能を実行することができない。
【0026】
図8に示す光ファイバモジュール26Bに適用される温度制御及びバックアップ監視メカニズムのフローチャートを
図5、
図6と併せて参照されたい。開始の際、オペレーティングシステムは、システムCPU制御回路22によって光ファイバモジュール26Bの差込が検知されたかどうかを判断し、そうでなければ、検知を継続させ、そうであれば、光ファイバモジュール26Bの型番及びリアルタイム温度を読み取って受信し、前記システムCPU制御回路22は、型番でオペレーティングシステムと照合して光ファイバモジュール26Bの作動温度範囲を取得し、光ファイバモジュール26Bのリアルタイム温度が作動温度範囲にあるかどうかを確認し、そうであれば、光ファイバモジュール26Bの稼動中のリアルタイム温度を継続的にモニタリングし、そうでなければ、昇温を行うかどうかを確認する。
【0027】
昇温を行うかどうかを確認する場合、もしリアルタイム温度が作動温度範囲よりも高ければ、「いいえ」として降温動作を実行し、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、前記CPUチップ26Aに対応する加熱・冷却チップ30を駆動してマザーボード20及びその上に設けられた光ファイバモジュール26Bを降温して前記筐体プレート12から放熱するように制御し、もしリアルタイム温度が作動温度範囲よりも低ければ、「はい」として昇温動作を実行し、前記システムCPU制御回路22は、前記電源駆動回路24を、前記光ファイバモジュール26Bに対応する加熱・冷却チップ30を駆動してマザーボード20及びその上に設けられた光ファイバモジュール26Bを加熱するように制御し、上記降温又は加熱の過程により、前記光ファイバモジュール26Bのリアルタイム温度が作動温度範囲内に保され、光ファイバモジュール26Bがその作動仕様の温度範囲で稼動することを確保されるとともに、システムCPU制御回路22によって光ファイバモジュール26Bの稼動中のリアルタイム温度が継続的にモニタリングされる。
【0028】
次に、システムCPU制御回路22が正常に稼動しているかどうかを判断し、そうであれば、光ファイバモジュール26Bのリアルタイム温度が作動温度範囲にあるかどうかを確認するステップに戻り、そうでなければ、バックアップ監視モジュール40が起動されて、システムCPU制御回路22に異常が発生した時に、前記システムCPU制御回路22に取って代わって、光ファイバモジュール26Bのリアルタイム温度が作動温度範囲にあるかどうかを確認するステップ及びその後の昇温を行うかどうかを確認するステップを実行し、光ファイバモジュール26Bの稼動中のリアルタイム温度を継続的にモニタリングし、前記警報素子29を、システム異常警告メッセージを発するように制御する。
【0029】
上述したのは、本発明の好ましい可能な実施例に過ぎず、本発明の明細書及び特許請求の範囲を利用してなされた同等バリエーションは、何れも本発明の特許範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0030】
[本発明]
100:インテリジェント温度制御システム
10:筐体
12:筐体プレート
20:マザーボード
21:銅柱
22:システムCPU制御回路
221:メモリ
23:スロットコネクタ
24:電源駆動回路
26:温度制御すべき素子
26A:CPUチップ
261A:ヒートシンク
26B:光ファイバモジュール
28:温度監視チップ
29:警報素子
30:加熱・冷却チップ
31:放熱パッド
40:バックアップ監視モジュール
41:通信回線
42:バックアップ回線