(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】血液ポンプシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 60/174 20210101AFI20240924BHJP
A61M 60/237 20210101ALI20240924BHJP
A61M 60/414 20210101ALI20240924BHJP
A61M 60/416 20210101ALI20240924BHJP
A61M 60/554 20210101ALI20240924BHJP
【FI】
A61M60/174
A61M60/237
A61M60/414
A61M60/416
A61M60/554
(21)【出願番号】P 2023010875
(22)【出願日】2023-01-27
(62)【分割の表示】P 2021121203の分割
【原出願日】2017-02-10
【審査請求日】2023-02-22
(32)【優先日】2016-02-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507116684
【氏名又は名称】アビオメド オイローパ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジース トルステン
(72)【発明者】
【氏名】キルヒホフ フランク
(72)【発明者】
【氏名】ニックス クリストフ
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-508161(JP,A)
【文献】特表2015-514529(JP,A)
【文献】特表2007-501644(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0022890(US,A1)
【文献】特表2000-511455(JP,A)
【文献】米国特許第06162182(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0187322(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 60/174
A61M 60/237
A61M 60/414
A61M 60/416
A61M 60/554
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液ポンプシステムであって、血液ポンプ(50)と、前記血液ポンプと流動連通しており、おおよその長手方向軸(1)、ならびに前記血液ポンプから遠位の遠位端部分(EP)および前記血液ポンプに近い近位端部分を有する、血管内流動カニューレ(53)と、を含み、前記血管内流動カニューレ(53)は、血液を前記血管内流動カニューレ(53)に入れるか、またはそこから出すために、その遠位端部分(EP)に少なくとも1つの血流貫通開口部(54;54A~54D)を有し、
前記血管内流動カニューレ(53)が心臓壁に吸引されていることを示すインジケータとして圧力センサ(30;30’;30”、30’’’)が
機能するのに適するように、前記圧力センサ(30;30’;30”、30’’’)が前記血管内流動カニューレ
の内
側に配置さ
れ、前記圧力センサは、前記血管内流動カニューレの長手方向軸(1)に対して、前記少なくとも1つの血流貫通開口部(54;54A~54D)であって、前記血管内流動カニューレ(53)における前記遠位端部分(EP)にある血流貫通開口部(54;54A~54D)の高さ(A)に配置されているか、または前記少なくとも1つの血流貫通開口部(54;54A~54D)であって、前記血管内流動カニューレ(53)における前記遠位端部分(EP)にある血流貫通開口部(54;54A~54D)の前記高さ(A)に境界を画すことを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の血液ポンプシステムであって、前記少なくとも1つの血流貫通開口部のそれぞれは、前記血流貫通開口部を囲む境界線を有し、前記境界線は、近位部分(57)を有し、前記圧力センサ(30;30’、30”;30’’’)は、前記血管内流動カニューレの長手方向軸(1)に対して、前記境界線の前記近位部分(57)の高さに配置されていることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の血液ポンプシステムであって、前記圧力センサ(30;30’;30”;30’’’)は、前記境界線の前記近位部分(57)に境界を画すことを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の血液ポンプシステムであって、フレーム構造体が、前記少なくとも1つの血流貫通開口部(54;54A~54D)の領域に設けられ、前記圧力センサ(30;30’;30”;30’’’)は、前記フレーム構造体に配置されていることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項5】
請求項4に記載の血液ポンプシステムであって、前記フレーム構造体が拡張可能であることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の血液ポンプシステムであって、前記フレーム構造体が複数の支柱(58)を含むことを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の血液ポンプシステムであって、前記圧力センサ(30)は、前記血管内流動カニューレの長手方向軸(1)に対して、前記フレーム構造体の半径方向内側に配置されていることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の血液ポンプシステムであって、前記血管内流動カニューレ(53)は、その遠位端部分(EP)に、拡大した断面を備えたセクションを有し、前記少なくとも1つの血流貫通開口部(54;54A~54D)は、前記拡大した断面を備えたセクション内に配置されていることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項9】
請求項8に記載の血液ポンプシステムであって、前記拡大した断面を備えたセクションは、遠位から近位へ漏斗状になる漏斗構造体(56)を含み、前記圧力センサ(30)は、前記漏斗構造体の遠位端部に配置されていることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項10】
請求項4から7のいずれか1項に記載の血液ポンプシステムであって、前記血管内流動カニューレ(53)は、その遠位端部分(EP)に、拡大した断面を備えたセクションを有し、前記少なくとも1つの血流貫通開口部(54;54A~54D)は、前記拡大した断面を備えたセクション内に配置されており、
前記拡大した断面を備えたセクションは、遠位から近位へ漏斗状になる漏斗構造体(56)を含み、前記圧力センサ(30)は、前記漏斗構造体の遠位端部に配置されており、
前記フレーム構造体を囲む前記漏斗構造体(56)は、可撓性材料で作られることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項11】
請求項10に記載の血液ポンプシステムであって、前記可撓性材料は、薄いフィルムであることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項12】
請求項11に記載の血液ポンプシステムであって、前記薄いフィルムは、薄いポリマーフィルムであることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項13】
請求項6に記載の血液ポンプシステムであって、前記支柱(58)は軸方向に延びて主要支柱を形成し、前記主要支柱と前記主要支柱の間に相互接続する支柱が設けられ、前記少なくとも1つの血流貫通開口部(54;54A~54D)をより小さい開口部(54A’~54A’’’)へとさらに分割する構造をもたらすことを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項14】
請求項13に記載の血液ポンプシステムであって、前記圧力センサ(30)は、前記相互接続する支柱(58)の接合部において、前記相互接続する支柱(58)の半径方向内側に配置されることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項15】
請求項13または14に記載の血液ポンプシステムであって、前記相互接続する支柱(58)は、第1の相互接続する支柱であって、前記フレーム構造体は、前記第1の相互接続する支柱と同一の相互接続する支柱組立体を形成する第2の相互接続する支柱をさらに含むことを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項16】
請求項15に記載の血液ポンプシステムであって、前記第2の相互接続する支柱の前記相互接続する支柱組立体は、前記第1の相互接続する支柱の前記相互接続する支柱組立体との関係において、前記おおよその長手方向軸(1)に垂直な面に対し対称であることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項17】
請求項6に記載の血液ポンプシステムであって、前記支柱(58)は、軸方向に延びるか、らせん状に延びるか、お互いに交差するか、相互接続部を有するか、またはそれらの組み合わせであることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項18】
請求項6および13~17のいずれか1項に記載の血液ポンプシステムであって、前記支柱(58)は、形状記憶合金、または形状記憶ポリマーから作られることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項19】
請求項18に記載の血液ポンプシステムであって、前記形状記憶合金は、ニチノールであることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の血液ポンプシステムであって、前記血液ポンプ(50)の外側に配置された圧力センサ(60)を含み、前記血液ポンプシステムは、前記血管内流動カニューレ(53)内部に配置された前記圧力センサ(30;30’;30”;30’’’)によって提供される第1の圧力値と、前記血液ポンプ(50)の外側に配置された前記圧力センサ(60)によって提供される第2の圧力値とから差圧を決定するように構成されていることを特徴とする、血液ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液ポンプと、この血液ポンプと流動連通しており、血管から血液ポンプに向かって血液を導く血管内流動カニューレと、を含む血液ポンプシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
さらに具体的には、血液ポンプは、場合によって、左心室もしくは右心室または大動脈もしくは任意の他の血管などの血管の内側に置かれ得る、血管内回転血液ポンプである。血液ポンプは、モータによって駆動され、モータは、患者の身体の外側にあってもよいし、または、ポンプと共に血管の内側に置かれてもよい。前者の場合、ポンプは、可撓性の駆動ケーブルによって外部モータに接続されるが、後者の場合、ポンプおよびモータは、組み合わせられて、一体的なポンプ装置を形成し、好ましくはカテーテルを通じて患者の身体の外側からエネルギーを受け取る。後者の構造は、本発明の血液ポンプシステムにとっては好適な構造であるが、本発明はこれに制限されるものではない。
【0003】
このような血液ポンプシステムが一時的な心臓支援のために使用される場合、これらは、例えば大腿動脈内へと経皮的に導入され、身体の血管系を通じて導かれて、例えば、心臓のポンプ作用を支援するか、またはこれにとって代わる。手術中、流動カニューレは、心臓弁開口部を通って突出し、血液がポンプによって心臓弁を通って供給されるのを可能にする。さらに、血液ポンプシステムは、血液ポンプのハウジングの外側に、また、流動カニューレの外側に、圧力センサを備えて、入口圧力および出口圧力を確立する。入口圧力および出口圧力に関するデータは、血液ポンプシステムの電気モータの電力消費量と共に、血液ポンプシステムの機能および送達速度について1組の関連情報を形成する。さらに、測定された圧力により、血管系での血液ポンプの位置付けに関して推論を引き出すことができる。さらに、モータの現在の電力消費量と差圧との比較により、局所状態ならびに空洞化および吸引を確かめることができる。
【0004】
特許文献1は、2つまたは3つ以上の圧力センサを備えた血液ポンプシステムを提供することを提案している。例えば、圧力センサは、血液ポンプの近位端部においてかつ/または流動カニューレの遠位端部において、血液ポンプシステムの外側に設けられ得る。いつ流動カニューレが心腔壁に接して吸引されているかを決定するために、追加の圧力センサが、流動カニューレ内部に設けられ得る。特許文献1では、流動カニューレの内側の圧力センサに加えて、流動カニューレの外側で、開口部を通るその血流の近くに、そこでの生理学的血圧を測定するために圧力センサを有することも重要であり、特に、患者の心室内の生理学的圧力を測定するための、流動カニューレ上での外部圧力センサの優先的な配置に取り組むことが、強調されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、圧力センサの配置の点において既知の血液ポンプシステムをさらに改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明の血液ポンプシステムは、血液ポンプと、この血液ポンプと流動連通している血管内流動カニューレと、を含み、血流貫通開口部の領域内において、流動カニューレの内側で流動カニューレの遠位端部分に配置されるか、または血流貫通開口部の領域に境界を画す、圧力センサを有する。流動カニューレの遠位端部分は、血液ポンプからさらに離れた、すなわち遠位にある、端部分であり、流動カニューレの遠位端部における血流貫通開口部は、血液が、ポンプに向かう途中で流動カニューレに入るか、または、ポンプが逆方向に駆動される場合は、流動カニューレから出る目的に役立つ。
【0008】
圧力センサが流動カニューレ内部に配置されることが重要である。このように、流動カニューレが心腔壁に接して吸引されているか、または流動カニューレが別様に動かされる場合に、圧力センサを、心腔壁によって覆うか、または任意の他の方法で妨げることができない。したがって、圧力がほぼゼロであるか、または心拍の律動的な圧力差が急速に減少するという、圧力センサによる表示は、流動カニューレが、例えば、心腔壁に接して吸引されているという明白な信号である。言い換えれば、流動カニューレの内側に配置された圧力センサは、特に壁吸引インジケータとして役立つように使用され得る。
【0009】
しかしながら、流動カニューレの血流貫通開口部の領域内における、または血流貫通開口部の領域に境界を画す、その具体的な配置により、血流貫通開口部の領域における血圧が流動カニューレの外側の血圧と実質的に一致しているので、場合によっては、同じ圧力センサを、第2の目的に役立つように、すなわち、心臓の左または右心室の内側の圧力など、流動カニューレ外部の圧力を測定するかまたは少なくともおおよそ測定するのに、使用することができる。したがって、圧力センサの提案される特別な場所により、流動カニューレの外側に別個の外部圧力センサなしで済ませることが可能となる。特に、本発明の好適な実施形態によると、血液ポンプシステムは、流動カニューレの遠位端部分内部に配置された圧力センサによって提供される第1の圧力値と、血液ポンプの外側、例えば、血液ポンプハウジング上に配置された第2の圧力センサによって提供される第2の圧力値との差圧を決定するように構成され得る。
【0010】
以下では、本発明は、添付図面を参照して、例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】血液ポンプと、大動脈を通って置かれ、大動脈弁を通って左心室(16)内へ延びる流動カニューレと、を備えた血液ポンプシステムの図である。
【
図2A】圧力センサを流動カニューレ内部に置くためのオプションを示す図である。
【
図2B】圧力センサを流動カニューレ内部に置くためのオプションを示す図である。
【
図2C】圧力センサを流動カニューレ内部に置くためのオプションを示す図である。
【
図2D】圧力センサを流動カニューレ内部に置くためのオプションを示す図である。
【
図3a】流動カニューレの流入ケージを画定するフレーム構造体の変形体の図である。
【
図3b】流動カニューレの流入ケージを画定するフレーム構造体の変形体の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、カテーテル10を有する血液ポンプシステムを示し、カテーテル10は、この実施例では、下行大動脈11内に逆向きに導入される。下行大動脈11は、最初に心臓から上行し次に下行しており、大動脈弓14を有する、大動脈12の一部である。大動脈12の始めには、大動脈弁15が位置しており、大動脈弁15は、左心室16を大動脈12に接続し、大動脈弁15まで、血管内血液ポンプシステムが延びる。血液ポンプシステムは、カテーテル10に加えて、回転ポンプ50を含み、回転ポンプ50は、カテーテルホース20の遠位端部に留められ、モータセクション51、およびモータセクション51から軸方向距離のところに配されたポンプセクション52、ならびにポンプセクション52の流入端部から遠位方向に突出する流動カニューレ53を有する。流動カニューレ53は、吸引入口、またはポンプ50が逆方向に駆動される場合は血流出口を形成する、その遠位端部分EPにある血流貫通開口部54を有する。貫通開口部54の遠位には、柔らかい可撓性の先端部55が設けられ、これは、例えば「ピグテール」として、またはJ字型に構成され得る。カテーテルホース20を通って、ポンプ装置50を動作させるのに重要である、種々の線材および装置が延びている。これらのうち、
図1は、近位端部が評価装置100に取り付けられた2つの光ファイバ28A、28Bを示すのみである。これらの光ファイバ28A、28Bはそれぞれ光圧力センサの一部であり、そのセンサヘッド30および60は、一方ではポンプセクション52のハウジングの外側に位置し、他方では流動カニューレ53の遠位端部分EPの内側に位置する。センサヘッド30および60によって伝達された圧力は、評価装置100において電気信号へと変換され、例えばディスプレイスクリーン101上に表示される。
【0013】
既に述べたように、本発明は、一体型のモータセクション51を備えた回転ポンプに制限されない。代わりに、ポンプを駆動するためのモータが、患者の外側に設けられてよく、可撓性の駆動ケーブルが、ポンプを外部モータと接続することができる。
【0014】
センサヘッド60による大動脈圧の測定およびセンサヘッド30による心室圧の測定の両方が、実際の圧力信号に加え、例えば、心臓の回復が測定される収縮性の測定、ならびにポンプ装置50の流れを算出するのに使用される圧力差の確立を可能にする。電気光学的圧力測定ならびに光ファイバの構造および配置の原理は、特許文献1でより詳細に説明されており、それぞれの開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、以下で説明するように、圧力センサ30が流動カニューレの外面上ではなく、流動カニューレ53の内側の特定の位置に置かれる点でのみ、この開示と異なっている。
【0015】
図2Aは、流動カニューレ53の遠位端部分EPを好適な実施形態に従ってより詳細に示す。端部分EPは、そのおおよその長手方向軸1に対して、血液が流動カニューレ53に入るか、または場合によっては流動カニューレ53から出るための半径方向血流貫通開口部54を含む。血流貫通開口部54の領域では、複数の支柱58を含むフレーム構造体が、2つの目的に役立つケージを形成するように設けられる。第一に、支柱58は、流動カニューレ53の流動伝導部を柔らかい可撓性の先端部55と接続する。第二に、ケージを形成するフレーム構造体は、心腔壁が流動カニューレ53に吸い込まれて流動カニューレ53を妨げるのを防ぐ。したがって、支柱58は、概して軸方向に延び得るが、これらは、同じようにらせん状に延び、互いに交差し、かつ/または相互接続部を有することができる。
図2Bに示すように、支柱58は、血流貫通開口部54を別々の血流開口部54A~54Dに分割する。血流貫通開口部54Aおよび54Dの領域における破線は、血流入口54の領域Aにおける流動カニューレ53の外側限界を示す。
【0016】
図2Cは、端部分EPを通る断面図である。破線で囲まれた領域Aは、流動カニューレの長手方向軸1に対する、血流貫通開口部54または血流貫通開口部54A~54Dそれぞれの高さを示す。これは、圧力センサ30が流動カニューレの内側に位置付けられ得る領域である。例えば、圧力センサは、
図2Cに示すように位置Xに置かれ、単に概略的に示された圧力センサ30’によって例示され得る。いずれの場合も、圧力センサ30’の感圧面32は、国際公開第2013/160407A1号でさらに詳細に説明される理由から、すなわち測定精度を高めて最大250Hzの高周波の生理学的信号が信号データから得られるように、長手方向軸1に垂直に向けなければならない。
【0017】
これは、血流貫通開口部54の領域Aのどこかに圧力センサ30を置くよりも、領域高さAに境界を画すことができる。好ましくは、圧力センサは、圧力センサ30”および30’’’によって
図2Cに例示されるように、その近位境界に位置付けられる。ここでも、位置YおよびZに位置する圧力センサ30”および30’’’は、単に概略的に示されており、それらの感圧面32は、同じように、長手方向軸1に垂直に向けられている。すなわち、血流貫通開口部54または少なくとも1つの血流貫通開口部54A~54Dのそれぞれは、貫通開口部54または54A~54Dをそれぞれ囲む境界線を有し、前記境界線は、近位部分を有し、この近位部分は、
図2に示す実施形態では、流動カニューレ53の一部を形成する、漏斗構造体56の端面57によって形成されている。漏斗構造体は、薄いフィルム、特に薄いポリマーフィルムから形成され得る。圧力センサ30を、圧力センサ30”および30’’’によって
図2Cに示すように、厳密には貫通開口部54または貫通開口部54A~54Dを囲む境界線の近位部分57の高さに、好ましくはその感圧面と共に、配置することが好ましい。これによって、通常のポンプ動作中、心室腔内部の全体的な圧力を、ポンプ流量への干渉を最小限か皆無にして、感知することができる。さらに、吸引が存在する場合、この好適な位置におけるセンサは、入口における局所的な現象である、吸引による陰圧を検出することもできる。さらに好ましくは、圧力センサは、フレーム構造体に、例えば、支柱58に配置され、好ましくは固定される。位置は、
図2Cで圧力センサ30”によって示されるように支柱58から接線方向であるか、または、さらに好ましくは、
図2Cで圧力センサ30’’’によって示されるようにフレーム構造体の半径方向内側にあってよい。
【0018】
図2Dは、圧力センサ30が、
図2Cの圧力センサ30’’’の位置Zに対応して、どのようにして流動カニューレ53の内側に置かれ得るかについての、具体的な実施例を示す。したがって、圧力センサ30の感圧面32は、厳密には貫通開口部54を囲む境界線の近位部分57において、血流貫通開口部54の高さに境界を画し、近位部分57は、端部分EPのフレーム構造体を囲む漏斗構造体56の端面によって画定される。図に見られるように、光ファイバ28A、または複数のファイバが、別個の内腔27内部で保護され、内腔27内部で、ファイバは自由に動くことができる。内腔27は、ポリマー、特にポリウレタンからなるか、または好ましくはニチノールもしくは別の形状記憶合金からなってよく、可撓性の流動カニューレ53の外部に沿って置かれている。内腔27は、漏斗構造体56を通って流動カニューレ53に入り、圧力センサ30を備えた光ファイバ28Aの遠位端部は、支柱58の半径方向内側で固定される。
【0019】
本発明は、流動カニューレ53の残部と比べて拡大された断面を有する端部分EPに関して説明してきたが、本発明はこの点で制限されるものではない。しかしながら、拡大された断面、特に遠位から近位に漏斗状になる漏斗形状の構造体56は、流動カニューレの軸1に沿った血流の圧力低下が、流動カニューレ53の非漏斗状の残部内側での圧力低下と比べて、漏斗形状内部では急速でないので有利である。したがって、厳密には貫通開口部を囲む境界線の近位部分57に圧力センサ30を正確に置くことは、漏斗状の流動カニューレではそれほど重要ではなく、流動カニューレ53の内側で軸方向に最小に離れて圧力センサ30を置き違えることは、非漏斗状の構造体と比べて影響が少ない。フレーム構造体の少なくとも支柱58は、ニチノールなどの形状記憶合金、または形状記憶ポリマーから作られ、フレーム構造体を囲む漏斗構造体56は、患者の血管系を通じて流動カニューレ53を挿入した際に、フレーム構造体が漏斗構造体56と共に、流動カニューレ53の残部と実質的に同じ直径を有するように、可撓性材料で作られる。拡大した断面を有する拡張構成を、フレーム構造体が体温に到達する、装置の設置後にとる。
【0020】
図3aおよび
図3bは、流入ケージを画定する拡張可能なフレーム構造体の代替的な変形体を示す。
図3aでは、相互接続する支柱58が、主要支柱間に設けられて、入口/出口開口部54A~54Dを、より小さい開口部54A’~54A’’’へとさらに分割する構造を提供している。これによって、弁(僧帽弁:小葉、腱(cordae)、乳頭構造)の器官のような可撓性の高い構造の摂取を防ぐことができる。ここでは、
図3aにおいてZZで示される好適なセンサ位置は、相互接続する支柱58’と漏斗構造体56の端面57、例えば、薄いポリマーフィルムの縁との接合部における、相互接続する支柱組立体58’の半径方向内側である
【0021】
図3bでは、同じ相互接続する支柱組立体58’が存在し、加えて、これは、可撓性の漏斗構造体56の側に、同じように設けられている、例えば、鏡のように反映されている(58”)。これによって、漏斗構造体56の局所的な内向きの屈曲を防ぐことができるが、このような屈曲は、他の状況では、流れが入口に入った場合に局所的な圧力低下により通常の流動状態中に、または本当の(sincere)陰圧が存在し得る場合の、吸引事象中に起こり得る。漏斗構造体56の流入端面57は、漏斗構造体の厚みを局所的に増大させることによって、構造的にさらに改善され得る。半径方向により剛性の高い漏斗構造体56は、吸引事象後に心臓構造から解放するためには、特に有利である。