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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電動弁および冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   F16K 47/02 20060101AFI20240924BHJP
   F25B 41/35 20210101ALI20240924BHJP
   F25B 41/40 20210101ALI20240924BHJP
   F16K 31/04 20060101ALN20240924BHJP
【FI】
F16K47/02 D
F25B41/35
F25B41/40 A
F16K31/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023035325
(22)【出願日】2023-03-08
(62)【分割の表示】P 2021137168の分割
【原出願日】2018-04-23
(65)【公開番号】P2023078225
(43)【公開日】2023-06-06
【審査請求日】2023-03-24
(31)【優先権主張番号】P 2017117589
(32)【優先日】2017-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 一也
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓也
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-275452(JP,A)
【文献】特開2007-107847(JP,A)
【文献】特開2007-162851(JP,A)
【文献】特開2017-089864(JP,A)
【文献】特開2017-115989(JP,A)
【文献】特開2017-210974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 47/00-47/16
F25B 41/35
F25B 41/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体の側面に装着された第1管継手と、
前記弁本体の一部として、または前記弁本体とは別個の部品として設けられ、弁ポートが形成された弁座部材と、
前記弁ポートを介して前記第1管継手と連通する第2管継手とを備え、
前記弁ポートは、最も前記弁体側に位置する第1ポートと、前記第1ポートから前記第2管継手に向かって連接され内周径を広げた第1テーパー部と、前記第1テーパー部の前記第2管継手側に連接された第2ポートと、
前記第2ポートから前記第2管継手に向かって連接され内周径を広げた第2テーパー部と、前記第2テーパー部の前記第2管継手側に連接された第3ポートとを含み、
前記第3ポートの前記第2管継手側には、軸方向に貫通する貫通穴を有し流体の整流を行う整流部が連接され、
前記整流部の軸方向の長さは、前記第ポートの軸方向の長さよりも長いことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体の側面に装着された第1管継手と、
前記弁本体の一部として、または前記弁本体とは別個の部品として設けられ、弁ポートと、前記弁ポートの径方向外側に位置し前記ロータの側に延在する円筒状の溝とが形成された弁座部材と、
前記弁ポートを介して前記第1管継手と連通する第2管継手とを備え、
前記弁ポートは、最も前記弁体側に位置する第1ポートと、前記第1ポートから前記第2管継手に向かって連接され内周径を広げた第1テーパー部と、前記第1テーパー部の前記第2管継手側に連接された第2ポートと、
前記第2ポートから前記第2管継手に向かって連接され内周径を広げた第2テーパー部と、前記第2テーパー部の前記第2管継手側に連接された第3ポートとを含み、
軸方向に貫通する貫通穴を有し流体の整流を行う整流部が前記弁座部材と前記第2管継手との間に挟持されて固定され、かつ前記整流部の側壁が前記溝に挿入され、
前記整流部の軸方向の長さは、前記第1ポートの軸方向の長さよりも長いことを特徴とする電動弁。
【請求項3】
前記整流部を通過する流路の面積は、前記第1ポートの内周径の面積よりも大きく、前記第3ポートの内周径の面積よりも小さいことを特徴とする請求項1または2記載の電動弁。
【請求項4】
前記弁ポートは、さらに前記第3ポートから前記第2管継手に向けてテーパー部とポートを連続して増加させながら内周径を広げ、第nテーパー部と、前記第nテーパー部の前記第2管継手側に形成された第n+1ポートを含み、
前記nの値は10以下であることを特徴とする請求項2記載の電動弁。
【請求項5】
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1~4の何れか一項に記載の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷凍サイクルにおいて、流体の流量を制御する電動弁から発生する、流体通過に伴う騒音が問題となることがある。このような騒音を抑制した電動弁として、図15、16に示すように、オリフィスである第1ポート120aの下方に長い第2ポート120cを整流部分として備えた弁ポート120を有する構造の電動弁100が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
この電動弁100において、図16に示すように、弁体114と第1ポート120aとの隙間で絞られた流体は、テーパー部120bに倣って第2ポート120cに沿う形で流れ、第2ポート120cで整流化される。また、長い第2ポート120cを備えることより、流体の圧力が急回復することなく、キャビテーションの破裂が抑制されるため、流体の通過音が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-234726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の電動弁100においては、流体を第1管継手111から第2管継手112の方向(以下、正方向という。)に流した場合の流体の通過音は改善されているが、流体を第2管継手112から第1管継手111の方向(以下、逆方向という。)に流した場合には効果が生じない場合があった。
【0006】
具体的には、図16において、流体を逆方向に流した場合、流体の流速が減速せずに第1ポート120aに到達するため、第1ポート120aにおける流体の流速は、流体を正方向に流した場合の流速よりも大きくなる。そして、流体の圧力は、第1ポート120aで絞られた後に急激に回復するため、キャビテーションの破裂が顕著に現れ、流体の通過音が大きくなってしまう。
【0007】
このため、従来は、流体の通過音を抑制するために流体の流し方向を正方向に限定するなどの処置がなされていたが、近年は、電動弁の使用方法が多様化しているため、流体を逆方向に流しても支障なく使用できることが期待されている。
【0008】
本発明の目的は、いずれの方向に流体を流しても流体の通過音を低減することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電動弁は、
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体の側面に装着された第1管継手と、
前記弁本体の一部として、または前記弁本体とは別個の部品として設けられ、弁ポートが形成された弁座部材と、
前記弁ポートを介して前記第1管継手と連通する第2管継手とを備え、
前記弁ポートは、最も前記弁体側に位置する第1ポートと、前記第1ポートから前記第2管継手に向かっ連接され内周径を広げた第1テーパー部と、前記第1テーパー部の前記第2管継手側に連接された第2ポートと
前記第2ポートから前記第2管継手に向かって連接され内周径を広げた第2テーパー部と、前記第2テーパー部の前記第2管継手側に連接された第3ポートとを含み、
前記第3ポートの前記第2管継手側には、軸方向に貫通する貫通穴を有し流体の整流を行う整流部が連接され、
前記整流部の軸方向の長さは、前記第1ポートの軸方向の長さよりも長いことを特徴とする。
【0010】
このように、弁ポート内に第1テーパー部と第2ポートを設けることにより、流体を正方向に流した場合において、第1ポートで絞られた流れが整流化され、圧力の急激な回復を防止することができるため、キャビテーションの破裂を抑制することができる。また、第2管継手の内部に略円筒状の整流部を配置することにより、流体を逆方向に流した場合において、流体を直接第1ポートに当てないようにすることで、弁振動、キャビテーションの破裂などの音の発生を抑制することができる。
【0011】
したがって、正方向、逆方向のいずれの方向に流体を流しても流体の通過音を低減することができる。
【0017】
また、整流部が一定以上の長さを有することにより、的確に流体の整流化を行うことができる。
【0018】
また、弁ポートにさらにテーパーとポートを備えることにより、さらに的確に流体の通過音を抑制することができる。また、流体を逆方向に流した場合においてもまた、整流部を通過した流体が一旦ポートで減速されるため、的確に流体の通過音を低減することができる。
【0019】
また、本発明の電動弁は、
ケースの内周に収容されたロータの回転運動を、雄ネジ部材と雌ネジ部材とのネジ螺合により直線運動に変換し、この直線運動に基づいて弁本体内に収容された弁体を軸方向に移動させる電動弁であって、
前記弁本体の側面に装着された第1管継手と、
前記弁本体の一部として、または前記弁本体とは別個の部品として設けられ、弁ポートと、前記弁ポートの径方向外側に位置し前記ロータの側に延在する円筒状の溝とが形成された弁座部材と、
前記弁ポートを介して前記第1管継手と連通する第2管継手とを備え、
前記弁ポートは、最も前記弁体側に位置する第1ポートと、前記第1ポートから前記第2管継手に向かって連接され内周径を広げた第1テーパー部と、前記第1テーパー部の前記第2管継手側に連接された第2ポートと、
前記第2ポートから前記第2管継手に向かって連接され内周径を広げた第2テーパー部と、前記第2テーパー部の前記第2管継手側に連接された第3ポートとを含み、
軸方向に貫通する貫通穴を有し流体の整流を行う整流部が前記弁座部材と前記第2管継手との間に挟持されて固定され、かつ前記整流部の側壁が前記溝に挿入され、
前記整流部の軸方向の長さは、前記第1ポートの軸方向の長さよりも長いことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の電動弁は、
前記整流部を通過する流路の面積は、前記第1ポートの内周径の面積よりも大きく、前記第3ポートの内周径の面積よりも小さいことを特徴とする。
【0024】
また、本発明の電動弁は、
前記弁ポートが、さらに前記第3ポートから前記第2管継手に向けてテーパー部とポートを連続して増加させながら内周径を広げ、第nテーパー部と、前記第nテーパー部の前記第2管継手側に形成された第n+1ポートを含み、
前記nの値は10以下であることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の冷凍サイクルシステムは、
圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等を含む冷凍サイクルシステムであって、上述の電動弁を前記膨張弁として用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、いずれの方向に流体を流しても流体の通過音を低減することができる電動弁、および該電動弁を用いた冷凍サイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態に係る電動弁の概略断面図である。
図2】実施の形態に係る電動弁の要部拡大図である。
図3】実施の形態に係る電動弁においてさらに第1管継手内に整流部を設けた場合を示す図である。
図4】実施の形態に係る電動弁において、整流部の内周径を第2ポートの内周径よりも広くした場合を示す図である。
図5】実施の形態に係る電動弁において第2管継手内に整流部をかしめる括れ部を形成した場合を示す図である。
図6】実施の形態に係る電動弁において第2管継手内に整流部をかしめる複数の凹部を形成した場合を示す図である。
図7】実施の形態に係る電動弁において第2管継手内に整流部をろう付け固定した場合を示す図である。
図8】実施の形態に係る電動弁において弁本体と第2管継手内を整流部材で接続した場合を示す図である。
図9】実施の形態に係る電動弁において整流部を管継手と一体的に成形した場合を示す図である。
図10】実施の形態に係る電動弁において弁ポートが第1ポート、第1テーパー部、および第2ポートのみを備えた場合を示す図である。
図11】実施の形態に係る電動弁において弁ポートが第1ポート、第1テーパー部、および第2ポートのみを備えた場合を示す図である。
図12】実施の形態に係る電動弁において上端部の径が異なるタイプの第2管継手を用いた場合の要部拡大図である。
図13】実施の形態に係る電動弁において上端部の径が異なるタイプの第2管継手を曲げた場合の要部拡大図である。
図14】実施の形態に係る電動弁において上端部の径が異なるタイプの第2管継手を弁本体と別部材である弁座部材に接続した場合の要部拡大図である。
図15】従来の電動弁の概略断面図である。
図16】従来の電動弁の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係る電動弁について説明する。図1は、実施の形態に係る電動弁2を示した概略断面図である。なお、本明細書において、「上」あるいは「下」とは図1の状態で規定したものである。すなわち、ロータ4は弁体17より上方に位置している。
【0029】
この電動弁2では、金属により筒状のカップ形状をなすケース60の開口側の下方に、弁本体30が溶接などにより一体的に接続されている。
【0030】
ここで、弁本体30は、たとえばステンレス等の金属から成り、内部に弁室11を有している。また、弁本体30の側面には、弁室11に直接連通する第1管継手12が固定装着され、弁本体30の下方には、弁室11を介して第1管継手12に連通する第2管継手15が固定装着されている。なお、第1管継手12と第2管継手15は、たとえばステンレスや銅などの金属で形成されている。
【0031】
なお、弁本体30の下方部分には、弁ポート70が形成され、この部分は弁座部材としての機能を有している。弁ポート70については、後に詳しく説明する。
【0032】
ケース60の内周には、回転可能なロータ4が収容され、ロータ4の軸芯部分には、図示しないブッシュ部材を介して弁軸41が配置されている。なお、ロータ4は、磁性を有する材質、または、磁性を有する材質を含有して形成されている。ブッシュ部材と弁軸41は、共にたとえばステンレス等の金属で形成されており、ブッシュ部材で結合された弁軸41とロータ4とは、回転しながら上下方向に一体的に移動する。なお、この弁軸41の中間部付近の外周面には雄ネジ41aが形成されている。本実施の形態では、弁軸41が雄ネジ部材として機能している。
【0033】
ケース60の外周には、図示しないヨーク、ボビン、およびコイルなどからなるステータが配置され、ロータ4とステータとでステッピングモータが構成されている。
【0034】
弁軸41の下方には、後述するように弁軸41との間でネジ送り機構Aを構成するとともに弁軸41の傾きを抑制する機能を有する弁軸ホルダ6が、弁本体30に対して相対的に回転不能に固定されている。
【0035】
この弁軸ホルダ6は、上側の内周に後述する雌ネジ6dが形成された筒状部6aと、弁本体30の内周部側に収容される嵌合部6cと、略リング状のフランジ部6fとから成る。そして、弁軸ホルダ6のフランジ部6fは、弁本体30の上端に溶接などで固定されている。また、弁軸ホルダ6の内部には、後述する弁ガイド18を収容する収容室6hが形成されている。なお、弁軸ホルダ6は、金属のフランジ部6f以外が樹脂材料で形成されている。
【0036】
また、この弁軸ホルダ6の筒状部6aの上部開口部6gから所定の深さまで下方に向かって雌ネジ6dが形成されている。このため、本実施の形態では、弁軸ホルダ6が雌ネジ部材として機能している。そして、弁軸41の外周に形成された雄ネジ41aと、弁軸ホルダ6の筒状部6aの内周に形成された雌ネジ6dとにより、ネジ送り機構Aが構成されている。
【0037】
さらに、弁軸ホルダ6の筒状部6aの側面には、均圧孔51が穿設され、この均圧孔51により、弁軸ホルダ6内の弁軸ホルダ室83と、ロータ収容室67(第2の背圧室)との間が連通している。このように均圧孔51を設けることにより、ケース60のロータ4を収容する空間と、弁軸ホルダ6内の空間とを連通することにより、弁体17の移動動作をスムーズに行うことができる。
【0038】
また、弁軸41の下方には、筒状の弁ガイド18が弁軸ホルダ6の収容室6hに対して摺動可能に配置されている。この弁ガイド18は天井部21側がプレス成形により略直角に折り曲げられている。そして、この天井部21には貫通孔18aが形成されている。また、弁軸41の下方には、さらに鍔部41bが形成されている。
【0039】
ここで、弁軸41は、弁ガイド18に対して回転可能、かつ径方向に変位可能となるように弁ガイド18の貫通孔18aに遊貫状態で挿入されており、鍔部41bは、弁ガイド18に対して回転可能、かつ、径方向に変位可能となるように弁ガイド18内に配置されている。また、弁軸41は貫通孔18aを挿通し、鍔部41bの上面が、弁ガイド18の天井部21に対向するように配置されている。なお、鍔部41bが弁ガイド18の貫通孔18aより大径であることにより、弁軸41の抜け止めがなされている。
【0040】
弁軸41と弁ガイド18とが互いに径方向に移動可能であることにより、弁軸ホルダ6および弁軸41の配置位置に関して、さほど高度な同芯取付精度を求められることなく、弁ガイド18および弁体17との同芯性が得られる。
【0041】
次に、実施の形態に係る電動弁2の要部について説明する。図2は、実施の形態に係る電動弁2の要部を拡大した図である。図2に示すように、弁本体30の下方部分に形成された弁ポート70は、下方に向かって断続的に内周径が広がる形状を有している。すなわち、弁ポート70は、第1ポート70a、第1テーパー部70b、第2ポート70c、第2テーパー部70d、第3ポート70eを有している。また、弁本体30の下方には、第2管継手15を装着する溝30aが形成され、第2管継手15の内部には、流体を整流化する部材である整流部80が配置されている。
【0042】
第1ポート70aは、最も上方(弁体17側)に位置する円柱状の空間であり、第1ポート70aは、弁ポート70の中で最も狭い内周径D1を有している。また、第1ポート70aの軸方向の長さL1は、弁ポート70に含まれる各ポート、テーパーの長さの中で最も短く、微小な長さになるように形成されている。
【0043】
第1テーパー部70bは、第1ポート70aの下方に連続する空間であり、内周径が下方に向かって広がる形状を有している。
【0044】
同様に、第2ポート70cは、第1テーパー部70bの下方に連続する円柱状の空間である。また、第2テーパー部70dは、第2ポート70cの下方に連続する空間であり、内周径が下方に向かって広がる形状を有している。第3ポート70eは、第2テーパー部70dの下方に連続する円柱状の空間であり、弁ポート70に含まれる各ポート、テーパーの中で最も広い内周径を有している。
【0045】
整流部80は、ステンレス等の金属から成る円筒状の部品であり、上方端部80aを弁本体30の下端部70kと接触させて配置されている。また、整流部80の内周径D2は、第1ポート70aの内周径D1よりも広く(D1<D2)、かつ第2ポート70cの内周径D3よりも狭くなるように形成されている(D2<D3)。なお、第3ポート70eの内周径D4は、整流部80の内周径D2および第2ポート70cの内周径D3よりも広くなるように形成されている(D2<D4、D3<D4)。また、整流部80の軸方向の長さL2は、少なくとも第1ポート70aの軸方向の長さL1よりも長くなるように形成されている(L1<L2)。
【0046】
次に、実施の形態に係る電動弁2に、流体を流した場合について説明する。まず、第1管継手12から第2管継手15に向けて、正方向に流体を流した場合、第1管継手12から排出された流体は、一旦弁室11で減速された後、弁体17と第1ポート70aとの隙間に流入する。弁体17と第1ポート70aとの隙間で絞られた流体は、第1テーパー部70bに倣って第2ポート70cに沿う形で流れ、第2ポート70cの内壁面によって整流化される。また、第2ポート70cの内周径D3は第1ポート70aの内周径D1よりも広い(D1<D3)ことから、第2ポート70cに流入した流体は減速されるが、最も狭い第1ポート70aから、最も内周径の広い第3ポート70eに直接流れないため、流体の圧力が第2ポート70cで急回復することはない。これにより、圧力を原因とする流体の通過音が低減される。
【0047】
さらに流体は、徐々に拡大する流路を形成する第2テーパー部70dで徐々に減速されて、そして、第3ポート70eに沿う形で流れ、第3ポート70eで再び整流化される。これにより、第3ポート70eでの流速がさらに減速され、流速を原因とする流体の通過音が低減される。第3ポート70eを通過した流体は、整流部80を介して第2管継手15に排出される。
【0048】
一方、第2管継手15から第1管継手12に向けて、逆方向に流体を流した場合、第2管継手15内の流体は、図2に示すように、まず、整流部80に導かれる。整流部80の内周径D2は、第2管継手15の内周径よりも狭いことから、流体の乱れは、整流部80を通過することによって整流化される。これにより、キャビテーションの破裂が抑制され、流体の通過音が低減される。
【0049】
流体は、整流部80を通過した後、第3ポート70eに排出される。ここで、第3ポート70eの内周径は、整流部80の内周径D2よりも広いため、第3ポート70eにおいて流体は径方向に広がり減速され、流体の通過音がさらに低減される。
【0050】
次に、流体は、第2テーパー部70d、第2ポート70c、第1テーパー部70bを通過しながら徐々に整流化された後、第1ポート70aを通過する。このように、整流部80を通過した流体は、直接第1ポート70aに当たることなく徐々に整流化されるため、弁体17の振動やキャビテーションの破裂がさらに抑制される。第1ポート70aを通過した流体は、弁室11を経て第1管継手12に排出される。
【0051】
この実施の形態に係る電動弁2によれば、弁ポート70内に複数のテーパー部とポートを設けて正方向に流体を流した場合のキャビテーションの破裂を抑制すると共に、第2管継手15の内部に円筒状の整流部80を配置して流体を逆方向に流した場合の弁振動やキャビテーションの破裂を抑制することにより、正方向、逆方向のいずれの方向に流体を流した場合においても流体の通過音を低減することができる。
【0052】
また、弁ポート70は、第1テーパー部70bと第2ポート70cの下方に、さらに第2テーパー部70dと第3ポート70eを備え、断続的に下方に広がる形状を有している。このため、流体を正方向に流した場合において、的確に流体の通過音を抑制することができる。また、流体を逆方向に流した場合においては、整流部80を通過した流体が一旦第3ポート70eで減速されるため、的確に流体の通過音を低減することができる。
【0053】
また、整流部80の上方端部80aを弁本体30の下端部70kと接触させることにより、整流部80と弁ポート70との間の隙間をなくすことができ、整流部80から弁ポート70、または弁ポート70から整流部80に流れる流体が直接第2管継手の内部に接触することがなくなるため、より確実に流体の通過音を抑制することができる。
【0054】
また、整流部80の内周径D2を、第1ポート70aの内周径D1よりも広く形成することにより(D1<D2)、流体を正方向に流した際に、整流部80により生じる圧力損失を抑制することができる。さらに、整流部80の内周径D2を、第2ポート70cの内周径D3よりも狭くなるように形成することにより(D2<D3)、流体を逆方向に流した際に、直接弁体17に当たる流体の量を低減できる。このため、流体が直接体17に当たることに起因する弁体17の振動を抑制し、弁体17の振動に起因する騒音を抑制することができる。
【0055】
また、整流部80が一定以上の長さを有することにより、的確に流体の整流化を行うことができる。
【0056】
なお、上述の実施の形態において、図3に示すように、さらに第1管継手12内に整流部82を配置してもよい。この場合、流体を正方向に流した場合において、第1管継手12から弁室11内に排出された流体が急激に拡大して乱れることが防止されるため、さらに的確に流体の通過音を抑制することができる。
【0057】
この場合、整流部82の弁室11側の端面82aは、第1管継手12の弁室11側の端面12aと同一面上に揃えることが好ましい。また、第1管継手12の端面12aに、第1管継手12の内周径側に突出する図示しない円環状のフランジを設け、フランジに端面82aが接触するようにして整流部82を配置してもよい。
【0058】
また、上述の実施の形態においては、図2に示すように、整流部80の内周径D2が第2ポート70cの内周径D3よりも狭い場合を例に説明しているが(D2<D3)、整流部80の内周径D2は、図4に示すように、第2ポート70cの内周径D3よりも広く形成されていてもよい(D2>D3)。この場合、流体を正方向に流した際に弁室11と弁ポート70との間に高い差圧が生じたとしても、流体が急激に減圧されることがない。このため、流体を段階的に減速させることができ、好適に流体の通過音を抑制することができる。
【0059】
また、上述の実施の形態において、図5に示すように、第2管継手15に円環状に括れた括れ部91を形成してもよい。これにより、整流部80を第2管継手15に装着した場合に、括れ部91によって整流部80をかしめることができるため、整流部80を位置がずれないように的確に固定することができる。また、図6に示すように、第2管継手15に複数の凹部93を形成して整流部80をかしめるようにしてもよい。この技術は、整流部80を第1管継手12内に配置する場合にも用いることができる。
【0060】
また、上述の実施の形態において、図7に示すように、第2管継手15、および弁本体30に、整流部80をろう付け固定84してもよい。
【0061】
また、上述の実施の形態において、第2管継手15の内部に整流部80を配置することに代えて、弁本体30と第2管継手15の間に整流部を配置してもよい。たとえば、図8に示すように、上下に円筒状の側壁85a、85bを備え、側壁85aと側壁85bの間に内周径を狭く加工した整流部85fが形成された整流部材85を用いる。この場合、弁本体30の溝30aに側壁85aを挿入して弁本体30に整流部材85を接続し、さらに、整流部材85の側壁85bの内側に形成された溝85cに第2管継手15を挿入して整流部材85に第2管継手15を接続する。
【0062】
なお、この場合、的確に整流部材85と第2管継手15を接続できるように、側壁85bの内周径を第2管継手15の外周径と同じか第2管継手15の外周径よりもやや小さめに形成するのが好ましい。
【0063】
また、この技術を第1管継手12に応用してもよい。この場合、整流部材85を弁本体30の側壁に接続し、さらに整流部材85に第1管継手12を接続する。
【0064】
また、上述の実施の形態においては、整流部80が独立した部品として第2管継手15内に配置されている場合を例に説明しているが、整流部は第2管継手15と一体的に成形されていてもよい。たとえば、図9に示すように、第2管継手15の上方端部において、第2管継手15の内周径を狭くするように整流部86が成形されていてもよい。同様に、第1管継手12の弁室11側の端部において、第1管継手12の内周径を狭くするように整流部88が成形されていてもよい。
【0065】
また、上述の実施の形態においては、弁座部材が弁本体30に一体的に組み込まれている場合を例に説明しているが、図9に示すように、弁ポート70を有する弁座部材33が独立した部品として弁本体30内に配置されていてもよい。
【0066】
また、上述の実施の形態において、図10、11に示すように、弁ポート70に第2テーパー部70dと第3ポート70eを備えず、第1ポート70a、第1テーパー部70b、第2ポート70cのみを備えるようにしてもよい。
【0067】
この場合、第1管継手12から第2管継手15に向けて、正方向に流体を通過させると、弁体17と第1ポート70aとの隙間で絞られた流体は、第1テーパー部70bに倣って第2ポート70cに沿う形で流れ、第2ポート70cの内壁面によって整流化される。また、第2ポート70cの内周径D3は第1ポート70aの内周径D1よりも広い(D1<D3)ため、第2ポート70cに流入した流体は減速される。これにより、キャビテーションの破裂が抑制され、流体の通過音が低減される。第2ポート70cを通過した流体は、整流部80を介して第2管継手15に排出される。
【0068】
一方、第2管継手15から第1管継手12に向けて、逆方向に流体を流した場合、第2管継手15に流入した流体は、図11に示すように、まず、整流部80に導かれる。整流部80の内周径は、第2管継手15の内周径よりも狭いことから、流体の乱れは、整流部80を通過することによって整流化される。これにより、キャビテーションの破裂が抑制され、流体の通過音が低減される。
【0069】
流体は、整流部80を通過した後、第2ポート70cに排出される。ここで、第2ポート70cの内周径D3は、整流部80の内周径D2よりも広いため(D3>D2)、第3ポート70eにおいて流体は径方向に広がり減速され、流体の通過音がさらに低減される。第2ポート70cに排出された流体は、さらに第1テーパー部70bを通過しながら整流された後、第1ポート70aを通過する。第1ポート70aを通過した流体は、弁室11を経て第1管継手12に排出される。
【0070】
また、上述の実施の形態において、上端部の径が異なるタイプの第2管継手16を用いてもよい。たとえば、図12に示すように、第2管継手16は、弁ポート70に接続される側の端部に、外周径を維持したまま内周径をのみを狭めて側壁の壁厚を増厚した肉厚部16a、および肉厚部16aの内周径を一定に維持したまま上方に延設された延設部16bを備えるようにしてもよい。すなわち、延設部16bは、第2管継手16の弁ポート70に接続される側の内周径および外周径を共に縮小して円筒状に延設される。
【0071】
この場合、弁ポート70もまた、第2管継手16を接続可能な形状を備えている。具体的には、弁ポート70は、第3ポート70eの下縁の外周側に位置する環状平面部71a、環状平面部71aの外周径を維持して下方に形成される接続部分71bを備えている。
【0072】
第2管継手16を弁本体30に接続した場合、延設部16bが弁ポート70に挿入され、かつ肉厚部16aが接続部分71bに挿入される。すなわち、延設部16bの外周面が第3ポート70eの内周面と当接し、肉厚部16aの外周面が接続部分71bの内周面と当接する。また、延設部16bの外周側に形成された肉厚部16aの上端部16fが環状平面部71aと当接する。
【0073】
この状態において、延設部16bおよび、肉厚部16aが上述の実施の形態において説明した整流部を形成する。
【0074】
このような、上端部の径が異なるタイプの第2管継手16を用いた場合、整流部の少なくとも一部が弁ポート70内に配置されることになる。よって、弁ポート70の長さが軸方向に延びた場合であっても、第1ポート70aから整流部の上端(延設部16bの上端)までの距離を短縮化できる。このため、整流部において整流された流体が第3ポート70e内で再度拡散して乱れた流れとなることを防止でき、整流部によってなされた整流効果が損なわれないようにすることができる。
【0075】
また、第2管継手16は、図13に示すように、曲げ加工を行う場合がある。このような場合において、整流部(肉厚部16a、延設部16b)が弁ポート70内に位置していれば、整流部の長さ分曲げる部分を降下させる必要がなくなるため、第1管継手12と第2管継手16の間の管継手間ピッチhが広がることがない。よって、電動弁2の全高が大きくなることなく、第2管継手16を曲げた場合においても電動弁2をコンパクトにすることができる。
【0076】
また、上述したように、第2管継手16を弁本体30に組み付ける際には、延設部16bが弁ポート70に挿入され、かつ肉厚部16aが接続部分71bに挿入される。このため、弁座に対して同芯を確保しながら第2管継手16を配置でき、ろう付けの安定性を見込むこともできる。
【0077】
また、上端部の径が異なるタイプの第2管継手16を用いた場合においても、整流部(肉厚部16a、延設部16b)の内周径D2は、第1ポート70aの内周径D1よりも広くように形成されている(D1<D2)。また、第3ポート70eの内周径D4は、整流部の内周径D2および第2ポート70cの内周径D3よりも広くなるように形成されている(D2<D4、D3<D4)。さらに、整流部80の軸方向の長さL2は、少なくとも第1ポート70aの軸方向の長さL1よりも長くなるように形成されている(L1<L2)。
【0078】
また、第2管継手16を用いる場合においても、図14に示すように、弁ポート70を有する弁座部材33が独立した部品として弁本体30内に配置されていてもよい。また、弁座部材33が独立した部品であるか否かにかかわらず、第1管継手12内に整流部88が形成されていてもよい。
【0079】
なお、上述の実施の形態において、図3~9、12~14を用いて説明した技術は、図10、11に示す、弁ポート70に第1ポート70a、第1テーパー部70b、第2ポート70cのみを備えた形態の電動弁にも応用することができる。
【0080】
また、上述の実施の形態において、弁ポート70は、さらに第3ポート70eから第2管継手に向けてテーパー部とポートを連続して増加させながら内周径を広げてもよい。この場合、第3ポート70eの下方に連続して、第3テーパー部、第4ポート、…、第nテーパー部、第n+1ポートが形成される。たとえば、nの値が10である場合には、弁ポート70内には第10テーパー部、第11ポートまで形成される。図3~9、12~14を用いて説明した技術は、このように第nテーパー部、第n+1ポートが形成された弁ポートを有する電動弁に応用されてもよい。
【0081】
また、上述の実施の形態の電動弁2は、たとえば、圧縮機、凝縮器、膨張弁、および蒸発器等から成る冷凍サイクルシステムにおいて、凝縮器と蒸発器との間に設けられる膨張弁として用いられる。
【符号の説明】
【0082】
2 電動弁
4 ロータ
6 弁軸ホルダ
6a 筒状部
6c 嵌合部
6d 雌ネジ
6f フランジ部
6g 上部開口部
6h 収容室
11 弁室
12 第1管継手
12a 第1管継手の弁室11側の端面
15 第2管継手
16 第2管継手
16a 肉厚部
16b 延設部
16f 上端部
17 弁体
18 弁ガイド
18a 貫通孔
21 天井部
30 弁本体
30a 溝
33 弁座部材
41 弁軸
41a 雄ネジ
41b 鍔部
51 均圧孔
60 ケース
67 ロータ収容室
70 弁ポート
70a 第1ポート
70b 第1テーパー部
70c 第2ポート
70d 第2テーパー部
70e 第3ポート
70k 弁本体30の下端部
71a 環状平面部
71b 接続部分
80 整流部
80a 整流部80の上方端部
82 整流部
82a 整流部82の弁室11側の端面
83 弁軸ホルダ室
84 ろう付け固定
85 整流部材
85a 側壁
85b 側壁
85c 溝
85f 整流部
86 整流部
88 整流部
91 括れ部
93 凹部
100 電動弁
111 第1管継手
112 第2管継手
114 弁体
120 弁ポート
120a 第1ポート
120b 第1テーパー部
120c 第2ポート
D1 第1ポート70aの内周径
D2 整流部80の内周径
D3 第2ポート70cの内周径
D4 第3ポート70eの内周径
h 管継手間ピッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16