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特許7559118情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20240924BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H02J3/00 130
H02J13/00 301A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023037137
(22)【出願日】2023-03-10
(65)【公開番号】P2024128259
(43)【公開日】2024-09-24
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591115475
【氏名又は名称】株式会社三菱総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】520320446
【氏名又は名称】中部電力パワーグリッド株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】一ノ宮 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】片岡 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】村井 瑛
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-191774(JP,A)
【文献】特開2017-121133(JP,A)
【文献】特開2018-156540(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出部と、
第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出部と、
を備え
第一導出部は、実測値と、時間又は曜日に基づく複数のカテゴリにおける過去実測値とを比較し、実測値との差分が小さくなる過去実測値に対応するカテゴリを選択し、当該カテゴリにおける実測値に基づいて予測個別電力需要量を導出する、情報処理装置。
【請求項2】
消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出部と、
第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出部と、
を備え
第一導出部は、テーブル作成用の実測値と、時間又は曜日に基づく複数のカテゴリにおけるテーブル作成用の過去実測値とを比較し、テーブル作成用の実測値との差分が小さくなるテーブル作成用の過去実測値に対応するカテゴリを選択し、当該カテゴリにおける実測値に基づいて予測個別電力需要量を導出する、情報処理装置。
【請求項3】
消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出部と、
第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出部と、
所定の地域における過去実際総合電力需要量と過去予測総合電力需要量との差から補完情報を生成する補完情報生成部と
を備える、情報処理装置。
【請求項4】
消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出部と、
第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出部と、
を備え、
第二導出部は、気象情報を用いて第一導出部で導出された予測個別電力需要量の合計値を修正し、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す情報処理装置。
【請求項5】
消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出部と、
第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出部と、
を備え、
第二導出部は、消費電力計測部の未設置率を用いて第一導出部で導出された予測個別電力需要量の合計値を修正し、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す情報処理装置。
【請求項6】
電力生成部によって電力を生成する需要家に関して、消費電力計測部によって得られる情報と当該需要家において生成される電力量に関する情報とを用いて、推測電力需要量を算出する推測部をさらに備える、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
第一導出部は、時間又は曜日に基づく過去の実績値を用いて予測個別電力需要量を導出する、請求項3乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
過去実測値は、直近の実測値、同曜日の実測値又は実測値の平均を含む、請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項9】
第一導出部が利用するテーブルは曜日及び時間帯に応じた複数のブロックを有し、
第一導出部は各ブロックに適用されるカテゴリを決定する、請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項10】
閾値を超える消費電力計測部によって得られる値は情報として用いない、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項11】
ある日において所定の時間帯以上に関して消費電力計測部によって値が得られていない場合には、当該消費電力計測部による当該ある日の測定値を情報として用いない、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項12】
第二導出部は、前記補完情報を用いて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項13】
第一導出部によって、消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す工程と、
第二導出部によって、第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す工程と、
を備え
前記予測個別電力需要量を導き出す工程において、
第一導出部は、実測値と、時間又は曜日に基づく複数のカテゴリにおける過去実測値とを比較し、実測値との差分が小さくなる過去実測値に対応するカテゴリを選択し、当該カテゴリにおける実測値に基づいて予測個別電力需要量を導出する、情報処理方法。
【請求項14】
情報処理装置にインストールするためのプログラムであって、
プログラムがインストールされた情報処理装置に、
消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出機能と、
第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出機能と、
を実現させ
第一導出機能は、実測値と、時間又は曜日に基づく複数のカテゴリにおける過去実測値とを比較し、実測値との差分が小さくなる過去実測値に対応するカテゴリを選択し、当該カテゴリにおける実測値に基づいて予測個別電力需要量を導出する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力の需要予想を行うための情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電力会社等の一般送配電事業者はエリア全体の需要や再生可能エネルギーの発電量の想定に基づき、発電機(調整電源)の運転計画立案や出力指令を行ってきた。電力需要の予測に関しては、例えば特許文献1のような文献が知られており、複数の顧客グループごとに、変動因子の予測データと、需要予測モデルとに基づいて電力需要の予測データを算出し、複数の顧客グループごとに算出された電力需要の予測データに基づいて、売電事業者に対する総電力需要の予測データを算出するようなことは行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-084328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、再生可能エネルギーの導入拡大を促進するため、効率的に系統設備を活用する制度の検討が進んでおり、一般送配電事業者はローカルレベル(市町村又はそれ以下の粒度)で潮流想定を行う必要性が高まっている。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、予測したい時点での系統構成に応じて適切な予測を行うことができる情報処理装置、情報処理方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[概念1]
本発明による情報処理装置は、
消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出部と、
第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出部と、
を備えてもよい。
【0007】
[概念2]
概念1による情報処理装置は、
電力生成部によって電力を生成する需要家に関して、消費電力計測部によって得られる情報と当該需要家において生成される電力量に関する情報とを用いて、推測電力需要量を算出する推測部をさらに備えてもよい。
【0008】
[概念3]
概念1又は2による情報処理装置において、
第一導出部は、時間又は曜日に基づく過去の実績値を用いて予測個別電力需要量を導出してもよい。
【0009】
[概念4]
概念3による情報処理装置において、
第一導出部は、テーブル作成用の実測値と、複数のカテゴリにおけるテーブル作成用の過去実測値とを比較し、テーブル作成用の実測値との差分が小さくなるテーブル作成用の過去実測値に対応するカテゴリを選択し、当該カテゴリにおける実測値に基づいて予測個別電力需要量を導出してもよい。
【0010】
[概念5]
概念4による情報処理装置において、
過去実測値は、直近の実測値、同曜日の実測値又は実測値の平均を含んでもよい。
【0011】
[概念6]
概念4又は5による情報処理装置において、
第一導出部が利用するテーブルは曜日及び時間帯に応じた複数のブロックを有し、
第一導出部は各ブロックに適用されるカテゴリを決定してもよい。
【0012】
[概念7]
概念1乃至6のいずれか1つによる情報処理装置において、
閾値を超える消費電力計測部によって得られる値は情報として用いなくてもよい。
【0013】
[概念8]
概念1乃至7のいずれか1つによる情報処理装置において、
ある日において所定の時間帯以上に関して消費電力計測部によって値が得られていない場合には、当該消費電力計測部による当該ある日の測定値を情報として用いなくてもよい。
【0014】
[概念9]
概念1乃至8のいずれか1つによる情報処理装置は、
所定の地域における過去実際総合電力需要量と過去予測総合電力需要量との差から補完情報を生成する補完情報生成部を備えてもよい。
【0015】
[概念10]
概念9による情報処理装置において、
第二導出部は、前記補完情報を用いて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出してもよい。
【0016】
[概念11]
概念1乃至10のいずれか1つによる情報処理装置において、
第二導出部は、気象情報を用いて第一導出部で導出された予測個別電力需要量の合計値を修正し、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出してもよい。
【0017】
[概念12]
概念1乃至11のいずれか1つによる情報処理装置において、
第二導出部は、消費電力計測部の未設置率を用いて第一導出部で導出された予測個別電力需要量の合計値を修正し、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出してもよい。
【0018】
[概念13]
本発明による情報処理方法は、
第一導出部によって、消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す工程と、
第二導出部によって、第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す工程と、
を備えてもよい。
【0019】
[概念14]
本発明によるプログラムは、
情報処理装置にインストールするためのプログラムであって、
プログラムがインストールされた情報処理装置に、
消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出機能と、
第一導出部で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出機能と、
を実現させてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、予測したい時点での系統構成に応じて適切な予測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態による情報処理装置の構成を示した概略図。
図2】PV併設需要家(太陽光発電併設需要家)の場合に、「PVの契約容量×kW当たり発電量」をスマートメータ(SM)から得られるデータに足し戻す態様を説明するための図。
図3】系統計測値から過去実際総合電力需要量を生成する態様を説明するための図。
図4】テーブル作成用の実測値と、複数のカテゴリにおけるテーブル作成用の過去実測値とを比較し、テーブル作成用の実測値との差分が小さくなるテーブル作成用の過去実測値に対応するカテゴリを選択する態様を説明するための図。
図5図4で選択されたカテゴリによって作成された予測を行うためのテーブルを示した図。
図6図5のテーブルにおいて、金曜日の朝、日中及び夜を予測する態様を説明するための図。
図7図6のテーブルで選択されたカテゴリに応じて、需要予測を行った結果を示したグラフ。
図8】1年前から3年前の同月にわたる学習用データを用いて、予測を出す態様を説明するための図。
図9】1か月前から3か月前にわたる学習用データを用いて、予測を出す態様を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施の形態
以下、本発明に係る情報処理装置及び情報処理方法の実施の形態について説明する。本実施の形態では、パソコン等のコンピュータにインストールされることで、当該コンピュータによって本実施の形態の情報処理方法を実行できるようにするプログラム及び当該プログラムを記録した記録媒体も提供される。本実施の形態において、「又は」は「及び」を含む概念であり、「A又はB」は、Aだけ、Bだけ、又はA及びBの両方を含む概念である。
【0023】
本実施の形態の情報処理装置100はいずれの場所に設置されてもよく、サーバであってもよく、クラウド環境で利用されてもよい。本実施の形態の情報処理装置100は、一つの装置から構成されてもよいし複数の装置から構成されてもよい。また、複数の装置から情報処理装置100が構成される場合には、各装置が同じ部屋等の同じ空間に設けられる必要はなく、異なる部屋、異なる建物、異なる地域等に設けられてもよい。また、複数の装置から情報処理装置100が構成される場合には、その一部を一機関が所有及び/又は管理し、残りを別機関が所有及び/又は管理してもよい。
【0024】
情報処理装置100は、1又は複数のユーザ端末200と通信可能となってもよい(図1参照)。ユーザ端末200は、スマートフォン、タブレット、パソコン等であってもよい。ユーザ端末200は、入力部220と表示部210を有してもよい。スマートフォンやタブレットでは、タッチパネルとなっていることから、当該タッチパネルが入力部220と表示部210の両方の機能を備えることになる。情報処理装置100の出力部80から出力される情報が、表示部210で表示可能となる。ユーザ端末200からはID等の識別情報及びパスワードを用いてログインでき、ユーザの識別情報に紐づいた情報を表示部210で確認することができるようになってもよい。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態の情報処理装置100は、スマートメータ120等の消費電力計測部によって得られる情報を用いて、複数の需要家の各々における予測個別電力需要量を導き出す第一導出部10と、第一導出部10で導出された予測個別電力需要量に基づいて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す第二導出部20と、を有してもよい。この態様を採用した場合には、電力系統のローカルレベルの地点別需要を予測するために、スマートメータ120等の消費電力計測部のデータを使って個別の需要を想定して積み上げることができる。所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す場合には、系統切り替え等が行われなければ、過去の実績等から所定の地域における予測総合電力需要量を予測することはできる。他方、系統切り替え等を行った場合には、特定の送電設備に接続する需要が大きく変わることがある。その場合には、過去の実績に基づく需要予測が困難になる。この点、本実施の形態のように電力系統の需要を構成する最小単位である需要家毎に需要想定値を作成することで、予測したい時点での系統構成に応じて適切な需要を積み上げることができる点で有益である。また系統で計測された潮流実績は多くの需要が合算された値であり個別の傾向を分析できない。この点、最小単位である需要家毎に需要想定値を作成する場合には、個々の需要家毎の事情を考慮して予測に反映することができることから、予測精度の向上を期待できる。
【0026】
本実施の形態では、消費電力計測部の一例としてスマートメータ120を用いて説明するが、消費電力を計測できる機器であればスマートメータ120に限定されることはない。消費電力計測部からの情報は、消費電力計測部から情報処理装置100に対して直接送信されてもよいし、スマートメータ管理サーバのような外部装置(図示せず)を介して情報処理装置100に送信されてもよい。
【0027】
需要家によっては、太陽光発電等の電力生成部110によって電力を生成することがある。このように電力生成部110によって電力を生成する需要家に関しては、スマートメータ120によって得られる情報と当該需要家において生成される電力量に関する情報とを用いて、推測電力需要量を算出する推測部30が設けられてもよい。このような推測部30を用いることで、各需要家における真の需要量を用いて、予測個別電力需要量を導き出すことができる。
【0028】
一例を示すと、PV併設需要家(太陽光発電併設需要家)の場合には、「PVの契約容量×kW当たり発電量」をスマートメータ120から得られるデータに足し戻してもよい(図2参照)。「kW当たり発電量」は最大で「1」の値であり、当該需要家が位置するエリアの日射量や別途一般送配電事業者が行うPV発電量予測等のデータを用いて推測部30が予測してもよい。推測部30は記憶部60で記憶された推測モデルを用いて推測電力需要量を算出してもよい。この推測モデルは、機械学習によって生成されたモデルであってもよいし、統計データから生成されたモデルであってもよい。機械学習によって生成されたモデルを用いる場合には、過去の実際の電力生成量とその際の日射量等の気象情報等とを用いて、機械学習によって生成されたモデルを生成し、当該モデルを記憶部60で記憶するようにしてもよい。またスマートメータ120から発電リソースの発電実績量を取得できる場合には、発電実績量を用いて、当該需要家における真の需要量を導き出すようにしてもよい。
【0029】
第一導出部10は、時間又は曜日に基づく過去の実績値を用いて予測個別電力需要量を導出してもよい。需要家毎に曜日や時間帯に応じて需要想定値のベースとなる参照日需要を変更するようにしてもよい。この態様を採用した場合には、業務・産業需要家特有の営業日・営業時間等の事情を反映できるため予測精度の向上を期待できる。例えばある病院においては午後に診療を行わない場合には、当該ある病院では午後での電力の需要が減ることを予測に組み入れることができる。
【0030】
第一導出部10は、テーブル作成用の実測値と、複数のカテゴリにおけるテーブル作成用の過去実測値とを比較し、テーブル作成用の実測値との差分が小さくなるテーブル作成用の過去実測値に対応するカテゴリを選択し(図4及び図5参照)、当該カテゴリにおける実測値に基づいて予測個別電力需要量を導出してもよい。需要家毎に曜日・時間帯に応じて適切な参照日を設定して、その日の需要を当該需要家の需要想定値としてもよい。このように参照日の需要を取得する態様を採用した場合には、情報処理装置100に加わる負荷が軽いため実運用に耐える計算速度を実現できる点で非常に有益である。
【0031】
電力会社等の一般送配電事業者が電力を供給する場合、電力の需要予測に大きな誤差が発生した場合には、社会的な責任を鑑み、その原因を追究できることが重要になる。この点、一般送配電事業者が本実施の形態の情報処理装置100を利用する場合には、例えば大きな誤差が発生した時の原因を解明して説明可能な状態にできる点で有益である。この点、機械学習手法を採用した場合には計算プロセスがブラックボックス化されてしまうが、本態様を採用することで計算プロセスを明確化することができ、誤差要因の原因分析や明確な説明が可能となる。なお、本発明は、一般送配電事業者のみを利用者とすることは想定しておらず、電力の小売業者も利用することを想定していることには留意が必要である。
【0032】
第一導出部10が利用するテーブルは曜日及び時間帯に応じた複数のブロックを有し、第一導出部10が各ブロックに適用されるカテゴリを決定してもよい(図5参照)。特に業務・産業需要家は需要規模が大きく1需要家が予測精度に与える影響も大きいが、他方、その需要量は営業日・時間に紐づいて曜日や時間帯に応じる特徴が強い。このため、同じ特徴を持つ日を参照日として設定することで予測精度の向上を期待できる。過去実測値は、直近の実測値、同曜日の実測値又は実測値の平均を含んでもよい。直近の実測値としては、1日前、平日・休日別の直前日(予測対象日が月曜日なら金曜日、予測対象日が火曜日なら月曜日等)等を挙げることができる。
【0033】
第一導出部10は、例えば、予測対象日よりNか月前までのデータを取得して各日時の実測値と参照日需要の絶対誤差を計算する(ステップ1、図4参照)。次に、各曜日・時間帯におけるMAE(Mean Absolute Error)を計算し、最もMAEが小さいパターンを参照日として設定する(ステップ2)。この際、時間帯の粒度は入力部220から自由に設定してもよい。なお特殊日(ゴールデンウィーク、お盆、年末年始)は需要の傾向が異なるため、上記ステップ1の段階で除外してもよい。図5では、この態様の一例を示したものであり、ある需要家の曜日毎の参照日テーブルを示している。当該ある需要家に関しては、当該参照日テーブルを用いて、予測対象日の朝、日中及び夜における予測個別電力需要量を第一導出部10が導出してもよい(ステップ3、図6及び図7参照)。
【0034】
より具体的には、図4では、左から2列目に「実測値」が示され、左から3列目以降で順に「1日前」、「平休日別の直前日」、「1週間前」、「過去3日間の平均」等のテーブル作成用の過去実測値を30分単位のコマで示されている。第一導出部10は、「実測値」と、「1日前」、「平休日別の直前日」、「1週間前」、「過去3日間の平均」等のテーブル作成用の過去実測値とを比較し、その差(差の絶対値)が小さいテーブル作成用の過去実測値を選択し、そのカテゴリを予測に使うようにする。図5はその例を示したものであり、例えば、月曜日の朝及び日中は「1週間前」のデータを用い、月曜日の夜は、「過去3日間の平均」を用いることが示されている。図7図6で示されたカテゴリに基づいて予測した結果を示したグラフである。この際には、30分単位の「点」で予測を行っていき、予測によって得られた「点」を滑らかな曲線でつなぐことで、図7のようなグラフを生成するようにしてもよい。本実施の形態では、30分単位のコマを用いて説明しているが、あくまでも一例であり、コマの長さは例えば管理者端末から適宜変更できるようになってもよい。なお、本実施の形態の管理者端末はユーザ端末200に含まれる概念である。
【0035】
前述した推測部30によって算出された推測電力需要量を考慮して、真の需要量を導き出した後で各ブロック(時間帯)に適用されるカテゴリ(「1日前」、「平休日別の直前日」、「1週間前」、「過去3日間の平均」等)を決定することで、予測精度を高めることができる。
【0036】
図5及び図6に示す態様では予測対象日を朝、日中及び夜の3つの時間帯(8時間毎)に区切っているが、時間帯の幅は自由に設定でき、例えば1時間毎、3時間毎等の適宜の粒度が入力部220から設定されてもよい。そして、このようにして導出された予測個別電力需要量を用いて、第二導出部20が所定の地域における予測総合電力需要量を導き出してもよい。参照日テーブルの更新は定期的に行ってもよく、1週間毎、1か月毎等に行ってもよい。
【0037】
予測総合電力需要量の対象となる所定の地域は、入力部220から適宜入力されるようにしてもよいし、記憶部60で記憶されている情報が読み出されてもよい。記憶部60で記憶されている所定の地域が入力部220からの入力で変更された場合には、変更後の所定の地域が最新のものとして記憶部60で記憶されてもよい。このような情報は、ユーザの識別情報に関連付けられて記憶部60で記憶されてもよい。
【0038】
第一導出部10がカテゴリを選択する際、天候を考慮してもよく、例えば2日前が晴れであり、1日前が雨であるのに対して、予測対象日が晴れの場合には、1日前の実測値ではなく、2日前の実測値を用いてもよい。同曜日の実測値としては、例えば1週間前の同じ曜日の実測値を用いてもよい。この場合にも、天候を考慮してもよく、例えば2週間前の同曜日が曇りであり、1週間前の同曜日が雨であるのに対して、予測対象日が曇りの場合には、1週間前の同曜日の実測値ではなく、2週間前の同曜日の実測値を用いてもよい。テーブル及び天候に関する情報は記憶部60で記憶されており、第一導出部10がテーブル及び天候に関する情報を記憶部60から読み出して、需要予測を行うようにしてもよい。実測値の平均としては、過去5日間の平均値を用いてもよいし、過去1か月間の平均値を用いてもよい。近年はEVや蓄電池の普及、節電の取り組み等、需要家の電力需要のパターンが大きく変化するタイミングがあると想定されるため、このような変化を迅速に反映できるようなるべく近い日を参照することが望ましい。
【0039】
需要予測の対象となる予測対象日は、典型的には予測を行っている日の次の日又は当日である。予測対象日が当日の場合には、午前に午後の予測を行うというような態様であってもよい。
【0040】
第一導出部10が予測個別電力需要量を導き出す際、閾値を超えるスマートメータ120によって得られる値は情報として用いなくてもよい。このような態様を採用することで、異常値を取り除いて予測をすることができ、予測の精度を向上させることができる。この閾値は個々の需要家に対応して記憶部60で記憶されていてもよい。
【0041】
閾値の算出には契約容量を用いてもよい。契約容量を使った閾値として、例えば「契約容量×α1+α2」としてもよい。α1とα2は入力部220から設定されてもよいし、個々の需要家と関連付けられた情報を記憶部60から読み出して利用してもよい。典型的にはα1は「1」より大きな数字である。契約容量が大きい需要家において、負荷変動の大きい実量契約や負荷設備等に基づき契約容量が決定される協議契約では契約容量を上回る値が計測されることがある。契約容量が大きいほど差分も大きくなることから、マージンとして契約容量×α1を考慮している。典型的にはα2は「0」より大きな数字である。契約容量が小さい需要家においては、スマートメータ120の分解能(例えば0.1kW刻み等)の理由により契約容量を若干上回る値が計測され得るため、マージンとして+α2を考慮している。
【0042】
ある日において所定の時間帯以上に関してスマートメータ120によって値が得られていない場合には、第一導出部10が予測個別電力需要量を導き出す際、当該スマートメータ120による当該ある日の測定値を情報として用いなくてもよい。このような態様を採用した場合には、実際の測定値として得られた情報が少なく、予測で利用した場合に精度が落ちると考えられる場合を、予測の基礎から除外することができ、予測の精度を向上させることができる。一例として、例えば連続する欠損コマがα3コマ未満であれば前後の計測値で線形補完するようにしてもよい。他方、α3以上で欠損コマが発生した場合には、当該欠損コマを含む日の計測値は参照日需要の計算から除外するようにしてもよい。ここで「コマ」とは、スマートメータ120によって得られる電力消費量に関するデータのコマを意味し、所定時間毎(例えば30分毎)のスマートメータ120によって得られる電力消費量を意味する。α3は入力部220から設定されてもよいし、個々の需要家と関連付けられた情報を記憶部60から読み出して利用してもよい。
【0043】
所定の地域における過去実際総合電力需要量と過去予測総合電力需要量との差から補完情報を生成する補完情報生成部40が設けられてもよい(図1参照)。過去実際総合電力需要量はスマートメータ120のデータを積み上げたものではなく、実際の総合需要量である。実際の総合需要量を取得する方法として系統計測値を使用することが考えられるが、系統計測値は真の需要量とPV等の発電分が混ざった値である。従って図3に示す通り全発電リソースの発電実績量をスマートメータ120等から取得し、系統計測値に足し戻すことで過去実際総合電力需要量を算出するようにしてもよい。また、推測部30が記憶部60で記憶された推測モデルを用いて全発電リソースの発電実績量を算出するようにしてもよい。スマートメータ120が設置されていない需要家が存在し、また街路灯等にはそもそもメータが設置されない上、配電ロス等も存在することから、この態様では実際の総合需要量を用いている。過去予測総合電力需要量は、過去の予測個別電力需要量(電力生成部110を保有する需要家に関しては推測電力需要量)を足し合わせたものに、スマートメータ120の設置率を割ることで、算出されてもよい。例えばスマートメータ120の設置率が0.8である場合には、過去の予測個別電力需要量(電力生成部110を保有する需要家に関しては推測電力需要量)を足し合わせたものを0.8で割ることで、過去予測総合電力需要量が算出されてもよい。そして、この過去予測総合電力需要量と過去実際総合電力需要量との差から、補完情報生成部40が補完情報を生成してもよい。
【0044】
第二導出部20は、このようにして得られた補完情報を用いて、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出してもよい。
【0045】
上記では第一導出部10がカテゴリを選択する際、天候を考慮してもよいことを述べたが、そのような態様とは異なり(そのような態様の代わりに用いてもよいし、そのような態様と併用してもよい。)、第二導出部20が、気象情報を用いて第一導出部10で導出された予測個別電力需要量を修正し、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出してもよい。この際、気象状況の差分補正として、過去の同じ季節のデータを用いて回帰式で補正を行ってもよい。図8に示す態様では、1年前から3年前の同月にわたる学習用データを用いて、予測を出すようにしている。
【0046】
予測に用いる式としては、例えば以下の式1を用いてもよい。ここでxは、図2で示す補正を行った後の値であり、個々の需要家の真の需要量を積み上げた値である。式1のy1、x及びΔTに過去の実測値を入れることで、補完情報生成部40によってa1とa2を学習結果として算出することができる。そして、補完情報生成部40が、このa1とa2を用いて、予測日における気象情報を考慮した値をy1として算出することができる。
(式1)y1=x+a1×ΔT+a2
x:参照日のスマートメータ120に基づく真の需要量の積み上げ値
ΔT:予測対象日の気温予想値-参照日の加重平均気温
「参照日の加重平均気温」は、各需要家について設定された参照日に基づき参照日気温を計算し(参照日が1日前の場合は1日前の同コマの気温、過去3日間の平均の場合は過去3日間の同コマの平均気温等を計算し)、各需要家の参照日需要の大きさを使って加重平均を計算した値である。
【0047】
その他必要に応じて気象や時系列情報等の説明変数項は式1に追加してもよい。この例では気温情報を使っているが湿度や天候等の情報も適宜追加してよい。またこの例では過去の同月のデータを使っているが、過去の同月の前後Nか月のデータを含める等適宜変更してもよい。
【0048】
このように第二導出部20が気象情報を用いて第一導出部10で導出された予測個別電力需要量を修正し、所定の地域における予測総合電力需要量を導き出す態様を採用することで、総合電力需要量を予測することができ、予測精度を高めることができる点で有益である。
【0049】
さらに、スマートメータ(SM)120の未設置や配電ロスを補正するために、以下の式2を用いてもよい。スマートメータ120の未設置や配電ロスを補正する際には、比較的近いデータを用いることが有益である。このため、例えば数か月前の学習用データ(図9に示す態様では1か月前から3か月前にわたる学習用データ)を用いて、予測を出すようにしてもよい。a3は例えばスマートメータ120の設置率の逆数である。a4は例えば配電ロスを補うために加算される値である。式2のy1及びy2に過去の実測値(y1については過去の実績値を用いて予測した値でもよい。)を入れ、a3に取得済みの情報を入れることで、補完情報生成部40によってa4を学習結果として算出することができる。そして、補完情報生成部40が、このa4と、上記式1によって予測されるy1とを用いて、予測日におけるスマートメータ120の未設置や配電ロスを考慮した値をy2として算出することができる。
(式2)y2=a3×y1+a4
y1:式1で計算される予測値
y2:予測日の真の需要実績値
【0050】
このような態様を採用することで、スマートメータ(SM)120の未設置や配電ロスも加味して、総合電力需要量を予測することができ、予測精度をさらに高めることができる点で有益である。
【0051】
上記では、個々の需要家の真の需要量を積み上げた値(図2で示す補正を行った後の値)を用いて予測総合電力需要量を出力する態様を挙げて説明したが、このような態様を採用せずに、系統計測値(真の需要量とPV等の発電分が混ざった値)をそのまま用いて予測総合電力需要量を出力するようにしてもよい。この場合には、系統計測値を所定のモデルに適用したり所定の数式に代入したりする等、適宜換算して、予測総合電力需要量を出力するようにしてもよい。また、個々の需要家の真の需要量を積み上げた値(図2で示す補正を行った後の値)を用いて予測総合電力需要量を導き出す場合には、導き出された予測総合電力需要量(真の需要量の合計値)から、各需要家において生成される電力量の予測量(生成量の合計値)を差し引くことで、供給する必要があると予測される電力量を第二導出部20が導出するようにしてもよい。需要家において生成される電力の予測量は推測部30によって推測されてもよい。
【0052】
なお、本実施の形態の第一導出部10、第二導出部20、推測部30、補完情報生成部40、出力部80等の各要素は、一つ又は複数のICチップ又は電子モジュール等で実現されてもよいし、回路構成によって実現されてもよい。情報処理装置100は、プロセッサを有し、プロセッサがプログラムを実行することによって、本実施の形態の情報処理装置100の第一導出部10、第二導出部20、推測部30、補完情報生成部40、出力部80等の各種機能が実現されてもよい。
【0053】
上述した実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。
【符号の説明】
【0054】
10 第一導出部
20 第二導出部
30 推測部
40 補完情報生成部
100 情報処理装置
110 電力生成部
120 スマートメータ(消費電力計測部の一例)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9