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▶ ヤンセン ファーマシューティカ エヌブイの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】抗VISTA抗体および断片
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240924BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240924BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20240924BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240924BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240924BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240924BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240924BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240924BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20240924BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240924BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240924BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240924BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/02
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2023055878
(22)【出願日】2023-03-30
(62)【分割の表示】P 2021124965の分割
【原出願日】2014-12-22
(65)【公開番号】P2023073449
(43)【公開日】2023-05-25
【審査請求日】2023-03-31
(31)【優先権主張番号】61/920,695
(32)【優先日】2013-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/085,086
(32)【優先日】2014-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516186212
【氏名又は名称】ヤンセン ファーマシューティカ エヌブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】スナイダー,リンダ
(72)【発明者】
【氏名】パワーズ,ゴードン
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特許第6590810(JP,B2)
【文献】特表2013-527144(JP,A)
【文献】J. Exp. Med.,2011年,Vol.208, No.3,pp.577-592
【文献】Cancer Res.,2014年04月01日,Vol.74, No.7,pp.1933-1944
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(V-domain Ig Suppressor of T cell Activation)(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む単離された抗体であって、該抗体は:
(a)配列番号:59、60または61のアミノ酸配列を有する重鎖(HC);および
(b)配列番号:56のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)
を含む、単離された抗体。
【請求項2】
該抗体のHCが、配列番号:59のアミノ酸配列を有する、請求項1記載の抗体。
【請求項3】
該抗体のHCが、配列番号:60のアミノ酸配列を有する、請求項1記載の抗体。
【請求項4】
該抗体のHCが、配列番号:61のアミノ酸配列を有する、請求項1記載の抗体。
【請求項5】
請求項1~いずれか記載の抗体および薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、組成物。
【請求項6】
a)請求項1~いずれか記載のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗体、および
b)ワクチン
を含む、組成物。
【請求項7】
a)請求項1~いずれか記載のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体、および
b)ワクチン
を含む、医薬組成物であって、該抗体の結合が、免疫応答を調節するかまたは高める、医薬組成物。
【請求項8】
癌の治療または予防を必要とする個体において癌を治療または予防するための、請求項いずれか記載の組成物。
【請求項9】
該個体が哺乳動物である、請求項記載の組成物。
【請求項10】
請求項1~いずれか記載のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体を含む、癌の治療を必要とする個体において癌を治療するための医薬組成物。
【請求項11】
癌が、
白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群もしくは骨髄腫、またはそれらの組合せである;
固形腫瘍である;あるいは
肺癌である、請求項10記載の医薬組成物。
【請求項12】
白血病が、リンパ球白血病、骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性(myeloid)(骨髄性(myelogenous))白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞性白血病、T細胞前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病または成人T細胞白血病である;あるいは
肺癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)である、
請求項11記載の医薬組成物。
【請求項13】
固形腫瘍が、骨髄細胞、T細胞または骨髄細胞とT細胞の組合せを含む腫瘍ストロマに取り囲まれる;および/または
固形腫瘍が、骨髄細胞、T細胞または骨髄細胞とT細胞の組合せにより浸潤される、請求項11記載の医薬組成物。
【請求項14】
ワクチンと組み合わせて使用される、請求項10記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~いずれか記載の抗体を含む、腫瘍増殖の抑制を必要とする個体において腫瘍増殖を抑制するための医薬組成物。
【請求項16】
該組成物が、非経口的または非経口ではない様式で投与される;
投与される組成物または抗体の用量が、1回の投与当たり0.1~15mg/kgである;および/または
該組成物または抗体が、毎週、2週間に1回、3週間に1回、毎月1回、2ヶ月毎に1回または3ヶ月毎に1回投与される、請求項15いずれか記載の組成物。
【請求項17】
投与が、静脈内、皮下または経口的である、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
請求項1~いずれか記載の抗体を別々にまたは組み合わせてコードする、単離された1つまたは複数の核酸。
【請求項19】
プロモーターに操作可能に連結された請求項18記載の1つまたは複数の核酸を含む発現ベクター。
【請求項20】
請求項19記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
【請求項21】
プロモーターに操作可能に連結された請求項1~いずれか記載の抗体をコードする1つまたは複数の核酸を含む宿主細胞を、該抗体の製造のための条件下で培養する工程を含む、請求項1~いずれか記載の抗体を製造する方法。
【請求項22】
前記抗体を単離する工程をさらに含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
請求項10記載の組成物および容器を含み、癌を治療するために該組成物を使用し得ることを示す使用説明書または標識をさらに含む、製品。
【請求項24】
第2の癌治療と組み合わせて使用するための、請求項23記載の組成物。
【請求項25】
ワクチンが、ウイルスベクターワクチン、細菌ワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、ペプチドワクチンまたはタンパク質ワクチンである、請求項または14記載の組成物。
【請求項26】
フコシル化(fucosylation)酵素を欠損する細胞中で発現される、請求項1~いずれか記載の抗体。
【請求項27】
該細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項26記載の抗体。
【請求項28】
請求項26または27記載の抗体、および薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、組成物。
【請求項29】
生物学的応答の誘起を必要とする個体において生物学的応答を誘起するための医薬組成物であって、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体を含み、VISTAへの抗体の結合により、免疫応答が高められ、該生物学的応答が、
a. 単球の活性化、
b. T細胞増殖およびサイトカイン分泌の誘導、
c. 単球の生存の増加、
d. VISTAを発現する細胞における抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)の誘導、および
e. VISTAを発現する細胞における抗体依存的細胞性貪食作用(ADCP)の誘導
からなる群より選択され、該抗体が請求項1~いずれか記載の抗体である、医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2013年12月24日に出願された米国仮特許出願第61/920,695および2014年11月26日に出願された米国仮特許出願第62/085,086の利益を主張する。上記出願の全教示は参照により本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、抗VISTA抗体および断片に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
腫瘍微小環境における癌細胞または免疫細胞による負の免疫チェックポイント制御因子の発現は、腫瘍に対する宿主の免疫応答を抑制し得る。効果的に癌と戦うために、宿主免疫応答の腫瘍媒介性抑制を遮断することが望ましい。したがって、抗腫瘍免疫応答を抑制する腫瘍微小環境において負の免疫チェックポイント制御因子を阻害する新規で効果的な治療剤についての必要性がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Wang et al., “VISTA, a novel mouse Ig superfamily ligand that negatively regulates T cell responses,” J. Exp. Med., 208(3) 577-92 (2011)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、抗VISTA抗体および断片を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明は、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(V-domain Ig Suppressor of T cell Activation)(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体および抗体断片に関する。VISTAは、免疫応答を負の方向に抑制するチェックポイント制御因子である。Wang et al., “VISTA, a novel mouse Ig superfamily ligand that negatively regulates T cell responses,” J. Exp. Med., 208(3) 577-92 (2011)参照。VISTAは、正常なヒト好中球、単球およびT細胞亜集団上に発現される。また、カニクイザル細胞は、正常なヒト細胞と同様のパターンでVISTAを発現する。VISTAは、癌患者の末梢血細胞にも発現される。
【0007】
抗体または抗体断片のVISTAへの結合により免疫応答が調節されるか高められる。該抗体断片としては、例えばFab、F(ab')2またはscFvの抗体断片が挙げられ得る。該抗体または抗体断片は抗体定常領域を含み得る。該抗体または抗体断片は、造血細胞、例えば骨髄細胞および/またはリンパ球、単球または好中球、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、腫瘍細胞上、および/または腫瘍微小環境(TME)中に発現されるVISTAに結合し得る。腫瘍微小環境は、腫瘍の細胞性環境である。該腫瘍微小環境は、周囲の免疫細胞、繊維芽細胞、血管、他の細胞、シグナル伝達分子および細胞外マトリックスを含み得る。
【0008】
該抗体または抗体断片は、1つ以上の重鎖相補性決定領域(CDR)および/または1つ以上の軽鎖CDR、例えば本明細書に記載される抗VISTA抗体、例えばVSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)で指定される抗体のいずれかの1つ以上のCDR(例えば、3つ全ての重鎖CDR、3つ全ての軽鎖CDR、または6つ全てのCDR)を含み得る。いくつかの態様において、抗体またはその抗体断片は、VSTB112、VSTB95、VSTB116、VSTB50、VSTB53およびVSTB60からなる群より選択される。一態様において、抗体または断片は、本明細書に記載される抗VISTA抗体のいずれかの1つ以上の重鎖CDRおよび1つ以上の軽鎖CDRを含む。いくつかの態様において、抗体または抗体断片はさらに、本明細書に記載される抗VISTA抗体のいずれかの少なくとも1つの重鎖および少なくとも1つの軽鎖を含み得る。いくつかの態様において、抗体または抗体断片は、重鎖可変領域配列を含む少なくとも1つの重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含む少なくとも1つの軽鎖を含む。いくつかの態様において、抗体は、ヒトフレームワーク領域を含む。いくつかの態様において、抗体は完全抗体である。いくつかの態様において、断片は抗VISTA結合メンバーである。いくつかの態様において、該抗体の重鎖CDRは、配列番号:1、2および3で表され、軽鎖CDRは、配列番号:4、5および6で表される。いくつかの態様において、重鎖および軽鎖の可変領域アミノ酸配列は、配列番号:7および8のそれぞれで表される。
【0009】
本発明はまた、本明細書に記載される抗体と実質的に同様の抗VISTA抗体を包含する。例えば一態様において、抗体または断片は、配列番号:1と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号:2と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVH CDR2および配列番号:3と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、抗体または抗体断片はさらに、配列番号:4と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号:5と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVL CDR2および配列番号:6と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む。
【0010】
本発明はまた、本明細書に記載される抗VISTA抗体への結合について、競合的に阻害するかまたは競合する抗VISTA抗体に関する。
【0011】
いくつかの態様において、抗VISTA抗体は、コンジュゲート、例えば本明細書に記載される細胞傷害性分子または別の剤を含むコンジュゲートの一部である。かかる分子は本発明分野において周知である。
【0012】
いくつかの態様において、該抗体または抗体断片は、モノクローナル抗体である。いくつかの態様において、該抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。いくつかの態様において、該抗体または抗体断片は、ヒト定常領域を含む。いくつかの態様において、抗体または抗体断片は、例えば配列番号:9のアミノ酸配列中のVISTAのエピトープに特異的である。いくつかの態様において、該抗体または抗体断片は、少なくとも1x10-7リットル/モル、例えば少なくとも1x10-8リットル/モル、例えば少なくとも1x10-9リットル/モルの親和性でVISTAのエピトープに結合する。
【0013】
いくつかの態様において、免疫応答の調節は、CD45+白血球、CD4+ T細胞および/またはCD8+ T細胞の増加を含む。いくつかの態様において、免疫応答の調節は、(例えばT細胞)サイトカイン(例えば、IFNγ、IL-10、TNFα、IL-17)の産生の増加、T細胞応答の向上および/またはFoxp3発現の調節を含む。
【0014】
本発明はまた、本明細書に記載される抗体または抗体断片(例えば抗VISTA抗体)および薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物に関する。例えば、該組成物は、VISTAに結合する抗原結合領域を含む抗体またはその抗体断片を含むVISTAアンタゴニスト、およびワクチン(例えば、ウイルスベクターワクチン、細菌ワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、ペプチドワクチン)を含み得る。いくつかの態様において、該組成物は医薬組成物であり、抗体または抗体断片のVISTA分子への結合は、免疫応答を調節するかまたは高める。
【0015】
本発明はまた、癌の治療または予防を必要とする個体(例えば哺乳動物、例えばヒトまたは非ヒト動物)に、本明細書に記載される少なくとも1つの抗体、抗体断片または組成物の有効量を投与することを含む、癌を治療または予防するための方法に関する。
【0016】
いくつかの態様において、該抗体または抗体断片はVISTAに結合し、それにより、癌に対する免疫性応答を調節するかまたは高める。いくつかの態様において、癌は、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群および/または骨髄腫である。いくつかの態様において、癌は、リンパ性白血病または骨髄性白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性(myeloid)(骨髄性(myelogenous))白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞白血病、T細胞前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病、または成体T細胞白血病を含む、任意の種類または型の白血病であり得る。いくつかの態様において、該リンパ腫は組織球リンパ腫であり、いくつかの態様において、癌は多発性骨髄腫である。いくつかの態様において、癌は、固形腫瘍、例えば黒色腫または膀胱癌である。いくつかの態様において、癌は、肺癌(例えば非小細胞肺癌(NSCLC))である。いくつかの治療方法はさらに、ワクチン(例えば、ウイルスベクターワクチン、細菌ワクチン、細胞系ワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、ペプチドワクチンまたはタンパク質ワクチン)を投与する工程を含む。本発明はまた、腫瘍増殖の抑制を必要とする個体における腫瘍増殖を抑制するための方法に関し、該方法は、本明細書に記載される有効な抗体もしくは抗体断片または組成物を投与する工程を含む。
【0017】
該組成物、抗体もしくは断片または他の薬剤(例えばワクチン)は、任意の非経口的手段または非経口ではない手段、例えば静脈内(IV)、皮下(SQ)または経口(PO)により投与され得る。
【0018】
いくつかの態様において、該組成物、抗体または断片は、3か月毎、毎週、2週間毎に1回、3週間毎に1回または4週間毎に1回で投与される。いくつかの態様において、他の薬剤または治療剤は、本明細書に記載される抗体、断片および組成物の前、間または後に共投与される。共投与される剤は、抗体、断片もしくは組成物と同じ経路で投与され得るかまたは異なる経路で投与され得る。
【0019】
本発明はまた、抗体、断片および組成物を作製する方法、例えば、宿主細胞を、該抗体の産生のための条件下で培養する工程を含む本明細書に記載される抗体または断片を産生する方法を含む。該方法はさらに、該抗体を単離する工程を含み得る。本発明はまた、核酸、例えば抗体および断片をコードするヌクレオチド配列を含む単離された核酸、例えばプロモーターに操作可能に連結された、かかる核酸を含む発現ベクター、およびかかる発現ベクターで形質転換された宿主細胞に関する。
【0020】
本発明はまた、抗VISTA抗体を含む組成物および容器を含み、癌を治療するために該組成物を使用し得ることを示す使用説明書またはラベルをさらに含む、キットおよび製造品に関する。
【0021】
本発明はまた、T細胞活性化VドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む単離された抗体またはその抗体断片を提供し、ここで該抗体は、配列番号:25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号:26のアミノ酸配列を有するVH CDR2および配列番号:27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに配列番号:28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号:29のアミノ酸配列を有するVL CDR2および配列番号:30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む。いくつかの態様において、該抗体または抗体断片は、1つ以上のヒト化またはヒトフレームワーク領域を含む。特定の態様において、該抗体または抗体断片は、配列番号:37を含む抗体VHドメインおよび/または配列番号:44を含む抗体VLドメインを含む。ある態様において、該抗体は、重鎖定常領域(例えば、ヒト重鎖定常領域)および/または軽鎖定常領域(例えば、配列番号:56に存在する軽鎖定常領域などのヒト軽鎖定常領域)を含む。好ましくは、重鎖定常領域は、IgG1重鎖定常領域(例えば、配列番号:61に存在するIgG1重鎖定常領域)である。特定の態様において、IgG1重鎖定常領域は、抗体のプロテアーゼ耐性を高めるように改変された。プロテアーゼ耐性を高めるように改変されたIgG1重鎖定常領域の例は、配列番号:60に存在するIgG1重鎖定常領域である。ある態様において、該抗体または抗体断片は、配列番号:60を含む重鎖および配列番号:56を含む軽鎖、または配列番号:61を含む重鎖および配列番号:56を含む軽鎖を含む。特定の態様において、該抗体または抗体断片は、フコシル化酵素を欠損した細胞(例えばフコシル化酵素を欠損したチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)中で発現される。
【0022】
本発明はまた、配列番号:25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号:26のアミノ酸配列を有するVH CDR2および配列番号:27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに配列番号:28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号:29のアミノ酸配列を有するVL CDR2および配列番号:30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む抗体またはその抗体断片、ならびに薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む組成物に関する。
【0023】
別の態様において、本発明は、癌の治療を必要する個体における癌を治療するための方法に関し、該方法は、被験体に、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗体または抗体断片の有効量を投与する工程を含み、ここで該抗体は、配列番号:25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号:26のアミノ酸配列を有するVH CDR2および配列番号:27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、さらに配列番号:28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号:29のアミノ酸配列を有するVL CDR2および配列番号:30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインを含む。特定の態様において、癌は肺癌である。さらなる態様において、肺癌は非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの態様において、該方法はさらに、第2の癌治療(例えば、手術、化学療法、放射線療法、生物学的療法、免疫調節療法およびそれらの組合せ)を施与する工程を含む。
【0024】
本発明はまた、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体またはその抗体断片を提供し、ここで該抗体は、VISTA(例えば、ヒトVISTA)中の構造的(conformational)エピトープに結合する。いくつかの態様において、該構造的エピトープは、ヒトVISTA(配列番号:46)の残基103~111(NLTLLDSGL(配列番号:62))および136~146(VQTGKDAPSNC(配列番号:63))を含むか、またはその中に存在する。別の態様において、構造的エピトープは、ヒトVISTA(配列番号:46)の残基24~36(LLGPVDKGHDVTF(配列番号:64))、54~65(RRPIRDLTFQDL(配列番号:65)および100~102(TMR)を含むか、またはその中に存在する。さらに別の態様において、構造的エピトープは、ヒトVISTA(配列番号:46)のFGループ中のアミノ酸残基を含む。
【0025】
また、本発明は、免疫応答の向上を必要とする個体に、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む、VISTAに結合する抗体またはその抗体断片の治療有効量を投与して、それにより癌に対する免疫応答を高める工程を含む、該個体における免疫応答を高める方法に関する。特定の態様において、該免疫応答は抗腫瘍免疫応答である。
【0026】
別の態様において、本発明は、生物学的応答の誘起を必要とする個体に、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む、VISTAに結合する抗体またはその抗体断片の治療有効量を投与して、それにより癌に対する免疫応答を高める工程を含む、該個体における生物学的応答を誘起する方法を提供する。生物学的応答の例としては、単球の活性化、T細胞増殖およびサイトカイン分泌の誘導、VISTAを発現する細胞の抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、ならびにVISTAを発現する細胞の抗体依存的細胞性貪食作用(ADCP)が挙げられる。
【0027】
即ち、本発明の要旨は、以下のものに関する。
項1
T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(V-domain Ig Suppressor of T cell Activation)(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む単離された抗体であって、該抗体は:
(a)配列番号:55、59、60または61のアミノ酸配列を有する重鎖(HC);および
(b)配列番号:56のアミノ酸配列を有する軽鎖(LC)
を含む、単離された抗体。
項2
該抗体のHCが、配列番号:55のアミノ酸配列を有する、項1記載の抗体。
項3
該抗体のHCが、配列番号:59のアミノ酸配列を有する、項1記載の抗体。
項4
該抗体のHCが、配列番号:60のアミノ酸配列を有する、項1記載の抗体。
項5
該抗体のHCが、配列番号:61のアミノ酸配列を有する、項1記載の抗体。
項6
項1~5いずれか記載の抗体および薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、組成物。
項7
a)項1~5いずれか記載のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗体、および
b)ワクチン
を含む、組成物。
項8
a)項1~5いずれか記載のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体、および
b)ワクチン
を含む、医薬組成物であって、該抗体の結合が、免疫応答を調節するかまたは高める、医薬組成物。
項9
癌の治療または予防を必要とする個体において癌を治療または予防するための、項6~8いずれか記載の組成物。
項10
該個体が哺乳動物である、項9記載の組成物。
項11
項1~5いずれか記載のT細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体を含む、癌の治療を必要とする個体において癌を治療するための医薬組成物。
項12
癌が、
白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群もしくは骨髄腫、またはそれらの組合せである;
固形腫瘍である;あるいは
肺癌である、項11記載の医薬組成物。
項13
白血病が、リンパ球白血病、骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性(myeloid)(骨髄性(myelogenous))白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞性白血病、T細胞前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病または成人T細胞白血病である;あるいは
肺癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)である、
項12記載の医薬組成物。
項14
固形腫瘍が、骨髄細胞、T細胞または骨髄細胞とT細胞の組合せを含む腫瘍ストロマに取り囲まれる;および/または
固形腫瘍が、骨髄細胞、T細胞または骨髄細胞とT細胞の組合せにより浸潤される、項12記載の医薬組成物。
項15
ワクチンと組み合わせて使用される、項11記載の組成物。
項16
項1~5いずれか記載の抗体を含む、腫瘍増殖の抑制を必要とする個体において腫瘍増殖を抑制するための医薬組成物。
項17
該組成物が、非経口的または非経口ではない様式で投与される;
投与される組成物または抗体の用量が、1回の投与当たり0.1~15mg/kgである;および/または
該組成物または抗体が、毎週、2週間に1回、3週間に1回、毎月1回、2ヶ月毎に1回または3ヶ月毎に1回投与される、項6~16いずれか記載の組成物。
項18
投与が、静脈内、皮下または経口的である、項17記載の組成物。
項19
項1~5いずれか記載の抗体を別々にまたは組み合わせてコードする、単離された1つまたは複数の核酸。
項20
プロモーターに操作可能に連結された項19記載の1つまたは複数の核酸を含む発現ベクター。
項21
項20記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞。
項22
プロモーターに操作可能に連結された項1~5いずれか記載の抗体をコードする1つまたは複数の核酸を含む宿主細胞を、該抗体の製造のための条件下で培養する工程を含む、項1~5いずれか記載の抗体を製造する方法。
項23
前記抗体を単離する工程をさらに含む、項22記載の方法。
項24
項11記載の組成物および容器を含み、癌を治療するために該組成物を使用し得ることを示す使用説明書または標識をさらに含む、製品。
項25
第2の癌治療と組み合わせて使用するための、項24記載の組成物。
項26
ワクチンが、ウイルスベクターワクチン、細菌ワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、ペプチドワクチンまたはタンパク質ワクチンである、項7、8または15記載の組成物。
項27
フコシル化(fucosylation)酵素を欠損する細胞中で発現される、項1~5いずれか記載の抗体。
項28
該細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、項27記載の抗体。
項29
項27または28記載の抗体、および薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、組成物。
項30
生物学的応答の誘起を必要とする個体において生物学的応答を誘起するための医薬組成物であって、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体を含み、VISTAへの抗体の結合により、免疫応答が高められ、該生物学的応答が、
a. 単球の活性化、
b. T細胞増殖およびサイトカイン分泌の誘導、
c. 単球の生存の増加、
d. VISTAを発現する細胞における抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)の誘導、および
e. VISTAを発現する細胞における抗体依存的細胞性貪食作用(ADCP)の誘導
からなる群より選択され、該抗体が項1~5いずれか記載の抗体である、医薬組成物。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、抗VISTA抗体および断片が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
特許または出願のファイルは、カラーで作成される少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(1つまたは複数)を有する本特許または特許出願公開公報の謄本は、申請および必要な手数料の支払いに応じて事務局により提供される。
図1図1A~1C: TF1 AML細胞上のVISTA発現を示すグラフ。フローサイトメトリーによるVISTAタンパク質の発現をTF-1 AML細胞株中に示す。
図2図2A~2E:ヒト骨髄およびリンパ球亜集団の同定のための染色およびゲーティング(gating)戦略を示すグラフ。
図3図3A~3G:1人の健常な正常ドナー由来のヒト骨髄およびリンパ球亜集団上のVISTAの発現を示すグラフ。
図4図4:複数の健常な正常ドナーにわたるヒト骨髄およびリンパ球亜集団上のVISTAの発現を示すグラフ。
図5図5A~5B:ヒト単球およびマクロファージ上のVISTAの発現の同定のための染色およびゲーティング(gating)戦略を示すグラフ。
図6図6A~6C:ヒト単球およびマクロファージ上のVISTAの発現を示すグラフ。
図7図7A~7E:ヒトTおよびNK細胞亜集団上のVISTAの発現の同定のための染色およびゲーティング(gating)戦略を示すグラフ。
図8図8A~8G:1人の健常な正常ドナー由来のヒトTおよびNK細胞亜集団上のVISTAの発現を示すグラフ。
図9図9:複数の健常な正常ドナーにわたるヒトTおよびNK細胞亜集団上のVISTAの発現を示すグラフ。
図10図10A~10D:ヒト樹状細胞亜集団上のVISTAの発現の同定のための染色およびゲーティング(gating)戦略を示すグラフ。
図11図11A~11C:1人の健常な正常ドナー由来のヒト樹状細胞亜集団および好塩基球上のVISTAの発現を示すグラフ。
図12図12:複数の健常な正常ドナーにわたるヒト樹状細胞亜集団および好塩基球上のVISTAの発現を示すグラフ。
図13図13A~13D:健常なヒト末梢血細胞上のVISTA発現の分析。多色フローサイトメトリー分析を使用した、健常なヒト末梢血細胞上のVISTA発現のプロフィール:2人の異なる個体由来の全血試料を、(図13A)単球SSClo,CD11bhiCD14hiCD16-veCD33+veHLA-DR+veCD19-ve)、(図13B)好中球(SSChiCD177+CD11bhiCD14loCD16+veCD33+veHLA-DR-veCD19-ve )上のVISTA発現について分析した。(図13C)CD4+ T細胞(CD3+veCD4+ve)および(図13D)CD8+ T細胞 (CD3+veCD8+ve)の分析のためにフィコール勾配を使用して末梢血単核細胞を単離した。
図14図14A~14C:肺癌患者および健常な対照ドナー由来の末梢血細胞上のVISTA発現の分析。多色フローサイトメトリー分析を使用した肺癌患者末梢血細胞上のVISTA発現のプロフィール:1人の個体由来の代表的なFACSプロット(図14A)を示す。フィコールにより末梢血単核細胞を単離し、(図14B)単球(CD14+ CD11b+ CD33+ HLADR+ CD15-)および(図14C)骨髄由来サプレッサー細胞(CD14- CD11b+ CD33-HLADR-CD15+ CD16+)上のVISTA発現について分析した。
図15図15A~15C:多色フローサイトメトリー分析を使用した結腸癌を有する患者由来の末梢血細胞におけるVISTA発現のプロフィール:1人の個体由来の代表的なFACSプロット(図15A)を示す。フィコールにより末梢血単核細胞を単離し、(図15B)単球(CD14+ CD11b+ CD33+ HLADR+ CD15-)および(図15C)骨髄由来サプレッサー細胞(CD14- CD11b+ CD33-HLADR-CD15+ CD16+)上のVISTA発現について分析した。
図16図16A~16D:多色フローサイトメトリー分析を使用したカニクイザル末梢血細胞上のVISTA発現のプロフィール:4匹の異なるサル由来の全血を、(図16A)単球(SSCloCD11bhiCD14hiHLA-DRhiCD16-veCD19-veおよび(図16B)好中球CD11bhiCD14loHLA-DR-veCD16-veCD19-ve上のVISTA発現について分析した。(図16C)CD4+ T細胞(TCRα/β+veCD4+ve)および(図16D)CD8+ T細胞(TCRα/β+veCD8+ve)の分析について、フィコール勾配を使用して3匹のサル由来の末梢血単核細胞を単離した。
図17図17:造血(Heme)細胞株におけるVISTA RNAの絶対発現値を示すグラフ。
図18図18:マウスA20細胞にGFPまたはヒトVISTAのいずれかを安定にトランスフェクトした。これをovaペプチドおよびDO11.10 T細胞とインキュベートした。インキュベーション開始の24時間後にT細胞によるCD25発現を測定した。A20-huVISTA細胞はT細胞によるCD25発現を抑制するが、この読み出しは、VSTB95とのインキュベーションにより有意に回復される。
図19図19A~19F:ヒトVISTA ELISA結果を示すグラフ。
図20図20A~20F:ヒトVISTAを発現する細胞に結合する抗VISTA抗体結合を示すヒトVISTA FACSの結果。
図21図21A~21D:30μg/ml~0.0μg/mlの混合リンパ球反応液における6個の抗VISTA抗体候補の希釈試験。
図22図22A~22B:30μg/ml~0.0μg/mlのSEBアッセイ(個々のCPM数およびIFN-g濃度)における6個の抗VISTA抗体候補の希釈試験。
図23図23:Proteon SPRチップ上にコーティングされた抗VISTA抗体VSTB85および示された競合剤を有するVISTAタンパク質を使用して、センサーグラム(Sensorgram)プロットをチップ上に走らせる(表16に列挙される競合剤)。
図24図24:MB49マウス膀胱腫瘍モデルの実験設計。
図25図25A~25B:メスC57Bl/6マウスにおけるMB49腫瘍増殖。グラフは、抗マウスVISTA抗体(図25B)または対照IgG(図25A)で治療した個々のマウスにおける腫瘍増殖を示す。
図26図26:ヒトVISTA(配列番号:46)のアミノ酸配列。
図27図27:VISTAオルソログ(orthologue)の複数の配列整列。
図28図28:HDXに決定される、VSTB50およびVSTB60抗体(上)またはVSTB95およびVSTB112抗体(下)に結合されるヒトVISTAの領域。
図29図29:VSTB112に結合されるVISTAエピトープ。(上)VISTAは鎖を標識して画像に示される。複合体中のVSTB112の5Å内に少なくとも1つの原子を有する残基は青色である。青色とオレンジ色の球は鎖の切断を強調し、シアンと緑色の球は、VISTA構造のN末端およびC末端のそれぞれを記す。(下)構造決定に使用されるVISTA構築物の配列。配列の下の丸は、主要な鎖のみをVSTB112と接触させる残基を示すために使用され、三角は側鎖の接触を示し、正方形は、側鎖の接触がPISAにより計算される水素結合または塩架橋相互作用のいずれかを生じることを示す。形状は、図59に定義されるCDRの色を有する所定の残基により接触される最大数の原子を有するCDRを示すように色付けされる。二次構造要素は、βストランドを表す黄色の矢印およびαへリックスを示す赤色の四角によりプログラムMOEにおいて定義されたものと同様である。
図30図30:VSTB112パラトープ(Paratope)。(上)VISTA抗原を図中に示し、下記の配列中に特定されるように、VISTAの5オングストローム(Å)内のVSTB112を、CDR同一性を示すために使用される色を付けて表面に示す。CDRに隣接するフレームワーク残基の接触は、対応するCDRと同様に色付けする。(下)VSTB112 Fv領域の配列。色付けされた背景はKabat定義に従ってCDRを特定する。配列の下の丸は、主要な鎖のみをVISTAに接触させる残基を示すために使用され、三角は側鎖の接触を示し、正方形は、側鎖の接触が、PISAにより計算される水素結合または塩架橋相互作用のいずれかを生じることを示す。
図31図31:結晶学および水素重水素交換(HDX)により同定されるエピトープ領域の比較。構造決定に使用されるVISTA構築物の配列。配列の下の丸は、主鎖のみをVSTB112と接触させる残基を示すために使用され、三角は側鎖の接触を示し、正方形は、側鎖の接触が、PISAにより計算される水素結合または塩架橋相互作用のいずれかを生じることを示す。
図32図32:VSTB174 (VSTB112由来)による全PBMCにおけるCD14+単球の活性化。実験のそれぞれの部分において、細胞は、PBS、IgG1対照抗体またはVSTB174と、1、0.1または0.01ug/mlでインキュベートした。左のパネルはCD80 MFIを示し、右のパネルはHLA-DR MFIを示す(2人のドナーを試験して、代表的な結果を示す)。
図33図33:K562-VISTA細胞に対するVSTB174のADCC活性を示すグラフ。
図34図34:K562-VISTA細胞に対するVSTB174のADCP活性を示すグラフ。示される両方の抗体は、同じFabを有するが、VSTB174はIgG1 Fcを有し、VSTB140はFcサイレントIgG2を有する。
図35図35: K562-VISTAに対するVSTB174、VSTB149またはVSTB140 mAbにより媒介される貪食作用を示すグラフ。それぞれのmAbは、0.0008μg/ml~0.56μg/mlの範囲の7個の半log用量で試験した。
図36図36:骨髄細胞株K562細胞に対するVSTB174、VSTB149またはVSTB140 mAbにより媒介される貪食作用を示すグラフ。それぞれのmAbは、0.0008μg/ml~0.56μg/mlの範囲の7個の半log用量で試験した。
図37図37:メスVISTA-KIマウスにおける、1、5、7.5および10mg/kgのVSTB123を評価するMB49腫瘍有効性試験。移植の6日後に投薬を開始した際の腫瘍体積は約50mm3であった。VSTB123は、マウスFc骨格に移植したVSTB112 Fabであり、VISTA-KIマウスにおいてヒトVISTAに結合する。
図38図38:高い/中程度のレベルのVISTAを発現するCD14+細胞が、患者の肺癌試料、遠位の肺組織および末梢血の13/13に見られることを示すグラフ。
図39図39:GG8を使用した肺癌におけるVISTAのIHC染色。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明の例示態様の説明を以下にする。
【0031】
本発明は、T細胞活性化のVドメイン免疫グロブリンサプレッサー(V-domain Immunoglobulin Suppressor of T cell Activation)(VISTA)(Genbank: JN602184)(Wang et al., 2010, 2011) で指定された新規の免疫グロブリンファミリーリガンドに対する抗体に関する。VISTAはPD-L1に対して相同性を有するが、造血区画に限定される特有の発現パターンを示す。具体的に、VISTAは、CD11bhigh骨髄細胞上で構成的に高く発現され、CD4+およびCD8+ T細胞上でより低いレベルで発現される。ヒトホモログは、マウスVISTAと約85%の相同性を有し、同様の発現パターンを有する(Lines et al., Cancer Research 74:1924, 2014)。抗原提示細胞(APC)上で発現されるVISTAは、CD4+およびCD8+ T細胞の増殖、ならびにPD-1とは独立した同種受容体を介したサイトカイン産生を抑制する。受動的EAE(実験的自己免疫脳脊髄炎)疾患モデルにおいて、VISTA特異的モノクローナル抗体は、T細胞依存的免疫応答を高め、疾患を悪化させた。腫瘍細胞上のVISTA過剰発現により、腫瘍保有宿主において、保護的抗腫瘍免疫が損なわれた。ヒトVISTAの試験により、ヒトT細胞に対するその抑制性機能が確認された(Lines et al Cancer Research 74:1924, 2014。Fliesらの試験でも、強力な免疫抑制性分子としてVISTA(PD-1Hと命名)が同定された(Flies et al., 2011)。VISTAは、それらの全体において参照により本明細書において全てが援用される米国公開特許出願US 20130177557 A1および米国特許第7,919,585号および8,236,304号においてさらに詳細に記載される。
【0032】
VISTAは、免疫応答を抑制する新規の負のチェックポイント制御因子である。本明細書の実施例12に記載されるように、マウス腫瘍モデルにおけるVISTA特異的モノクローナル抗体を用いた治療により、腫瘍免疫微小環境の抑制性の特徴が逆転され、保護的抗腫瘍免疫が高められ、それにより癌免疫療法のための新規の治療としてVISTAモノクローナル抗体の能力が示された。
【0033】
本発明の抗体および断片
用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体および抗イディオタイプ(抗Id)抗体、ならびに限定されないが酵素切断、ペプチド合成または組み換え技術などの任意の公知の技術により提供されるそれらの断片、領域または誘導体を含むことを意味する。本発明の抗VISTA抗体は、免疫応答を調節、制御または高めるVISTAの一部に結合し得る。いくつかの態様において、該抗体は、本明細書に記載される1つ以上の抗VISTA抗体を競合的に阻害する。2つ以上の抗体が同じ標的への結合について競合するかどうかを決定するための方法は、当該技術分野で公知である。例えば、競合結合アッセイを使用して、1つの抗体がもう1つの抗体の標的への結合を遮断するかどうかを決定し得る。典型的に、競合結合アッセイは、固相支持体または細胞のいずれかに結合された精製された標的抗原(例えばPD-1)、非標識試験結合分子、および標識された参照結合分子の使用を含む。競合的阻害は、試験結合分子の存在下で固相表面または細胞に結合した標識の量を決定することにより測定される。通常、試験結合分子は過剰に存在する。典型的に、競合結合分子が過剰に存在する場合、該結合分子は、共通の抗原に対する参照結合分子の特異的な結合を、少なくとも50~55%、55~60%、60~65%、65~70%、70~75%以上まで阻害する。いくつかの態様において、競合的阻害は、競合的阻害ELISAアッセイを使用して決定される。
【0034】
ポリクローナル抗体は、抗原で免疫された動物の血清由来の抗体分子の不均一な集団である。モノクローナル抗体は、抗原に特異的な抗体の実質的に均一な集団を含み、該集団は、実質的に同様のエピトープ結合部位を含む。モノクローナル抗体は、当業者に公知に方法により得られ得る。例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495-497 (1975)、米国特許第4,376,110号、Ausubelら編、Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1987, 1992)、およびHarlow and Lane ANTIBODIES: A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory (1988)、Colliganら編, Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993)(これらの全ての内容は、参照により本明細に全体的に援用される)参照。かかる抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA、GILDを含む任意の免疫グロブリンのクラスおよびそれらの任意のサブクラスのものであり得る。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロ、インサイチュまたはインビボで培養され得る。
【0035】
本発明はまた、抗体模倣物を含むか、または抗体もしくはその特定の断片もしくは部分の構造および/または機能を模倣する抗体の一部、例えば単鎖抗体およびその断片を含む、それらの消化断片、特定の部分およびバリアントを包含する。機能的断片としては、哺乳動物VISTAタンパク質に結合する抗原結合断片が挙げられる。例えば、限定されないがFab(例えば、パパイン消化による)、Fab'(例えば、ペプシン消化および部分還元による)およびF(ab')2(例えば、ペプシン消化による)、facb(例えば、プラスミン消化による)、pFc'(例えば、ペプシンまたはプラスミン消化による)、Fd(例えば、ペプシン消化、部分還元および再集合による)、FvまたはscFv(例えば、分子生物学技術による)の断片を含む、VISTAまたはその一部に結合し得る抗体断片が本発明に包含される(例えば、Colligan, Immunology上述、参照)。本発明の抗体断片は、Aaron L. Nelson, mAbs 2:1, 77-83 (January/February 2010)(その内容は全体において参照により援用される)において議論および記載されるものも含む。
【0036】
かかる断片は、例えば、当該技術分野で公知であるおよび/または本明細書に記載される酵素切断、合成または組み換え技術により製造され得る。抗体は、天然の停止部位の上流に1つ以上の停止コドンを導入した抗体遺伝子を使用して、種々の切断形態でも製造され得る。例えば、F(ab')2重鎖部分をコードする組み合わせ遺伝子は、CH1ドメインおよび/または重鎖のヒンジ領域をコードするDNA配列を含むように設計され得る。抗体の種々の部分を共に、従来技術により化学的に接合し得るか、または遺伝子工学的技術を使用して連続タンパク質として調製し得る。
【0037】
一態様において、免疫グロブリン鎖またはその一部(例えば、可変領域CDR)のアミノ酸配列は、本明細書に記載される対応する可変配列鎖のアミノ酸配列と、約70~100%の同一性(例えば、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはその中の任意の範囲もしくは値)を有する。好ましくは、当該技術分野で公知のように、適切なコンピューターアルゴリズムを使用して、70~100%のアミノ酸同一性(例えば、85、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100またはその中の任意の範囲もしくは値)が決定される。
【0038】
重鎖および軽鎖の可変領域配列の例を本明細書に示す。
【0039】
本発明の抗体またはその特定のバリアントは、本発明の抗体由来の任意の数の連続アミノ酸残基を含み得、ここで、その数は、抗TNF抗体中の連続残基の数の10~100%からなる整数の群より選択される。任意に、連続アミノ酸のこの下位配列は、少なくとも約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、210、220、230、240、250以上のアミノ酸長であるか、またはその中の任意の範囲もしくは値である。さらに、かかる下位配列の数は、1~20、例えば少なくとも2、3、4または5からなる群より選択される任意の整数であり得る。
【0040】
当業者に理解されるように、本発明は、少なくとも1つの生物学的に活性な本発明の抗体を含む。生物学的に活性な抗体は、天然(非合成)、内因性または関連のある公知の抗体の特異的活性の少なくとも20%、30%または40%、好ましくは少なくとも50%、60%または70%、最も好ましくは少なくとも80%、90%または95%~100%の特異的な活性を有する。酵素活性および基質特異性の測定値をアッセイおよび定量する方法は、当業者に周知である。
【0041】
実質的な類似性とは、天然(非合成)、内因性または関連のある公知の抗体の少なくとも85%(例えば少なくとも95%)の同一性および少なくとも85%(例えば少なくとも95%)の活性を有する化合物をいう。
【0042】
本明細書で使用する場合、用語「ヒト抗体」は、タンパク質の実質的に全ての部分(例えば、CDR、フレームワーク、CL、CHドメイン(例えばCH1、CH2、CH3)、ヒンジ、(VL、VH))がヒトにおいて実質的に免疫原性ではなく、わずかな配列の変化またはバリエーションのみを有する抗体をいう。同様に、霊長類(サル、ヒヒ、チンパンジー等)、げっ歯類(マウス、ラット等)および他の哺乳動物に指定される抗体は、かかる種、亜属、属、亜科、科の特異的な抗体を指定する。さらに、キメラ抗体は、上記のものの任意の組合せを含み得る。かかる変化又はバリエーションは、任意にかつ好ましくは、改変されない抗体と比較して、ヒトまたは他の種における免疫原性を保持するかまたは低減する。したがって、ヒト抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体とは異なる。ヒト抗体は、機能的に再編成されたヒト免疫グロブリン(例えば、重鎖および/または軽鎖)遺伝子を発現し得る非ヒト動物または原核細胞もしくは真核細胞により産生され得ることが指摘される。さらに、ヒト抗体が単鎖抗体である場合、該抗体は、天然のヒト抗体には見られないリンカーペプチドを含み得る。例えば、Fvは、2~約8個のグリシンまたは他のアミノ酸残基などの、重鎖の可変領域および軽鎖の可変領域をつなぐリンカーペプチドを含み得る。かかるリンカーペプチドはヒト起源であると考えられる。
【0043】
少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体、好ましくはヒトまたはヒト化抗体である二重特異性、ヘテロ特異性、ヘテロコンジュゲートまたは同様の抗体も使用し得る。この場合において、結合特異性の1つは、少なくとも1つのVISTAタンパク質のためのものであり、他のものは任意の他の抗原のためのものである。二重特異性抗体を作製するための方法は当該技術分野で公知である。二重特異性抗体の組み換え作製は、2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの共発現に基づき得、ここで2つの重鎖は異なる特異性を有する(Milstein and Cuello, Nature 305:537 (1983))。WO 93/08829、米国特許第6,210,668号、6,193,967号、6,132,992号、6,106,833号、6,060,285号、6,037,453号、6,010,902号、5,989,530号、5,959,084号、5,959,083号、5,932,448号、5,833,985号、5,821,333号、5,807,706号、5,643,759号、5,601,819号、5,582,996号、5,496,549号、4,676,980号、WO 91/00360、WO 92/00373、EP 03089、Traunecker et al., EMBO J. 10:3655 (1991)、Suresh et al., Methods in Enzymology 121:210 (1986)(それぞれは全体的に参照により本明細書に援用される)も参照。
【0044】
一態様において、本発明は、VISTAを標的化する二重特異性抗体および第2の標的タンパク質(例えば、免疫チェックポイントタンパク質)に関する。例示的な二重特異性抗体としては、VISTAおよびPD-L1を標的化する二重特異性抗体ならびにVISTAおよびPD-L2を標的化する二重特異性抗体が挙げられる。
【0045】
ヒトVISTAタンパク質に特異的なヒト抗体またはその断片は、VISTAタンパク質またはその一部などの適切な免疫原性抗原(合成ペプチドなどの合成分子を含む)に対して生じ得る。
【0046】
他の特異的または一般的な哺乳動物抗体は同様に生じ得る。免疫原性抗原調製およびモノクローナル抗体産生は、任意の適切な技術を使用して実施され得る。
【0047】
例えば、ハイブリドーマは、適切な不死細胞株(例えば、限定されないが、Sp2/0、Sp2/0-AG14、NSO、NS1、NS2、AE-1、L.5、>243、P3X63Ag8.653、Sp2 SA3、Sp2 MAI、Sp2 SS1、Sp2 SA5、U937、MLA 144、ACT IV、MOLT4、DA-1、JURKAT、WEHI、K-562、COS、RAJI、NIH 3T3、HL-60、MLA 144、NAMAIWA、NEURO 2A等の骨髄腫細胞株、またはヘテロミエローマ(heteromylomas)、それらの融合産物、または任意の細胞もしくはそれら由来の融合細胞、または当該技術分野で公知である任意の他の適切な細胞株(例えば、www.atcc.org参照)と抗体産生細胞を融合させることにより作製される。抗体産生細胞としては、単離されたもしくはクローン化された脾臓、末梢血、リンパ、扁桃または他の免疫細胞(例えばB細胞)、または重鎖もしくは軽鎖の定常領域もしくは可変領域もしくはフレームワークもしくは相補性決定領域(CDR)配列を発現する任意の他の細胞が挙げられ得る。かかる抗体産生細胞は、組み換えまたは内因性細胞であり得、原核細胞または真核細胞(例えば、げっ歯類、ウマ、ヒツジ(ovine)、ヤギ、ヒツジ(sheep)、霊長類などの哺乳動物)でもあり得る。例えば、参照により本明細書中に全体的に援用されるAusubel上述およびColligan, Immunology上述、chapter 2、参照。
【0048】
抗体産生細胞はまた、ヒトまたは目的の抗原で免疫された他の適切な動物の末梢血、好ましくは脾臓もしくはリンパ節から得られ得る。任意の他の適切な宿主細胞は、本発明の抗体またはその特定の断片もしくはバリアントをコードするヘテロまたは内因性の核酸を発現させるためにも使用され得る。融合された細胞(ハイブリドーマ)または組み換え細胞は、選択培養条件または他の適切な公知の方法を使用して単離され得、限界希釈もしくはセルソーター、または他の公知の方法によりクローニングされ得る。所望の特異性を有する抗体を産生する細胞は、適切なアッセイ(例えば、酵素標識イムノソルベント検定法(ELISA))により選択され得る。
【0049】
限定されないが、ペプチドまたはタンパク質ライブラリー(例えば、限定されないがバクテリオファージ、リボソーム、オリゴヌクレオチド、RNA、cDNA等、ディスプレーライブラリー;例えばCambridge antibody Technologies, Cambridgeshire, UK; MorphoSys, Martinsreid/Planegg, DE; Biovation, Aberdeen, Scotland, UK; Bioinvent, Lund, Sweden; Dyax Corp., Enzon, Affymax/Biosite; Xoma, Berkeley, Calif.; Ixsysから入手可能)から組み換え抗体を選択する方法、例えばPCT/GB91/01134;PCT/GB92/01755;PCT/GB92/002240;PCT/GB92/00883;PCT/GB93/00605;PCT/GB94/01422;PCT/GB94/02662;PCT/GB97/01835;WO90/14443;WO90/14424;WO90/14430;PCT/U594/1234;WO92/18619;WO96/07754;EP 614 989;WO95/16027;WO88/06630;WO90/3809;米国特許第4,704,692号;PCT/US91/02989;WO89/06283;EP 371 998;EP 550 400;EP 229 046;PCT/US91/07149参照、または確率論的に産生されるペプチドまたはタンパク質-米国特許第5,723,323号;5,763,192号;5,814,476号;5,817,483号;5,824,514号;5,976,862号;WO 86/05803、EP 590 689(それぞれは参照により全体的に本明細書に援用される)、またはトランスジェニック動物の免疫に頼る方法(例えば、SCIDマウス、Nguyen et al., Microbiol. Immunol. 41:901-907 (1997);Sandhu et al., Crit. Rev. Biotechnol. 16:95-118 (1996);Eren et al., Immunol. 93:154-161 (1998)(それぞれは全体的に参照により援用される)ならびに関連のある特許および特許出願)、当該技術分野で公知であるおよび/または本明細書に記載されるヒト抗体のレパートリーを産生し得る方法を含む、必要な特異性を有する抗体を産生または単離する他の適切な方法を使用し得る。かかる技術としては限定されないが、リボソームディスプレイ(Hanes et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 94:4937-4942 (May 1997); Hanes et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95:14130-14135 (November 1998)); single cell antibody producing technologies (米国特許第5,627,052号, Wen et al., J. Immunol. 17:887-892 (1987); Babcook et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:7843-7848 (1996));ゲル微小液滴およびフローサイトメトリー(Powell et al., Biotechnol. 8:333-337 (1990); One Cell Systems, Cambridge, Mass.; Gray et al., J. Imm. Meth. 182:155-163 (1995); Kenny et al., Bio/Technol. 13:787-790 (1995));B細胞選択(Steenbakkers et al., Molec. Biol. Reports 19:125-134 (1994); Jonak et al., Progress Biotech, Vol. 5, In Vitro Immunization in Hybridoma Technology, Borrebaeck, ed., Elsevier Science Publishers B.V., Amsterdam, Netherlands (1988)が挙げられる。
【0050】
非ヒト抗体またはヒト抗体を分子生物学的に作り変えるかまたはヒト化するための方法も使用され得、当該技術分野で周知である。一般的に、ヒト化されたかまたは分子生物学的に作り変えられた抗体は、非ヒト、例えば限定されないがマウス、ラット、ウサギ、非ヒト霊長類または他の哺乳動物である供給源由来の1つ以上のアミノ酸残基を有する。これらのヒトアミノ酸残基はしばしば、「導入(import)」残基と称され、典型的には、公知のヒト配列の「導入」可変、定常または他のドメインから得られる。公知のヒトIg配列は、例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/query.fcgi;www.atcc.org/phage/hdb.htmlに開示され、それぞれは全体的に参照により本明細書に援用される。
【0051】
かかる導入された配列を使用して、免疫原性を低減し得るか、または当該技術分野で公知のように、結合性、親和性、アビディティー、特異性、半減期もしくは任意の他の適切な特性を低減し得るか、高め得るか、または改変し得る。非ヒトまたはヒトCDR配列の一般的に一部または全てが維持されるが、フレームワークおよび/または定常領域の非ヒト配列の一部または全ては、ヒトまたは他のアミノ酸と置換される。抗体はまた、抗原についての高い親和性および他の好ましい生物学的特性を維持しつつ、当業者に公知の三次元免疫グロブリンモデルを使用して、任意にヒト化され得る。選択される候補免疫グロブリン配列の可能性のある三次元立体構造を図示し、表示するコンピュータープログラムが利用可能である。これらの表示を調べることにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の解析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の解析が可能になる。この方法において、フレームワーク(FR)残基は、標的抗原(1つまたは複数)への親和性の増加などの所望の抗体特性を達成するように、コンセンサス配列および導入配列から選択されて組み合わされ得る。一般的に、CDR残基は、直接的に、最も実質的に、抗原結合に影響を及ぼすことに関与する。本発明の抗体のヒト化または分子生物学的作り変えは、限定されないが、本明細書において引用される参考文献に含まれる、例えばWinter (Jones et al., Nature 321:522 (1986); Riechmann et al., Nature 332:323 (1988); Verhoeyen et al., Science 239:1534 (1988)), Sims et al., J. Immunol. 151: 2296 (1993); Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901 (1987), Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 89:4285 (1992); Presta et al., J. Immunol. 151:2623 (1993), 米国特許第5,723,323号、5,976862号、5,824514号、5,817483号、5,814476号、5,763,192号、5,723,323号、5,766,886号、5,714,352号、6,204,023号、6,180,370号、5,693,762号、5,530,101号、5,585,089号、5,225,539号、4,816,567号(それぞれは全体的に参照により本明細書に援用される)に記載されるものなどの任意の公知の方法を使用して実施され得る。
【0052】
抗VISTA抗体は任意に、本明細書に記載され、および/または当該技術分野で公知のように、ヒト抗体のレパートリーを産生し得るトランスジェニック動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ハムスター、非ヒト霊長類等)の免疫によっても産生され得る。ヒト抗VISTA抗体を産生する細胞は、かかる動物から単離され得、本明細書に記載される方法などの適切な方法を使用して不死化され得る。
【0053】
ヒト抗原に結合するヒト抗体のレパートリーを産生し得るトランスジェニック動物は、公知の方法(例えば、限定されないが、Lonbergらに発行された米国特許第5,770,428号、5,569,825号、5,545,806号、5,625,126号、5,625,825号、5,633,425号、5,661,016号および5,789,650号;Jakobovits et al. WO 98/50433、Jakobovits et al. WO 98/24893、Lonberg et al. WO 98/24884、Lonberg et al. WO 97/13852、Lonberg et al. WO 94/25585、Kucherlapate et al. WO 96/34096、Kucherlapate et al. EP 0463 151 B1、Kucherlapate et al. EP 0710 719 A1、Surani et al. 米国特許第5,545,807号、Bruggemann et al. WO 90/04036、Bruggemann et al. EP 0438 474 B1、Lonberg et al. EP 0814 259 A2、Lonberg et al. GB 2 272 440 A、Lonberg et al. Nature 368:856-859 (1994)、Taylor et al., Int. Immunol. 6(4)579-591 (1994)、Green et al, Nature Genetics 7:13-21 (1994)、Mendez et al., Nature Genetics 15:146-156 (1997)、Taylor et al., Nucleic Acids Research 20(23):6287-6295 (1992)、Tuaillon et al., Proc Natl Acad Sci USA 90(8)3720-3724 (1993)、Lonberg et al., Int Rev Immunol 13(1):65-93 (1995)およびFishwald et al., Nat Biotechnol 14(7):845-851 (1996)(これらはそれぞれ参照により全体的に本明細書に援用される))により作製され得る。一般的に、これらのマウスは、機能的に再配列されるかまたは機能的再配列を受け得る少なくとも1つのヒト免疫グロブリン座由来のDNAを含む少なくとも1つのトランスジーンを含む。かかるマウスにおける内因性免疫グロブリン座は、乱され得るかまたは欠損され得、内因性遺伝子によりコードされる抗体を産生する動物の能力が削除される。
【0054】
同様のタンパク質または断片への特異的な結合のための抗体のスクリーニングは、ペプチドディスプレーライブラリーを使用して都合よく達成され得る。この方法は、所望の機能または構造を有する個々のメンバーについてのペプチドの大集団のスクリーニングを含む。ペプチドディスプレーライブラリーの抗体スクリーニングは当該技術分野で周知である。表示されるペプチド配列は、3~5000以上のアミノ酸長、頻繁に5~100アミノ酸長、およびしばしば約8~25アミノ酸長であり得る。ペプチドライブラリーを作製するための直接化学的合成法に加えて、いくつかの組み換えDNA法が記載されている。1つの種類は、バクテリオファージまたは細胞の表面上のペプチド配列の表示を含む。それぞれのバクテリオファージまたは細胞は、特定の表示されたペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を含む。かかる方法は、PCT特許公報91/17271, 91/18980、91/19818および93/08278に記載される。ペプチドのライブラリーを作製するための他の系は、インビトロ化学合成および組み換え法の両方の局面を有する。PCT 特許公報92/05258、92/14843および96/19256参照。また米国特許第5,658,754号および5,643,768号参照。ペプチドディスプレーライブラリー、ベクター及びスクリーニングキットは、Invitrogen (Carlsbad, Calif.)およびCambridge antibody Technologies (Cambridgeshire, UK)などの供給業者から市販される。例えば、Dyaxに付与された米国特許第4,704,692号、4,939,666号、4,946,778号、5,260,203号、5,455,030号、5,518,889号、5,534,621号、5,656,730号、5,763,733号、5,767,260号、5,856,456号、5,223,409号、5,403,484号、5,571,698号、5,837,500号、Cambridge antibody Technologiesに付与された米国特許第5,427,908号、5,580,717号、5,885,793号、Genentechに付与された米国特許第5,750,373号;5,618,920号、5,595,898号、5,576,195号、5,698,435号、5,693,493号および5,698,417号、参照。
【0055】
本発明の抗体はまた、乳汁に本発明の抗体を産生するヤギ、ウシ、ヒツジ等のトランスジェニック動物を提供するために、少なくとも1つの抗VISTA抗体をコードする核酸を使用して調製され得る。かかる動物は公知の方法を使用して提供され得る。例えば、限定されないが、参照により本明細書に全体的に援用される米国特許第5,827,690号、5,849,992号、4,873,316号、5,849,992号、5,994,616号、5,565,362号、5,304,489号等参照。
【0056】
本発明の抗VISTA抗体は、公知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用しても産生され得る。例えば、Fischer et al., Biotechnol. Appl. Biochem. 30:99-108 (October, 1999)、Cramer et al., Curr. Top. Microbol. Immunol. 240:95-118 (1999)および本明細書に引用される参考文献、Ma et al., Trends Biotechnol. 13:522-7 (1995)、Ma et al., Plant Physiol. 109:341-6 (1995)、Whitelam et al., Biochem. Soc. Trans. 22:940-944 (1994)および本明細書に引用される参考文献も参照。上述の参考文献のそれぞれは、参照により本明細書に全体的に援用される。
【0057】
本発明の抗体は、広範な親和性(KD)でヒトVISTAに結合し得る。好ましい態様において、本発明の少なくとも1つのヒトモノクローナル抗体は任意に、高い親和性でヒトVISTAに結合し得る。例えば、ヒトモノクローナル抗体は、約10-7M以下のKD、例えば限定されないが、0.1~9.9(またはその中の任意の範囲もしくは値)x10-7、10-8、10-9、10-10、10-11、10-12、10-13またはその中の任意の範囲もしくは値でヒトVISTAに結合し得る。いくつかの態様において、該抗体または抗体断片は、少なくとも1x10-7リットル/モル、例えば少なくとも1x10-8リットル/モル、例えば少なくとも1x10-9リットル/モルリットル/モルの親和性でヒトVISTAに結合し得る。
【0058】
抗原についての抗体の親和性またはアビディティーは、任意の適切な方法を使用して実験的に決定され得る。(例えばBerzofsky, et al., “Antibody-Antigen Interactions,” In Fundamental Immunology, Paul, W. E., Ed., Raven Press: New York, N.Y. (1984)、Kuby, Janis Immunology, W.H. Freeman and Company: New York, N.Y. (1992)、および本明細書に記載される方法参照)。特定の抗体-抗原相互作用の測定される親和性は、異なる条件下(例えば、塩濃度、pH)で測定された場合、変化し得る。そのため親和性および他の抗原結合パラメーターの測定値(例えば、KD、Ka、Kd)は、好ましくは抗体および抗原の標準化された溶液ならびに標準化されたバッファにより作成される。
【0059】
核酸分子
特定の断片、そのバリアントもしくはコンセンサス配列の少なくとも1つの連続アミノ酸の少なくとも70~100%をコードするヌクレオチド配列、またはこれらの配列の少なくとも1つを含む受託されたベクターなどの本明細書に提供される情報を使用して、配列番号:1、2および3の重鎖可変CDR領域の全ておよび/または配列番号:4、5および6の軽鎖可変CDR領域の全てを含む少なくとも1つの抗VISTA抗体をコードする本発明の核酸分子は、本明細書に記載されるか当該技術分で公知の方法を使用して得られ得る。
【0060】
本発明の核酸分子は、mRNA、hnRNA、tRNAもしくは任意の他の形態などのRNAの形態、または限定されないがcDNAおよびクローニングにより得られるかもしくは合成により産生されるゲノムDNAを含むDNAの形態であり得るか、あるいはそれらの任意の組合せであり得る。DNAは、三重鎖、二重鎖もしくは単鎖、またはそれらの任意の組合せであり得る。DNAまたはRNAの少なくとも1つの鎖の任意の部分は、センス鎖としても知られるコーディング鎖であり得るか、またはアンチセンス鎖とも称されるノンコーディング鎖であり得る。
【0061】
本発明の単離された核酸分子としては、オープンリーディングフレーム(ORF)、例えば限定されないが、少なくとも1つの重鎖または軽鎖の少なくとも1つのCDR、例えばCDR1、CDR2および/またはCDR3の少なくとも1つの特定の部分を含む核酸分子、抗VISTA抗体もしくは断片、例えば可変領域を含む断片についてのコーディング配列を含む核酸分子、ならびに上述のものとは異なるヌクレオチド配列を含むが、遺伝子コードの縮重のために、本明細書に記載されおよび/または当該技術分野で公知のような少なくとも1つの抗VISTA抗体をコードする核酸分子が挙げられ得る。本発明の特定の抗VISTA抗体をコードするかかる縮重核酸バリアントを作製することは、当業者にとって常套的である。例えばAusubel, et al.,上述を参照し、かかる核酸バリアントは本発明に含まれる。
【0062】
本明細書に示されるように、抗VISTA抗体をコードする核酸を含む本発明の核酸分子としては、限定されないが、抗体断片のアミノ酸配列をコードするもの;抗体全体またはその一部についてのコーディング配列;抗体、断片または一部についてのコーディング配列、ならびに限定されないが転写、mRNAプロセッシング、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル(例えば、mRNAのリボソーム結合および安定化)において機能する転写されて翻訳されない配列などのノンコーディング5'および3'配列を含むさらなるノンコーディング配列と共に前述のさらなるコーディング配列を有するかまたは有さない、少なくとも1つのイントロンなどの少なくとも1つのシグナルリーダーまたは融合ペプチドのコーディング配列などのさらなる配列;さらなる機能を提供するものなどのさらなるアミノ酸をコードするさらなるコーディング配列が挙げられ得る。したがって、抗体をコードする配列は、抗体断片または一部を含む融合抗体の精製を容易にするペプチドをコードする配列などのマーカー配列に融合され得る。
【0063】
本発明の抗体、断片および領域の定常(C)領域をコードするヒト遺伝子は、公知の方法により、ヒト胎児肝臓ライブラリーから誘導し得る。ヒトC領域遺伝子は、ヒト免疫グロブリンを発現しかつ産生するものを含む任意のヒト細胞から誘導し得る。ヒトCH領域は、γ、μ、α、δまたはεを含むヒトH鎖の公知のクラスまたはアイソタイプおよびG1、G2、G3およびG4などのそのサブタイプのいずれかから誘導し得る。H鎖アイソタイプは、抗体の種々のエフェクター機能に重要であるので、CH領域の選択は、補体固定、または抗体依存的細胞性細胞傷害性(ADCC)における活性などの所望のエフェクター機能により導かれる。
【0064】
組成物
本明細書に開示される医薬組成物は、標準的な手順に従って調製され、治療対象の状態を治療、例えば低減、予防、または排除するため、または該状態の進行を遅延もしくは停止するために選択される用量で投与される(例えば、ヒトの治療のための種々の薬剤を投与するための方法の一般記載についてRemington’s Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, PA, and Goodman and Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, N.Y.参照、その内容は参照により本明細書に援用される)。開示される抗体および薬剤を含む組成物は、制御または持続される放出送達系(例えば、カプセル、生体分解性マトリックス)を使用して送達され得る。開示される化合物の組成物の投与に適した薬物送達のための遅延放出送達系の例は、例えば米国特許第5,990,092号、5,039,660号、4,452,775号および3,854,480号に記載され、それらの全教示は参照により本明細書に援用される。
【0065】
本発明の抗VISTA抗体および/または断片から医薬組成物を調製するために、薬学的に許容され得る担体は固体または液体であり得る。固形の製剤としては、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤および分散粒剤が挙げられる。例えば、本発明の化合物は、送達時の再構成のために、粉末形態であり得る。固形担体は、希釈剤、調味剤、可溶化剤、滑剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤または封入材料としても作用し得る1つ以上の物質であり得る。散剤において、該担体は微細化された有効成分との混合物である微細化された固体である。
【0066】
散剤および錠剤は、好ましくは約1~約70%の有効成分を含む。適切な担体は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバター等である。錠剤、散剤、カシェ剤、トローチ剤、早溶解ストリップ、カプセル剤および丸剤が、経口投与に適切な有効成分を含む固形剤型として使用され得る。
【0067】
液体型製剤としては、溶液、懸濁液、保持浣腸およびエマルジョン、例えば水または水プロピレングリコール溶液が挙げられる。非経口注射のために、ポリエチレングリコール水溶液中に液体製剤を溶液の状態で調製し得る。
【0068】
医薬組成物は単位剤型であり得る。かかる形態において、該組成物は、適切な量の有効成分を含む単位用量に分割される。単位剤型は、パッケージ化された製剤であり得、該パッケージは、分割された量の単位用量を含む。用量は、患者の要求、治療される状態の重症度、使用される化合物および投与経路に応じて変化し得る。特定の状況についての適切な用量の決定は、当業者の範囲内である。
【0069】
また、所望の場合、医薬組成物は、他の適合性の薬剤、例えば医薬剤、治療剤または予防剤を含み得る。治療剤または予防剤としては、限定されないが、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質、融合タンパク質、核酸分子、低分子、模倣剤、合成薬物、無機分子および有機分子が挙げられる。かかる薬剤(例えば抗癌剤)のクラスの例としては、限定されないが、サイトカイン、脈管形成阻害剤、免疫調節剤、免疫-腫瘍剤、および苦痛からの緩和を提供するためまたは1つ以上の治療剤の悪影響を差し引くために使用される薬剤(例えばグルココルチコイドの高カルシウム血症作用を低減するためのビスホスホネートの使用)が挙げられる。
【0070】
本明細書に記載される組成物および方法における使用に適切な脈管形成阻害剤、薬剤および治療としては、限定されないが、アンギオスタチン(プラスミノゲン断片)、抗脈管形成アンチトロンビンIII;アンギオザイム(angiozyme)が挙げられる。ビスホスホネートとしては、限定されないが、アレンドロネート(alendronate)、クロドロネート(clodronate)、エチドロネート(etidronate)、イバンドロネート(ibandronate)、パミドロネート(pamidronate)、リセドロネート(risedronate)、チルドロネート(tiludronate)およびゾレドロネート(zoledronate)が挙げられる。
【0071】
本明細書に記載される組成物および方法における使用に適切な免疫調節剤および治療としては、限定されないが、抗T細胞受容体抗体、例えば抗CD3抗体(例えばNuvion (Protein Design Labs)、OKT3 (Johnson & Johnson)または抗CD20抗体リツキサン(IDEC))、抗CD52抗体(例えばCAMPATH 1H (Ilex))、抗CD11a抗体(例えばXanelim (Genentech));抗サイトカインまたは抗サイトカイン受容体抗体および抗IL-2受容体抗体などのアンタゴニスト(Zenapax (Protein Design Labs))、抗IL-6受容体抗体(例えばMRA (Chugai))、および抗IL-12抗体(CNTO1275(Janssen))、抗TNFα抗体(Remicade(Janssen))またはTNF受容体アンタゴニスト(Enbrel (Immunex))、抗IL-6抗体(BE8 (Diaclone)およびシリツキシマブ(CNTO32 (Centocor))、および腫瘍関連抗原に免疫特異的に結合する抗体(例えばトラスツズマブ(trastuzimab)(Genentech))が挙げられる。
【0072】
本明細書に記載される組成物および方法における使用に適切な免疫-腫瘍剤としては、限定されないが、イピリムマブ(抗CTLA-4)、ニボルマブ(抗PD-1)、ペンブロリズマブ(抗PD-1)および抗PD-L1抗体、および抗LAG-3抗体が挙げられる。
【0073】
該組成物は、好ましくは治療有効量の抗体または断片を含む用量単位の形態で作製される。用量単位の例は、錠剤およびカプセル剤である。治療目的で、錠剤およびカプセル剤は、有効成分に加えて、結合剤、例えばアラビアゴム、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ソルビトールまたはトラガカント;充填剤、例えばリン酸カルシウム、グリシン、ラクトース、トウモロコシデンプン、ソルビトールまたはスクロース;滑剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカまたはタルク;崩壊剤、例えばジャガイモデンプン;調味剤もしくは着色剤、または許容され得る湿潤剤などの従来の担体を含み得る。水性または油性溶液、懸濁液、エマルジョン、シロップまたはエリキシルの形態の経口液体製剤は一般的に、懸濁剤、乳化剤、非水性剤、保存剤、着色剤および調味剤などの従来の添加剤を含み得る。液体製剤のための添加剤の例としては、アラビアゴム、アーモンド油、エチルアルコール、分別ココナッツ油、ゼラチン、グルコースシロップ、グリセリン、硬化食用脂肪、レシチン、メチルセルロース、メチルまたはプロピルパラヒドロキシベンゾエート、プロピレングリコール、ソルビトールまたはソルビン酸が挙げられる。
【0074】
本明細書に記載される化合物および組成物の作製および使用方法に関する他の一般的な詳細は、当該技術分野で周知である。例えば、内容がその全体において援用される米国特許第7,820,169号、参照。
【0075】
治療方法
当業者、例えば臨床医は、選択される薬剤、医薬製剤および投与経路、種々の患者の要因および他の考えを考慮して、個体への投与のための特定の抗体、断片または組成物の適切な用量および投与経路を決定し得る。好ましくは、該用量は、有害な副作用を引き起こさないか、最小限で生じるかまたは生じない。標準的な複数回投与計画において、医薬剤は、治療を受ける被験体において予め決定されるかまたは最適な血漿濃度を維持するように設計される投与スケジュールで投与され得る。抗体、断片および組成物は、任意の適切な用量範囲または治療有効量、例えば0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.3mg/kg、0.4mg/kg、0.5mg/kg、0.6mg/kg、0.7mg/kg、0.8mg/kg、0.9mg/kg、1.0mg/kg、1.5mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、3.0mg/kg、4.0mg/kg、5.0mg/kg、6.0mg/kg、7.0mg/kg、8.0mg/kg、9.0mg/kg、10.0mg/kg、11.0mg/kg、12.0mg/kg、13.0mg/kg、14.0mg/kg、15.0mg/kg、16.0mg/kg、17.0mg/kg、18.0mg/kg、19.0mg/kg、20.0mg/kg、30mg/kg、40mg/kg、50mg/kg 60mg/kg、70mg/kg、80mg/kg、90mg/kgおよび100mg/kgで添加され得る。一態様において、投与される組成物、抗体または断片の用量は、1回の投与当たり0.1~15mg/kgである。
【0076】
抗体または断片は、1日当たり、1回、少なくとも1回、2回、少なくとも2回、3回または少なくとも3回投与され得る。抗体または断片は、1週間当たり1回、少なくとも1回、2回、少なくとも2回、3回、少なくとも3回、4回、少なくとも4回、5回、少なくとも5回、5回、6回または1週間当たり少なくとも6回投与され得る。抗体または断片は、1ヶ月あたり1回、1ヶ月あたり少なくとも1回、1ヶ月あたり2回、1ヶ月あたり少なくとも2回、1ヶ月あたり3回、または1ヶ月あたり少なくとも3回投与され得る。抗体または断片は、1年に1回、1年に少なくとも1回、1年に2回、1年に少なくとも2回、1年に3回、1年に少なくとも3回、1年に4回、1年に少なくとも4回、1年に5回、1年に少なくとも5回、1年に6回または1年に少なくとも6回投与され得る。
【0077】
抗VISTA抗体、断片および組成物は、例えば非経口手段を介して、または非経口ではない手段を介して、例えば限定されないが、静脈内、皮下、経口、経直腸、筋内、腹腔内、経粘膜、経皮、鞘内、経鼻または局所に投与され得る。当業者は、以下の剤型が有効成分として本発明の化合物または化合物の対応する薬学的に許容され得る塩のいずれかを含み得ることを理解する。いくつかの態様において、該剤型は、有効成分として、化合物または化合物の対応する薬学的に許容され得る塩のいずれかを含み得る。
【0078】
本発明の抗VISTA抗体は、組合せ療法(例えば互いに、または1つ以上の他の治療剤と)の一部として投与され得る。本発明の化合物は、1つ以上の他の治療剤の前、後または同時に投与され得る。いくつかの態様において、本発明の化合物および他の治療剤は、別々の製剤としてまたは結合製剤としてのいずれかで同時(simultaneously)(例えば同時(concurrently))に共投与され得る。代替的に、該薬剤は、臨床医により測定される場合、適切な時間枠内で(例えば治療の薬学効果の重複を可能にするのに十分な時間)別々の組成物として連続的に投与され得る。本発明の化合物および1つ以上の他の治療剤は、所望の治療効果を達成するのに適した順序およびスケジュールで、単一用量または複数用量で投与され得る。
【0079】
本発明はまた、細胞、組織、臓器、動物または患者における少なくとも1つの悪性疾患を調節または治療するための方法を提供する。いくつかの態様において、本発明の化合物および組成物は、癌を治療または予防するために使用される。癌としては、任意の臓器または身体系の任意の悪性または良性の腫瘍が挙げられ得る。例としては限定されないが、以下:乳癌、消化器/胃腸癌、内分泌癌、神経内分泌癌、眼の癌、尿生殖器癌、生殖細胞癌、婦人科癌、頭部および頸部癌、造血/血液癌、骨格筋癌、神経癌、呼吸器/胸部癌、膀胱癌、結腸癌、直腸癌、肺癌、子宮内膜癌、腎臓癌、膵臓癌、肝臓癌、胃癌、精巣癌、食道癌、前立腺癌、脳癌、子宮頸癌、卵巣癌および甲状腺癌が挙げられる。他の癌としては、白血病、黒色腫、リンパ腫および本明細書に記載される任意の癌が挙げられ得る。いくつかの態様において、固形腫瘍は、骨髄および/またはT細胞により浸潤される。いくつかの態様において、癌は、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群および/または骨髄腫である。いくつかの態様において、癌は、任意の種類または型の白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性(骨髄性)白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞白血病、T細胞前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病または成体T細胞白血病などのリンパ性白血病または骨髄性白血病であり得る。いくつかの態様において、リンパ腫は、組織細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫またはホジキンリンパ腫であり、いくつかの態様において、癌は多発性骨髄腫である。いくつかの態様において、癌は固形腫瘍、例えば黒色腫または膀胱癌である。特定の態様において、癌は、肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0080】
本発明はまた、細胞、組織、臓器、動物または患者において、少なくとも1つの悪性疾患、例えば限定されないが、白血病、急性白血病、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、B細胞、T細胞またはFAB ALL、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、毛様細胞白血病、骨髄異形成症候群(MDS)、リンパ腫、ホジキン病、悪性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、多発性骨髄腫、カポジ肉腫、結腸直腸癌、膵臓癌、鼻咽腔癌、悪性組織球増殖症、新生物随伴症候群/悪性の高カルシウム血症、固形腫瘍、腺癌、肉腫、悪性黒色腫、血管腫、転移性疾患、癌関連骨再吸収、癌関連骨痛等の少なくとも1つを調節または治療するための方法を提供する。いくつかの態様において、固形腫瘍は骨髄および/またはT細胞により浸潤される。特定の態様において、固形腫瘍は肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)である。
【0081】
いくつかの態様において、本明細書に記載される化合物および治療は、ワクチン(例えば、ウイルスベクターワクチン、細菌ワクチン、細胞系ワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、ペプチドワクチンまたはタンパク質ワクチン)と共投与される。かかるワクチンは当該技術分野で周知である。例えば、その内容が全体において本明細書に援用されるJeffrey Schlom, “Therapeutic Cancer Vaccines: Current Status and Moving Forward,” J Natl Cancer Inst; 104:599-613 (2012)参照。
【0082】
いくつかの態様において、本明細書に記載される化合物および治療は、化学療法、ホルモン療法および生物学的療法のための薬剤、および/またはビスホスホネートと共投与される。いくつかの態様において、化学療法のための薬剤(1つまたは複数)としては、以下:カルボプラチン(arboplatin)(Paraplatin)、シスプラチン(Platinol, Platinol-AQ)、シクロホスファミド(Cytoxan, Neosar)、ドキソルビシン(Adriamycin)、エトポシド(VePesid)、フルオロウラシル(5-FU)、ゲムシタビン(Gemzar)、イリノテカン(Camptosar)、パクリタキセル(Taxol)、トポテカン(Hycamtin)、ビンクリスチン(Oncovin, Vincasar PFS)、ビンブラスチン(Velban)の1つ以上が挙げられる。
【0083】
他の態様において、本明細書に記載される抗VISTA化合物および療法は、例えばニボルマブ、ペンブロリズマブ、トレメリムマブ(tremelimumab)、イピリムマブ、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗TIM-3抗体、抗LAG-3v、抗OX40抗体および抗GITR抗体などの1つ以上の免疫チェックポイント抗体と共投与される。
【0084】
別の態様において、本明細書に記載される抗VISTA化合物および療法は、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の低分子阻害剤と共投与される。
【0085】
本発明の抗VISTA化合物および組成物は、癌を予防(癌の再発の予防を含む)または治療(例えば、癌またはその1つ以上の症状の管理または緩和)するために、癌の予防または治療を必要とする被験体に投与され得る。有用であることが知られるか、または癌もしくはその1つ以上の症状の予防、治療、管理もしくは緩和のために使用されたかもしくは現在使用されている、任意の薬剤または療法(例えば、イマチニブ、ソラフェニブおよびベムラフェニブなどの化学療法、放射線療法、標的化療法、ホルモン療法、および/または生物療法または免疫療法)は、本明細書に記載される本発明の化合物または組成物と併用され得る。抗癌剤は、限定されないが、5-フルオロウラシル;アシビシン(acivicin);アルデスロイキン;アルトレタミン;アミノグルテチミド;アムサクリン;アナストロゾール;アントラマイシン;アスパラギナーゼ;アザシチジン;アゼテパ;アゾトマイシン(azotomycin);バチマスタット;ビカルタミド;硫酸ブレオマイシン;ブレナキルナトリウム;ブロピリミン;ブスルファン;カルボプラチン;カルムスチン;塩酸カルビシン;カルゼレシン(carzelesin);セデフィンゴール(cedefingol);クロラムブチル;チロレマイシン(cirolemycin);シスプラチン;クラドリビン;メシル酸クリスナトール;シクロホスファミド;シタラビン;ダカルバジン;ダクチノマイシン;塩酸ダウノルビシン;デシタビン;デキソルマプラチン;デザグアニン(dezaguanine);メシル酸デザグアニン;ジアジクオン;ドセタキセル;ドキソルビシン;塩酸ドキソルビシン;ドロロキシフェン(droloxifene);クエン酸ドロロキシフェン;プロピオン酸ドロモスタノロン;ダウゾマイシン(duazomycin);エダトレキサート;塩酸エフロルニチン;エンロプラチン(enloplatin);エンプロマート;エピプロピジン(epipropidine);塩酸エピルビシン;エルブロゾール(erbulozole);塩酸エソルビシン(esorubicin hydrochloride);エストラムスチン;リン酸エストラムスチンナトリウム;エタニダゾール;エトポシド;リン酸エトポシド;ファザラビン(fazarabine);フェンレチニド;フロクソウリジン;リン酸フルダラビン;フルオロウラシル;フルロシタビン;ホスキドン(fosquidone);フォストリエシンナトリウム;ゲムシタビン;塩酸ゲムシタビン;ヒドロキシ尿素;塩酸イダルビシン;イホスファミド;イルモホシン(ilmofosine);インターロイキンII(組み換えインターロイキンIIまたはrIL2を含む)、インターフェロンα-2a;インターフェロンα-2b;インターフェロンα-m;インターフェロンα-n3;インターフェロンβ-Ia;インターフェロンγ-Ib;イプロプラチン;塩酸イリノテカン;酢酸ランレオチド;レトロゾール;酢酸ロイプロリド;塩酸リアロゾール(liarozole hydrochloride);ロメトレキソールナトリウム(lometrexol sodium);ロムスチン;塩酸ロソキサントロン(losoxantrone hydrochloride);マソプロコール;塩酸メクロレタミン;酢酸メゲストロール;酢酸メレンゲストロール;メルファラン;メノガリル;メルカプトプリン;メトトレキサート;メトトレキサートナトリウム;メトプリン(metoprine);メツレデパ(meturedepa);マイトマイシン;ミトスパー(mitosper);ミトタン;塩酸ミトキサントロン;ミコフェノール酸;ノコダゾール;オルマプラチン;パクリタキセル;ペグアスパルガーゼ;ポルフィロマイシン;プレドニムスチン(prednimustine);塩酸プロカルバジン;ピューロマイシン;ログレチミド(rogletimide);塩酸サフィンゴール;セムスチン;シムトラゼン;スパルホセートナトリウム(sparfosate sodium);スパルマイシン;スピロムスチン;スピロプラチン;ストレプトニグリン;ストレプトゾシン;スロフェヌル(sulofenur);タリソマイシン(talisomycin);テガフール;塩酸テロキサントロン;テモポルフィン;テニポシド;テロキシロン;テストラクトン;チアミプリン;チオグアニン;チオテパ;チアゾフリン;チラパザミン;トポテカン;トリメトレキサート;グルクロン酸トリメトレキサート;トリプトレリン;ウラシルマスタード;ウレデパ(uredepa);バプレオチド;ベルテポルフィン;硫酸ビンブラスチン;硫酸ビンクリスチン;ビンデシン;硫酸ビンデシン;硫酸ビネピジン(vinepidine sulfate);硫酸ビングリシナート;硫酸ビンロイロシン;酒石酸ビノレルビン;硫酸ビンロシジン;硫酸ビンゾリジン;ボロゾール;ゼニプラチン;ジノスタチン;塩酸ゾルビシンである。標的化療法としては、限定されないが、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ、ソラフェニブおよびベムラフェニブ)が挙げられる。本発明はまた、癌細胞を破壊するためのx線、γ線および他の放射線の供給源の使用を含む放射線療法と併用される、本発明の抗VISTA化合物の投与を包含する。癌治療は当該技術分野で公知であり、Physician's Desk Reference (57th ed., 2003)などの文献に記載されている。
【0086】
本明細書に記載される抗VISTA抗体はまた、例えばとりわけHIV、HBV、HCVおよびHSVなどの慢性感染性疾患の治療に有用である。
【0087】
本発明の抗VISTA抗体の選択のための種々の性質および配列情報を、本明細書中の表1A、1Bおよび2に示す。
【0088】
【表1A】
【表1B-1】
【表1B-2】
【表2-1】
【表2-2】
【実施例
【0089】
実施例
実施例1:ヒト造血細胞上のVISTA発現の分析
方法:
VISTA発現についての新たなヒトPBMCの調製および染色
いくつかのドナーから新たに単離したヒトPBMC(末梢血単核細胞)においてVISTAの発現を試験した。染色のために抗ヒトVISTA-ビオチン(GA-1)を使用した(5μg/ml)。マウスIgG1、K-ビオチン(5μg/mlのクローンMOPC-21)をアイソタイプ対照として使用した。
【0090】
ドナー材料
Biological Specialty Corp. (Colmar, PA)から血液試料を得て、回収して同日に分析した。硫酸ヘパリンを含む10mlの全血をが分析のために届けられた(couriered)。
【0091】
試料調製
滅菌PBS中血液を1:1に希釈した。22mlの希釈した臍帯血を、50mlの円錐チューブ中、20mlの滅菌フィコール-Hypaque (GE Healthcare Cat# 17-144003)に積層した。チューブを1800rpmで、室温で20分間遠心分離した。1mlピペットを使用して遠心分離後の界面の単核細胞を回収し、2本の50ml円錐チューブに統合した。滅菌PBSをそれぞれのチューブに添加して、体積を50mlにして、細胞を、4℃で10分間、300gで遠心分離した。上清を廃棄した。細胞を50mlの滅菌PBSに再懸濁して、チューブを4℃で10分間、300gで回転させた。上清を廃棄した。細胞を合わせて50mlの滅菌PBSに再懸濁した後、計測した。
【0092】
染色プロトコル:補償対照および染色の対照として5x107 PBMCを含む凍結バイアルを使用した。
【0093】
以下の試薬および/または消耗品を使用した:
0.2% EDTAを補充した、BD Biosciences (Cat# 554657)のFACS染色バッファ;リン酸緩衝化食塩水(PBS) (Gibco cat#14190);96ウェルポリプロピレン丸底プレート(BD #3077);1.2mlポリプロピレンクラスターチューブ(Corning #4451);ImmunoNext Lot# 080612Bのビオチン化抗VISTAクローンGA-1(5μg/mlで使用);ビオチン化mIgG1、Kアイソタイプ対照(Clone MOPC-21);Biolegend cat#400104、Lot#B116649(5μg/mlで使用);抗ヒト抗体(下記の染色の表を参照);近赤外線生体/死体色素(Invitrogen, cat# L10119);およびSTP-APC(BD Biosciences cat#554067, Lot#04251)(FACSバッファ中1:200希釈で使用)、STP-PE (Biolegend cat# 405203, Lot#B139688)(FACSバッファ中1:200希釈で使用)、STP-PE Cy7 (アイソタイプ対照試料において非特異的結合を示した)、STP-Q605 (Invitrogen cat# Q10101MP, Lot#53449A)(FACSバッファ中1:200希釈で使用)を含むストレプトアビジン試薬。
【0094】
細胞表面染色プロトコル
染色前に、1x106細胞を96ウェル丸底プレートに移し、150μl PBSで洗浄した。次いでプレートを、4℃で3分間、1300rpmで遠心分離した。
【0095】
続いて、細胞を再度PBSで洗浄し、上述のように遠心分離した。
【0096】
次いで、0.25μlの近赤外線生体/死体色素を含む50μl PBS中で生体/死体染色を行った。室温で10分後、ウェルを150μl FAC染色バッファで洗浄し、4℃で3分間、1300rpmで遠心分離した。上清を廃棄した。
【0097】
細胞を50μl FACS染色バッファ中1:100のヒト血清でブロッキングした。プレートを4℃で15分間インキュベートした。次いでウェルを150μl FAC染色バッファで洗浄し、4℃で3分間、1300rpmで遠心分離した。上清を廃棄した。
【0098】
次いで、表面染色のために以下の抗体を含むカクテルをそれぞれのウェルに添加した:カクテルを以下の表3~6に記載する。それぞれのカクテルは、目的の集団に応じて他のものとは別に使用した。
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【0099】
表面染色後、前述のように細胞をFACS染色バッファで2回洗浄し、4℃で5分間、1300rpmで遠心分離した。試料を、適切な蛍光標識したストレプトアビジンを含む50μlのFACS染色バッファに再懸濁した。試料を4℃で30分間インキュベートした。細胞を150μl FACS染色バッファで洗浄し、4℃で5分間、1300rpmで遠心分離した。この洗浄工程を繰り返した後、試料を250μlのFACS染色バッファに再懸濁した。同日に試料をBD LSRFortessaTM細胞分析機(BD Biosciences)で分析した。
【0100】
データ解析
FlowJo Version 9ソフトウェアを使用してフローサイトメトリーデータを再度分析し、特異的表現型集団をゲーティング(gate)した。幾何平均の列挙を使用して、異なる細胞亜集団中のVISTA発現を比較した。抗VISTA処理試料の平均値からアイソタイプ対照値を引いて、バックグラウンドに対してそれぞれの集団を標準化した。Prism中でグラフを作成し、2つの試料のみを比較する場合はスチューデントT検定または試験後にBonferroniを使用して一元配置ANOVAのいずれかを使用して統計学を行った。
【0101】
結果:
ヒト骨髄およびリンパ球亜集団上のVISTAの発現:
図2A~2E、3A~3G、4、5A~5Bおよび6A~6Cに示すように、CD14+単球上のVISTA発現は、全ての他の集団とは有意に異なった(p<0.001)。他の集団の間で有意差は見られなかった。単球は、末梢血において最も高いレベルのVISTAを発現し、CD14+CD16-亜集団は、CD14loCD16+細胞よりも有意に高い発現を有した。APCは中位のVISTAの発現を示したが、リンパ球亜集団は、低い発現レベルを示した。
【0102】
ヒトTおよびNK亜集団上のVISTAの発現:
図7A~7E、8A~8Gおよび9に示すように、NK亜集団、CD56lo細胞は、CD56Hi NK細胞よりも有意に高いVISTAの発現レベルを示した。T細胞亜集団中、CD8+メモリ細胞は、最も高い発現レベルを発現したが、CD8+ナイーブまたはCD4+ T細胞よりは有意に高くはない。
【0103】
ヒト樹状細胞亜集団上のVISTAの発現:
図10A~10D、11A~11Cおよび12に示すように、VISTA発現の有意差は見られなかった:DCおよび好塩基球は、VISTAの低い発現を示し、形質細胞様樹状細胞(pDC)は一般的に、より高いが有意な程度ではなかった。
【0104】
結論:これらの結果は、種々の免疫細胞亜集団上のVISTAの発現を示し、VISTAは単球上で最も高く発現し、異なるT細胞亜集団およびNK細胞上である程度の発現を有し、B細胞上ではほとんど~全く発現がないことが示される。
【0105】
実施例2:末梢血細胞上のVISTA発現
方法:
全血の染色:新たに単離した全血(100μl)を、4℃で30分のインキュベーションにより、以下に示す抗体カクテルで染色した。赤血球(RBC)を、RBC溶解バッファで溶解し、残りの細胞を1xの染色バッファで洗浄した。細胞を200μlの染色バッファに再懸濁した。MACSQuantフローサイトメーターを使用してデータを補正して、FlowJo分析ソフトウェアを使用して分析した。
【0106】
末梢血単核細胞(PBMC)の染色:フィコール勾配を使用して、全血から末梢血単核細胞を単離した。新たに単離した1x106 PBMCを、100μlの染色バッファ中の抗体カクテルで染色した。試料を4℃で30分間インキュベートして、次いで染色バッファで1回洗浄した。細胞を100μlの染色バッファに再懸濁した。MACSQuant(登録商標)フローサイトメーター(Miltenyi Biotec)を使用してデータを補正して、FlowJo分析ソフトウェアを使用して分析した。
【0107】
使用した抗体は、CD11b、CD33、CD177、CD16、CD15、CD14、CD20、HLADR、CD3、CD4、CD8、CD127、CD69およびFOXP3抗体(Biolegend, San Diego, CA)であった。ImmuNext (Lebanon, NH)によりAPCコンジュゲートマウス抗ヒトVISTA(クローンGG8)を作製した。
【0108】
結論:
健常ヒト末梢血細胞上のVISTAの発現
多色フローサイトメトリーを使用して、VISTA発現について全血および末梢血単核細胞を分析した。図15Aおよび15Bに示すように、単球上で最も高いレベルのVISTA発現が検出され、好中球が続いた。CD4+およびCD8+ T細胞の両方は、図13Cおよび13Dに示されるように、低いレベルのVISTAを発現した。
【0109】
癌患者末梢血細胞上のVISTAの発現
図14A~Cに示されるように、肺癌患者由来の末梢血単核細胞(PBMC)を分析した。図14Aは、CD14+単球およびCD15+骨髄由来抑制性細胞(MDSC)の分析を示す代表的なフロープロットである。結果は、表現型的にCD15+細胞は好中球由来のMDSCであることを示唆する。さらに、これらの細胞は健常な血試料中には存在しない。図14Bは、健常単球および癌患者由来単球上のVISTA発現の代表的なヒストグラムであり、健常対象と比較して、癌患者細胞上でより高いレベルのVISTA発現が示唆される。同様に、図14Cに示すように、癌患者においてMDSC上でより高いレベルのVISTAが見られた。
【0110】
図15Aは、結腸癌患者の血液中の好中球由来のMDSCの存在を示す代表的なFACSプロットである。図15Bおよび15Cは、健常なドナー血液試料と比較した癌患者の単球上のより高いレベルのVISTA発現を示す代表的なヒストグラムである。
【0111】
カニクイザル末梢血細胞上のVISTAの発現
図16Aおよび16Bに示されるように、サル全血のフローサイトメトリー分析により、ヒト細胞と同様のVISTA発現パターンが明らかになった。単球および好中球の両方は、CD4+(図16C)およびCD8+(図16D)T細胞と比較して最も高いレベルのVISTAを発現した。
【0112】
実施例3:RNAレベルおよびタンパク質レベルでの血液悪性細胞株におけるVISTA発現
VISTAは血液悪性疾患に発現されるので、抗VISTA抗体は、破壊について悪性細胞を潜在的に標的化し得、VISTAを阻害し、抗腫瘍免疫応答を促進し得る。
【0113】
データは、約140個の血液悪性細胞株(いくつかの細胞株は解析を繰り返す)のRNAseq解析を含む。データを図17に示す。
【0114】
FPKM(マッピングした1,000,000個の断片当たりのエクソンの1キロベース当たりの断片(Fragments Per Kilobase of exon per Million fragments mapped))の値としてRNAseq値を列挙する。
【0115】
本質において、これは、遺伝子のエクソン領域に該当する全ての読み(read)が数えられ、遺伝子の長さおよび1試料当たりの読みの合計数の両方により標準化されたことを意味する(試料間の差の原因となる)。カットオフ値は1であり;1を超えるものはVISTA発現について陽性であり(RNAレベルで)、1未満のものはVISTA発現について陰性である。
【0116】
結果は、多くの細胞株、主に急性骨髄性白血病および慢性骨髄性白血病がRNAレベルで陽性であることを示した。VISTAは正常骨髄細胞で高度に発現され、その機能は抗腫瘍免疫応答を含む免疫応答の低下であると考えられるので、このことが予想され得る。
【0117】
実施例4:VISTAに対するモノクローナル抗体の作製
ファージパンニング(Phage Panning)
24回のファージパンニング実験を行って、Cyno VISTA-Hisに反応性のファージを富化した。カニクイザルVISTAタンパク質はヒトVISTAタンパク質よりも良好なビオチン共役化を示したので、これらの実験にはカニクイザルVISTAタンパク質を使用した。ファージ実験の成功を決定するために、個々のパンニング回からのファージプールを、ビオチニル化cyno VISTA-Hisでコートしたニュートラアビジン(neutravidin)プレートに添加して、HRP共役抗M13抗体で検出した。ファージ選択回から個々のコロニーを拾い上げ、96ウェルプレート中でFabタンパク質を産生した。ビオチニル化cyno VISTA-Hisへの結合について、発現したFab上清をアッセイした。これは200より多くのヒットを生じた。
【0118】
Fabプレート由来のVHおよびVL領域を増幅させ、DNA配列決定に供し、FASTAファイルとして出力した。MABとして変換されて試験されるべきクローンを拾い上げた際、翻訳後修飾のリスクが制限され、可能な限り少ない疎水性残基を有するクローンを、配列多様性に基づいて選択した。
【0119】
ファージクローン由来のVHおよびVLを、哺乳動物IgG1/κ発現ベクターにサブクローニングして、HEK293細胞にトランスフェクトした。プロテインAセファロース高流速親和性樹脂で抗体を精製した。ファージMABの濃度を、Nanodrop測定を使用して定性的ELISAにより測定した。抗体パネルは高レベルで発現した。SDS-PAGE分析により、それぞれの発現された抗体バリアントの完全性が示された。
【0120】
VLに多様性を有する、ファージベクターへのクローニングのためのパンニングの最後の回由来のポリクローナル抗体混合物からVHドメインを増幅することにより、ファージ抗体の直線(in-line)成熟を行った。これにより、富化されたVHプールが生じ、VLにさらなる多様性を有するものをサンプリングした。VISTA ECD Hisタンパク質への非常に高い親和性結合体を同定することを期待して、ファージは、1~2回のストリンジェントなパンニングに供した。モノクローナルFab ELISAを行って、成熟の成功を決定した。元のデノボのパンニング実験から、ELISAおよび発現データを、参照クローンセットに対して100%まで標準化して、参照クローンよりも高いcyno VISTAへの結合シグナルを有する親和性成熟クローンを同定した。この過程により、低い抗原濃度(1nM)でスクリーニングした際に200%までの結合を示したいくつかのクローンが得られ、最も高い親和性を有するクローンを配列決定し、MABとして産生した。
【0121】
ハイブリドーマ作製
BALB/cAnNCrlマウスの一群に、完全フロイントアジュバント中で乳化された50μgのHu VISTA-Ig組み換えタンパク質(Sino)の1回の腹腔内注射を与え、次いで2週間後に、不完全フロイントアジュバント中で乳化した50μgのHu VISTA-Ig組み換えタンパク質の1回のIP注射を与えた。2週間後、該マウスに、不完全フロイントアジュバント中で乳化した50μgのcyno VISTA-Fc組み換えタンパク質の1回のIP注射を与えた。全てのマウスの尾の基部で、PBS中25μgヒトおよび25μg cyno VISTAの最終の注射を与え、5日後、融合のために脾臓を回収した。
【0122】
別の群のBALB/cAnNCrlマウスに、完全フロイントアジュバント中で乳化した50μgのHu VISTA-His組み換えタンパク質の1回のIP注射を与えた。2週間後、該マウスに、不完全フロイントアジュバント中で乳化した50μgのHu VISTA-His組み換えタンパク質の1回のIP注射を与えた。2週間後、該マウスに、不完全フロイントアジュバント中で乳化した50μgのCyno VISTA-His組み換えタンパク質の1回のIP注射を与えた。2週間後、全てのマウスに、PBS中25μgのHu VISTA-Hisおよび25μg Cyno VISTA-Hisの最後の注射を与え、3日後、融合のために脾臓を回収した。
【0123】
融合の日に、マウスをCO2窒息により安楽死させ、脾臓を取り出し、10mLの冷リン酸緩衝化食塩水に入れた。小さい乳棒を用いて、脾臓を細かい網目のスクリーンを通してすり潰し、脾臓細胞の単一細胞懸濁物を調製し、室温で、PBSですすいだ。細胞をPBS中で1回洗浄し、RBC溶解に供した。手短に、脾臓ごとに細胞を3mLのRBC溶解バッファ(Sigma #R7757)に再懸濁し、5分間氷上に置いた。細胞を再度、室温で、PBSで1回洗浄し、磁気分類のために標識した。製造業者の指示書により、細胞は、抗マウスThy1.2、抗マウスCD11bおよび抗マウスIgM磁気ビーズ(それぞれMiltenyi Biotec # 130-049-101、130-049-601および130-047-301)で標識し、次いでMidi MACSを用いてMSカラムにより分類した。負の細胞画分(正の細胞画分は廃棄した)をFO細胞と融合させた。1:1の比のマウス骨髄細胞 対 生脾臓細胞で融合を行った。手短に、脾臓および骨髄細胞を一緒に混合して、ペレット化し、50mLのPBS中で1回洗浄した。ペレットを10e8脾臓細胞当たり1mLのポリエチレングリコール(PEG)溶液(2g PEG、分子量4000、2mL DMEM、0.4mL DMSO)で、37℃で30秒間再懸濁した。次いで、細胞/融合混合物を37℃の水槽に約60秒間、緩やかに撹拌しながら浸した。37℃のDMEMを1分間かけてゆっくりと添加して、融合反応を停止した。融合した細胞を室温で5分間静置して、次いで150xgで5分間遠心分離した。その後、HAT (Sigma cat#H0262)を含むMedium E-HAT (MediumE (StemCell Technologies cat#03805)に細胞を再懸濁して、96ウェル平底ポリスチレン組織培養プレート(Corning # 3997)に播種した。
【0124】
捕捉EIAを使用して、cyno VISTAに特異的な抗体についてハイブリドーマ上清をスクリーニングした。手短に、プレート(Nunc-Maxisorp #446612)は、少なくとも60分間、コーティングバッファ(Thermo 28382)中4μg/mlのヤギ抗マウスIgG(Fc)抗体(Jackson #115-006-071)でコーティングした。プレートを、PBS中200μl/ウェルの0.4%(w/v)ウシ血清アルブミン(BSA)で、室温で30分間ブロッキングした。プレートを1回洗浄して、50μl/ウェルのハイブリドーマ上清を添加して、室温で少なくとも30分間インキュベートした。プレートを1回洗浄して、50μl/ウェルの0.1μg/mLのcyno VISTA-huIgを添加して、室温で30分間インキュベートした。プレートを1回洗浄して、0.4% BSA/PBS中1:40,000のストレプトアビジンHRP(Jackson 016-030-084)をプレートに添加し、室温で30分間インキュベートした。プレートを3回洗浄して、続いて100μl/ウェルTMB Turbo基質(Thermo Scientific 34022)を使用して、室温で約10分間インキュベートして、発色させた。25μl/ウェル4N硫酸を使用して反応を停止して、自動プレート分光計を使用して450nmで吸光度を測定した。希釈を制限して一次ヒットのうち15個をサブクローニングのために選択し、同じ一次スクリーニング形式でスクリーニングした。
【0125】
全てのcyno VISTA反応性ハイブリドーマ細胞株は、ヒトVISTA-Igを使用して交差スクリーニングして、交差反応性について評価した。手短に、プレート(Nunc-Maxisorp #446612)を、0.1M炭酸-重炭酸ナトリウムバッファ、pH9.4(Pierce 28382 BupHTM)中4μg/mLのヤギ抗ms Fc(Jackson#115-006-071)で、4℃で一晩コーティングした。洗浄せずに、ウェルを、200μlのブロック液(PBS(Invitrogen)中0.4% BSA(Sigma)(w/v))で、4℃で一晩ブロッキングした。ブロック溶液を除去した後、コーティングしたプレート上で希釈していないハイブリドーマ上清を室温で30分間インキュベートした。プレートをPBST(PBS中0.02% Tween 20(Sigma)(w/v))で1回洗浄して、次いでブロック液中100ng/mlに希釈したHu VISTA-Igと共に30分間インキュベートした。プレートを、1回洗浄して、ブロック液中1:10,000に希釈したヤギ抗ヒトFc-HRP (Jackson #109-036-098)で、室温で30分間プローブ処理した(probed)。プレートを再度洗浄して、続いて100μl/ウェルTMB Turbo基質(Thermo Scientific 34022)を使用して、室温で約10分間インキュベートして、発色させた。25μl/ウェル4N硫酸を使用して反応を停止し、自動プレート分光計を使用して450nmで吸光度を測定した。
【0126】
ヒトおよびカニクイザルの両方のVISTAに反応性であることを示したハイブリドーマは、クローニングされたV領域抗体配列を有した。ハイブリドーマ細胞を調製し、その後Invitrogen's SuperScript III cells Direct cDNA Systemを用いて逆転写(RT)反応を行った。手短に、培養培地を廃棄して、プレートを氷上に置き、200μlの冷PBSに再懸濁した。40μlをMicroAmp高速96ウェル反応PCRプレートに移し、プレートを冷金属プレートベース上に置き、プラスチックフィルムで密封して、700rpmで3分間回転した。PBSを廃棄して、それぞれのウェルに10μl再懸濁バッファおよび1μl溶解促進剤を添加した。プレートを密封して、75℃で10分間インキュベートして、-80℃で保存した。
【0127】
RT反応のために、それぞれのウェルは5μl 水、1.6μl 10X DNaseバッファ、1.2μl 50mM EDTA、2μl Oligo(dT)20 (50mM)および1μl 10mM dNTP Mixを含んだ。プレートを70℃で5分間インキュベートし、続いて氷上で2分間インキュベートして、次いで以下の試薬: 6μl 5X RTバッファ、1μl RNaseOUTTM(40U/μl)、1μl SuperScriptTMIII RT(200U/μl)および1μlの0.1M DTTをそれぞれのウェルに添加した。 プレートを密封して、50℃に予備加熱したサーマルサイクラー上に置き、50℃で50分間インキュベートして、その後不活性化した(85℃で5分のインキュベーション)。反応を氷上で冷やし、一本鎖cDNAを、さらに使用するまで-80℃で保存した。
【0128】
V領域増幅のために、20μl PCR反応を設定した。それぞれのウェルは、16.2μl 水、2.0μl 10X PCR反応バッファ、0.8μl MgSO4(50mM)、0.4μl 10mM dNTP、0.15μl 100uMフォワードプライマー混合物、0.05μl 100uMリバースプライマー、0.2μl HiFi Tag酵素を含んだ。上記のように調製したcDNA(2μl/ウェル)をPCR内容混合物に移し、プレートを密封して、増幅反応を行った:VHについてプログラムは、(i)94℃で1分、(ii)94℃で15秒、(iii)55℃で30秒、(iv)68℃で1分であった。工程(ii~iv)を合計35サイクル繰り返し、68℃で3分の最後の伸長を続けた。VLについて、プログラムは、(i)94℃で1分、(ii)94℃で15秒、(iii)55℃で30秒、(iv)65℃で30秒、(v)68℃で1分であった。工程(ii~v)を合計35サイクル繰り返し、68℃で3分の最後の伸長を続けた。
【0129】
フォワードプライマーを予め混合して、かかる混合物とリバースプライマーを3:1の比で使用した。アガロースゲル上でPCR産物を検証した。促進剤(In-Fusion HC Cloning Kit, cat #639650, Clontech)を添加して、注入クローニングのための反応物を調製した。5μlのPCR反応物をPCRプレートに移し、続いて2μlの促進剤/ウェルを移した。プレートを密封して、サーマルサイクラー(37℃で15分および80℃で15分)中でインキュベートした。Esp3I消化により目的のベクター(vDR243またはvDR301)を調製した(30μlの反応において、1.5μgのベクターは3μl Tangoバッファ、2 lのEsp3Iおよび水中、37℃で2時間かけて消化した)。
【0130】
注入クローニングのために、2μlの促進剤で処理したPCR産物を100ng Esp3I消化ベクターおよび2μlの5X注入酵素(Clontech)と混合した。注入反応は、96ウェルPCRプレート形式で行った。PCRマシン上プレートを50℃で15分間インキュベートして、Stellaコンポーネント細胞を、振盪することなく42℃で40秒間ヒートショックにより形質転換し、選択抗生物質を有するLB寒天プレート上に撒き、37℃で一晩インキュベートした。翌日、コロニーを、LB/カーベニシリン培地を含む96ウェルの深ウェルプレートに拾い上げ、37℃で一晩増殖させた。等量の30% w/vグリセロールと混合した一晩培養物から凍結ストックを作製した。配列決定プライマーSPF0052を使用してV領域を配列決定した。配列を解析して、ハイブリドーマvHおよびvL当たり1つの陽性ウェルを選択し、新しいプレートに再配置して、アンピシリンを有する富化培地中で一晩増殖させた。次いで、96ウェルプレート中、小規模トランスフェクションのためにクローンをミニプレップDNA調製した。
【0131】
重鎖および軽鎖の両方について48個の選択されたマウスハイブリドーマ配列は、インターナルソフトウェアプログラムを使用して適合したヒトフレームワークであった。マウスvHまたはvLのそれぞれ1つについて1つのヒトフレームワークを選択した。逆翻訳によりV領域DNA配列を得た。HFAアミノ酸配列に対応する合成DNA領域を、Integrated DNA Technologies (Coralville, IA)により順序づけた。予め切断したvDR149およびvDR157、ヒトIgG1およびヒトκそれぞれにクローニングした。Qiagen Endo-free Maxi-prepキットを使用してDNAを調製した。Expi293(100ml)培養を使用してこの抗体パネルを発現させた。
【0132】
実施例5:インビトロにおけるヒトVISTA-IG T細胞抑制アッセイのためのプロトコル
マウスA20細胞に、GFPまたはヒトVISTAのいずれかを安定にトランスフェクトした。それらをovaペプチドおよびDO11.10 T細胞とインキュベートした。インキュベーションの開始の24時間後、T細胞によるCD25発現を測定した。A20-huVISTA細胞は、T細胞によるCD25発現を抑制するが、この読み出しは、VSTB95とのインキュベーションにより有意に修復される(図18)。
【0133】
実施例6:抗VISTA抗体のヒトフレームワーク領域の適合
重鎖および軽鎖の両方のマウスハイブリドーマ配列は、インターナルソフトウェアプログラムを使用してCDR移植(Jones, et al. Nature, 321: 522-525 (1986)により適合されたヒトフレームワークであった。該プログラムは、Kabat定義(Wu, T. T. & Kabat, E. A. (1970). J Exp Med, 132, 211-50)に従ってV領域配列の相補性決定領域(CDR)を表し、Blastを使用してフレームワーク領域とヒト生殖細胞系遺伝子を比較する。マウスフレームワークに対して最も高い配列同一性を有するヒト生殖細胞系を、ヒトフレームワーク適合(HFA)のためのアクセプター遺伝子として選択した。いくつかの場合において、ヒトフレームワークが良好に発現された以前の実験に基づいて、密接に関連のあるヒト生殖細胞系遺伝子を代わりに選択した。マウスvHまたはvL V領域のそれぞれについて選択されたヒトフレームワークについてのDNA配列を逆翻訳により得た。HFAアミノ酸配列に対応する合成DNA領域を、Integrated DNA Technologies (Coralville, IA)から順序づけた。ヒトIgG1およびヒトκのそれぞれへのクローニングを行った。
【0134】
実施例7:抗VISTA抗体構築物
細胞株開発のための分子のためのプラスミドおよび配列情報:VSTB112可変領域およびIgG1κ定常領域(VSTB174、定常領域中のアロタイプ変化のために新しい番号)、IgG2σ定常領域(VSTB140)またはIgG1プロテアーゼ耐性定常領域(VSTB149)を有する抗VISTA抗体のためにプラスミド構築物を作製した。
【0135】
Lonzaベクター
pEE6.4およびpEE12.4チャイニーズハムスター卵巣(CHO)発現ベクター系(Lonza Biologics, PLC)を、哺乳動物発現細胞株における治療用mAbの作製のための一次発現系としてBiologics Research (BR)およびPharmaceutical Development & Manufacturing Sciences (PDMS)において確立した。それぞれのベクターは、重鎖(HC)または軽鎖(LC)の発現を駆動するためのヒトサイトメガロウイルス(huCMV-MIE)プロモーターを含み、アンピシリン耐性遺伝子を含む。pEE12.4ベクターはまた、グルタミンシンターゼ(GS)酵素をコードする遺伝子を含む。グルタミンシンターゼ活性を必要とする増殖条件は、発現ベクターを維持するために、細胞に選択的な圧力をかける(GS Gene Expression System Manual Version 4.0)。一遺伝子ベクターとして、pEE6.4を使用してHC遺伝子をクローニングし、pEE12.4を使用してLC遺伝子をクローニングした。これらの2つのLonza一遺伝子ベクターからLonza二重遺伝子プラスミドを作製する。
【0136】
【化1】
【化2】
【0137】
実施例8:抗VISTA抗体のELISAおよびFACSスクリーニング
これらの実験は、産生された抗体がELISAにおいてヒトまたはカニクイザルVISTAタンパク質に結合する能力を決定するため、およびFACSスクリーニングを使用して、該抗体が、ヒトまたはカニクイザルVISTAタンパク質を発現するK562細胞(ヒト骨髄性白血病細胞株)の表面上のVISTAタンパク質に結合する能力を決定するためのものであった。
【0138】
方法:
ELISA手順の概要:プレートを、それぞれの種由来のVISTAの細胞外ドメインである1μg/ml SB0361(ヒト)またはSB0361(cyno(カニクイザル))タンパク質で、4℃で一晩コーティングした。開始濃度として抗体を1μg/mlに希釈し、1:4段階希釈により全部で4種類の濃度に希釈し、室温(RT)で2時間インキュベートした。検出のためにマウス抗ヒトIgG1-HRP(西洋ワサビペルオキシダーゼ)を使用して、RTで1時間インキュベートした。全ての洗浄は、PBS-Tween(0.05%)を使用して行った。
【0139】
FACS手順概要:2x105K562-G8(ヒト)またはK562-C7(cyno)細胞を5μg/mlのそれぞれの試験抗体を用いて染色し、4℃で30分間インキュベートした。ヤギ抗ヒトIgG1-PE(フィコエリトリン)抗体を二次検出抗体として5μg/mlで使用した。細胞をBD Fortessaに供し、生体集団のMFI(平均蛍光強度)についてFlowJoソフトウェア(Tree Star, Inc., Ashlang, OR)を使用して分析した。
【0140】
データ分析/結果:それぞれの抗体について、4アッセイのそれぞれについてELISAおよびFACS分析の両方で、抗体がしっかり結合したかどうかに関する主観的なスコア(Yes/No)を得た。いずれかのアッセイの結合について抗体が「No」の結果を生じた場合、抗体が陰性であることを確認するために分析を繰り返した。結果を以下の表7および図19A~19Fおよび20A~20Fに示す。
【表7】
【0141】
実施例9:混合リンパ球反応(MLR)およびブドウ球菌腸毒素B(SEB)活性化アッセイを使用した抗ヒトVISTA抗体のスクリーニング結果
この試験の目的は、混合リンパ球反応(MLR)アッセイおよびブドウ球菌腸毒素B活性化(SEB)アッセイにおいて細胞性免疫応答を高める多機能的αVISTA抗体の同定を支持するデータを示すことであった。
【0142】
混合リンパ球反応(MLR)は、同種異系T細胞応答を駆動するのにミスマッチなMHCクラスIおよびIIに依存する標準的な免疫学的アッセイである。末梢血単核細胞を2つのミスマッチの個体から単離して、一緒にインキュベートして、これらのミスマッチの結果として増殖およびサイトカイン産生が起こる。
【0143】
材料および方法:
500mlのRPMIと50mlのヒトAB血清、5mlのペニシリン/ストレプトマイシン(10,000U/ml)、5mlのL-グルタミン(100x)および10mlのHEPES(1M)を合わせて10% AB培地を調製した。培地は14日を超えない日数保存した。0.2mlのチミジンストック(1mCi/ml)を9.8mlのRPMIに希釈して、1mCiの力価のチミジンを調製した。
【0144】
可溶性VISTA抗体を10% AB血清培地中20μg/mlに希釈した。100μlの適切な抗体溶液を96ウェルU底プレート(Falcon product #353077または同等物)の適切なウェルに添加した。種々の細胞集団を添加した後、終濃度は10μg/mlであった。
【0145】
白血球の単離:ドナーは少なくとも18歳であり、一般的に健常で、局所的な集団から無作為的に選択された。単離チューブから50ml円錐チューブにドナー血液を移した。25mlの血液当たり、15mlのフィコール1077を、血液と混合しないように注意して下に敷いた(under-laid)。停止せずに室温で、細胞を25分間1250gで遠心分離した。フィコールおよび血清の界面で白血球を単離し、細胞を40mlのハンクスバランス塩溶液(HBSS)に希釈した。細胞を、4℃で10分間、453g(1500rpm)で遠心分離した。細胞を50mlのHBSSに再懸濁して、500μlの別々のチューブに移して計測した。
【0146】
混合リンパ球反応(MLR)96ウェルプレート設定:分析する試料の数に基づいて、アッセイに必要な「刺激細胞(stimulator cell)」および「応答細胞(responder cell)」の適切な数を決定した。96ウェルU底プレートの1ウェル当たり刺激集団は0.5x105細胞で播種し、応答集団は1.0x105細胞で播種する。全ての条件は3回実施しなければならない。適切な数の「刺激細胞」を新しい円錐にピペッティングし、前述のように遠心分離した。細胞を10mlに再懸濁し、4000radで照射した。細胞を前述のように遠心分離し、10% AB血清培地中1x106/mlの濃度で再懸濁し、50μlを適切なウェルに添加した。必要な数の応答細胞を単離し、前述のように遠心分離し、10% AB血清培地中2x106/mlの濃度で再懸濁し、50μlを適切なウェルに添加した。細胞を37℃で5日間、5% CO2でインキュベートした。5日目に、インターフェロンガンマ(IFN-γ)産生の分析のために、30μlの上清を除去した。5日目に、25μlの40μCi/mlの力価のチミジン溶液をそれぞれのウェルに添加し、37℃および5% CO2で8時間インキュベートした。製造業者の指示書により、細胞を96ウェルマイクロシンチレーションプレートに移した。製造業者に指示書により、マイクロシンチレーション計測器を使用して計測した。IFN-γ濃度は、製造業者のプロトコルを使用して、ELISA(eBioscience cat# 88-7316-88)により測定した。
【0147】
データ解析:未処理のウェルについて1分当たりの平均計測数(CPM)またはIFN-γの濃度を計算した。試験群のそれぞれについての平均CPMまたはIFN-γを計算した。データセットをLog10変換した。それぞれの化合物について12 MLR倍のスコアを使用して、それぞれの化合物の12試験群のセットについての平均を計算した。12試験の平均スコア= Σ[(log10 (試験化合物についての3回の平均CPM)) - (log10 (未処理について3回の平均CPM))]/12
【0148】
許容基準:全ての試験試薬および適切な対照をエンドトキシンについて試験し、その後アッセイを行って、それらは<0.1EU/mgのレベルを有した。応答細胞単独は、平均で700CPM未満のCPM数を有し、単独でインキュベートした場合、該細胞は静止状態にあったことが示された。MLR群についてのCPMは、単独でインキュベートした応答細胞のCPMよりも少なくとも2倍高く、反応が起こったことおよびドナーはミスマッチであることが示された。全てのMLRアッセイは、ヒトIgG1陰性対照タンパク質を含んだ。ヒトIgG1陰性対照の結果は、スチューデントt検定の使用に基づいて、未処理試料とは統計的に異ならなかった。
【0149】
MLRにおける抗VISTA抗体のスクリーニング:全ての化合物の最初のスクリーニング。抗VISTA抗体を用いたMLRを行う前に、抗体が、FACS分析により細胞結合VISTAおよびELISAによりVISTAタンパク質の両方に結合することを確認した。抗体S26(VSTB77)、S30(VSTB86)、S31(VSTB88)、S32(VSTB90)およびS39(VSTB74)は、この最初のスクリーニングに失敗したが、アッセイにおいて依然試験中である。最初のスクリーニングの目的で、全ての抗体は、増殖を伴うMLR中10μg/mlで試験し、IFN-γは測定されたパラメーターであった(図21A~21Dおよび22A~22B)。
【0150】
6個の誘導抗体(lead antibody)の選択。最初のスクリーニングから、さらなる分析のために6個の候補VSTB112(S2)、VSTB116(S5)、VSTB95(S16)、VSTB50(S41)、VSTB53(S43)およびVSTB60(S47)を選択した。
【0151】
MLRにおける上部の6個の候補の希釈試験:プロトコルの調整。プロトコルは、抗体を以下の濃度:30、10、3、1、0.3、0.1、0.03、0.01および0μg/mlの濃度に希釈するように調整して、前述のものと同じである。
【0152】
IC50値の決定:元の(Raw)CPM数およびIFN-γ濃度を使用して、それぞれの抗体についてのIC50を決定した。IC50の計算は、プログラム「EZ-R stats」を使用して決定した。6個の個々の応答体を使用してIC50値を決定した。誘導候補の用量力価を有するMLRにおける個々のCPM数およびIFN-γ濃度。
【表8】
【0153】
結論:最初のスクリーニングは、複数のVISTA特異的抗体はMLR細胞性免疫応答を高め得ることを示した。次いで、有効性および変動に基づいて抗体をランク付けし、これらの結果に基づいてVSTB112、VSTB116、VSTB95、VSTB50、VSTB53およびVSTB60を選択して、用量-力価実験を評価した。VSTB60は、用量-力価実験において、他の5つの抗体よりも弱い応答を誘導した。
【0154】
ブドウ球菌エンドトキシンB(SEB)活性化アッセイ:SEBは、特異的なVβ+ T細胞の活性化を誘導する細菌性の超抗原である。末梢血単核細胞を単離して、培養中でSEB抗原とインキュベートすると、強いサイトカイン産生が誘導される。このアッセイは、5個の誘導候補に対して行った。
【0155】
10% AB培地の調製、1mCi力価チミジンの調製、可溶性VISTA抗体の調製、および白血球細胞の単離は全てMLRにおいて上述の通りに行った。
【0156】
SEB 96ウェルプレート設定:分析対象の試料の数に基づいて、アッセイに必要な応答細胞の適切な数を決定した。96ウェルU底プレート1ウェル当たり2.0x105細胞で応答集団を播種する。全ての条件は3回行わなければならなかった。上述のように細胞を遠心分離し、10% AB血清培地中4x106/mlの濃度で再懸濁し、適切なウェルに50μlを添加した。SEB抗原を含む50μlの10% AB血清培地を40ng/mlの濃度で添加した。記載される実験において、SEBは、Sigma Aldrichから入手した(cat# S0812)。ウェル中の最終濃度は10ng/mlであった。細胞を37℃、5% CO2で3日間インキュベートした。3日目に、IFN-γ産生の分析のために30μlの上清を除去した。25μlの1mCi/ml力価チミジン溶液をそれぞれのウェルに添加し、37℃、5% CO2で8時間インキュベートした。製造業者の指示書により、細胞を96ウェルマイクロシンチレーションプレーに移した。マイクロシンチレーション計測器を使用して、製造業者の指示書により計測を行った。IFN-γ濃度は、製造業者の指示書を用いてELISA(eBioscience cat # 88-7316-88)により決定した。
【0157】
プロトコル:データ分析。全ての濃度で、それぞれの抗体について1分あたりの平均数(CPM)またはIFN-γ濃度を計算した。許容基準は上述の通りに行った。記載の通りにIC50値の決定を行った。誘導候補の用量力価を有するSEBアッセイにおける個々のCPM数およびIFN-γ濃度。
【表9】
【0158】
結論:SEBアッセイにおいて、VISTA特異的抗体は、用量依存的な様式でサイトカイン産生および増殖を高めた。SEB試験由来のIC50値は一般に、MLR希釈試験の結果と同様であった。
【0159】
実施例10:エピトープ結合アッセイ
方法:ProteOn XPR36系(BioRad)を使用して、エピトープ結合(binning)を行った。アミン共役化学(BioRad, cat #176-2410)についての製造業者の指示書を使用して、ProteOn GLCチップ(BioRad, Cat#176-5011)を 二組の6個のモノクローナル抗体(mAb)でコーティングした。
【0160】
過剰(250nM終濃度)な競合mAbを、ヒトVISTA(25nM終濃度)と、室温で4時間予備インキュベートして、コーティングmAbのパネルでコーティングしたチップ上で同時に6個を、4分の結合時間で走らせ(run)、5分間解離させた。それぞれの施行(run)の後、100mMリン酸でチップを再生させた。
【0161】
データ分析は、リガンドによる全てのセンサーグラムのグループ分け、およびXおよびY軸整列および人為的影響の除去を自動で行う整列ウィザードの適用を含んだ。次いでデータにスポット間補正を適用した。
【0162】
非競合mAbは、A1シグナル(ヒトVISTAのみに結合)と同じかまたはそれより大きい結合シグナルを有するものとして規定された。
【0163】
競合mAbは、A1シグナル(すなわち、ヒトVISTAのみに結合)よりはるかに小さい結合シグナルを有するものとして規定された。
【0164】
結果:図23に示される例示センサーグラムにおいて、VSTB85抗体をProteon SPRチップにコーティングし、指定される競合剤を用いて予備インキュベートされたVISTAタンパク質を、チップ上で走らせた。VISTA/VSTB50複合体を走らせる場合に陽性の反応が見られたので、VSTB50は非競合性抗体の例である。VISTAと複合体化されたGG8、VSTB49およびVSTB51は、チップ上にコーティングされたVSTB85に結合せず、そのためVISTA上のVSTB85と同じ結合部位に対して競合すると分類された。
【表10-1】
【表10-2】
【0165】
実施例11:PROTEON親和性決定
抗IgG Fcコーティング表面を使用して、ProteOnチップ上で抗体を捕捉した。0.39nM~100nMの範囲のVISTAタンパク質の濃度でのヒトおよびカニクイザル(cyno)VISTA細胞外ドメイン(ECD)の結合について、抗体を試験した。抗原を、抗体コーティングチップに4分間結合/会合(bind/associate)させ、その後、解離を30分間モニタリングした。100mMリン酸の18秒間の2回の処理でチップを再生させた。全ての実験は25℃で行い、データを1:1 Langmuir結合モデルに適合させた。
【0166】
実施例12:MB49マウス膀胱腫瘍モデルにおける抗VISTA処理の効果
方法:
C57Bl/6マウスにMB49腫瘍細胞を注射した。腫瘍が確立されたところで、抗VISTA処理を開始した。次いで腫瘍増殖を1週間に3回モニタリングした。腫瘍が任意の寸法で15mmに達したところでIACUC規則に従ってマウスを安楽死させた。
【0167】
それぞれの実験について、MB49細胞の凍結バイアルを解凍して、10%血清およびペニシリン/ストレプトマイシン抗生物質を加えたRPMI 1640(+L-Glut)中で増殖させた。培養の3日後、StemPro Accutaseを使用して細胞を回収し、5x106細胞/mlの濃度でRPMIに再懸濁してマウス1匹当たり50μlを注射した。
【0168】
6~8週齢のメスC57Bl/6マウスを国立癌研究所から購入した。到着した際に、マウスを1日間順化させ、次いで右わき腹の毛を剃り、尾に入れ墨をした。次いで3~5日後にマウスに注射した。
【0169】
腫瘍注射(皮内):マウスの毛を剃った脇腹に、50μlのMB49細胞懸濁物(約250,000細胞)を皮内(i.d.)注射した。
【0170】
腫瘍増殖のモニタリング:最初に広い寸法(L)次いで最初の測定に対して90°の角度(W)を横切る電気毛細管を使用して、腫瘍増殖を測定した。腫瘍体積は、以下:
体積=(L2*W2)/2
のように導かれた。
【0171】
腫瘍の直径が約5mm(約60mm3体積)に達したところで腫瘍が確立されたとみなした。確立されたところで治療を開始した。腫瘍増殖は、治療経過の間、実験を終了するまで1週間に3回測定した。
【0172】
抗VISTA治療:キメラ化13F3-mIgG2aモノクローナル抗体を10mg/kgで腹腔内注射した。注射スケジュールは、4週間にわたり毎週3回行った。
【0173】
マウスの安楽死:IACUC要件に従い、腫瘍が最も長い寸法で15mmに達した際に動物を安楽死させた。
【0174】
有効性の分析:データ管理のためにエクセルおよびグラフ化のためにGraphPad Prismを使用してマウス腫瘍体積を分析した。R統計学的コンピューターソフトウェアについてマクロを使用して統計学的分析を行った。
【0175】
実験設計を図24に示す。
【0176】
結果:
メスマウスにおけるCh13F3-mIgG2a治療により、70%の動物で完全な腫瘍の拒絶(CR)および30%(n=7)で部分寛解(PR)が誘導された(表13および図25B)。対照的に、全ての対照mIgG2a処理マウスは、腫瘍の進行性の増殖を示した(6/6)(図25A)。これらのデータは、抗VISTA処理が腫瘍増殖に大きな効果を有し得ることを示す。
【表11】
【0177】
Wangら、2011、上述(その内容は全体において本明細書に援用される)から適用されたヒトVISTA配列を図26および27に示す。
【0178】
実施例13:水素/重水素(H/D)交換試験を使用した抗VISTA抗体のエピトープマッピング
ヒトVISTA上のVSTB50、60、95および112についてのエピトープを同定するために、対応するFabを使用して、溶液(solution)水素/重水素交換質量分析(HDX-MS)を行った。H/D交換について、Fab摂動(perturbation)を分析するために使用した手順は、いくつかの変更を有して前述のもの(Hamuro et al., J. Biomol. Techniques 14:171-182, 2003;Horn et al., Biochemistry 45:8488-8498, 2006)と同様であった。Pierce Fab Preparation Kit (Thermo Scientific, Cat# 44985)を使用して、パパイン消化およびプロテインA捕捉によりIgGからFabを調製した。ヒトVISTAタンパク質配列は、6個のN結合グリコシル化部位を含む。配列カバー率を向上させるために、PNGアーゼFによりタンパク質を脱グリコシル化した。脱グリコシル化VISTAタンパク質を、重水素化水溶液中で所定の時間インキュベートして、交換可能水素原子に重水素取り込みを生じた。重水素化VISTAタンパク質を、4℃で30秒、2分、10分および60分の間、46μLの酸化重水素(D2O)中VSTB50、VSTB60、VSTB95またはVSTB112のFabのいずれかと複合体化した。低pHにより交換反応をクエンチし、ペプシンでタンパク質を消化した。同定されたペプチドでの重水素レベルを、LC-MSの質量シフトからモニタリングした。参照対照として、Fab分子と複合体化しないこと以外は、VISTAタンパク質を同様に処理した。Fabに結合した領域は、交換から比較的保護され、そのため参照VISTAタンパク質よりも多くの重水素の画分を含む部位であると推測された。タンパク質の約94%を、特定の領域にマッピングし得た。
【0179】
VISTAとVSTB50/VSTB60、およびVSTB95/VSTB112の溶液HDX-MS摂動マップを図28の上および下のそれぞれに示す。2つのエピトープ群を同定した。抗VISTA VSTB50はVSTB60と同じエピトープを認識し、VSTB95は、VISTA上でVSTB112とは別のエピトープに結合する。抗VISTA VSTB50および60は、断片103NLTLLDSGL111(配列番号:62)および136VQTGKDAPSNC146(配列番号:63)を含む同じエピトープを共有する(図28、上)。抗VISTA VSTB95および112は、断片27PVDKGHDVTF36(配列番号:75)および54RRPIRDLTFQDL65(配列番号:65)を含む同様のエピトープを標的すると思われる(図28、下)。残基39~52および118~134を含むVSTB95および112による弱い摂動を示す2つの他の断片がある。しかしながら、減少のレベルは、差動マップにおける以前の領域(27~36および54~65)ほど強くはない。VSTB95および112による強い摂動を示す1つのペプチド100TMR102がVISTA表面の他の面に位置するが、これはエピトープ領域27~36および54~65とは離れている。この摂動はアロステリック効果のためであり得る。これらのHDX-MSの結果は、抗VISTA抗体についてのペプチドレベルでのエピトープを提供する。これら2つのエピトープ群についてエピトープ領域の重複はなかった。これらの結果は、互いに競合しない以前の競合結合(binning)データと一致する。
【0180】
実施例14:タンパク質結晶学によるヒトVISTA ECD:VSTB112 Fab複合体の構造決定
VISTA構造を決定して、VISTA細胞外ドメイン(ECD)と誘導抗体VSTB112のFab断片の間の相互作用を規定するエピトープおよびパラトープを示す努力において、複合体を結晶化し、1.85Åの解像度まで構造を決定した。抗体VSTB112のFab断片と複合体化したヒトVISTAのECDの構造は、VISTA ECD自身の構造を決定し、この相互作用のためのエピトープ/パラトープの両方を規定するための努力において決定された。該構造は、VISTAが、IgV折りたたみにTCR Vα鎖と同様の鎖トポロジーを適用することを明らかにする。βサンドイッチの背面および前面のB鎖とF鎖を架橋する規範的なジスルフィド結合に加えて、該構造により、ECDが、2つのさらなるジスルフィド結合を有し、その1つがCC'ループを前面シートにつなぎ、第2のものがA'鎖とG'鎖の間にあることが明らかになる。VISTA分子間に結晶接触が存在するが、それらは小さなものであり、この構造に基づくVISTA ECDの二量体についての証明はない。VSTB112エピトープは、VISTA BC、CC'およびFGループと最も近い前面βシート(C'CFG)の残基と共に、これらのループの一部を含むことが示される。パラトープは、接触を最小にするCDR L3との重鎖相互作用に対して大きく偏る。
【0181】
VISTA:VSTB112相互作用を規定するエピトープ/パラトープ
VSTB112 Fabは、VISTA ECDへの結合の際に1024.3Å2の表面積が埋まり、重鎖表面の埋没はこの合計の715.3Å2となる。VISTAとVSTB112軽鎖の間に7個の水素結合および4個の塩の架橋相互作用が形成され、VISTAとVSTB112重鎖の間に10個の水素と2個の塩の架橋相互作用が形成される。VSTB112は、FGループの近位の末端で前面シート鎖C'、C、FおよびG中の残基、ならびにBC、FGおよびCC'ループ中の残基を認識する(図29および30)。CC'ループとの相互作用は、さらなる軽鎖相互作用を作製するFGループ中の残基E125およびR127のみを有するFab軽鎖との接触のほとんどの原因となる。VISTA FGループに対応する残基119~127は、VSTB112との結合時に埋まる合計1034.8Å2の表面積の38%になる。顕著に、このループは高度に極性であり、以下の配列-IRHHHSEHR-(配列番号:76)で構成される。さらに、VSTB112 CDR H3中のW103は、VISTAの主鎖の残基H122およびH123を正確に包み、VISTA H121は、CDR H2中のF55の芳香族環との相互作用上の端を形成する。
【0182】
結晶学およびHDXにより同定したエピトープ領域の比較を図31に示す。
【0183】
実施例15:抗VISTA抗体によるT細胞および単球の活性化
抗VISTA抗体の機能的効果を混合白血球反応(MLR)およびSEB(ブドウ球菌エンドトキシンB)の2つのインビトロアッセイにおいて評価した。両方のアッセイにおいて、一次読み出しとしてT細胞増殖およびサイトカイン誘導が測定されるが、これらの効果は異なる機構による。MLRにおいて、2人の異なるヒトドナー由来の末梢血単核細胞(PBMC)を一緒にインキュベートし、1人のドナーのT細胞ともう1人のドナーの樹状細胞の間の主要組織適合性複合体(MHC)ミスマッチによりT細胞増殖およびインターフェロン(IFNγ)産生が生じる。SEBアッセイにおいて、単一のドナー由来のPBMCを、T細胞上のT細胞受容体(TCR)に対する抗原提示細胞(APC)の表面上のMHCクラスIIタンパク質に直接結合する細菌性超抗原とインキュベートすることで、T細胞の活性化、増殖およびサイトカイン分泌が生じる。両方のアッセイにおいて、VSTB174の親分子であるVSTB112は、T細胞増殖およびサイトカイン産生の用量依存的な誘導を示し、候補の中で最も有力であった(図21A~21D、表12)。
【表12】
【0184】
単球活性化アッセイ
表12に示すアッセイデータは、VSTB174の親分子であるVSTB112を用いて作成した。VSTB174の活性をよりよく理解するために、単球活性化アッセイを行った。結果は、VSTB174と全PBMCとのインキュベーションにより、CD14+単球上の活性化マーカー(CD80およびHLA-DR)のアップレギュレーションが誘導されることを示し、高レベルのVISTAを発現することが知られる免疫細胞亜集団への抗体の結合の効果が示された(図32)。さらなる疑問は、全PBMCにおける単球の活性化に対する効果は、VISTAに結合し、IgG1 Fcを有する任意の抗体により高められ得るかどうかということである。抗体VSTB103およびVSTB63は、VSTB112およびVSTB111と同様に、高い親和性(それぞれKD 6.36E-10および8.30E-10)でVISTAおよびVISTAタンパク質を発現する細胞に結合する。VSTB103は、VSTB112と同じエピトープビン(bin)にあるが、VSTB63は異なるエピトープビンにあり、いずれの抗体も単球活性化を高めなかった。合わせると、これらの結果は、VSTB174がT細胞活性化/増殖に対してその効果を発揮し得る1つの機構は、NK細胞により高められる単球活性化を介することを示す。
【0185】
培地の調製
500mlのRPMI 1640(Corning, 10-040-CV)を50mlのヒトAB血清(Valley Biomedical, Inc, Lot # 3C0405)、5mlのペニシリン/ストレプトマイシン(Lonza, 17-602E) 10,000U/ml、5mlのL-グルタミン(100x)(Gibco, 25030-081)および10mlのHEPES(1M)(Fisher BP299-100, Lot#-1)と合わせた。培地は、14日までの期間4℃で保存した。
【0186】
可溶性VISTA抗体および対照抗体の調製
抗体を、10% AB血清培地:VSTB174:lot VSTB174.003中2Xの所望の濃度に希釈した。
【0187】
100μlの適切な抗体溶液を96ウェルU底プレート(Falcon, 353077)の適切なウェルに添加した。種々の細胞集団を100μlで添加した後、それぞれの抗体の終濃度は、1、0.1または0.01g/mlであった。IgG1対照抗体CNTO 3930 (Lot 6405, ENDO <0.1 EU/mg)を、1μg/mlの終濃度で添加した。
【0188】
PBMCを単離した。
【0189】
ドナーは少なくとも18歳で、一般的に健常であり、局所集団から無作為に選択された。
【0190】
ドナー血液を単離チューブから50ml円錐チューブに移した。
【0191】
血液が混ざらないように注意して、15mlのフィコール1077(SIGMA, 10771)を下に敷いた。これは25mlの血液ごとに行った。
【0192】
細胞は、ブレーキをかけることなく室温で25分間、1250gで遠心分離した。
【0193】
フィコールと血清の界面で白血球を単離して、細胞を40mlのハンクスバランス塩溶液(HBSS)に希釈した。
【0194】
細胞は、4℃で10分間、453g(1500rpm)で遠心分離した。
【0195】
細胞を50mlのHBSSに再懸濁し、500lを別々のエッペンドルフチューブに移して計測した。
【0196】
さらに、製造業者の指示書に従って、MiltenyiのPan Monocyte単離キット(cat# 130-096-537)を使用して、いくつかの処理群における負の選択によりCD14+細胞を単離した。
【0197】
インビトロ培養設定
アッセイのために、分析される試料の数に基づいて、必要とされる適切な細胞数を決定した。96ウェルU底プレートの1ウェル当たり2.0x105細胞で応答集団を播種した。CD14陰性選択集団について、0.5x105細胞を播種した。全ての条件は3回行った。
【0198】
細胞を前述の通りに遠心分離して、全PBMC集団について2x106/mlの濃度およびCD14陰性選択集団について0.5x106/mlの濃度で、10% AB血清培地に再懸濁し、100lの試験抗体を適切なウェルに添加して、それぞれのウェルの全体積を200lにした。
【0199】
細胞を、37℃、5% CO2で1、2または3日間インキュベートした。
【0200】
抗体染色およびフローサイトメトリー
96ウェルU底プレートを453gで5分間遠心分離して上清を除去した。
【0201】
工程5.5.1と同様に、細胞を200μlのPBSで洗浄し、遠心分離した。
【0202】
上清を廃棄して、以下の抗体:
- CD14-APC (クローンHCD14) 1:250 (Biolegend cat #325608)
- HLA-DR-PE Cy7 (クローンL243) 1:250 (Biolegend cat # 307616)
- CD80-PE (クローン2D10) 1:250 (Biolegend cat # 305208)
- Hu FcR結合阻害剤(eBioscience cat # 14-9161-73)
を含む50μlのPBSに再懸濁して、暗所、氷上で20分間インキュベートした。
【0203】
150μlのPBSを添加して工程5.5.1と同様に遠心分離した。
【0204】
150lのPBSバッファを添加してFACSにより分析した。
【0205】
試料をMiltenyi MACSQuant 10パラメーターフローサイトメーターにかけて、CD14+集団上のHLA-DRおよびCD80の発現について、FlowJo 9.7.5を使用して分析した。一組の数の中心的な傾向を規定する統計学である幾何平均蛍光強度(MFI)を、治療を比較するための統計学を規定するように使用した。
【0206】
統計学的解析
全ての統計学は、Prism GraphPad、バージョン6で行った。グループ間のペアワイズ比較は、多重度についてTukey補正を有する一元配置ANOVAを使用して、それぞれの時点で行った。全ての試験および比較について、0.05未満のP値を有意とみなした。全てのグラフおよび表について、* p<0.05、** p<0.01、*** p<0.001、****p<0.0001。
【0207】
実施例16:抗VISTA抗体のADCCおよびADCP活性
VSTB174は、抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)および抗体依存的細胞媒介性貪食作用(ADCP)活性を付与し得るIgG1 Fcを有する。両方の種類のアッセイを行って、VSTB174は、K562-VISTA細胞を溶解または貪食し得る(図33~34)が、K562骨髄腫細胞株親細胞は溶解または貪食し得ない(データは示さず)ことがを示された。VISTAの阻害性作用を調節するVSTB174の作用のさらなる機構は、高レベルのVISTAを発現する細胞の溶解または飲み込みであり得、それにより該細胞が局所的な微小環境から除去される。
【0208】
実施例17:さらなる抗VISTA抗体のADCP活性
インビトロ貪食作用アッセイを使用して、抗ヒトVISTA mAb(VSTB173およびVSTB174)により、VISTAを異所的に発現する細胞のマイクロファージ媒介性貪食作用が高められることを試験した。これらのmAbは、異なるFc主鎖(IgG1 WT(野生型)、IgG1 PR(プロテアーゼ耐性)およびIgG2σ)にクローニングされ、貪食作用の増加に関して異なる活性を潜在的に有することが仮定された。IgG1およびIgG1 PR主鎖は、Fc受容体に結合し得、ADCPを引き起こす能力を有するが、IgG2σは、Fc受容体に結合せずADCPを媒介しない。
【0209】
K562親細胞およびK562-VISTA標的細胞を使用して、ADCPアッセイにおいて抗VISTA抗体を試験した。図35~36に示すように、VSTB174、VSTB149、VSTB173およびVSTB145は、K562-VISTA細胞のhMac貪食作用を高めた。Fc受容体に結合しないIgG2σ Fcを有するVISTA抗体VSTB140またはVSTB132は、予想されたように貪食作用を高めなかった。IgG1 Fcを有するVISTA mAb VSTB174およびVSTB173は、IgG1PR Fcを有するVSTB149およびVSTB145よりも強い貪食作用を示した(EC50値について、表13および14参照)。
【表13】
【表14】
【0210】
VSTB174およびVSTB173は、最も高い濃度でK562 親細胞の貪食作用の弱い増加を示し(図35~36)、これはK562細胞によるVISTAの低い発現のためであり得る。他の抗VISTA抗体は、K562細胞の貪食作用を高めなかった。
【0211】
K562-VISTA貪食作用アッセイにおいて、2種類の異なる濃度で陰性対照抗体をそれぞれ試験したが、貪食作用を全く誘導しなかった。この結果は、抗VISTA抗体により媒介される貪食作用は特異的であり、K562-VISTA細胞によるVISTA抗原の発現のためであることを示す。
【0212】
実施例18:さらなる抗VISTA抗体のADCC活性
ADCCを誘導する能力を試験するために、以下の3種類のヒト抗VISTA抗体:
VSTB174 (IgG1)
VSTB149 (IgG1 PR)
VSTB174.LF (IgG1 LF(低フコース))
を試験した。
【0213】
同じプレート中、それぞれの抗体を、6種類の異なる濃度で、6個のデータ点の合計について2回の別々の実験で3回試験した。
【0214】
VSTB174、VSTB149およびVSTB174.LFはそれぞれ、10、1、0.1および0.01μg/mLで測定可能なADCC活性を示したが、LF抗体だけは0.001μg/mLで測定可能なADCC活性を示し、0.0001μg/mLでADCCを示す抗体はなかった。これらの抗体のそれぞれはIgG1またはIgG1バリアントFcを有するので、この結果が予測される。LF抗体は、標準的なIgG1抗体曲線(0.02381μg/mL)と比較して、LF抗体曲線(0.002293μg/mL)についてより小さいEC50値により明らかにされるように、ADCC能力の増加を示した。IgG1 PR抗体曲線は、標準的なIgG1曲線(0.01846μg/mL)と同様のEC50値を有した。
【表15】
【0215】
ヒトIgG1、ヒトIgG1 PRおよびヒトIgG1 LF抗体は全て、10、1、0.1および0.01μg/mL抗体濃度で、測定可能なADCC媒介性の傷害を示したが、LF抗体だけは、0.001μg/mLの抗体濃度で傷害を示した。0.0001μg/mLの抗体濃度で傷害を示す抗VISTA抗体はなかった。
【0216】
LF抗体は、EC50値で見られるように、標準的なIgG1抗体またはIgG1 PR抗体のいずれかよりも約10倍高いADCC傷害を示した。
【0217】
実施例19:ヒトおよびカニクイザルVISTAについてのVSTB174の親和性
ヒトおよびカニクイザルVISTA細胞外ドメイン(ECD)についてのVSTB174の親和性を、ProteOn装置を用いた表面プラスモン共鳴(SPR)法により測定した。VSTB174は、それぞれのタンパク質について、ヒトVISTA ECDについて1.56E-10MおよびカニクイザルVISTAについて8.66E-11Mの非常に類似したKD値を示した。
【0218】
実施例20:マウス腫瘍モデルにおいてVISTA抗体は有効性を示す
マウス系統、試薬および腫瘍モデル
インビボ試験について、C57Bl/6バックグラウンドと戻し交配したヒトVISTAノックイン(VISTA-KI)マウスを使用した。
【0219】
抗ヒトVISTA抗体を作製して、マウスFc IgG2aに移植したVSTB174可変領域(VSTB123)を使用したVISTA-KIマウスにおける試験が可能になった。
【0220】
VISTA KIマウスにおいて、MB49膀胱癌を評価した。
【0221】
抗VISTA抗体治療により野生型マウスにおいて腫瘍増殖が抑制されることを示す公開された試験(Le Mercier et al., 2014)に加えて、異なる投与スケジュールを使用したwtマウスにおいて、およびVSTB123で治療したVISTA-KIマウスにおいて、代理母ハムスター抗体により抗腫瘍有効性が示された。
【0222】
VISTA-KIマウスにおけるMB49腫瘍モデルにおけるインビボ有効性試験
メスVISTA-KIマウスにおいてMB49有効性試験を行い、1~10mg/kgの範囲のいくつかの用量でVSTB123を試験した。0日目に、マウスに250,000個のMB49腫瘍細胞を皮内注射した。6日目に、図37に示されるように投与を開始した(10mg/kgのアイソタイプ対照mIgG2aまたは示される用量のVSTB123のいずれか;1群当たり10匹のマウス)。
【0223】
図37に示すように、VSTB123は、低用量に対して高用量でより効果的であった。10mg/kgおよび7.5mg/kgの用量は同等であったが、5または1mg/kgで投与されたマウスにおいて腫瘍はより速く増殖した。
【0224】
実施例21:抗VISTA抗体を用いたヒト腫瘍におけるVISTA発現の検出
図1は、AML腫瘍細胞株によるVISTA発現を示し、これと、図17のRNA seq発現データにより、AML細胞によりVISTAが発現されるという考えおよび抗VISTA薬物が、免疫調節または抗体媒介性傷害について、これらの細胞を直接標的化することにより効果的であるという考えが支持される。
【0225】
肺癌においてVISTA発現を評価するためのデータは、外科的切除により肺腫瘍試料から得た。細胞を解離させて、VISTAおよび多くの他のマーカーの発現について特徴付けした。結果は、13/13肺腫瘍(扁平上皮癌または腺癌)がCD14+ VISTA+骨髄細胞を含むことを示した(図38)。
【0226】
実施例22:抗VISTA抗体を使用した肺腫瘍におけるVISTA発現の検出
クローンGG8、抗ヒトVISTAマウスIgG1を使用して、免疫組織化学アッセイを開発した。このmAbを使用して、非小細胞肺癌(NSCLC)FFPE腫瘍切片におけるVISTAの染色を調べた。
【0227】
FFPE腫瘍切片は、標準的な抗原回復法を用いて処理した後に染色した。GG8マウス抗ヒトVISTA抗体は1:500希釈で使用した。ウサギ抗マウスポリクローナル抗体、その後抗ウサギポリマーHRPを使用してGG8結合を検出した。ヘマトキシリンでの対比染色を続け、次いで腫瘍切片をスコアリングした。
【0228】
肺癌におけるVISTA発現は、免疫浸潤にほぼ限定され(図39に示される例)、高レベルのVISTA陽性細胞は、多くの肺癌試料中に存在した。
【0229】
実施例23: vstb174のFAB断片と複合体化されたヒトVISTAの細胞外ドメイン(ECD)の構造
VISTA抗原バリアントを作製して、結晶学のために精製した。組み換えhisタグ付加VSTB174 Fabを内部発現させて精製した。結晶を作製して、シンクロトロン照射を使用してVISTA ECD:VSTB174 Fab複合体についての高解像度データを補正するために使用し、相同性モデリングおよび電子密度分析の組合せを使用して、構造決定を解決した(図29(上))。
【0230】
x線結晶学によりVISTA ECD:VSTB174 Fab複合体の構造を、1.85Åの解像度まで決定し、VISTA ECDの第1の構造を提供し、VSTB174エピトープおよびパラトープを示した。VISTA ECDは、IgV折りたたみにCTLA-4 ECDと類似のトポロジーを採用するが、βサンドイッチの前面シートから伸長する特有のG'鎖を有する。A'およびG'は、A'鎖の残基C12とG'鎖の残基C146の間に形成されるジスルフィド架橋を介してさらに化学的につながれる。3つの分子内ジスルフィド結合につながれる6個のシステインが見られたが、結晶接触に基づくと、二量体化VISTAの証拠はない。
【0231】
VSTB174は、FGループの近位の末端上の前面シートの鎖C'、C、FおよびG中の残基、ならびにBC、FGおよびCC'ループ内の残基を認識する。
【0232】
本明細書に引用される全ての特許、公開された出願および参考文献の教示は、それらの全てにおいて、参照により本明細書に援用される。
【0233】
この発明は、その例示態様に関して具体的に示され記載されるが、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲を逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が本発明においてなされ得ることが当業者には理解されよう。
【0234】
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(V-domain Ig Suppressor of T cell Activation)(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む、単離された抗体またはその抗体断片であって、該抗体または抗体断片のVISTAへの結合により免疫応答が調節されるかまたは高められる、単離された抗体またはその抗体断片、
[2]該抗体断片が、Fab、F(ab')2またはscFvの抗体断片である、[1]記載の抗体または抗体断片、
[3]抗体定常領域を含む、[1]記載の抗体または抗体断片、
[4]VISTAが造血細胞上に発現される、[1]記載の抗体または抗体断片、
[5]該造血細胞が、骨髄系細胞および/またはリンパ球である、[1]記載の抗体または抗体断片、
[6]該造血細胞が、単球または好中球である、[1]記載の抗体または抗体断片、
[7]該造血細胞が、T細胞である、[1]記載の抗体または抗体断片、
[8]該造血細胞が、B細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞またはナチュラルキラーT(NKT)細胞である、[1]記載の抗体または抗体断片、
[9]VISTAが腫瘍細胞上に発現される、[1]記載の抗体または抗体断片、
[10]VISTAが腫瘍微小環境(TME)内に発現される、[1]記載の抗体または抗体断片、
[11]1つ以上の重鎖相補性決定領域(CDR)および1つ以上の軽鎖CDRをさらに含む抗体または抗体断片であって、該1つ以上の重鎖CDRが、配列番号:1~3、7~9、13~15、19~21、25~27、31~33から選択されるアミノ酸配列を含み、該1つ以上の軽鎖CDRが、配列番号:4~6、10~12、16~18、22~24、28~30、34~36)から選択されるアミノ酸配列を含む、[1]~[10]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[12]少なくとも1つの重鎖および少なくとも1つの軽鎖をさらに含む、[1]~[10]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[13]少なくとも1つの重鎖が配列番号:1~3を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[14]少なくとも1つの軽鎖が配列番号:4~6を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[15]少なくとも1つの重鎖が配列番号:1~3を含み、少なくとも1つの軽鎖が配列番号:4~6を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[16]少なくとも1つの重鎖が、配列番号:37~40に示される重鎖可変領域配列を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[17]少なくとも1つの軽鎖が、配列番号:41~45に示される軽鎖可変領域配列を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[18]少なくとも1つの重鎖が、配列番号:37~40に示される重鎖可変領域配列を含み、少なくとも1つの軽鎖が、配列番号:41~45に示される軽鎖可変領域配列を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[19]該抗体がモノクローナル抗体である、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[20]該抗体がヒト化抗体である、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[21]該抗体がヒト定常領域を含む、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[22]該抗体分子が、配列番号:46のアミノ酸配列内のエピトープに特異的である、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[23]該抗体が、少なくとも1x10-9リットル/モルの親和性でVISTAのエピトープに結合する、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[24]該抗体が、少なくとも1x10-8リットル/モルの親和性でVISTAのエピトープに結合する、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[25]該抗体が、少なくとも1x10-7リットル/モルの親和性でVISTAのエピトープに結合する、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[26]免疫応答の調節が、CD45+白血球、CD4+ T細胞もしくはCD8+ T細胞またはそれらの組合せの増加、あるいはVISTA発現免疫細胞の減少を含む、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[27]免疫応答の調節が、サイトカインの産生の増大、T細胞応答の増大を含み、および/またはFoxp3発現を調節する、[1]~[18]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[28][1]~[27]いずれか記載の抗体または抗体断片および薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、組成物、
[29]T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体またはその抗体断片を含むVISTAアンタゴニスト、および
ワクチンを含む、組成物、
[30]T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体またはその抗体断片、および
ワクチンを含む、医薬組成物であって、該抗体または抗体断片のVISTAへの結合が、免疫応答を調節するかまたは高める、医薬組成物、
[31]癌の治療を必要とする個体における癌を治療するための方法であって、被験体に、[1]~[27]いずれか記載の抗体または抗体断片の有効量を投与する工程を含む、方法、
[32]癌の治療または予防を必要とする個体における癌を治療または予防するための方法であって、該個体に、[28]~[30]いずれか記載の組成物の有効量を投与する工程を含む、方法、
[33]癌の治療を必要とする個体に、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体またはその抗体断片を含むVISTAアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を含む、癌の治療を必要とする個体における癌を治療するための方法であって、該抗体または抗体断片がVISTAに結合して、それにより癌に対する免疫応答を調節するかまたは高める、方法、
[34]該個体が哺乳動物である、[31]または[32]記載の方法、
[35]該個体がヒトである、[31]または[32]記載の方法、
[36]癌の治療を必要とする個体に、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体またはその抗体断片を含むVISTAアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を含む、癌の治療を必要とする個体における癌を治療する方法であって、該抗体または抗体断片がVISTAに結合し、それにより、癌に対する免疫応答が調節されるかまたは高められる、方法、
[37]癌が、白血病、リンパ腫、骨髄異形成症候群もしくは骨髄腫、またはそれらの組合せである、[36]記載の方法、
[38]白血病が、リンパ球白血病または骨髄性白血病である、[37]記載の方法、
[39]白血病が、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性(myeloid)(骨髄性(myelogenous))白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、毛様細胞性白血病、T細胞前リンパ球性白血病、大顆粒リンパ球性白血病または成人T細胞白血病である、[37]記載の方法、
[40]癌が急性骨髄性(myeloid)(骨髄性(myelogenous)白血病(AML)である、[36]記載の方法、
[41]癌が慢性骨髄性白血病(CML)である、[36]記載の方法、
[42]癌が固形腫瘍である、[36]記載の方法、
[43]固形腫瘍が、骨髄細胞、T細胞または骨髄細胞とT細胞の組合せを含む腫瘍ストロマに取り囲まれる、[36]記載の方法、
[44]固形腫瘍が、骨髄細胞、T細胞または骨髄細胞とT細胞の組合せにより浸潤される、[42]または[43]記載の方法、
[45]ワクチンを投与する工程をさらに含む、[35]記載の方法、
[46]腫瘍増殖の抑制を必要とする被験体に、[1]~[27]いずれか記載の有効な抗体または抗体断片を投与する工程を含む、腫瘍増殖の抑制を必要とする個体における腫瘍増殖を抑制するための方法、
[47]該組成物、抗体または断片が、非経口的または非経口ではない様式、例えば静脈内、皮下または経口的に投与される、[31]~[46]いずれか記載の方法、
[48]投与される組成物、抗体または断片の用量が、1回の投与当たり0.1~15mg/kgである、[31]~[46]いずれか記載の方法、
[49]該組成物、抗体または断片が、毎週、2週間に1回、3週間に1回、毎月1回、2ヶ月毎に1回または3ヶ月毎に1回投与される、[31]~[46]いずれか記載の方法、
[50]VISTAに結合する抗体またはその断片であって、該抗体またはその断片は抗体VHドメインおよびさらに抗体VLドメインを含み、ここで、抗体VHドメインは、配列番号:1と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号:2と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVH CDR2および配列番号:3と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含み、抗体VLドメインは、配列番号:4と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号:5と実質的に同様のアミノ酸配列を有するVL CDR2および配列番号:6と実質的に同一のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む、抗体またはその断片、
[51]可変軽鎖VLドメインがヒトフレームワーク領域を含む、[12]記載の抗体またはその断片、
[52]完全抗体を含む、[1]記載の抗体またはその断片、
[53][1]記載の抗体をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸、
[54]プロモーターに操作可能に連結された、[51]記載の核酸を含む発現ベクター、
[55][52]記載の発現ベクターで形質転換された宿主細胞、
[56][53]記載の宿主細胞を、[1]記載の抗体またはその断片の製造のための条件下で培養する工程を含む、前記抗体またはその断片を製造する方法、
[57]前記抗体を単離する工程をさらに含む、[54]記載の方法、
[58][30]記載の組成物および容器を含み、癌を治療するために該組成物を使用し得ることを示す使用説明書または標識をさらに含む、製品、
[59]抗体が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される、抗体またはその抗体断片、
[60]VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の1つ以上の重鎖相補性決定領域(CDR)および1つ以上の軽鎖CDRをさらに含む、[1]~[10]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[61]VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の少なくとも1つの重鎖および少なくとも1つの軽鎖をさらに含む、[1]~[10]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[62]少なくとも1つの重鎖が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の3つ全ての重鎖CDRを含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[63]少なくとも1つの軽鎖が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の3つ全ての軽鎖CDRを含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[64]少なくとも1つの重鎖が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の3つ全ての重鎖CDRを含み、少なくとも1つの軽鎖が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の3つ全ての軽鎖CDRを含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[65]少なくとも1つの重鎖が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の重鎖可変領域配列を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[66]少なくとも1つの軽鎖が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の軽鎖可変領域配列を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[67]少なくとも1つの重鎖が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の重鎖可変領域配列を含み、少なくとも1つの軽鎖が、VSTB112 (S2)、VSTB116 (S5)、VSTB95 (S16)、VSTB50 (S41)、VSTB53 (S43)およびVSTB60 (S47)からなる群より選択される抗体の軽鎖可変領域配列を含む、[12]記載の抗体または抗体断片、
[68]癌の治療を必要とする個体に、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む抗体またはその抗体断片を含むVISTAアンタゴニストの治療有効量を投与する工程、ここで該抗体または抗体断片がVISTAに結合して、それにより癌に対する免疫応答が調節されるかまたは高められる、および
第2の癌治療を施与する工程
を含む、癌の治療を必要とする個体における癌を治療する方法、
[69]第2の癌治療が、手術、化学療法、放射線療法、生物学的療法、標的化療法もしくは免疫調節療法、またはそれらの組合せである、[68]記載の方法、
[70]ワクチンが、ウイルスベクターワクチン、細菌ワクチン、DNAワクチン、RNAワクチン、ペプチドワクチンまたはタンパク質ワクチンである、[29]記載の組成物、[30]記載の医薬組成物、または[45]記載の方法、
[71]癌が肺癌である、[36]記載の方法、
[72]肺癌が、非小細胞肺癌(NSCLC)である、[69]記載の方法、
[73]T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む、単離された抗体またはその抗体断片であって、該抗体が、配列番号:25のアミノ酸配列を有するVH CDR1、配列番号:26のアミノ酸配列を有するVH CDR2および配列番号:27のアミノ酸配列を有するVH CDR3を含む抗体VHドメインを含み、配列番号:28のアミノ酸配列を有するVL CDR1、配列番号:29のアミノ酸配列を有するVL CDR2および配列番号:30のアミノ酸配列を有するVL CDR3を含む抗体VLドメインをさらに含む、単離された抗体またはその抗体断片、
[74]1つ以上のヒト化領域またはヒトフレームワーク領域を含む、[73]記載の抗体または抗体断片、
[75]抗体VHドメインが配列番号:37を含む、[74]記載の抗体または抗体断片、
[76]抗体VLドメインが配列番号:44を含む、[74]または[75]記載の抗体、
[77]該抗体が、重鎖定常領域を含む、[73]~[76]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[78]該重鎖定常領域が、ヒト重鎖定常領域である、[77]記載の抗体または抗体断片、
[79]該重鎖定常領域が、IgG1重鎖定常領域である、[77]または[78]記載の抗体または抗体断片、
[80]IgG1重鎖定常領域が、配列番号:61に存在するIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む、[79]記載の抗体または抗体断片、
[81]IgG1重鎖定常領域が、抗体のプロテアーゼ耐性を高めるように改変される、[79]記載の抗体または抗体断片、
[82]抗体のプロテアーゼ耐性を高めるように改変されたIgG1重鎖定常領域が、配列番号:60に存在するIgG1重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む、[81]記載の抗体または抗体断片、
[83]該抗体が軽鎖定常領域を含む、[77]~[82]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[84]該軽鎖定常領域がヒト軽鎖定常領域である、[83]記載の抗体または抗体断片、
[85]該ヒト軽鎖定常領域が、配列番号:56に存在する軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む、[84]記載の抗体または抗体断片、
[86]該抗体が、配列番号:60を含む重鎖および配列番号:56を含む軽鎖を含む、[73]~[85]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[87]該抗体が、配列番号:61を含む重鎖および配列番号:56を含む軽鎖を含む、[73]~[85]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[88]フコシル化(fucosylation)酵素を欠損する細胞中で発現される、[73]~[87]いずれか記載の抗体または抗体断片、
[89]該細胞が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、[88]記載の抗体または抗体断片、
[90][73]~[89]いずれか記載の抗体または抗体断片、および薬学的に許容され得る担体、希釈剤または賦形剤を含む、組成物、
[91]被験体に、[73]~[89]いずれか記載の抗体もしくは抗体断片、または[90]記載の組成物の有効量を投与する工程を含む、癌の治療を必要とする固体における癌を治療するための方法、
[92]癌が肺癌である、[91]記載の方法、
[93]第2の癌治療を施与する工程をさらに含む、[91]または[92]記載の方法、
[94]第2の癌治療が、手術、化学療法、放射線療法、生物学的療法、標的化療法もしくは免疫調節療法、またはそれらの組合せである、[93]記載の方法、
[95]被験体に、[73]~[89]いずれか記載の抗体もしくは抗体断片、または[90]記載の組成物の有効量を投与する工程を含む、非小細胞肺癌(NSCLC)の治療を必要とする個体における、NSCLCを治療するための方法、
[96]エピトープが構造的(conformational)エピトープである、[22]記載の抗体または抗体断片、
[97]該構造的エピトープが、ヒトVISTA(配列番号:46)の残基103~111(NLTLLDSGL(配列番号:62))および136~146(VQTGKDAPSNC(配列番号:63))を含むか、またはその中に存在する、[96]記載の抗体または抗体断片、
[98]該構造的エピトープが、ヒトVISTA(配列番号:46)の残基24~36(LLGPVDKGHDVTF(配列番号:64))および54~65(RRPIRDLTFQDL(配列番号:65)を含むか、またはその中に存在する、[96]記載の抗体または抗体断片、
[99]該構造的エピトープが、ヒトVISTA(配列番号:46)のFGループ内のアミノ酸残基を含む、[96]記載の抗体または抗体断片、
[100]免疫応答の増大を必要とする個体に、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む、VISTAに結合する抗体またはその抗体断片の治療有効量を投与して、それにより癌に対する免疫応答を高める工程を含む、免疫応答の増大を必要とする個体における免疫応答を高める方法、
[101]該免疫応答が抗腫瘍免疫応答である、[100]記載の方法、
[102]生物学的応答の誘起を必要とする個体に、T細胞活性化のVドメインIgサプレッサー(VISTA)に結合する抗原結合領域を含む、VISTAに結合する抗体またはその抗体断片の治療有効量を投与して、それにより癌に対する免疫応答を高める工程を含む、生物学的応答の誘起を必要とする個体における生物学的応答を誘起する方法であって、該生物学的応答が、
a. 単球の活性化、
b. T細胞増殖およびサイトカイン分泌の誘導、
c. 単球の生存の増加、
d. VISTAを発現する細胞における抗体依存的細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)の誘導、および
e. VISTAを発現する細胞における抗体依存的細胞性貪食作用(ADCP)の誘導
からなる群より選択される、方法、
[103][1]記載の抗体または抗体断片のヒトVISTA(配列番号:46)への結合を競合的に阻害する、単離された抗体またはその抗体断片。
図1
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【配列表】
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