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特許7559131炎症性気道疾患又は線維性疾患の治療のためのオートタキシン(ATX)モジュレーターとしてのN-メチル,N-(6-(メトキシ)ピリダジン-3-イル)アミン誘導体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】炎症性気道疾患又は線維性疾患の治療のためのオートタキシン(ATX)モジュレーターとしてのN-メチル,N-(6-(メトキシ)ピリダジン-3-イル)アミン誘導体
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/12 20060101AFI20240924BHJP
   C07D 471/10 20060101ALI20240924BHJP
   C07D 487/10 20060101ALI20240924BHJP
   C07D 401/14 20060101ALI20240924BHJP
   C07D 487/08 20060101ALI20240924BHJP
   C07D 487/04 20060101ALI20240924BHJP
   C07D 405/14 20060101ALI20240924BHJP
   A61K 31/501 20060101ALI20240924BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20240924BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240924BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240924BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C07D401/12
C07D471/10 101
C07D487/10 CSP
C07D401/14
C07D487/08
C07D487/04 137
C07D405/14
C07D487/04 150
A61K31/501
A61K31/55
A61P11/00
A61P29/00
A61P43/00 105
【請求項の数】 20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023069392
(22)【出願日】2023-04-20
(62)【分割の表示】P 2022503996の分割
【原出願日】2020-07-21
(65)【公開番号】P2023116436
(43)【公開日】2023-08-22
【審査請求日】2023-06-20
(31)【優先権主張番号】19187617.6
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】クットルフ クリスティアン アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ブレートシュナイダー トム
(72)【発明者】
【氏名】ゴドブ セドリックス
(72)【発明者】
【氏名】クールマン ハネス フィエプコ
(72)【発明者】
【氏名】マルティレス ドムニク
(72)【発明者】
【氏名】ロス ジェラルド ユルゲン
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-530902(JP,A)
【文献】特表2019-507766(JP,A)
【文献】特表2018-506499(JP,A)
【文献】特表2019-518799(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 401/12
C07D 471/10
C07D 487/10
C07D 401/14
C07D 487/08
C07D 405/14
C07D 487/04
A61K 31/501
A61K 31/55
A61P 11/00
A61P 29/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I)
【化1】
(I)
(式中、
Aは、フルオロ及びF1-7-フルオロ-C1-3-アルキルから成る群の1又は2つのメンバーで置換されたピリジルであり;
Eは、フルオロ及びF1-7-フルオロ-C1-3-アルキルから成る群の1又は2つのメンバーで任意に置換されていてもよいフェニル及びピリジルから成る群より選択され;
Kは、下記基
【化2】
から成る群より選択され;
R3は、R4(O)C-、オキセタニル、メチル、R5(O)C(CH3)N-及びR5(O)CHN-から成る群より選択され;
R4は、メチルであり;
R5は、メチルである)
の化合物。
【請求項2】
Aが、F、F1-3-フルオロ-C1-アルキルから成る群の1又は2つのメンバーで置換されたピリジルである、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
Aが、下記基
【化3】

から成る群より選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
Eが、F、F2HC、及びF3Cから成る群の1又は2つのメンバーで任意に置換されていてもよいフェニル及びピリジルから成る群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
Eが、下記基
【化4】
から成る群より選択される、請求項1~3のいずれか1項に記載の式(I)の化合物。
【請求項6】
下記化合物:
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
から成る群より選択される、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項7】
下記式の化合物。
【請求項8】
下記式の化合物。
【請求項9】
下記式の化合物。
【請求項10】
下記式の化合物。
【請求項11】
下記式の化合物。
【請求項12】
下記式の化合物。
【請求項13】
下記式の化合物。
【請求項14】
下記式の化合物。
【請求項15】
下記式の化合物。
【請求項16】
下記式の化合物。
【請求項17】
請求項6~16のいずれか1項に記載の化合物の塩、特に医薬的に許容される塩。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1項に記載の式(I)の少なくとも1種の化合物又はその医薬的に許容される塩含む、医薬組成物。
【請求項19】
炎症性気道疾患又は線維性疾患の治療又は予防のための、請求項18に記載の医薬組成物
【請求項20】
特発性肺疾患(IPF)又は全身性硬化症(SSc)の治療又は予防のための、請求項18に記載の医薬組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、新規ダピリジン、それらの調製プロセス、それらを含有する医薬組成物並びに療法、特にオートタキシンによって媒介される疾患及び障害の治療及び/又は予防におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
オートタキシン(ATX;ENPP2)は、リゾホスファチジルコリン(LPC)をそのリゾホスホリパーゼD活性を介して生理活性脂質リゾホスファチジン酸(LPA)に加水分解する原因となる分泌酵素である。そして次に、LPAが6個のGPCR(LPA受容体1~6、LPAR1~6)と相互作用することによってその効果を発揮する(Houben AJ, 2011)。ATX-LPAシグナル伝達は、例えば血管新生、慢性炎症、自己免疫疾患、線維性疾患、癌の進行及び腫瘍の転移に関係があるとされている。例えば、LPAR1に作用するLPAは、肺線維芽細胞の遊走、増殖及び分化を誘導し;上皮及び内皮バリアー機能を調節し;及び肺上皮細胞アポトーシスを促進する(Budd, 2013)。ATX阻害、LPAR1遺伝子欠失及び選択的LPAR1拮抗薬は、肺及び皮膚の線維症の前臨床モデルにおいて有効であることが示されている(Tager AM, 2008; Swaney J, 2010, Casetelino FV, 2016)。
【0003】
特発性肺線維症(IPF)患者においては、気管支肺胞洗浄液中のLPAレベルが上昇し(Tager et al., 2008, Nat. Med.)、ヒト肺線維化組織においてATXの濃度上昇が検出された(Oikonomou et al., 2012, AJRCMB)。IPF被験者の呼気凝縮液においてLPAレベルが上昇し(Montesi et al., 2014_BMCPM)、安定IPF患者の血清中でLPCは2倍に増加する(Rindlisbacher et al., 2018, Resp. Res.)。
従って、ATXレベル上昇及び/又はLPAレベル上昇、LPA受容体発現変化、並びにLPAへの応答変化は、ATX-LPAシグナル伝達に関係がある多くの病理生理学的状態に影響する可能性がある。
【0004】
間質性肺疾患(ILD)は、肺の間質、気嚢間の組織及び空間の炎症並びに線維症を特徴とする(du Bois, Nat. Rev. Drug Discov. 2010, 9, 129-140)。ILDは、肺への傷害が異常な治癒応答を引き起こすときに生じ得る。従ってILDには、肺傷害への応答が進行性で自己持続的になり、最初の臨床的関連性又はトリガーに依存しない、進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PFILD)が含まる。最も顕著なPFILDは、特発性肺線維症(IPF)及び全身性硬化症-ILD(SSc-ILD)である。
IPFは、肺容量を減らし、進行性肺機能不全をもたらす肺の間質における進行性線維症を特徴とする慢性線維性の不可逆的で最終的に死に至る肺疾患である。IPFは通常型間質性肺炎(UIP)として知られる特有の病理組織学的パターンをも特徴とする(Raghu et al, Am. J. Respir. Crit. Care Med. 183: 788-824)。
【0005】
強皮症とも呼ばれる全身性硬化症(SSc)は複雑な病因論の免疫媒介リウマチ性疾患である。それは、広範な線維症、脈管障害及び種々の細胞抗原に対する自己抗体を特徴とする多臓器の異型遺伝子性疾患であり、高死亡率を有する。それは、まれな障害、すなわち、高度な未だ対処されていない必要性がある難病である。SScの初期の臨床徴候は多様であり得る。疾患の初期にレイノー現象及び胃食道逆流が存在することが多い(Rongioletti F, et al., J Eur Acad Dermatol Venereol 2015; 29: 2399-404)。患者によっては、炎症性皮膚疾患、腫れぼったい膨潤した指、筋骨格炎症、又は体質性徴候、例えば疲労を呈する。患者の皮膚の過剰なコラーゲン沈着が皮膚を肥厚かつ強靱にする。患者によっては、肺線維症、肺動脈性肺高血圧症、腎不全又は消化管の合併症のような疾患の臓器に基づく徴候が観察される。さらに、免疫関与の最も一般的な徴候の1つが、自分自身の細胞の核に対する自己免疫抗体(抗核抗体又はANA)の異常レベルの存在であり、SScを有するほとんど誰にでも見られる(Guiducci S et al., Isr Med Assoc J 2016; 18: 141-43)。ILD及び肺動脈性肺高血圧症(PAH)は、SSc患者の最も頻度の高い死因である(Tyndall AJ et al. Ann Rheum Dis 2010; 69: 1809-15)。
【0006】
SSc患者は、2つの主要疾患サブセット:びまん性皮膚硬化型全身性硬化症、及び限局皮膚硬化型全身性硬化症に分類される(LeRoy EC, et al., J Rheumatol 1988; 15:202-5)。3つの臨床特徴、すなわち、過剰な線維症(瘢痕)、脈管障害、及び自己免疫が現れて、SScを特徴づける様々な徴候をもたらす過程の基礎をなす。SScは、現在、傷害への結合組織の調節不全又は機能不全修復の徴候とみなされている(Denton CP et al., Lancet 2017; 390: 1685-99)。
従って、強力なATXインヒビターを提供することが望ましい。
【0007】
種々の構造的分類のATXインヒビターが、D. Castagna et al. (J.Med.Chem. 2016, 59, 5604-5621)に概説されている。WO2014/139882は、下記一般化構造式を有するATXインヒビターである化合物を開示している。
【化1】
【0008】
その中の例2は、N. Desroy, et al (J.Med.Chem. 2017, 60, 3580-3590、例11として)に、特発性肺線維症の治療のために臨床評価を受けるファースト-イン-クラスATXインヒビターとしてさらに開示されている。C. Kuttruff, et al. (ACS Med. Chem. Lett. 2017, 8, 1252-1257)には、生体内のLPAレベルを顕著に減らすATXインヒビターBI-2545(例19)が開示されている。
【発明の概要】
【0009】
発明の詳細な説明
本発明は、驚いたことにオートタキシンの強力なインヒビターであり(アッセイA)、さらに、
-ヒト全血での高い効力(アッセイB)、及び
-数時間にわたる生体内のLPAの血漿濃度レベルの顕著な低減(アッセイC)
を特徴とする新規ピリダジンを提供する。
本発明の化合物は、ATX活性及び/又はLPAシグナル伝達が関与する疾患又は状態の治療又は予防のための薬剤として有用であり、該疾患の病因又は病理に関与するか、そうでなくても該疾患の少なくとも1つの症状と関連する。ATX-LPAシグナル伝達は、例えば血管新生、慢性炎症、自己免疫疾患、線維性疾患、癌の進行及び腫瘍の転移に関係があるとされている。
【0010】
本発明の化合物は、下記パラメーター:
-ATXインヒビターとしての効力、
-ヒト全血中でのATXインヒビターとしての効力、
-数時間にわたって生体内のLPAの血漿濃度レベルを低減させること
の組み合わせに関して先行技術で開示されているものより優れている。
ATXは、ヘパリン添加全血において活性な可溶性血漿タンパク質である。その基質LPCは非常に大量に存在し、その濃度はμM範囲である。従って、生理学的基質濃度での全血アッセイは、生体内でのATXインヒビターの有効性を予測する非常に関連性のあるアッセイである。
【0011】
生体内のLPA低減は、本発明の化合物の経口投与後のLPAの血漿濃度を測定することによって決定される。LPAは非常に強い生理活性の脂質であり、LPA受容体1~6を介して濃度依存様式で下流経路を効率的に活性化する。ATX阻害を介したLPA形成の明白かつ持続的な遮断は、化合物投与8時間後のLPA低減の程度を測定することによってアッセイされる。従って、8時間での血漿LPAの大きな低減は、生体内での作用の有効性及び持続時間のみならず、LPA受容体の持続的ターゲットエンゲージメントを非常によく示している。
本発明の化合物は、WO2014/139882の例2及び12並びにACS Med. Chem. Lett. 2017, 8, 1252-1257の例19とは構造的に異なり、すなわち、本発明の化合物は、3位及び6位に置換基を有する中心のピリダジンコアを含有する。この構造差は、予想外に、(i)ATXの阻害、(ii)ヒト全血中のATXの阻害、及び(iii)数時間にわたる生体内のLPAの血漿濃度レベル低減という優れた組み合わせをもたらす。
結果として、本発明の化合物は、高い生体内ターゲットエンゲージメントを示し、ヒトにおいてより高い有効性を有すると予測することができる。
【0012】
本発明は、下記式(I)の新規化合物を提供する。
【化2】
(I)
式中、
Aは、フルオロ及びF1-7-フルオロ-C1-3-アルキルから成る群の1又は2つのメンバーで置換されたピリジルであり;
Eは、フルオロ及びF1-7-フルオロ-C1-3-アルキルから成る群の1又は2つのメンバーで任意に置換されていてもよいフェニル及びピリジルから成る群より選択され;
【0013】
Kは、下記基
【化3】
から成る群より選択され;
R3は、R4(O)C-、オキセタニル、メチル、R5(O)C(CH3)N-及びR5(O)CHN-から成る群より選択され;
R4は、メチルであり;
R5は、メチルである。
【0014】
本発明の別の実施形態は、Aが、F、F1-3-フルオロ-C1-アルキルから成る群の1又は2つのメンバーで置換されたピリジルであり;かつ置換基E及びKが、先行する実施形態の定義どおりである、式(I)の化合物に関する。
本発明の別の実施形態は、Aが、F、F2HC、及びF3Cから成る群の1又は2つのメンバーで置換されたピリジルであり;かつ置換基E及びKが、先行する実施形態の定義どおりである、式(I)の化合物に関する。
【0015】
本発明の別の実施形態は、Aが、下記
【化4】
から成る群より選択され;
かつ置換基E及びKが、先行する実施形態のいずれかの定義どおりである、式(I)の化合物に関する。
本発明の別の実施形態は、Eが、F、F2HC、及びF3Cから成る群の1又は2つのメンバーで任意に置換されていてもよいフェニル及びピリジルから成る群より選択され;
かつ置換基A及びKが、先行する実施形態のいずれかの定義どおりである、式(I)の化合物に関する。
本発明の別の実施形態は、Eが、F及びF3Cから成る群の1又は2つのメンバーで任意に置換されていてもよいフェニル及びピリジルから成る群より選択され;
かつ置換基A及びKが、先行する実施形態のいずれかの定義どおりである、式(I)の化合物に関する。
【0016】
本発明の別の実施形態は、Eが、下記基
【化5】
から成る群より選択され;
かつ置換基A及びKが、先行する実施形態のいずれかの定義どおりである、式(I)の化合物に関する。
【0017】
本発明によれば、好ましくは式(I)の化合物は下記化合物から成る群より選択される。
【化6】
【0018】
【化7】
【0019】
【化8】
【0020】
【化9】
【0021】
【化10】
【0022】
さらなる実施形態は、本発明の式Iの少なくとも1種の化合物又はその医薬的に許容される塩及び1種以上の医薬的に許容される賦形剤を含む医薬組成物に関する。
さらなる実施形態は、医薬として使用するための本発明の式(I)の化合物に関する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
使用する用語及び定義
本明細書で具体的に定義しない用語には、本開示及び文脈を考慮して当業者がそれらに与えるであろう意味を与えるものとする。しかしながら、本明細書で使用する場合、別段の規定がない限り、下記用語は、指示した意味を有し、下記慣例を順守する。
下記基(groups)、基(radicals)、又は部分(moieties)においては、基に先行して炭素原子数を規定することが多く、例えば、C1-6-アルキルは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。一般的にHO、H2N、(O)S、(O)2S、NC(シアノ)、HOOC、F3C等のような基においては、分子への該基の付着点は、当業者なら基自体の自由原子価から分かるであろう。2つ以上のサブ基を含む組み合わせ基については、最後に名付けたサブ基が該基の付着点であり、例えば、置換基「アリール-C1-3-アルキル」は、C1-3-アルキル基に結合しているアリール基を意味し、アルキル基が、該置換基が付着しているコア又は基に結合している。
本発明の化合物を化学名の形式で及び化学式として描写している場合、如何なる矛盾がある場合も式が優先するものとする。サブ式にアスタリスクを用いて、定義どおりにコア分子に結び付いている結合を表すことができる。
置換基の原子の番号付けは、該置換基が付着しているコア又は基に最も近い原子から始まる。
【0024】
例えば、用語「3-カルボキシプロピル基」は、下記置換基を表し、
【化11】
式中、カルボキシ基は、プロピル基の3番目の炭素原子に付着している。用語「1-メチルプロピル-」、「2,2-ジメチルプロピル-」又は「シクロプロピルメチル-」基は、下記基を表す。
【化12】
【0025】
サブ式にアスタリスクを用いて、定義どおりにコア分子に結び付いている結合を表すことができる。
本明細書で使用する用語「置換された」は、指定原子上の任意の1個以上の水素が指示群からの選択肢で置き換えれらていることを意味する。但し、指定原子の通常の原子価を超えることなく、かつ該置換が安定化合物をもたらすことを条件とする。
単独又は別の基と組み合わせた用語「C1-n-アルキル」(nは、2、3、4、5又は6、好ましくは4又は6から選択される整数である)は、1~n個のC原子を有する非環式の飽和した分岐又は直鎖炭化水素基を意味する。例えば用語C1-5-アルキルは、基H3C-、H3C-CH2-、H3C-CH2-CH2-、H3C-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH(CH3)-CH2-、H3C-C(CH3)2-、H3C-CH2-CH2-CH2-CH2-、H3C-CH2-CH2-CH(CH3)-、H3C-CH2-CH(CH3)-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH2-CH2-、H3C-CH2-C(CH3)2-、H3C-C(CH3)2-CH2-、H3C-CH(CH3)-CH(CH3)-及びH3C-CH2-CH(CH2CH3)-を包含する。
用語「ハロゲン」は、塩素、臭素、ヨウ素、及びフッ素を意味する。「アルキル」、「アルキレン」又は「シクロアルキル」基(飽和又は不飽和)に付加された用語「ハロ」によって、該アルキル又はシクロアルキル基は、その1個以上の水素原子が、フッ素、塩素又は臭素、好ましくはフッ素及び塩素の中から選択されるハロゲン原子、特に好ましくはフッ素に置き換えられる。例としては、H2FC-、HF2C-、F3C-が挙げられる。
【0026】
用語フェニルは、下記環の基を指す。
【化13】
【0027】
用語ピリジニルは、下記環の基を指す。
【化14】
【0028】
用語ピリダジンは、下記環を指す。
【化15】
【0029】
用語オキセタニルは、下記環を指す。
【化16】
【0030】
具体的指示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲を通して、所与の化学式又は化学名は、互変異性体並びに全ての立体、光学及び幾何異性体(例えばエナンチオマー、ジアステレオマー、E/Z異性体等)並びにそのラセミ体のみならず、別々のエナンチオマーの異なる比率の混合物、ジアステレオマーの混合物、又は該異性体及びエナンチオマーが存在する前述の形態のいずれもの混合物のみならず、その医薬的に許容される塩を含めた塩、及び例えば遊離化合物の溶媒和物又は化合物の塩の溶媒和物を含めたその溶媒和物を包含するものとする。
一般に、当業者に既知の合成原理によれば、例えば対応混合物の分離によって、立体化学的に純粋な出発物質を使用することによって及び/又は立体選択的合成によって、実質的に純粋な立体異性体を得ることができる。例えばラセミ形の分割によって又は例えば光学活性出発物質から出発する合成によって及び/又はキラル試薬を使用することによって、光学活性形を調製する方法は技術上周知である。
【0031】
本発明のエナンチオマー的に純粋な化合物又は中間体は、不斉合成を経て、例えば、既知の方法(例えばクロマトグラフ分離又は結晶化)で分離できる適切なジアステレオマー化合物又は中間体の調製後の分離によって及び/又はキラル出発物質、キラル触媒若しくはキラル補助剤等のキラル試薬を使用することによって調製可能である。
さらに、例えばキラル固定相上の対応ラセミ混合物のクロマトグラフ分離によって;又は適切な分割剤を用いたラセミ混合物の分割、例えばラセミ化合物と光学活性酸若しくは塩基とのジアステレオマー塩の形成、その後の塩の分割及び塩からの所望化合物の遊離を利用して;又は光学活性キラル補助試薬による対応ラセミ化合物の誘導体化、その後のジアステレオマー分離及びキラル補助基の除去によって;又はラセミ体の速度論的分割(例えば、酵素的分割)によって;鏡像結晶の集合体からの適切な条件下でのエナンチオ選択的結晶化によって;又は光学活性キラル補助剤の存在下での適切な溶媒からの(分別)結晶化によってのような、対応ラセミ混合物からエナンチオマー的に純粋な化合物を調製する方法を当業者なら知っている。
【0032】
本明細書では「医薬的に許容される」という表現を利用して、健全な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症なしで使用するのに適しており、かつ妥当な利益/危険比で釣り合っている当該化合物、物質、組成物、及び/又は剤形を指す。
本明細書で使用する場合、「医薬的に許容される塩」は、親化合物が酸又は塩基と塩又は複合体を形成する、開示化合物の誘導体を指す。
塩基性部分を含有する親化合物と医薬的に許容される塩を形成する酸の例としては、鉱酸又は有機酸、例えばベンゼンスルホン酸、安息香酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、ゲンチジン酸、臭化水素酸、塩酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、4-メチル-ベンゼンスルホン酸、リン酸、サリチル酸、コハク酸、硫酸及び酒石酸がある。
【0033】
酸性部分を含有する親化合物と医薬的に許容される塩を形成するカチオン及び塩基の例としては、Na+、K+、Ca2+、Mg2+、NH4 +、L-アルギニン、2,2’-イミノビスエタノール、L-リシン、N-メチル-D-グルカミン又はトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンがある。
本発明の医薬的に許容される塩は、酸性若しくは塩基性部分を含有する親化合物から通常の化学的方法によって合成可能である。一般的に、該塩は、これらの化合物の遊離酸形又は塩基形を、水中又はエーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、若しくはアセトニトリル、又はその混合物のような適切な有機希釈剤中で十分な量の適切な塩基又は酸と反応させることによって調製可能である。
例えば本発明の化合物を精製又は単離するために役立つ、上記酸以外の酸の塩(例えばトリフルオロ酢酸塩)も本発明の一部を構成する。
【0034】
生物学的アッセイ
下記方法によって化合物の生物学的活性を決定した。
アッセイA:生化学的ATXアッセイ
3mMのKCl、1mMのCaCl2、1mMのMgCl2、0.14mMのNaCl、及び0.1%のウシ血清アルブミンを含有する50mMのトリス緩衝液(pH 8.0)に5nMの組換えATX(Cayman Chemicals)を補充した。試験化合物をDMSOに溶かして0.1nM~10μMの範囲で試験した。10μMの18:1 LPC(Avanti Lipids, Alabaster, AL, USA)2.5μLの添加によって酵素反応(22.5μL)を開始した。室温での2時間のインキュベーション後、内部標準物質として500nMの20:4 LPA及びLPAを抽出するための100μLの1-ブタノールを含有する20μLの水の添加によって反応を停止させた。引き続き、プレートを4000rpm、4℃で2分間遠心分離機にかけた。結果として生じた上方のブタノール相をそのままRapidFireシステム(Agilent)での注入に使用した。
【0035】
RapidFireオートサンプラーをバイナリポンプ(Agilent 1290)とTriple Quad 6500(ABSciex, Toronto,Canada)に連結した。このシステムに10μLのループ、5μLのWaters Atlantis HILICカートリッジ(Waters, Elstree, UK)、溶出剤Aとして10mMの酢酸アンモニウムを含有する90%のアセトニトリル及び溶出剤Bとして10mMの酢酸アンモニウムを含有する40%のアセトニトリルを備えた。詳細については下記参照(Bretschneider et al., SLAS Discovery, 2017)。1つのMSをネガティブモードにて550℃のソース温度、カーテンガス=35、ガス1=65、及びガス2=80で作動させた。それぞれのLPAについて下記トランジション及びMSパラメーター(DP:デクラスタリング電位及びCE:衝突エネルギー)を決定した:
18:1 LPA 435.2/152.8、DP=-40、CE=-28及び20:4 LPA 457.2/152.8、DP=-100、CE=-27)。
18:1 LPAの形成をモニターし、20:4 LPAに対する比として評価した。
【0036】
表1:アッセイAによって得られた本発明の化合物の生物学データ
【表1】

【0037】
表2:アッセイAで得られた先行技術の化合物(WO2014/139882の例2及び12)の生物学データ
【表2】

【0038】
表3:アッセイAで得られた先行技術の化合物(ACS Med. Chem. Lett. 2017, 8, 1252-1257の例19)の生物学データ
【表3】

【0039】
アッセイB:全血ATXアッセイ
リン酸緩衝食塩水に溶解した5μLの試験化合物(濃度範囲:0.12nM~100μM)を45μLのヒト全血に補充した。この混合物を1時間37℃でインキュベートし、30mMのクエン酸(pH 4)及び1μMの17:0 LPA(内部標準物質)を含有する40mMのリン酸水素二ナトリウム緩衝液100μLの添加によって停止した。500μLの1-ブタノールの添加によりLPAを抽出した後、4000rpm、4℃で10分間遠心分離機にかけた。結果として生じた有機上清から、200μLのアリコートを96ディープウェルプレートに移し、RapidFireに基づくMS/MS測定に移行させた。
RapidFireオートサンプラーをバイナリポンプ(Agilent 1290)とTriple Quad 6500 (ABSciex, Toronto, Canada)に連結した。このシステムに10μLのループ、5μLのWaters Atlantis HILICカートリッジ(Waters, Elstree, UK)、溶出剤Aとして10mMの酢酸アンモニウムを含有する90%のアセトニトリル及び溶出剤Bとして10mMの酢酸アンモニウムを含有する40%のアセトニトリルを備えた。詳細については下記参照(Bretschneider et al., SLAS Discovery, 2017, 22, 425-432)。このMSをネガティブモードにて550℃のソース温度、カーテンガス=35、ガス1=65、及びガス2=80で作動させた。それぞれのLPAについて下記トランジション及びMSパラメーター(DP:デクラスタリング電位及びCE:衝突エネルギー)を決定した:18:2 LPA 433.2/152.8、DP=-150、CE=-27及び17:0 LPA 423.5/152.8、DP=-100。
18:2 LPAの形成をモニターし、17:0 LPAに対する比として評価した。
【0040】
表4:アッセイBで得られた本発明の化合物の生物学データ
【表4】

【0041】
表5:アッセイBで得られた先行技術の化合物(WO2014/139882の例2及び12)の生物学データ
【表5】

【0042】
表6:アッセイBで得られた先行技術の化合物(ACS Med. Chem. Lett. 2017, 8, 1252-1257の例19)の生物学データ
【表6】

【0043】
アッセイC:生体内
5mg/kgの用量でラットに経口投与するために0.015%のTween 80を補充した0.5%のナトロゾール(natrosol)に試験物質を可溶化した。化合物投与前及び凝固剤としてEDTAを用いて氷上で投与8時間後に血液サンプルを採取した。引き続き、遠心分離によって血漿を調製し、分析するまで-20℃で貯蔵した。
血漿サンプルからのLPAをScherer et al. (Clinical chemistry 2009, 55, 1218-22)により記載された手順を用いて抽出した。35μLのヘパリン添加血漿を、30mMのクエン酸(pH 4)及び1μMの17:0 LPA(内部標準物質)を含有する40mMのリン酸水素二ナトリウム緩衝液200μLと混合した。引き続き、500μLのブタノールを添加し、10分間激しく振盪させた。その後、4000rpm、4℃で10分間サンプルを遠心分離機にかけた。500μLの有機上相を未使用の96ディープウェルプレートに移し、15psi(1.03×105Pa)の穏やかな窒素流と共に45分間エバポレートした。結果として生じた残渣を、LC-MS分析前に100μLのエタノールに溶かした。
【0044】
生体内サンプルの分析のためのLC-MS方法
Triple Quad 6500 (ABSciex, Toronto, Canada)に、Agilent 1290 LCシステム(Agilent, Santa Clara, CA)、CTCオートサンプラー及びAtlantis 50×2.1mm、3μm HILIC LCカラム(Waters, Elstree, UK)を備えた。溶出剤Aは、水中、0.2%のギ酸及び50mMのギ酸アンモニウムを含有し、一方で溶出剤Bは、アセトニトリル中0.2%のギ酸から成った。LCグラジエントは95%の溶剤Bから始め、1.5分以内で75%及び0.2分以内で50%の溶剤Bに減らし、さらに500から700μL・分-1の流量まで増やした。1.8分で、溶剤Bを95%に戻し、0.7分間一定に保って、カラムを再び平衡化した。下記LPA種をモニターした(DP:デクラスタリング電位及びCE:衝突エネルギー):16:0 LPA 409.2/152.8、DP=-150、CE=-28;18:0 LPA 437.3/152.8、DP=-60、CE=-28;18:1 LPA 435.2/152.8、DP=-40、CE=-28;18:2 LPA 433.2/152.8、DP=-150、CE=-28;20:4 LPA 457.2/152.8、DP=-100、CE=-29及び17:0 LPA 423.5/152.8、DP=-100、CE=-36。
試験化合物適用前のベースラインLPAレベルに基づいてパーセントのLPA減少を計算した。LPAの合計は、種16:0;18:0;18:1;18:2及び20:4を指す。
【0045】
表7:アッセイCで得られた本発明の化合物の生物学データ
【表7】

【0046】
表8:アッセイCで得られた先行技術の化合物(WO2014/139882の例2及び12)の生物学データ
【表8】

【0047】
表9:アッセイCで得られた先行技術の化合物(ACS Med. Chem. Lett. 2017, 8, 1252-1257の例19)の生物学データ
【表9】

【0048】
治療方法
本発明は、ATX及び/若しくはLPAの生理活性と関連するか又はATX及び/若しくはLPAの生理活性によって調節される疾患及び/又は状態の予防及び/又は治療、例えば、限定するものではないが、炎症状態、線維性疾患、呼吸器系の状態、腎臓の状態、肝臓の状態、血管及び心血管の状態、癌、眼の状態、代謝状態、胆汁うっ滞性及び他の形態の慢性そう痒症並びに急性及び慢性臓器移植拒絶並びに神経系の状態等の治療及び/又は予防に有用な一般式(I)の化合物に関する。
【0049】
一般式(I)の化合物は、炎症状態、例えば、限定するものではないが、シェーグレン症候群、関節炎、変形性関節症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、炎症性気道疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び慢性喘息等;線維性疾患、例えば、限定するものではないが、間質性肺疾患(ILD)、例えば進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PFILD)、例えば特発性肺線維症(IPF)、及びSSC-ILD等、家族性間質性肺疾患、心筋性及び血管性線維症、腎線維症、肝線維症、肺線維症、皮膚線維症、膠原病性脈管疾患、例えば全身性硬化症(SSc)及び被嚢性腹膜炎(encapsulating peritonitis)等;呼吸器系の状態、例えば、限定するものではないが、様々な病因論のびまん性実質性肺疾患、例えば医原性薬物誘発線維症、職業及び/又は環境誘発線維症等、全身性疾患及び血管炎、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏性肺炎)、腎臓の状態、例えば、限定するものではないが、末期腎疾患(ESRD)、巣状分節状糸球体硬化症、IgA腎症、血管炎/全身性疾患並びに急性及び慢性腎移植拒絶を含めた急性腎傷害及び慢性腎疾患(タンパク尿を伴う場合及び伴わない場合);肝臓の状態、例えば、限定するものではないが、肝硬変、肝臓うっ血、胆汁うっ滞性肝疾患、例えばそう痒、原発性胆汁性胆管炎、非アルコール性脂肪性肝炎並びに急性及び慢性肝移植拒絶等;血管の状態、例えば、限定するものではないが、アテローム性動脈硬化症、血栓性血管疾患並びに血栓性微小血管症、増殖性動脈症(例えば粘液性細胞外マトリックスによって包囲された腫脹筋内膜細胞及び結節性肥厚)、内皮機能障害等;心血管の状態、例えば、限定するものではないが、急性冠症候群、冠動脈心疾患、心筋梗塞、動脈性肺高血圧症、不整脈、例えば心房細動、脳卒中及び他の血管損傷等;癌及び癌転移、例えば、限定するものではないが、乳癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、中皮腫、グリオーマ、肝癌、胃腸癌並びにその進行性及び転移性攻撃性等;眼の状態、例えば、限定するものではないが、増殖性及び非増殖性(糖尿病性)網膜症、乾燥及び湿潤加齢黄斑変性(AMD)、黄斑浮腫、中心動脈/静脈閉塞症、外傷、緑内障等;代謝状態、例えば、限定するものではないが、肥満症、脂質異常症及び糖尿病等;神経系の状態、例えば、限定するものではないが、神経障害性疼痛、アルツハイマー病、統合失調症、神経炎症(例えば、アストログリオーシス)、末梢性及び/又は自律神経性(糖尿病性)神経障害等の予防及び/又は治療に有用である。
【0050】
従って、本発明は、医薬として使用するための一般式(I)の化合物に関する。
さらに、本発明は、ATX及び/若しくはLPAの生理活性と関連するか又はATX及び/若しくはLPAの生理活性によって調節される疾患及び/又は状態の治療及び/又は予防のための一般式(I)の化合物の使用に関する。
さらに、本発明は、ATX及び/若しくはLPAの生理活性と関連するか又はATX及び/若しくはLPAの生理活性によって調節される疾患及び/又は状態、例えば、限定するものではないが、炎症状態、線維性疾患、呼吸器系の状態、腎臓の状態、肝臓の状態、血管及び心血管の状態、癌、眼の状態、代謝状態、胆汁うっ滞性及び他の形態の慢性そう痒症並びに急性及び慢性臓器移植拒絶並びに神経系の状態等の治療及び/又は予防のための一般式(I)の化合物の使用に関する。
【0051】
さらに、本発明は、炎症状態、例えば、限定するものではないが、シェーグレン症候群、関節炎、変形性関節症、多発性硬化症、全身性エリテマトーデス、炎症性腸疾患、炎症性気道疾患、例えば慢性閉塞性肺疾患(COPD)及び慢性喘息等;線維性疾患、例えば、限定するものではないが、間質性肺疾患(ILD)、例えば進行性線維化を伴う間質性肺疾患(PFILD)、例えば特発性肺線維症(IPF)、及びSSC-ILD等、家族性間質性肺疾患、心筋性及び血管性線維症、腎線維症、肝線維症、肺線維症、皮膚線維症、膠原病性脈管疾患、例えば全身性硬化症(SSc)及び被嚢性腹膜炎(encapsulating peritonitis)等;呼吸器系の状態、例えば、限定するものではないが、様々な病因論のびまん性実質性肺疾患、例えば医原性薬物誘発線維症、職業及び/又は環境誘発線維症等、全身性疾患及び血管炎、肉芽腫性疾患(サルコイドーシス、過敏性肺炎)、腎臓の状態、例えば、限定するものではないが、末期腎疾患(ESRD)、巣状分節状糸球体硬化症、IgA腎症、血管炎/全身性疾患並びに急性及び慢性腎移植拒絶を含めた急性腎傷害及び慢性腎疾患(タンパク尿を伴う場合及び伴わない場合);肝臓の状態、例えば、限定するものではないが、肝硬変、肝臓うっ血、胆汁うっ滞性肝疾患、例えばそう痒、原発性胆汁性胆管炎、非アルコール性脂肪性肝炎並びに急性及び慢性肝移植拒絶等;血管の状態、例えば、限定するものではないが、アテローム性動脈硬化症、血栓性血管疾患並びに血栓性微小血管症、増殖性動脈症(例えば粘液性細胞外マトリックスによって包囲された腫脹筋内膜細胞及び結節性肥厚)、内皮機能障害等;心血管の状態、例えば、限定するものではないが、急性冠症候群、冠動脈心疾患、心筋梗塞、動脈性肺高血圧症、不整脈、例えば心房細動、脳卒中及び他の血管損傷等;癌及び癌転移、例えば、限定するものではないが、乳癌、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、中皮腫、グリオーマ、肝癌、胃腸癌並びにその進行性及び転移性攻撃性等;眼の状態、例えば、限定するものではないが、増殖性及び非増殖性(糖尿病性)網膜症、乾燥及び湿潤加齢黄斑変性(AMD)、黄斑浮腫、中心動脈/静脈閉塞症、外傷、緑内障等;代謝状態、例えば、限定するものではないが、肥満症、脂質異常症及び糖尿病等;神経系の状態、例えば、限定するものではないが、神経障害性疼痛、アルツハイマー病、統合失調症、神経炎症(例えば、アストログリオーシス)、末梢性及び/又は自律神経性(糖尿病性)神経障害等の治療及び/又は予防のための一般式(I)の化合物の使用に関する。
【0052】
さらなる態様では、本発明は、上記疾患及び状態の治療及び/又は予防に用いる一般式(I)の化合物に関する。
さらなる態様では、本発明は、上記疾患及び状態の治療及び/又は予防用医薬の調製のための一般式(I)の化合物の使用に関する。
本発明のさらなる態様では、本発明は、上記疾患及び状態の治療又は予防方法であって、有効量の一般式(I)の化合物のヒトへの投与を含む方法に関する。
【0053】
医薬組成物
式(I)の化合物の投与に適した製剤は、当業者には明らかであり、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、坐剤、ロレンジ剤、トローチ剤、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、サシェ剤、注射剤、吸入剤及び散剤等が挙げられる。
適切な錠剤は、例えば、式Iの1種以上の化合物を既知賦形剤、例えば不活性な希釈剤、担体、崩壊剤、アジュバント、界面活性剤、結合剤及び/又は潤沢剤と混合することによって得ることができる。
【0054】
併用療法
本発明の化合物は、少なくとも2種の活性化合物を有効量で用いて、同時に本発明が有用である適応症を治療するように当該技術分野での使用が知られている他の治療選択肢と併用することができる。併用療法は、好ましくは2種の活性化合物を患者に同時に投与することを含むが、有効量の個々の化合物が同時に患者内に存在することになるとはいえ、化合物を患者に同時に投与する必要はない。本発明の化合物は、本明細書の他の部分に記載の1種以上の併用パートナーと共に投与してよい。
従って、本発明は、IL6モジュレーター、抗IL6Rモジュレーター及びIL13/IL-4 JAKiモジュレーターから成るリストからの1種以上の抗炎症分子による治療に加えて式(I)の化合物が投与されることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかの式(I)の化合物を提供する。
【0055】
別の態様によれば、本発明は、CB2アゴニスト、TGFモジュレーター、FGFRモジュレーター、VEGFRインヒビター、PDGFRインヒビター、FGFモジュレーター、αvβ6インテグリンモジュレーター、抗CTGF抗体、ROCK2インヒビター、rhPTX-2(ペントラキシン-2)、JNK1インヒビター、LOXL2インヒビター、ガレクチン3インヒビター、MK2インヒビター、Wnt経路インヒビター、TGFRインヒビター、PDE4モジュレーター、TRPA1インヒビター及びマイクロRNAモジュレーターから成るリストからの1種以上の抗線維性分子による治療に加えて式(I)の化合物が投与されることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかの式(I)の化合物を提供する。
別の態様によれば、本発明は、ニンテダニブに加えて式(I)の化合物が投与されることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかの式(I)の化合物を提供する。
別の態様によれば、本発明は、ピルフェニドンに加えて式(I)の化合物が投与されることを特徴とする、前述の実施形態のいずれかの式(I)の化合物を提供する。
【0056】
調製
本発明の化合物は、当業者に知られ、有機合成の文献に記載されている合成方法を用いて得ることができる。特に実験セクションで述べるように、以下により完全に説明する調製方法と同様に本化合物を得るのが好ましい。
本発明の化合物の一般的調製プロセスは、下記スキームを研究すれば当業者には明らかになるであろう。出発物質は、文献又は本明細書に記載の方法で調製するか、又は類似若しくは同様のやり方で調製してよい。出発物質又は中間体のいずれの官能基をも通常の保護基を用いて保護してよい。これらの保護基は、当業者が精通している方法を用いて反応シークエンス内の適切な段階で再び切断し得る。
【化17】
【0057】
一般式(I)の化合物は、ピリダジニルハロゲン化物又はトリフラート(II)とアミン(III)のパラジウム媒介バックワルド反応又は銅媒介ウルマン反応によって調製可能であり、Xは、例えばCl、Br、I又はOTf(トリフラート)を表す脱離基である。
【化18】
代わりに一般式(I)の化合物は、ピリダジニルハロゲン化物又はトリフラート(VIII)とアルコール(VII)のパラジウム媒介バックワルド反応又は銅媒介ウルマン反応によって調製可能であり、Xは、例えばCl、Br、I又はOTf(トリフラート)を表す脱離基である。
【実施例
【0058】
実験パート
下記例は、本発明を限定することなく本発明を実証することを意図する。用語「周囲温度」及び「室温」を互換的に使用し、約20℃の温度を指定する。
【0059】
略語:
【表10】


【0060】
出発化合物の調製
例I
例I.1
3-{[6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}-6-ヨードピリダジン
【化19】
【0061】
25mLのTHF中の17.70g(53.33mmol)の3,6-ジヨードピリダジン(CAS-No. 20698-04-8)及び8.50g(53.41mmol)の[6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メタノール(CAS-No. 946578-33-2)を0℃まで冷却し、2.33g(53.33mmol)の水素化ナトリウム(55%純度)を加える。反応混合物をRTで一晩撹拌し、減圧下で濃縮する。残渣を水(400mL)で希釈する。沈殿物を濾過し、水及びtBMEで洗浄し、真空中50℃で一晩乾燥させて17.50gの生成物を得る。
C11H8F2IN3O (M=363.1g/モル)
ESI-MS:364 [M+H]+
Rt(HPLC):0.90分(方法A)
【0062】
上記一般手順(例にI.1)に従って下記化合物を調製する。
【化20】

【0063】
例II
例II.1
4-(4-アセチルピペラジン-1-イル)-3-フルオロベンゾニトリル
【化21】
【0064】
7mLのDCM中の0.40g(1.95mmol)の3-フルオロ-4-ピペラジン-1-イル-ベンゾニトリル(CAS-No. 182181-38-0)と0.60ml(4.30mmol)のトリエチルアミンの溶液に0.14mL(1.95mmol)の塩化アセチルを加えて混合物をRTで一晩撹拌する。反応混合物を0.09mL(1.25mmol)のトリエチルアミンで処理し、RTで2時間撹拌する。有機層を水で洗浄し、PTKで乾燥させ、減圧下で溶媒を蒸発させて0.5gの粗生成物を得、これをさらに精製せずに次のステップで使用した。
C13H14FN3O (M=247.3g/モル)
ESI-MS:248 [M+H]+
Rt(HPLC):0.82 B)
【0065】
上記一般手順(例II.1)に従って下記化合物を調製する。
【化22】
【0066】
例III
例III.1
1-{4-[4-(アミノメチル)-2-フルオロフェニル]ピペラジン-1-イル}エタン-1-オン
【化23】
【0067】
550mg(2.22mmol)の4-(4-アセチルピペラジン-1-イル)-3-フルオロベンゾニトリル(例II.1)、55.0mgのラネーニッケル及びMeOH中7Nのアンモニア15mLの混合物を水素雰囲気(50psi(3.4×105Pa))下50℃で一晩撹拌し、濾過し、真空中で煮詰めて0.51gの生成物を得る。
C13H18FN3O (M=251.3g/モル)
ESI-MS:252 [M+H]+
Rt(HPLC):0.68分(方法A)
【0068】
上記一般手順(例III.1)に従って下記化合物を調製する。
【化24】


【0069】
例IV
例IV.1
4-(4-アセチルピペラジン-1-イル)-2-フルオロベンゾニトリル
【化25】
【0070】
2mLの1,4-ジオキサン中の0.50g(2.50mmol)の4-ブロモ-2-フルオロベンゾニトリル(CAS-No. 105942-08-3)、0.32g(2.50mmol)の1-(ピペラジン-1-イル)エタン-1-オン(CAS No. 13889-98-0)、1.63g(5.00mmol)の炭酸セシウム及び0.05g(0.06mmol)のXPhos Pd G3(CAS-No. 1445085-55-1)の混合物を80℃で一晩撹拌する。それを水で希釈する。残留固体を濾過し、水で洗浄し、空気雰囲気下で乾燥させて0.57gの生成物を得る。
C13H14FN3O (M=247.3g/モル)
ESI-MS:248 [M+H]+
Rt(HPLC):0.79分(方法A)
【0071】
上記一般手順(例IV.1)に従って下記化合物を調製する。
【化26】
【0072】
例V
例V.1
4-{6-メチル-7-オキソ-2,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-2-イル}ベンゾニトリル
【化27】
【0073】
222mg(1.81mmol)の4-フルオロベンゾニトリル(CAS No. 1194-02-1)と1.6mLのDMSOで希釈した320mg(1.81mmol)の6-メチル-2,6-ジアザスピロ[3.4]オクタン-7-オン塩酸塩(CAS No.2097951-61-4)とを790mg(5.62mmol)のK2CO3で処理して120℃で3時間及びRTで一晩撹拌する。反応混合物を冷却し、水で希釈する。沈殿物を濾過し、水で洗浄し、真空中50℃で乾燥させて340mgの生成物を得る。
C14H15N3O (M=241.3g/モル)
ESI-MS:242 [M+H]+
Rt(HPLC):0.79分(方法B)
【0074】
上記一般手順(例V.1)に従って下記化合物を調製する。
【化28】





【0075】
【表11】

【0076】
例VI
例VI.1
4-{2,7-ジアザスピロ[3.5]ノナン-2-イル}ベンゾニトリル;トリフルオロ酢酸
【化29】
【0077】
255mg(0.78mmol)の2-(4-シアノフェニル)-2,7-ジアザスピロ[3.5]ノナン-7-カルボン酸tert-ブチル(例V.2)を5mLのDCMで希釈して300μL(3.89mmol)のTFAを加える。反応混合物をRTで2時間撹拌し、減圧下で濃縮して0.26gの生成物を得る。
C14H17N3 *C2HF3O2 (M=341.3g/モル)
ESI-MS:228 [M+H]+
Rt(HPLC):0.69分(方法B)
【0078】
上記一般手順(例VI.1)に従って下記化合物を調製する。
【化30】

【0079】
例VII
例VII.1
4-{2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル}ベンゾニトリル
【化31】
【0080】
8mLのACN中の0.90g(3.01mmol)の6-(4-シアノフェニル)-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-カルボン酸tert-ブチル(例V.3)の溶液を1.14g(6.01mmol)のp-トルエンスルホン酸一水和物で処理し、RTで24時間撹拌する。反応混合物をDCMで希釈し、NaHCO3飽和溶液で抽出する。混ぜ合わせ有機層をMgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮して0.6gの生成物を得る。
C12H13N3 (M=199.3g/モル)
ESI-MS:200 [M+H]+
Rt(HPLC):0.62分(方法B)
【0081】
上記一般手順(例VII.1)に従って下記化合物を調製する。
【化32】

【0082】
例VIII
N-[(4-ブロモフェニル)メチル]-6-{[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}ピリダジン-3-アミン
【化33】
【0083】
10mLのDMF中1000mg(2.62mmol)の3-ヨード-6-{[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}ピリダジン(例I.2)、586mg(3.15mmol)の4-ブロモベンジルアミン、50mg(0.26mmol)のヨウ化銅、88mg(0.52mmol)の2-(2-メチル-1-オキソプロピル)シクロヘキサノン及び2.56g(7.87mmol)の炭酸セシウムを60℃で一晩撹拌する。HPLCで反応混合物を精製して850mgの生成物を得る。
C18H14BrF3N4O (M=439.2g/モル)
ESI-MS:439/441 [M+H]+
Rt(HPLC):1.08分(方法A)
【0084】
例IX
例IX.1
5-(4-アセチルピペラジン-1-イル)ピリジン-2-カルボニトリル
【化34】
【0085】
3mLのDMSO中の250mg(2.05mmol)の5-フルオロピリジン-2-カルボニトリル(CAS No. 327056-62-2)、310mg(2.46mmol)の1-アセチルピペラジン(CAS No. 13889-98-0)及び700μL(4.10mmol)のDIPEAの混合物を80℃で45分間撹拌し、半濃NaCl/溶液でクエンチする。水相をEtOAcで抽出する。混ぜ合わせた有機相をPTKにより乾燥させ、真空中で濃縮して0.57gの生成物を得る。
C12H14N4O (M=230.3g/モル)
ESI-MS:231 [M+H]+
Rt(HPLC):0.67分(方法A)
【0086】
上記一般手順(例IX.1)に従って下記化合物を調製する。
【化35】
【0087】
例X
例X.1
4-(4-アセチル-3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)ベンゾニトリル
【化36】
【0088】
800mg(1.21mmol)の4-(3,3-ジメチルピペラジン-1-イル)ベンゾニトリルトリフルオロ酢酸(例VI.3)を3mLのピリジンに溶かして2.00mL(21.2mmol)の無水酢酸を加える。反応混合物を一晩還流させて減圧下でエバポレートする。残渣をNaHCO3飽和溶液に取って、EtOAcで抽出する。有機層を乾燥させ、真空中で濃縮してカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;グラジエント:DCM/MeOH=98:2→9:1)で精製して生成物を得る。
C15H19N3O (M=257.3g/モル)
ESI-MS:258 [M+H]+
Rt(HPLC):0.85分(方法A)
【0089】
上記一般手順(例X.1)に従って下記化合物を調製する。
【化37】

【0090】
例XI
6-(ジフルオロメチル)-5-フルオロピリジン-3-カルボン酸メチル
【化38】
【0091】
40mLのMeOH中の800mg(3.54mmol)の5-ブロモ-2-(ジフルオロメチル)-3-フルオロピリジン[市販の5-ブロモ-3-フルオロピリジン-2-カルボキシアルデヒド(1当量)、CAS-Nr. 669066-93-7から、DCM中で一晩デオキソフルオル(deoxofluor)(2当量)との反応を経て調製]を154.8mg(0.28mmol)の1,1`-ビス-(ジフェニルホスフィノ)-フェロセン、63.5mg(0.28mmol)の酢酸パラジウム(II)及び1.5mL(10.79mmol)のTEAで処理する。反応混合物を一酸化炭素雰囲気(5バール)下50℃で15時間撹拌する。反応混合物を濾過し、濾液を真空中でエバポレートして生成物を得る。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;グラジエント:Cy/EE=100:0→60:40)で精製して460mgの生成物を得る。
C8H6F3NO2 (M=205.1g/モル)
ESI-MS:206 [M+H]+
Rt(HPLC):0.88分(方法B)
【0092】
例XII
[6-(ジフルオロメチル)-5-フルオロピリジン-3-イル]メタノール
【化39】
【0093】
10mLのTHF中の98mg(4.49mmol)の水素化ホウ素リチウムを窒素雰囲気下で10mLのTHFに溶かした460mg(2.42mmol)の6-(ジフルオロメチル)-5-フルオロピリジン-3-カルボン酸メチル(例XI)で処理する。0.2mLのMeOHを加えて反応混合物を50℃で2時間撹拌する。反応混合物を5mLの1M塩酸で希釈し、ガス発生後にTHFを蒸発させる。残渣を4M NaOHで塩基性にし、この水溶液をDCMで抽出する。有機相を真空中でエバポレートして生成物を得る。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;グラジエント:Cy/EE=80:20→20:80)で精製して290mgの生成物を得る。
C7H6F3NO (M=177.1g/モル)
ESI-MS:178 [M+H]+
Rt(HPLC):0.64分(方法B)
【0094】
例XIII
1-[(3aR,8aS)- デカヒドロピロロ[3,4-d]アゼピン-6-イル]エタン-1-オン塩酸塩
【化40】
【0095】
2.64g(9.3mmol)の(3aR,8aS)-6-アセチル-デカヒドロピロロ[3,4-d]アゼピン-2-カルボン酸tert-ブチル(例X.2)を30mLの1,4-ジオキサンで希釈し、1,4-ジオキサン中4Mの塩化水素9.3mL(37.4mmol)を加えて反応混合物をRTで4時間撹拌する。反応混合物に1,4-ジオキサン中4Mの塩化水素1当量を加えてそれをRTで一晩撹拌する。混合物を真空中でエバポレートし、残渣をジエチルエーテルで処理し、沈殿物を濾過する。フィルターケークをMeOHで希釈し、エバポレートして生成物を得る。
C10H18N2O*HCl (M=182.3g/モル)
ESI-MS:183 [M+H]+
Rt(HPLC):0.50分(方法A)
【0096】
例XIV
N-(4-((3aR,3bS,6aR,6bS)-オクタヒドロシクロブタ[1,2-c:3,4-c']ジピロール-2(1H)-イル)ベンジル)-6-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)ピリダジン-3-アミン
【化41】
【0097】
59.7mg(0.27mmol)の(3aR,3bR,6aS,6bS) -デカヒドロシクロブタ[1,2-c:3,4-c']ジピロール、120.0mg(0.27mmol)のN-[(4-ブロモフェニル)メチル]-6-{[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}ピリダジン-3-アミン(例VIII)、3.07mg(0.01mmol)の酢酸パラジウム(II)、6.5mg(0.01mmol)のX-phos及び89.0mg(0.27mmol)の炭酸セシウムを2.00mLのトルエン及び0.50mLのtert-ブタノールにアルゴン雰囲気下で溶かす。溶液を数回脱気する。反応溶液を80℃で一晩撹拌する。反応混合物を水で希釈し、EEで抽出する。有機層をMgSO4で乾燥させ、木炭を通して濾過し、エバポレートする。残渣をHPLCで精製して15mgの生成物を得る。
C28H31F3N6O2 (M=496.5g/モル)
ESI-MS:497 [M+H]+
Rt(HPLC):0.98分(方法A)
【0098】
最終化合物の調製
例1.1
1-(6-(4-(((6-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)ピリダジン-3-イル)アミノ)メチル)フェニル)-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)エタン-1-オン
【化42】
【0099】
2mLのジメチルアセトアミド中の163mg(0.43mmol)の3-ヨード-6-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)ピリダジン(例I.2)及び150mg(0.43mmol)の1-(6-(4-(アミノメチル)フェニル)-2,6-ジアザスピロ[3.3]ヘプタン-2-イル)エタン-1-オン(例III.6)の溶液に418mg(1.28mmol)の炭酸セシウム、8.1mg(0.04mmol)のヨウ化銅(I)及び14.4mg(0.09mmol)の2-(2-メチル-1-オキソプロピル)シクロヘキサノンを加えて混合物を50℃で一晩撹拌する。混合物をアセトニトリルで希釈し、濾過し、濾液をHPLCで精製して43mgの所望生成物を得る。
C25H25F3N6O2 (M=498.5g/モル)
ESI-MS:499 [M+H]+
Rt(HPLC):0.93分(方法A)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (d, J=1.52 Hz, 1H), 8.13 (dd, J=1.39, 8.11 Hz, 1H), 7.92 (d, J=8.11 Hz, 1H), 7.16 (d, J=8.49 Hz, 2H), 6.89-7.03 (m, 2H), 6.84 (t, J=5.64 Hz, 1H), 6.40 (d, J=8.49 Hz, 2H), 5.48 (s, 2H), 4.33 (d, J=5.58 Hz, 2H), 4.27 (s, 2H), 3.99 (s, 2H), 3.89 (s, 4H), 1.74 (s, 3H)
【0100】
上記一般手順(例1.1)に従って下記化合物を調製する。
【化43】

【0101】
【表12】

【0102】
【表13】

【0103】
例2.1
N-メチル-N-[1-(4-{[(6-{[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}ピリダジン-3-イル)アミノ]メチル}フェニル)ピペリジン-4-イル]アセトアミド
【化44】
【0104】
2mLのDMSO中50.0mg(0.13mmol)の3-ヨード-6-{[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}-ピリダジン(例I.2)、45.20mg(0.14mmol)の1-{4-[4-(1-アミノシクロプロピル)フェニル]-ピペラジン-1-イル}エタン-1-オン(例III.7)、6.2mg(32.8μmol)のヨウ化銅、13.2mg(0.07mmol)の[(2,6-ジフルオロフェニル)カルバモイル]ギ酸(CAS No. 1018295-42-5)及び85.5mg(0.39mmol)のリン酸カリウムの混合物を80℃で1.5時間撹拌してから100℃で1時間撹拌する。反応混合物をそのままHPLCで精製して54mgの生成物を得る。
C26H29F3N6O2 (M=514.5g/モル)
ESI-MS:515 [M+H]+
Rt(HPLC):0.60分(方法C)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (d, J=1.14 Hz, 1H), 8.14 (dd, J=1.39, 8.11 Hz, 1H), 7.92 (d, J=8.11 Hz, 1H), 7.19 (d, J=8.24 Hz, 2H), 6.84-7.05 (m, 5H), 5.49 (s, 2H), 4.29-4.46 (m, 3H), 3.64-3.82 (m, 3H), 2.59-2.87 (m, 5H), 1.94-2.11 (m, 3H), 1.45-1.92 (m, 4H)
【0105】
上記一般手順(例2.1)に従って下記化合物を調製する。
【化45】


【0106】
【表14】

【0107】
【表15】





【0108】
例3
1-[4-(4-{[(6-{[6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}ピリダジン-3-イル)アミノ]メチル}-フェニル)ピペラジン-1-イル]エタン-1-オン
【化46】
【0109】
0.4mLのtert-アミルアルコール中80.0mg(0.22mmol)の3-{[6-(ジフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}-6-ヨード-ピリダジン(例I.1)、61.7mg(0.26mmol)の1-{4-[4-(アミノメチル)フェニル]ピペラジン-1-イル}エタン-1-オン(例III.5)、260μL(0.66mmol)のナトリウムtert-ペントキシド(メチル-THF中2.5mol/L)及び2.0mg(2.20μmol)のJOSIPHOS SL-J009-1 Pd G3(MDL No. MFCD27978424)の混合物を35℃で一晩撹拌する。反応混合物をACN及びDMFで希釈し、濾過し、分取HPLCで精製して12mgの生成物を得る。
C24H26F2N6O2 (M=468.5g/モル)
ESI-MS:469 [M+H]+
Rt(HPLC):0.88分(方法A)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.76 (d, J=1.39 Hz, 1H), 8.05 (dd, J=1.90, 7.98 Hz, 1H), 7.71 (d, J=7.98 Hz, 1H), 7.22 (d, J=8.62 Hz, 2H), 6.97-7.12 (m, 1H), 6.83-6.97 (m, 5H), 5.44 (s, 2H), 4.37 (d, J=5.58 Hz, 2H), 3.50-3.60 (m, 4H), 3.00-3.20 (m, 4H), 2.03 (s, 3H)
【0110】
例4
1-[(3aR,8aS)-2-(4-{[(6-{[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}ピリダジン-3-イル)アミノ]メチル}フェニル)-デカヒドロピロロ[3,4-d]アゼピン-6-イル]エタン-1-オン
【化47】
【0111】
59.7mg(0.27mmol)の1-[(3aR,8aS)-デカヒドロピロロ[3,4-d]アゼピン-6-イル]エタン-1-オン塩酸塩(例XIII)、100.0mg(0.23mmol)のN-[(4-ブロモフェニル)メチル]-6-{[6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル]メトキシ}ピリダジン-3-アミン(例VIII)、17.7mg(0,02mmol)の第2世代RuPhosプレ触媒(2nd generation Ruphos precatalyst)及び48.1mg(0.50mmol)のナトリウムtert-ブトキシドを1.00mLのメチル-THFにアルゴン雰囲気下で溶かす。この溶液を数回脱気する。反応溶液を80℃で2時間撹拌する。次に別の481mg(0.50mmol)のナトリウムtert-ブトキシドを加えて反応溶液を100℃で一晩撹拌する。反応溶液を濾過し、HPLCで精製して14mgの生成物を得る。
C28H31F3N6O2 (M=540.6 g/モル)
ESI-MS:541 [M+H]+
Rt(HPLC):0.81分(方法F)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.84 (d, J=1.27 Hz, 1H), 8.13 (dd, J=1.46, 8.05 Hz, 1H), 7.92 (d, J=7.98 Hz, 1H), 7.14 (d, J=8.49 Hz, 2H), 6.90-7.05 (m, 2H), 6.79 (t, J=5.64 Hz, 1H), 6.47 (d, J=8.62 Hz, 2H), 5.49 (s, 2H), 4.31 (d, J=5.58 Hz, 2H), 3.57-3.80 (m, 2H), 3.33-3.46 (m, 4H), 3.20-3.30 (m, 2H), 2.93 (td, J=6.23, 9.35 Hz, 2H), 2.00 (s, 3H), 1.53-1.89 (m, 4H)
【0112】
例5
1-((3aR,3bS,6aR,6bS)-5-(4-(((6-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)ピリダジン-3-イル)アミノ)メチル)フェニル)オクタヒドロシクロブタ[1,2-c:3,4-c']ジピロール-2(1H)-イル)エタン-1-オン
【化48】
【0113】
15mg(0.03mmol)のN-(4-((3aR,3bS,6aR,6bS)-オクタヒドロシクロブタ[1,2-c:3,4-c']ジピロール-2(1H)-イル)ベンジル)-6-((6-(トリフルオロメチル)ピリジン-3-イル)メトキシ)ピリダジン-3-アミン(例XIV)を0.5mLのDCMに溶かして2.86μL mL(0.03mmol)の無水酢酸を加える。反応混合物を1時間RTで撹拌する。この反応溶液を0.5mLのMeOHで希釈し、HPLCで精製して7mgの生成物を得る。
C28H29F3N6O2 (M=538.564g/モル)
ESI-MS:539 [M+H]+
Rt(HPLC):0.99分(方法A)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 9.12 (s, 1H), 8.89 (d, J=1.14 Hz, 1H), 8.19 (dd, J=1.52, 8.11 Hz, 1H), 7.94 (d, J=8.24 Hz, 1H), 7.85 (d, J=9.50 Hz, 1H), 7.41 (d, J=9.38 Hz, 1H), 7.08 (d, J=8.49 Hz, 2H), 6.65 (d, J=8.62 Hz, 2H), 5.63 (s, 2H), 5.06 (s, 2H), 3.79 (d, J=12.17 Hz, 1H), 3.66 (d, J=11.15 Hz, 1H), 3.54 (dd, J=1.90, 9.89 Hz, 2H), 3.35 (br dd, J=6.78, 11.22 Hz, 2H), 3.06 (dd, J=6.84, 12.29 Hz, 1H), 2.82 (br dd, J=6.97, 9.51 Hz, 2H), 2.55-2.64 (m, 1H), 2.44-2.49 (m, 2H), 2.02-2.06 (m, 3H)
【0114】
分析HPLC法
方法A

分析カラム:XBridge C18 (Waters) 2.5μm;3.0×30mm;カラム温度:60℃
方法B

分析カラム:Stable Bond (Agilent) 1.8μm;3.0×30mm;カラム温度:60℃
方法C

分析カラム:XBridge (Waters) C18_3.0×30mm_2.5μm;カラム温度:60℃
方法D

分析カラム:XBridge C18_3.0×30mm_2.5μm (Waters);カラム温度:60℃
方法E

分析カラム:Sunfire (Waters) 2.5μm;3.0×30mm;カラム温度:60℃
方法F

分析カラム:XBridge C18 (Waters) 2.5μm;3.0×30mm;カラム温度:60℃