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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240924BHJP
   H02M 7/493 20070101ALI20240924BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H02M7/493
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023209193
(22)【出願日】2023-12-12
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】葛巻 淳彦
(72)【発明者】
【氏名】村上 満洋
(72)【発明者】
【氏名】向 雲
(72)【発明者】
【氏名】野島 秀一
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特許第4209421(JP,B2)
【文献】特開2007-116840(JP,A)
【文献】国際公開第2018/207406(WO,A1)
【文献】特開2002-51572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/493
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された2個のスイッチング素子をそれぞれが有し、第1方向に並んで配置され、並列接続された複数の半導体モジュールと、
前記第1方向に延在し、前記複数の半導体モジュールの交流端子を共通接続する交流配線と、
前記第1方向に延在し、前記交流配線を出力端子まで引き出すように構成された交流引き出し配線と、
を具備し、
前記交流引き出し配線は、前記交流配線に接続される接続部分と、前記交流配線と並んで配置された延在部分とを有し、
前記交流引き出し配線の前記接続部分の前記第1方向における中心は、前記複数の半導体モジュール全体の前記第1方向における中心よりも前記出力端子から遠い側に設定される
電力変換装置。
【請求項2】
前記交流配線は、前記出力端子に最も近い半導体モジュールから前記交流引き出し配線までの配線経路内に、上側に突出した突出部分を含む
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記交流引き出し配線の前記接続部分は、前記出力端子から遠い側の2個の半導体モジュールの境界にかかるように配置される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記交流引き出し配線の前記接続部分の前記第1方向における長さは、前記交流配線の前記第1方向における長さの半分よりも短く設定される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記交流配線と前記交流引き出し配線の前記延在部分との距離は、前記交流配線の厚みより大きく設定される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記交流配線と前記交流引き出し配線の前記延在部分とは、直角になるように構成される
請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ巻上機を駆動するコンバータ及びインバータに電力変換装置が使用されている。電力変換装置は、3相交流電力の相ごとに、直列接続された2個のスイッチング素子(例えばIGBT)を備えた半導体モジュールを備えている。高速大容量向けの電力変換装置では、半導体モジュールを複数個並列に接続して使用している。
【0003】
従来では、並列接続された複数の半導体モジュールの交流端子を等長配線で接続して1つにし、電力変換装置から出力端子を引き出している。この場合、複数の半導体モジュールに接続される複数の配線にインダクタンス差が生じるため、出力端子に近い側の半導体モジュールに電流が偏る傾向がある。つまり、出力端子に最も近い半導体モジュールのインダクタンスが小さいため、電流が大きくなり、出力端子から最も遠い半導体モジュールのインダクタンスが大きいため、電流は小さくなる。
【0004】
並列接続された複数の半導体モジュールの特性が均一であったとしても、配線構造の要因で複数の半導体モジュールにインダクタンス差が生じ、電流アンバランスが発生する。電流アンバランスにより、特定の半導体モジュールの発熱が増加して電力変換装置の効率低下を招く。また、特定の半導体モジュールが熱疲労寿命により故障となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4209421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、並列接続された複数の半導体モジュールの電流アンバランスを抑制することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る電力変換装置は、直列接続された2個のスイッチング素子をそれぞれが有し、第1方向に並んで配置され、並列接続された複数の半導体モジュールと、前記第1方向に延在し、前記複数の半導体モジュールの交流端子を共通接続する交流配線と、前記第1方向に延在し、前記交流配線を出力端子まで引き出すように構成された交流引き出し配線とを具備し、前記交流引き出し配線は、前記交流配線に接続される接続部分と、前記交流配線と並んで配置された延在部分とを有し、前記交流引き出し配線の前記接続部分の前記第1方向における中心は、前記複数の半導体モジュール全体の前記第1方向における中心よりも前記出力端子から遠い側に設定される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る電力変換装置の回路図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電力変換装置の配線構造を示す斜視図である。
図3図3は、比較例に係る電力変換装置の配線構造を示す斜視図である。
図4図4は、第2実施形態に係る電力変換装置の配線構造を示す斜視図である。
図5図5は、第3実施形態に係る電力変換装置の配線構造を示す斜視図である。
図6図6は、第4実施形態に係る電力変換装置の配線構造を示す斜視図である。
図7図7は、第5実施形態に係る電力変換装置の配線構造を示す斜視図である。
図8図8は、第6実施形態に係る電力変換装置の配線構造を示す正面図である。
図9図9は、第7実施形態に係る電力変換装置の配線構造を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について図面を参照して説明する。以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0010】
[1] 第1実施形態
[1-1] 電力変換装置1の構成
図1は、第1実施形態に係る電力変換装置1の回路図である。図1の電力変換装置1は、コンバータ又はインバータの1相分の装置である。例えばインバータを構成する場合、図1の装置が3相分並列接続されて使用される。
【0011】
電力変換装置1は、複数の半導体モジュール10、接続配線20、21、交流配線22、交流引き出し配線23、出力端子13、正極端子14、負極端子15、及びコンデンサ16を備える。
【0012】
図1には、4個の半導体モジュール10-1~10-4を一例として示している。半導体モジュール10-1~10-4は、正極端子14と負極端子15との間に並列接続される。半導体モジュール10-1~10-4は、同じ構成を有する。半導体モジュール10の数は、4個に限定されず、2個以上の任意の数に設定可能である。以下の説明において、半導体モジュール10-1~10-4を区別する必要がない場合は、添え字を省略して半導体モジュール10と表記し、半導体モジュール10の説明は、4個の半導体モジュール10-1~10-4に共通する。他の添え字付きの参照符号についても同様である。
【0013】
半導体モジュール10は、2個のスイッチング素子11-1、11-2、正側電源端子T1、負側電源端子T2、及び交流端子T3を備える。
【0014】
正側電源端子T1は、正極端子14に接続される。負側電源端子T2は、負極端子15に接続される。交流端子T3は、接続配線20、21に接続される。交流端子T3は、交流電力を出力する端子である。
【0015】
スイッチング素子11は、例えばSiCパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成され、NチャネルMOSFETで構成される。SiCパワーMOSFETは、化合物半導体であり、SiCを基板に用いたMOSFETである。スイッチング素子は、SiC以外のMOSFET、バイポーラトランジスタ、又はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であってもよい。
【0016】
スイッチング素子11-1、11-2は、正側電源端子T1と負側電源端子T2との間に直列接続される。具体的には、スイッチング素子11-1のドレインは、正側電源端子T1に接続される。スイッチング素子11-1のソースは、交流端子T3に接続される。スイッチング素子11-2のドレインは、交流端子T3に接続される。スイッチング素子11-2のソースは、負側電源端子T2に接続される。
【0017】
スイッチング素子11-1、11-2にはそれぞれ、ダイオード12-1、12-2が逆並列接続される。ダイオード12は、還流ダイオードであり、スイッチング素子11に逆流電流が供給された場合に、スイッチング素子11を保護する機能を有する。ダイオード12は、トランジスタの寄生ダイオードで構成される。ダイオード12を別途設けて、スイッチング素子11に逆並列接続してもよい。
【0018】
図1には、MOSFETのゲート端子、ソース端子、及びドレイン端子を符号なしの白丸で示している。MOSFETのゲート端子、ソース端子、及びドレイン端子は、図示せぬ制御回路に接続され、それらの電位が制御される。
【0019】
接続配線20は、半導体モジュール10-1の交流端子T3と、半導体モジュール10-2の交流端子T3とを接続する。接続配線21は、半導体モジュール10-3の交流端子T3と、半導体モジュール10-4の交流端子T3とを接続する。交流配線22は、接続配線20と接続配線21とを接続する。交流配線22は、交流引き出し配線23に接続される。
【0020】
交流引き出し配線23は、出力端子13に接続される。出力端子13は、外部の交流電源線又は交流負荷に接続される端子である。電力変換装置1がインバータに使用される場合、出力端子13は、交流電力を出力する。
【0021】
正極端子14は、外部の正側電源線に接続される端子である。正極端子14には、正側電源が供給される。負極端子15は、外部の負側電源線に接続される端子である。負極端子15には、負側電源が供給される。
【0022】
コンデンサ16は、正極端子14と負極端子15との間に接続される。コンデンサ16は、電圧を平滑する機能を有する。
【0023】
[1-2] 電力変換装置1の配線構造について
次に、電力変換装置1の配線構造について説明する。
【0024】
図2は、電力変換装置1の配線構造を示す斜視図である。図2において、X方向は、複数の半導体モジュール10が並ぶ方向であり、Y方向は、平面内においてX方向に直交する方向であり、Z方向は、XY面に直交する方向である。半導体モジュール10-1~10-4は、X方向に並んで配置される。
【0025】
半導体モジュール10-1の交流端子T3と、半導体モジュール10-2の交流端子T3とは、接続配線20によって接続される。具体的には、接続配線20は、X方向に延びる延在部分20Aと、Z方向に突出する突出部分20Bと、X方向に延びる延在部分20Cとがこの順に接続されて構成される。突出部分20Bは、逆U字形状を有する。接続配線20の延在部分20Aは、半導体モジュール10-1の交流端子T3に接続されるとともに、交流端子T3にネジ(図示せず)によって固定される。接続配線20の延在部分20Cは、半導体モジュール10-2の交流端子T3に接続されるとともに、交流端子T3にネジ(図示せず)によって固定される。
【0026】
半導体モジュール10-3の交流端子T3と、半導体モジュール10-4の交流端子T3とは、接続配線21によって接続される。具体的には、接続配線21は、X方向に延びる延在部分21Aと、Z方向に突出する突出部分21Bと、X方向に延びる延在部分21Cとがこの順に接続されて構成される。突出部分21Bは、逆U字形状を有する。接続配線21の延在部分21Aは、半導体モジュール10-3の交流端子T3に接続されるとともに、交流端子T3にネジ(図示せず)によって固定される。接続配線21の延在部分21Cは、半導体モジュール10-4の交流端子T3に接続されるとともに、交流端子T3にネジ(図示せず)によって固定される。
【0027】
交流配線22は、X方向に延びる配線である。交流配線22は、接続配線20と接続配線21とを接続する。具体的には、交流配線22の一端は、接続配線20の突出部分20Bに接続されるとともに、突出部分20Bにネジ(図示せず)によって固定される。交流配線22の他端は、接続配線21の突出部分21Bに接続されるとともに、突出部分21Bにネジ(図示せず)によって固定される。
【0028】
交流引き出し配線23は、X方向に延びる配線である。交流引き出し配線23は、交流配線22と出力端子13とを接続する。交流引き出し配線23は、交流配線22からZ方向に引き出されかつX方向に延びるように構成される。交流引き出し配線23は、交流配線22に接続される接続部分23Aと、接続部分23AからX方向に延びる延在部分23Bとを含む。接続部分23Aは、Z方向に引き出された曲線部分を含むように構成される。延在部分23Bは、交流配線22に並んで配置される。
【0029】
ここで、交流配線22のX方向における中心を通る線を中心線C1と称する。交流引き出し配線23の接続部分23AのX方向における中心を通る線を中心線C2と称する。中心線C1は、半導体モジュール10-1~10-4全体のX方向における中心を通る線と同じ意味である。
【0030】
本実施形態では、交流引き出し配線23の接続部分23Aの中心線C2は、交流配線22の中心線C1から出力端子13から遠い側にずれるように設定される。換言すると、交流引き出し配線23は、交流配線22のX方向における中心から出力端子13から遠い側にずらして交流配線22に接続される。
【0031】
交流配線22と交流引き出し配線23とは、個別部材を電気的に接続して構成してもよいし、一体成型で構成してもよい。
【0032】
[1-3] 作用
上記のように構成された電力変換装置1の作用について説明する。
【0033】
正極端子14及び負極端子15には、外部から直流電力が供給される。正極端子14には、正側電源が供給され、負極端子15には、負側電源が供給される。
【0034】
半導体モジュール10-1に含まれるスイッチング素子11-1、11-2のゲートには、図示せぬ制御回路からゲート電圧が印加される。スイッチング素子11-1、11-2は、スイッチング動作を行う。半導体モジュール10-1と並列接続された半導体モジュール10-2~10-4も、半導体モジュール10-1と同じ動作を実行する。これにより、電力変換装置1は、1相分の交流電力を出力端子13から出力することができる。
【0035】
図2に示すように、出力端子13に最も近い半導体モジュール10-1の交流電流は、交流配線22から交流引き出し配線23を通流する。半導体モジュール10-1から交流配線22へ流れる交流電流と、交流引き出し配線23を流れる交流電流とは、互いの方向が逆向きかつ対向している。よって、相互誘導によりインダクタンスが小さくなる方向に働くため、半導体モジュール10-1の電流が大きくなる。
【0036】
一方、出力端子13から最も遠い半導体モジュール10-4の交流電流も同様に、交流配線22から交流引き出し配線23を通流する。半導体モジュール10-4から交流配線22へ流れる交流電流と、交流引き出し配線23を流れる交流電流とは、対向していない。よって、相互誘導はほぼ無く、インダクタンスの増減に寄与しないため、半導体モジュール10-1に対し半導体モジュール10-4の方がインダクタンスは大きい。
【0037】
半導体モジュール10-2、10-3のインダクタンスは、半導体モジュール10-1と半導体モジュール10-4との中間になる。
【0038】
ここで、図2のように配線構造を構成することで、半導体モジュール10-4の配線経路を短縮することができ、これにより半導体モジュール10-4から出力端子13までのインダクタンスを小さくすることができる。一方、半導体モジュール10-1の配線経路は長くなるが、相互誘導により、インダクタンスの増減はほぼ無い。つまり、4並列の半導体モジュールのインダクタンス差を抑制する作用から、電流アンバランスを低減することができる。
【0039】
[1-4] 比較例
次に、比較例の構成について説明する。図3は、比較例に係る電力変換装置の配線構造を示す斜視図である。
【0040】
電力変換装置は、並列接続された半導体モジュール10-1~10-4を備える。交流配線22は、接続配線20と接続配線21とを接続する。交流引き出し配線23は、交流配線22と出力端子13とを接続する。
【0041】
比較例では、交流引き出し配線23は、交流配線22の中央において、この交流配線22に接続される。すなわち、交流配線22の中心線C1は、交流引き出し配線23の接続部分の中心線C2と同じ位置に設定される。
【0042】
出力端子13に最も近い半導体モジュール10-1では、相互誘導によりインダクタンスが小さくなる方向に働くため、半導体モジュール10-1の通流電流が大きくなる。一方、出力端子13から最も遠い半導体モジュール10-4では、相互誘導はほぼ無く、配線経路が長いため、インダクタンスが大きくなる。また、出力端子13からの距離に応じて半導体モジュール10-1~10-4に電流が偏る傾向がある。結果として、比較例では、半導体モジュール10-1~10-4の出力電流のアンバランスが大きくなる。
【0043】
一方、本実施形態では、比較例に比べて、並列接続された半導体モジュール10-1~10-4間のインダクタンス差を小さくできるため、半導体モジュール10-1~10-4の出力電流のアンバランスを低減することができる。
【0044】
[1-5] 第1実施形態の効果
第1実施形態によれば、並列接続された半導体モジュール10-1~10-4間のインダクタンス差を小さくできるため、半導体モジュール10-1~10-4の出力電流のアンバランスを低減することができる。また、特定の半導体モジュールの発熱損失の増大を抑制できる。また、電力変換装置1の電力変換効率を向上させることができる。
【0045】
また、特定の半導体モジュールの熱疲労寿命の低下を抑制できる。これにより、電力変換装置1が故障するのを抑制できる。
【0046】
[2] 第2実施形態
第2実施形態は、交流配線22と交流引き出し配線23との接続位置を出力端子13からさらに遠くに設定するようにしている。
【0047】
[2-1] 電力変換装置1の配線構造について
図4は、第2実施形態に係る電力変換装置1の配線構造を示す斜視図である。図4において、半導体モジュール10-1~10-4の図示を省略しているが、これらの配置は、図2と同じである。
【0048】
交流引き出し配線23の接続部分23Aの中心線C2は、交流配線22の中心線C1からより遠くに設定される。換言すると、交流引き出し配線23は、交流配線22のX方向における中心から出力端子13からより遠くにずらして交流配線22に接続される。
【0049】
交流配線22のうち出力端子13から遠い側の端部を端部領域ARと称する。本実施形態では、交流配線22の端部領域ARのX方向における長さを短くしている。交流配線22の端部領域ARは、交流配線22と、接続配線21の突出部分21Bとをネジで固定するための必要最低限度の長さに設定される。交流配線22の幅(Y方向における長さ)は、第1実施形態と同じに構成できる。
【0050】
第2実施形態の作用は、第1実施形態と同じである。
【0051】
[2-2] 第2実施形態の効果
第2実施形態によれば、奥行き方向の寸法を第1実施形態と同じにしたまま、第1実施形態よりもさらにインダクタンス差を小さくできる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0052】
[3] 第3実施形態
第3実施形態は、交流配線22の経路を長くすることで、半導体モジュール10-1~10-4間のインダクタンス差を小さくするようにしている。
【0053】
[3-1] 電力変換装置1の配線構造について
図5は、第3実施形態に係る電力変換装置1の配線構造を示す斜視図である。図5において、半導体モジュール10-1~10-4の図示を省略しているが、これらの配置は、図2と同じである。
【0054】
交流配線22は、X方向に延びる延在部分22Aと、Z方向に突出する突出部分22Bと、X方向に延びる延在部分22Cとがこの順に接続されて構成される。突出部分22Bは、逆U字形状を有する。交流配線22の延在部分22Aは、接続配線20の突出部分20Bに接続されるとともに、突出部分20Bにネジ(図示せず)によって固定される。交流配線22の突出部分22Bは、交流引き出し配線23の接続部分23Aよりも出力端子13側に配置される。
【0055】
交流配線22の延在部分22Cは、接続配線21の突出部分21Bに接続されるとともに、突出部分21Bにネジ(図示せず)によって固定される。また、交流配線22の延在部分22Cは、交流引き出し配線23の接続部分23Aに接続される。
【0056】
交流引き出し配線23の接続部分23Aの中心線C2は、交流配線22の中心線C1から出力端子13から遠い側にずれるように設定される。
【0057】
交流配線22が突出部分22Bを有することで、出力端子13に近い半導体モジュール10-1、10-2における交流引き出し配線23までの配線経路を長くすることができる。
【0058】
[3-2] 作用
上記のように構成された電力変換装置1の作用について説明する。
【0059】
交流配線22が突出部分22Bを有することで、半導体モジュール10-1、10-2の配線経路が長くなることから、インダクタンスが増加する。これにより、半導体モジュール10-1、10-2と半導体モジュール10-4とのインダクタンス差が小さくなる。よって、半導体モジュール10-1~10-4間のインダクタンス差を小さくできるため、出力電流のアンバランスを低減することができる。
【0060】
[3-3] 第3実施形態の効果
第3実施形態によれば、奥行き方向の寸法を第1実施形態と同じにしたまま、第1実施形態よりもさらにインダクタンス差を小さくできる。その他の効果は、第1実施形態と同じである。
【0061】
[4] 第4実施形態
第4実施形態は、出力端子13から最も遠い半導体モジュール10-4の配線経路を短くすることで、半導体モジュール10-1~10-4間のインダクタンス差を小さくするようにしている。
【0062】
[4-1] 電力変換装置1の配線構造について
図6は、第4実施形態に係る電力変換装置1の配線構造を示す斜視図である。
【0063】
交流引き出し配線23は、出力端子13から最も遠い半導体モジュール10-4にかかるようにして、交流配線22に接続される。また、交流引き出し配線23は、出力端子13から遠い半導体モジュール10-3、10-4の境界にかかるようにして、交流配線22に接続される。換言すると、交流引き出し配線23の接続部分23Aは、出力端子13から最も遠い半導体モジュール10-4にかかるように配置される。また、交流引き出し配線23の接続部分23Aは、出力端子13から遠い半導体モジュール10-3、10-4の境界にかかるように配置される。
【0064】
図6の構成例では、交流引き出し配線23は、交流配線22の端で交流配線22に接続されるように構成される。すなわち、交流引き出し配線23の接続部分23Aは、交流配線22の端に配置される。
【0065】
交流配線22を接続するネジ頭の面積を確保する必要から、交流引き出し配線23の接続部分23Aは、第1実施形態に比べて、Y方向に引き出されるように構成される。Y方向における交流配線22の端から交流引き出し配線23の端までの長さをL1と称する。第4実施形態では、第1実施形態に比べて、長さL1が長くなる。
【0066】
[4-2] 作用
上記のように構成された電力変換装置1の作用について説明する。
【0067】
図6のように構成することで、半導体モジュール10-4の配線経路を第1実施形態よりも短くすることができる。これにより、半導体モジュール10-4から出力端子13までのインダクタンスを小さくすることができる。
【0068】
一方、半導体モジュール10-1の配線経路は第1実施形態よりも長くなるが、相互誘導により、インダクタンスの増減はほぼ無い。つまり、4並列の半導体モジュールのインダクタンス差を抑制する作用から、電流アンバランスを低減することができる。
【0069】
第4実施形態は、第1実施形態に比べてインダクタンス差が小さく、電流アンバランスを抑制できるが、交流配線22を接続するネジ頭の面積を確保する必要から、長さL1が第1実施形態よりも長くなる。長さL1が長くなることで、交流配線22と交流引き出し配線23との距離が第1実施形態よりも長くなるため、相互誘導によりインダクタンスが小さくなる作用が弱くなる。これにより、半導体モジュール10-1のインダクタンスを大きくでき、4並列の半導体モジュールのインダクタンス差を抑制できる。よって、電流アンバランスを低減することができる。
【0070】
第4実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0071】
[5] 第5実施形態
第5実施形態は、3並列の半導体モジュールの構成例である。
【0072】
[5-1] 電力変換装置1の配線構造について
図7は、第5実施形態に係る電力変換装置1の配線構造を示す斜視図である。電力変換装置1は、3個の半導体モジュール10-1~10-3を備える。半導体モジュール10-1~10-3は、正極端子14と負極端子15との間に並列接続される。半導体モジュール10-1~10-3は、X方向に並んで配置される。
【0073】
接続配線20は、X方向に延びる延在部分20Aと、Z方向に突出する突出部分20Bとが接続されて構成される。突出部分20Bは、逆L字形状を有する。接続配線20の延在部分20Aは、半導体モジュール10-1の交流端子T3に接続されるとともに、交流端子T3にネジ(図示せず)によって固定される。
【0074】
半導体モジュール10-2の交流端子T3と、半導体モジュール10-3の交流端子T3とは、接続配線21によって接続される。具体的には、接続配線21は、X方向に延びる延在部分21Aと、Z方向に突出する突出部分21Bと、X方向に延びる延在部分21Cとがこの順に接続されて構成される。接続配線21の延在部分21Aは、半導体モジュール10-2の交流端子T3に接続されるとともに、交流端子T3にネジ(図示せず)によって固定される。接続配線21の延在部分21Cは、半導体モジュール10-3の交流端子T3に接続されるとともに、交流端子T3にネジ(図示せず)によって固定される。
【0075】
交流配線22は、接続配線20と接続配線21とを接続する。具体的には、交流配線22の一端は、接続配線20の突出部分20Bに接続されるとともに、突出部分20Bにネジ(図示せず)によって固定され、交流配線22の他端は、接続配線21の突出部分21Bに接続されるとともに、突出部分21Bにネジ(図示せず)によって固定される。
【0076】
交流引き出し配線23は、交流配線22と出力端子13とを接続する。交流引き出し配線23は、交流配線22からZ方向に引き出されかつX方向に延びるように構成される。交流引き出し配線23は、交流配線22に接続される接続部分23Aと、接続部分23AからX方向に延びる延在部分23Bとを含む。接続部分23Aは、Z方向に引き出された曲線部分を含むように構成される。
【0077】
交流引き出し配線23の接続部分23Aの中心線C2は、交流配線22の中心線C1から出力端子13から遠い側にずれるように設定される。換言すると、交流引き出し配線23は、交流配線22のX方向における中心から出力端子13から遠い側にずらして交流配線22に接続される。
【0078】
交流配線22の長手方向長さ(X方向における長さ)をL2と称する。交流引き出し配線23の接続部分23Aの長さ(X方向における長さ)をL3と称する。交流引き出し配線23の接続部分23Aの長さL3は、交流配線22の長手方向長さL2の半分よりも短く設定される。
【0079】
[5-2] 作用
上記のように構成された電力変換装置1の作用について説明する。
【0080】
図7のように構成することで、半導体モジュール10-1の配線経路を長くすることができる。これにより、半導体モジュール10-1から出力端子13までのインダクタンスを大きくすることができる。つまり、3並列の半導体モジュールのインダクタンス差を抑制する作用から、電流アンバランスを低減することができる。
【0081】
交流配線22と交流引き出し配線23との接続幅(長さL3)が大きいと、半導体モジュール10-1から出力端子13までのインダクタンスが小さくなってしまう。このため、3並列の半導体モジュールのインダクタンス差は大きくなってしまう。しかし、本実施形態では、接続部分23Aの長さL3は、交流配線22の長手方向長さL2の半分よりも短く設定される。これにより、半導体モジュール10-1の配線経路を長くすることができる。
【0082】
第5実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0083】
[6] 第6実施形態
第6実施形態は、交流配線22と交流引き出し配線23との距離を離すことで、出力端子13側に最も近い半導体モジュール10-1において、相互誘導によるインダクタンス低減作用を小さくするようにしている。
【0084】
[6-1] 電力変換装置1の配線構造について
電力変換装置1の基本的な構成は、第5実施形態の図7と同じである。図8は、第6実施形態に係る電力変換装置1の配線構造を示す正面図である。図8は、配線構造をY方向から見た正面図である。電力変換装置1は、3個の半導体モジュール10-1~10-3を備える。
【0085】
交流配線22の厚みをTと称する。交流配線22と、交流引き出し配線23の延在部分23Bとの距離をDと称する。交流配線22と交流引き出し配線23との距離Dは、交流配線22の厚みTより大きく設定される。
【0086】
[6-2] 作用
上記のように構成された電力変換装置1の作用について説明する。
【0087】
本実施形態では、交流配線22と交流引き出し配線23との距離を離すことで、相互誘導によるインダクタンス低減作用が小さくなる。これにより、半導体モジュール10-1から出力端子13までのインダクタンスを大きくすることができる。
【0088】
一方、半導体モジュール10-3から出力端子13までのインダクタンスについて、交流配線22と交流引き出し配線23との相互誘導はほぼ無く、インダクタンスの増減に寄与しない。つまり、3並列の半導体モジュールのインダクタンス差を抑制する作用から、電流アンバランスを低減することができる。
【0089】
第6実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0090】
第6実施形態は、4並列の半導体モジュールにも適用可能である。また、第6実施形態は、第1乃至第5実施形態に適用することも可能である。
【0091】
[7] 第7実施形態
第7実施形態は、交流配線22と交流引き出し配線23の延在部分23Bとが直角になるように構成するようにしている
[7-1] 電力変換装置1の配線構造について
電力変換装置1の基本的な構成は、第5実施形態の図7と同じである。図9は、第7実施形態に係る電力変換装置1の配線構造を示す側面図である。図9は、配線構造をX方向から見た側面図である。電力変換装置1は、3個の半導体モジュール10-1~10-3を備える。
【0092】
交流配線22と交流引き出し配線23の延在部分23Bとは、直角になるように構成される。換言すると、交流配線22と交流引き出し配線23とは、それぞれの平面部が直角になるように構成される。
【0093】
[7-2] 作用
上記のように構成された電力変換装置1の作用について説明する。
【0094】
本実施形態では、交流配線22と交流引き出し配線23とのそれぞれの平面部を直角に配置することで、相互誘導によるインダクタンス低減作用が小さくなる。このため、半導体モジュール10-1から出力端子13までのインダクタンスを大きくすることができる。
【0095】
一方、半導体モジュール10-3から出力端子13までのインダクタンスについて、交流配線22と交流引き出し配線23との相互誘導はほぼ無く、インダクタンスの増減に寄与しない。つまり、3並列の半導体モジュールのインダクタンス差を抑制する作用から、電流アンバランスを低減することができる。
【0096】
第7実施形態においても、第1実施形態と同じ効果を得ることができる。
【0097】
第7実施形態は、4並列の半導体モジュールにも適用可能である。また、第7実施形態は、第1乃至第6実施形態に適用することも可能である。
【0098】
上記各実施形態に係る電力変換装置1は、交流電力を扱う様々な機器やシステムに適用可能である。特に、上記各実施形態に係る電力変換装置1は、エレベータ巻上機を駆動するための電力変換装置に適用することが可能である。
【0099】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0100】
1…電力変換装置、10-1~10-4…半導体モジュール、11-1,11-2…スイッチング素子、12-1,12-2…ダイオード、13…出力端子、14…正極端子、15…負極端子、16…コンデンサ、20,21…接続配線、22…交流配線、23…交流引き出し配線、T1…正側電源端子、T2…負側電源端子、T3…交流端子。
【要約】
【課題】 並列接続された複数の半導体モジュールの電流アンバランスを抑制する。
【解決手段】 実施形態の電力変換装置は、直列接続された2個のスイッチング素子をそれぞれが有し、第1方向に並んで配置され、並列接続された複数の半導体モジュールと、第1方向に延在し、複数の半導体モジュールの交流端子を共通接続する交流配線と、第1方向に延在し、交流配線を出力端子まで引き出すように構成された交流引き出し配線とを含む。交流引き出し配線は、交流配線に接続される接続部分と、交流配線と並んで配置された延在部分とを有する。交流引き出し配線の接続部分の第1方向における中心は、複数の半導体モジュール全体の第1方向における中心よりも出力端子から遠い側に設定される。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9