(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】導電性ペースト組成物及び太陽電池セル
(51)【国際特許分類】
H01B 1/22 20060101AFI20240924BHJP
C09D 5/24 20060101ALI20240924BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20240924BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240924BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240924BHJP
H10K 30/50 20230101ALI20240924BHJP
H10K 30/81 20230101ALI20240924BHJP
H01L 31/0224 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H01B1/22 A
C09D5/24
C09D163/00
C09D7/63
C09D7/61
H10K30/50
H10K30/81
H01L31/04 264
(21)【出願番号】P 2023220802
(22)【出願日】2023-12-27
【審査請求日】2024-01-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】397059571
【氏名又は名称】京都エレックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋岡 信博
(72)【発明者】
【氏名】松原 豊治
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】元久 裕太
(72)【発明者】
【氏名】北住 竜也
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-153684(JP,A)
【文献】国際公開第2020/250675(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/108188(WO,A1)
【文献】特開2006-80013(JP,A)
【文献】特開2020-205245(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/22
C09D 5/24
C09D 163/00
C09D 7/63
C09D 7/61
H10K 30/50
H10K 30/81
H01L 31/0224
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性材料(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
金属キレート(C)と、
ポリヒドロキシ脂肪酸(D)と、
を含み、
前記エポキシ樹脂(B)は、重量平均分子量が2000以上、12万以下であり、
前記金属キレート(C)は、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレートおよびチタンキレートからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)は、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)において、R
1はアルキレン基又はアルケニレン基を表し、R
2及びR
3は同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、nは数平均重合度であって、
2以上、8以下の整数である)
で表され
、
前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)は、炭素数が12以上、22以下であるヒドロキシ脂肪酸由来の構成単位を有する、
導電性ペースト組成物。
【請求項2】
太陽電池に用いられる、請求項
1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
請求項
2に記載の導電性ペースト組成物の硬化膜が形成された集電電極を備える、太陽電池セル。
【請求項4】
請求項
3に記載の太陽電池セルを備える、太陽電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト組成物及び太陽電池セルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子機器または電子部品を製造する分野において、フィルム、基板、電子部品等の基材に電極または電気配線等を形成する手法の一つとして、導電性ペースト組成物を用いる技術が知られている。
【0003】
導電性ペースト組成物は、銀粒子等の導電性粒子からなる導電性材料を主成分とするものであって、熱硬化することで導電性を有する硬化膜を形成することができる材料である。例えば、導電性ペースト組成物を基材に塗布またはパターン印刷し、これを加熱して乾燥硬化させることにより、硬化膜を形成することができる。斯かる硬化膜は、導電性材料に起因する導電性を有することから、導電層として機能し得るものであり、例えば、特許文献1において提案されているように太陽電池用の電極に用いられるなど、その有用性は極めて高いものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
導電性ペースト組成物は一般的には200℃程度の温度にて硬化させて基材上に硬化膜を形成させるものであるので、例えば、熱によってダメージ等を受けやすい基材に対してはそのような導電性ペースト組成物を適用することが難しい場合があった。この点、導電性ペースト組成物を200℃よりも低い温度で硬化させることも考えられるが、この場合、硬化膜の形成が不十分になることがあり、硬化膜の抵抗値(特に体積抵抗率)が高くなりやすいという問題が起こり得る。斯かる事情が存在することから、従来よりも低温で硬化膜を形成することが可能である導電性ペースト組成物の開発が急務であった。とりわけ、ペロブスカイト型の太陽電池では、200℃程度の熱によってダメージを受けやすく、低温で導電性に優れる硬化膜を形成することが可能である導電性ペースト組成物が強く求められていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、従来よりも低温で硬化することが可能であり、導電性に優れる硬化膜を形成することができると共に、印刷性にも優れる導電性ペースト組成物並びに該ペースト組成物の硬化膜を備える太陽電池セルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、特定の成分を必須成分とすることにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、例えば、以下の項に記載の主題を包含する。
項1
導電性材料(A)と、
エポキシ樹脂(B)と、
金属キレート(C)と、
ポリヒドロキシ脂肪酸(D)と、
を含み、
前記エポキシ樹脂(B)は、重量平均分子量が2000以上、12万以下であり、
前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)は、下記一般式(1)
【0009】
【化1】
(式(1)において、R
1はアルキレン基又はアルケニレン基を表し、R
2及びR
3は同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、nは数平均重合度であって、2~20の整数である)
で表される、
導電性ペースト組成物。
項2
前記数平均重合度は2以上、8以下である、項1に記載の導電性ペースト組成物。
項3
前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)は、炭素数が12以上、22以下であるヒドロキシ脂肪酸由来の構成単位を有する、項1又は2に記載の導電性ペースト組成物。
項4
太陽電池に用いられる、項1~3のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
項5
項4に記載の導電性ペースト組成物の硬化膜が形成された集電電極を備える、太陽電池セル。
項6
項5に記載の太陽電池セルを備える、太陽電池モジュール。
項7
項1~4のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物の硬化物を含む、硬化膜。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性ペースト組成物は、従来よりも低温で硬化することが可能であり、導電性に優れる硬化膜を形成することができると共に、印刷性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0012】
本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値又は実施例から一義的に導き出せる値に置き換えてもよい。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。
【0013】
本発明の導電性ペースト組成物は、導電性材料(A)と、エポキシ樹脂(B)と、金属キレート(C)と、ポリヒドロキシ脂肪酸(D)とを含み、前記エポキシ樹脂(B)は、重量平均分子量が2000以上、12万以下である。また、前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)は、下記一般式(1)で表される。
【0014】
【0015】
ここで、式(1)において、R1はアルキレン基又はアルケニレン基を表し、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、nは数平均重合度であって、2~20の整数である。
【0016】
以下、導電性材料(A)、エポキシ樹脂(B)、金属キレート(C)及びポリヒドロキシ脂肪酸(D)をそれぞれ、導電性材料、エポキシ樹脂、金属キレート及びポリヒドロキシ脂肪酸と表記することがあり、あるいはそれぞれを、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分と表記することがある。
【0017】
斯かる導電性ペースト組成物によれば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を必須成分として含むことで、従来よりも低温で硬化することが可能であり、導電性に優れる硬化膜を形成することができる。具体的には、本発明の導電性ペースト組成物を200℃以下(例えば、100℃程度)で硬化して硬化膜を形成した場合であっても、斯かる硬化膜は体積抵抗率が低く、優れた導電性を有する。また、斯かる硬化膜は、ITOやAZO(いずれも透明導電膜)と接触した時の抵抗(以下、「接触抵抗」と表記)も小さい。
【0018】
また、本発明の導電性ペースト組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を必須成分として含むことで、印刷性、特にスクリーン印刷性にも優れる。従って、本発明の導電性ペースト組成物は、各種電子機器、電子部品の電極及び配線等を形成するために好適に使用することができる。とりわけ、本発明の導電性ペースト組成物は、ペロブスカイト型の太陽電池に用いられる電極を形成するために特に好適である。
【0019】
導電性材料(A)
本発明の導電性ペースト組成物は、(A)成分として導電性材料を含む。導電性材料は、導電性ペースト組成物から形成される硬化膜に導電性を付与する役割を果たすものである。
【0020】
導電性材料の種類は特に限定されず、例えば、太陽電池用の電極を製造するために用いられている公知の導電性ペースト組成物に含まれる導電性材料を広く採用することができる。
【0021】
導電性材料の具体的な形状は特に限定されず、例えば、粒子状であってもよく、すなわち、導電性材料は導電性粒子であってもよい。あるいは、導電性材料は、薄片状または鱗片状等のフレーク状あってもよい。なお、導電性粒子は、例えば、球状である。斯かる球状とは、部分的に凹凸があり、変形が見られても、全体として見た場合に、直方体よりは立方体に近い立体形状を含むことも意味し、実質的に球状であってもよいし、楕円球であってもよい。また、フレーク状とは、部分的に凹凸があり変形が見られても、全体として見た場合に、平板または厚みの薄い直方体に近い形状の粉末も包含する。導電性材料は、導電性粒子とフレークの混合物であってもよい。
【0022】
導電性材料の具体例としては、例えば、銀粉、銅粉、金粉、パラジウム粉、ニッケル粉、アルミニウム粉、鉛粉、カーボン粉等の導電性粒子を挙げることができ、導電性粒子は合金粉であってもよい。例えば、銀粉には銀合金粉が含まれ、銅粉には銅合金粉が含まれ、金粉には金合金粉が含まれる。また、導電性材料はフレーク状であってもよく、例えば、銀フレーク、銅フレーク、金フレーク等を挙げることができる。
【0023】
導電性材料のさらなる他例としては、金属がコア材料にコートされてなる粉末や金属がコア材料にコートされてなるフレークを挙げることもできる。コア材料としては、銀、銅、金、パラジウム、ニッケル粉、アルミニウム等の金属、あるいは、ポリイミド樹脂等の各種樹脂、その他セラミック材料を挙げることができる。金属がコア材料にコートされてなる粉末としては、銀がコートされた銅粉末、銀がコートされた銅合金粉末、銀がコートされたニッケル粉末、銀がコートされたアルミニウム粉末等を挙げることができる。
【0024】
導電性材料は銀粒子、銀フレーク、コア材料が銀でコートされた粉末であることが好ましい、
【0025】
導電性材料の平均粒径D50は、例えば、導電性材料が球状の粒子である場合は、0.1~10μmの範囲とすることができる。導電性材料がフレーク状である場合は、平均粒径D50は例えば2~20μmの範囲とすることができる。なお、導電性材料の平均粒径D50は、マイクロトラック粒度分布測定装置を用いたレーザ回折法により測定することができる。
【0026】
導電性材料の製造方法は特に限定されない。例えば、導電性材料は、公知の製造方法によって得ることができ、あるいは、市販品等から入手することも可能である。
【0027】
本発明の導電性ペースト組成物に含まれる導電性材料(A)は、1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることができる。
【0028】
エポキシ樹脂(B)
本発明の導電性ペースト組成物は、(B)成分として、重量平均分子量が2000以上、12万以下であるエポキシ樹脂を含む。エポキシ樹脂の重量平均分子量が2000未満である場合は、導電性ペースト組成物を低温で硬化した場合に得られる硬化膜の体積抵抗率及び接触抵抗が高くなるおそれがある。
【0029】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、5000以上であることが好ましく、10000以上であることがより好ましく、20000以上であることがさらに好ましく、また、100000以下であることが好ましく、90000以下であることがより好ましく、80000以下であることがさらに好ましい。
【0030】
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によって測定したポリスチレン換算重量平均分子量のことである。GPC法に使用されるGPC装置には特に制限はなく、市販のGPC測定機を使用することができる。具体的な測定条件は、下記のとおりである。
カラム:Shodex OHPak SB-806M HQ
カラム温度:50℃
検出器:示差屈折率検出器RID-20A(株式会社島津製作所)
流速:0.5ml/分
なお、エポキシ樹脂の重量平均分子量のメーカー保証値あるいは測定値が判明している場合は、その値をエポキシ樹脂の重量平均分子量として採用することもできる。
【0031】
エポキシ樹脂は、重量平均分子量が2000以上、12万以下である限りその種類は限定されず、例えば、公知の導電性ペースト組成物に含まれるエポキシ樹脂を広く採用することができる。
【0032】
エポキシ樹脂は、1分子中に2個以上のエポキシ環またはエポキシ基を有する多価エポキシ樹脂を挙げることができ、さらにエポキシ樹脂は、1個以上の水酸基を有することもできる。
【0033】
エポキシ樹脂の具体例としては、グリシジル型のエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンエポキシド等の脂環式エポキシ樹脂、ブタジエンダイマージエポキシド等の脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。グリシジル型のエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンまたは2-メチルエピクロルヒドリンと、活性水素を有する化合物とを反応させて得られるものが挙げられる。活性水素を有する化合物としては、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のノボラック系化合物;ビスフェノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAD、レゾルシン等の多価フェノール系化合物やフェノキシ樹脂;エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコール系化合物;エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、アニリン等のポリアミノ化合物;または、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸等の多価カルボキシル化合物;等が例示される。
【0034】
中でもエポキシ樹脂は、多価フェノール系化合物が好ましく、特にビスフェノール型高分子エポキシ樹脂であるフェノキシ樹脂が好ましい。
【0035】
本発明の導電性ペースト組成物に含まれるエポキシ樹脂は1種類単独又は2種以上とすることができる。
【0036】
エポキシ樹脂は、ブロック化ポリイソシアネート化合物を含むこともできる。この場合、斯かるブロック化ポリイソシアネート化合物も便宜上(B)成分と見なす。ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族系ポリイソシアネート;等を挙げることができる。これらポリイソシアネート化合物は1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。これらのポリイソシアネート化合物は、イソシアヌレート型、アダクト型、またはビウレット型のいずれであってもよい。
【0037】
なお、ポリイソシアネート化合物は、例えば、公知のポリイソシアネートと公知のポリオールとを公知の方法により反応させて合成した末端イソシアネート基含有化合物であってもよい。ポリオールは、ポリエーテルポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリカーボネートポリオール類、ポリアルキレンポリオール類等が挙げられる。
【0038】
エポキシ樹脂の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。また、エポキシ樹脂は、市販品等から入手することも可能である。
【0039】
本発明の導電性ペースト組成物に含まれるエポキシ樹脂(B)は、1種のみとすることができ、あるいは、2種以上とすることができる。
【0040】
金属キレート(C)
本発明の導電性ペースト組成物は、(C)成分として金属キレートを含む。本発明の導電性ペースト組成物が金属キレートを含むことで、導電性ペースト組成物を低温で硬化したとしても得られる硬化膜の体積抵抗率及び接触抵抗が小さいものとなる。
【0041】
金属キレートは、前述の(B)成分であるエポキシ樹脂といわゆる擬似架橋できる場合があり、これにより、導電性ペースト組成物を低温で硬化したとしても得られる硬化膜の体積抵抗率及び接触抵抗が小さくなりやすい。とりわけ、エポキシ樹脂が水酸基を有する場合は、金属キレートのエポキシ樹脂への擬似架橋が起こりやすい。
【0042】
金属キレートとしては、金属アルコシドとβ-ジケトンやケトエステル(アセト酢酸エチル等)等のキレート化剤と反応したキレート化合物を挙げることができる。具体的な金属キレートとしては、アルミニウムキレート、ジルコニウムキレート、チタンキレート等が挙げられ、アルミニウムキレートが好適である。
【0043】
アルミニウムキレートとしては、例えば、アルミニウムのアセチルアセトネート錯体が好ましい。アセチルアセトネート錯体は、アセチルアセトネート基:-O-C(CH3)=CH-CO(CH3)や、メチルアセトアセテート基:-O-C(CH3)=CH-CO-O-CH3や、エチルアセトアセテート基:-O-C(CH3)=CH-CO-O-C2H5等を有することができる。アルミニウムキレートとしては、これらの基を1分子中に1~3個有することが好ましく、アセチルアセトネート基を1~3個有するか、エチルアセトアセテート基を1~3個有するアルミニウムキレートがより好ましい。
【0044】
アルミニウムキレートのさらなる具体例としては、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピオネート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(アセチルアセテート)、アルミニウムモノアセチルアセテートビス(エチルアセトアセテテート)、アルミニウムジn-ブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジイソブトキシドモノメチルアセトアセテート、アルミニウムジsec-ブトキシドモノメチルアセトアセテート等が挙げられる。
【0045】
本発明の導電性ペースト組成物に含まれる金属キレートは1種類単独又は2種以上とすることができる。
【0046】
金属キレートの製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。また、金属キレートは、市販品等から入手することも可能である。
【0047】
ポリヒドロキシ脂肪酸(D)
本発明の導電性ペースト組成物は、(D)成分としてポリヒドロキシ脂肪酸を含む。ポリヒドロキシ脂肪酸が含まれることで、導電性ペースト組成物を低温で硬化したとしても得られる硬化膜の体積抵抗率及び接触抵抗が小さいものとなり、導電性に優れ、その上、スクリーン印刷性も顕著に向上する。
【0048】
ポリヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシ脂肪酸由来の構成単位を繰り返し単位として有する化合物である。具体的には、ポリヒドロキシ脂肪酸は、前記式(1)で表される化合物(オリゴマー又はポリマー)である。
【0049】
前記式(1)において、R1はアルキレン基又はアルケニレン基を表す。このことからポリヒドロキシ脂肪酸は、ヒドロキシ飽和脂肪酸由来の構成単位を繰り返し単位として有する化合物、又は、ヒドロキシ不飽和脂肪酸由来の構成単位を繰り返し単位として有する化合物であるといえる。なお、アルキレン基とは直鎖のアルカンから2個の水素が除された2価の基であり、アルケニレン基とは直鎖のアルケンから2個の水素が除された2価の基であることを意味する。
【0050】
R1がアルキレン基である場合、斯かるアルキレン基の炭素数は4~20であることが好ましく(すなわち、R1は-(CH2)m-で表される基(mは4~20)であることが好ましく)、6~16であることがより好ましく、8~12であることがさらに好ましい。
【0051】
R1がアルケニレン基である場合、斯かるアルケニレン基の炭素数は4~20であることが好ましく、6~16であることがより好ましく、8~12であることがさらに好ましく、9~11であることが特に好ましい。アルケニレン基において、二重結合の個数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上であってもよく、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下である。また、アルケニレン基において、二重結合の位置も特に限定されない。
【0052】
アルキレン基及びアルケニレン基はいずれも直鎖状であることが好ましい。また、アルキレン基及びアルケニレン基はいずれも置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい。
【0053】
前記式(1)において、R2及びR3は同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表す。
【0054】
R2及びR3におけるアルキル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、3~7であることがさらに好ましく、3~6であることが特に好ましい。また、R2及びR3におけるアルケニル基の炭素数は、1~10であることが好ましく、2~8であることがより好ましく、3~7であることがさらに好ましく、3~6であることが特に好ましい。アルケニル基において、二重結合の個数は特に限定されず、1個でもよいし、2個以上であってもよく、好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下である。また、アルケニレン基において、二重結合の位置も特に限定されない。
【0055】
R2及びR3において、アルキル基及びアルケニル基はいずれも直鎖状であることが好ましい。また、アルキル基及びアルケニル基はいずれも置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい。
【0056】
前記式(1)において、R2及びR3は両方が水素であってもよい。好ましくは、R2及びR3の少なくとも一方が水素であり、他方がアルキル基又はアルケニル基である。
【0057】
前記式(1)において、nは数平均重合度であって、すなわち、式(1)で表される化合物の繰り返し単位数を意味する。nは2~20の整数であり、好ましくは、2以上、8以下である。すなわち、前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)の数平均重合度は2以上、8以下であることが好ましい。この場合、導電性ペースト組成物を低温で硬化したとしても得られる硬化膜の体積抵抗率及び接触抵抗がより小さいものとなり、また、スクリーン印刷性も特に顕著に向上する。nは3以上がより好ましく、また、6以下がより好ましい。
【0058】
前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)は、炭素数が12以上、22以下であるヒドロキシ脂肪酸由来の構成単位を有することが好ましい。言い換えれば、前記(1)式において、繰り返し単位中の構造中に存在する炭素の総数が12以上、22以下であることが好ましい。ポリヒドロキシ脂肪酸(D)の一態様である。この場合も、導電性ペースト組成物を低温で硬化したとしても得られる硬化膜の体積抵抗率及び接触抵抗がより小さいものとなり、また、スクリーン印刷性も特に顕著に向上する。好ましいポリヒドロキシ脂肪酸(D)の一実施形態は、炭素数が12以上、22以下であるヒドロキシ脂肪酸由来の構成単位を有し、かつ、数平均重合度は2以上、8以下であることである。
【0059】
前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)の具体例としては、
ポリヒドロキシステアリン酸(すなわち、前記式(1)において、R1が炭素数10のアルキレン基、R2が炭素数6のアルキル基、R3が水素である)、
ポリリシノール酸(すなわち、前記式(1)において、R1が炭素数10のアルケニレン基、R2が炭素数6のアルキル基、R3が水素である)
等を挙げることができる。
【0060】
本発明の導電性ペースト組成物に含まれるポリヒドロキシ脂肪酸(D)は1種類単独又は2種以上とすることができる。
【0061】
ポリヒドロキシ脂肪酸(D)の製造方法は特に限定されず、例えば、公知の製造方法を広く採用することができる。また、ポリヒドロキシ脂肪酸は、市販品等から入手することも可能である。
【0062】
導電性ペースト組成物
本発明の導電性ペースト組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分を必須成分として含む。
【0063】
導電性材料(A)の含有量は、硬化膜に良好な導電性を付与しやすい上にスクリーン印刷性が向上しやすい点で、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、1000質量部以上であることが好ましく、1250質量部以上であることがより好ましく、1300質量部以上であることがさらに好ましく、1500質量部以上であることが特に好ましく、また、5000質量部以下であることが好ましく、4000質量部以下であることがより好ましく、3500質量部以下であることがさらに好ましく、3000質量部以下であることが特に好ましい。
【0064】
金属キレート(C)の含有量は、硬化膜の体積抵抗率が小さくなりやすい点で、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、10質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以上であることが特に好ましく、また、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、35質量部以下であることがさらに好ましく、30質量部以下であることが特に好ましい。
【0065】
ポリヒドロキシ脂肪酸(D)の含有量は、硬化膜の体積抵抗率が小さくなりやすく、かつ、スクリーン印刷性も向上しやすい点で、エポキシ樹脂(B)100質量部に対して、0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることがさらに好ましく、4質量部以上であることが特に好ましく、また、20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが特に好ましい。
【0066】
本発明の導電性ペースト組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分以外の他の成分を、本発明の効果が阻害されない程度に含むことができる。他の成分としては、従来の導電性ペースト組成物に含まれる成分、とりわけ、太陽電池用の電極の形成に用いられる従来の導電性ペースト組成物に含まれる成分を広く挙げることができる。
【0067】
他の成分としては、溶剤を挙げることができる他、例えば、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、消泡剤、粘度調整剤等を挙げることができる。
【0068】
導電性ペースト組成物が溶剤を含む場合は、例えば、導電性ペースト組成物の粘度または流動性等の物性が所望の範囲に調整されやすい。導電性ペースト組成物の粘度は特に限定されず、電極または配線等のパターンを形成する際の便宜、特にスクリーン印刷の効率性から、例えば75~100Pa・sの範囲内を挙げることができる。導電性ペースト組成物の粘度がこの範囲内であれば、スクリーン印刷によるパターン形成を良好に実施することができる。
【0069】
溶剤の具体的な種類は特に限定されず、例えば、n-ヘキサン等の飽和炭化水素類;トルエン等の芳香族系炭化水素類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルセロソルブアセテート等のグリコールエーテル(セロソルブ)類;ジエチレングリコールジエチルエーテル、ブチルジグリコール(ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル)等のグリコールエーテル類;ブチルジグリコールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテル類の酢酸エステル;ジアセトンアルコール、ターピネオール、ベンジルアルコール等のアルコール類;シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等のケトン類;DBE、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジイソブチレートなどのエステル類;等を挙げることができる。これら溶剤は1種類のみを用いてもよいし2種類以上を適宜組み合わせて用いてもよい。
【0070】
導電性ペースト組成物中の溶剤の含有量は特に限定されず、例えば、導電性ペースト組成物の粘度等が適宜の範囲に調整されるように溶剤の含有量を調整することができる。例えば、印刷性が良好になりやすい点で、導電性ペースト組成物全体に対する溶剤の含有割合は1~40質量%であることが好ましい。
【0071】
導電性ペースト組成物の総量に対する(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び溶剤の含有割合は80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。導電性ペースト組成物の総量に対する(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分のみからなるものであってもよいし、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び溶剤のみからなるものであってもよい。
【0072】
本発明の導電性ペースト組成物の調製方法は特に限定されない。例えば、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分並びに必要に応じて添加される溶剤等のその他成分を所定の配合量で混合する方法によって、導電性ペースト組成物を調製することができる。
【0073】
本発明の導電性ペースト組成物を用いることで、基材に電極または電気配線を形成することができる。この形成方法は特に限定されず、例えば、公知の方法を広く採用することができる。代表的には、スクリーン印刷によりパターン形成し、次いで、加熱処理により導電性ペースト組成物(形成されたパターン)を硬化させる方法が挙げられる。スクリーン印刷の他にも、グラビア印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、ディスペンサー法、ディップ法等の印刷法を適用することが可能である。
【0074】
前記加熱処理の条件は、従来と同じ条件を採用することができるが、前述のように本発明の導電性ペースト組成物は従来よりも低温で硬化させることが可能である。従って、加熱温度は180℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましく、130℃以下がよりさらに好ましく、120℃以下が特に好ましい。加熱温度は100℃とすることもできる。加熱温度の下限は、導電性ペースト組成物の硬化が進行する限りは特に限定されず、例えば、60℃以上、好ましくは80℃以上である。加熱処理の時間は、加熱温度及び硬化の進行度合いに応じて適宜の範囲とすることができる。加熱処理における加熱方法も特に限定されず、公知の加熱手段を広く採用することができる。
【0075】
本発明の導電性ペースト組成物は、上述のように従来よりも低温で硬化することが可能でありながら、導電性に優れる硬化膜を形成することができる。とりわけ、本発明の導電性ペースト組成物を200℃以下(例えば、100℃程度)で硬化して硬化膜を形成した場合であっても、斯かる硬化膜は体積抵抗率が低く、優れた導電性を有し、その上、ITOやAZO等の透明導電膜と接触した時の抵抗も小さい。
【0076】
従って、本発明の導電性ペースト組成物は、低温での硬化膜の形成が求められる用途に広く適用することができ、中でも、低温での処理が求められているヘテロ接合結晶シリコン太陽電池、ペロブスカイト型の太陽電池セルに用いられる集電電極を形成するための使用に好適である。すなわち、本発明の導電性ペースト組成物は、太陽電池用に好適に用いることができる。
【0077】
特に、近年注目されているペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池から成るタンデム太陽電池は、熱によるダメージを受けやすいため、低温で集電電極を形成することができる本発明の導電性ペースト組成物を好適に使用することができる。
【0078】
本発明の導電性ペースト組成物は、もちろん上記以外の太陽電池セルの集電電極を形成するための材料として使用でき、その他、チップ型電子部品の外部電極;RFID、電磁波シールド、振動子接着、メンブレンスイッチ、またはエレクトロルミネセンス等に用いられる部品の電極または電気配線;等の用途に好適に用いることができる。例えば、太陽電池セルは、本発明の導電性ペースト組成物の硬化膜が形成された集電電極を備えるものであるので、製造が容易であり、特に低温処理で集電電極が形成されるものであるので、製造過程でダメージを受けにくく、優れた性能を有することができる。
【0079】
本開示に包含される発明を特定するにあたり、本開示の各実施形態で説明した各構成(性質、構造、機能等)は、どのように組み合わせられてもよい。すなわち、本開示には、本明細書に記載される組み合わせ可能な各構成のあらゆる組み合わせからなる主題が全て包含される。
【実施例】
【0080】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の態様に限定されるものではない。
【0081】
(原料)
各実施例及び比較例において、導電性ペースト組成物を調製するための原料として、以下を使用した。
(A)成分;導電性材料
・導電性材料1:AG-3-1F(銀、D50:1.4μm、球状)
・導電性材料2:AG-5-1F(銀、D50:2.9μm、球状)
・導電性材料3:AG-2-8F(銀、D50:0.9μm、球状)
・導電性材料4:FA-2-3(銀、D50:6.0μm、フレーク)と、AG-3-1F(銀、D50:1.4μm、球状)との混合物
・導電性材料5:トーヤルテックフィラーTFM‐C05P(銀コート銅、D50:6μm、球状、東洋アルミニウム株式会社)
【0082】
(B)成分;エポキシ樹脂
・エポキシ樹脂1:PKHB(重量平均分子量:32000、巴工業株式会社)
・エポキシ樹脂2:jER4007P(重量平均分子量:4000、三菱ケミカル株式会社)
・エポキシ樹脂3:PKFE(重量平均分子量:60000、巴工業株式会社)
・エポキシ樹脂4:YX7553BH30(重量平均分子量:35000、三菱ケミカル株式会社)
【0083】
(C)成分;金属キレート
・金属キレート1:オルガチックスAL-3100(マツモトファインケミカル株式会社)
・金属キレート2:オルガチックスAL-3215(マツモトファインケミカル株式会社)
・金属キレート3:オルガチックスZC-150(マツモトファインケミカル株式会社)
【0084】
(D)成分;ポリヒドロキシ脂肪酸
・ポリヒドロキシ脂肪酸1:数平均重合度4のポリヒドロキシステアリン酸(小倉合成工業株式会社製)
・ポリヒドロキシ脂肪酸2:数平均重合度2のポリヒドロキシステアリン酸(小倉合成工業株式会社製)
・ポリヒドロキシ脂肪酸3:数平均重合度6のポリヒドロキシステアリン酸(小倉合成工業株式会社製)
・ポリヒドロキシ脂肪酸4:数平均重合度4のポリリシノール酸(小倉合成工業株式会社製)
比較用の(D)成分
・ステアリン酸
溶剤
・溶剤1:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート
・溶剤2:ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート
【0085】
(実施例1)
表1の配合条件の実施例1に示す原料及び配合量を選択して導電性ペースト組成物を調製した。具体的には、(A)成分として導電性材料1を2500質量部、(B)成分としてエポキシ樹脂1を100質量部、(C)成分として金属キレート1を20質量部、(D)成分としてポリヒドロキシ脂肪酸1を6質量部、及び、溶剤として溶剤1を60質量部準備し、これらを混合することで導電性ペースト組成物を調製した。
【0086】
(実施例2~実施例15、比較例1~3)
表1の配合条件に示される原料及び配合量に変更したこと以外は実施例1と同様の方法で導電性ペースト組成物を調製した。
【0087】
(硬化膜の形成)
基板としてアルミナを準備し、この基材表面に導電性ペースト組成物をスクリーン印刷し、導体パターンを形成した。斯かる導体パターンが形成された基板を120℃の熱風乾燥機中で15分間加熱することにより、導体パターン(導電性ペースト組成物)を硬化させ、硬化膜を形成させた。これにより、体積抵抗率の評価用サンプル1を作製した。
【0088】
(評価方法)
<体積抵抗率の測定>
前記評価用サンプル1を用いて体積抵抗率を測定した。まず、評価用サンプル1の導体パターン(硬化膜)について、その膜厚を表面粗さ計(株式会社東京精密製、製品名サーフコム480A)で測定し、その電気抵抗をデジタルマルチメータ(株式会社アドバンテスト製、製品名R6551)で測定した。測定された膜厚および電気抵抗に基づいて、体積抵抗率(μΩ・cm)を算出した。
【0089】
<ITOとの接触抵抗の測定>
ITOとの接触抵抗の測定には、ITOが表面にコーティングされたガラス基板を用いた。実施例および比較例の導電性ペーストを用いてITOガラス基板上に電極を形成後、TLM(Traansfer Length Method)法により接触抵抗(ITO)を測定した。
【0090】
<AZOとの接触抵抗の測定>
AZOとの接触抵抗の測定には、AZOが表面にコーティングされたガラス基板を用いた。実施例および比較例の導電性ペーストを用いてITOガラス基板上に電極を形成後、TLM(Traansfer Length Method)法により接触抵抗(AZO)を測定した。
【0091】
<スクリーン印刷性>
前述の「硬化膜の形成」において行われたスクリーン印刷後の導体パターンを目視で観察し、下記判定基準に基づいてスクリーン印刷性を評価した。
≪判定基準≫
○:かすれは見られず、印刷性が良好であった。
×:かすれが見られ、印刷性が悪かった。
【0092】
表1には、各実施例及び比較例で調製した導電性ペースト組成物の配合条件及び得られた硬化膜の体積抵抗率、ITOとの接触抵抗及びAZOとの接触抵抗の測定結果並びにスクリーン印刷性の評価結果を示している。なお、表1の配合条件における空欄は、その原料を使用していないことを意味する。
【0093】
表1から、実施例で得られた導電性ペースト組成物から形成される硬化膜は、体積抵抗率、ITOとの接触抵抗及びAZOとの接触抵抗全て低く、また、スクリーン印刷性にも優れることがわかる。すなわち、実施例で得られた導電性ペースト組成物は、従来よりも低温で硬化して硬化膜を形成したにもかかわらず、斯かる硬化膜は体積抵抗率が低く、ITOやAZOとの接触抵抗も小さいものであり、スクリーン印刷性にも優れることが実証された。
【0094】
【要約】
【課題】従来よりも低温で硬化することが可能であり、導電性に優れる硬化膜を形成することができると共に、印刷性にも優れる導電性ペースト組成物を提供する。
【解決手段】本発明の導電性ペースト組成物は、導電性材料(A)と、エポキシ樹脂(B)と、金属キレート(C)と、ポリヒドロキシ脂肪酸(D)とを含み、前記エポキシ樹脂(B)は、重量平均分子量が2000以上、12万以下であり、前記ポリヒドロキシ脂肪酸(D)は、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)において、R
1はアルキレン基又はアルケニレン基を表し、R
2及びR
3は同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアルケニル基を表し、nは数平均重合度であって、2~20の整数である)
で表される。
【選択図】なし