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特許7559229開環メタセシス重合により製造されるエポキシ官能基を有する環状オレフィン重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】開環メタセシス重合により製造されるエポキシ官能基を有する環状オレフィン重合体
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/04 20060101AFI20240924BHJP
   C08G 61/08 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
G02B1/04
C08G61/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023518811
(86)(22)【出願日】2023-01-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-21
(86)【国際出願番号】 KR2023000301
(87)【国際公開番号】W WO2023153648
(87)【国際公開日】2023-08-17
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2022-0016322
(32)【優先日】2022-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514260642
【氏名又は名称】コリア アドバンスド インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジィ
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】キム,サン‐ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジョン‐ホ
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-187219(JP,A)
【文献】国際公開第2014/129486(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00- 61/12
G02B 1/00- 1/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表されるエポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び下記化学式2で表されるエポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体の開環メタセシス重合により生成されるか、又は
前記エポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び前記エポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体と下記化学式3で表されるノルボルネン単量体との開環メタセシス重合により生成される、環状オレフィン重合体を水素化反応させることで生成される、水素化された環状オレフィン重合体を有する光学的等方性フィルムであって、
前記水素化された環状オレフィン重合体は、下記化学式4、化学式5、化学式6、化学式7、化学式8又は化学式9で表される繰り返し単位を含む、
光学的等方性フィルム
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
前記化学式3、化学式4、化学式5、化学式6、化学式7、化学式8及び化学式9において、
nは、5~5,000の整数であり、
mは、5~5,000の整数であり、
lは、5~5,000の整数であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基、エステル基(-COOR)、あるいはアミド基(-CONHR)より選択されるものであり、
は、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基である。
【請求項2】
前記光学的等方性フィルムは、150℃以上のガラス転移温度を有する、請求項に記載の光学的等方性フィルム
【請求項3】
前記光学的等方性フィルムは、可視光線領域で80%以上の透過度を有する、請求項に記載の光学的等方性フィルム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、開環メタセシス重合により製造されるエポキシ官能基を有する環状オレフィン重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン系重合体は、環状単量体の重合により得られた無定形の透明な高分子を意味する。優れた光学性質を有する透明高分子は、光学、パッケージング、電子製品、医療機器又は微細流体装置を含む広範囲な応用分野において相当注目されている。光学高分子に広く使用される高分子素材として、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)及びポリカーボネート(polycarbonate)があるが、高い複屈折率(birefringence)及び低い熱安定性のため、光学的用途への活用には限界がある。
【0003】
それとは異なり、環状オレフィン系重合体は、低い複屈折率、高透明性(transparency)、高い熱安定性(thermal stability)及び耐化学性(chemical resistance)などの多くの長所を有しており、様々な光学的用途への応用研究が活発に進行されている。
【0004】
一般的に、環状オレフィン系重合体は、合成方法によって環状オレフィン高分子(cyclic olefin polymer;COP)及び環状オレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer;COC)に分けられる。環状オレフィン高分子(COP)は、開環メタセシス重合(ring-opening metathesis polymerization;ROMP)の後、主鎖(main chain)の二重結合を水素化(hydrogenation)させることで製造される高分子である。開環メタセシス重合は、大きい環ひずみ(ring strain)を有するノルボルネン(norbornene)系単量体を使用するが、環が開きながら高いエネルギーの環ひずみが緩和されるので、重合が容易に進行され、高い分子量の高分子を製造することができる。後続の水素化は、主鎖の流動性(flexibility)を増加させてガラス転移温度(glass transition temperature;Tg)が減少するが、耐化学性及び熱安定性が向上する。
【0005】
代表的な例としては、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene;DCPD)の単一重合体であるポリジシクロペンタジエン(poly(dicyclopentadiene);PDCPD)がある。ジシクロペンタジエンは、石油から容易に得ることができ、安価であり、触媒に対する重合反応性に優れているので、環状オレフィン系高分子を合成するための単量体として適合である。しかし、ジシクロペンタジエンは、分子内に環ひずみを有する2つの二重結合を保有しているため、重合の際に架橋(crosslink)反応が起こり得る。この場合、工程過程を通じてフィルムを作る際に局所的に不溶性を有することになり、透明性(transparency)及び加工性(processability)が減少する。実際に水素化まで経たポリジシクロペンタジエンは、100℃程度の低いガラス転移温度を示し、架橋された(crosslinked)鎖が含まれていると知られている。
【0006】
環状オレフィン共重合体は(COC)触媒を活用したビニル付加共重合(vinyl addition copolymerization)法によって得られる。この方法は、環状オレフィン(cyclic olefin)をエチレン又はアルファ-オレフィン(α-olefin)と共重合する場合であって、様々な共単量体を導入して容易に環状オレフィン共重合体を合成することができるという長所がある。しかし、環状オレフィンと、エチレン、又はアルファ-オレフィンにより製造される環状オレフィン共重合体は、炭化水素のみからなる構造的な限界により、共重合体の物性(例えば、接着力)に制限がある。
【0007】
上記のような環状オレフィン系重合体の短所を解決するために、重合体鎖の回転及び移動性が制限された多重環状の単量体、体積が大きい置換基を含む単量体、又は機能性基(例えば、エステル基)が導入された単量体を活用した環状オレフィン重合体が開発された。多重環状の鎖を含み、体積が大きい置換基は、鎖移動性を減少させるが、ガラス転移温度は、鎖-鎖相互作用(chain-chain interaction)が増加するか、又は鎖移動性(chain mobility)が減少する場合に向上する。機能性基が導入された多重環状の単量体を利用し、高透明性、低い複屈折率、熱安定性、耐化学性及び高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系高分子を容易に製作することができるが、単量体の合成段階が複雑になり、生産及び精製過程に困難性が存在する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】New catalysts for linear polydicyclopentadiene synthesis(M.J.Abadie、M.Dimonie、Christine Couve、V.Dragutanc)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、エポキシ官能基が導入された単量体の合成及び開環メタセシス重合方法であり、機能性官能基が導入された約150℃以上のガラス転移温度、高温耐久性及び高透過率を有する環状オレフィン系高分子の製造方法を提供しようとする。
【0010】
しかし、本願が解決しようとする課題は、上記したような課題に限定されるものではなく、言及されていない他の課題は、以下の記載から通常の技術者にとって明確に理解できるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の第1の側面は、下記化学式1で表されるエポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び下記化学式2で表されるエポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体の開環メタセシス重合により生成されるか、又は前記エポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び前記エポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体と下記化学式3で表されるノルボルネン単量体との開環メタセシス重合により生成される、環状オレフィン重合体であって、下記化学式4、化学式5、化学式6、化学式7、化学式8又は化学式9で表される繰り返し単位を含む、環状オレフィン重合体を提供する。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
前記化学式3、化学式4、化学式5、化学式6、化学式7、化学式8及び化学式9において、
nは、5~5,000の整数であり、
mは、5~5,000の整数であり、
lは、5~5,000の整数であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基、エステル基(-COOR)、あるいはアミド基(-CONHR)より選択されるものであり、
は、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基である。
【0012】
本願の第2の側面は、第1の側面に係る環状オレフィン重合体を水素化反応させることで生成され、下記化学式10、化学式11、化学式12、化学式13、化学式14又は化学式15で表される繰り返し単位を含む、水素化された環状オレフィン重合体を提供する。
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
前記化学式10、化学式11、化学式12、化学式13、化学式14及び化学式15において、
nは、5~5,000の整数であり、
mは、5~5,000の整数であり、
lは、5~5,000の整数であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基、エステル基(-COOR)、あるいはアミド基(-CONHR)より選択されるものであり、
は、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基である。
【0013】
本願の第3の側面は、(a)下記化学式1で表されるエポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び下記化学式2で表されるエポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体;又は前記エポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び前記エポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体と下記化学式3で表されるノルボルネン単量体;を第1世代グラブス触媒の存在下で重合反応させることで環状オレフィン重合体を得ることと、(b)前記環状オレフィン重合体を水素化反応させることで下記化学式10、化学式11、化学式12、化学式13、化学式14又は化学式15で表される繰り返し単位を含む水素化された環状オレフィン重合体を得ることとを含む、水素化された環状オレフィン重合体の製造方法を提供する。
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
前記化学式3、化学式10、化学式11、化学式12、化学式13、化学式14及び化学式15において、
nは、5~5,000の整数であり、
mは、5~5,000の整数であり、
lは、5~5,000の整数であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基、エステル基(-COOR)、あるいはアミド基(-CONHR)より選択されるものであり、
は、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基である。
【発明の効果】
【0014】
本願の具現例に係る水素化された環状オレフィン重合体は、小さいサイズの極性官能基であるエポキシ官能基が導入されて、鎖-鎖相互作用が強くなり、約150℃以上、又は約160℃以上のガラス転移温度を保有することができる。
【0015】
本願の具現例に係る水素化された環状オレフィン重合体は、塩素系溶媒(chlorinated solvents)における溶解度が高いので、溶液キャスティング法で高分子フィルムを容易に得ることができる。
【0016】
本願の具現例に係る水素化された環状オレフィン重合体は、光学的等方性フィルムの製造に活用されることができる。
【0017】
本願の具現例に係る水素化された環状オレフィン重合体を利用して製造されたフィルムは、約400nm~約800nmの領域で約80%以上、約83%以上、又は約85%以上の透過度を保有することができる。
【0018】
本願の具現例に係る環状オレフィン系重合体は、光学、パッケージング、電子製品、医療機器又は微細流体装置を含む広範囲な応用分野において活用されることができる。
【0019】
本願の具現例に係る環状オレフィン系重合体は、低い複屈折率、高透明性、高い熱安定性及び耐化学性を保有することができる。
【0020】
本願の具現例に係る水素化された環状オレフィン重合体を製造する際、ノルボルネン環にエポキシ官能基が導入された化合物が副産物として得られるが、重合段階に関与しないので、別途の分離過程なしに標的分子量を有する環状オレフィン重合体を容易で且つ効率よく得ることができる。
【0021】
本願の具現例に係る水素化された環状オレフィン重合体の製造に使用された触媒は、エポキシ官能基と反応性がないので、重合及び水素化段階で副反応が起こらなくても良い。
【0022】
本願の具現例に係るノルボルネン単量体が含まれた水素化された環状オレフィン重合体は、引張強度、弾性、又は接着力などの物性が向上されたものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1a】本願の実施例によって製造された単量体化合物1であるエポキシ化ジシクロペンタジエンのH NMRスペクトルである。
図1b】前記化合物の13C NMRスペクトルである。
図2a】本願の実施例に係る反応式2においてpoly(1)で表される重合体のH NMRスペクトルである。
図2b】前記poly(1)の13C NMRスペクトルである。
図3a】本願の実施例に係る反応式3においてH-poly(1)で表される重合体のH NMRスペクトルである。
図3b】前記H-poly(1)の13C NMRスペクトルである。
図4】本願の実施例に係る反応式3のH-poly(1)で表される重合体のH-13C HSQC NMRスペクトルである。
図5】本願の実施例に係る反応式3のH-poly(1)で表される重合体を利用して製造されたフィルム写真である。
図6】窒素大気下の熱重量分析(thermogravimetric analysis)グラフである。実線は、本願の実施例に係る反応式2においてpoly(1)で表される重合体のグラフを表し、点線は、本願の実施例に係る反応式3のH-poly(1)で表される重合体のグラフを表す。
図7】窒素大気下の示差走査熱量計(differential scanning calorimetry)分析グラフである。ここで、実線は、本願の実施例に係る反応式2においてpoly(1)で表される重合体のグラフを表し、点線は、本願の実施例に係る反応式3のH-poly(1)で表される重合体のグラフを表す。
図8】本願の実施例に係る反応式3のH-poly(1)で表される重合体の赤外線分光法グラフである。
図9】本願の実施例に係る反応式3のH-poly(1)で表される重合体の紫外線-可視光線領域の透過度グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下では、添付した図面を参照しながら、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の具現例及び実施例を詳しく説明する。ところが、本願は様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する具現例及び実施例に限定されるものではない。そして、図面において、本発明を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書全体に亘って類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0025】
本願の明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。
【0026】
本願の明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているという場合、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0027】
本願の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0028】
本明細書において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値で、又はその数値に近接した意味として使用され、本願の理解を助けるために正確あるいは絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0029】
本願の明細書全体において使用される程度の用語「~(する)ステップ」又は「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味するものではない。
【0030】
本願の明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ(たち)」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味するものであり、前記構成要素からなる群より選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0031】
本願の明細書全体において、「A及び/又はB」の記載は、「A又はB、あるいはA及びB」を意味する。
【0032】
以下では、本願の具現例を詳しく説明するが、本願がこれに限定されるものではない。
【0033】
本願の第1の側面は、下記化学式1で表されるエポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び下記化学式2で表されるエポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体の開環メタセシス重合により生成されるか、又は前記エポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び前記エポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体と下記化学式3で表されるノルボルネン単量体との開環メタセシス重合により生成される、環状オレフィン重合体であって、下記化学式4、化学式5、化学式6、化学式7、化学式8又は化学式9で表される繰り返し単位を含む、環状オレフィン重合体を提供する。
【化25】
【化26】
【化27】
【化28】
【化29】
【化30】
【化31】
【化32】
【化33】
前記化学式3、化学式4、化学式5、化学式6、化学式7、化学式8及び化学式9において、
nは、5~5,000の整数であり、
mは、5~5,000の整数であり、
lは、5~5,000の整数であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基、エステル基(-COOR)、あるいはアミド基(-CONHR)より選択されるものであり、
は、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基である。
【0034】
本願の一具現例において、前記環状オレフィン重合体は、前記エポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び前記化学式2で表されるエポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体の開環メタセシス重合により生成される環状オレフィン重合体であるか、又は前記エポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び前記エポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体と前記化学式3で表されるノルボルネン単量体との開環メタセシス重合により生成される、環状オレフィン共重合体を含んでいても良い。
【0035】
本願の一具現例において、前記炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基は、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、又は1~5個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基、及びこれらの全ての可能な異性質体を含む。例えば、前記アルキル又はアルキル基は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(Pr)、iso-プロピル基(Pr)、n-ブチル基(Bu)、iso-ブチル基(Bu)、tert-ブチル基(tert-Bu、Bu)、sec-ブチル基(sec-Bu、secBu)、n-ペンチル基(Pe)、iso-ペンチル基(isoPe)、sec-ペンチル基(secPe)、tert-ペンチル基(Pe)、neo-ペンチル基(neoPe)、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、4,4-ジメチルペンチル基、オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びこれらの異性質体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0036】
本願の一具現例において、前記環状オレフィン重合体の多分散指数は、約1~約1.3であっても良い。本願の一具現例において、前記環状オレフィン重合体の多分散指数は、約1~約1.2、約1~約1.1、約1.1~約1.3、約1.1~約1.2、又は約1.2~約1.3であっても良い。
【0037】
本願の第2の側面は、第1の側面に係る環状オレフィン重合体を水素化反応させることで生成され、下記化学式10、化学式11、化学式12、化学式13、化学式14又は化学式15で表される繰り返し単位を含む、水素化された環状オレフィン重合体を提供する。
【化34】
【化35】
【化36】
【化37】
【化38】
【化39】
前記化学式10、化学式11、化学式12、化学式13、化学式14及び化学式15において、
nは、5~5,000の整数であり、
mは、5~5,000の整数であり、
lは、5~5,000の整数であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基、エステル基(-COOR)、あるいはアミド基(-CONHR)より選択されるものであり、
は、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基である。
【0038】
本願の第1の側面と重複する部分については詳細な説明を省略しているが、本願の第1の側面について説明した内容は、本願の第2の側面においてその説明が省略されているとしても同様に適用され得る。
【0039】
本願の一具現例において、前記炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基は、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、又は1~5個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基、及びこれらの全ての可能な異性質体を含む。例えば、前記アルキル又はアルキル基は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(Pr)、iso-プロピル基(Pr)、n-ブチル基(Bu)、iso-ブチル基(Bu)、tert-ブチル基(tert-Bu、Bu)、sec-ブチル基(sec-Bu、secBu)、n-ペンチル基(Pe)、iso-ペンチル基(isoPe)、sec-ペンチル基(secPe)、tert-ペンチル基(Pe)、neo-ペンチル基(neoPe)、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、4,4-ジメチルペンチル基、オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びこれらの異性質体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0040】
本願の一具現例において、前記水素化された環状オレフィン重合体は、光学的等方性フィルムの製造に使用されても良いが、これに限定されるものではない。
【0041】
本願の一具現例において、前記水素化された環状オレフィン重合体は、小さいサイズの極性官能基であるエポキシ官能基が導入され、鎖-鎖相互作用が強くなっても良い。
【0042】
本願の一具現例において、前記フィルムは、約150℃以上、又は約160℃以上のガラス転移温度を有しても良いが、これに限定されるものではない。
【0043】
本願の一具現例において、水素化された環状オレフィン重合体は、塩素系溶媒(chlorinated solvents)における溶解度が高いので、溶液キャスティング法で高分子フィルムを容易に得ることができる。
【0044】
本願の一具現例において、前記フィルムは、可視光線領域で約80%以上、約83%以上、又は約85%以上の透過度を有しても良いが、これに限定されるものではない。
【0045】
本願の一具現例において、水素化された環状オレフィン重合体は、光学、パッケージング、電子製品、医療機器又は微細流体装置を含む広範囲な応用分野において活用されても良いが、これに限定されるものではない。
【0046】
本願の一具現例において、水素化された環状オレフィン系重合体は、低い複屈折率、高透明性、高い熱安定性及び耐化学性を保有しても良い。
【0047】
本願の第3の側面は、(a)下記化学式1で表されるエポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び下記化学式2で表されるエポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体;又は前記エポキシ基を有するジシクロペンタジエン及び前記エポキシ基を有するトリシクロペンタジエンより選択される1つ以上の単量体と下記化学式3で表されるノルボルネン単量体;を第1世代グラブス触媒の存在下で重合反応させることで環状オレフィン重合体を得ることと、(b)前記環状オレフィン重合体を水素化反応させることで下記化学式10、化学式11、化学式12、化学式13、化学式14又は化学式15で表される繰り返し単位を含む水素化された環状オレフィン重合体を得ることとを含む、水素化された環状オレフィン重合体の製造方法を提供する。
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【化44】
【化45】
【化46】
【化47】
【化48】
前記化学式3、化学式10、化学式11、化学式12、化学式13、化学式14及び化学式15において、
nは、5~5,000の整数であり、
mは、5~5,000の整数であり、
lは、5~5,000の整数であり、
及びRは、それぞれ独立に、水素、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基、エステル基(-COOR)、あるいはアミド基(-CONHR)より選択されるものであり、
は、炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基である。
【0048】
本願の第1の側面及び第2の側面と重複する部分については詳細な説明を省略しているが、本願の第1の側面及び第2の側面について説明した内容は、本願の第3の側面においてその説明が省略されているとしても同様に適用され得る。
【0049】
本願の一具現例において、前記炭素数1~20の線状又は分枝状のアルキル基は、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、又は1~5個の炭素原子を有する線状又は分枝状のアルキル基、及びこれらの全ての可能な異性質体を含む。例えば、前記アルキル又はアルキル基は、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(Pr)、iso-プロピル基(Pr)、n-ブチル基(Bu)、iso-ブチル基(Bu)、tert-ブチル基(tert-Bu、Bu)、sec-ブチル基(sec-Bu、secBu)、n-ペンチル基(Pe)、iso-ペンチル基(isoPe)、sec-ペンチル基(secPe)、tert-ペンチル基(Pe)、neo-ペンチル基(neoPe)、3-ペンチル基、n-ヘキシル基、iso-ヘキシル基、ヘプチル基、4,4-ジメチルペンチル基、オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、及びこれらの異性質体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
本願の一具現例において、前記(b)は、Pd/C触媒の存在下で行われても良いが、これに限定されるものではない。
【0051】
本願の一具現例において、前記水素化された環状オレフィン重合体の製造に使用された触媒は、エポキシ官能基と反応性がないので、重合及び水素化段階で副反応が起こらなくても良い。
【0052】
本願の一具現例において、ノルボルネン単量体が含まれた水素化された環状オレフィン重合体は、引張強度、弾性、又は接着力などの物性が向上されたものであっても良い。
【0053】
以下、本願について実施例を参照しながらより具体的に説明するが、下記実施例は本願の理解を助けるために例示するだけであり、本願の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0054】
1.実験の設計
下記の実験は、エポキシ官能基が導入された単量体の合成及び開環メタセシス重合により、150℃以上のガラス転移温度、高温耐久性及び高透過率を有する環状オレフィン系高分子を製造するために行われたものであり、NMRを通じて各重合段階で残存する官能基を確認した。
【0055】
2.実験
2.1.エポキシ官能基が導入されたジシクロペンタジエンの合成
エポキシ官能基が導入されたジシクロペンタジエンは、下記反応式1による方法で合成した。
【0056】
【化49】
【0057】
ジシクロペンタジエン(dicyclopentadien;DCPD)6.78g(51.3mmol)を1Lの一口丸底フラスコに入れ、無水ジクロロメタン(dichloromethane;CHCl)50mLを入れてから溶解させた。同種の溶媒である無水ジクロロメタン100mLに11.4g(50.9mmol)のメタクロロ過安息香酸(meta-chloroperoxybenzoic acid;CCLO)を溶解させた後、該溶液を3回に分けて丸底フラスコに徐々に入れた。前記丸底フラスコの溶液を常温及び大気条件において3時間撹拌することにより生成された白色の懸濁液をセライト(celite)を介してフィルタリングした。濾液を10wt%の炭酸水素ナトリウム(NaHCO)水溶液で連続して抽出し、無水硫酸マグネシウム(MgSO)で乾燥した後、真空で濃縮させた。エチルアセテート(ethyl acetate)-ヘキサン(hexane)(エチルアセテートの体積:ヘキサンの体積=1:9)を溶離液に使用したシリカゲルカラムクロマトグラフィにより残留物を精製することで、白色の固体2.35gが得られた。
【0058】
合成効率を上げるために、エポキシ官能基が導入されたジシクロペンタジエン単量体の合成段階である反応式1により得られる2つの単量体化合物1及び化合物2は、各々を分離する前処理をしなくても単量体化合物1に対する重合が可能である。このとき、NMRスペクトルを通じて混合物内の2つの単量体の割合を確認して重合を進行すれば、同一な高分子が得られる。
【0059】
図1を参照すると、エポキシ官能基が導入されたジシクロペンタジエンの残存する官能基を確認するために、H NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルの分析を行った。
【0060】
H NMR(400MHz、CDCl、ppm):δ6.10(dd、J=8.7、2.9Hz、2H、C=C-)、3.33(t、J=2.5Hz、1H、C)、3.17(d、J=2.5Hz、1H、C)、2.93(td、J=3.0、1.5Hz、1H、C)、2.82(m、2H、C )、2.55(tt、J=8.1、3.9Hz、1H、C)、1.91(dd、J=14.9、9.0Hz、1H、C)、1.51(dt、J=8.3、1.9Hz、1H、C)、1.39-1.31(m、2H、C )。13C NMR(101MHz、CDCl、ppm):δ135.19(s、)、135.04(s、)、62.03(s、-O)、60.92(s、-O)、52.15(s、H)、51.15(s、H)、46.59(s、)、44.79(s、H)、44.08(s、H)、31.22(s、)。Anal.Calcd.for C1012O:C、81.04;H、8.16。Found:C、81.22;H、8.20。
【0061】
2.2.エポキシ官能基が導入された環状オレフィン系高分子の合成
エポキシ官能基が導入された環状オレフィン系高分子の合成は、下記反応式2による方法で合成した。
【0062】
【化50】
【0063】
4mLのバイアルに第1世代グラブス触媒(Grubbs catalyst、G1;[(PCy(Cl)Ru=CHPh])(5.1mg、6.0μmol)をジクロロメタン1.0mLに溶かした。エポキシ官能基が導入されたジシクロペンタジエン180mg(1.2mmol)をジクロロメタン2.0mLに溶かした後、溶かした溶液を室温及び窒素条件下においてバイアルに注射器で速かに添加した。30分後、反応混合物に0.5mLのエチルビニルエーテルを入れて反応を終結させた。前記溶液を15分間撹拌し、メタノールで沈殿させた後、沈殿物を収集して乾燥することにより、白色の固体が得られた。
【0064】
図2を参照すると、前記反応式2においてpoly(1)で表される環状オレフィン系高分子の残存する官能基を確認するために、H NMRスペクトル及び13C NMRスペクトルの分析を行った。
【0065】
H NMR(400MHz、CDCl、ppm):δ5.53-5.29(br、2H)、3.55-3.42(br、1H)、3.40-3.27(br、1H)、3.10-2.51(br、3H)、2.47-2.30(br、1H)、2.02-1.84(br、1H)、1.80-1.64(br、1H)、1.52-1.21(br、2H)。13C NMR(101MHz、CDCl、ppm):δ131.48、130.56、59.70、59.52、48.77、44.83、44.73、44.61、44.47、43.11、42.92、36.44、29.89。Anal.Calcd.for C1012O:C、81.04;H、8.16。Found:C、79.89;H、8.21。
【0066】
2.3.エポキシ官能基が導入された環状オレフィン系高分子の水素化
エポキシ官能基が導入された環状オレフィン系高分子の水素化は、下記反応式3による方法で合成した。
【0067】
【化51】
【0068】
前記2.2の段階で得られた環状オレフィン系高分子160mgを25mLの無水ジクロロメタンに溶解させた。前記溶液を高圧反応器(autoclave)に移した後、10wt%のPd/C(40.0mg)を添加した。35barの水素圧力下において、混合溶液を65℃で24時間激しく撹拌し、室温に冷却した後、混合物を濾過により分離し、減圧下において濃縮した。濃縮された混合溶液をメタノールに注いだ後、生成された沈殿物を収集して乾燥することにより、白色の固体が得られた。
【0069】
図3及び図4を参照すると、前記反応式3においてH-poly(1)で表される環状オレフィン系高分子の残存する官能基を確認するために、H NMRスペクトル、13C NMRスペクトル及びH-13C HSQC NMRスペクトルの分析を行った。
【0070】
H NMR(400MHz、CDCl、ppm):δ3.54-3.45(br、1H)、3.39-3.30(br、1H)、2.77-2.66(br、1H)、2.35-2.24(br、1H)、1.99-1.85(br、2H)、1.83-1.71(br、2H)、1.50-1.11(br、5H)、0.92-0.72(br、1H)。13C NMR(101MHz、CDCl、ppm):δ59.68、59.14、47.03、43.30、43.15、42.23、40.12、39.89、37.66、31.89、29.94、29.58、28.45。Anal.Calcd.for C1014O:C、79.96;H、9.39。Found:C、78.10;H、9.29。
【0071】
2.4.エポキシ官能化高分子を含む透明高分子フィルムの合成
前記2.3の段階で得られた環状オレフィン系高分子をスクリューキャップを含むバイアルに入れてテトラクロロエタンを添加した後、混合物を50℃に加熱し、完全に溶けるまで撹拌して溶解させた。前記環状オレフィン系高分子が完全に溶解した後、室温に冷却させることにより得られた透明な溶液を注射器フィルタを介してテフロン(登録商標)皿の上に注いだ後、全ての揮発性物質を室温で蒸発させることでフィルムを製造した。製造されたフィルムは、24時間60℃の真空オーブンでさらに乾燥させた。得られたフィルムの厚さは、ミツトヨIP65クーラントプルーフマイクロメータ(Mitutoyo IP65 Coolant Proof Micrometer)を使用して測定した。
【0072】
図5を参照すると、前記2.4の段階で製造された透明高分子フィルムを確認することができる。
【0073】
3.特性の評価
3.1.エポキシ化していない重合体の特性
既存に公開された関連文献『New catalysts for linear polydicyclopentadiene synthesis(M.J.Abadie、M.Dimonie、Christine Couve、V.Dragutanc)』によると、線形ポリジシクロペンタジエン(linear polydicyclopentadiene;LPDCPD)のガラス転移温度は53℃である。下記表1は、25℃でタングステン触媒を使用して実施した、ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene;DCPD)の開環重合反応による重合体の関連データである。
【0074】
【表1】
【0075】
前記表1において、Allは、アリル基を意味し、上付き文字aは、重合完了後に直ちに非活性化されたことを意味し、上付き文字bは、重合完了してから20時間後に非活性化されたことを意味する。
【0076】
また他の既存に公開された関連文献である『Preparation and characterization of cycloolefin polymer based on dicyclopentadiene(DCPD) and dimethanooctahydronaphthalene(DMON)(Vania Tanda Widyaya、Huyen Thanh Vo、Robertus Dhimas Dhewangga Putra、Woon Sung Hwang、Byoung Sung Ahn、Hyunjoo Lee)』は、下記反応式4によって製造されるシクロオレフィンポリマー(cycloolefin polymer;COP)の特性を示している。
【0077】
【化52】
【0078】
シクロオレフィンポリマー(cycloolefin polymer;COP)は、シクロオレフィン及びエチレンが周期的に繰り返される構造を有するので、シクロオレフィンの構造は、シクロオレフィンポリマーのガラス転移温度を決定する。ジシクロペンタジエン(dicyclopentadiene;DCPD)を重合して製造したシクロオレフィンポリマーは、100℃の低いガラス転移温度を示す。ジシクロペンタジエンの5員環の二重結合は開環重合に不活性であるが、非常に高温の環境では付加的な重合が可能である。
【0079】
前記反応式4において表されるDMON(1,4,5,8-dimethano-1,2,3,4,4a,5,8,8a-octahydronaphthalene)は、シクロペンタジエン及びノルボルネン(nobornene)のディールス-アルダー(Diels-Alder)反応によって容易に製造可能である。水素化されたシクロオレフィンポリマー(H-p-DCPD、H-p-DCPD0.75-DMON0.25、H-p-DCPD0.5-DMON0.5、及びH-p-DMON)は、2.4~2.8の多分散性指数(polydispersity index;PDI)を示す。
【0080】
3.2.本発明に係るエポキシ化重合体の特性
下記表2は、本発明に係る前記反応式3のpoly(1)及びH-poly(1)に対する特性評価の結果値を示す表である。
【0081】
【表2】
【0082】
3.3.多分散性指数(polydispersity index;PDI)
前記反応式2で得られるpoly(1)のPDIを測定した。
【0083】
3.4.熱重量の分析
前記poly(1)及び前記H-poly(1)の熱安定性を確認するために、窒素条件において熱重量分析器を使用して5℃/分に温度を増加させながら、前記poly(1)及びH-poly(1)の重量がそれぞれ5%減少した際の温度をそれぞれ測定した。
【0084】
図6を参照しながら説明すると、前記poly(1)は実線で、前記H-poly(1)は点線で表した。
【0085】
3.5.示差走査熱量の分析
前記poly(1)及び前記 H-poly(1)のガラス転移温度を測定するために、窒素条件において示差走査熱量計(differential scanning calorimetry)で分析を実施した。
【0086】
図7を参照しながら説明すると、前記poly(1)のガラス転移温度は204℃であって、実線で表しており、前記H-poly(1)のガラス転移温度は167℃であって、点線で表している。
【0087】
3.6.赤外線分光法
図8を参照すると、前記H-poly(1)を赤外線分光法で分析した。
【0088】
3.7.紫外線-可視光線領域の透過度
前記H-poly(1)の紫外線-可視光線領域の透過度を分析した。
【0089】
図9を参照しながら説明すると、前記H-poly(1)は、400nmの波長で82%の透過率、及び550nmの波長で88%の透過率を示した。
【0090】
4.結果
上記した実験で生成された前記H-poly(1)は、167℃のガラス転移温度、及び400nmの波長で82%の透過率及び550nmの波長で88%の透過率を示すことによって、前記H-poly(1)は高温耐久性及び高透過率を有するフィルムとして活用され得ることが確認された。
【0091】
上述した本願の説明は例示のためのものであり、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本願の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるはずである。それゆえ、上記した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されても良く、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されても良い。
【0092】
本願の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本願の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8
図9