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特許7559232フェノチアジン化合物、その調製、並びに老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、及び着色剤としてのゴムブレンド及び車両タイヤへの使用
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  • 特許-フェノチアジン化合物、その調製、並びに老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、及び着色剤としてのゴムブレンド及び車両タイヤへの使用 図1a
  • 特許-フェノチアジン化合物、その調製、並びに老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、及び着色剤としてのゴムブレンド及び車両タイヤへの使用 図1b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】フェノチアジン化合物、その調製、並びに老化防止剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、及び着色剤としてのゴムブレンド及び車両タイヤへの使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 279/20 20060101AFI20240924BHJP
   C08K 5/46 20060101ALI20240924BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240924BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20240924BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
C07D279/20 CSP
C08K5/46
C08L21/00
C08L9/00
B60C1/00 A
B60C1/00 B
B60C1/00 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023519834
(86)(22)【出願日】2021-09-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-24
(86)【国際出願番号】 DE2021200131
(87)【国際公開番号】W WO2022069001
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】102020212508.2
(32)【優先日】2020-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1,30175 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】レッカー・カルラ
(72)【発明者】
【氏名】ヤーコプ・アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ダウアー・ダーヴィット-ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】シュトローマイアー・ユリアン
(72)【発明者】
【氏名】ドライアー・アンナ-レーナ
(72)【発明者】
【氏名】ベッカー・イェルク-アウグスト
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・フローリアーン
(72)【発明者】
【氏名】グラーフ・レベッカ
(72)【発明者】
【氏名】フロールマン・ヤン
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107935867(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108069874(CN,A)
【文献】特開平10-168038(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0157714(US,A1)
【文献】国際公開第2013/132290(WO,A2)
【文献】米国特許第03413291(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 279/20
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式I):
【化1】
の化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の式I)の化合物を含むゴム混合物。
【請求項3】
少なくとも1種のジエンゴムを含むことを特徴とする、請求項2に記載のゴム混合物。
【請求項4】
天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)、及びハロブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種のジエンゴムを含むことを特徴とする、請求項3に記載のゴム混合物。
【請求項5】
少なくとも1つの構成要素中に請求項2~4のいずれか一項に記載のゴム混合物を含む車両タイヤ。
【請求項6】
少なくとも1つの外部構成要素に請求項2~4のいずれか一項に記載の少なくとも1種のゴム混合物を含む、請求項5に記載の車両タイヤ。
【請求項7】
以下のプロセス工程:
a)式A)の物質
【化2】
を準備する工程;
b)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素(H)を準備する工程;
c)工程a)による前記物質を工程b)による前記物質と反応させて、式I)の物質
【化3】
を得る工程;
を少なくとも含む、請求項1に記載の式I)の化合物の製造方法。
【請求項8】
以下のプロセス工程:
a1)式A)の物質
【化4】
を準備する工程;
b1)還元剤を準備する工程;
c1)工程a1)による前記物質を工程b1)からの前記物質と反応させて式C1)の物質
【化5】
を得る工程;
d1)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素(H)を準備する工程;
e1)式C1)の前記物質を工程d1)による前記物質と反応させて、式I)の物質
【化6】
を得る工程;
を少なくとも含む、請求項1に記載の式I)の化合物の製造方法。
【請求項9】
以下のプロセス工程:
a2)式A2)の物質:
【化7】
を準備する工程;
b2)単体硫黄及びo-ジクロロベンゼン(オルトジクロロベンゼン)を準備する工程;c2)工程a2)による前記物質を工程b2)による前記物質と反応させて、式I)の物質
【化8】
を得る工程;
を少なくとも含む、請求項1に記載の式I)の化合物の製造方法。
【請求項10】
両タイヤ及び/又は工業用ゴム物品及び/または油及び/又は潤滑剤における、老化防止剤及び/又はオゾン劣化防止剤としての、請求項1に記載の式I)の化合物の使用。
【請求項11】
ンジン用の燃料又は流体における、老化防止剤及び/又はオゾン劣化防止剤としての、請求項1に記載の式I)の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化合物、該化合物を含むゴム混合物、少なくとも1つの成分中に該ゴム混合物を含む車両タイヤ、該化合物の製造方法、並びに老化防止剤及び/又は酸化防止剤及び/又はオゾン劣化防止剤及び/又は色素としての該化合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
車両タイヤ及び工業用ゴム物品は、特にゴムなどの高分子材料を使用することが知られている。
【0003】
長期保存の場合、特に高温であることが多い目的用途では、天然ゴム及び合成ポリマー(IR、BR、SBR、ESBRなど)のみならず、天然及び合成の油、脂肪、及び潤滑剤も、元の望ましい特性に悪影響を及ぼす酸化反応を受ける。ポリマーのタイプによっては、ポリマー鎖は、材料の液化又はその後の材料の硬化が起こるほどに短くなる。
【0004】
したがって、老化防止剤は、車両タイヤ及び他の工業用ゴム物品の耐久性において決定的な役割を果たす。
【0005】
公知の老化防止剤は、芳香族アミン、例えば6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)、IPPD(N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)、又はSPPD(N-(1-フェニルエチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)である。
【0006】
これらの分子は、酸素又はオゾン又は形成されたフリーラジカル、例えばアルキル及びアルキルペルオキシラジカルと反応することができ、その結果これらを捕捉し、それによりゴムなどをさらなる酸化反応から保護することができる。
【0007】
しかしながら、芳香族アミンは、特にアニリン又はその誘導体が遊離する可能性があるため、発がん性が疑われており、そのため健康に有害であるという欠点を有している。
【0008】
さらに、保護すべき媒体中の老化防止剤の溶解度を考慮しなければならない。IPPDなどの老化防止剤は、場合によってはゴムへの溶解性が低く、そのため表面に移行し、そこで通常は色付きである膜を形成するという欠点を有している。この作用は「ブルーミング」として知られており、老化防止剤は、それぞれのゴムから抜け出てブルーミングを起こす。外観に加えて、このことは、ブルーミングを起こした老化防止剤が例えば雨によって除去され、その結果、分子がさらに移行することによって膜が再形成され、保護すべき媒体中の老化防止剤の濃度が継続的に低下するという欠点も有している。この結果、ブルーミング及び老化防止剤の損失がない場合と比較して、保護効果が低下する。
【0009】
特にオゾンと反応し、それを捕捉する老化防止剤は、「オゾン劣化防止剤」とも呼ばれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、先行技術に基づくこれらの物品に対する改善された保護効果を達成するために、車両タイヤ又は他の工業用ゴム物品の老化防止剤として特に使用可能な化合物を提供することである。特に、ブルーミング挙動が改善される必要があり、それと同時に、先行技術(芳香族アミン)と比較して健康への害が少ない化合物が提供される必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、請求項1に記載の本発明の化合物、該化合物を含む本発明のゴム混合物、及び少なくとも1つの成分中に本発明のゴム混合物を含む本発明の車両タイヤによって達成される。この目的は、さらに、該化合物の製造方法、並びに老化防止剤及び/又は酸化防止剤及び/又はオゾン劣化防止剤を有する該化合物の使用によって達成される。
【0012】
請求項1に記載の化合物は、さらに染料として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1a】値が関連する開裂機構を示している。
図1b】値が関連する開裂機構を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
請求項1に記載の化合物は、式I):
【化1】
を有する。
【0015】
したがって、式I)の化合物は、3-(1,3-ジメチルブチルアミノ)フェノチアジンである。
【0016】
式I)の化合物はフェノチアジン誘導体である。フェノチアジン/その誘導体は、とりわけ、例えばパーキンソン病の治療のための医薬品として使用されており(米国特許出願公開第20130315825A1号明細書を参照のこと)、6PPD又はIPPDなどの芳香族アミンと比較して健康への害が少ない。
【0017】
しかしながら、フェノチアジン自体は、車両タイヤのゴム又は他の工業用ゴム物品などのポリマーに容易に溶解しないため、上述したブルーミングの問題が生じる。したがって、本発明による化合物は、フェノチアジンと比較してより優れた保護効果という利点を有する。
【0018】
同時に、式I)の本発明による化合物は、特に6PPDなどの公知の老化防止剤と比較して改善された保護効果を示し、これは、例えばフリーラジカルに対する高い反応性に起因すると考えられる。ただし、本発明は特定の作用機構又は特定の説明に拘束されるものではない。
【0019】
米国特許第3413291号明細書は、フェノチアジン誘導体を開示している。しかしながら、そこに開示されている誘導体も同様に、例えばN-イソプロピル-10H-フェノチアジン-3-アミンなどゴムに容易に溶解しないものである。したがって、式I)の本発明の化合物は、1,3-ジメチルブチル基のため、公知のフェノチアジン誘導体と比較して、ゴムなどのポリマーへのより優れた溶解性、ひいては改善された保護効果を示す。
【0020】
中国特許第108069874号明細書も同様に、フェノチアジン誘導体に基づく老化防止剤を開示している。しかしながら、そこに開示されている誘導体は、置換基のため、例えば式S1)に示されるように同時に部位RC=NR’(R’はH、水素ではない)を有するシッフ塩基である。
【化2】
【0021】
これらの物質は、S2)に示すようなフェニル-N基の近傍のsp混成のα-H原子(α-水素原子)が存在しないため、加水分解を受けやすく、保護効果が低いと推定される。
【化3】
【0022】
したがって、式S1)の化合物などのそのようなシッフ塩基フェノチアジン誘導体と比較して、式I)の本発明の化合物は、より安定であり、加水分解を受けにくく、より優れた保護効果を可能にするという利点を有する。
【0023】
中国特許第106590827号明細書は、式S3):
【化4】
のフェノチアジン誘導体を開示している。
【0024】
しかしながら、式S3)の化合物は、-S-CH-NH-部位が、例えば車両タイヤ用のゴム混合物において、加水分解を受けやすいことに起因してチオールを形成/遊離する可能性があり、これによりゴム混合物の望ましくないプレ架橋(スコーチ)が引き起こされる可能性があるという欠点を有している。
【0025】
中国特許第105272892号明細書は、フェノール誘導体がチオアセテート及びアミドである連結基を介してフェノチアジン単位と結合している式S4)で示される老化防止剤を開示している。チオアセテートはキャップされたメルカプタンであり、これは加硫中に分解して例えばジエン含有ゴムと結合する可能性があることから、これらの連結基単位も加硫されるゴム混合物に使用するためには有利ではない。さらに、アミド部位はα-H原子はなく、このことは、式S1)に関して上述したように老化防止剤の効果を低下させる。
【化5】
【0026】
中国特許第107935867号明細書は、遊離アミン基(-NH)を示す式S5)で示される老化防止剤を開示している。これは、例えば車両タイヤ又はその他の工業用ゴム物品のゴム混合物では「スコーチング」とも呼ばれる早期架橋のリスクを増加させる。
【化6】
【0027】
式I)の本発明の化合物は、車両タイヤ及び/又は工業用ゴム物品、例えば特に空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、膜、医療用途若しくはロボット用途の触覚センサー、又は靴底若しくはその部品、及び/又は油及び/又は潤滑剤などにおける老化防止剤及び/又はオゾン劣化防止剤として特に適している。
【0028】
式I)の本発明の化合物は、ゴム物品、特に空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、膜、医療用途若しくはロボット用途の触覚センサー、又は靴底若しくはその部品の製造に特に適している。
【0029】
列挙した物品又は物質において式I)による化合物を使用するためには、前記化合物は組成物で使用され、前記組成物に配合されて使用される。
【0030】
車両タイヤ又は他の工業用ゴム物品では、これは特にゴム混合物である。
【0031】
本発明は、さらに、特にエンジン用の燃料又は流体などの油及び潤滑剤における式I)の本発明による化合物の使用を提供する。したがって、本発明による化合物は、エンジンにおいて使用することができる。
【0032】
本発明は、さらに、繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は塗料及びコーティングにおける染料としての式I)による本発明の化合物の使用を提供する。
【0033】
したがって、本発明は、上述したゴム混合物をさらに提供する。
【0034】
本発明によるゴム混合物は、式I)の化合物を含有する。本発明によるゴム混合物は、原則として、式I)の新規な本発明の化合物が改善された特性、特に老化防止及び/又はオゾン分解防止効果による耐久性の向上を実現する、任意のゴム混合物であってよい。
【0035】
本発明のゴム混合物は、少なくとも1種のゴムを含有する。
【0036】
本発明によるゴム混合物が式I)の化合物を0.1~10phr、特に好ましくは0.1~5phr、非常に好ましくは1~5phr含有する場合が好ましい。
【0037】
本明細書で用いられる「phr」(重量でゴム100部当たりの部)という単位は、ゴム業界における混合物レシピに関する量の慣例表示である。個々の物質の重量部の配合量は、本明細書では、混合物中に存在する全ての高分子量(20,000g/mol超のMw)、したがって固体であるゴムの総質量の100重量部を基準とする。
【0038】
本発明の有利な実施形態では、本発明によるゴム混合物は少なくとも1種のジエンゴムを含有する。
【0039】
したがって、ゴム混合物は、ジエンゴム又は2種以上の異なるジエンゴムの混合物を含み得る。
【0040】
ジエンゴムは、ジエン及び/又はシクロアルケンの重合又は共重合によって形成され、したがって主鎖中又は側基中のいずれかにC=C二重結合を有するゴムである。
【0041】
ジエンゴムは、好ましくは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、エポキシ化ポリイソプレン(ENR)、ブタジエンゴム(BR)、ブタジエン-イソプレンゴム、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、スチレン-イソプレンゴム、分子量Mが20,000g/molを超える液状ゴム、ハロブチルゴム、ポリノルボルネン、イソプレン-イソブチレンコポリマー、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、ニトリルゴム、クロロプレンゴム、アクリレートゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリスルフィドゴム、エピクロルヒドリンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンターポリマー、水添アクリロニトリルブタジエンゴム、及び水添スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される。
【0042】
ニトリルゴム、水添アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロブチルゴム、及び/又はエチレン-プロピレン-ジエンゴムは、特に、ベルト、駆動ベルト、及びホースなどの工業用ゴム物品並びに/又は靴底の製造に使用されている。これらのゴムのための当業者に公知の混合組成物(具体的には充填剤、可塑剤、加硫系及び添加剤と呼ばれる)を採用することが好ましい。
【0043】
全ての実施形態における天然及び/又は合成のポリイソプレンは、cis-1,4-ポリイソプレン又は3,4-ポリイソプレンのいずれかであり得る。しかしながら、90重量%を超えるcis-1,4比率を有するcis-1,4-ポリイソプレンを使用することが好ましい。そのようなポリイソプレンは、第一に、Ziegler-Natta触媒を用いて溶液中で立体特異性重合させるか、又は微細に分散させたリチウムアルキルを使用することによって得ることができる。第二に、天然ゴム(NR)は、そのようなcis-1,4-ポリイソプレンの1つであり、天然ゴム中のcis-1,4含量は、99重量%よりも高い。
【0044】
さらに、1つ以上の天然ポリイソプレンと1つ以上の合成ポリイソプレンとの混合物も考えられる。
【0045】
本発明との関係において、「天然ゴム」という用語は、パラゴムノキ及び「パラゴムノキではない」供給源から得ることができる天然に存在するゴムを意味すると理解されるべきである。パラゴムノキではない供給源としては、例えばグアユール灌木及びタンポポ、例えばTKS(タラクサカム・コクサギーズ(Taraxacum kok-saghyz);ロシアタンポポ)が挙げられる。
【0046】
本発明のゴム混合物がブタジエンゴム(すなわちBR、ポリブタジエン)を含有する場合、これは、当業者に公知の任意のタイプであってよい。これらには、いわゆる高cis及び低cisタイプが含まれ、ここで、90重量%以上のcis含量を有するポリブタジエンは高cisタイプと呼ばれ、90重量%未満のcis含量を有するポリブタジエンは低cisタイプと呼ばれる。低cisポリブタジエンの一例は、20重量%~50重量%のcis含量を有するLi-BR(リチウム触媒によるブタジエンゴム)である。ゴム混合物の特に優れた特性及び低ヒステリシスは、高cisBRを用いて達成される。
【0047】
採用されるポリブタジエンは、変性及び官能化を用いて末端基変性され得、且つ/又はポリマー鎖に沿って官能化され得る。その変性は、ヒドロキシル基、及び/又はエトキシ基、及び/又はエポキシ基、及び/又はシロキサン基、及び/又はアミノ基、及び/又はアミノシロキサン、及び/又はカルボキシル基、及び/又はフタロシアニン基、及び/又はシラン-スルフィド基を用いた変性から選択される。しかしながら、官能化剤としても知られる、当業者に公知の他の変性も好適である。金属原子は、そのような官能化の成分であり得る。
【0048】
ゴム混合物中に少なくとも1種のスチレン-ブタジエンゴム(スチレン-ブタジエンコポリマー)が存在する場合、これは溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)又は乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)のいずれかであってもよく、少なくとも1種のSSBRと少なくとも1種のESBRとの混合物も使用可能である。用語「スチレン-ブタジエンゴム」及び「スチレン-ブタジエンコポリマー」は、本発明との関連では同義語として用いられる。
【0049】
使用されるスチレン-ブタジエンコポリマーは、先にポリブタジエンについて引用した変性及び官能化を用いて末端基変性され、且つ/又はポリマー鎖に沿って官能化され得る。
【0050】
少なくとも1種のジエンゴムは、好ましくは、天然ポリイソプレン(NR、天然ゴム)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)、及びハロブチルゴムからなる群から選択される。
【0051】
本発明の特に好ましい実施形態では、少なくとも1種のジエンゴムは、天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、及び乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)からなる群から選択される。
【0052】
本発明の特に有利な実施形態では、ゴム混合物は、少なくとも1種の天然ポリイソプレン(NR)を、好ましくは5~55phrの量で、本発明の特に有利な一実施形態では5~25phr、非常に好ましくは5~20phrで含む。そのようなゴム混合物は、良好な加工性及び復元安定性、並びに最適化された引裂き特性及び最適な転がり抵抗特性を示す。
【0053】
本発明の特に有利な実施形態では、ゴム混合物は、少なくとも1種のポリブタジエン(BR、ブタジエンゴム)を、好ましくは10~80phr、特に好ましくは10~50phr、本発明の特に有利な実施形態では15~40phrの量で含む。これにより、本発明によるゴム混合物の特に良好な引裂き特性及び摩耗特性、並びに最適な制動特性が達成される。
【0054】
本発明の特に有利な実施形態では、ゴム混合物は、好ましくは10~80phr、特に好ましくは30~80phr、本発明の特に有利な一実施形態では50~70phrの量の、少なくとも1種の溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)を含む。これにより、本発明によるゴム混合物の特に良好な転がり抵抗特性が達成される。本発明の特に有利な実施形態では、SSBRは、特性の最適且つバランスのとれたプロファイルを達成するために、少なくとも1種の追加のゴムとの組み合わせで採用される。
【0055】
ゴム混合物が、好ましくは30~500phr、特に好ましくは50~400phr、次に好ましくは80~300phrの量で、少なくとも1種の充填剤を含むことが好ましい。
【0056】
本発明の有利な実施形態では、充填剤は、好ましくはカーボンブラック及びシリカからなる群から選択される強化充填剤である。
【0057】
本発明の特に有利な実施形態では、ゴム混合物は、充填剤としての少なくとも1種のシリカを、好ましくは30~500phr、特に好ましくは50~400phr、次に好ましくは80~300phrの量で含む。
【0058】
これらの量では、シリカは、唯一の又は主要な充填剤として特に存在する(全充填剤量を基準として50重量%超)。
【0059】
本発明のさらに有利な実施形態では、ゴム混合物は、追加の充填剤としての少なくとも1種のシリカを、好ましくは5~100phr、特に好ましくは5~80phr、次に好ましくは10~60phrの量で含む。
【0060】
これらの量では、シリカは、特にカーボンブラックなどの別の主な充填剤に加えて、さらなる充填剤として特に存在する。
【0061】
シリカは、タイヤゴム混合物のための充填剤として好適である、当業者に公知の各種のタイプのシリカであり得る。しかしながら、35~400m/g、好ましくは35~350m/g、より好ましくは85~320m/g、最も好ましくは120~235m/gの窒素表面積(BET表面積)(DIN ISO 9277及びDIN 66132による)及び30~400m/g、好ましくは30~330m/g、より好ましくは80~300m/g、最も好ましくは115~200m/gのCTAB表面積(ASTM D 3765による)を有する微粉砕された沈降シリカを使用することが特に好ましい。そのようなシリカは、例えば、タイヤトレッドのためのゴム混合物において特に良好な加硫物の物理的性質を与える。混合時間の短縮による混合物加工での利点も、同じ製品特性を保持しながら本明細書で生じ得、改善された生産性につながる。使用されるシリカは、したがって、例えばEvonik製のUltrasil(登録商標)VN3タイプ(商品名)又はHDシリカとして知られる高分散性シリカ(例えば、Solvay製のZeosil(登録商標)1165 MP)のいずれかであり得る。
【0062】
本発明のゴム混合物中において、例えばBET表面積の点で異なる少なくとも2種の異なるシリカが存在する場合、記述した量の数字は、存在する全てのシリカを合計した量を指す。
【0063】
「ケイ酸」及び「シリカ」という用語は、本発明との関連で同義語として用いられる。
【0064】
ゴム混合物は、特にカーボンブラック、特に工業用カーボンブラック若しくは熱分解カーボンブラックなどのさらなる充填剤、又はさらなる補強若しくは非補強性充填剤を追加的に含み得る。
【0065】
本発明に関連して、さらなる(非補強性)充填材としては、アルミノシリケート、カオリン、チョーク、デンプン、酸化マグネシウム、二酸化チタン又はゴムゲル及びまた繊維類(例えば、アラミド繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セルロース繊維)が挙げられる。
【0066】
さらに、任意選択的に補強性である充填材は、例えば、カーボンナノチューブ((CNT)であって、離散CNT、中空炭素繊維(HCF)並びに1つ以上の官能基、例えばヒドロキシ、カルボキシ及びカルボニル基などを含有する変性CNTを含む)、グラファイト及びグラフェン並びに「炭素-シリカ二相充填材」として知られているものである。
【0067】
本発明に関連して、酸化亜鉛は、充填材に含まれない。
【0068】
本発明の特に有利な実施形態では、本発明によるゴム混合物は、0.1~60phr、好ましくは3~40phr、特に好ましくは5~30phr、非常に好ましくは5~15phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含む。これらの量では、カーボンブラックは、特にシリカなどの主な充填剤に加えて、さらなる充填剤として特に存在する。
【0069】
本発明のさらに有利な実施形態では、本発明によるゴム混合物は、30~300phr、好ましくは30~200phr、特に好ましくは40~100phrの少なくとも1種のカーボンブラックを含む。これらの量では、カーボンブラックは唯一の又は主な充填剤として存在し、したがって任意選択的に上述した少量のシリカと組み合わせて存在する。
【0070】
適切なカーボンブラックとしては、当業者によく知られている任意のタイプのカーボンブラックが挙げられる。
【0071】
一実施形態では、カーボンブラックは、30~250g/kg、好ましくは30~180g/kg、特に好ましくは40~180g/kg、非常に好ましくは80~150g/kgの、ASTM D 1510に従ったヨウ素価(ヨウ素吸着量とも呼ばれる)と、30~200mL/100g、好ましくは70~200mL/100g、特に好ましくは90~200mL/100gの、ASTM D 2414に従ったDBP価とを有する。
【0072】
ASTM D 2414に従ったDBP価は、フタル酸ジブチルによるカーボンブラック又は淡色の充填剤の比吸収体積を規定する。
【0073】
ゴム混合物、特に車両タイヤにおいてそのようなタイプのカーボンブラックを使用することにより、摩耗抵抗性と蓄熱性との間で最善の折り合いが付けられ、その結果、エコロジー的に関連のある転がり抵抗性にも好影響が出る。この場合、それぞれのゴム混合物において1つのみのタイプのカーボンブラックを使用することが好ましいが、ゴム混合物中に各種のタイプのカーボンブラックを混ぜ込むことも可能である。
【0074】
本発明の特に有利な実施形態では、ゴム混合物は、5~60phr、特に好ましくは5~40phrの少なくとも1種のカーボンブラックと、50~300phr、好ましくは80~200phrの少なくとも1種のシリカとを含有する。
【0075】
ゴム混合物は、慣用の添加剤を慣用の重量部でさらに含有することができ、それらは、好ましくは、前記混合物の製造中の少なくとも1つの一次混合段階において添加される。これらの添加剤としては、以下が挙げられる:
a)先行技術で公知の老化防止剤、例えば、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)などのジアミン、又は2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)などのジヒドロキノリン、
b)活性化剤、例えば酸化亜鉛及び脂肪酸(例えばステアリン酸)並びに/又は他の活性化剤(亜鉛錯体等、例えばエチルヘキサン酸亜鉛)、
c)充填剤、特にカーボンブラック又はシリカを結合するための活性化剤及び/又は薬剤、例えばS-(3-アミノプロピル)チオ硫酸及び/又はその金属塩(カーボンブラックの結合)及びシランカップリング剤(シリカの結合)、
d)オゾン劣化防止ワックス、
e)樹脂、とりわけ内部タイヤ構成要素のための粘着付与樹脂、
f)素練り助剤、例えば2,2’-ジベンズアミドジフェニルジスルフィド(DBD)、及び
g)加工助剤、例えば特に脂肪酸エステル及び金属石鹸、例えば亜鉛石鹸及び/又はカルシウム石鹸、
h)可塑剤、例えば特に芳香族、ナフテン系又はパラフィン系鉱油可塑剤、例えば方法IP 346に従って3重量%未満の多環式芳香族化合物の含有量を好ましくは有するMES(軽度抽出溶媒和物)、若しくはRAE(残留芳香族抽出物)、若しくはTDAE(処理留出物芳香族抽出物)又はゴム液化(RTL)油若しくはバイオマス液化(BTL)油、或いはトリグリセリド、例えばナタネ油又はファクチス又は炭化水素樹脂又は平均分子量(BS ISO 11344:2004に準拠してGPC=ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定)が500~20,000g/molである液体ポリマー。
【0076】
鉱油を使用する場合、これは、好ましくは、DAE(留出物芳香族抽出物)、及び/又はRAE(残留芳香族抽出物)、及び/又はTDAE(処理留出物芳香族抽出物)、及び/又はMES(軽度抽出溶媒和物)、及び/又はナフテン系油からなる群から選択される。
【0077】
特に有利な実施形態では、本発明によるゴム混合物は、式I)の本発明の化合物に加えて、p-フェニレンジアミンの群(上記リストa)を参照)からのさらなる老化防止剤を含有しない。特に好ましい実施形態では、本発明によるゴム混合物は、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(DPPD)、N,N’-ジトリル-p-フェニレンジアミン(DTPD)、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(IPPD)、N-(1,4-ジメチルペンチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)を含む、特に好ましくはこれらからなる群から選択されるジアミンに基づくさらなる老化防止剤を0~0.1phr、特には0phr含む。
【0078】
本発明に従って存在する上述したジアミン及び式I)の化合物の、好ましくは0~0phrのごく少量、特に好ましくは0phrは、改善された保護効果を達成することを可能にする。式I)の本発明の化合物は、先行技術で公知の列挙したジアミンに取って代わる。
【0079】
本発明のさらに有利な実施形態では、列挙されたジアミン老化防止剤の少なくとも1つのさらなる代表が存在し、そのため本発明による化合物は、先行技術で公知のジアミンを部分的にしか置き換えない。これも本発明による利益を得られるが、最適な程度ではない。
【0080】
有利な実施形態では、式I)の本発明の化合物に加えて、TMQなどのジヒドロキノリンに基づく老化防止剤がゴム混合物中に存在する。特にTMQなどのジヒドロキノリンの存在量は、好ましくは0.1~3、特に0.5~1.5phrである。
【0081】
さらに有利な実施形態では、本発明によるゴム混合物は、さらなる老化防止剤を含まない、すなわち、式I)の本発明の化合物以外のさらなる老化防止剤は0phrである。
【0082】
シランカップリング剤は、当業者に公知の任意のタイプのものであってもよい。
【0083】
さらに、1種以上の異なるシランカップリング剤が互いに組み合わされて使用されてもよい。ゴム混合物はしたがって、異なるシランの混合物を含んでもよい。
【0084】
シランカップリング剤は、ゴム/ゴム混合物の混合中(in situ)に、又はゴムへの充填材の添加前であっても前処理(プレ変性)状況で、シリカの表面シラノール基又は他の極性基と反応する。
【0085】
先行技術から公知のカップリング剤は、ケイ素原子上の脱離基として少なくとも1つのアルコキシ、シクロアルコキシ、又はフェノキシ基を有し、且つ場合により開裂後、ポリマーの二重結合との化学反応に入ることができる基を別の官能基として有する二官能性オルガノシランである。後者の基は、例えば、以下の化学基を含み得る:
-SCN、-SH、-NH又は-S-(x=2~8である)。
【0086】
したがって、使用可能なシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-チオシアナトプロピルトリメトキシシラン、又は2~8個の硫黄原子を有する3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、例えば3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド(TESPT)、対応するジスルフィド(TESPD)であってもよく、或いは、1~8個の硫黄原子を有するスルフィドと、異なる含量の様々なスルフィドとの混合物が挙げられる。TESPTは、例えば、カーボンブラック(Evonik製の商品名X50S(登録商標))との混合物としても添加され得る。
【0087】
例えば、国際公開第99/09036号パンフレットから公知であるようなブロック化メルカプトシランもシランカップリング剤として使用され得る。国際公開第2008/083241A1号パンフレット、国際公開第2008/083242A1号パンフレット、国際公開第2008/083243A1号パンフレット及び国際公開第2008/083244A1号パンフレットに記載されているようなシランを使用することも可能である。例えば、Momentive,USAから多数の変形で名称NXTで販売されているシラン、又はEvonik Industriesによって名称VP Si 363(登録商標)で販売されているものを使用することもまた可能である。
【0088】
さらなる添加剤の合計割合は、好ましくは、3~150phr、より好ましくは3~100phr、最も好ましくは5~80phrである。
【0089】
酸化亜鉛(ZnO)は、上述の量でのさらなる添加剤の全体割合の中に含まれ得る。
【0090】
これは、当業者に公知の任意のタイプの酸化亜鉛、例えばZnO顆粒又は粉末であり得る。従来使用されている酸化亜鉛は、通常、BET比表面積が10m/g未満である。しかしながら、10~100m/gのBET表面積を有する酸化亜鉛、例えばいわゆる「ナノ酸化亜鉛」を使用することも可能である。
【0091】
本発明によるゴム混合物は、好ましくは加硫された形態で、特には車両タイヤ又は他の加硫された工業用ゴム物品において使用される。
【0092】
本発明のゴム混合物の加硫は、好ましくは、加硫促進剤を用いて硫黄及び/又は硫黄供与体の存在下で行われ、一部の加硫促進剤が硫黄供与体として同時に作用することが可能である。促進剤は、チアゾール系促進剤、及び/又はメルカプト系促進剤、及び/又はスルフェンアミド系促進剤、及び/又はチオカルバメート系促進剤、及び/又はチウラム系促進剤、及び/又はチオホスフェート系促進剤、及び/又はチオ尿素系促進剤、及び/又はキサントゲン酸塩系促進剤、及び/又はグアニジン系促進剤からなる群から選択される。
【0093】
N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(CBS)、及び/又はN,N-ジシクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(DCBS)、及び/又はベンゾチアジル-2-スルフェノモルホリド(MBS)、及び/又はN-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、又はグアニジン促進剤、例えばジフェニルグアニジン(DPG)などからなる群から選択されるスルフェンアミド系促進剤を使用することが好ましい。
【0094】
使用される硫黄供与体物質は、当業者に公知の任意の硫黄供与体物質であり得る。ゴム混合物が硫黄供与体物質を含有する場合、後者は、好ましくは、例えばチウラムジスルフィド、例えばテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、及び/又はテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、及び/又はテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、及び/又はチウラムテトラスルフィド、例えばジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、及び/又はジチオホスフェート、例えばDipDis(ビス(ジイソプロピル)チオホスホリルジスルフィド)、及び/又はビス(O,O-2-エチルヘキシルチオホスホリル)ポリスルフィド(例えば、Rhenocure SDT 50(登録商標)、Rheinchemie GmbH)、及び/又はジクロリルジチオリン酸亜鉛(例えば、Rhenocure ZDT/S(登録商標)、Rheinchemie GmbH)、及び/又はアルキルジチオリン酸亜鉛、及び/又は1,6-ビス(N,N-ジベンジルチオカルバモイルジチオ)ヘキサン、及び/又はジアリールポリスルフィド、及び/又はジアルキルポリスルフィドを含む群から選択される。
【0095】
例えば、商品名Vulkuren(登録商標)、Duralink(登録商標)若しくはPerkalink(登録商標)として得ることが可能なものなどのさらなるネットワーク形成系、又は国際公開第2010/049216A2号パンフレットに記載されているようなネットワーク形成系もゴム混合物において使用することができる。この系は、4より大きい官能価で架橋する加硫剤と、少なくとも1つの加硫促進剤とを含有する。
【0096】
促進剤としてTBBS、及び/又はCBS、及び/又はジフェニルグアニジン(DPG)を使用することが特に好ましい。
【0097】
加硫遅延剤もゴム混合物中に存在し得る。
【0098】
「加硫」及び「架橋」という用語は、本発明との関連で同義語として用いられる。
【0099】
本発明の好ましい発展形態において、複数の加硫促進剤は、硫黄架橋性ゴム混合物の製造中の最終混合段階において添加される。
【0100】
本発明の硫黄架橋性ゴム混合物は、1つ以上の混合段階において、加硫系(硫黄及び加硫に影響を及ぼす物質)を除いて全ての構成成分を含むベース混合物が最初に製造される、ゴム業界において慣習的であるプロセスによって製造される。完成混合物は、最終混合段階において加硫系を添加することによって製造される。完成混合物は、例えば、さらに処理され、押出操作又はカレンダー加工によって適切な形状にされる。
【0101】
これに、硫黄加硫によるさらなる処理が続き、ここで、硫黄架橋は、本発明に関連して添加された加硫系により起こる。
【0102】
本発明の上記ゴム混合物は、車両タイヤ、とりわけ空気圧車両タイヤでの使用に特に好適である。
【0103】
車両タイヤでの使用のために、加硫前の完成混合物としての混合物は、好ましくは、トレッドの形状にされ、未硬化の車両タイヤの製造中に公知の方法で適用される。
【0104】
車両タイヤにおける側壁又は他の本体混合物としての使用のための本発明のゴム混合物の製造は、既に記載されているように達成される。混合物の押出操作/カレンダー加工後の造形には、相違がある。1つ以上の異なる本体混合物のための依然として未加硫のゴム混合物のこのようにして得られた造形品は、次いで、未硬化タイヤの構築に役立つ。
【0105】
「本体混合物」は、本明細書では、タイヤの内側構成要素、例えば本質的にはスキージー、インナーライナー(内層)、コアプロファイル、ベルト、ショルダー、ベルトプロファイル、カーカス、ビード補強材、ビードプロファイル、フランジプロファイル及びバンデージなどのためのゴム混合物を指す。依然として未加硫の未硬化タイヤは、その後、加硫される。
【0106】
駆動ベルト及び他のベルト、とりわけコンベヤベルトでの本発明のゴム混合物の使用のために、押し出された、依然として未加硫の混合物は、適切な形状にされ、多くの場合、同時に又はその後、強化部材、例えば合成繊維又はスチールコードを提供される。これは、通常、ゴム混合物の1つ及び/又は複数のプライ、同一の及び/又は異なる強化部材の1つ及び/又は複数のプライ並びに同じ及び/又は別のゴム混合物の1つ及び/又は複数のプライからなるマルチプライ構成を与える。
【0107】
本発明は、さらに、少なくとも1つの成分中に本発明による化合物を含む、本発明によるゴム混合物を含む車両タイヤを提供する。
【0108】
加硫された車両タイヤは、少なくとも1つの成分に、本発明による少なくとも1種のゴム混合物の加硫物を含む。当業者は、ほとんどの物質、例えば存在するゴムが、混合後に既に、又は加硫後にのみ、化学的に変化した形態で存在することを認識している。
【0109】
本発明に関連して、「車両タイヤ」は、産業車両及び建築現場車両、トラック、乗用車のためのタイヤ並びに二輪車タイヤを含む、空気圧車両タイヤ及び固形ゴムタイヤを意味することが理解されるべきである。
【0110】
本発明による車両タイヤは、好ましくは少なくとも1つの外部構成要素に本発明によるゴム混合物を含み、外部構成要素は好ましくはトレッド、サイドウォール、及び/又はフランジプロファイルである。
【0111】
したがって、本発明による車両タイヤは、式I)の本発明の化合物を含む本発明によるゴム混合物を、任意選択的に適合させた組成の2つ以上の成分で含んでいてもよい。
【0112】
本発明は、さらに、以下のプロセス工程:
a)式A)の物質
【化7】
を準備する工程;
b)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素(H)を準備する工程;
c)好ましくは水素化触媒の存在下で、工程a)による物質を工程b)による物質と反応させて、式I)の物質
【化8】
を得る工程;
を少なくとも含む、式I)の化合物の製造方法を提供する。
【0113】
本発明は、さらに、以下のプロセス工程:
a1)式A)の物質
【化9】
を準備する工程;
b1)還元剤、特に塩化スズ(II)二水和物を準備する工程;
c1)工程a1)による物質を工程b1)からの物質と反応させて式C1)の物質
【化10】
を得る工程;
d1)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素(H)を準備する工程;
e1)式C1)の物質を工程d1)による物質と、好ましくは水素化触媒の存在下で反応させて、式I)の物質
【化11】
を得る工程;
を少なくとも含む、式I)の化合物のさらなる製造方法を提供する。
【0114】
物質メチルイソブチルケトン(MIBK)は市販されている。
【0115】
還元剤は、当業者に公知であり且つニトロ基(NO)をアミノ基(-NH)に還元するのに適した任意の還元剤であってもよい。塩化スズ(II)二水和物が特に適している。これは市販されている。
【0116】
工程a)~c)のプロセスは、工程a1)~e1)のプロセスと比較して必要なプロセス工程が少ないため好ましい。
【0117】
水素との反応が行われるプロセス工程は、本発明との関係において「水素化触媒」と呼ばれる適切な触媒を使用して行われる場合が好ましい。
【0118】
プロセス(工程c)/e1))の水素化触媒は、好ましくは、特にパラジウム(Pd)又は白金(Pt)などの貴金属触媒である。貴金属は、好ましくは、炭素担持パラジウム(Pd/C)又は炭素担持白金(Pt/C)などの炭素(C)上で使用される。
【0119】
ラネーニッケル又は銅クロマイトのような他の公知の触媒を採用することも可能である。
【0120】
工程c)でPt/Cが使用される場合が好ましい。
【0121】
工程e1)でPd/Cが使用される場合が好ましい。
【0122】
水素が使用されるそれぞれのプロセス工程における水素圧力は、好ましくは1~50bar、特に好ましくは10~45barである。本発明の有利な実施形態によれば、20~40barの圧力が好ましい。
【0123】
工程c)/e1)における水素化反応は、好ましくはオートクレーブ、特にステンレス鋼製オートクレーブの中で行われる。
【0124】
プロセス工程c)及びe1)における温度は、好ましくは室温(RT、特に20℃)~150℃、好ましくは130℃までである。
【0125】
本発明は、さらに、以下のプロセス工程:
a2)式A2)の物質:
【化12】
を準備する工程;
b2)単体硫黄及びo-ジクロロベンゼン(オルト-ジクロロベンゼン)を準備する工程;
c2)工程a2)の物質を工程b2)の物質と反応させて、式I)の物質
【化13】
を得る工程;
を少なくとも含む、式I)の化合物のさらなる製造方法を提供する。
【0126】
以下で、実施例を参照しながら本発明をより詳しく明らかにする。
【実施例
【0127】
式I)の成分を、以下の通りに製造した:
X1):プロセス工程a)~c)による式I)の本発明の化合物(3-(1,3-ジメチルブチルアミノ)フェノチアジン)の合成:
【化14】
0.50g(2.05mmol、1当量)の3-ニトロフェノチアジン、0.18gの炭素担持白金(5%)(4.67mmolの担体に対して0.4g)、及び20.0mLのメチルイソブチルケトンを秤量し、テフロンインライナー付きのステンレス鋼製オートクレーブの中に入れた。次いで、オートクレーブを水素で40barまで加圧し、120℃で10時間撹拌した。反応終了後、過剰の水素を飛ばし、懸濁液を珪藻土(セライト(登録商標))を通して濾過し、エタノールで洗浄した。濾液を乾燥するまで濃縮し、真空乾燥した。灰色から紫色の固体;収量0.57g(理論値の93%)。
H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=8.09(s,1H),6.94(td,J=7.6,1.5Hz,1H),6.88(dd,J=7.6,1.4Hz,1H),6.69-6.63(m,2H),6.51(d,J=8.4Hz,1H),6.27(dd,J=8.5,2.5Hz,1H),6.21(d,J=2.5Hz,1H),4.82(d,J=8.9Hz,1H),3.30(dt,J=8.6,6.5Hz,1H),1.70(dp,J=13.5,6.7Hz,1H),1.38(dt,J=13.9,7.1Hz,1H),1.16(dt,J=13.5,6.8Hz,1H),1.02(d,J=6.1Hz,3H),0.87(dd,J=19.4,6.6Hz,6H).
13C-NMR(126MHz,DMSO-d6)δ=144.5,143.9,131.8,127.7,126.6,121.0,117.6,116.5,115.8,114.4,112.1,110.7,46.5,46.4,25.0,23.2,23.0,21.2.
ESI-MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析)[M+H]=299。
【0128】
追加の実験X2)では、反応は上述した通りに行ったが、オートクレーブを同様に水素で40barまで加圧する間に混合物を40℃で3時間撹拌したという相違を有していた。
【0129】
下の表1で示されるように同様の収率が得られる。
【0130】
【表1】
【0131】
方法の上記説明による式A)の物質である出発物質の3-ニトロフェノチアジンは、米国特許出願公開第20130315825A1号明細書の開示に従って製造した。
【0132】
或いは、3-ニトロフェノチアジンは、国際公開第2017011531A2号パンフレット(p217)に開示されているように、一段階の銅(Cu)触媒合成によって製造することができる。さらに、S.Wu,W.Hu,S.Zhang,RSC Advances,2016,6(29),24257-24260に開示されている無触媒反応によって3-ニトロフェノチアジンを得ることも可能である。さらに、国際公開第2007110627A2号パンフレットに開示されているように、亜硝酸ナトリウムとの反応によってフェノチアジンから3-ニトロフェノチアジンを得ることも可能である。
【0133】
或いは、式I)の物質は、プロセス工程a1)~e1)による2段階反応で3-ニトロフェノチアジンから出発して得た。
【0134】
3-アミノフェノチアジンの合成:
【化15】
保護ガス下で、22g(90.0mmol、1.0当量)の3-ニトロフェノチアジンを秤量し、800mLのエタノールに溶解し、102g(534mmol、5.0当量)の塩化スズ(II)二水和物と混合し、沸騰した熱で4日間撹拌した。反応物を室温(RT)にした後、溶媒の3分の1を留去し、残りを氷の上に注ぎ入れた。続いて、水酸化カリウム水溶液を用いて混合物のpHをpH=7に調整し、酢酸エチルで3回抽出した。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、続いてNaSOで乾燥した。褐色の固体が得られた;収量18.9g(理論値の98%)。1H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=8.08(s,1H),6.94(td,J=7.7,1.5Hz,1H),6.88(dd,J=7.7,1.5Hz,1H),6.71-6.60(m,2H),6.46(d,J=8.3Hz,1H),6.32-6.22(m,H),4.64(s,2H).
ESI-MS[M+H]=215。
【0135】
3-(1,3-ジメチルブチルアミノ)フェノチアジンの合成:
【化16】
5.00g(23.3mmol、1当量)の3-アミノフェノチアジン、2.00gの炭素担持パラジウム(5%)(4.67mmolの担体に対して0.4g)、及び50.0mLのメチルイソブチルケトンを秤量し、テフロンインライナー付きのステンレス鋼製オートクレーブの中に入れた。次いで、オートクレーブを水素で40barまで加圧し、120℃で10時間撹拌した。反応終了後、過剰の水素を飛ばし、懸濁液を珪藻土(セライト(登録商標))を通して濾過し、エタノールで洗浄した。濾液を乾燥するまで濃縮し、真空乾燥した。灰色から紫色の固体;収量6.61g(理論値の95%)。
H-NMR(500MHz,DMSO-d6)δ=8.09(s,1H),6.94(td,J=7.6,1.5Hz,1H),6.88(dd,J=7.6,1.4Hz,1H),6.69-6.63(m,2H),6.51(d,J=8.4Hz,1H),6.27(dd,J=8.5,2.5Hz,1H),6.21(d,J=2.5Hz,1H),4.82(d,J=8.9Hz,1H),3.30(dt,J=8.6,6.5Hz,1H),1.70(dp,J=13.5,6.7Hz,1H),1.38(dt,J=13.9,7.1Hz,1H),1.16(dt,J=13.5,6.8Hz,1H),1.02(d,J=6.1Hz,3H),0.87(dd,J=19.4,6.6Hz,6H).
13C NMR(126MHz,DMSO-d6)δ 144.5,143.9,131.8,127.7,126.6,121.0,117.6,116.5,115.8,114.4,112.1,110.7,46.5,46.4,25.0,23.2,23.0,21.2.
ESI-MS[M+H]=299。
【0136】
或いは、式I)の物質は、プロセス工程a2)~c2)による一段階反応で得た。
【0137】
3-(1,3-ジメチルブチルアミノ)-フェノチアジンの合成:
【化17】
保護ガス下で、10g(37.3mmol、1当量)の6-PPD(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)を脱気した80mLのo-ジクロロベンゼンに溶解し、2.9g(89mmol、単体の「S」に基づいて2.4当量)の硫黄及び0.95g(3.73mmol、0.1当量)のヨウ素(I)と混合した。混合物を4時間加熱還流(180℃)した。形成された硫化水素を5%のNaOH溶液に通した。室温(RT)まで冷却した後、混合物をジクロロメタン(DCM)及び飽和Na溶液と混合した。得られた黒色固体を濾過により除去し、有機相を水相から分離した。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSOで乾燥し、乾燥するまで濃縮した。黒色の固体を、UV-VIS分光法(紫外及び可視分光法)と組み合わせたLC-MS(液体クロマトグラフィー-質量分析)によって分析した。これには、副生成物として、(E)-N-(4-メチルペンタン-2-イル)-3H-フェノチアジン-3-イミン(反応矢印の右側の低分子)が39%、未定義の物質が24%含まれていた。残りの37%は、出発物質及び式I)の本発明の化合物から構成される。
【0138】
式I)の本発明の化合物は、6PPDと比較して高い反応性を示す。これは、例えば結合解離エネルギー(BDE)の計算、並びに過酸化メチルラジカルとの反応についての自由活性化エンタルピーΔ及び自由標準反応エンタルピーΔG°と一致していた。値は表2に報告されている。図1a及び図1bは、これらの値が関連する開裂機構を示している。
【0139】
【表2】
【0140】
表2から明らかなように、本発明の式I)の化合物は、より低い結合解離エネルギー及びより低い自由エンタルピーを示す。
【0141】
したがって、式I)の化合物により、列挙された用途において改善された保護効果を達成することが可能である。
【0142】
車両タイヤ用のゴム混合物における使用のために、本発明の式I)の化合物は、例えば、6PPD、7PPD又はIPPDなどの先行技術で知られている老化防止剤の代わりに、ゴム混合物の製造における混合段階の1つで、当業者に知られている方法で添加される。
本願は特許請求の範囲に記載の発明に係るものであるが、本願の開示は以下も包含する:
1. 下記式I):
【化18】
の化合物。
2. 前記1.に記載の式I)の化合物を含むゴム混合物。
3. 少なくとも1種のジエンゴムを含むことを特徴とする、前記2.に記載のゴム混合物。
4. 天然ポリイソプレン(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ブタジエンゴム(BR)、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム(SSBR)、乳化重合スチレン-ブタジエンゴム(ESBR)、ブチルゴム(IIR)、及びハロブチルゴムからなる群から選択される少なくとも1種のジエンゴムを含むことを特徴とする、前記3.に記載のゴム混合物。
5. 少なくとも1つの構成要素中に前記2.~4.のいずれか一項に記載のゴム混合物を含む車両タイヤ。
6. 少なくとも1つの外部構成要素に前記2.~4.のいずれか一項に記載の少なくとも1種のゴム混合物を含み、前記外部構成要素が好ましくはトレッド、サイドウォール、及び/又はフランジプロファイルである、前記5.に記載の車両タイヤ。
7. 以下のプロセス工程:
a)式A)の物質
【化19】
を準備する工程;
b)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素(H )を準備する工程;
c)工程a)による前記物質を工程b)による前記物質と反応させて、式I)の物質
【化20】
を得る工程;
を少なくとも含む、前記1.に記載の式I)の化合物の製造方法。
8. 以下のプロセス工程:
a1)式A)の物質
【化21】
を準備する工程;
b1)還元剤、特に塩化スズ(II)二水和物を準備する工程;
c1)工程a1)による前記物質を工程b1)からの前記物質と反応させて式C1)の物質
【化22】
を得る工程;
d1)メチルイソブチルケトン(MIBK)及び水素(H )を準備する工程;
e1)式C1)の前記物質を工程d1)による前記物質と反応させて、式I)の物質
【化23】
を得る工程;
を少なくとも含む、前記1.に記載の式I)の化合物の製造方法。
9. 以下のプロセス工程:
a2)式A2)の物質:
【化24】
を準備する工程;
b2)単体硫黄及びo-ジクロロベンゼン(オルトジクロロベンゼン)を準備する工程;c2)工程a2)による前記物質を工程b2)による前記物質と反応させて、式I)の物質
【化25】
を得る工程;
を少なくとも含む、前記1.に記載の式I)の化合物の製造方法。
10. 特に空気ばね、ベローズ、コンベヤベルト、ベルト、駆動ベルト、ホース、ゴムバンド、プロファイル、シール、膜、医療用途若しくはロボット用途の触覚センサー、又は靴底若しくはその部品、及び/又は油及び/又は潤滑剤などの、特に車両タイヤ及び/又は工業用ゴム物品における、老化防止剤及び/又はオゾン劣化防止剤としての、前記1.に記載の式I)の化合物の使用。
11. 特にエンジン用の燃料又は流体などの油及び潤滑剤における、前記1.に記載の式I)の化合物の使用。
12. 繊維及び/又はポリマー及び/又は紙及び/又は塗料及びコーティングにおける染料としての、前記1.に記載の式I)の化合物の使用。
図1a
図1b