(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】測定装置を較正する方法
(51)【国際特許分類】
G01N 22/04 20060101AFI20240924BHJP
G01N 22/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
G01N22/04 Z
G01N22/00 V
(21)【出願番号】P 2023524201
(86)(22)【出願日】2021-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2021079813
(87)【国際公開番号】W WO2022096342
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-08-17
(31)【優先権主張番号】102020128966.9
(32)【優先日】2020-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】521382078
【氏名又は名称】テウス エレクトロニク ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(74)【代理人】
【識別番号】100142572
【氏名又は名称】水内 龍介
(72)【発明者】
【氏名】リヒター ヘンドリック
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-75683(JP,A)
【文献】特開平7-63674(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0295556(US,A1)
【文献】国際公開第2015/064370(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/146600(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 22/04
G01N 22/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製品に対応した測定装置を較正する方法であって、
複数の製品(p)に対する1つまたは複数の測定変数(j)と、複数の測定値(i)とを用いて測定値のセット(X
p={x
p
i,j})を測定するステップと、
前記測定変数(x
P
i,j)によって決定される少なくとも1つの基準変数(Y)を用いた基準変数のセット(Y
p={y
p
ii番目の基準変数})を提供するステップと
を有する方法において、
すべての製品に対する前記測定値(X
p)を前記測定値(X’)の拡張された行列内にグループ化するステップと、
1つまたは複数の製品(p)に対して1つまたは複数の重み付け(
)を有する較正パラメータ(c’)の第1のセットを決定することであって、前記1つまたは複数の製品(p)は、少なくともその製品に対して、前記製品から独立している等しい重み付け(c
j)を有する製品群内にグループ化されるステップと、
前記測定装置を較正するために、前記測定値(X’)の前記拡張された行列の部分行列に対して少なくとも1つの追加の較正パラメータ(c”)のセットを決定するステップと
を有し、
前記測定装置の前記較正のためにすべての重み付けが決定されるまで、
前記第1の製品群内で、追加の重み付けを有する1つまたは複数のセットが決定され、等しい重み付け(
)を有する複数の製品(p)が別の製品群内にグループ化され、
前記第1の製品群外で、追加の重み付けを有する他のセットが決定され、等しい重み付け(
)を有する複数の製品(p’)が別の製品群内にグループ化されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記第1のセットの前記重み付け、および前記第1の製品群の内外にある前記追加の重み付けが所定の手順で決定され、前記基準変数が最も依存しない前記重み付けが最初に決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記重み付けに加えて、前記重み付けを乗じた前記測定値に追加される1つまたは複数のオフセット値(Δc)も決定されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記重み付けは、前記測定値の多項式にリンクさせることもでき、前記重み付けを前記測定値の積および/または商に対しても提供できることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
異なる製品に対する前記重み付けおよび/またはオフセット値について、不等の有意性が統計的に決定されず、前記不等が有意でない場合、前記異なる製品はこの重み付けの製品群にグループ化されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記較正パラメータは、多重線形回帰によって決定されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の製品群または前記追加の製品群に対応する前記較正パラメータを決定するための前記測定値の前記部分行列は、前記測定値(X
p)のサブセットに対して決定されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記オフセット値の前記有意性を検定するために、2つの製品の前記オフセット値(Δc)間の差分が零に等しいという趣旨の帰無仮説が定式化されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定値において、前記製品群の前記製品が、非数値のカテゴリー変数によって挿入されることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記拡張されたデータ行列をグループ化する際に、前記製品を区別するためにダミー変数が挿入されることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
マイクロ波測定装置が較正されることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マイクロ波測定装置は、共振周波数の変化および/またはその共振曲線の広がりを決定するマイクロ波共振器として設計されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記マイクロ波測定装置の追加の測定変数は、温度(T)および/または水分角(φ)であることを特徴とする、請求項11または12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の製品に対応した測定装置を較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
すべての種類の測定装置は、起動前に較正される必要がある。この較正の状況下では、較正パラメータは、所与の測定値と関連する基準値との最良の一致を検索することによって、線形アプローチなど、較正アプローチのために決定される。較正プロセスおよび関連する較正パラメータのセットの決定は、原理的に知られている。一般に、較正プロセスは、自動的に実行することも可能である。
【0003】
例えば、マイクロ波水分測定技術では、他の製品とは独立して各製品に対して測定装置を較正することにより、異なる製品の較正関係の間で起こり得る差分が以前から考慮されてきた。したがって、すべての製品の較正に同じ労力が必要である。さらに、それぞれ個々の較正は、例えば測定における統計的外れ値、基準値の不十分な分散、または測定点の過少などのデータセットにおいて可能性のある欠陥に対して同じ影響を受ける。較正に頻繁に選択されるアプローチは、測定システムの測定変数xjと基準変数yとの間に線形関係を仮定する多重線形回帰である。
【0004】
【0005】
このアプローチでは、係数を重み付け、付加定数をオフセット値と呼ぶことが共通の語法となっている。イプシロン値は、測定中に生じる測定誤差を指す。マイクロ波を用いた水分測定技術では、測定変数は、例えば共振曲線の広がり、共振周波数の変化、水分角、温度値などである。このような測定システムの基準変数は、例えば測定対象物の水分および密度である。
【0006】
上記の線形回帰の式は、行列表記で証明されており、以下の式が成り立つ。
【0007】
【0008】
ここで、行列Xは、以下の通りである。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
較正パラメータは、各々が測定値と乗算される重み付け
の点、および測定値x
iとは独立して変化することになるオフセット値c
nの点で異なる。較正パラメータは、以下のように決定される。
【0013】
【0014】
較正パラメータを決定するためのこのアプローチは、上記の線形較正モデルに基づいており、その較正パラメータを決定するものである。較正重み付けを決定した後、次にベクトル
は、例えば残差行列を使用して、既知の方法で決定される。
【0015】
検証のために、較正パラメータの有意性を判断することが一般的な方法となっている。この検証のための指標は、いわゆるp値である。検定理論では、これは、帰無仮説の信憑性を示す証拠的な指標である。各較正パラメータに対して、帰無仮説は、その値が零であるという仮定からなる。p値が例えば5%よりも大きい場合、ターゲット変数に対する測定変数の影響は有意性がないとみなされ、上記のアプローチからの対応する較正パラメータは破棄される。このプロセスは、いわゆる特徴選択として繰り返し実行される。有意性のない観測変数xjがすべて較正モデルから削除されたとき、反復する較正の目標に達する。従来は、例えば二次依存などの高次の測定変数を最初に検定し、最後に零次項を削除することが一般的である。
【0016】
マイクロ波送信器、マイクロ波受信器、および評価ユニットを用いて測定される材料の水分および/または密度を測定する方法は、ドイツ特許出願公開第102007057092A1号から周知である。この測定方法では、測定される材料を透過するマイクロ波放射線の位相および振幅を複数の周波数に対して決定し、測定される材料の複素数値伝達関数を、測定装置の複素数値伝達関数を用いて決定された値から算出し、複素数値時間領域関数として時間領域に変換する。時間領域関数から、主パルスの最大値の時点を特性A、主パルスの幅を特性Bとして決定する。特性AおよびBに応じて、測定される材料の水分および密度が決定される。
【0017】
自動センサ較正方法および装置は、ドイツ特許出願公開第10253822A1号から周知である。実験室測定が行われ、得られた実験室測定データを使用して、センサによって生成されたオンライン測定値を補正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】ドイツ特許出願公開第102007057092A1号
【文献】ドイツ特許出願公開第10253822A1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、異なる製品のデータ内の関係を認識することによって、複数の製品に対応した較正プロセスを簡略化するのに好適な測定装置を較正する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の目的は、請求項1の特徴を有する方法によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項の主題を形成する。
【0021】
本発明による方法は、複数の製品に対応した測定装置を較正するために提供され、意図されている。本発明によれば、本方法は、請求項1の特徴を有している。本発明による方法は、基準変数Yのセットを提供することを想定している。提供された基準変数のセットは、測定変数によって決定される少なくとも1つの基準変数を含む。いかなる較正プロセスも同様に、測定変数のセットが測定される。個々の測定変数は、種類に応じて区別され得る。さらに、測定変数が記録された製品と、測定変数が測定された測定値とが区別され得る。したがって、測定値のセット(Xp={xp
i,j})が得られ、ここで、jは1つまたは複数の測定変数を数えるために用いられ、pは測定された製品を数えるために用いられ、iは複数の測定値を数えるために用いられる。測定変数(xP
i,j)によって決定される少なくとも1つの基準変数(Y)を用いた基準変数のセット(Yp={yp
ii番目の基準変数})が、測定値のセットに追加される。
【0022】
さらに、本発明による方法は、すべての製品の測定変数が、測定値の拡張されたセット内にグループ化されることを提供する。後続のステップでは、1つまたは複数の製品に対する1つまたは複数の重み付けを有する較正パラメータの第1のセットが提供される。1つまたは複数の製品は、少なくともそれらの製品の重み付けが等しい場合に、製品群内にグループ化される。等しい重み付けとは、重み付け値が互いに著しく異ならないことを意味する。さらに、本発明による方法は、少なくとも1つの追加の較正パラメータのセットが測定値の拡張された行列の部分行列に対して決定されることを提供する。この目的のために、追加の重み付けを有する1つまたは複数のセットを第1の製品群内で決定でき、等しい重み付けを有する複数の製品を別の製品群にグループ化できる。したがって、第1の製品群のサブ製品群が形成される。追加の重み付けを有する追加のセットは、第1の製品群の外で決定され、等しい重み付けを有する1つまたは複数の製品は、別の製品群にグループ化される。したがって、補助的な製品群が形成され、もちろんその後、再びサブ製品群を形成できる。製品群では、1つの重み付けまたは複数の重み付けが、製品から独立して測定値にリンクされる。少なくとも1つのオフセット値は、重み付けと測定値とのリンクに追加される。この較正パラメータのセットに関して、測定装置は、拡張された測定値のセットに対して較正される。本発明の特定のアイデアは、2つ以上の製品の測定値を組み合わせ、それらを同じように処理することである。
【0023】
1つの重要な考慮事項は、較正前に、データセットのどの製品が製品群に属するのかが不明であることである。この状況でも、測定値から決定される。製品をより正確に画定し、決定すればするほど、この製品に対して測定装置をより正確に較正できることが実際に期待されたため、このアプローチは当初、驚くべきものであった。しかしながら、このアプローチは、測定値に生じる可能性のある不正確さ、または統計的な変動を測定することに対して不利である。本発明によるアプローチの特定の利点は、製品群内の製品の種類に関係なく、製品の1つまたは複数の重み付けを見つけることができる点である。これらの製品に依存しない重み付けは、その製品依存性により、より小さなデータベースしか有しない重み付けよりも、較正プロセスの枠内ではるかに正確に決定できる。本発明による方法では、製品群の製品は、製品群の2つ以上の製品の重み付けの少なくとも1つが、そこから独立して決定され得るような製品である。これは、出力変数を決定する測定プロセスに2つの測定値が必要な場合に、第1の重み付けが製品から独立して選択され、第2の重み付けが製品に依存して選択される例も含む。この場合、製品に依存しない重み付けは、製品に依存する重み付けよりも統計的にはるかに正確に決定できる。
【0024】
前記方法の1つの展開では、重み付けは、乗法によって測定値にリンクされる。これにより、変数を決定するための全体的な線形アプローチが得られる。この代替として、重み付けを多項式によって測定値にリンクさせるか、または測定値を積および/または商の形で含むことも可能である。選択したアプローチに応じて、異なる計算方法を使用して、較正パラメータの最初のセットと残りのセットとを決定できる。
【0025】
好ましい一実施形態では、決定された較正パラメータの有意性は、その重み付けおよび/またはそのオフセット値を用いて決定される。これは、異なる製品の重み付けおよびオフセット値の不等に対して有意性が見いだせないという点で達成される。不等が有意でない場合、次に、重み付けおよびオフセットの値を等しくすることができる。重み付けおよびオフセット値の有意性を確認するために、2つの製品の値の差分が零に等しいような帰無仮説が定式化される。この帰無仮説が成立する確率が決定される。オフセット値を検定する場合、2つのオフセット値または2つの重み付けの差分が、2つの製品に対して形成される。検定される帰無仮説として、差分が値零を有するかが調査される。この帰無仮説が棄却されない場合、すなわち差分パラメータが値零を有する場合、製品群の両製品は、調査された較正パラメータ(重み付け、オフセット値)に対して等しくすることができる。
【0026】
本発明による方法では、較正パラメータは、多重線形回帰によって決定される。これは周知であり、確実に実行可能である。データ内の製品の区別を行うために、非数値のカテゴリー変数が挿入される。これらは、例えば、測定値が異なる製品に属することを示すために使用される。拡張されたデータ行列では、非数値のカテゴリー変数は、測定値間を区別するためにダミー変数として機能する。このために、個々の製品に対して「1」を含み、「0」によって他の製品を識別する、測定値の拡張された行列に列を付加できる。
【0027】
1つの好ましい展開では、マイクロ波測定装置は、その共振周波数の変化および/またはその共振曲線の広がりを決定するマイクロ波共振器として設計される。これらの2つの値から、例えば、製品の水分の値を決定できる。他の測定変数、温度、および/または水分角は、製品の水分など、出力変数にも寄与するものが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】測定システムの測定変数x
jと基準変数yとの間の線形関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明による方法は、例示的な実施形態を参照して以下にさらに説明される。例示的な実施形態は、マイクロ波測定技術を用いて実行されるような水分測定を参照する。製品群内の異なる製品は、追加または省略された添加物、植物の茎上の異なる葉の位置、またはわずかに変更された製品構造によって、互いにわずかに異なるだけであることがよくある。わずかな違いおよび変動により、製品中の水分子の結合にわずかな偏差が生じ、したがって較正係数をわずかに変化させる可能性がある。しかしながら、例えば、それらの誘電特性の点で互いに強く異なる添加物を追加したことによる強い変動は、較正パラメータにより強い偏差をもたらす可能性がある。化学的および物理的な類似性は、適合する帰無仮説を用いることで確認できる。通常、検定には5%などの有意水準が設定され、p値と比較される。p値が小さければ小さいほど、帰無仮説を棄却する正当性が高くなる。p値が所与の有意水準よりも小さければ、帰無仮説は棄却される。逆にp値が有意水準よりも大きければ、帰無仮説は棄却されない。
【0030】
測定装置を較正する周知のアプローチでは、帰無仮説が常に使用されており、製品群の製品の較正パラメータciは、零と異なることはない。したがって、この仮説が、較正パラメータに割り当てられた測定変数が結果に寄与しないという仮定である可能性が高いかどうかが確認される。較正パラメータを決定する際のこの仮説は、製品群の製品が常にそれ自体を分離して考慮する必要があるという事実につながる。製品群の各製品に対して、較正パラメータが決定され、その後、それらの有意性が検定される。
【0031】
本発明による方法は、製品群の2つ以上の製品が拡張されたセット内にグループ化されているグループ化された測定変数を用いて動作する。この場合、有意性検定は、製品群の2つの製品の較正パラメータの差分が零から著しく異なるかどうかを見つけようとする。これらの2つの製品に対して、帰無仮説が棄却されない場合、同じ較正パラメータを較正に使用できることを意味する。製品群の2つの検定製品の較正パラメータは、この意味で製品に依存せず、同等である。
【0032】
この新しい帰無仮説は、製品群のメンバーの類似性に関する追加情報を較正に使用するため、従来の帰無仮説よりも弱い。このため、データセットの品質に対する要求が鈍くなり、較正の労力はそれに応じて軽減される。製品群内の製品がわずかに変更された場合、別の較正プロセスが必要ないため、測定装置の実用化において、この軽減は特に利点を有する。代わりに、既に発見された較正パラメータを新しい測定値と共に適合させることができ、製品群内の製品が変更されても既存の較正パラメータをまだ使用できる可能性がある。
【0033】
このアイデアを実現するためには、異なる製品によって得られた測定値を拡張された測定値のセット内にグループ化する必要がある。このための1つの可能性のあるアプローチは、プロキシ変数とも呼ばれるいわゆるダミー符号である。統計データ解析では、0と1という式で変数を導入し(yes/no変数)、これはマルチレベル変数の存在を示す指標として機能する。
【0034】
この分類別の割り当てを数学的に説明するために、製品群の各メンバー、ならびに各測定変数に対して、別々のダミー変数が導入される。同一の重み付けを有し、2つのカテゴリーAおよびBのみを有する線形回帰の最も単純なケースでは、較正式は、次のような形になる。
【0035】
【0036】
この式では、c1は、測定変数xiが出力変数yiに寄与する較正重み付けを指定する。オフセット値c2は、カテゴリーAおよびBに共通の係数として定式化される。また、カテゴリーAとBとの間にカテゴリー区分があり、カテゴリーAには追加のオフセット値が寄与されず、カテゴリーBには追加のオフセット値Δc2が付加される。
【0037】
また、変数εiは、出力変数としてyiと共同して現れる加法式であり、測定値xiに依存しない。以上をまとめると、カテゴリーAの場合、これは以下を意味する。
【0038】
【0039】
カテゴリーBの場合、以下を意味する。
【0040】
【0041】
これらのダミー変数を用いると、拡張されたデータ行列は、以下の形で追加の列から単純に得られる。
【0042】
【0043】
データ行列では、右の列は、カテゴリーAの測定値に対してパラメータΔcに零を乗じ、カテゴリーBの測定値に対して測定値Δcに1を乗じる。生じる測定誤差を補償するために、測定値から独立してイプシロン変数εiを追加する。この新しいデータ行列について、較正パラメータに対してp値を計算できる。新しい較正パラメータΔc2が2つのカテゴリーのオフセット値間の差分を表すので、そのp値は、この差分が有意性を有するか、または2つのオフセット値に対して組み合わせ可能かどうかについての情報を提供する。このアプローチは、すべての較正パラメータに転用できる。
【0044】
その他の較正パラメータについて、内側展開と外側展開とに区別できる。内部展開では、決定されていない製品群内の較正パラメータが決定される。この場合、有意差のないパラメータが再び現れ、製品群内で追加の製品群が生じる場合がある。例えば、第1の重み付けに関して、製品1、3、および5は、等しい値、すなわち、有意差のない値のみを有することができる。ただし、第2の重み付けに関して、製品1および5は、等しい値を有することができるが、製品3の重み付けは、有意差のある値を有する。内部展開に加えて、外部展開もあり、製品2および4など、まだ製品群内にグループ化されていない製品について較正パラメータを求めることができる。次に、例えば、製品2および4について同一の較正パラメータが見つかる場合、これにより、内部展開の出発点を形成できる。内部展開および外部展開の結果、できる限り多くの製品が製品群内にグループ化され、決定される較正パラメータの数が減り、パラメータを決定する統計的根拠が改善されることになる。
【0045】
帰無仮説を修正した上記の方法では、データ内の類似性が認識され、較正に使用されるという事実が得られる。また、本発明は、異なる製品の較正パラメータを組み合わせる方法を提案する。カテゴリーAおよびカテゴリーBの製品について、いくつかの較正パラメータが同一であり、他の較正パラメータに有意差があることは、原理的に可能である。したがって、方法を簡略化するために、本発明は、最も高いp値を有する差分パラメータを1つのグループ内に組み合わせ、これらの2つの製品のすべての較正パラメータを等化することを提供する。この方法は、例えば、較正パラメータが製品群にわたって一定である限り、1つの製品分を減らした製品群で繰り返すことができる。以下では、
図1を参照しながら、本発明をより詳細に説明する。
図1では、2つのデータセットが以下のモデルに従ってシミュレーションされた。
【0046】
【0047】
【0048】
基準の不確かさεを、ε=+/-0.26で両カテゴリーに等しく分散させる。これは、2つのカテゴリーのデータが、それらのオフセット値の点において値1分異なるだけであり、それらの勾配の点においては差異がないことを意味する。データセットは、
図1に示されている。より明るく示された上部のデータポイントは、R
2値が0.894と良好であり、これはモデルの適合性が良好であることを示す。暗く示されている下部の値は、R
2値が0.0239を有し、これは適合性不良、いわゆるモデル適合性不良であることを示す。これは、2.5から3.5の間の狭い範囲にある、5つのデータポイントしか有しないデータセットBが、データの質が低いため、十分な精度で勾配パラメータを再現できないことを意味する。その25個のデータポイントを有するデータセットAは、基準の不確かさが比較的高いため、勾配パラメータが実際の勾配の92%(0.4638と0.5を参照)にしか達していないにもかかわらず、良好な品質でより広い値の範囲を有する。
【0049】
しかしながら、本発明による方法によって決定された勾配パラメータc1は、以下の通りである。
【0050】
【0051】
重み付け係数のより大きな差分を考慮すると、カテゴリーAの勾配値とほぼ同一である。したがって、勾配パラメータがわずかに小さすぎるために、両オフセット値c2が大きすぎるにもかかわらず、オフセットパラメータの差分Δc2が1にまさに合致している。
【0052】
【0053】
【0054】
明らかに、従来の方法では、勾配パラメータc1は、製品に依存して0.46となったり、0.18となったりすることがあり、したがって、0.5を有するモデルの勾配とうまく整合していないことが分かる。表中の2つの右の係数は、本発明による方法を用いて計算され、オフセット値の距離の点でも、値のレベルの点でも、モデリングとはるかに良好に一致している。
【0055】
実際には、これは、低品質のデータセットを有する製品Bが、製品Aのデータセットの高品質から利益を得るため、製品Aと同じ品質で較正されることを意味する。