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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】生産ライン、トロリーおよび加工方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 65/18 20060101AFI20240924BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
B62D65/18 Z
B23P21/00 307G
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023531557
(86)(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 EP2021050450
(87)【国際公開番号】W WO2022152362
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロドリゲス、ホセ
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-154296(JP,A)
【文献】特開平04-146035(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0114384(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19630290(DE,A1)
【文献】特開平07-221170(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0045158(KR,A)
【文献】特開平02-123022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 16/20
B23P 21/00
B62D 41/00-67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークピース(28)を連続ステップで加工する生産ラインであって、
複数のワークステーション(1から6、9から12)と、それらのそれぞれは、ステップのうちの関係付けられた1つをその中で実行するように適合され、前記ワークステーション(1から6、9から12)のうちの1つから次のワークステーションへ、ワークピース(28)を搬送する搬送手段とを備え、前記ステップのうちの少なくとも最後の1つはワークピース(28)を塗装するステップであり、互いに直後のステップに関係付けられた少なくとも2つのワークステーション(1から6、9から12)は互いに隣接せず、前記搬送手段は、前記少なくとも2つのワークステーションのうちの第1のワークステーションから第2のワークステーションへ前記ワークピース(28)を移送するためのトロリー(16、22)を備え、前記トロリー(16、22)は、前記ワークピース(28)を受け入れるための防塵区画(27)を備える、生産ライン。
【請求項2】
前記防塵区画(27)は、前記第1および第2のワークステーション(1から6、9から12)の嵌合ポート(15、19)に防塵方式で結合されるように適合された少なくとも1つのポート(17、18)を有する、請求項1に記載の生産ライン。
【請求項3】
前記トロリー(16、22)は、前記防塵区画(27)を加圧するための手段(36)を備える、請求項1または2に記載の生産ライン。
【請求項4】
前記トロリー(16、22)および/または前記ワークステーション(1から6、9から12)の前記ポート(15、17から19)が摺動可能なドアを備える、請求項1または2に記載の生産ライン。
【請求項5】
前記摺動可能なドアは、可撓性シートを備える、請求項4に記載の生産ライン。
【請求項6】
前記トロリー(16、22)は、前記ワークピースを変位可能に支持するためのレール部分を備え、前記レール部分は、ワークステーションのレールに結合されるように適合される、請求項1からのいずれか一項に記載の生産ライン。
【請求項7】
2つより多くのワークステーション(1から6、9から12)が、ワークピース(28)を前記トロリー(16、22)に移送するかまたは前記トロリー(16、22)から受け取ることができるポート(15、19)を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の生産ライン。
【請求項8】
前記複数のワークステーション(1から6、9から12)は、方法ステップのうちの同じ1つに関係付けられた複数のワークステーション(9から12)の少なくとも1つのサブセットを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の生産ライン。
【請求項9】
前記トロリー(16、22)は、搬出した場合、それに関係付けられた第1の方法ステップを終了したかまたは終了しようとしている前記サブセットのワークステーション(9、12)を識別し、前記第1の方法ステップがそれに対して終了した後に前記ワークピース(28)が積載されるように適合される、請求項に記載の生産ライン。
【請求項10】
前記トロリー(16、22)は、積載された場合、前記ワークピースに対して実行されるべき次の方法ステップを識別し、前記次の方法ステップに関係付けられた次のワークステーションを識別し、前記ワークピース(28)を前記次のワークステーションに駆動するように適合される、請求項8または9に記載の生産ライン。
【請求項11】
前記トロリー(16、22)は、前記次のワークステーションとして、前記次の方法ステップに関係付けられたワークステーションのサブセットから、空いている、または別のワークピースの加工を終了しようとしている1つを選択するように適合される、請求項10に記載の生産ライン。
【請求項12】
前記ワークステーション(1から6、9から12)のうちの少なくとも1つは、前記トロリー(16、22)が結合される少なくとも2つのポート(15, 19)を有し、および/または、
前記トロリー(16、22)は、互いに別個の少なくとも2つのポート(17、18)を有する、請求項1から11のいずれか一項に記載の生産ライン。
【請求項13】
前記トロリー(16、22)は、前記防塵区画(27)の両側に、前記少なくとも2つのポート(17、18)を有する、請求項12に記載の生産ライン。
【請求項14】
各ワークピース(28)は、それに対して実行される方法ステップのそのスケジュールに関係付けられており、前記トロリー(16、22)は、前記スケジュールに基づいて、それが搬送しているワークピース(28)のためのターゲットワークステーションを識別するように適合されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の生産ライン。
【請求項15】
前記トロリー(16、22)は、ワークピース(28)のデータキャリア(39)からデータを読み取るためのリーダ(37)を備え、前記データは、前記スケジュールまたは前記スケジュールを取り出すことができるリファレンスを含む、請求項14に記載の生産ライン。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の生産ラインで使用するためのトロリー(16、22)であって、
前記トロリーは、操縦可能な車台(26)と、ワークピース(28)を与圧された前記防塵区画(27)に積載し、前記ワークピース(28)を搬出するための、少なくとも1つのポート(17、18)を有する前記防塵区画(27)とを備える、トロリー。
【請求項17】
連続するステップでワークピースを加工する方法であって、
各方法ステップは、関係付けられたワークステーション(1から6、9から12)において実行され、前記ワークステーション(1から6、9から12)のうちの少なくとも2つの間で、前記ワークピースは、請求項16に記載のトロリー(16、22)によって搬送される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークピースを完成品に加工するための生産ラインおよび方法、ならびに生産ラインまたは方法において使用するためのトロリーに関する。
【背景技術】
【0002】
組立ラインの導入以来、コスト効率の良い大量生産のために、ワークピースは、1つの加工ステップが実行される1つのワークステーションから、次の加工ステップが実行される次のワークステーションへ搬送されることによって同一の加工ステップを受け、したがって、すべてのワークピースに同一の加工ステップを適用し、ワークステーションの最後の1つにおいて同一の完成品を制作することがパラダイムであった。理想的には、ワークピースが1つのワークステーションで加工された後、最小の時間損失で次のワークステーションに送られることができるように、このようなワークステーションは互いに隣接している。
【0003】
コンピュータ制御は、ワークピースがワークステーション間の異なる経路に沿って搬送されることができる、より柔軟な生産スキームを可能にし、したがって、その加工ステップがその特定のワークピースに必要とされないワークステーションを、ワークピースがバイパスすることを可能にする。しかしながら、加工ステップの少なくとも1つが塗装ステップであるとき、塗装ステップの前および後の両方において、塗料がまだ完全に乾燥または硬化していない間に、ワークピースが搬送される経路に沿って、たとえその経路が使用される頻度が少なくても、ワークピースが埃を集めることを確実に防止しなければならないので、問題が生じる。
【0004】
この問題は、ワークピースが車体であるときに、一方では、そのサイズが全ての可能な経路を覆うことを困難にするので、他方では、例えば、車体の異なる領域における異なるタイプの色または仕上げなど個々のデザインに対する需要の高まりが、車体を仕上げるために必要とされるかもしれない加工ステップの数を増加させるので、特に関連する。
【0005】
したがって、本発明の目的は、1つのワークステーションから次のワークステーションへの経路が1つのワークピースから別のワークピースへと変化することがある場合であっても、またそのような経路が互いに交差する場合であっても、ワークステーション間のワークピースの防塵を確実にすることである。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、連続したステップでワークピースを加工するための生産ラインによって達成され、生産ラインは複数のワークステーションと、複数のワークステーションのそれぞれは、前記ステップのうちの関係する1つをその中で実行するように適合され、前記ワークステーションのうちの1つから次のワークステーションへワークピースを搬送するための搬送手段とを備え、前記ステップのうちの少なくとも最後の1つがワークピースを塗装するステップであり、前記ワークピースの加工において互いに直後に続くステップに関係付けられた少なくとも2つのワークステーションは互いに隣接せず、搬送手段は、前記少なくとも2つのワークステーションのうちの第1のワークステーションから第2のワークステーションへワークピースを移送するためのトロリーを備え、トロリーは、ワークピースを受け入れるための防塵区画を備える。
【0007】
ワークピースをトロリーとワークステーションとの間で移送する間にワークピースを保護するために、区画は、第1および第2のワークステーションの嵌合ポートに防塵方式で結合されるように適合された少なくとも1つのポートを有するべきである。
【0008】
トロリーが区画を加圧するための手段を備えるとき、区画が気密封止されていなくても、区画の間隙を通って逃げる空気がこれらの間隙または少なくとも1つのポートを通って塵が入るのを防止するので、区画内への塵の進入を防止することができる。
【0009】
トロリーおよび/またはワークステーションのポートは、スライド可能なドアを備えることが好ましい。スライド可能なドアは、トロリーのポートとワークステーションのポートとが嵌合関係に配置された後に開くことができ、その結果、ポート間の隙間からの塵の侵入を最小限に抑えることができ、あるいは区画および/またはワークステーション内のわずかな正圧によって完全に防止することができる。
【0010】
ドアは可撓性シートを含むべきである。ワークステーションに対向する面側から例えば区画の側壁または屋根まで区画の縁部の周りで連続的にシートを変位させることによって、摺動可能なドアは、面側のほぼ全体を満たすことができ、それにもかかわらず、トロリーの寸法を増加させることなく開くことができる。
【0011】
ワークピースの積載および搬出を容易にするために、トロリーは、ワークピースを変位可能に支持するためのレール部分を備えることができる。このレール部をワークステーションのレールに結合するとき、ワークピースをレールおよびレール部分に沿って容易かつ円滑に搬送することができる。
【0012】
生産ラインでは、2つより多くのワークステーションが、ワークピースをトロリーに移送し、またはトロリーから受け取ることができるポートを有するべきである。したがって、トロリーは、1つのワークステーションのポートでワークピースを取り上げ、ワークピースが送られるべきワークステーションを選ぶか、またはいくつかのワークステーションからワークピースを収集し、これらを同じターゲットワークステーションに送ることができる。
【0013】
ワークピースが送られることができるまたは収集されることができる複数のワークステーションは、そのワークステーションがすべて方法ステップのうちの同じ1つに関係付けられるサブセットであることがある。このようなワークステーションを、関係する方法ステップを実行するのに必要な時間に比例した数で提供することによって、ワークステーションのアイドル時間を最小限に抑えることができ、生産性を最大にすることができる。
【0014】
トロリーが、その搬出状態において、それに関係付けられた第1の方法ステップを終了したかまたは終了しようとしているサブセットのワークステーションを識別し、前記ワークステーションにナビゲートし、前記第1の方法ステップがその上で終了した後にワークピースをそこに搭載するように適合されるとき、生産性はさらに改善される。
【0015】
同様に、トロリーは、積載されたときに、ワークピースに対して実行されるべき次の方法ステップを識別し、前記次の方法ステップに関係付けられた次のワークステーションを識別し、ワークピースを前記次のワークステーションに駆動するように適合されてもよい。
【0016】
好ましくは、トロリーは、前記次のワークステーションとして、前記次の方法ステップに関係付けられたワークステーションのサブセットから、空いている、または別のワークピースの加工を終了しようとしているワークステーションを選択するように適合され、その結果、トロリーによって運ばれたワークピースは、最小の待ち時間でそこから搬出されることができる。
【0017】
ワークステーションのアイドル時間を最小化するために、ワークステーションは、トロリーが結合されることができる少なくとも2つのポートを有するべきであり、その結果、1つのトロリー上への加工されたワークピースの積載および別のトロリーからの加工されるべき次のワークピースの搬出が、異なるポートで同時に行われることができる。
【0018】
トロリーについては、ワークステーションポートに結合するために必要とされる操作の量を最小化するために複数のポートを有することも有利である。好ましくは、防塵区画の両側に2つのポートが設けられている。
【0019】
トロリーが、その中に積載されたワークピースに対して実行されるべき次の方法ステップを識別し、前記ワークピースのためのターゲットワークステーションを識別することを可能にするために、各ワークピースは、トロリーにアクセス可能な、その上で実行されるべき方法ステップのスケジュールに関係付けられているべきである。
【0020】
スケジュールにアクセスするために、トロリーは、ワークピースのデータキャリアからデータを読み取るためのリーダ、例えばRFIDリーダを備えることができる。データは、スケジュール自体、またはスケジュールをデータベースから取り出すことができるリファレンス(reference)を含むことができる。
【0021】
各ワークステーションは、それによって加工されるワークピースのスケジュールに、ワークステーションおよび/またはその関連する方法ステップを識別する記録を書き込むために、それに関係付けられた記録デバイスを有してもよく、その結果、ワークピースがトロリー上に積載されるとき、トロリーは、ワークピース上で実行されるべき次の方法ステップを見つけ、ワークピースを送る適切なワークステーションを見つけることができる。
【0022】
本発明の第2の態様によれば、この目的は、上述の生産ラインで使用するためのトロリーによって達成され、トロリーは、操縦可能な車台と、ワークピースを区画内に積載し、ワークピースを搬出するための少なくとも1つのポートを有する与圧区画とを備える。
【0023】
良好な操縦性のために、車台は、独立して駆動可能であり、垂直軸の周りに回転可能である複数のキャスターを備えてもよい。
【0024】
トロリーは、ワークステーションとロック係合するための機械的結合部をさらに備えてもよい。
【0025】
本発明の第3の態様によれば、この目的は、連続するステップでワークピースを加工する方法によって達成され、各方法ステップは、関係付けられたワークステーションで実行され、前記ワークステーションのうちの少なくとも2つの間で、ワークピースは、上述のようにトロリーによって搬送される。
【0026】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して、後続する実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、従来の生産ラインの概略図である。
図2図2は、本発明による、第1の生産ラインの概略図である。
図3図3は、本発明による、第2の生産ラインの概略図である。
図4図4は、本発明による、第3の生産ラインの概略図である。
図5図5は、図2図3および図4の生産ラインで使用されるトロリーの図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、自動車車体塗装のための従来の生産ラインの概略図である。生産ラインのワークステーションは、塗装ステーション1から6を含む。塗装ステーション1は、白い車体にプライマーを塗布するためのものであり、ステーション2および3は、それぞれ車体の内側および外側にベースコートを塗布するためのものであり、ステーション5および6は、内側および外側にクリアコートを塗布するためのものである。
【0029】
単一の色で車体を塗装するためには、塗装ステーション1から3、5および6で十分であるが、多色の車体に対する顧客の希望が満たされる場合、例えば、ルーフが車体の残りの部分とは異なる色を有する場合、さらなる塗装ステーションが必要である。このようなさらなる塗装ステーションを車体の直線経路に組み込むことは、全ての車体の加工時間の増加につながり、さらなる塗装ステーションをほとんどの時間アイドル状態にしてしまう。したがって、図1の生産ラインは、必要に応じて車体を塗装ステーション4に送ることができる一方で、他のすべての車体が塗装ステーション5、6に直進するトラックスイッチ7と、ステーション4で塗装をした車体および塗装していない車体の経路が合流するトラックスイッチ8とを提供する。
【0030】
塗料の1つの層が塗布されたとき、次の層を塗布する前に、車体はフラッシュされ、すなわち、層の揮発性成分が蒸発する時間が与えられ、焼き付けられる。したがって、図1の生産ラインは、塗装ステーション1と2との間に焼付けステーション9を、塗装ステーション3と4との間に焼付けステーション10を、トラックスイッチ8と塗装ステーション5との間に焼付けステーション11を、塗装ステーション6の後ろに焼付けステーション12を有する。図1に示すように、ステーション1とステーション9との間、ステーション9とステーション2との間、ステーション3とトラックスイッチ7との間、および他の様々な場所に、フラッシングステーション13が設けられている。
【0031】
トラックスイッチ7、8により、生産ラインの全てのステーションが互いに直接隣接して密封結合されるわけではない。車体を搬送するためのトラック14がワークステーションの外側に伸張する場所はどこでも、搬送中に塵が車体に付着しないことを確実にするために、トラック14はしっかりと覆われなければならない。
【0032】
図2は、本発明による生産ラインを図示している。この生産ラインのワークステーションは図1と同じであり、それらによって実行される塗装プロセスのステップも同じである。従って、ワークステーションには図1と同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0033】
図1と同様に、隣接するワークステーションの3つのグループがあり、第1のグループは塗装ステーション1、2、3および焼付けステーション9を含み、第2のグループは焼付けステーション10および塗装ステーション4を含み、第3のグループは塗装ステーション5、6および焼付けステーション11、12を含む。グループ間にはトラックが設けられていない。代わりに、車両がトラックによって拘束されずに二次元で自由に移動することができる平坦な床面がグループ間に存在する。
【0034】
塗装ステーション3は、ベースコートを塗布した後の車体を外部に出すための出口ポート15を有している。車体を受け入れるために出口ポート15に連結されたトロリー16が示されている。車体がトロリー16上に積載されるとき、トロリー16は車体を次のステーションへ駆動し、そこで車体が加工される。図示の例では、これは焼付けステーション11または焼付けステーション10である。塗装ステーション3の出口側にはフラッシングステーションがないが、これは、車体がトロリーに乗って運ばれるのに費やされる時間がフラッシング段階の目的を果たすためである。
【0035】
トロリー16は、塗装ステーション3の出口ポート15に結合するための入口ポート17と、入口ポート17に対向する出口ポート18とを有し、出口ポート18は、車体を搬出するために、焼付けステーション10または11の入口ポート19に結合することができる。
【0036】
ワークステーション3、10のポート15、19は、トロリー16が直線20に沿って一方から他方20に沿って一方から他方へ移動することができるように互いに面しているが、塗装ステーション3から焼付けステーション11への移動はUターン21を伴う。図2では、Uターン21はワークステーション11に到達するのに必要な幅よりも広く、Uターンの終わりに、トロリー16の第2の像16'が入口ポート19に対して横方向にオフセットされた駐車位置に示されており、別のトロリー22が車体をワークステーション11に搬出し終えてから離れることができるようになっている。車体が塗装ステーション4で加工されたときに、車体と塗装ステーション3によって仕上げられた次の車体が焼付ステーション11で場所を争うことになるためにこのような状況は生じるかもしれない。トロリーを使用することにより、必要が生じたときはいつでも、1つ(またはそれ以上)の車体を焼付けステーション11への進入を待機させておくことができる。
【0037】
図3は、トロリーによって提供される可能性を図2のものよりも組織的に利用する生産ラインの第2の実施形態を図示す。この製造ラインには、1つのフラッシングステーション13のみが残されており、他の全てのフラッシングステーションは、トロリーによって置き換えられている。図3には2つのトロリー16、22のみが示されているが、それらの数は、必要に応じて、例えば、次の加工ステップを待たなければならない車体のための一時的な保管場所として役立つように、より多くてもよい。フラッシングに必要な時間は塗装または焼付けに必要な時間よりも短いので、トロリーの数は図2のフラッシングステーション13の数よりも少ない。したがって、1つのトロリーは、1対より多くのステーション間で車体を搬送することによって、1つより多くのフラッシングステーションに取って代わることができ、スペースおよびコストを節約する。
【0038】
塗装ステーション1から6は、図1および図2のものと同一であり、同じ目的を果たす。必須塗装ステーション1から3、5および6は中央通路23の一方の側に位置付けられ、通性塗装ステーション4および焼付けステーション9から12は他方の側に位置付けられている。塗装ステーション1においてプライマーが車体に塗布されるとき、トロリー16、22のうちの1つが来て、通路23を横切って焼付けステーション9へ往復移動する。車体を焼付けステーション9から塗装ステーション2へ運ぶトロリー16が示されている。塗装ステーション2、3は一列に配置されているので、トロリーは、ステーション2、3でベースコートが塗布された車体を、通路23から離れて面するステーション3の出口ポート15で取り出し、そこから焼付けステーション11に、または車体が1つより多くの色で塗装される場合には焼付けステーション10に搬送しなければならない。
【0039】
焼付けステーション10、フラッシングステーション13および塗装ステーション4は、互いに隣接して配置されており、焼付けステーションに送られた車体は、トロリーを使用することなく塗装ステーション4に搬送することができる。トロリー22は、塗装ステーション4から車体を取り出し、それを焼付けステーション11に送るように示されている。代わりに、それは車体をもう一度焼付けステーション10に送ってもよい。このように車体をもう一度塗装ステーション4を通過させることによって、機械への追加投資を必要とせずに、所望の数の異なる色を車体の部品に塗布することができる。
【0040】
トロリー22は、塗装ステーション4から来て、最も速くかつ最も到達しやすいポートであるので、その車体を通路23から離れて面している焼付けステーション11のポート15に送っている。すなわち、ステーション11のすべてのポート15、19は、必要に応じて入口ポートまたは出口ポートの両方として機能することができる。
【0041】
トロリー22がその車体を送らなければならないときに、焼付けステーション11が占有されているが、焼付けステーション12が占有されていない場合、トロリー22はその事実を検出し、代わりに焼付けステーション12に送るように適合される。
【0042】
塗装ステーション2、3、4を通過した車体は、焼付ステーション11から取り出されると、図示しないトロリーによって塗装ステーション5に搬送される。塗装ステーション6の出口ポート15から、それは、空いている焼付けステーション11、12のいずれかに戻される。この最後の焼付けステーションでの処理の後、塗装プロセスが終了し、車体は次の組立ラインに搬送される。
【0043】
図4は、生産ラインのさらに最適化された実施形態を図示する。ここで、ホワイトボディを塗装ステーション1に積載することから、完全に塗装されたボディを焼付けステーションのうちの1つから搬出することまで、車体のすべての輸送はトロリーによって行われる。車体の内側および外側を塗装するためのステーション2、3および5、6の対は、それぞれ、内側および外側を塗装するように設計された組み合わされたステーション2/3および5/6によって置き換えられている。組合せステーション2/3および5/6のそれぞれにおいて車体を加工するのに必要な時間は、先の実施形態の単一機能ステーション2、3および5、6よりも長いので、各タイプの1つより多くが設けられる。したがって、加工された車体は、例えばステーション2/3の一方から搬出され、他方が1つの車体を加工して占有されている間に新しいものと交換されることができ、1つのトロリー16または22は、それらの両方にサービスを提供するのに十分である。
【0044】
塗装ステーション1、2/3および5/6ならびに焼付けステーション9から12は、通路23の両側に配置されている。全ては、通路23に面するポートを通して積載および搬出される。ワークステーションを通して車体を搬送する必要がないので、ワークステーションの搬送手段を省略することができ、ワークステーション1から6、9から12内に車体を適切に配置し、そこから車体を引き出すのに十分な動作範囲を有する搬送手段をトロリーが有している場合、十分である。
【0045】
焼付けステーション9から12の少なくとも一部、例えばステーション9および10は、塗装ステーション4においてベースコートの上にさらなる塗料層を受けるべき車体の一部に局所的に熱を加えるために、変位可能であるかまたは独立して制御可能なセグメント25を有するヒータ24を有する。したがって、車体がステーション2/3のうちの1つから取り出され、塗装ステーション4に向けられるとき、トロリーは、それをステーション9、10のうちの1つに運ばなければならず、そうでなければ、それは、すぐに利用可能であるかまたは利用可能になる焼付けステーション9から12のうちのいずれか1つにそれを運ぶことができる。また、ステーション4または5/6から取り出された車体は、ステーション9から12のいずれかにおいて焼付けられることができる。
【0046】
図5は、トロリーのうちの1つ、例えばトロリー16の概略図である。トロリーは車台26を有し、車台26は、下部構造29上に車体28を収容するための箱形区画27を支持する。
【0047】
車台26は、その角に4つのキャスター31を有する長方形のシャーシ30を備える。各キャスター31は、車輪32と、車輪32を駆動する第1の電気モータ33と、車輪32および垂直軸の周りのその関係付けられたモータ33を回転させる第2のモータ34とを備える。4つのキャスター31のモータ33、34は、搭載コンピュータ35によって独立して制御され、トロリーがカーブを走行し、その場で回転し、またはその向きを維持しながらその変位方向を任意に変更することを可能にする。
【0048】
車台はさらに、無塵空気によって区画27を加圧するための手段36と、モータ33、34、コンピュータ35、および加圧手段36に電力を供給するためのバッテリパック38とを担持する。加圧手段36は、外気を取り込み、それを濾過し、それを区画27内に吹き込むように設計されたファンおよびフィルタアセンブリを備えることができる。それらは、区画27内に供給される空気を加熱および/または冷却するための、および/またはトロリーが搬送している車体の直近のコーティングの要件に従ってその湿度を制御するための空調装置を備えることができる。空調装置によって区画27内に供給される空気は、区画の外側から引き込まれた新鮮な空気であってもよく、または区画自体からの再循環空気であってもよい。
【0049】
コンピュータ35は、生産ラインの他のコンピュータおよび車体28に取り付けられたトランスポンダ39と通信するためのワイヤレスインターフェース37を有する。
【0050】
区画27は、その4つの角でピラー40によって、ピラー40によって担持されるルーフ41によって、およびシャーシ30の2つのより長い側面に沿ってピラー40の間に伸張する側壁によって画定される。2つの短辺では、スライド可能なドアが入口ポート17および出口ポート18として機能する。ドアのリーフは可撓性または関節式であるので、ドアリーフが区画27の輪郭を越えて突出することなくドアを開くことができる。例えば、ドアリーフは、ピラー40の溝にガイドされ、コンピュータ35によって制御されるスプロケット43の回転によって上昇および下降することができるローラブラインド42として形成されてもよい。左側のポート17は、ローラブラインド42の大部分がルーフ41に沿って延びている開状態で示されており、右側のポート18は、ローラブラインド42の端部がシャーシ30に接触している状態で閉じられている。
【0051】
トロリー16がアイドル状態にあるとき、コンピュータ35は、車体が輸送の準備ができているかまたは間もなくなるワークステーションを示すワイヤレスメッセージをスキャンする。このようなメッセージを送るリクエスタは、ワークステーション自体であってもよいし、ワークステーションの動作を制御する中央コンピュータであってもよい。メッセージが受信されるとき、トロリー16はワークステーションに到達するのに必要な距離または時間を計算し、結果を示す宣言を行う。いくつかのそのような宣言の中から、要求者は、距離または時間が最小であるトロリーから1つを選び、その宣言が受諾されたことを示すリターンメッセージを前記トロリー16に送る。次に、トロリー16は、指示されたワークステーションに移動し、そのポート17、18の一方をワークステーションのポートにドッキングする。
【0052】
ワークステーションおよびトロリーの対向するポートが開いているとき、加圧手段36によって維持される区画27内の正圧は、空気がポート間の間隙を通って吹き出すことを確実にし、したがって、車体28および下部構造29が区画27内に移送される間、塵は区画27に達することができない。車体を受け取った後、ポート17は再び閉じる。
【0053】
区画27内での車体28の変位は、下部構造29を支持するためにシャーシ30の上面に回転可能に取り付けられた複数のローラ44によって容易にすることができる。車体を能動的に移動させるために、ローラのいくつかは電動式であってもよい。
【0054】
車体の行き先に関する命令は、中央コンピュータによって直接提供することができる。あるいは、コンピュータ35は、トランスポンダ39から、車体の加工状態を中央コンピュータから問い合わせるために使用できる識別子を検索するか、または車体の加工状態をそのトランスポンダ39から直接検索する。
【0055】
加工ステータスは、車体28に適用される塗装プロセスのステップ、それらの実行順序、それらが実行されるワークステーション、および適切な場合には、塗布される色の識別子、色が塗布される車体の領域などの加工データを識別する。塗装プロセスの特定のステップが実行されたときはいつでも、それは、加工ステータスにおいて実行済みとしてラベル付けされる。この加工状態に基づいて、コンピュータ35は、実行されるべき次のステップと、それを実行することができるワークステーションとを識別する。次に、これら全てに加工タイムスロットの割り当て要求を送る。ワークステーションは、それらの次の利用可能なタイムスロットを通信することによって応答し、コンピュータ35は、最小の待ち時間を必要とするものを選び、このタイムスロットを予約する応答メッセージを送り、車体28を予約したワークステーションに運ぶことを開始する。一方、加圧手段36は連続的に作動している。
【0056】
そのワークステーションへのドッキングは、ポート17または18のいずれかによって行うことができる。トロリーには、トロリーがワークステーションに接近するときに確実な嵌合によってワークステーションの嵌合輪郭にロックするように適合された機械的結合部45、例えば枢動可能なフックを設けることができ、これは、車体が2つの間で移送されている間にトロリーがワークステーションに対して移動することを防止する。さらに、電気コネクタ46を設けることができ、それによって、トロリーがワークステーションにドッキングされている間、主電力がワークステーションを介してトロリーに伝達される。ワークステーションとトロリーとの間で車体を移送し、区画27を加熱または冷却するような、トロリーのエネルギー集約的なタスクは、トロリーが電源に接続されている間にのみ可能にすることができる。これにより、バッテリ負荷が低減され、バッテリの充電に費やされるその動作時間の割合が低減されるので、トロリーの生産性が改善される。トロリーがワークステーションに接続されて費やす時間は、バッテリを再充電するために使用されてもよい。
【0057】
車体28が出された後、トロリー16はアイドル状態に戻り、上述のプロセスが繰り返される。
【0058】
参照番号
1から6 ワークステーション(塗装ステーション)
7から8 トラックスイッチ
9から12 ワークステーション(焼付けステーション)
13 ワークステーション(フラッシングステーション)
14 トラック
15 出口ポート
16 トロリー
17 入口ポート
18 出口ポート
19 入口ポート
20 直線
21 Uターン
22 トロリー
23 通路
24 ヒータ
25 セグメント
26 車台
27 区画
28 車体
29 下部構造
30 シャーシ
31 キャスター
32 ホイール
33,34 モータ
35 コンピュータ
36 加圧手段ワイヤレスインターフェース
38 バッテリパック
39 トランスポンダ
40 ピラー
41 ルーフ
42 ローラブラインド
43 スプロケット
44 ローラ
45 機械的結合
46 電気コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5