IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社東芝の特許一覧 ▶ 東芝エネルギーシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-避雷器 図1
  • 特許-避雷器 図2
  • 特許-避雷器 図3
  • 特許-避雷器 図4
  • 特許-避雷器 図5
  • 特許-避雷器 図6
  • 特許-避雷器 図7
  • 特許-避雷器 図8
  • 特許-避雷器 図9
  • 特許-避雷器 図10
  • 特許-避雷器 図11
  • 特許-避雷器 図12
  • 特許-避雷器 図13
  • 特許-避雷器 図14
  • 特許-避雷器 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】避雷器
(51)【国際特許分類】
   H01C 7/12 20060101AFI20240924BHJP
   H01C 1/14 20060101ALI20240924BHJP
   H01C 1/02 20060101ALI20240924BHJP
【FI】
H01C7/12
H01C1/14 Z
H01C1/02 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023532863
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(86)【国際出願番号】 JP2021025263
(87)【国際公開番号】W WO2023281561
(87)【国際公開日】2023-01-12
【審査請求日】2023-12-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 暁斗
(72)【発明者】
【氏名】金谷 和長
(72)【発明者】
【氏名】安食 富和
(72)【発明者】
【氏名】春日 靖宣
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-13142(JP,A)
【文献】特開2000-100544(JP,A)
【文献】特開2013-115389(JP,A)
【文献】国際公開第2019/143930(WO,A1)
【文献】特開2010-225502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 7/12
H01C 1/14
H01C 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の非直線抵抗体と、
前記非直線抵抗体の一端および他端にそれぞれ設けられた端部スペーサと、
前記端部スペーサの軸方向の外側の端にそれぞれ設けられた電極と、
前記電極どうしを連結する1または複数の絶縁板と、
少なくとも一方の前記端部スペーサと、前記非直線抵抗体との間に設けられた仕切板と、
を備え、
前記電極の側面に、突起部が形成され、
前記絶縁板に、前記突起部が嵌合する嵌合孔が形成され、
前記電極に、第1受け孔が形成され、
前記仕切板に、第2受け孔が形成され、
少なくとも一方の前記端部スペーサは、軸方向の外側の端に、前記第1受け孔に挿入される第1挿入凸部が形成され、かつ軸方向の内側の端に、前記第2受け孔に挿入される第2挿入凸部が形成されている、
避雷器。
【請求項2】
前記仕切板に、前記絶縁板を保持する嵌合凹部または保持孔が形成されている、請求項1記載の避雷器。
【請求項3】
前記端部スペーサと前記非直線抵抗体との間に、調整用スペーサを備え、
前記調整用スペーサの一方の端に、前記第2受け孔に挿入される第3挿入凸部が形成されている、請求項1または2に記載の避雷器。
【請求項4】
前記非直線抵抗体は複数設けられ、
複数の前記非直線抵抗体のうち2つの前記非直線抵抗体の間に、調整用スペーサを備え、
前記調整用スペーサと前記非直線抵抗体との間に、第2受け孔を有する第2仕切板が設けられ、
前記調整用スペーサの一方の端に、前記第2仕切板の前記第2受け孔に挿入される第3挿入凸部が形成されている、請求項1または2に記載の避雷器。
【請求項5】
前記電極の側面に、前記絶縁板が嵌合する嵌合溝が形成されている、請求項1~4のうちいずれか1項に記載の避雷器。
【請求項6】
前記突起部は、突出方向から見て円形状である、請求項1~5のうちいずれか1項に記載の避雷器。
【請求項7】
前記突起部は、基端に向けて拡径する根元部を有する、請求項1~6のうちいずれか1項に記載の避雷器。
【請求項8】
前記絶縁板の嵌合孔の内周面に、前記根元部に応じた拡径形状を有する拡径部が形成されている、請求項7記載の避雷器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、避雷器に関する。
【背景技術】
【0002】
避雷器は、電力機器などを高電圧から保護することができる。例えば、避雷器は、非直線抵抗体と、電極と、絶縁支持物と、外被とを備える。電極は、非直線抵抗体の両端にそれぞれ設けられる。例えば、絶縁支持物は、絶縁丸棒である。絶縁丸棒は、電極どうしを連結する。外被は、内部要素(非直線抵抗体、電極、絶縁丸棒など)を覆う。
【0003】
電極は、挿入孔を有する。挿入孔は、傾斜した内周面を有する。絶縁丸棒と電極とは、挿入孔に楔形状の固定部材が圧入されることよって固定される。避雷器の機械的強度を確保するため、絶縁丸棒と電極との固定構造は高い強度を有することが望まれている。
【0004】
前記避雷器は、絶縁丸棒と電極との固定構造が複雑であるため、組み立てが容易でなかった。前記避雷器は、構造が複雑であるため製造コストの低減が難しかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-229362号公報
【文献】特開2014-22632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、十分な機械的強度を有し、かつ構造が簡略である避雷器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の避雷器は、1または複数の非直線抵抗体と、端部スペーサと、電極と、1または複数の絶縁板と、仕切板と、を持つ。前記端部スペーサは、前記非直線抵抗体の一端および他端にそれぞれ設けられている。前記電極は、前記端部スペーサの軸方向の外側の端にそれぞれ設けられている。前記絶縁板は、前記電極どうしを連結する。前記仕切板は、少なくとも一方の前記端部スペーサと、前記非直線抵抗体との間に設けられている。前記電極の側面に、突起部が形成されている。前記絶縁板に、嵌合孔が形成されている。前記突起部は、前記嵌合孔に嵌合する。前記電極に、第1受け孔が形成されている。前記仕切板に、第2受け孔が形成されている。少なくとも一方の前記端部スペーサは、軸方向の外側の端に第1挿入凸部が形成され、かつ軸方向の内側の端に第2挿入凸部が形成されている。前記第1挿入凸部は、前記第1受け孔に挿入される。前記第2挿入凸部は、前記第2受け孔に挿入される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の避雷器の断面図。
図2】第1実施形態の避雷器の内部構造の平面図。
図3】第1実施形態の避雷器の内部構造の断面図。
図4】第1実施形態の避雷器の内部構造の側面図。
図5】第1実施形態の避雷器の電極の上面図。
図6】第1実施形態の避雷器の電極の側面図。
図7】第1実施形態の避雷器の電極の下面図。
図8】第1実施形態の避雷器の内部構造の側面図。
図9】第1実施形態の避雷器の絶縁板の断面図。
図10】第1実施形態の避雷器の仕切板の平面図。
図11】第1実施形態の避雷器の仕切板の側面図。
図12】仕切板の変形例の平面図。
図13】仕切板の変形例の側面図。
図14】第2実施形態の避雷器の内部構造の一部の断面図。
図15】第3実施形態の避雷器の内部構造の一部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の避雷器を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、第1実施形態の避雷器100を示す断面図である。図2は、避雷器100の内部構造の平面図である。図3は、避雷器100の内部構造の断面図である。図4は、避雷器100の内部構造の側面図である。
【0011】
以下の説明では、図1に即して避雷器100の位置関係を仮に規定する。図1に示すように、複数の非直線抵抗体1は上下方向に積み重なっている。非直線抵抗体群4は上下方向に延在する。上下方向は「軸方向」である。上下方向から見ることを平面視という。
【0012】
避雷器100は、複数の非直線抵抗体1と、一対の端部スペーサ2と、一対の電極3と、複数の絶縁板5と、仕切板6と、一対の押さえ板7と、固定具8と、外被10とを備える。
【0013】
非直線抵抗体1は、電圧の上昇に従って抵抗が減少するという非直線的な電流-電圧特性を有する素子である。例えば、非直線抵抗体1は、酸化亜鉛を主成分とする。例えば、非直線抵抗体1は、円板状または円柱状である。非直線抵抗体1の中心軸は上下方向に沿う。複数の非直線抵抗体1は、上下方向(軸方向)に積み重ねられて非直線抵抗体群4を形成する。非直線抵抗体群4の上端は「非直線抵抗体の一端」の一例である。非直線抵抗体群4の下端は「非直線抵抗体の他端」の一例である。
【0014】
端部スペーサ2は、非直線抵抗体群4の上端(一端)および下端(他端)にそれぞれ設けられている。非直線抵抗体群4の上端(一端)に設けられた端部スペーサ2は、第1端部スペーサ2Aである。非直線抵抗体群4の下端(他端)に設けられた端部スペーサ2は、第2端部スペーサ2Bである。端部スペーサ2は、非直線抵抗体1と同軸に配置されている。端部スペーサ2は、金属などの導体で形成されている。
【0015】
第1端部スペーサ2Aは、スペーサ本体11Aと、第1挿入凸部12Aとを備える。例えば、スペーサ本体11Aは、円板状または円柱状である。スペーサ本体11Aの中心軸は上下方向に沿う。スペーサ本体11Aの外径は、非直線抵抗体1の外径と同じであってよい。
【0016】
第1挿入凸部12Aは、第1端部スペーサ2Aの上端(軸方向の外側の端)に形成されている。第1挿入凸部12Aは、スペーサ本体11Aの上面から上方に突出する。第1挿入凸部12Aは、スペーサ本体11Aと同軸の円柱状である。第1挿入凸部12Aの外径は、スペーサ本体11Aの外径より小さい。
【0017】
第2端部スペーサ2Bは、スペーサ本体11Bと、第1挿入凸部12Bと、第2挿入凸部13Bを備える。例えば、スペーサ本体11Bは、円板状または円柱状である。スペーサ本体11Bの中心軸は上下方向に沿う。スペーサ本体11Bの外径は、非直線抵抗体1の外径と同じであってよい。
【0018】
第1挿入凸部12Bは、第2端部スペーサ2Bの下端(軸方向の外側の端)に形成されている。第1挿入凸部12Bは、スペーサ本体11Bの下面から下方に突出する。第1挿入凸部12Bは、スペーサ本体11Bと同軸の円柱状である。第1挿入凸部12Bの外径は、スペーサ本体11Bの外径より小さい。
【0019】
第2挿入凸部13Bは、第2端部スペーサ2Bの上端(軸方向の内側の端)に形成されている。第2挿入凸部13Bは、スペーサ本体11Bの上面から上方に突出する。第2挿入凸部13Bは、スペーサ本体11Bと同軸の円柱状または円板状である。第2挿入凸部13Bの外径は、スペーサ本体11Bの外径より小さい。
【0020】
端部スペーサ2と非直線抵抗体1との間、または、2つの非直線抵抗体1の間には、1または複数の調整用スペーサ(図示略)を設けることもできる。例えば、調整用スペーサは、金属などの導体で形成される。調整用スペーサを使用することによって、非直線抵抗体群4と調整用スペーサとを含む積層体(非直線抵抗体群)の全体長さを調整できる。
【0021】
電極3は、第1端部スペーサ2Aの上端(軸方向の外側の端)および第2端部スペーサ2Bの下端(軸方向の外側の端)に、それぞれ設けられている。第1端部スペーサ2Aの上端に設けられた電極3は第1電極3Aである。第2端部スペーサ2Bの下端に設けられた電極3は第2電極3Bである。例えば、電極3は、円柱状に形成されている(図2参照)。電極3は、非直線抵抗体1および端部スペーサ2と同軸に配置されている。
【0022】
図3に示すように、第1電極3Aの下面には、第1受け孔15Aが形成されている。第1受け孔15Aは、平面視において円形状である。第1受け孔15Aは、上下方向に沿う中心軸を有する円柱状の内部空間を形成する。第1受け孔15Aには、第1端部スペーサ2Aの第1挿入凸部12Aが挿入される。第1受け孔15Aの内径は、第1挿入凸部12Aの外径とほぼ同じ、または第1挿入凸部12Aの外径よりやや大きい。第1受け孔15Aの深さ(上下方向の寸法)は、第1挿入凸部12Aの突出長さとほぼ同じであってよい。第1受け孔15Aに第1挿入凸部12Aが挿入されると、第1挿入凸部12Aは、径方向の移動が規制される。
【0023】
第2電極3Bの上面には、第1受け孔15Bが形成されている。第1受け孔15Bは、平面視において円形状である。第1受け孔15Bは、上下方向に沿う中心軸を有する円柱状の内部空間を形成する。第1受け孔15Bには、第2端部スペーサ2Bの第1挿入凸部12Bが挿入される。第1受け孔15Bの内径は、第1挿入凸部12Bの外径とほぼ同じ、または第1挿入凸部12Bの外径よりやや大きい。第1受け孔15Bの深さ(上下方向の寸法)は、第1挿入凸部12Bの突出長さとほぼ同じであってよい。第1受け孔15Bに第1挿入凸部12Bが挿入されると、第1挿入凸部12Bは、径方向の移動が規制される。
【0024】
電極3は、金属などの導体で形成されている。電極3の構成材料としては、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼などが挙げられる。電極3は、ダイカスト等で作製された鋳造品であってよい。
【0025】
電極3の中央には、挿入孔16が形成されている。第1電極3Aの挿入孔16は、第1受け孔15Aの内天面から第1電極3Aの上面にかけて、第1電極3Aを上下方向に貫通して形成されている。第2電極3Bの挿入孔16は、第1受け孔15Bの底面から第2電極3Bの下面にかけて、第2電極3Bを上下方向に貫通して形成されている。第1電極3Aの挿入孔16の内周面には、雌ネジが形成されている。
【0026】
電極3には、取付孔17が形成されている。取付孔17は、第1受け孔15Aおよび第1受け孔15Bの内周面から電極3の径方向に沿って形成されている。取付孔17の一端は、突起部9の先端面(突出端面)に開口する。取付孔17の内周面には雌ネジが形成されている。
【0027】
図2に示すように、電極3の外側面には、絶縁板5が嵌合可能な嵌合溝21が形成されている。嵌合溝21は、電極3の外側面に上下方向に沿って形成されている(図6参照)。例えば、嵌合溝21は、平面視において矩形状である。嵌合溝21の幅は、絶縁板5の幅と同じ、または絶縁板5の幅よりやや大きい。例えば、嵌合溝21の深さは、絶縁板5の厚さより大きい。
【0028】
本実施形態では、電極3の外周面に、軸周り方向に間隔をおいて3つの嵌合溝21が形成されている。電極3に形成される嵌合溝21の数は特に限定されない。嵌合溝21の数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0029】
避雷器100は、電極3の外側面に、絶縁板5が嵌合する嵌合溝21が形成されているため、曲げ方向の力が加えられたときに、電極3と絶縁板5との相対変位を規制することができる。例えば、絶縁板5が突起部9を中心とする回動によって傾斜する変位を規制することができる。よって、避雷器100の機械的強度を高めることができる。
【0030】
図5は、第1電極3Aの上面図である。図6は、第1電極3Aの側面図である。図7は、第1電極3Aの下面図である。図5図7に示すように、嵌合溝21の底面21aには、突起部9が形成されている。突起部9は、底面21aから径方向の外方(電極3の中心軸から離れる方向)に突出する。
【0031】
図6に示すように、突起部9は、突出方向から見て円形状である。そのため、避雷器100に曲げ方向の力が加えられたときに、絶縁板5が突起部9を中心とする回動によって傾斜する変位が起きた場合でも、突起部9に過大な力が加えられるのを回避できる。
【0032】
図5および図7に示すように、突起部9は、根元部22と、突起主部23とを備える。突起主部23は、円柱状に形成されている。根元部22は、基端に向けて徐々に拡径する形状とされている。すなわち、根元部22は、突起部9の突出方向とは反対の方向に徐々に拡径する。例えば、根元部22の高さ寸法(突起部9の突出方向の寸法)は、5mm以上であってよい。根元部22は、C面取り形状またはR面取り形状であってよい。
突起部9は、拡径形状の根元部22を有するため、基端部分への応力集中を抑えることができる。よって、突起部9の機械的強度を高めることができる。
【0033】
図1および図3に示すように、固定具8は、第1電極3Aの挿入孔16に挿入されている。固定具8の外周面には雄ネジが形成されている。固定具8の雄ネジは挿入孔16の雌ネジに嵌合する。固定具8は、金属などの導体で形成されている。固定具8は、軸周りに回転させることによって下降し、第1端部スペーサ2Aを非直線抵抗体1に向けて押圧する。これにより、非直線抵抗体1および端部スペーサ2に圧縮荷重を加えることができる。そのため、非直線抵抗体1および端部スペーサ2における接触抵抗を低減できる。よって、避雷器100の信頼性を高めることができる。
【0034】
図4に示すように、絶縁板5は、矩形の平板状とされている。絶縁板5は、上下方向に延在する長方形状であってよい。絶縁板5は、樹脂などの絶縁材料で形成されている。絶縁板5の構成材料は、FRP(繊維強化プラスチック)が好ましい。例えば、FRPは、GFRP(炭素繊維強化プラスチック)である。
【0035】
図1に示すように、絶縁板5は、電極3どうしを連結する。すなわち、絶縁板5は、第1電極3Aと第2電極3Bとを連結する。絶縁板5の上端(一端)を含む部分は第1電極3Aの側面に対面する。絶縁板5の下端(他端)を含む部分は第2電極3Bの側面に対面する。
図2に示すように、本実施形態では、3つの絶縁板5が用いられる。3つの絶縁板5はそれぞれ嵌合溝21に嵌合する。
【0036】
図8は、避雷器100の内部構造の側面図である。
図8に示すように、絶縁板5の上部および下部には、それぞれ突起部9が嵌合する嵌合孔24(嵌合凹部)が形成されている。嵌合孔24は、突起部9が嵌合可能な形状を有する。嵌合孔24は、絶縁板5の内面から外面にかけて、絶縁板5を貫通して形成されている。嵌合孔24は、絶縁板5の厚さ方向から見て円形状である。絶縁板5は、嵌合孔24が突起部9に嵌合することによって、電極3に対して位置決めすることができる。
なお、嵌合孔24は貫通孔に限らず、絶縁板5の内面に形成された凹部であってもよい。
【0037】
図9は、絶縁板5の断面図である。図9は、図8のI-I断面図である。
図9に示すように、絶縁板5の内面5aは、嵌合溝21の底面21aに対面する。嵌合孔24の内周面には、拡径部25が形成されている。拡径部25は、突起部9の根元部22に応じた拡径形状を有する。拡径部25は、内面5aに向かって徐々に拡径する。絶縁板5は、拡径部25を有するため、嵌合孔24は突起部9に応じた形状となる。そのため、絶縁板5と突起部9との嵌合強度を高めることができる。
【0038】
図4に示すように、押さえ板7は、例えば、長手方向が上下方向に沿う矩形状(長方形状)である。押さえ板7は、絶縁板5が電極3から離れる方向に移動するのを規制する。図2および図3に示すように、押さえ板7の内面の一部は絶縁板5の外面に対面する。押さえ板7の内面の他の一部は、突起部9の先端面に対面する。押さえ板7は、取付孔17にボルト(固定具)18が締結することによって電極3に固定されている。押さえ板7は、ボルト18のヘッド部に押さえつけられることによって、絶縁板5を押さえつけた状態で電極3に固定される。
【0039】
図1に示すように、仕切板6は、第2端部スペーサ2Bと、非直線抵抗体群4の下端との間に設けられている。仕切板6は、上下方向に対して垂直な姿勢とされている。仕切板6は、金属などの導体で形成されている。仕切板6は、第1仕切板の一例である。
【0040】
図10は、仕切板6の平面図である。図11は、仕切板6の側面図である。
図10および図11に示すように、仕切板6は、円板状とされている。仕切板6の外周縁には、絶縁板5が嵌合可能な複数の嵌合凹部31(保持凹部)が形成されている。例えば、嵌合凹部31は、平面視において矩形状である。嵌合凹部31の幅は、絶縁板5の幅と同じ、または絶縁板5の幅よりやや大きい。例えば、嵌合凹部31の深さは、絶縁板5の厚さより大きい。嵌合凹部31は、絶縁板5を保持する。
【0041】
本実施形態では、仕切板6の外周縁に、軸周り方向に間隔をおいて3つの嵌合凹部31が形成されている。仕切板6に形成される嵌合凹部31の数は特に限定されない。嵌合凹部31の数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0042】
仕切板6は、複数の絶縁板5の相対位置の変化を規制できる。例えば、仕切板6は、複数の絶縁板5が互いに近づく方向に変位するのを規制することができる。仕切板6は、絶縁板5が、非直線抵抗体1および端部スペーサ2に近づく方向に変位するのを規制できる。
【0043】
図10に示すように、仕切板6の中央には、第2受け孔32が形成されている。第2受け孔32は、円形状とされている。
図1に示すように、第2受け孔32には、第2端部スペーサ2Bの第2挿入凸部13Bが挿入される。第2受け孔32の内径は、第2挿入凸部13Bの外径とほぼ同じ、または第2挿入凸部13Bの外径よりやや大きい。第2受け孔32に第2挿入凸部13Bが挿入されると、第2挿入凸部13Bは、径方向の移動が規制される。
【0044】
本実施形態では、仕切板6は、第2端部スペーサ2Bと非直線抵抗体群4との間だけに設けられているが、仕切板6は、2つの端部スペーサ2のうち少なくとも一方と、非直線抵抗体1との間に設けられていればよい。例えば、仕切板6は、第1端部スペーサ2Aと非直線抵抗体群4との間と、第2端部スペーサ2Bと非直線抵抗体群4との間との両方に設けられていてもよい。仕切板6は、第1端部スペーサ2Aと非直線抵抗体群4との間のみに設けられていてもよい。
【0045】
仕切板6は、後述する調整用スペーサ(図示略)と非直線抵抗体1の間、あるいは2つの調整用スペーサの間に設けられてもよい。仕切板6は、第1端部スペーサ2Aと非直線抵抗体群4との間と、第2端部スペーサ2Bと非直線抵抗体群4との間と、2つの調整用スペーサの間とにそれぞれ設けられていてもよい。
【0046】
仕切板6は、複数の絶縁板5の相対位置の変化、および、非直線抵抗体群4と絶縁板5との相対位置の変化を抑制することができる。避雷器100に曲げが生じると、曲げ方向の外側(曲げ状態の外周側)の絶縁板5には長さ方向の引張応力が生じる。曲げ方向の内側(曲げ状態の内周側)の絶縁板5には圧縮応力が生じる。避雷器100では、仕切板6によって、例えば、曲げ方向の外側の絶縁板5に生じた応力を内側の絶縁板5に分散させることができる。そのため、応力の集中を抑制することができる。よって、避雷器100の機械的強度を高めることができる。
【0047】
図1に示すように、外被10は、シリコーン樹脂などの樹脂によって形成される。外被10は、非直線抵抗体1、端部スペーサ2、電極3、絶縁板5および押さえ板7などを覆う。避雷器100は、樹脂製の外被10を有するため、ポリマー形避雷器である。避雷器100は、電力機器などを高電圧から保護するために用いられる。
【0048】
避雷器100は、一対の電極3を端子として、外部回路(図示略)に接続される。外部回路は、一対の電極3に電圧を印加する。非直線抵抗体1は、非直線的な電流-電圧特性を有する。非直線抵抗体1は、所定の値以下の電圧では電流がほとんど流れず、絶縁体のように機能する。非直線抵抗体1は、電圧が所定の値を越えると、電流が流れるようになる。よって、外部回路に、雷などによりサージ電圧が印加されると、避雷器100が通電状態に変化することによって、サージ電圧が抑制される。
【0049】
避雷器100では、第2端部スペーサ2Bの下端に、第2電極3Bの第1受け孔15Bに挿入される第1挿入凸部12Bが形成されている。第2端部スペーサ2Bの上端には、仕切板6の第2受け孔32に挿入される第2挿入凸部13Bが形成されている。そのため、第2電極3Bと、第2端部スペーサ2Bと、仕切板6とは、凹凸嵌合によって接続される。したがって、避雷器100に加えられた曲げ荷重を、絶縁板5だけでなく、仕切板6と端部スペーサ2と電極3によって負担することができる。よって、避雷器100の機械的強度を高めることができる。
【0050】
第1端部スペーサ2Aには、第1電極3Aの第1受け孔15Aに挿入される第1挿入凸部12Aが形成されている。第2端部スペーサ2Bには、第2電極3Bの第1受け孔15Bに挿入される第1挿入凸部12Bが形成されている。そのため、第1端部スペーサ2Aと第1電極3Aとの相対的な傾動は規制される。第2端部スペーサ2Bと第2電極3Bとの相対的な傾動は規制される。したがって、避雷器100に加えられた曲げ荷重を、絶縁板5だけでなく、端部スペーサ2と電極3によって負担することができる。よって、避雷器100の機械的強度を高めることができる。
この構成によれば、避雷器100に加えられた曲げ荷重の一部を、端部スペーサ2と電極3によって負担するため、突起部9と嵌合孔24内面との接触箇所における荷重増加を抑えることができる。よって、突起部9および嵌合孔24内面における破損を回避できる。
【0051】
避雷器100では、電極3の側面に突起部9が形成されている。絶縁板5は、突起部9が嵌合する嵌合孔24を有する。突起部9と嵌合孔24との嵌合によって絶縁板5を電極3に位置決めすることができるため、絶縁板5および電極3に応力の集中は起こりにくい。よって、避雷器100に十分な機械的強度を与えることができる。絶縁板5と電極3との位置決め構造の機械的強度を高めることができるため、電極3として、アルミニウム(またはアルミニウム合金)などの安価な材料を用いた鋳造品を使用できる。よって、製造コスト低減を図ることもできる。
【0052】
避雷器100は、突起部9と嵌合孔24とを嵌合させる構造を有するため、楔形状のスペーサによる固定構造を有する避雷器と比べ、絶縁板5と電極3との位置決め構造を簡略にすることができる。構造が簡略であるため、避雷器100は組み立てが容易である。避雷器100は、楔形状のスペーサによる固定構造を有する避雷器と異なり、組み立てに特殊な工具を用いる必要はない。
【0053】
絶縁板5は、定尺の板材を短冊状に切り出すことで作製することができる。そのため、避雷器100は、絶縁ロッドを用いる場合に比べて製造が容易である。よって、避雷器100は、製造コストを抑えることができる。
【0054】
図1に示す避雷器100は、複数の非直線抵抗体1を備えるが、非直線抵抗体の数は1でもよい。すなわち、非直線抵抗体の数は1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0055】
避雷器100は、電極3に突起部9が形成され、かつ絶縁板5に嵌合孔24が形成されているが、電極3と絶縁板5の構成は特に限定されない。例えば、絶縁板に突起部が形成され、かつ電極に嵌合孔が形成されていてもよい。すなわち、実施形態の避雷器では、電極と絶縁板のうち一方に突起部が形成され、かつ電極と絶縁板のうち他方に嵌合孔が形成されていてもよい。
【0056】
避雷器100では、突起部9の形状は円形状とされているが、突起部9の形状は特に限定されない。突出方向から見た突起部の形状は、長円形状、楕円形状、矩形状などでもよい。
【0057】
次に、仕切板6の変形例について説明する。
図12は、仕切板6の変形例である仕切板36の平面図である。図13は、仕切板36の側面図である。図10および図11に示す仕切板6との共通構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0058】
図12および図13に示すように、仕切板36は、嵌合凹部31に代えて、保持孔33が形成されている点で、図10および図11に示す仕切板6と異なる。保持孔33は、仕切板36の外周縁から内方に離れて形成されている。保持孔33は、仕切板6の断面形状に即した形状を有する。例えば、保持孔33は、平面視において矩形状(長方形状)である。保持孔33の幅(長辺の長さ)は、絶縁板5の幅と同じ、または絶縁板5の幅よりやや大きい。例えば、保持孔33の短辺寸法は、絶縁板5の厚さと同じ、または絶縁板5の厚さより大きい。保持孔33には、絶縁板5が挿通する。
【0059】
本実施形態では、仕切板36に、軸周り方向に間隔をおいて3つの保持孔33が形成されている。仕切板36に形成される保持孔33の数は特に限定されない。保持孔33の数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0060】
仕切板36は、複数の絶縁板5の相対位置の変化を規制できる。例えば、仕切板36は、複数の絶縁板5が互いに近づく方向に変位するのを規制することができる。仕切板36は、絶縁板5が、非直線抵抗体1および端部スペーサ2に近づく方向に変位するのを規制できる。仕切板36は、複数の絶縁板5が互いに離れる方向に変位するのを規制することもできる。
【0061】
図14は、第2実施形態の避雷器200を示す断面図である。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。図14に示すように、避雷器200は、調整用スペーサ42を備える。調整用スペーサ42は、最も下に位置する非直線抵抗体1と、第2端部スペーサ2Bとの間に設けられている。調整用スペーサ42は、スペーサ本体43と、第3挿入凸部44とを備える。例えば、スペーサ本体43は、円板状または円柱状である。スペーサ本体43の中心軸は上下方向に沿う。スペーサ本体43の外径は、非直線抵抗体1の外径と同じであってよい。
【0062】
第3挿入凸部44は、調整用スペーサ42の下端に形成されている。第3挿入凸部44は、スペーサ本体43の下面から下方に突出する。第3挿入凸部44は、スペーサ本体43と同軸の円柱状である。第3挿入凸部44の外径は、スペーサ本体43の外径より小さい。第3挿入凸部44は、仕切板6の第2受け孔32に挿入される。第3挿入凸部44の外径は、第2受け孔32の内径とほぼ同じ、または第2受け孔32の内径よりやや小さい。第3挿入凸部44が第2受け孔32に挿入されると、第3挿入凸部44は、仕切板6に対する径方向の移動が規制される。
【0063】
調整用スペーサ42は、金属などの導体で形成される。非直線抵抗体群204は、複数の非直線抵抗体1と、調整用スペーサ42とを備える。避雷器200の、調整用スペーサ42以外の構成は、図1に示す避雷器100と同じであってよい。
【0064】
避雷器200では、調整用スペーサ42によって、非直線抵抗体群204の全体長さを調整することができる。調整用スペーサ42は、仕切板6の第2受け孔32に嵌合する第3挿入凸部44を有するため、調整用スペーサ42を仕切板6に対して位置決めできる。
【0065】
調整用スペーサの設置位置は、最も下に位置する非直線抵抗体1と第2端部スペーサ2Bとの間に限らない。調整用スペーサは、最も上に位置する非直線抵抗体1と第1端部スペーサ2Aとの間に設けられていてもよい。調整用スペーサは、最も下に位置する非直線抵抗体1と第2端部スペーサ2Bとの間と、最も上に位置する非直線抵抗体1と第1端部スペーサ2Aとの間との両方に設けられていてもよい。調整用スペーサの数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0066】
図15は、第3実施形態の避雷器300を示す断面図である。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。図15に示すように、避雷器300は、調整用スペーサ52と、仕切板306とを備える。調整用スペーサ52は、最も下に位置する非直線抵抗体1(1A)と、下から2番目の非直線抵抗体1(1B)との間に設けられている。調整用スペーサ52は、上下に隣り合う2つの非直線抵抗体1の間に設けられている。調整用スペーサ52は、調整用スペーサ42(図14参照)と同様に、スペーサ本体43と、第3挿入凸部44とを備える。第3挿入凸部44は、調整用スペーサ42の上端に形成されている。第3挿入凸部44は、スペーサ本体43の上面から上方に突出する。調整用スペーサ52は、金属などの導体で形成される。非直線抵抗体群304は、複数の非直線抵抗体1と、調整用スペーサ52とを備える。
【0067】
仕切板306は、仕切板6と同じ構成である。仕切板306は、調整用スペーサ52と、下から2番目の非直線抵抗体1(1B)との間に設けられている。調整用スペーサ52の第3挿入凸部44は、仕切板306の第2受け孔32に挿入される。仕切板306は、第2仕切板の一例である。
避雷器300の、調整用スペーサ52および仕切板306以外の構成は、図1に示す避雷器100と同じであってよい。上下に隣り合う非直線抵抗体1の間に設けられる調整用スペーサの数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0068】
避雷器300では、調整用スペーサ52によって、非直線抵抗体群304の全体長さを調整することができる。調整用スペーサ52は、仕切板306の第2受け孔32に嵌合する第3挿入凸部44を有するため、調整用スペーサ52を仕切板306に対して位置決めできる。
【0069】
実施形態の避雷器では、第1端部スペーサの上端(軸方向の外側の端)に第2挿入凸部が形成され、かつ第1端部スペーサの下端(軸方向の内側の端)に、第2受け孔に挿入される第1挿入凸部が形成されていてもよい。
実施形態の避雷器では、2つの端部スペーサのうち一方の端部スペーサのみについて、外側の端に第1挿入凸部が形成され、かつ内側の端に第2挿入凸部が形成されていてもよい。実施形態の避雷器では、2つの端部スペーサの両方について、外側の端に第1挿入凸部が形成され、かつ内側の端に第2挿入凸部が形成されていてもよい。すなわち、実施形態の避雷器では、少なくとも一方の端部スペーサは、外側の端に第1挿入凸部が形成され、かつ内側の端に第2挿入凸部が形成されている。仕切板の数は1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0070】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、端部スペーサの軸方向の外側の端に、第1受け孔に挿入される第1挿入凸部が形成され、端部スペーサの軸方向の内側の端に、仕切板の第2受け孔に挿入される第2挿入凸部が形成されている。そのため、電極と、端部スペーサと、仕切板とが、凹凸嵌合によって接続される。したがって、避雷器に加えられた曲げ荷重を、絶縁板だけでなく、仕切板と端部スペーサと電極によって負担することができる。よって、避雷器の機械的強度を高めることができる。
実施形態の避雷器は、突起部と嵌合孔とを嵌合させる構造を有するため、楔形状のスペーサによる固定構造を有する避雷器と比べ、絶縁板と電極との位置決め構造を簡略にすることができる。構造が簡略であるため、避雷器は組み立てが容易である。
【0071】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0072】
1 非直線抵抗体
2 端部スペーサ
3 電極
5 絶縁板
6 仕切板
7 押さえ板
8 固定具
9 突起部
10 外被
11A,11B スペーサ本体
12A,12B 第1挿入凸部
13B 第2挿入凸部
15A,15B 第1受け孔
16 挿入孔
17 取付孔
18 ボルト(固定具)
21 嵌合溝
22 根元部
23 突起主部
24 嵌合孔
25 拡径部
31 嵌合凹部
32 第2受け孔
33 保持孔
36 仕切板
42,52 調整用スペーサ
44 第3挿入凸部
100,200,300 避雷器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15