(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】自動車用超音波センサ・システムおよび超音波センサ・システムの作動方法
(51)【国際特許分類】
G01S 7/52 20060101AFI20240924BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20240924BHJP
【FI】
G01S7/52 U
G01S15/931
(21)【出願番号】P 2023534706
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021083674
(87)【国際公開番号】W WO2022122490
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-08-07
(31)【優先権主張番号】102020132634.3
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508108903
【氏名又は名称】ヴァレオ・シャルター・ウント・ゼンゾーレン・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】ファビアン、ハーク
(72)【発明者】
【氏名】デニス、アシュケナジ
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102018124024(DE,A1)
【文献】特表2020-509378(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0329080(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102017128837(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/52- 7/64
G01S 15/00-15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車(11)用の超音波センサ・システム(1)であって、
超音波センサ(2)と、
試験制御装置(10)と、を備え、
前記超音波センサ(2)は、超音波を発振および検出するための電気音響変換装置(7)と、前記電気音響変換装置(7)に電気的試験信号を出力し、前記電気的試験信号に対する電気的応答信号を前記電気音響変換装置(7)から捕捉するように構成された電気
的試験装置(8)と、を含み、
前記試験制御装置(10)は、前記電気的試験装置(8)を使用して、複数の測定点(14、15)で、前記電気的試験信号の周波数と振幅を変化させながら、前記電気的応答信号の特性変数を捕捉するように構成され
、
前記電気的試験信号は、定電流信号であり、
それぞれの前記特性変数が、それぞれの前記測定点(14、15)における前記電気的試験信号の周波数及び振幅における前記電気的応答信号の電圧の振幅及び/又は位相角を含む、超音波センサ・システム(1)。
【請求項2】
前記
電気的試験信号の前記複数の測定点(14、15)は、距離測定が実施されている間、前記超音波センサ(2)の制御信号の動作点に対応して選択される、請求項
1に記載の超音波センサ・システム。
【請求項3】
自動車(11)用の超音波センサ・システム(1)であって、
超音波センサ(2)と、
試験制御装置(10)と、を備え、
前記超音波センサ(2)は、超音波を発振および検出するための電気音響変換装置(7)と、前記電気音響変換装置(7)に電気的試験信号を出力し、前記電気的試験信号に対する電気的応答信号を前記電気音響変換装置(7)から捕捉するように構成された電気的試験装置(8)と、を含み、
前記試験制御装置(10)は、前記電気的試験装置(8)を使用して、複数の測定点(14、15)で、前記電気的試験信号の周波数と振幅を変化させながら、前記電気的応答信号の特性変数を捕捉するように構成され、
前記複数の測定点(14、15)は、それぞれ、周波数範囲内の複数の異なる周波数に対して正確に1つの測定点(14、15)を含み、
それぞれの前記測定点(14、15)の振幅が、前記測定点(14、15)の周波数に基づいて選択される
、超音波センサ・システム。
【請求項4】
前記周波数範囲内の複数の測定点(14、15)は、前記電気音響変換装置の前の試験中に、捕捉されるべき特性変数の高い勾配が測定された第1の周波数区間(17)において、前記高い勾配よりも低い勾配が測定された周波数区間(16)においてよりも、互いに近接するように、選択される、請求項
3に記載の超音波センサ・システム。
【請求項5】
前記周波数範囲内の隣接する周波数の2つの測定点(14、15)の各場合における振幅のうち、一方の振幅が、前記隣接する周波数に基づいて選択される振幅範囲の下限値で選択され、他方の振幅が、前記隣接する周波数に基づいて選択される振幅範囲の上限値で選択される、請求項
3又は
4に記載の超音波センサ・システム。
【請求項6】
前記試験制御装置(10)は、前記試験制御装置(10)によって捕捉された複数の特性変数に基づいて、前記電気音響変換装置(7)の状態を、前記自動車(11)の制御装置(3)に伝えるように構成される、請求項1~
5のいずれか一項に記載の超音波センサ・システム。
【請求項7】
電気的制御信号を印加することにより、前記電気音響変換装置(7)を励起して超音波を発振させ、その後に前記電気音響変換装置(7)からの電気的検出信号を捕捉して評価することにより距離測定を実施するように構成された測定制御装置(9)を、更に備え、
前記測定制御装置(9)は、前記試験制御装置(10)によって捕捉された複数の特性変数に基づいて距離測定を実施するように構成される、請求項1~
6のいずれか一項に記載の超音波センサ・システム。
【請求項8】
前記超音波センサ(2)は、前記試験制御装置(10)を含む、請求項1~
7のいずれか一項に記載の超音波センサ・システム。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか一項に記載の超音波センサ・システム(1)を少なくとも1つ有する、自動車(11)。
【請求項10】
自動車(11)用の超音波センサ・システム(1)を動作させる方法であって、
前記超音波センサ・システム(1)は、超音波を発振および検出する電気音響変換装置(7)を有する超音波センサ(2)と、電気的試験装置(8)と、さらに試験制御装置(10)と、を含み、
前記方法は、
前記
電気的試験装置(8)によって前記電気音響変換装置(7)に電気的試験信号を出力するステップ(S1)と、
前記
電気的試験装置(8)によって前記電気音響変換装置(7)からの電気的応答信号を捕捉するステップ(S2)と、
前記試験制御装置(10)によって、前記電気
的試験信号の周波数と振幅を変化させながら、複数の測定点(14、15)における前記電気的応答信号の特性変数を捕捉するステップ(S3)と、を備え
、
前記電気的試験信号は、定電流信号であり、
それぞれの前記特性変数が、それぞれの前記測定点(14、15)における前記電気的試験信号の周波数及び振幅における前記電気的応答信号の電圧の振幅及び/又は位相角を含む、方法。
【請求項11】
自動車(11)用の超音波センサ・システム(1)を動作させる方法であって、
前記超音波センサ・システム(1)は、超音波を発振および検出する電気音響変換装置(7)を有する超音波センサ(2)と、電気的試験装置(8)と、さらに試験制御装置(10)と、を含み、
前記方法は、
前記電気的試験装置(8)によって前記電気音響変換装置(7)に電気的試験信号を出力するステップ(S1)と、
前記電気的試験装置(8)によって前記電気音響変換装置(7)からの電気的応答信号を捕捉するステップ(S2)と、
前記試験制御装置(10)によって、前記電気的試験信号の周波数と振幅を変化させながら、複数の測定点(14、15)における前記電気的応答信号の特性変数を捕捉するステップ(S3)と、を備え、
前記複数の測定点(14、15)は、それぞれ、周波数範囲内の複数の異なる周波数に対して正確に1つの測定点(14、15)を含み、
それぞれの前記測定点(14、15)の振幅が、前記測定点(14、15)の周波数に基づいて選択される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用超音波センサの分野に関し、より具体的には、自動車用超音波センサ・システムおよび超音波センサ・システムを作動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の環境内の物体からの距離を測定するために使用される、超音波を発生および検出するための電気音響変換装置を有する超音波センサが知られている。この例では、超音波が発振され、自動車の環境から戻ってくるエコー信号が捕捉される。対象物からの距離は、信号の飛行時間(time of flight)に基づいて決定される。このような測定は、例えば、自動車の運転または駐車支援システムによって使用される。
【0003】
ピエゾ素子の経年変化によるドメイン効果(domain effect)など、電気音響変換装置に内部または外部から誘発される変化のために、測定結果が壊れたり、超音波センサが経年変化で故障したりすることがある。そのため、自動車に複数の超音波センサを設け、個々の超音波センサから供給される測定値について、その評価前に妥当性チェックを行い得る。しかし、超音波センサの電気特性変数が徐々に変化する場合、このような妥当性チェックは、基本的に使用可能な測定結果を誤って選別する可能性もある。
【0004】
EP 2 347 231 B1は、励振周波数に基づいて超音波センサのインピーダンス特性曲線を決定する機能監視装置を開示している。インピーダンス特性曲線を決定する際、超音波センサは、通常の測定動作と比較して、より小さく一定の振幅で励振される。
【0005】
DE 10 2012 216 968 A1は、超音波変換器の電気インピーダンスを試験信号によって測定し、試験信号の周波数にわたるインピーダンスの変化を、インピーダンスプロファイルに存在する極端な点に関して基準と比較することを開示している。試験信号は、距離の測定に使用される振幅とは異なる振幅を有する。
【0006】
DE 10 2014 201 482 A1は、超音波変換器のインピーダンス曲線が、一定の電圧振幅で、指定された周波数範囲にわたる励振信号の掃引で決定されることを開示している。
【0007】
DE 10 2017 203 136 A1は、異なる励振周波数に対して音響変換器のインピーダンスを測定する音響センサの監視ユニットを開示している。この例において、音響変換器は、距離を測定するために使用される振幅よりも、好ましくは10の1乗以上小さい振幅で励振される。
【発明の概要】
【0008】
このような背景から、本発明は、超音波センサの状態の判定を改善することを目的とする。
【0009】
従って、自動車用の超音波センサ・システムが提案される。提案された超音波センサ・システムは、超音波センサと、電気的試験装置とを備える。超音波センサは、超音波を発生し検出するための電気音響変換装置を有する。電気的試験装置は、電気音響変換装置に電気的試験信号を出力し、電気的試験信号に対する電気音響変換装置からの電気的応答信号を捕捉するように構成されている。提案された超音波センサ・システムは、また、試験制御装置を備える。試験制御装置は、電気的試験装置を使用して、複数の測定点で電気的試験信号の周波数と振幅を変化させながら、電気的応答信号の特性変数を捕捉するように構成されている。
【0010】
電気音響変換装置は、特に、超音波メンブレンと、音響変換器と、結合回路とを含み得る。音響変換器は、超音波メンブレンに取り付けられ、ピエゾ素子のような機械的容量性、機械的抵抗性、磁歪性または電歪性の動作原理を有する。結合回路は、音響変換装置のインピーダンスを整合させるためのものである。
【0011】
特に、このような電気音響変換装置は、抵抗成分、誘導成分、容量成分を有する非線形の電気装置として理解され得る。
【0012】
試験信号の周波数だけでなく振幅も変化させながら複数の測定点で電気的特性変数を捕捉する、提案された補足は、電気音響変換装置の多次元特性図の少なくとも一部を捕捉するために有利に使用することができ、したがって、特に、特性変数の非線形な振幅依存性を考慮に入れるために使用することができる。
【0013】
電気音響変換装置の電気的特性変数の振幅依存性をこのように考慮した結果、超音波センサの状態の特性を著しく改善することが可能となり、それに応じて、自動車の上位制御装置は、超音波センサの状態の変化に対してはるかに良好に反応することができる。
【0014】
「測定点」という用語は、特に、試験信号の正確に1つの周波数と正確に1つの振幅との特定の組み合わせを、意味し得る。
【0015】
従って、試験制御装置は、特に、各測定点に対して1つずつ、複数の特性変数を捕捉することができる。複数の測定点で捕捉された特性変数は、特に、超音波センサの電気音響変換装置の特性曲線、または、二次元若しくは多次元の特性図を形成することができる。
【0016】
電気的試験信号は、特に、決定された振幅及び定義された周波数を有する、電流又は電圧のような電気音響変換装置に印加される電気的特性変数の振動であり得る。試験信号の振幅と周波数は、各測定点において、特に応答信号の特性変数が測定点で捕捉される期間、一定であってよい。
【0017】
特に、電気的応答信号は、電気的試験信号が電気音響変換装置に印加されている間に電気音響変換装置で捕捉される、電圧または電流などの特性変数の1つの振動であってよい。
【0018】
電気的試験装置は、超音波センサに設けられた電気回路によって形成されてよく、その都度指定された周波数と振幅を有する電気的試験信号を生成するように試験制御装置によって制御されてよく、電気的応答信号を捕捉するために試験制御装置によって使用されてよい。
【0019】
試験制御装置は、超音波センサに内蔵されてもよく、または、超音波センサの外部に設けられてもよい。
【0020】
試験制御装置は、特に特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、電子制御ユニット(ECU)などによって形成されてよい。
【0021】
試験制御装置によって、試験信号の周波数と振幅を変化させながら、複数の測定点における特性変数を捕捉することを、超音波センサの「試験動作」とも称する。また、距離を測定する目的で、電気音響変換装置を制御して超音波を発生させ、その後に反射超音波を捕捉することを、超音波センサの「測定動作」とも称する。
【0022】
一実施形態によれば、電気的試験信号は定電流信号であり、それぞれの特性変数は、それぞれの測定点における電気的試験信号の周波数および振幅における応答信号の電圧の振幅および/または位相角を含む。
【0023】
このようにして、各測定点で1つ以上の特性変数を捕捉することができる。好ましくは、少なくとも応答信号の電圧の振幅が捕捉される。さらに、特に好ましくは、応答信号の電圧の位相角も捕捉される。このようにして、電気音響変換装置の応答の実数値部分と複素数値部分とを、有利に完全に捕捉することができる。
【0024】
定電流信号(一定の電流振幅を有する信号)を選択することにより、超音波センサの試験動作は、有利に、超音波センサの電流制御された測定動作と同じ条件下で行うことができる。
【0025】
しかしながら、これに代わるものとして、電気的試験信号が定電圧信号であることも想定され、それに応じて、それぞれの特性変数が、それぞれの測定点における電気的試験信号の周波数および振幅における応答信号の電流強度の振幅および/または位相角であることも想定される。
【0026】
さらなる実施形態によれば、試験信号の複数の測定点は、距離測定が実施されている間、超音波センサの制御信号の動作点に対応するように選択される。
【0027】
これは、超音波センサの測定動作中に制御信号にも使用される試験信号の周波数及び振幅と同じ周波数及び振幅で、超音波センサの試験動作を実行できることを意味する。
【0028】
このようにして、試験動作中に得られた特性図(複数の測定位置で補足された特性変数)は、有利には、測定動作に関連する振幅及び周波数における電気音響変換装置の抵抗特性、誘導特性及び容量特性を特徴付けることができる。このようにして得られた特性は、有利には、測定動作のパラメータを調整するために使用することができ、したがって、経時的に変化した動作挙動を有する超音波センサの継続的な使用を可能にする。
【0029】
さらなる実施形態によれば、複数の測定点は、それぞれ、周波数範囲内の複数の異なる周波数に対して正確に1つの測定点を含む。ここで、それぞれの測定点の振幅は、測定点の周波数に基づいて選択される。
【0030】
特に、それに応じて、複数の測定点は、特性図全体を網羅することはできないが、有利には、超音波センサの特性図を通る、特に非直線的な、特に非直線的な一次元経路に沿って、選択され得る。
【0031】
確かに、試験動作中に指定された周波数範囲と指定された振幅範囲を完全に試験し、その結果、超音波センサの完全な特性図を決定することは、理論的に考えられるであろう。しかし、複数の異なる周波数の各々について正確に1つの測定点のみを捕捉すれば、試験動作中の試験をより短時間で完了することができる。特に、試験動作は、超音波センサの測定動作を試験のために中断することなく、超音波センサの測定動作の2つの測定サイクルの間の休止時間で行うことができる。したがって、「オンライン試験」が可能になる。
【0032】
この場合、それぞれの測定点の振幅は、好ましくは、同じ周波数での測定動作中に電気音響変換装置に制御信号が印加される振幅となるように選択することができる。したがって、有利なことに、測定動作に関連する特性変数のみを捕捉することができる。
【0033】
周波数範囲は、測定操作の要求に応じて選択することができる。周波数範囲は、特に50kHzの周波数を含むことができる。周波数範囲は、特に好ましくは40kHzから60kHzの範囲を含み、非常に特に好ましくは30kHzから70kHzの範囲を含む。
【0034】
さらなる実施形態によれば、周波数範囲内の複数の測定点は、電気音響変換装置の前の試験中に、捕捉されるべき特性変数の高い勾配が測定された第1の周波数区間において、上記高い勾配よりも低い勾配が測定された周波数区間においてよりも、互いに近づくように、選択される。
【0035】
この文脈において、「前の試験」は、特に試験動作の実際の実行に関連し得る。特に、「前の試験」は、試験動作の最後の(最近の、前回の)実行に関連し得る。このようにして、測定点が互いにより近くなるように選択されるその周波数区間は、非線形性が検出された特性図の領域に対して、超音波センサの耐用年数にわたって適応的に調整することができる。これに代わるものとして、「前の試験」は、超音波センサの製造中に実施される試験動作に関連し得る。しかしながら、「前の試験」は、特に、特性図の理論的決定、従って、目標特性図にも関連してよく、すなわち、(複数の)測定点は、電気音響変換装置の応答における非線形性が予想されるよう互いに近接して選択され得る。
【0036】
従って、有利には、実施すべき測定の数、および従って試験動作に必要な時間間隔をさらに減少させることができ、および/または、関心領域において特性図が決定される精度を、高めることができる。
【0037】
さらなる実施形態によれば、周波数範囲内の互いに隣接する周波数における2つの測定点の振幅のうち、一方の振幅は下限で選択され、他方の振幅は隣接する周波数に基づいて選択された振幅範囲の上限で選択される。
【0038】
それぞれの周波数に対する振幅範囲は、特に、例えば、測定動作中に同じ周波数で電気音響変換装置に制御信号が印加される振幅を中心とする所定の許容範囲を含むように、選択され得る。
【0039】
特に、複数の測定点は、有利なことに、超音波センサの特性図を通る2つの一次元経路に沿って選択することができ、これらの経路は、特性図内の二次元帯域の境界を記述する。ただし、周波数の数の各周波数について、1回だけ測定する必要がある(ただ1つの特性変数が捕捉される)。
【0040】
さらなる実施形態によれば、試験制御装置は、試験制御装置によって捕捉された複数の特性変数に基づいて、電気音響変換装置の状態を自動車の制御装置に報告するように構成される。
【0041】
特に、試験制御装置は、捕捉された複数の特性変数を評価することができ、この評価結果に応じて、エラー状態または例えば「運転準備完了」状態のいずれかを、自動車の制御装置に報告することができる。特に、制御装置への報告は、エラー状態が検出された場合にのみ行うこともできる。
【0042】
例えば、試験制御装置は、特性曲線または多次元特性図を記述する補足された特性変数を、目標特性曲線または目標特性図と比較することができ、比較の結果に基づいて、エラー状態または「運転準備完了」状態を決定することができる。
【0043】
従って、自動車の制御装置は、故障した超音波センサを環境測定から除外することができ、及び/又は、自動車の運転者又は保守担当者にエラーメッセージを出力することができる。
【0044】
さらなる実施形態によれば、超音波センサ・システムは、測定制御装置も備える。この測定制御装置は、電気的制御信号を印加することによって電気音響変換装置を励起して超音波を放射させ、その後に電気音響変換装置からの電気的検出信号を捕捉して評価することによって距離測定を実施するように構成される。この場合、測定制御装置は、試験制御装置によって補足された複数の特性変数に基づいて距離測定を実施するように構成される。
【0045】
測定制御装置は、超音波センサに内蔵されてもよく、超音波センサの外部に設けてもよい。
【0046】
測定制御装置は、特に、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロプロセッサ、電子制御ユニット(ECU)などによって形成されてよい。
【0047】
電気的制御信号は、特に、一定の周波数を有する定電流信号であってよい。しかし、所定の周波数範囲にわたって掃引を行うことも想定可能であり、好ましくもある。
【0048】
「電気的検出信号」は、特に、電気音響変換装置によって測定制御装置に戻される信号を意味する、と理解することができる。電気的検出信号は、超音波が電気音響変換装置(その超音波メンブレン)に入射し、電気音響変換装置(そのピエゾ素子等)によってそのようなエコー信号パルスに変換されるときのエコー信号(エコー信号パルス)を含み得る。
【0049】
測定動作中、検出信号中のエコー信号を決定することが可能である。電気的制御信号の印加と検出信号中のエコー信号の発生との間の飛行時間の差に基づいて、自動車環境における障害物からの距離を推測することができる。
【0050】
特に、試験制御装置によって捕捉された特性変数に基づいて、以下を調整することができる。すなわち、制御信号(周波数、周波数範囲及び/又はその振幅)、及び/又は、検出信号中のエコー信号を決定するための閾値、及び/又は、エコー信号がそこで決定される前に検出信号が増幅される利得係数(ゲイン)である。
【0051】
本提案によれば、電気的特性変数(電気音響変換装置の電気的特性図)が既知であり、距離測定を実施する際に考慮される場合、距離測定の信頼性と精度を有利に向上させることができる。
【0052】
さらなる実施形態によれば、超音波センサは試験制御装置を含む。
【0053】
超音波センサは、好ましくは、測定制御装置も含む。特に好ましくは、試験制御装置、及び場合によっては測定制御装置も、超音波センサのハウジング内のプリント回路基板上に配置された特定用途向け集積回路(ASIC)の一部として設計することができる。
【0054】
従って、より長い耐用年数及び/又は耐用年数にわたる測定品質の不変性が改善された超音波センサを、有利に提供することができる。
【0055】
第2の側面によれば、上記のような少なくとも1つの超音波センサ・システムを有する自動車が、提案される。
【0056】
第1の側面の超音波センサ・システムについて説明した特徴、利点、および実施形態は、第2の側面の自動車にも相応して適用される。
【0057】
自動車は、特に乗用車またはトラックとすることができる。自動車は、運転支援システムまたは駐車支援システムなどの支援システムを有することができ、この支援システムは、特に、自動車の半自律運転または完全自律運転のために構成することができる。半自律運転とは、例えば、支援システムがステアリング装置および/または自動ギア選択システムを制御することを意味する、と理解される。完全自律運転とは、例えば、支援システムがさらに駆動装置およびブレーキ装置も制御することを意味する、と理解される。支援システムは、ハードウェアの形態および/またはソフトウェアの形態で実装することができる。ハードウェアの形態で実施する場合、支援システムは、例えば、コンピュータまたはマイクロプロセッサの形態とすることができる。ソフトウェアの形態で実施する場合、支援システムは、コンピュータプログラム製品、関数、ルーチン、プログラムコードの一部、または実行可能オブジェクトの形態とすることができる。特に、支援システムは、車両の上位制御システム、例えばECU(エンジン制御ユニット)の一部の形態であってもよい。支援システムは、提案された超音波センサ・システムを使用して、パルスエコー法による超音波測定によって、自動車の環境を監視または測定することができる。
【0058】
この態様の一実施形態によれば、それぞれの超音波センサは、それぞれ、試験制御装置と測定制御装置とを含む。この態様の別の実施形態によれば、提案された試験制御装置は、自動車の制御装置にいったん集中して設けられれば、複数の超音波センサの各々の試験動作を制御することができる。
【0059】
第2の態様によれば、自動車用の超音波センサ・システムを操作する方法が提案される。この方法は、超音波を発生および検出するための電気音響変換装置を有する超音波センサと、電気的試験装置と、を含む。また、この方法は、試験制御装置を含む。この方法は、試験装置によって電気音響変換装置に電気的試験信号を出力するステップと、試験装置によって電気音響変換装置からの電気的応答信号を捕捉するステップと、試験制御装置によって、電気的試験信号の周波数および振幅を変化させながら、複数の測定点における電気的応答信号の特性変数を捕捉するステップと、を含む。
【0060】
第1の態様の超音波センサ・システムについて説明した特徴、利点、実施形態は、第3の態様の方法にも相応して適用される。
【0061】
本発明のさらに可能な実施態様もまた、例示的な実施態様に関して上述したまたは後述する特徴または実施態様の明示されていない組み合わせを含む。当業者であれば、この場合にも、本発明のそれぞれの基本形態に対する改良または追加として、個々の態様を追加するであろう。
【0062】
本発明のさらに有利な構成および態様は、従属請求項および以下に説明する本発明の例示的な実施形態の対象である。本発明は、添付の図を参照して、好ましい例示的な実施形態に基づいて、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】
図1は、第1の例示的実施形態による超音波センサ・システムの概略図である。
【
図2】
図2は、第2の例示的実施形態による超音波センサ・システムの概略図である。
【
図3】
図3は、第3の例示的実施形態による、複数の超音波センサ・システムを有する車両の概略図である。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態による試験動作を実行するための方法のステップを示す。
【
図5】
図5は、超音波センサの例示的な特性図の3次元プロットを示す図である。
【
図6】
図6は、測定点が入力された超音波センサの更なる例示的な特性図の2次元プロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図中、同一または機能的に同一の要素には、特に断りのない限り、同一の参照符号を付している。
【0065】
図1は、第1の例示的実施形態による超音波センサ・システム1の概略図である。超音波センサ・システム1は、超音波センサ2と、制御装置3の少なくとも一部分とから形成されている。制御装置3は、例えば、自動車(
図3の参照符号11;
図1には図示せず)の電子制御ユニット(ECU)とすることができる。
【0066】
基本的に純粋に機能的であると理解される
図1の図では、超音波センサ2のハウジングの外形が概略的に示されている。
図1ではメンブレンポットとして示されている超音波メンブレン4が、
図1の超音波センサ2のハウジングの下側に取り付けられている。超音波メンブレン4の内側には、ピエゾ素子5(音響変換素子の一例)が、例えば接着剤で接着されて、取り付けられている。ピエゾ素子5は結合回路6に電気的に接続されている。結合回路はインピーダンス整合のために使用される。超音波メンブレン4、ピエゾ素子5及び結合回路6からなる装置は、電気音響変換装置7の一例である。
【0067】
超音波センサ2のハウジング内に配置された制御ユニット8は、電気音響変換装置7に電気的アナログ発振信号を印加し、電気音響変換装置によって制御ユニット8に印加された電気的アナログ発振信号を捕捉するように構成されている。
【0068】
超音波センサ2の外部に配置された制御装置3は、測定制御装置9と試験制御装置10とを含む。
【0069】
超音波センサ2の測定動作中、測定制御装置9は、制御信号、好ましくはデジタル信号を、センサ内部制御ユニット8と交換する。特に、測定制御装置9は、このようにして、制御装置8に、特にアナログの、特に発振する電気的制御信号を、電気音響変換装置7へ印加させることができる。ピエゾ素子5により、制御信号は、超音波メンブレン4を振動させ、超音波を発振させる。次に、測定制御装置9は、制御ユニット8に、電気音響変換装置7から供給される電気的検出信号を所定の期間にわたって補足させる。環境から反射された超音波が超音波メンブレン4に入射し、超音波メンブレン4を振動させると、ピエゾ素子5が、電気的検出信号中にエコー信号(エコー信号パルス)を発生させる。この検出信号は、センサ内部制御ユニット8によって補足され、好ましくはデジタル形式で、測定制御装置9に送信される。測定制御装置9は、このようにして補足された検出信号を評価し、エコー信号を識別し、超音波信号の発振とエコー信号の発生との間の時間差および既知の音速を用いて、環境中の障害物からの超音波センサ2の距離を決定する。
【0070】
電気音響変換装置7は、抵抗特性、容量特性および誘導特性を有する電気的配置として理解することができる。これらの特性が、特にピエゾ素子5の経年変化や汚染などによって変化すると、電気音響変換装置7の制御及び/又は電気音響変換装置7からの検出信号の補足に食い違い(ミスマッチ)が生じ、測定品質が損なわれる可能性がある。
【0071】
したがって、超音波センサ2の試験動作中、制御装置3の試験制御装置10は、
図4に概略的に示されたステップを実行する。
図4と併せて
図1を参照されたい。
【0072】
ステップS1において、測定制御装置10は、制御信号を、好ましくはデジタル信号を、センサ内部制御ユニット8と交換する。特に、試験制御装置10は、このようにして、センサ内部制御ユニット8(この場合、「試験装置」の一例)に、特にアナログの、特に発振する電気的試験信号を、電気音響変換装置7へ印加させることができる。
【0073】
このようにして試験信号が電気音響変換装置7に印加されている間、試験制御装置9は、ステップS2において、好ましくはデジタル信号を捕捉する。このステップS2において捕捉される信号は、センサ内部制御回路8(「試験装置」)によって送信され、試験信号の印加に対する電気音響変換装置7からの、好ましくはアナログの、好ましくは振動する電気的応答信号を示す。
【0074】
ステップS3において、試験制御装置10は電気的応答信号の特性変数を捕捉する。
【0075】
この場合、試験信号は定電流信号(一定の電流振幅を有する交流信号)であってよく、電気的応答信号は、それに応じて、試験信号が電気音響変換装置7に印加されたときに生じる電圧信号であってよい。この場合、捕捉される特性変数は、電気的応答信号の電圧振幅及び任意で位相角である。
【0076】
しかし、試験信号は定電圧信号であってもよく、それに応じて、電気的応答信号は電流信号であってもよい。この場合、捕捉された特性変数は、電気的応答信号の電流振幅及び任意で位相角を含んでよい。
【0077】
本提案によれば、この場合、試験信号の周波数と振幅が変化する。これは、複数の測定点が複数の異なる周波数と異なる振幅で実行(実現)され、対応する特性変数が測定点の各々で捕捉されることを意味する。
【0078】
周波数と振幅を変化させることの利点と詳細については、
図5と
図6を参照して後述する。
図1の配置に対する構造的な代替案について、まず説明する。
【0079】
図2は、第2の例示的実施形態による超音波センサ・システム1の概略図である。第2の例示的な実施形態において、測定制御装置9の機能、試験制御装置10の機能、及び、電気音響変換装置7(結合回路6、超音波メンブレン4及びピエゾ素子5)の機能は、第1の例示的な実施形態と同じであるが、測定制御装置9及び試験制御装置10は、外部制御装置3の一部ではなく、センサ内部制御ユニット8の一部として形成されている。
【0080】
したがって、第2の例示的な実施形態では、外部制御装置3は、提案された超音波システム1の一部を形成せず、第2の例示的な実施形態における超音波システム1は、超音波センサ2によって全て実現される。
【0081】
従って、測定動作及び試験動作を行うために、制御装置3とデジタル制御信号を交換する必要がない。したがって、距離測定の測定結果および/または捕捉された特性変数から決定された状態情報のみを、超音波センサ2を介して制御装置3に送信することができ、さらに、捕捉された特性変数をセンサ内部で使用して、測定動作中の電気音響変換装置7の制御を改善することができる。
【0082】
センサ内部制御ユニット8は、特に、プリント回路基板(図示せず)上の超音波センサ2のハウジング内に配置された特定用途向け集積回路(ASIC)であってよい。
【0083】
図3は、第3の例示的な実施形態による、複数の超音波センサ2と制御装置3とを有する車両11の概略図である。超音波センサ2は、車両11の左側面、右側面、さらにフロントバンパー、リアバンパーに沿って配置されている。
【0084】
第3の例示的な実施形態は、第1および第2の例示的な実施形態の両方と組み合わせることができる。すなわち、1つの変形例によれば、
図3に示す超音波センサ2の各々は、統合された試験制御装置10(
図2)を有することができ、したがって、1つの超音波センサ・システム1(
図2)を構成することができる。従って、図示の車両11は、例えば12個の独立した超音波センサ・システム1(
図2)を有することができる。制御装置3は、超音波センサ・システム1(
図2)を使用して車両環境を測定し、得られた情報を使用して運転または駐車支援機能を提供することができる。
【0085】
別の変形例によれば、提案された試験制御装置10(
図1)と、任意で測定制御装置9(
図1)も、車両11の制御装置3に設けることができる。このように、複数の超音波センサ2と制御装置3とは、複数の超音波センサ2を有する1つの超音波センサ・システム1(
図1)を共に形成することができる。この場合、制御装置3の試験制御装置10(
図1)の機能は、一度だけ構築されればよく、試験制御装置10(
図1)は、電気音響変換装置7(
図1)の捕捉された全ての特性変数を集中的に評価することができ、測定動作を制御する際にそれらを考慮することができる。
【0086】
図5は、超音波センサの例示的な特性図の三次元プロットを示す。
図5を参照し、必要に応じて
図1および
図2も参照する。
【0087】
図5の特性
図13は、非常に包括的な試験動作中に超音波センサ・システム1で捕捉された測定点(数が多いため個々にラベル付けされていない)で構成されている。定電流試験信号の周波数は「x」とラベル付けされた軸に沿ってプロットされ、定電流試験信号の電流強度の振幅は「y」とラベル付けされた軸に沿ってプロットされ、捕捉された応答信号の電圧の振幅は「z」とラベル付けされた軸に沿ってプロットされている。
【0088】
特性
図13の振幅が急激に増加する2つのピーク12は、
図5の特性
図13に見ることができる。また、ピーク12は振幅に対して顕著な依存性を示し、その周波数位置が振幅が大きくなるにつれて低周波数側にシフトしていることが理解される。これらの非線形性は、ピエゾ素子5に固有のドメイン効果に起因する。
【0089】
提案する解決策の中心的な考え方は、異なる周波数だけでなく、異なる振幅で、特に超音波センサの測定動作に実際に関連する振幅で実施すれば、超音波センサ2の電気的特性変数をより良く捕捉できる、ということである。
【0090】
しかし、
図5に示す特性
図13全体を捉えるには、試験信号の周波数と振幅の両方を、それぞれ可能な組み合わせの全範囲にわたって変化させる必要があり、それに応じて大量の測定が必要となり、それに応じて多くの時間とエネルギーが必要となる。しかし、試験動作は「オンライン」、すなわち測定動作の大幅な中断なしに、または中断することなく実施することが望ましい。
【0091】
試験制御装置10(
図1、
図2)によって例示的な実施形態で実施することができる電気音響変換装置7の電気的特性変数を捕捉する好ましい方法を、
図6を参照して、さらに
図1及び
図2も参照して説明する。
【0092】
図6は、超音波センサ2の更なる例示的な特性
図13の二次元プロットを示す。
図6では、
図5と同様に、試験信号の周波数が「x」軸に沿ってプロットされ、試験信号の振幅が「y」軸に沿ってプロットされている。応答信号の振幅は、
図6では網掛けで表されており、網掛けが濃いほど応答信号の振幅が大きい。特に、
図5と同様の広範な実験で決定された電気音響変換装置の理論的および/または完全な特性
図13が、
図6に網掛けで示されている。
【0093】
掃引は、測定動作中に定義された周波数範囲にわたって行われ得ること、すなわち、測定動作は、必ずしも正確に1つの周波数および正確に1つの振幅で行われるのではなく、有利には、
図6からの特性
図13の検量線(working curve)(図示せず)に沿って行われ得ることに留意すべきである。
【0094】
図6はまた、試験動作中に例示的な実施形態による試験制御装置10によって実際に捕捉される特性図の測定点14、15を示している。
【0095】
すなわち、試験動作中、試験制御装置10は、
図6に示す測定点14、15の周波数における多数の個々の周波数支持点(frequency support points)を次々に通過させるように、試験信号の周波数を変化させる。この場合、各周波数に対して正確に1つの測定点が捕捉され、そのような測定点ごとに上記周波数に依存する振幅が選択される。この場合、振幅は、測定動作の周波数掃引の間、それぞれの振幅がそれぞれの周波数における制御信号の振幅に関連するように、選択(変化)される。
【0096】
例示的な一実施形態によれば、14とラベル付けされた測定点のみ、または15とラベル付けされた測定点のみが捕捉され、測定動作中の制御信号の作業曲線上の点に本質的に対応する。
【0097】
しかしながら、特に好ましい例示的な実施形態によれば、14とラベル付けされた測定点と15とラベル付けされた測定点の両方が捕捉され、制御信号の振幅の検量線(working curve)は、測定点14と15によって画定された経路の間の特性図を通ることができる。すなわち、測定点14、15は、隣接する2つの測定点14、15ごとに、1つの測定点15が以下の振幅範囲の下限で選択され、第2の測定点16が当該振幅範囲の上限で選択されるように選択される。ここで、上記振幅範囲は、その中心が、測定動作中の制御信号の振幅の周り、例えば、複数の周波数の1つのみ、または2つの周波数の間の中間点となる、振幅範囲である。
図6の試験信号の1つの周波数掃引だけで、特性図を通る第1の経路14と第2の経路15が生じ、これらは特性図を通る2次元の帯域を共に区切る。このようにして、測定動作に関連する電気的特性変数の上限と下限を、特に現実的な方法で推定することができる。
【0098】
さらに、
図6は、応答信号の振幅の勾配が低い第1の周波数範囲16の測定点が、応答信号の振幅の勾配が高いピーク12の近傍の第2の周波数範囲17の測定点14、15よりも離れるように選択される、特に好ましい例示的な実施形態を示す。従って、特に範囲16において、試験動作中に捕捉される点の数をさらに減らすことができる。
【0099】
上述した手段によれば、したがって、有利なことに、周波数に基づいて特に選択された測定点14、15におけるわずか数回の個々の測定によって、測定動作に関連する範囲における応答信号の振幅の2次元特性図の特性を現実的に推定することが可能となる。その結果、測定点14、15における特性図又は特性変数を迅速に捕捉することが可能であり、この捕捉は、例えば、測定動作を中断することなく、測定動作の2つの測定サイクルの間に実施することができる。
【0100】
このようにして補足された特性変数(電気的試験信号が測定点14、15に印加されたときに発生する電気的応答信号の振幅および場合によっては位相角)を試験制御装置10でどのように評価するかについては、様々な方法が想定される。
【0101】
例えば、ピーク12の高さ(
図5、
図6)、ピーク12の周波数位置(
図5、
図6)、またはピーク高さの互いの比は、超音波センサ12の動作時間の経過とともに変化し得る。ピーク12の名前付きパラメータは、特定用途向け回路(ASIC)8(
図2)または自動車制御装置(ECU)3(
図1)によって実行できるように、簡単な試験制御装置10で容易に決定することもできる。試験制御装置10は、基準状態と比較したピークの高さまたは位置の変化の程度を決定し、これを用いて超音波センサ10の状態を評価することができる。超音波センサ2の状態が不良であると判断された場合、例えば
図3に示す例示的な実施形態では、超音波センサ2を制御装置3による環境測定から除外する(もはや考慮しない)ことができる。制御装置3は、対応する警告メッセージを運転手や保守員に出力することができる。
【0102】
しかし、変化したピーク位置の決定に基づいて故障状態を認識するのではなく、測定動作(距離測定)を調整することも考えられる。
【0103】
したがって、試験制御装置10が、測定制御装置9に、捕捉された特性変数の評価(例えば、ピーク12のシフト位置及び/又は高さに関する情報)を提供し、これに応じて、測定制御装置9が、例えば、超音波センサ2の制御ユニット8に、測定動作中に制御信号の振幅を増加させること、測定動作中に制御信号の掃引の周波数位置又は周波数範囲を調整させること、測定動作中に検出信号を増幅させること、又は、検出信号においてエコー信号を捕捉するための閾値パラメータを調整させることも、考えられる。したがって、測定制御装置9は、試験制御装置10によって捕捉された複数の特性変数に基づいて距離測定を実行することができる。したがって、有利なことに、電気音響変換装置7の抵抗特性、誘導特性および/または容量特性などの電気的特性が経時的に変化しても、高い測定品質を長期間にわたって維持することができる。
【0104】
また、試験制御装置10が、更なる特性変数としての応答信号の振幅に加えて、更なる特性変数として試験信号の位相角に対する応答信号の位相角も捕捉し、これを超音波センサ2の状態の評価及び/又は測定制御装置9の測定動作の調整に組み込むことも考えられる。特に、電気音響変換装置7の誘導特性および容量特性を捕捉し、位相角に基づいて評価することができる。このようにして得られた情報は、例えば、結合回路6に含まれる共振回路のパラメータを調整し、制御信号の関連する周波数および振幅における電気音響変換装置7のインピーダンスに対するインピーダンス整合を改善するために使用することもできる。
【0105】
超音波センサ2のエラー状態を報告するため及び/又は測定動作を調整するための上述した手段は、有利には、測定動作中のそれぞれ関連する周波数における制御信号の振幅に対応する試験信号の振幅、又はこれらの振幅に関連する試験信号の振幅で捕捉された特性変数を用いて実施され、したがって、試験信号の低い又は他の又は一定の振幅で捕捉された特性変数よりも高い関連性又は品質を有することができる。
【0106】
本発明を例示的な実施形態に基づいて説明したが、多くの変更が可能である。
【0107】
例示的な実施形態ではピエゾ素子5について説明したが、電気音響変換装置7は、機械的容量性、機械的抵抗性、磁歪性または電歪性の動作原理に基づく別の音響変換器を含んでもよい。
【符号の説明】
【0108】
1 超音波センサ・システム
2 超音波センサ
3 制御装置
4 超音波メンブレン
5 ピエゾ素子(音波振動素子)
6 結合回路
7 電気音響変換装置
8 センサ内部制御ユニット(試験装置)
9 測定制御装置
10 試験制御装置
11 自動車
12 ピーク
13 特性図
14 測定点、第一経路
15 測定点、第二経路
16 低勾配の周波数範囲
17 高勾配の周波数範囲
x、y、z プロットの軸
S1~S3 メソッドステップ