(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】昇降路上部構造体、昇降路上部構造体の設置方法、及び、エレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 11/04 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
B66B11/04 B
(21)【出願番号】P 2023543542
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031111
(87)【国際公開番号】W WO2023026386
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東山 将士
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
【審査官】三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-229570(JP,A)
【文献】特開2008-001509(JP,A)
【文献】特開平06-115861(JP,A)
【文献】特開昭60-228386(JP,A)
【文献】中国実用新案第205652987(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/04
B66B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路上部の機械室の床面に配置された少なくとも一対のスペーサと、
長手方向の両端部が、前記一対のスペーサのそれぞれの上部に固定されるように配置される支持ビームとを備え、
前記一対のスペーサのうち、少なくとも一方のスペーサの前記支持ビーム側の上面には、前記支持ビームの長手方向に沿う方向に長いスペーサ長円穴が設けられ、
前記支持ビームにおいて、少なくとも前記一方のスペーサ上部に配置される側の端部には、ビーム穴が前記支持ビームの長手方向に沿って複数個設けられ、
前記一方のスペーサと、前記一方のスペーサ上部に配置される前記支持ビームの長手方向における端部は、前記スペーサ長円穴と、前記スペーサ長円穴の上部に重なる位置に設けられた前記ビーム穴とを貫通するボルトで固定されている
昇降路上部構造体。
【請求項2】
前記ビーム穴は、前記支持ビームの長手方向に沿う方向に長い長円穴で構成されている
請求項1に記載の昇降路上部構造体。
【請求項3】
前記ボルトの直径をW
5、前記支持ビームの長手方向に設けられた隣り合うビーム穴間の距離をW
2とすると、前記支持ビームの長手方向における前記スペーサ長円穴の長さは、2W
5+W
2より大きく設定されている
請求項1に記載の昇降路上部構造体。
【請求項4】
前記ボルトの直径をW
5、前記支持ビームの長手方向に沿う方向における前記一方のスペーサの、前記支持ビームが延在する一側とは反対側である他側の端部から、前記スペーサ長円穴の前記他側の端部までの距離をW
4とすると、前記支持ビームの長手方向における前記ビーム穴の長さは、W
5+W
4よりも小さく設定されている
請求項1~3のいずれかに記載の昇降路上部構造体。
【請求項5】
前記ボルトの直径をW
5、前記支持ビームの長手方向に設けられた隣り合うビーム穴間の距離をW
2、前記支持ビームが延在する一側とは反対側である他側の端部から、前記スペーサ長円穴の前記他側の端部までの距離をW
4とすると、前記支持ビームの長手方向における前記ビーム穴の長さは、W
5+W
4-W
2よりも小さく設定されている
請求項1~3のいずれかに記載の昇降路上部構造体。
【請求項6】
前記支持ビームは、巻上機を支持する巻上機支持台を構成する
請求項1に記載の昇降路上部構造体。
【請求項7】
前記支持ビームは、前記支持ビームの長手方向において平行に複数本配置されており、
前記複数の支持ビームは、巻上機を支持する巻上機支持台及び前記巻上機に巻き掛けられる主ロープの端部を支持するロープ支持機構を構成する
請求項1に記載の昇降路上部構造体。
【請求項8】
長手方向における少なくとも一側の端部にビーム穴が複数個設けられた支持ビームを準備し、
一対のスペーサであって、前記一対のスペーサのうち、少なくとも一方のスペーサの前記支持ビーム側の上面に、前記支持ビームの長手方向に沿う方向に長いスペーサ長円穴が設けられ一対のスペーサを準備し、
昇降路上部の床面の所定の位置に、一対のスペーサを配置し、
前記一対のスペーサの間隔に応じて前記支持ビームの配置位置を調整し、前記スペーサ長円穴が設けられた一方のスペーサ上部に、前記支持ビームのビーム穴が設けられた一側の端部を配置すると共に、他方のスペーサ上部に、前記支持ビームの他側の端部を配置し、
前記スペーサ長円穴及び前記ビーム穴にボルトを挿通させてナットで固定する
昇降路上部構造体の設置方法。
【請求項9】
前記支持ビームの配置位置の調整では、前記一対のスペーサの間隔に応じて、前記支持ビームにおける前記ビーム穴が設けられた側の端部を切断し、
前記切断の位置は、前記支持ビームの一側の端部から、最も他側に設けられたビーム穴よりも一側の位置とする
請求項8に記載の昇降路上部構造体の設置方法。
【請求項10】
昇降路上部の機械室の床面に配置された少なくとも一対のスペーサと、
長手方向の両端部が、前記一対のスペーサのそれぞれの上部に固定されるように配置される支持ビームとを備え、
前記一対のスペーサのうち、少なくとも一方のスペーサの前記支持ビーム側の上面には、前記支持ビームの長手方向に沿う方向に長いスペーサ長円穴が設けられ、
前記支持ビームにおいて、少なくとも前記一方のスペーサ上部に配置される側の端部には、ビーム穴が前記長手方向に沿って複数個設けられ、
前記一方のスペーサと、前記一方のスペーサ上部に配置される前記支持ビームの長手方向における端部は、前記スペーサ長円穴と、前記スペーサ長円穴の上部に重なる位置に設けられた前記ビーム穴とを貫通するボルトで固定されている昇降路上部構造体
を有するエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターの昇降路上部に設置される昇降路上部構造体、昇降路上部構造体の設置方法、及び、エレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エレベーター用の巻上機の設置には、巻上機を固定する支持台と、支持台を建屋に設置する際に使用する鋼材が用いられている。支持台と鋼材との固定には、溶接又はボルトによる締結が用いられている。巻上機の設置に際に、溶接作業レスの要求がある場合には、ボルトによる締結が用いられる。特許文献1では、巻上機支持台と、鋼材とが、通しボルトによって固定される巻上機設置装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、巻上機の支持台と鋼材とをボルトで締結する場合、巻上機の支持台と鋼材の固定位置を調整した後に、支持台の長さを調整し、現地にて、巻上機の支持台と鋼材に穴あけ加工し、ボルトで固定する必要がある。また、昇降路の上部には、巻上機の支持台の他にも、主ロープの端部を保持するロープエンドビームが設置される場合もある。ロープエンドビームにおいても、鋼材に設置する際に建屋の寸法に合わせて長さの微調整が必要な場合がある。この場合にも、ロープエンドビームの長さを調整した後、ロープエンドビームを固定する鋼材に合わせて、現地にてロープエンドビームへの穴あけ作業が必要になってくる。
【0005】
しかしながら、現地での穴あけ作業には、多くの時間と費用が必要となる。したがって、昇降路の上部に設けられる巻上機の支持台や、ロープエンドビーム等を含む昇降路上部構造体において、建屋寸法に合わせて長さの調整をした場合にも、穴あけ加工することなく、建屋に設置可能な構成が望まれている。
【0006】
そこで、本発明は、穴あけ加工することなく、建屋の寸法誤差に対応可能な昇降路上部構造体及び昇降路上部構造体の設置方法、及び、エレベーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明の昇降路上部構造体は、昇降路上部の機械室の床面に配置された少なくとも一対のスペーサを備える。また、長手方向の両端部が、一対のスペーサのそれぞれの上部に固定されるように配置される支持ビームを備える。そして、一対のスペーサのうち、少なくとも一方のスペーサの支持ビーム側の上面には、支持ビームの長手方向に沿う方向に長いスペーサ長円穴が設けられている。また、支持ビームにおいて、少なくとも一方のスペーサ上部に配置される側の端部には、ビーム穴が長手方向に沿って複数個設けられている。そして、一方のスペーサと、一方のスペーサ上部に配置される支持ビームの長手方向における端部は、スペーサ長円穴と、スペーサ長円穴の上部に重なる位置に設けられたビーム穴とを貫通するボルトで固定されている。
【0008】
本発明の昇降路上部構造体の設置方法は、まず、長手方向における少なくとも一側の端部に、ビーム穴が、長手方向に沿って複数個設けられた支持ビームを準備する。さらに、一対のスペーサであって、一対のスペーサのうち、少なくとも一方のスペーサの支持ビーム側の上面に、支持ビームの長手方向に沿う方向に長いスペーサ長円穴が設けられ一対のスペーサを準備する。そして、昇降路上部の床面の所定の位置に、一対のスペーサを配置し、一対のスペーサの間隔に応じて支持ビームの配置位置を調整し、スペーサ長円穴が設けられた一方のスペーサ上部に、支持ビームのビーム穴が設けられた一側の端部を配置すると共に、他方のスペーサ上部に、支持ビームの他側の端部を配置する。そして、スペーサ長円穴及びビーム穴にボルトを挿通させてナットで固定する。
【0009】
本発明のエレベーターは、上記の昇降路上部構造体を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、穴あけ加工することなく、建屋の寸法誤差に対応可能な昇降路上部構造体を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの全体構成図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るエレベーターの概略構成図であり、
図1とは異なる方向から見た図である。
【
図3】昇降路上部構造体30を含む巻上機100周りの状態を巻上機100の回転軸に直交する方向(X方向)から見た正面図である。
【
図4】昇降路上部構造体30を含む巻上機100周りの状態を上面(Z方向)から見た図である。
【
図5】昇降路上部構造体30を含む巻上機100周りの状態を巻上機100の回転軸に沿う方向(Y方向)から見た正面図である。
【
図6】昇降路上部構造体30の要部の分解斜視図である。
【
図7】第1マシンビーム2aを短手方向の下部から見た図である。
【
図8】第1スペーサ3aを短手方向の上部から見た図である。
【
図9】第1マシンビーム2aの端部を切断した後に、第1マシンビーム2aを第1スペーサ3aに固定したときの要部斜視図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る昇降路上部構造体200の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るエレベーターの昇降路上部構造体及び昇降路上部構造体の設置方法の一例を、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではない。以下で説明する各図において、共通の部材には同一の符号を付している。
【0013】
1.第1の実施形態:エレベーターの構成
まず、本発明の第1の実施形態(以下、「本実施形態」という。)に係るエレベーターの昇降路上部構造体が適用されるエレベーターの全体構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係るエレベーターの全体構成図であり、
図2は、本実施形態に係るエレベーターを
図1とは異なる方向から見たときの概略構成図である。
【0014】
図1に示すように、本実施形態のエレベーター1は、建築構造物内に形成された昇降路110に設けられている。エレベーター1は、昇降路110内を昇降動作し、人や荷物を載せる乗りかご120と、主ロープ130と、釣合おもり170と、巻上機100とを備えている。以下では、乗りかご120が昇降移動する方向を上下方向として説明する。
【0015】
[昇降路]
昇降路110は、乗りかご120が昇降するための空間であり、建物内部の各階を上下方向に貫いて設けられている。昇降路110の内壁面180には、乗りかご120の昇降を案内するガイドレール(図示を省略する)が取り付けられている。また、昇降路110の壁面180における各階に相当する高さ位置には、各階に通じる乗場ドア(図示を省略する)が設けられている。
【0016】
また、昇降路110の頂部には、機械室190が設けられている。機械室190には、巻上機100が固定される巻上機支持台60(
図2参照)や、主ロープ130の先端が保持されるロープ支持機構20(
図2参照)を含む昇降路上部構造体30が設けられている。昇降路上部構造体30については後で詳述する。
【0017】
[乗りかご]
乗りかご120は、中空の略直方体状に形成されており、昇降路110内に配置されている。乗りかご120の上端部には、かご上プーリ121が設けられており、かご上プーリ121に主ロープ130が巻き掛けられている。乗りかご120は、主ロープ130を介して、釣合おもり170と連結され、昇降路110内を昇降する。この乗りかご120は、昇降路110内の壁面180に設けられたガイドレールに案内され、昇降路110内の上下方向に昇降する。乗りかご120の側面には、各階の乗場ドアに対応する位置に、かごドア(図示を省略する)が設けられており、各階に乗りかご120が停止した際に、かごドア及び乗場ドアが開くことで、乗りかご120への人や荷物の乗り降りが行われる。
【0018】
[釣合おもり]
釣合おもり170は、昇降路110内に配置され、上端部にはおもり側プーリ141が設けられている。おもり側プーリ141には、主ロープ130が巻き掛けられており、図示を省略するおもり側ガイドレールに沿って昇降路110内を昇降動作する。ここで、かご上プーリ121と、おもり側プーリ141はその軸方向が巻上機100の綱車101及び反らせ車150と直交するように配置されている。
【0019】
[巻上機]
機械室190に設けられた巻上機支持台60に固定されている。巻上機100は、
図2に示すように、主ロープ130が巻き掛けられる綱車101と、綱車101を回転駆動させる駆動部102と、綱車101及び駆動部102を支持するベース部103とを有している。また、巻上機100の近傍には、主ロープ130が装架される反らせ車150が設けられている。巻上機100は、巻き掛けられた主ロープ130を巻き上げることで、乗りかご120を昇降させる。巻上機100は、綱車101の回転軸が、かご上プーリ121及びおもり側プーリ141の回転軸における軸方向と直交するように設置されている。
【0020】
[主ロープ]
主ロープ130は、軸方向の両端部が、ロープ調整部131を介して、昇降路110上部の機械室190に設けられたロープ支持機構20に固定されている。ロープ調整部131は、主ロープ130の張力を調整する部材である。ロープ調整部131については後で詳述する。主ロープ130は、その一端部が、機械室190のロープ支持機構に支持された後、昇降路110内において、かご上プーリ121に巻き掛けられ、その後、巻上機100の綱車101及び反らせ車150に巻き掛けられる。
【0021】
さらに、主ロープ130は、巻上機100の綱車101及び反らせ車150に巻き掛けられた後、おもり側プーリ141に巻き掛けられる。そして、主ロープ130の他端部は、ロープ調整部131を介して昇降路110上部の機械室190に設けられたロープ支持機構20に固定される。巻上機100が駆動すると、乗りかご120及び釣合いおもり170は、主ロープ130を介して昇降路110内を昇降動作する。
【0022】
2.昇降路上部構造体の構成
次に、本実施形態のエレベーター1で用いられる昇降路上部構造体30について説明する。
図3は、昇降路上部構造体30を含む巻上機100周りの状態を巻上機100の回転軸に直交する方向(X方向)から見た正面図である。また、
図4は、昇降路上部構造体30を含む巻上機100周りの状態を上面(Z方向)から見た図である。また、
図5は、昇降路上部構造体30を含む巻上機100周りの状態を巻上機100の回転軸に沿う方向(Y方向)から見た正面図である。
【0023】
昇降路上部構造体30は、
図3及び
図4に示すように、機械室190の床面161に載置される第1スペーサ3aと、第2スペーサ3bと、第1マシンビーム2aと、第2マシンビーム2bと、ロープエンドビーム2cと、一対の支持プレート21、21とを有している。本実施形態では、第1スペーサ3a、第2スペーサ3b、第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、ロープエンドビーム2cは、断面形状がH型に形成された、いわゆるH形鋼で構成された例について説明する。H形鋼は、一方向に延在する長方形状の一対のフランジ部と、その一対のフランジ部を接続する接続部とで構成されている。
【0024】
以下の説明では、H型鋼において、その延在方向を長手方向、長手方向に直交する方向で、かつ、長手方向に延在する一対のフランジ部に対して垂直な方向を短手方向として説明する。また、長手方向と短手方向に直交する方向を幅方向として説明する。また、第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、ロープエンドビーム2cを特に区別しない場合には、単に、支持ビーム2として説明する。
【0025】
第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bは短手方向の長さ及び長手方向の長さが互いに同じH形鋼で構成されている。また、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bも短手方向の長さ及び長手方向の長さが互いに同じであるH形鋼で構成されている。ロープエンドビーム2cは、短手方向の長さが第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bよりも短く、長手方向の長さが第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bと同じ長さのH形鋼で構成されている。
【0026】
第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bは、その長手方向が互いに平行になるように配置され、かつ、その長手方向が、巻上機100の綱車101の軸方向と略平行となるように、機械室190の床面161に配置される。また、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bは、機械室190において、建屋の梁112上部に載置される(
図5参照)。
【0027】
第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bは、下部フランジ部11と、下部フランジ部11と対向する上部フランジ部12と、下部フランジ部11と上部フランジ部12を接続する接続部13(
図6参照)とを有している。
図3に示すように、下部フランジ部11は、ボルト45によって機械室190の床面161に固定されている。
【0028】
また、
図6に示すように、上部フランジ部12には、スペーサ長円穴50が設けられている。スペーサ長円穴50は、幅方向に長い長円穴である。そして、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bのスペーサ長円穴50には、第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b及びロープエンドビーム2cを固定するためのボルト17が貫通する。スペーサ長円穴50の詳細については後で詳述する。第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bにより、機械室190の床面161から巻上機100の鉛直方向の高さが調整される。
【0029】
第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bは、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの上部に配置され、その長手方向が互いに平行で、かつ、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの長手方向と直交するように配置されている。また、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bは、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの長手方向に、所定の間隔(巻上機100のベース部103が載置可能な間隔)を空けて配置されている。
【0030】
第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bは、下部フランジ部5と、下部フランジ部5と対向する上部フランジ部6と、下部フランジ部5と上部フランジ部6を接続する接続部7とを有している。下部フランジ部5には、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bに固定する際に用いる複数のボルト穴が設けられている。ここで、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bに設けられる複数のボルト穴のうち、長手方向の一方の側(本実施形態では、第1スペーサ3aに固定される側)に設けられるボルト穴は、ビーム長円穴40(
図6参照)である。ビーム長円穴40は、本発明のビーム穴に相当するものであり、その構成については後で詳述する。
【0031】
本実施形態では、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bにより、巻上機100を支持する巻上機支持台60が構成されている。第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bにおける上部フランジ部6の上部には、巻上機100が防振部材41を介して設置される。そして、巻上機100は、ボルトによって第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bに固定される。
【0032】
ロープエンドビーム2cは、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bと同様、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの上部に配置されている。ロープエンドビーム2cは、第2マシンビーム2bに対して第1マシンビーム2a側とは反対側に配置され、その長手方向が、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bの長手方向と平行となるように配置されている。ロープエンドビーム2cの長手方向の長さは、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bの長手方向の長さと同じ長さに構成されている。一方、ロープエンドビーム2cの短手方向の長さは、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bの短手方向の長さよりも短い長さに構成されている。
【0033】
ロープエンドビーム2cは、下部フランジ部15と、下部フランジ部15と対向する上部フランジ部16と、下部フランジ部15と上部フランジ部16を接続する接続部19とを有している。下部フランジ部15には、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bに固定する際に用いる複数のボルト穴が設けられている。ここで、ロープエンドビーム2cに設けられる複数のボルト穴のうち、長手方向の少なくとも一方の側(本実施形態では、第1スペーサ3aに固定される側)に設けられるボルト穴は、ビーム長円穴40(
図6参照)である。ビーム長円穴40は、第1マシンビーム2a及び第2マシンビーム2bに設けられるビーム長円穴40と同様の構成を有する。このビーム長円穴40については後で詳述する。
【0034】
また、ロープエンドビーム2cの上部フランジ部16の上部には、ロープ調整部131のシンブルロッド132(
図3参照)を支持する一対の支持プレート21、21が配置されている。
【0035】
一対の支持プレート21、21は、それぞれ平板状の部材で構成されており、支持プレート21には、後述するロープ調整部131のシンブルロッド132が貫通する複数の貫通孔135が設けられている。一対の支持プレート21、21は、ロープエンドビーム2cの長手方向において、互いに離間して配置され、貫通孔135が、第2マシンビーム2bとロープエンドビーム2cとの間に来るように配置されている。これらの一対の支持プレート21、21は、それぞれ、ロープエンドビーム2cの上部フランジ部16にボルト(図示を省略する)で締結されている。本実施形態では、ロープエンドビーム2c及び一対の支持プレート21、21によって、ロープ支持機構20が構成されている。
【0036】
ここで、支持プレート21によって支持されるロープ調整部131について説明する。ロープ調整部131は、主ロープ130の軸方向の両端部に設けられている。ロープ調整部131は、
図3に示すように、シンブルロッド132と、バネ部材133と、ナット134とを有して構成されている。
【0037】
シンブルロッド132は、外周面に雄ネジが形成された棒状の部材であり、主ロープ130の軸方向の両端部のそれぞれに固定されている。主ロープ130をロープ支持機構20に支持させる場合には、まず、このシンブルロッド132を、支持プレート21の貫通孔135に鉛直方向の下側から貫通させる。そして、支持プレート21の貫通孔135を貫通したシンブルロッド132にバネ部材133を挿通し、バネ部材133に所定の張力が発生するようにシンブルロッド132の端部からナット134をねじ込み、所定の位置で固定する。そして、バネ部材133の伸縮によって主ロープ130の張力を調整することができる。
【0038】
本実施形態では、主ロープ130の一方の端部がロープ調整部131を介して一方の支持プレート21に支持されると共に、主ロープ130の他方の端部がロープ調整部131を介して他方の支持プレート21に支持されている。
【0039】
3.昇降路上部構造体の要部の構成
昇降路上部構造体30の設置時においては、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bを建屋の梁112上部に設置するために、
図5に示すように、昇降路110の壁面180を掘りこんで凹部111を設ける場合がある。この場合、凹部111を設けた後、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bを梁112の上部に配置する。そして、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの配置位置に対する第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、及び、ロープエンドビーム2cの配置位置を調整する必要がある。凹部111を設けない場合にも、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの配置位置と、それに対する第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、及び、ロープエンドビーム2cの配置位置とは、建屋の寸法に合わせて現地にて調整される。このため、昇降路上部構造体30の設置時には、第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、及びロープエンドビーム2cを、建屋の寸法に合わせて切断する工程が必要となる場合がある。
【0040】
図6は、昇降路上部構造体30の要部の分解斜視図である。
図6では、第1スペーサ3aと、第1スペーサ3aの上部フランジ部12に固定される第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b及びロープエンドビーム2cを図示している。以下、第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b及びロープエンドビーム2cを合わせて支持ビーム2と称する。
【0041】
本実施形態では、支持ビーム2おいて、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bに固定するためのボルト穴のうち少なくとも第1スペーサ3aに固定される側(本発明の一側)のボルト穴を、複数のビーム長円穴40で構成している。さらに、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bのうち、支持ビーム2のビーム長円穴40に対応する第1スペーサ3aのボルト穴をスペーサ長円穴50で構成している。これにより寸法調整のために、支持ビーム2の、複数のビーム長円穴40が設けられた一側の端部を切断した場合にも、分断されていないビーム長円穴40をボルト締結に用いることができる(
図9参照)。
【0042】
なお、本実施形態では、図示を省略するが、支持ビーム2において、第2スペーサ3bに固定する他側のボルト穴、及び、そのボルト穴と重なる位置に設けられる第2スペーサ3bのボルト穴は、通常のボルト締結に用いられる真円状の丸穴で構成されている。
【0043】
以下に、支持ビーム2に設けられるビーム長円穴40及び、第1スペーサ3aに設けられるスペーサ長円穴50の詳しい構成について説明する。なお、第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、及びロープエンドビーム2cにおけるそれぞれのビーム長円穴40の構成は同様であるので、以下では、代表して第1マシンビーム2aのビーム長円穴40について説明する。
【0044】
図7は、第1マシンビーム2aを短手方向の下部から見た図である。第1マシンビーム2aの下部フランジ部5は、第1フランジ片5aと、第2フランジ片5bを有している。第1フランジ片5aは、下部フランジ部5の幅方向の中心に設けられた接続部7から一方の側に突出して形成さている。第2フランジ片5bは、接続部7から他方の側に突出して形成されている。
【0045】
図7に示すように、ビーム長円穴40は、第1マシンビーム2aの長手方向に沿う方向における一側に設けられており、第1マシンビーム2aの長手方向に長い長円穴で構成されている。また、ビーム長円穴40は、第1マシンビーム2aの第1フランジ片5aと、第2フランジ片5bに、接続部7を中心として対称に設けられている。さらに、ビーム長円穴40は、第1マシンビーム2aの長手方向に沿う方向に複数個(
図7では2個)所定の距離W
2を空けて設けられている。ここでは、第1マシンビーム2aの長手方向に沿う方向に並んだ複数個のビーム長円穴40間の距離W
2は、強度上必要な距離以上に確保されている。また、ビーム長円穴40の第1マシンビーム2aの長手方向における長さW
1については後述する。
【0046】
一方、
図8は、第1スペーサ3aを短手方向の上部から見た図である。第1スペーサ3aの上部フランジ部12は、第1フランジ片12aと、第2フランジ片12bを有している。第1フランジ片12aは、上部フランジ部12の幅方向の中心に設けられた接続部13から巻上機100が設置される側に突出して形成されている。第2フランジ片12bは、巻上機100が設置される側とは反対側に突出して形成されている。
【0047】
スペーサ長円穴50は、上部フランジ部12のうち、巻上機100側である第1フランジ片12aに設けられ、上部フランジ部12の幅方向に長い長円穴で構成されている。また、スペーサ長円穴50は、上部に配置される第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、ロープエンドビーム2cに設けられるそれぞれのビーム長円穴40に対応するように、第1スペーサ3aの長手方向に沿って複数個設けられている。
【0048】
ここで、スペーサ長円穴50の、第1スペーサ3aの幅方向における長さW3は、第1スペーサ3aと支持ビーム2とを固定する時に挿通されるボルトの直径をW5とすると、W3=2W5+W2以上に構成されている。また、スペーサ長円穴50の長さW3は、第1フランジ片12aの幅方向の幅よりも小さく、第1フランジ片12aにおける強度を確保できる幅以下であればよい。
【0049】
一方、
図7に示すように、ビーム長円穴40の第1マシンビーム2aの長手方向における長さW
1は、ボルトの直径W
5よりも長く、W
5+W
4よりも小さく構成されている。ここで、長さW
4は、
図8に示すように、第1スペーサ3aの支持ビーム2が延在する一側とは反対側である他側の端部から、スペーサ長円穴50の他側の端部までの距離である。さらに、ビーム長円穴40の長さW
1は、より好ましくは、W
5+W
4-W
2よりも小さく構成されている。
【0050】
なお、ビーム長円穴40の第1マシンビーム2aの幅方向における幅、及びスペーサ長円穴50の第1スペーサ3aの長手方向における幅は、使用するボルトが挿通可能な幅に設定されている。
【0051】
図9は、第1マシンビーム2aの一側の端部を切断した後に、第1マシンビーム2aの一側の端部を第1スペーサ3aに固定したときの要部斜視図である。本実施形態では、第1マシンビーム2aにおいて、第1スペーサ3aに固定される一側の端部には、複数のビーム長円穴40が設けられる。これにより、第1マシンビーム2aの切断に伴って端部側のビーム長円穴40が分断された場合にも、その分断されたビーム長円穴40よりも他側に設けられた分断されていないビーム長円穴40を用いて第1スペーサ3aとボルト締結することができる。
【0052】
ところで、第1スペーサ3aのボルト穴が、真円状の丸穴で構成された場合、支持ビーム2の固定位置の調整後に、支持ビーム2の隣接する2つのビーム長円穴40間に第1スペーサ3aのボルト穴が存在する状況が発生する。この場合、第1スペーサ3aと支持ビーム2とを適切な位置でボルト締結することができない。これに対し、本実施形態では、スペーサ長円穴50の長さW3を2W5+W2以上に設定することで、支持ビーム2の固定位置調整後に、支持ビーム2と第1スペーサ3aとのボルト締結を確実に行うことができる。
【0053】
また、本実施形態では、支持ビーム2のビーム長円穴40の長さW1をW5+W4より小さくすることで、支持ビーム2を切断した場合にも、分断されていないビーム長円穴40をボルト締結に用いることができる。さらに、より好ましくは、ビーム長円穴40の長さW1を、W5+W4-W2よりも小さくすることにより、支持ビーム2を切断した場合にも、支持ビーム2の強度を維持しつつも、分断されていないビーム長円穴40をボルト締結に用いることができる。
【0054】
そして、本実施形態では、各支持ビーム2の長手方向における一側の端部から、長手方向において最も他側に配置されたビーム長円穴40までの範囲内であれば、いずれの位置においても、各支持ビーム2と、第1スペーサ3aとのボルト締結が可能となる。このため、各支持ビーム2の長さを、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの配置位置に起因する寸法誤差に対して柔軟に対応させることができる。
【0055】
なお、第1マシンビーム2aにおいて、切断前の初期状態では、長手方向の第1スペーサ3a側の端部からビーム長円穴40の第1スペーサ3a側の端部までの間隔の長さW6は、W4+W3-W5であるのが好ましい。これにより、支持ビーム2を切断しない場合において、支持ビーム2の長手方向における一側の端部と第1スペーサ3aの幅方向における一側の端部とを鉛直方向に揃えた状態でボルト締結ができる。
【0056】
4.昇降路上部構造体の設置方法
次に、本実施形態の昇降路上部構造体30の設置方法の一例について説明する。まず、機械室190において、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの配置位置を決定する。例えば、建屋の梁112上部に第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bが配置されるように調整し、必要に応じては、昇降路110の壁面180を掘りこみ、凹部111を形成する。
【0057】
次に、各支持ビーム2の長手方向の長さを決定する。この場合、
図5に示すように、第1スペーサ3aの幅方向における第2スペーサ3b側とは反対側の端部から、第2スペーサ3bの幅方向における第1スペーサ3a側とは反対側の端部までの長さLが、各支持ビーム2の長手方向の長さとなる。したがって、各支持ビーム2の長さが長さLとなるように、各支持ビーム2を切断する。例えば、第1マシンビーム2aの長手方向の長さを調整する場合には、第1マシンビーム2aの長手方向において、ビーム長円穴40が設けられた一側の端部を切断する。同様に、第2マシンビーム2b、ロープエンドビーム2cの長手方向の長さを調整する場合にも、長手方向において、ビーム長円穴40が設けられた一側の端部を切断する。
【0058】
ここで、支持ビーム2の切断可能な寸法(調整代)は、支持ビーム2の一側の端部から、最も他側に設けられたビーム長円穴40を分断しない位置までの寸法である。これにより、少なくとも、支持ビーム2の最も他側に設けられたビーム長円穴40を分断されない状態で維持することができる。このため、支持ビーム2においては、予め必要な調整代に応じて複数のビーム長円穴40が設けられている。
【0059】
そして、各支持ビーム2を切断した後、それらの支持ビーム2を第1スペーサ3a及び第2スペーサ3b上部に配置し、固定位置の調整を行う。このとき、各支持ビーム2は、ビーム長円穴40が設けられた一側の端部が第1スペーサ3a上部に重なるように配置する。
【0060】
本実施形態では、各支持ビーム2の長手方向の長さは、第1スペーサ3aの幅方向における第2スペーサ3b側とは反対側の端部から、第2スペーサ3bの幅方向における第1スペーサ3a側とは反対側の端部までの長さLに設定されている。このため、各支持ビーム2の長手方向の両端部は、それぞれ、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bの幅方向における巻上機100が設けられる側とは反対側の端部と鉛直方向に揃うように配置される。
【0061】
そして、
図9に示すように、各支持ビーム2が切断されることにより長手方向における端部側のビーム長円穴40が分断された場合にも、分断されていないビーム長円穴40が、スペーサ長円穴50にボルト締結可能な位置を維持した状態で重なる。そして、この位置において、第1スペーサ3aに設けられたスペーサ長円穴50と、その上部に位置するビーム長円穴40にワッシャー18を介してボルト17を貫通させ、ボルト17の下部をナット(図示を省略する)で締結する。これにより、各支持ビーム2を第1スペーサ3aに固定することができる。
【0062】
一方、各支持ビーム2の長手方向におけるビーム長円穴40が設けられる側とは反対側の端部は、本実施形態では切断されないため、第2スペーサ3bとの相対的な位置関係は、設計段階から変化しない。したがって、各支持ビーム2の第2スペーサ3bに固定するためのボルト穴と、第2スペーサ3bの各支持ビーム2に固定するためのボルト穴は、一般的に適用される真円状のボルト穴(丸穴)を用いることができる。したがって、第2スペーサ3b側では、真円状のボルト穴を用いて、各支持ビーム2とボルト締結することができる。
【0063】
ところで、各支持ビーム2において、ビーム長円穴40が支持ビーム2の長手方向に一つだけ形成されている場合においても、ビーム長円穴40の長さに応じて、各支持ビーム2と第1スペーサ3aとの固定位置の調整が可能である。しかしながら、この場合、第1スペーサ3aと第2スペーサ3bの配置位置で決定される長さLに合わせて支持ビーム2を切断すると、ビーム長円穴40も分断されてしまう場合がある。この分断されたビーム長円穴40を用いて第1スペーサ3aに支持ビーム2をボルト締結できたとしても、地震などで巻上機支持台60が水平方向にずれた場合に、ビーム長円穴40の端部でボルトのせん断方向へのずれを受けることができない。そうすると、巻上機100が転倒してしまうという問題がある。
【0064】
これに対し、本実施形態では、各支持ビーム2の、第1スペーサ3aにボルト締結するためのビーム長円穴40は、長手方向に複数個設けられている。したがって、各支持ビーム2と第1スペーサ3aとの固定位置を調整した後、分断されていないビーム長円穴40を用いてボルト締結することができる。このため、地震等によって第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、及び、ロープエンドビーム2cに水平方向への力が発生した場合にも、ビーム長円穴40の端部にボルトが当接する。これにより、第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、及びロープエンドビーム2cのずれを止めることができる。
【0065】
ところで、本実施形態では、第1スペーサ3aに形成されるボルト穴を長円穴(スペーサ長円穴50)とし、各支持ビーム2の第1スペーサ3aに固定される側に設けられるボルト穴を長円穴(ビーム長円穴40)にする例について説明した。しかしながら、本発明は、これに限られるものではない。例えば、第2スペーサ3bに本実施形態のスペーサ長円穴50を設けると共に、各支持ビーム2の長手方向における第2スペーサ3bに固定される他側の端部に、本実施形態のビーム長円穴40を設ける構成としてもよい。この場合にも、各支持ビーム2の長手方向の長さを調整する場合には、ビーム長円穴40が設けられた他側の端部を切断するようにすればよい。
【0066】
さらに、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bに、本実施形態のスペーサ長円穴50を設けると共に、各支持ビーム2の長手方向の両端部に、本実施形態の複数のビーム長円穴40を設ける構成としてもよい。この場合には、各支持ビーム2の長手方向の両端部を、長さ調整のために切断することができるため、本実施形態に比較して、調整代を多く確保することができる。
【0067】
5.第2の実施形態
次に、本発明の第2の実施形態に係る昇降路上部構造体200について説明する。
図10は、第2の実施形態に係る昇降路上部構造体200の概略構成図である。
図10において、
図5に対応する部分には同一符号を付し、重複説明を省略する。
【0068】
第2の実施形態に係る昇降路上部構造体200は、第1スペーサ3aが、第1補助スペーサ3cの上部にスペーサ用防振部材51を介して固定され、第2スペーサ3bが、第2補助スペーサ3d上部にスペーサ用防振部材51を介して固定されている。
【0069】
第1補助スペーサ3c及び第2補助スペーサ3dは、それぞれ、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bと同様のH形鋼を用いて構成されている。また、第1補助スペーサ3c及び第2補助スペーサ3dの長手方向、短手方向、幅方向のそれぞれの長さは、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bのそれらの長さと同じ長さに構成されている。
【0070】
第1補助スペーサ3c及び第2補助スペーサ3dは、それぞれ、機械室190の床面にボルト(図示を省略する)で固定されると共に、上下方向における上部にスペーサ用防振部材51がボルトで固定されている。さらに、第1補助スペーサ3c、及び第2補助スペーサ3dの上下方向の上部に固定されたスペーサ用防振部材51の上下方向における上部には、それぞれ、第1スペーサ3a、及び、第2スペーサ3bがボルトで固定されている。
【0071】
本実施形態では、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bが、それぞれ、第1補助スペーサ3c及び第2補助スペーサ3d上部にスペーサ用防振部材51を介して固定されている。そのため、各支持ビーム2に伝わる振動、及び、巻上機100に係る振動を軽減することができる。その他、第1の実施形態と同様の構成であるため、同様の効果を得ることができる。
【0072】
ところで、第1の実施形態、及び、第2の実施形態では、第1スペーサ3a及び第2スペーサ3bは、各支持ビーム2の幅方向において、第1マシンビーム2aからロープエンドビーム2cに架けて延在する部材で構成されている。しかしながら、一対のスペーサを、支持ビーム2毎に設ける構成としてもよい。すなわち、この場合、第1マシンビーム2a、第2マシンビーム2b、ロープエンドビーム2cを配置するために、合計で6つのスペーサが配置されることとなる。
【0073】
そして、支持ビーム2毎に一対のスペーサを設ける場合においても、各支持ビーム2の長手方向における切断される側の端部に、
図7に示した複数のビーム長円穴40を設ける。さらに、一対のスペーサのうち、各支持ビーム2の長手方向における切断される側の端部が固定される一方のスペーサに、
図8に示したスペーサ長円穴50を設ける。これにより、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0074】
また、上述した実施形態では、第1スペーサ3a、第2スペーサ3b、及び、各支持ビーム2を断面H形のH形鋼で構成する例としたがこれに限られるものではない。例えば一方向に延在する長方形状の一対のフランジ部と、一対のフランジ部の長手方向に直交する幅方向の端部において一対のフランジ部を接続する接続部とで構成される断面コの字形状の部材で構成してもよい。その他、種々の形状を適用することができる。
【0075】
また、上述した実施形態例では、本発明におけるビーム穴を、支持ビームの長手方向に沿う方向に長いビーム長円穴で構成する例としたが、これに限られるものではない。支持ビーム側に設けられるボルト穴(ビーム穴)は、通常の真円で構成されていてもよく、その場合にも、上述した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0076】
上述した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成について他の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1…エレベーター、2…支持ビーム、2a…第1マシンビーム、2b…第2マシンビーム、2c…ロープエンドビーム、3a…第1スペーサ、3b…第2スペーサ、5…下部フランジ部、5a…第1フランジ片、5b…第2フランジ片、6…上部フランジ部、7…接続部、11…下部フランジ部、12…上部フランジ部、12a…第1フランジ片、12b…第2フランジ片、13…接続部、15…下部フランジ部、16…上部フランジ部、17…ボルト、18…ワッシャー、20…ロープ支持機構、21…支持プレート、30…昇降路上部構造体、40…ビーム長円穴、41…防振部材、45…ボルト、50…スペーサ長円穴、51…スペーサ用防振部材、60…巻上機支持台、100…巻上機、101…綱車、102…駆動部、103…ベース部、110…昇降路、111…凹部、112…梁、121…かご上プーリ、130…主ロープ、131…ロープ調整部、132…シンブルロッド、133…バネ部材、134…ナット、135…貫通孔、141…おもり側プーリ、161…床面、180…内壁面、190…機械室、200…昇降路上部構造体