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特許7559253スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240924BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240924BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240924BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240924BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023546182
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-04
(86)【国際出願番号】 CN2022078800
(87)【国際公開番号】W WO2023092884
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】202111400107.1
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523287539
【氏名又は名称】中節能万潤股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】VALIANT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】11 Wuzhishan Road, YTETDZ, Yantai, Shandong 264006, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】王 煥杰
(72)【発明者】
【氏名】石 宇
(72)【発明者】
【氏名】林 存生
(72)【発明者】
【氏名】張 善国
(72)【発明者】
【氏名】宣 力▲其▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 恒
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-93242(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157591(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0127321(US,A1)
【文献】特開昭49-081320(JP,A)
【文献】特開平3-68562(JP,A)
【文献】特開平2-45743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62、10/00-10/39
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式が式Iに示すとおりであることを特徴とする、スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤。
(式中、RとRは、同じであるか又は異なり、RとRは、それぞれメチル基、エチル基、ブチル基、メトキシ基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、フルオロスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、パーフルオロエチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、アルキル含有ベンゼンスルホニル基、シアン含有/フッ素含有ベンゼンスルホニル基、アルコキシ基含有ベンゼンスルホニル基から独立して選択され、RとRは、連結して五員環又は六員環を形成することができる)
【請求項2】
以下の構造式から選択されたいずれか一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のスルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤が使用されたリチウムイオン電池であって、前記電解液添加剤は、負極、正極、負極と正極との間に設置されたセパレータ及び電解液を含むリチウムイオン電池に使用されることを特徴とする、リチウムイオン電池。
【請求項4】
前記電解液は、溶媒、電解質リチウム塩及び添加剤を含み、前記添加剤は、少なくとも前記スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤を含むことを特徴とする、請求項3に記載のスルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤が使用されたリチウムイオン電池。
【請求項5】
電解液の総質量で、前記スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤の含有量は、0.01~5%であることを特徴とする、請求項4に記載のスルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤が使用されたリチウムイオン電池。
【請求項6】
前記電解質リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiBOB、LiODFB、LiTDI、LiTFSI及びLiFSIから選択された一種以上であり、電解液の総質量で、前記電解質リチウム塩の含有量は、10~20wt%であることを特徴とする、請求項4に記載のスルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤が使用されたリチウムイオン電池。
【請求項7】
前記溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルプロピニルカーボネート、1,4-ブチロラクトン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル又は酪酸エチルから選択された一種又は二種以上の組み合わせであることを特徴とする、請求項4に記載のスルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤が使用されたリチウムイオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤及びその使用に関し、リチウム電池の非水系電解液添加剤の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は、商業化される以来、その比エネルギーが高く、サイクル性能が高いため、デジタル、エネルギー貯蔵、動力、軍用宇宙飛行及び通信装置などの分野に広く用いられる。他の二次電池に比べて、リチウム二次電池は、動作電圧が高く、サイクル寿命が長く、自己放電率が低く、環境に優しく、メモリ効果がないなどの利点を有する。
【0003】
リチウムイオン電池において、電解液の酸化分解は、電池性能を劣化させ、かつサイクル及び高温保存過程で常に金属イオンの溶出を伴い、電池性能の深刻な低下をもたらす。市場のリチウムイオン電池に対する需要の持続的な増加に伴い、電池の総合性能の需要に対してより高い要求を提出し、添加剤の使用は、リチウムイオン電池の総合性能を向上させる効果的な方法の一つである。添加剤の種類が多く、添加剤が電解液において果たす異なる役割に応じて成膜添加剤、過充電保護添加剤、導電性添加剤、難燃添加剤、電解液安定剤などに分けることができる。いずれの添加剤であっても、それが電解液に占める割合が非常に小さいが、機能が顕著であるために広く研究開発される。
【0004】
従来のリチウム二次電池は、カーボネート系電解液を採用し、それの正極と負極の表面に形成された界面膜は、リチウムイオンの伝送に不利であり、界面膜のインピーダンスが高すぎることをもたらして電池の電気化学的特性の減衰を引き起こす。成膜添加剤は、正負極の界面膜の特性を改善させる有効な手段とすることができ、ここでインピーダンスは、界面膜の重要な特性と見なされ、リチウム二次電池の正極及び負極の界面膜のインピーダンスを低減できる成膜添加剤の開発に期待される。
【0005】
一般的には、硫黄系添加剤は、電池インピーダンスの低減に一定の作用を有し、さらに電池の高温性能及び低温性能を改善させる。1,3-プロパンスルトン(PS)、硫酸エチレン(DTD)は、それぞれ硫黄元素を含有する代表的な添加剤として、電池インピーダンスを低減する作用を有する成膜添加剤であるが、1,3-プロパンスルトン(PS)は、欧州連合の規制を受け、使用が制限され、硫酸エチレン(DTD)は、熱安定性が低く、安定剤が存在しなければ、電解液の酸価及び色度の劣化を引き起こし、それにより電池の高温性能に悪影響を与える。
【0006】
したがって、新規な成膜添加剤及び電解液安定剤を開発することは、重要な意味を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術に存在する不足に対して、熱安定性が高いイソシアネート系電解液添加剤を提供し、該添加剤は、優れたインピーダンス低減作用を有し、かつ電極表面に安定した界面膜を形成することができ、さらに界面特性を改善させるという目的を達成する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明が上記技術的課題を解決する技術的解決手段は、構造式が式Iに示すとおりである、スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤である。
【0009】
(式中、RとRは、同じであるか又は異なり、RとRは、それぞれメチル基、エチル基、ブチル基、メトキシ基、メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、フルオロスルホニル基、トリフルオロメタンスルホニル基、パーフルオロエチルスルホニル基、ベンゼンスルホニル基、アルキル含有ベンゼンスルホニル基、シアン含有/フッ素含有ベンゼンスルホニル基、アルコキシ基含有ベンゼンスルホニル基から独立して選択され、RとRは、連結して五員環又は六員環を形成することができる。)
【0010】
上記スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤の化合物機構について、その製造方法を報告する文献があり、J. Org. Chem. 1994,59,3540-3542.、CN1039417、CN1033807、Phosphorus, Sulfur, and Silicon,1992,70,91-97などの参考文献では、いずれも該種類の材料を紹介する。
【0011】
さらに、前記電解液添加剤は、以下の構造式のうちのいずれか一種又は二種以上から選択された混合物である。
【0012】
本発明が提供するスルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系添加剤は、熱安定性が高く、それでリチウムイオン電池の非水系電解液を調製して、45℃で30日間高温保存すると、電解液の酸価及び色度が安定する。本発明の特許が提供する新規な添加剤を硫酸エチレン(DTD)又はメチレンジスルホン酸メチレン(MMDS)と混合して使用して、電解液を調製する場合、DTD又はMMDS安定剤の作用を果たし、電解液の酸度及び色度の上昇を効果的に抑制し、それにより電池の関連性能を向上させる。
【0013】
本発明はさらに、スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤の使用を開示し、前記電解液添加剤は、負極、正極、負極と正極との間に設置されたセパレータ及び電解液を含むリチウムイオン電池に使用される。
【0014】
前記負極は、炭素系活性材料、ケイ素系活性材料、金属系活性材料又はリチウム含有窒化物からなる群から選択された単一材料、又はそれらのうちの二種以上の混合物である。
【0015】
さらに、前記電解液は、溶媒、電解質リチウム塩及び添加剤を含み、前記添加剤は、少なくとも前記スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤を含む。
【0016】
さらに、電解液の総質量で、前記スルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤の含有量は、0.01~5%、好ましくは、0.05~1%である。
【0017】
さらに、前記電解質リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiBOB、LiODFB、LiTDI、LiTFSI及びLiFSIから選択された一種以上であり、電解液の総質量で、前記電解質リチウム塩の含有量は、10~20wt%である。
【0018】
さらに、前記溶媒は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルプロピニルカーボネート、1,4-ブチロラクトン、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル又は酪酸エチルから選択された一種又は二種以上の組み合わせである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の有益な効果は、以下の(1)、(2)及び(3)である。
【0020】
(1)本発明が提供するスルホンアミド構造基を含有するイソシアネート系添加剤であって、ここでイソシアネート基は、高い求電子活性を有し、電解液系中の水分、及び正負極に含まれる活性水素と作用し、活性水素によるLiPFの分解を低減することができる。
【0021】
(2)本発明が提供する新規な添加剤は、スルホニル基が高い成膜性を有し、それを電解液に添加すると、電極表面に安定した界面膜を形成することができ、かつスルホニル構造基がSEI膜にS元素を導入し、イオン伝導率を向上させ、したがってリチウムイオン電池のサイクル性能を効果的に向上させ、具体的には電池が高いサイクル性能を有すると同時に、低い内部抵抗を示すことである。
【0022】
(3)本発明が提供する新規な添加剤は、スルホニル基とイソシアネート構造基を一体に有機的に結合し、高い熱安定性を有し、電解液安定剤の作用を果たし、電解液の高温変色及び酸価の上昇を避けることができる。本発明の特許が提供する新規な添加剤を電解液の酸価及び色度の上昇を引き起こしやすい硫酸エチレン(DTD)又はメチレンジスルホン酸メチレン(MMDS)を含有する電解液系に使用しても、良好な電解液安定剤の作用を示し、電解液の変色及び酸価の上昇を効果的に抑制する。本発明の特許が提供する新規な添加剤を含有する電解液を電池に使用すると、高温サイクル性及び高温保存性を向上させ、かつ低いインピーダンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかにするために、以下に、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の説明において、本発明を十分に理解しやすいために多くの具体的な詳細を説明する。しかしながら、この説明とは異なる多くの他の方式で本発明を実施することができ、当業者であれば、本発明の内容から逸脱しない状況で類似の改善を行うことができるため、本発明は、以下に開示された具体的な実施例に限定されない。
【0024】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術及び科学用語は、本発明の技術分野に属する当業者が一般的に理解する意味と同じである。本明細書において本発明の明細書に使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものだけであり、本発明を限定することを意図するものではない。
電池実施例
【0025】
電池実施例1~8及び比較例1~5に挙げられるリチウムイオン電池の非水系電解液の配合成分は、表1に示すとおりである。
表1 電池実施例1~8及び比較例1~5のリチウムイオン電池の非水系電解液の配合成分
【0026】
電池実施例1~8及び比較例1~5のリチウムイオン電池の非水系電解液でリチウムイオン型コイン電池を製造する方法は、以下の(1)、(2)、(3)及び(4)である。
(1)正極シートの製造
【0027】
正極LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末、カーボンブラック(粒度が1000nmである)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN,N-ジメチルピロリドン(NMP)を混合して均一なスラリーに調製し、スラリーをアルミニウム箔(15μm)集電体に均一に塗布し、次に乾燥させ、圧延すると、LiNi0.8Co0.1Mn0.1正極材料が得られた。120℃で12時間乾燥させ、乾燥後の極シートにおいて、LiNi0.8Co0.1Mn0.1が総塗布物の94%を占め、接着剤が4%を占め、カーボンブラックが2%を占めた。次に得られた極シートを直径が8mmのウェハーにせん断して正極とした。
(2)負極シートの製造
【0028】
人造黒鉛負極材料を例とすれば、人造黒鉛、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN-メチルピロリドン(NMP)を混合して均一なスラリーに製造し、スラリーを銅箔(15μm)集電体に均一に塗布し、次に乾燥させ、圧延すると、炭素負極材料が得られた。120℃で12時間乾燥させ、乾燥後の極シートにおいて、黒鉛が総塗布物の96.4%を占め、接着剤が3.6%を占め、次に得られた極シートを直径が8mmのウェハーにせん断して負極とした。
(3)電解液の調製
【0029】
水分含量<1ppmのアルゴン雰囲気グローブボックスにおいて、リチウム塩を溶媒に溶解し、次に新型のホスフィン含有イソシアネート系を添加し、均一に混合すると電解液が得られた。
(4)リチウムイオン電池の製造
【0030】
上記ステップ(1)及び(2)に記載の材料を作用電極とし、Celgard 2400膜(天津)をセパレータとし、CR2430型コイン電池を組み立てた。組み立て順序は、負極から正極まで順に負極ケース、弾性シート、ガスケット、負極シート、電解液、セパレータ、正極シート、正極ケースであり、その後に密封機により密封した。この操作は、いずれも純アルゴンガスグローブボックスで完了し、6h静置した後に取り出して電気化学的特性試験を行った。
リチウムイオン電池性能試験
【0031】
試験1、電解液安定性試験:上記実施例1~8及び比較例1~5で製造されたリチウムイオン電池電解液をそれぞれ密封アルミニウム瓶に入れ、アルミニウム瓶をアルミプラスチック膜で真空引きして封止した。電解液サンプルを同時に設定温度が45℃のインキュベータに入れて保存し、それぞれ保存前及び30日間後にグローブボックスにおいてサンプリングして電解液の酸度及び色度値を検出し、酸度を電位差滴定装置で試験した。酸度値は、HFに換算され、単位がppmであり、色度は、白金-コバルト比色法を採用し、色度単位がHazenである。試験結果は、表2に示すとおりである。
表2 電解液の酸価及び色度に対する添加剤の影響

【0032】
表2から分かるように、実施例1~8の電解液は、45℃の高温で30日間保存された後、電解液の酸度及び色度がいずれも比較例より低く、即ち硫酸エチレン(DTD)又はメチレンジスルホン酸メチレン(MMDS)の電解液系に、本発明が提供する新規な添加剤を添加すると、電解液の酸価及び色度が効果的に抑制された。これにより本発明が提供する新規な添加剤は、電解液の酸度及び色度の上昇を効果的に抑制し、電解液の高温条件下での安定性を向上させる。
試験2、高温サイクル性能試験及び高温保存性試験
【0033】
製造された電池に対してそれぞれ下記試験を行った。
【0034】
(1)45℃で、電池に0.1C倍率で4.3Vまで定電流充電し、さらに対応する倍率で2.7Vまで定電流放電し、この時に初回サイクルである。
【0035】
(2)初回サイクルが完了した後に、1.0C倍率で4.3Vまで定電流充電し、さらに対応する倍率で2.7Vまで定電流放電した。このサイクル条件に応じてそれぞれ100サイクル、500サイクルの試験を行い、それぞれ電池サイクル100回、500回後の容量保持率を算出した。ここで、サイクル後の容量保持率は、以下の式に応じて算出された。各電池で得られた関連試験データは、表2に示すとおりである。
サイクル後の容量維持率=(対応するサイクル数後の放電容量/初回サイクルの放電容量)×100%。
【0036】
高温保存による内部抵抗変化率の試験:実施例1~8及び比較例1~5で得られた電池を室温で1Cの充放電倍率で5回の充放電サイクル試験を行い、最後に1C倍率で満充電状態まで充電した。電池の内部抵抗Tを記録した。満充電状態の電池を60℃で15日間保存し、電池の内部抵抗T0を記録し、電池の内部抵抗変化率などの実験データを算出した。記録結果は、表3に示すとおりである(実施例1~8の電池番号は、それぞれ電池1~電池8であり、比較例1~5の電池番号は、それぞれ電池1#~電池5#である)。
内部抵抗変化率=(T-T0)/T×100%。
表3 実施例及び比較例の試験結果

【0037】
表3から明らかなように、本発明の新規な添加剤の使用は、リチウム二次電池の高温サイクル性能及び高温インピーダンス性を明らかに改善することができる。本発明の新規な添加剤が負極電極/電解液界面特性に対する改善により、リチウム二次電池の初回充放電での不可逆容量を低減し、界面インピーダンスを低下させると同時に界面の安定性を保持することができ、リチウム二次電池の高温サイクル安定性の向上に役立つことを示す。
【0038】
以上から分かるように、本発明の新規な添加剤は、高い熱安定性を有し、電解液安定剤の作用を果たし、電解液の高温変色及び酸価の上昇を避けることができる。本発明の特許が提供する新規な添加剤を電解液の酸価及び色度の上昇を引き起こしやすい硫酸エチレン(DTD)又はメチレンジスルホン酸メチレン(MMDS)を含有する電解液系に使用しても、良好な電解液安定剤の作用を示し、電解液の変色及び酸価の上昇を効果的に抑制する。本発明の特許が提供する新規な添加剤を含有する電解液を電池に使用すると、高温サイクル性能を向上させ、かつ低いインピーダンスを示し、良好な使用の将来性を有する。
【0039】
上記実施例の各技術的特徴を任意に組み合わせることができ、説明を簡潔にするために、上記実施例における各技術的特徴の全ての可能な組み合わせを説明せず、しかしながら、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾がなければ、いずれも本明細書に記載の範囲であると考えられるべきである。
【0040】
上記実施例は、本発明のいくつかの実施形態のみを示し、その説明が具体的で詳細であるが、これにより発明特許の範囲を限定するものと理解されるべきではない。指摘すべきことは、当業者にとって、本発明の構想から逸脱しない前提で、さらにいくつかの変形及び改善を行うことができ、これらは、いずれも本発明の保護範囲に属する。したがって、本発明の特許の保護範囲は、添付の請求項を基準とすべきである。