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特許7559254イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20240924BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240924BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20240924BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20240924BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0568
H01M10/0569
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023546344
(86)(22)【出願日】2022-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2022078801
(87)【国際公開番号】W WO2023092885
(87)【国際公開日】2023-06-01
【審査請求日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】202111400108.6
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】523287539
【氏名又は名称】中節能万潤股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】VALIANT CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】11 Wuzhishan Road, YTETDZ, Yantai, Shandong 264006, China
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【弁理士】
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】付 少邦
(72)【発明者】
【氏名】林 存生
(72)【発明者】
【氏名】石 宇
(72)【発明者】
【氏名】張 善国
(72)【発明者】
【氏名】宣 力▲其▼
(72)【発明者】
【氏名】姜 恒
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-139233(JP,A)
【文献】国際公開第2014/157591(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111244545(CN,A)
【文献】特表2020-515558(JP,A)
【文献】特開2011-198508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/052
H01M 10/0567
H01M 10/0568
H01M 10/0569
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構造式のうちのいずれか一種又は二種以上の混合物であることを特徴とする、イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤。
【請求項2】
請求項1に記載のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の製造方法であって、
不活性ガスの保護下で、原料1と原料2を溶媒に均一に分散させ、反応温度を10℃~120℃に制御し、1~48時間反応させ、イミダゾール構造基を含有するイソシアネート系添加剤反応液を得るステップを含み、
前記溶媒は、エーテル、THF、シクロペンチルメチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチルから選択された一種又は複数種の混合物であるか、又は無溶媒であり、
前記の溶媒の使用量について、原料1の質量使用量と溶媒の質量使用量の比率は1.0:1.0~10.0であり、
前記の原料1の使用量と原料2の使用量のモル比は、原料1:原料2=1.0:1.0~10.0であり、
前記の原料1は、
から選択されたいずれか一種であることを特徴とする、イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の使用であって、前記のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤は、負極、正極、負極と正極との間に設置されたセパレータ及び電解液を含むリチウムイオン電池に使用されることを特徴とする、イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の使用。
【請求項4】
前記の電解液は、溶媒、電解質リチウム塩及び前記のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤を含むことを特徴とする、請求項3に記載のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の使用。
【請求項5】
電解液の総質量で、前記のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の質量含有量は0.01~5%であることを特徴とする、請求項4に記載のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の使用。
【請求項6】
前記の電解質リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiBOB、LiODFB、LiTDI、LiTFSI及びLiFSIから選択された一種以上であり、電解液の総質量で、前記の電解質リチウム塩の含有量は10~20wt%であることを特徴とする、請求項4に記載のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の使用。
【請求項7】
前記の溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸エチルメチル、ジメチルカーボネート、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸メチルプロパルギル、1,4-ブタノリド、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル又は酪酸エチルから選択された一種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする、請求項4に記載のイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤及びその使用に関し、リチウム電池用非水電解液添加剤の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は商業化以来、その高い比エネルギーと優れたサイクル性能により、デジタル、エネルギー貯蔵、動力、軍用航空宇宙及び通信機器などの分野に広く用いられている。他の二次電池に比べて、リチウム二次電池は、作動電圧が高く、サイクル寿命が長く、自己放電率が低く、環境にやさしく、メモリ効果がないなどの利点を有する。
【0003】
リチウムイオン電池において、電解液の酸化分解により電池性能が劣化し、且つサイクル及び高温保存の過程で金属イオンの溶出が常に伴って起こることにより、電池性能が大幅に低下する。市場からのリチウムイオン電池の需要の継続的な増加に伴い、電池の総合的性能需要に対してより高い要求が課せられているが、添加剤の使用は、リチウムイオン電池の総合的性能を向上させる効果的な方法の一つである。添加剤は、種類が多いが、電解液中での添加剤の役割に応じて、成膜添加剤、過充電保護添加剤、導電添加剤、難燃添加剤、電解液安定剤などに分けることができる。どの添加剤でも、電解液に占める比率が非常に小さいが、機能が顕著であることにより広く研究開発されている。
【0004】
近年、正極に対し、既知のものとしてLiCoO、LiMn、LiNiO、LiFePOなどがあるが、これらを使用したリチウムイオン電池が充電状態で高温になった時に、正極材料と非水系電解液の界面で非水系電解液中の非水系溶媒が部分的に酸化分解し、これにより発生した分解物、ガスは、電池の本来の電気化学反応を妨害し、電池のサイクル特性などの性能を低下させる。
【0005】
特許文献WO2010/021236は、分子にイソシアネート基が含有される化合物を使用して電池の長期安定性を改善することを試みたが、イソシアネート化合物の種類、それと組み合わせられた添加剤の種類、又はそれらの配合量により、十分な耐久性能は取得できず、その電池特性は依然として満足できない。
【0006】
特許文献JP2010225522、JP2006164759及びCN10153329は、イソシアネート化合物を非水電解液に添加することにより、電池のサイクル特性を向上させ、電池安定性を改善することができることを開示した。しかしながら、これらの特許に記載の材料又は電解液の配合組成は、電池の高温安定性及び他のスルホナート系添加剤と配合して使用する時に変色しやすく、酸度値が上昇しやすいという問題を解決することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来技術に存在する不足に対し、イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤及びその使用を提供し、前記電解液添加剤は、リチウムイオン電池に用いられた後、高温サイクル及び高温保存時の電池の容量低下を効果的に抑制し、電解液の分解によるガス発生を抑制し、電池の耐用年数を大幅に延長する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
構造式が式Iに示すとおりである、イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤を開示する。
【0009】
【0010】
式中、R、R、Rは同じであるか、又は異なっており、前記R、R、Rは、それぞれ水素、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基、トリフルオロメチル基、リフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、シアノエチル基、フェニル基、フルオロフェニル基、シアノ基含有フルオロフェニル基、アルコキシ基含有フェニル基、アルキル基含有フェニル基から独立して選択された一種である。
【0011】
さらに、前記電解液添加剤は、下記構造式のうちのいずれか一種又は二種以上の混合物である。
【0012】
【0013】
本発明は、前記イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の製造方法をさらに開示し、前記製造方法は、
不活性ガスの保護下で、原料1と原料2を溶媒に均一に分散させ、反応温度を10℃~120℃に制御し、1~48時間反応させ、イミダゾール構造基を含有するイソシアネート系添加剤反応液を得るステップを含み、
前記溶媒は、エーテル、THF、シクロペンチルメチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチルから選択された一種又は複数種の混合物であるか、又は無溶媒であり、
前記溶媒の使用量については、原料1の質量使用量と溶媒の質量使用量の比率は1.0:1.0~10.0であり、
前記原料1の使用量と原料2の使用量のモル比は、原料1:原料2=1.0:1.0~10.0であり、
式中、R、R、Rは同じであるか、又は異なっており、前記R、R、Rは、それぞれ水素、メチル基、エチル基、プロピル基、tert-ブチル基、トリフルオロメチル基、リフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、ペルフルオロプロピル基、シアノエチル基、フェニル基、フルオロフェニル基、シアノ基含有フルオロフェニル基、アルコキシ基含有フェニル基、アルキル基含有フェニル基から独立して選択された一種であり、
式中、Mは、Li、Na、K、Caから選択された一種である。
【0014】
前記イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系添加剤及びその製造方法において、原料が安価で入手しやすく、反応条件が温和であり、操作が簡単かつ安全であり、環境にやさしく、効果が高い。
【0015】
本発明は、前記イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の使用をさらに開示し、前記イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤は、負極、正極、負極と正極との間に設置されたセパレータ及び電解液を含むリチウムイオン電池に使用される。前記負極は、炭素系活物質、ケイ素系活物質、金属系活物質又はリチウム含有窒化物からなる群から選択された単一物、又はそのうちの二種以上の混合物である。
【0016】
本発明に記載のイミダゾール構造基を含有するイソシアネート系電解液添加剤を使用してリチウムイオン電池用非水電解液を調製し、リチウムイオン電池に使用することにより、高温保存特性を効果的に向上させ、高温保存時のガス発生を効果的に抑制することができる。
【0017】
さらに、前記電解液は、溶媒、電解質リチウム塩及び前記イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤を含む。
【0018】
さらに、電解液の総質量で、前記イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤の質量含有量は0.01~5%であり、好ましくは0.1~2%である。
【0019】
さらに、前記電解質リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiBF、LiBOB、LiODFB、LiTDI、LiTFSI及びLiFSIから選択された一種以上であり、好ましくはLiPFであり、電解液の総質量で、前記電解質リチウム塩の含有量は10~20wt%である。
【0020】
さらに、前記溶媒は、エステル系溶媒とアミド系溶媒からなる群から選択された一種、又は二種以上の混合物を含み、前記エステル系溶媒は、環状炭酸エステル化合物、線状炭酸エステル化合物、線状エステル化合物及び環状エステル化合物からなる群から選択された少なくとも一種の化合物である。
【0021】
さらに、前記溶媒は、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ブチレン、炭酸フルオロエチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸エチルメチル、ジメチルカーボネート、炭酸メチルプロピル、炭酸エチルプロピル、炭酸メチルプロパルギル、1,4-ブタノリド、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル又は酪酸エチルから選択された一種又は複数種の組み合わせである。
【発明の効果】
【0022】
(1)本発明は、イミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤を提供するとともに、このような化合物の合成方法を提供し、この合成方法において、原料が安価で入手しやすく、工程の反応条件が温和であり、操作が簡単かつ安全であり、環境にやさしく、効果が高い。
【0023】
(2)本発明の提供するイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤において、イソシアネート基は、強い求電子性を有し、電解液系中の水分、及び正負極に含まれる活性水素と作用することにより、活性水素によるLiPFの分解を減少させることができる。
【0024】
(3)本発明の提供するイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤において、含有されるイミダゾール構造は、孤立電子対を有する窒素原子を含有し、電解液に弱アルカリ性を呈するため、(特に電解液の酸度値及び色度上昇につながりやすいエチレンサルフェート(DTD)又はメチレンメタンジスルホナート(MMDS)を含有する電解液系に)LiPFの分解によるHFを除去し、さらに電解液の酸度上昇を効果的に抑制することができるとともに、PFと電解液中の微量不純物との反応による色度上昇を抑制することができる。
【0025】
(4)本発明の提供するイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤において、スルホニル基は、良好な成膜性能を有し、電解液に添加された後、電極表面で反応して膜を形成することができ、SEI膜にS元素を導入し、イオン伝導度を増加させることができるため、リチウムイオン電池のサイクル性能を効果的に向上させることができる。
【0026】
(5)本発明の提供するイミダゾール構造基に基づくイソシアネート系電解液添加剤は、スルホニル基、含窒素複素環イミダゾール及びイソシアネート構造基を有機的に結合することで、黒鉛負極と高い互換性を持ち、同時にイソシアネート基による水除去、イミダゾール基によるHF除去、及びスルホニル基の良好な成膜性能により、LiPFから分解したフッ化水素によるSEIの分解及び破砕を回避し、高温サイクル及び高温保存性能を向上させ、電解液の分解によるガス発生を効果的に抑制する。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の上記目的、特徴及び利点をより明らかかつわかりやすくするために、以下では、本発明の具体的な実施形態を詳細に説明する。以下の説明では、本発明を十分に理解するために多くの具体的な詳細が述べられる。しかしながら、本発明は、ここで説明される方式とは異なる多くの他の方式で実施されることが可能であり、当業者であれば、本発明の主旨から逸脱しない限り、類似している改善を行うことができ、そのため、本発明は、以下に開示される具体的な実施例に限定されるものではない。
【0028】
特に定義されていない限り、本文書で使用される全ての技術及び科学用語は、当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本文書において、本発明の明細書で使用される用語は、具体的な実施形態を説明するためのものだけであり、本発明を限定するためのものではない。
【0029】
本実施例は、化合物ZN01~ZN27のうちの一部の化合物の製造方法を提供する。
【0030】
合成実施形態1 化合物ZN-01の製造
【0031】
33.6g(0.15mol)のKTDI、42.4g(0.30mol)のスルホニルクロリドイソシアナート及び150gの無水アセトニトリルを500mLの三口フラスコに加え、75~80℃まで徐々に昇温し、26.0hrs撹拌反応させた。降温し、濾過し、留分がなくなるまで濾液を減圧下で溶媒除去して黄褐色の粘稠物を得て、ヘプタン+ジクロロメタンを入れたカラムクロマトグラフィーで精製して24.0gの白色固体ZN-01を得て、収率が55.00%である。
【0032】
GC-MS:291,13C NMR(100MHz):溶媒である重水素化クロロホルム,δ(ppm):115.7ppm(s,-CN),119.8(q,-CF),121.6(q,C=C),122.4(s,N=C=O)147.8(q,C-CF3)。
【0033】
合成実施形態2 化合物ZN-12の製造
【0034】
32.2g(0.10mol)のペンタフルオロフェニルイミダゾールカリウム塩、31.1g(0.22mol)のスルホニルクロリドイソシアナート及び150gの無水アセトニトリルを500mLの三口フラスコに加え、75~80℃まで徐々に昇温し、36.0hrs撹拌反応させた。降温し、濾過し、留分がなくなるまで濾液を減圧下で溶媒除去して黄褐色の粘稠物を得て、ヘプタン+ジクロロメタンを入れたカラムクロマトグラフィーで精製して16.4gの白色固体ZN-12を得て、収率が42.10%である。
【0035】
GC-MS:389,13C NMR(100MHz):溶媒である重水素化クロロホルム,δ(ppm):113.4(m,CC),116.1ppm(s,-CN),122.3(q,C=C),122.6(s,N=C=O),137.8(dm),140.4(dm),144.2(dm),146.7(q,C-PhF5)。
【0036】
合成実施形態3 化合物ZN-19の製造
【0037】
13.6g(0.2mol)のイミダゾール、10g(0.25mol、60%含有量)の水素化ナトリウム及び100gの無水シクロペンチルメチルエーテルを500mLの三口フラスコに加え、1.0hrs撹拌し、46.7g(0.33mol)のスルホニルクロリドイソシアナートを徐々に加え、100~105℃まで徐々に昇温し、22.0hrs撹拌反応させ、降温し、濾過し、留分がなくなるまで濾液を減圧下で溶媒除去し、さらに減圧蒸留して16.2gの无色粘稠油状物ZN-19を得て、収率が46.82%である。
【0038】
GC-MS:173,H NMR(400MHz):溶媒である重水素化クロロホルム,δ(ppm):7.155~7.173ppm(d,1H),7.313~7.331ppm(d,1H),7.912ppm(s,1H);13C NMR(100MHz):溶媒である重水素化クロロホルム,δ(ppm):121.8(s,N=C=O),125.4,134.5(s,NCH=CHN),136.8ppm(s,NCHN)。
【0039】
電池実施例
電池実施例1~9と比較例1~6でリストアップしたリチウムイオン電池用非水電解液の配合組成は、表1に示すとおりである。
【0040】
表1 電池実施例1~9と比較例1~6におけるリチウムイオン電池用非水電解液の配合組成

【0041】
電解液の安定性試験については、上記実施例1~9と比較例1~6で製造したリチウムイオン電池用電解液を密封されたアルミニウムボトルにそれぞれ入れ、アルミニウムボトルをアルミニウムプラスチックフィルムで真空包装し、電解液サンプルを同時に設定温度が45℃の恒温ボックスに保存し、保存前及び60日間保存した後にそれぞれグローブボックスでサンプルを採取して電解液の酸度及び色度値を測定し、酸度は、電位差滴定装置で試験し、酸度値は、HFに換算したものであり、単位がppmであり、色度は、白金コバルト比色法を使用し、色度単位がHazenである。一部の試験結果は、表2に示すとおりである。
【0042】
表2 電解液の酸度値及び色度への添加剤の影響
【0043】
表2から分かるように、実施例1~6の電解液は、45℃の高温下で60日間保存した後、電解液の酸度及び色度がいずれも比較例よりも低く、比較例5の電解液系にプロパンジスルホン酸無水物及び1,8-オクチルジイソシアナートを加えることにより、酸度値及び色度の変化が抑制されるが、効果は、本発明特許の提供する材料よりもはるかに低い。
【0044】
エチレンサルフェート又はメチレンメタンジスルホナートを含有する電解液系に対し、本発明の提供する電解液添加剤の変色及び酸度値上昇抑制効果がより顕著であることで、本発明の提供する新規な添加剤は、電解液の酸度及び色度上昇を効果的に抑制し、電解液の高温条件下での安定性を向上させることができる。
【0045】
電池実施例1~9と比較例1~6におけるリチウムイオン電池用非水電解液を使用してリチウムイオン型ボタン電池を製造する方法は、以下のとおりである。
【0046】
(1)正極板の製造
LiCoO正極材料を例とすると、正極LiNi0.8Co0.1Mn0.1粉末、カーボンブラック(粒度1000nm)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN,N-メチルピロリドン(NMP)を混合して均一なスラリーを形成し、スラリーをアルミニウム箔(15μm)集電体に均一に塗布した後、乾燥させ、圧延し、LiNi0.8Co0.1Mn0.1正極材料を得た。120℃で12時間乾燥させ、乾燥後の極板において、LiNi0.8Co0.1Mn0.1は、塗布物全体の94%を占め、接着剤は、4%を占め、カーボンブラックは、2%を占める。その後、得られた極板を直径8mmの円形に裁断してそれを正極とした。他の正極材料LiFePOについては、同様の方法で製造した。
【0047】
(2)負極板の製造
人造黒鉛負極材料を例とすると、人造黒鉛、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)及びN-メチルピロリドン(NMP)を混合して均一なスラリーを形成し、スラリーを銅箔(15μm)集電体に均一に塗布した後、乾燥させ、圧延し、炭素負極材料を得た。120℃で12時間乾燥させ、乾燥後の極板において、黒鉛は、塗布物全体の96.4%を占め、接着剤は、3.6%を占め、その後、得られた極板を直径8mmの円形に裁断してそれを負極とした。
【0048】
(3)電解液の製造
含水量<1ppmのアルゴン雰囲気グローブボックスにおいて、リチウム塩を溶媒に溶解させた後、新規なホスフィン含有イソシアネート系を加え、均一に混合した後に電解液を得た。
【0049】
(4)リチウムイオン電池の製造
上記ステップ(1)及び(2)に記載の材料を作動電極とし、Celgard 2400膜(天津)をセパレータとし、CR2430型ボタン電池を組み立てた。組立順序は、負極から正極へ順に負極ケース、ばね板、ガスケット、負極板、電解液、セパレータ、正極板、正極ケースであり、その後、封口機で密封した。これらの操作は、いずれも純アルゴン雰囲気グローブボックス内で完了したが、6 h静置した後に取り出して電気化学反応性能試験を行った。
【0050】
リチウムイオン電池性能試験
試験1、高温サイクル性能試験
製造した電池に対して下記試験をそれぞれ行った。
【0051】
(1)45℃で、電池を0.1C倍率で4.3Vまで定電流充電してから、対応する倍率で2.7Vまで定電流放電し、この時は一回目のサイクルであり、
(2)一回目のサイクルが完了した後、1.0C倍率で4.3Vまで定電流充電してから、対応する倍率で2.7Vまで定電流放電し、このサイクル条件に応じて100回、500回サイクル試験をそれぞれ行い、100回、500回サイクル後の電池の容量維持率をそれぞれ算出し、サイクル後の容量維持率は、下記式で算出される。得られた各電池の関連試験データは、表2に示すとおりであり、そのうち、実施例1~9の電池番号は、それぞれ電池1~電池9であり、前記比較例1~6の電池番号は、それぞれ電池1#~電池6#である。
サイクル後の容量維持率=(対応するサイクル回数後の放電容量/一回目のサイクルの放電容量)×100%
【0052】
表3 45℃での電池のサイクル性能試験結果
【0053】
表3の異なる電池についてのデータから分かるように、異なる正極材料系において、本発明の提供する添加剤を使用して製造したリチウム電池は、45℃で、そのサイクル安定性、容量維持率が添加剤を添加していない電池1#及び2#よりもはるかに高い。
【0054】
エチレンサルフェート又はメチレンメタンジスルホナートを含有する電池4#及び5#に対し、このような材料の熱安定性が低いため、高温サイクル後に電池性能が劣化する。
【0055】
電池5#及び6#に対し、スルホン酸無水物+イソシアネート系材料を安定剤として加えることにより、100回サイクル後にその容量維持率が改善されるが、500回サイクル後にその容量維持率が本発明特許の提供する添加剤を含有する電池よりもはるかに低いことがデータに示されており、これで分かるように、本発明特許の提供する新規な添加剤は、リチウムイオン電池に使用された後、電池の高温サイクル性能を明らかに改善することができ、熱安定性の低いエチレンサルフェート又はメチレンメタンジスルホナートを含有する電解液系にも、本発明の提供する電解液添加剤は、良好な效果を示すことができる。
【0056】
試験2、実施例1~9と比較例1~6で製造した電池に対して100回サイクルを行った後、サイクル後の熱安定性試験を行った。
【0057】
25℃条件下で、0.5Cの電流で4.3Vまで定電流充電してから、電流が0.025Cになるまで4.3Vで定電圧充電し、4.3Vの満充電状態にした後、電池を50℃の高温炉に15日間保存し、同時に電池の高温炉内での電圧降下及び試験後の電池の体積変化を試験し、試験データは、表4に示すとおりである。
【0058】
そのうち、リチウムイオン電池の高温保存後の電圧降下変化率(%)=(リチウムイオン電池の高温保存前の電圧-リチウムイオン電池の高温保存後の電圧)/リチウムイオン電池の高温保存前の電圧×100%、
リチウムイオン電池の高温保存後の体積変化率(%)=(リチウムイオン電池の高温保存後の体積-リチウムイオン電池の高温保存前の体積)/リチウムイオン電池の高温保存前の体積×100%。
【0059】
表4
【0060】
表4から分かるように、100回サイクル後に熱安定性試験を行った電池1#~6#の示した状態に比べて、100回サイクル後に高温で熱安定性試験を行った本発明特許の提供する新規な添加剤を含有する電池1~9の電圧降下変化率は、9.18~12.42%だけであり、電池1#~6#の電圧降下変化率よりもはるかに低い。
【0061】
同時に、体積変化率には同様に大きな差があり、電池1#~6#の体積膨張は顕著であり、電池5~6#にスルホン酸無水物+イソシアネート系材料を安定剤として加えることにより、体積変化が改善されるが、その効果は、本発明特許の提供する添加剤を含有する電池よりもはるかに低い。これで分かるように、本発明の製造する新規なイミダゾールホスフィン含有イソシアネート系電解液添加剤は、リチウムイオン電池に使用された後、複数回サイクル後のリチウムイオン電池の熱安定性を大幅に向上させ、電解液の分解によるガス発生を抑制することができ、良好な使用見通しを有する。
【0062】
以上に記載の実施例の各技術的特徴は、任意に組み合わせることができ、説明の簡素化のために、上記実施例における各技術的特徴の可能な組み合わせの全てを説明していないが、これらの技術的特徴の組み合わせに矛盾するものがなければ、本明細書の記載範囲と見なされるべきである。
【0063】
以上に記載の実施例は、本発明のいくつかの実施形態を具体的かつ詳細に説明しているが、これは発明特許の範囲を限定するものと理解されるべきではない。なお、当業者にとって、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な変形や改善を行うことができ、これらも本発明の保護範囲に属する。したがって、本発明特許の保護範囲は付記の特許請求の範囲に準拠する。