(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】飛行体、情報処理方法、プログラム及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
H04W 16/26 20090101AFI20240924BHJP
H04W 4/44 20180101ALI20240924BHJP
H04W 48/18 20090101ALI20240924BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20240924BHJP
H04W 84/00 20090101ALI20240924BHJP
B64U 80/86 20230101ALI20240924BHJP
B64U 80/30 20230101ALI20240924BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W4/44
H04W48/18 110
H04W84/06
H04W84/00 110
B64U80/86
B64U80/30
(21)【出願番号】P 2024017040
(22)【出願日】2024-02-07
【審査請求日】2024-04-02
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構、Beyond 5G研究開発促進事業「スマートモビリティプラットフォームの実現に向けたドローン・自動運転車の協調制御プラットフォームの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大河 亮介
(72)【発明者】
【氏名】塚本 航平
(72)【発明者】
【氏名】足立 崇
(72)【発明者】
【氏名】志田 裕紀
【審査官】小林 正明
(56)【参考文献】
【文献】特許第7395785(JP,B1)
【文献】特開2021-44774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
B64U 80/86
B64U 80/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信端末を有する車両に積載された飛行体であって、
通信衛星と前記通信端末との間における通信を中継する中継部であって、中継を実行する中継状態と中継を停止する停止状態とを切り替え可能な中継部と、
前記通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸する飛行制御部と、
前記品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、前記中継部を前記停止状態から前記中継状態に切り替える切替部と、
を有する飛行体。
【請求項2】
前記飛行体は、所定の間隔で、前記通信端末の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部をさらに有し、
前記飛行制御部は、前記位置情報取得部が前記所定の間隔で取得した前記位置情報によって示される前記通信端末の位置の変化に応じて飛行する、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記飛行体は、前記品質値が前記所定の離陸判定用閾値を下回ったことを契機として情報処理装置が送信した離陸要求と、前記品質値が前記所定の中継判定用閾値を下回ったことを契機として前記情報処理装置が送信した中継要求とを取得する要求取得部をさらに有し、
前記飛行制御部は、前記要求取得部が前記離陸要求を取得した場合に、離陸し、
前記切替部は、前記要求取得部が前記中継要求を取得した場合に、前記中継部を前記停止状態から前記中継状態に切り替える、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項4】
前記飛行制御部は、離陸した後において、前記品質値が所定の着陸判定用閾値を上回った場合に、前記車両に着陸し、
前記切替部は、前記中継部を前記中継状態に切り替えた後において、前記品質値が所定の停止判定用閾値を上回った場合に、前記中継部を前記中継状態から前記停止状態に切り替える、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項5】
前記飛行体は、前記通信端末の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部をさらに有し、
前記飛行制御部は、地図情報を参照し、前記品質値が前記所定の離陸判定用閾値を下回った時点における前記通信端末の位置がトンネル内である場合、離陸を禁止し、
前記切替部は、前記地図情報を参照し、前記品質値が前記所定の中継判定用閾値を下回った時点における前記通信端末の位置がトンネル内である場合、前記中継部の前記中継状態への切り替えを禁止する、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項6】
前記飛行制御部は、離陸を禁止した後において、前記地図情報を参照し、前記通信端末の位置がトンネル内ではない場合に、離陸し、
前記切替部は、前記中継部の前記中継状態への切り替えを禁止した後において、前記地図情報を参照し、前記通信端末の位置がトンネル内ではない場合に、前記中継部を前記停止状態から前記中継状態に切り替える、
請求項5に記載の飛行体。
【請求項7】
前記飛行体は、前記中継部との接続を許可する端末を示す許可端末情報を記憶する記憶部をさらに有し、
前記中継部は、前記中継状態に切り替えられた場合に、前記記憶部に記憶されている前記許可端末情報が示す前記通信端末と接続する、
請求項1に記載の飛行体。
【請求項8】
通信端末を有する車両に積載された飛行体であって、通信衛星と前記通信端末との間における通信を中継する中継部を有する前記飛行体を制御するコンピュータが実行する、
前記通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸するステップと、
前記品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、中継を停止する停止状態から中継を実行する中継状態に前記中継部を切り替えさせるステップと、
を有する情報処理方法。
【請求項9】
通信端末を有する車両に積載された飛行体であって、通信衛星と前記通信端末との間における通信を中継する中継部を有する前記飛行体を制御するコンピュータを、
前記通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸する飛行制御部、及び
前記品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、中継を停止する停止状態から中継を実行する中継状態に前記中継部を切り替えさせる切替部、
として機能させるためのプログラム。
【請求項10】
通信端末を有する車両に積載された飛行体であって、通信衛星と前記通信端末との間における通信を中継する中継部を有する前記飛行体を管理する情報処理装置であって、
前記通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値を取得する品質値取得部と、
前記品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、前記飛行体を離陸させる飛行管理部と、
前記品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、中継を停止する停止状態から中継を実行する中継状態に前記中継部を切り替えさせる切替管理部と、
を有する情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体、情報処理方法、プログラム及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衛星通信を通信端末に利用させる装置が知られている。特許文献1には、車両に搭載された衛星系の通信設備及び地上系の移動体通信設備のうちのいずれかを使用して通信端末に通信を行わせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
衛星通信においては、通信衛星と衛星系の通信設備との間に木や建物等の遮蔽物が存在すると品質が悪くなり得る。そのため、衛星系の通信設備及び地上系の移動体通信設備のいずれを使用しても通信端末に通信を提供することができない場合があった。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、通信端末に対して継続的に通信を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る飛行体は、通信端末を有する車両に積載された飛行体であって、通信衛星と前記通信端末との間における通信を中継する中継部であって、中継を実行する中継状態と中継を停止する停止状態とを切り替え可能な中継部と、前記通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸する飛行制御部と、前記品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、前記中継部を前記停止状態から前記中継状態に切り替える切替部と、を有する。
【0007】
前記飛行体は、所定の間隔で、前記通信端末の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部をさらに有してもよいし、前記飛行制御部は、前記位置情報取得部が前記所定の間隔で取得した前記位置情報によって示される前記通信端末の位置の変化に応じて飛行してもよい。
【0008】
前記飛行体は、前記品質値が前記所定の離陸判定用閾値を下回ったことを契機として情報処理装置が送信した離陸要求と、前記品質値が前記所定の中継判定用閾値を下回ったことを契機として前記情報処理装置が送信した中継要求とを取得する要求取得部をさらに有してもよいし、前記飛行制御部は、前記要求取得部が前記離陸要求を取得した場合に、離陸し、前記切替部は、前記要求取得部が前記中継要求を取得した場合に、前記中継部を前記停止状態から前記中継状態に切り替えてもよい。
【0009】
前記飛行制御部は、離陸した後において、前記品質値が所定の着陸判定用閾値を上回った場合に、前記車両に着陸してもよいし、前記切替部は、前記中継部を前記中継状態に切り替えた後において、前記品質値が所定の停止判定用閾値を上回った場合に、前記中継部を前記中継状態から前記停止状態に切り替えてもよい。
【0010】
前記飛行体は、前記通信端末の位置を示す位置情報を取得する位置情報取得部をさらに有してもよいし、前記飛行制御部は、地図情報を参照し、前記品質値が前記所定の離陸判定用閾値を下回った時点における前記通信端末の位置がトンネル内である場合、離陸を禁止してもよいし、前記切替部は、前記地図情報を参照し、前記品質値が前記所定の中継判定用閾値を下回った時点における前記通信端末の位置がトンネル内である場合、前記中継部の前記中継状態への切り替えを禁止してもよい。
【0011】
前記飛行制御部は、離陸を禁止した後において、前記地図情報を参照し、前記通信端末の位置がトンネル内ではない場合に、離陸してもよいし、前記切替部は、前記中継部の前記中継状態への切り替えを禁止した後において、前記地図情報を参照し、前記通信端末の位置がトンネル内ではない場合に、前記中継部を前記停止状態から前記中継状態に切り替えてもよい。
【0012】
前記飛行体は、前記中継部との接続を許可する端末を示す許可端末情報を記憶する記憶部をさらに有してもよいし、前記中継部は、前記中継状態に切り替えられた場合に、前記記憶部に記憶されている前記許可端末情報が示す前記通信端末と接続してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様に係る情報処理方法は、通信端末を有する車両に積載された飛行体であって、通信衛星と前記通信端末との間における通信を中継する中継部を有する前記飛行体を制御するコンピュータが実行する、前記通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸するステップと、前記品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、中継を停止する停止状態から中継を実行する中継状態に前記中継部を切り替えさせるステップと、を有する。
【0014】
本発明の第3の態様に係るプログラムは、通信端末を有する車両に積載された飛行体であって、通信衛星と前記通信端末との間における通信を中継する中継部を有する前記飛行体を制御するコンピュータを、前記通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸する飛行制御部、及び前記品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、中継を停止する停止状態から中継を実行する中継状態に前記中継部を切り替えさせる切替部、として機能させる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る情報処理装置は、通信端末を有する車両に積載された飛行体であって、通信衛星と前記通信端末との間における通信を中継する中継部を有する前記飛行体を管理する情報処理装置であって、前記通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値を取得する品質値取得部と、前記品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、前記飛行体を離陸させる飛行管理部と、前記品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、中継を停止する停止状態から中継を実行する中継状態に前記中継部を切り替えさせる切替管理部と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、通信端末に対して継続的に通信を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】情報処理システムの処理の概要を説明するための図である。
【
図4】飛行体が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[情報処理システムSの概要]
図1は、情報処理システムSの構成を示す図である。情報処理システムSは、情報処理サービスを提供するために用いられるシステムである。情報処理サービスは、衛星通信を提供するサービスである。情報処理サービスは、例えば、駅伝の中継等のように、継続して情報を配信するコンテンツの提供に用いられる。情報処理システムSは、基地局1と、通信衛星2と、通信端末3と、飛行体4とを有する。
【0019】
基地局1は、移動体通信ネットワークにおいて電波を送受信する装置である。通信衛星2は、地球の軌道上に存在する人工衛星である。通信衛星2は、衛星インターネットアクセスのサービスを提供する装置として用いられる。衛星インターネットアクセスのサービスは、例えば、当該サービスに加入した加入者に対して、衛星通信を提供するサービスである。
【0020】
通信端末3は、車両Vに備えられた端末であり、例えば、スマートフォン、タブレット端末、又はパーソナルコンピュタ等である。通信端末3は、予め車両Vに内蔵されている通信機器であってもよい。通信端末3は、例えば、不図示のカメラと電気的に接続されており、カメラが撮像した動画像を、基地局1及び通信衛星2のうちのいずれかを介して外部のサーバ(例えば、動画像を配信するサーバ等)に送信する。
【0021】
飛行体4は、無人で飛行する航空機である。飛行体4は、情報処理サービスにおいて通信衛星2と通信端末3との間における通信を中継する中継機能を有する。飛行体4は、車両Vに積載されている。
【0022】
飛行体4が長時間にわたって飛行しながら情報処理サービスを提供すると、飛行体4のバッテリーが無くなってしまうリスクが生じ得る。そこで、情報処理システムSは、通信端末3における移動体通信ネットワークの通信品質の高低に応じて、情報処理サービスを提供する。
【0023】
図2は、情報処理システムSの処理の概要を説明するための図である。エリアA(エリアA1、A2、A3)は、車両Vが走行するエリアを示す。情報処理システムSは、飛行体4を積載させた状態で車両Vに走行させ、通信端末3における移動体通信ネットワークの通信品質の高低に応じて、情報処理サービスを提供する。
【0024】
エリアA1は、通信端末3における移動体通信ネットワークの通信品質が高いエリアである。エリアA1における飛行体4は、車両Vに積載された状態、かつ、中継機能を停止した状態で待機する。エリアA1における通信端末3は、基地局1を介して、情報を外部のサーバに送信する。
【0025】
エリアA2は、通信端末3における移動体通信ネットワークの通信品質が低いエリアである。エリアA2における飛行体4は、車両Vから離陸し、中継機能を実行する。エリアA2における通信端末3は、飛行体4において実行された中継機能を利用し、飛行体4及び通信衛星2を介して、情報を外部のサーバに送信する。
【0026】
エリアA3は、通信端末3における移動体通信ネットワークの通信品質が高いエリアである。エリアA3における飛行体4は、車両Vに着陸し、中継機能を停止する。エリアA3における通信端末3は、通信品質が高い電波を発信する基地局1に接続し、接続した基地局1を介して、情報を外部のサーバに送信する。このようにすることで、情報処理システムSは、通信端末3に対して継続的に通信を提供することができる。
【0027】
上記において、通信端末3が基地局1に接続し、接続した基地局1を介して情報を送信する例を説明したが、これに限らない。例えば、飛行体4が有する中継機能は、基地局1と通信端末3との間における通信をさらに中継してもよい。この場合、飛行体4は、移動体通信ネットワークの通信品質が高い場合、基地局1と通信端末3との間における通信を中継し、移動体通信ネットワークの通信品質が低い場合、通信衛星2と通信端末3との間における通信を中継してもよい。
以下、飛行体4の構成について説明する。
【0028】
[飛行体4の構成]
図3は、飛行体4の機能構成を模式的に示す図である。飛行体4は、駆動部41と、通信部42と、記憶部43と、制御部44とを備える。
図3において、矢印は主なデータの流れを示しており、
図3に示していないデータの流れがあってもよい。
図3において、各機能ブロックはハードウェア(装置)単位の構成ではなく、機能単位の構成を示している。そのため、
図3に示す機能ブロックは単一の装置内に実装されてもよく、あるいは複数の装置内に分かれて実装されてもよい。機能ブロック間のデータの授受は、データバス、ネットワーク、可搬記憶媒体等、任意の手段を介して行われてもよい。
【0029】
駆動部41は、飛行体4が飛行するために駆動するプロペラ等の部品である。通信部42は、ネットワークに接続するための通信インターフェースであり、外部の装置とデータを送受信するための通信コントローラを有する。
【0030】
また、通信部42は、通信衛星2及び通信端末3それぞれと接続し、接続した通信衛星2及び通信端末3の間における通信を中継する中継部として機能する。通信部42は、中継を実行する中継状態と、中継を停止する停止状態とに切り替えが可能である。通信部42は、例えば、予め通信衛星2と接続した状態において、中継状態に切り替えられた場合、移動体通信ネットワークにおける基地局として通信端末3と接続し、通信衛星2及び通信端末3の間における通信を中継する。
【0031】
なお、通信部42は、中継状態であるか停止状態であるかに関わらず、予め通信端末3と接続し、中継状態に切り替えられた場合に、通信衛星2及び通信端末3の間における通信を中継してもよい。また、通信部42は、Wi-Fi(登録商標)ルータとしてさらに機能し、中継状態であるか停止状態であるかに関わらず、当該Wi-Fiルータに通信端末3をさらに接続させてもよい。
【0032】
ここで、通信部42が、移動体通信ネットワークにおける基地局として機能すると、飛行体4の周囲に存在する様々な端末と接続してしまう場合がある。そこで、通信部42は、接続する端末を、情報処理サービスを提供する特定の端末に限定してもよい。
【0033】
例えば、後述する記憶部43には、通信部42との接続を許可する端末を示す許可端末情報が記憶されている。許可端末情報は、例えば、通信部42との接続を許可する端末を識別するための識別情報(例えば、MAC(Media Access Control)アドレス、IMEI(International Mobile Equipment Identity)等)のリストである。この場合において、通信部42は、中継状態に切り替えられた場合に、記憶部43に記憶されている許可端末情報を参照し、当該許可端末情報が示す通信端末3と接続する。このようにすることで、飛行体4は、情報処理サービスを提供しない端末に対して通信衛星2との通信を中継してしまうことを防ぐことができる。
【0034】
記憶部43は、飛行体4を実現するコンピュータのBIOS(Basic Input Output System)等を格納するROM(Read Only Memory)や飛行体4の作業領域となるRAM(Random Access Memory)、OS(Operating System)やアプリケーションプログラム、当該アプリケーションプログラムの実行時に参照される種々の情報を格納するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の大容量記憶装置である。
【0035】
制御部44は、飛行体4のCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサであり、記憶部43に記憶されたプログラムを実行することによって、取得部441、飛行制御部442及び切替部443として機能する。
【0036】
取得部441は、所定の間隔(例えば、毎秒、毎分等)で、通信端末3に関する情報を通信端末3から取得する。通信端末3に関する情報は、例えば、通信端末3の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値、通信端末3の位置を示す位置情報等を含む。品質値は、例えば、移動体通信ネットワークの基地局が発する電波の受信強度を示す数値である。
【0037】
飛行体4は、通信端末3の移動体通信ネットワークの通信品質が低下した場合に、情報処理サービスの提供を開始する。具体的には、情報処理サービスを提供する処理として、飛行制御部442は、取得部441が取得した品質値に基づいて、駆動部41を制御する。具体的には、飛行制御部442は、取得部441が取得した品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、駆動部41を駆動させることにより離陸する。所定の離陸判定用閾値は、飛行体4を離陸させるか否かを判定するために定められた値である。
【0038】
また、情報処理サービスを提供する処理として、切替部443は、取得部441が取得した品質値に基づいて、中継状態と停止状態とに切り替え可能な通信部42を制御する。具体的には、切替部443は、取得部441が取得した品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、通信部42を停止状態から中継状態に切り替える。所定の中継判定用閾値は、通信部42を停止状態から中継状態に切り替えるか否かを判定するために定められた値である。
【0039】
所定の離陸判定用閾値と所定の中継判定用閾値とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。所定の離陸判定用閾値と所定の中継判定用閾値とが異なる値である場合、所定の離陸判定用閾値は、所定の中継判定用閾値よりも大きい値に設定されてもよい。このようにすることで、飛行体4は、離陸した後に通信部42を中継状態に切り替えることができ、スムーズに通信衛星2と通信端末3との間における通信を中継することができる。
【0040】
飛行制御部442は、飛行体4が離陸した場合、車両Vに追従して飛行体4を飛行させてもよい。具体的には、飛行制御部442は、取得部441が所定の間隔で取得した位置情報によって示される通信端末3の位置の変化に応じて飛行する。飛行制御部442は、例えば、取得部441が位置情報を取得するごとに、少なくとも通信端末3が存在する高度よりも高い一定の高度を保ちながら当該位置情報によって示される通信端末3の位置と飛行体4の位置とが重なるように飛行する。また、飛行制御部442は、例えば、取得部441が位置情報を取得するごとに、当該位置情報によって示される通信端末3の位置と一定の距離を保ちながら飛行する。このようにすることで、飛行体4は、通信端末3に対して継続的に通信を提供することができる。
【0041】
飛行体4は、通信端末3の移動体通信ネットワークの通信品質が高くなった場合に、情報処理サービスの提供を停止してもよい。具体的には、情報処理サービスの提供を停止する処理として、飛行制御部442は、離陸した後において、取得部441が取得した品質値が所定の着陸判定用閾値を上回った場合に、車両Vに着陸する。所定の着陸判定用閾値は、飛行体4を着陸させるか否かを判定するために定められた値である。所定の着陸判定用閾値は、所定の離陸判定用閾値と同じであってもよいが、この場合、移動体通信ネットワークの通信品質が不安定な場所で短期間に品質値が閾値を上回ったり上回らなかったりすることが繰り返されてしまうことが考えられるため、所定の離陸判定用閾値よりも数値が大きい方が望ましい。
【0042】
また、情報処理サービスの提供を停止する処理として、切替部443は、通信部42を中継状態に切り替えた後において、取得部441が取得した品質値が所定の停止判定用閾値を上回った場合に、通信部42を中継状態から停止状態に切り替える。所定の停止判定用閾値は、通信部42を中継状態から停止状態に切り替えるか否かを判定するために定められた値である。
【0043】
所定の着陸判定用閾値と所定の停止判定用閾値とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。所定の着陸判定用閾値と所定の停止判定用閾値とが異なる値である場合、所定の停止判定用閾値は、所定の着陸判定用閾値よりも小さい値に設定されてもよい。このようにすることで、飛行体4は、通信部42を停止状態に切り替えた後に着陸することができ、スムーズに通信衛星2と通信端末3との間における通信を停止することができる。また、所定の停止判定用閾値は、所定の中継判定用閾値と同じであってもよいが、この場合、移動体通信ネットワークの通信品質が不安定な場所で短期間に品質値が閾値を上回ったり上回らなかったりすることが繰り返されてしまうことが考えられるため、所定の中継判定用閾値よりも数値が大きい方が望ましい。通信端末3は、飛行体4の通信部42が中継状態から停止状態に切り替えられると、接続先を飛行体4の通信部42から基地局1に切り替える。このようにすることで、飛行体4は、通信端末3に対して継続的に通信させつつ、バッテリーの消費を防ぐことができる。
【0044】
ここで、車両Vがトンネル内を走行すると、衛星通信の通信品質が低下することが考えられる。そこで、飛行体4は、車両Vがトンネル内を走行している間において、情報処理サービスの提供を禁止してもよい。
【0045】
具体的には、情報処理サービスの提供を禁止する処理として、飛行制御部442は、地図情報を参照し、取得部441が取得した品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った時点における通信端末3の位置がトンネル内である場合、離陸を禁止する。飛行制御部442は、取得部441が取得した品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った時点における通信端末3の位置からトンネルの入り口までの距離が所定の距離閾値(例えば、100メートル等)以内である場合に、離陸を禁止してもよい。
【0046】
また、情報処理サービスの提供を禁止する処理として、切替部443は、地図情報を参照し、取得部441が取得した品質値が所定の中継判定用閾値を下回った時点における通信端末3の位置がトンネル内である場合、通信部42の中継状態への切り替えを禁止する。切替部443は、取得部441が取得した品質値が所定の中継判定用閾値を下回った時点における通信端末3の位置からトンネルの入り口までの距離が所定の距離閾値以内である場合に、通信部42の中継状態への切り替えを禁止してもよい。このようにすることで、飛行体4は、衛星通信の通信品質が悪い状態で飛行することによってバッテリーを消費してしまうことを防ぐことができる。
【0047】
飛行体4は、情報処理サービスの提供を禁止した後において、車両Vがトンネルから出た場合に、情報処理サービスを提供してもよい。具体的には、情報処理サービスを提供する処理として、飛行制御部442は、離陸を禁止した後において、地図情報を参照し、通信端末3の位置がトンネル内ではない場合に、離陸する。具体的には、飛行制御部442は、離陸を禁止した後において、通信端末3の位置がトンネル内ではない場合であって、取得部441が取得した品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸する。
【0048】
また、情報処理サービスを提供する処理として、切替部443は、通信部42の中継状態への切り替えを禁止した後において、地図情報を参照し、通信端末3の位置がトンネル内ではない場合に、通信部42を停止状態から中継状態に切り替える。具体的には、飛行制御部442は、離陸を禁止した後において、通信端末3の位置がトンネル内ではない場合であって、取得部441が取得した品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、通信部42を停止状態から中継状態に切り替える。このようにすることで、飛行体4は、衛星通信の通信を早期に再開させることができる。
【0049】
なお、飛行体4は、通信端末3の位置がトンネル内である場合であっても、情報処理サービスを提供してもよい。例えば、飛行制御部442は、地図情報を参照し、取得部441が所定の間隔で取得した通信端末3の位置情報によって示される通信端末3の進行方向にトンネルが存在する場合、離陸して当該トンネルの入り口で待機する。そして、切替部443は、トンネルの入り口で待機した状態で、通信部42を停止状態から中継状態に切り替える。そして、通信端末3は、トンネルの入り口で待機する飛行体4を介して、通信衛星2と通信する。
【0050】
トンネルが長い場合、複数の飛行体4が、トンネル内において衛星通信をリレーすることにより、通信端末3に情報処理サービスを提供してもよい。例えば、車両Vに複数の飛行体4が積載されており、複数の飛行体4のうちの一方の飛行体4は、トンネル内に入らずに当該トンネルの入り口で待機し、他方の飛行体4は、通信端末3に追従して飛行する。そして、通信端末3は、複数の飛行体4を介して、トンネル内において、通信衛星2と通信する。このようにすることで、飛行体4は、通信端末3がトンネル内に存在する場合であっても、通信端末3に対して継続的に通信させることができる。
【0051】
[飛行体4の処理]
続いて、飛行体4が実行する処理の流れについて説明する。
図4は、飛行体4が実行する処理の流れを示すフローチャートである。本フローチャートは、取得部441が、通信端末3の第1品質値を取得したことを契機として開始する(S1)。第1品質値は、飛行体4が離陸する前、及び通信部42が停止状態から中継状態に切り替えられる前のうちの少なくともいずれかにおいて取得された品質値である。
【0052】
飛行制御部442は、取得部441が取得した第1品質値が所定の離陸判定用閾値を下回ったか否かを判定する(S2)。飛行制御部442は、取得部441が取得した第1品質値が所定の離陸判定用閾値を下回っていないと判定した場合(S2においてNOの場合)、処理をS1に戻す。一方、飛行制御部442は、取得部441が取得した第1品質値が所定の離陸判定用閾値を下回ったと判定した場合(S2においてYESの場合)、駆動部41を駆動させることにより離陸する(S3)。
【0053】
また、取得部441が通信端末3の第1品質値を取得すると、切替部443は、当該第1品質値が所定の中継判定用閾値を下回ったか否かを判定する(S4)。切替部443は、取得部441が通信端末3の第1品質値が所定の中継判定用閾値を下回っていないと判定した場合(S4においてNOの場合)、処理をS1に戻す。一方、切替部443は、取得部441が通信端末3の第1品質値が所定の中継判定用閾値を下回ったと判定した場合(S4においてYESの場合)、通信部42を停止状態から中継状態に切り替える(S5)。
【0054】
その後、取得部441は、通信端末3の第2品質値を取得する(S6)。第2品質値は、第1品質値の後に取得された品質値であって、離陸した飛行体4が着陸する前、及び中継状態に切り替えられた通信部42が中継状態から停止状態に切り替えられる前のうちの少なくともいずれかにおいて取得された品質値である。
【0055】
飛行制御部442は、取得部441が取得した第2品質値が所定の着陸判定用閾値を上回ったか否かを判定する(S7)。飛行制御部442は、取得部441が取得した第2品質値が所定の着陸判定用閾値を上回っていないと判定した場合(S7においてNOの場合)、処理をS6に戻す。一方、飛行制御部442は、取得部441が取得した第2品質値が所定の着陸判定用閾値を上回ったと判定した場合(S7においてYESの場合)、着陸する(S8)。
【0056】
また、取得部441が通信端末3の第2品質値を取得すると、切替部443は、当該第2品質値が所定の停止判定用閾値を上回ったか否かを判定する(S9)。切替部443は、取得部441が通信端末3の第2品質値が所定の停止判定用閾値を上回っていないと判定した場合(S9においてNOの場合)、処理をS6に戻す。一方、切替部443は、取得部441が通信端末3の第2品質値が所定の停止判定用閾値を上回ったと判定した場合(S9においてYESの場合)、通信部42を中継状態から停止状態に切り替える(S10)。
【0057】
<変形例>
上記において、飛行体4が離陸及び通信部42の切り替え判断を行う例を説明したが、これに限らない。例えば、飛行体4を管理する外部のサーバである情報処理装置が、飛行体4を制御してもよい。情報処理装置は、取得部と、飛行管理部と、切替管理部とを有する。
【0058】
この場合において、情報処理装置の取得部が、飛行体4を介して、通信端末3の品質値を取得すると、飛行管理部は、当該品質値に基づいて、飛行体4の離陸及び通信部42の中継状態への切り替え判断を行う。具体的には、飛行管理部は、取得された品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、飛行体4を離陸させる。
【0059】
例えば、飛行管理部は、通信端末3の品質値が所定の離陸判定用閾値を下回ったことを契機として、飛行体4を離陸させるための要求である離陸要求を飛行体4に送信する。飛行体4において、取得部441が情報処理装置から離陸要求を取得した場合に、飛行制御部442は、離陸する。
【0060】
また、切替管理部は、取得された品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、飛行体4の通信部42を停止状態から中継状態に切り替えさせる。例えば、切替管理部は、通信端末3の品質値が所定の中継判定用閾値を下回ったことを契機として、飛行体4の通信部42を停止状態から中継状態に切り替えさせるための要求である中継要求を飛行体4に送信する。飛行体4において、取得部441が情報処理装置から中継要求を取得した場合に、切替部443は、通信部42を停止状態から中継状態に切り替える。
【0061】
また、飛行体4が離陸し、かつ、通信部42が停止状態から中継状態に切り替えられた後において、飛行管理部は、取得部が取得した品質値に基づいて、飛行体4の着陸及び通信部42の停止状態への切り替え判断を行う。具体的には、飛行管理部は、取得された品質値が所定の着陸判定用閾値を上回った場合に、飛行体4を着陸させる。
【0062】
例えば、飛行管理部は、通信端末3の品質値が所定の着陸判定用閾値を上回ったことを契機として、飛行体4を着陸させるための要求である着陸要求を飛行体4に送信する。飛行体4において、取得部441が情報処理装置から着陸要求を取得した場合に、飛行制御部442は、着陸する。
【0063】
また、切替管理部は、取得された品質値が所定の停止判定用閾値を上回った場合に、飛行体4の通信部42を中継状態から停止状態に切り替えさせる。例えば、切替管理部は、通信端末3の品質値が所定の停止判定用閾値を上回ったことを契機として、飛行体4の通信部42を中継状態から停止状態に切り替えさせるための要求である停止要求を飛行体4に送信する。飛行体4において、取得部441が情報処理装置から停止要求を取得した場合に、切替部443は、通信部42を中継状態から停止状態に切り替える。
【0064】
[本実施の形態における効果]
以上説明したとおり、飛行体4は、通信端末3の品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸し、通信端末3の品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、通信部42を停止状態から中継状態に切り替える。このようにすることで、飛行体4は、通信端末3に対して継続的に通信を提供することができる。
【0065】
また、飛行体4は、通信端末3の品質値が所定の着陸判定用閾値を上回った場合に、着陸し、通信端末3の品質値が所定の停止判定用閾値を上回った場合に、通信部42を中継状態から停止状態に切り替える。このようにすることで、飛行体4は、通信端末3に対して継続的に通信させつつ、バッテリーの消費を防ぐことができる。
【0066】
なお、本発明により、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」に貢献することが可能となる。
【0067】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0068】
1 基地局
2 通信衛星
3 通信端末
4 飛行体
41 駆動部
42 通信部
43 記憶部
44 制御部
441 取得部
442 飛行制御部
443 切替部
S 情報処理システム
【要約】
【課題】通信端末に対して継続的に通信を提供する。
【解決手段】飛行体4は、通信端末を有する車両に積載された飛行体4であって、通信衛星と通信端末との間における通信を中継する通信部42であって、中継を実行する中継状態と中継を停止する停止状態とを切り替え可能な通信部42と、通信端末の移動体通信ネットワークの通信品質を示す品質値が所定の離陸判定用閾値を下回った場合に、離陸する飛行制御部442と、品質値が所定の中継判定用閾値を下回った場合に、通信部を停止状態から中継状態に切り替える切替部443と、を有する。
【選択図】
図3