(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】塗装システム
(51)【国際特許分類】
B05B 12/00 20180101AFI20240924BHJP
B05B 15/50 20180101ALI20240924BHJP
【FI】
B05B12/00 A
B05B15/50
(21)【出願番号】P 2024087661
(22)【出願日】2024-05-30
【審査請求日】2024-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505056845
【氏名又は名称】アーベーベー・シュバイツ・アーゲー
【氏名又は名称原語表記】ABB Schweiz AG
【住所又は居所原語表記】Bruggerstrasse 66, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】飯田 輝澄
(72)【発明者】
【氏名】山内 邦治
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2622874(KR,B1)
【文献】特開平7-284702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 12/00
B05B 15/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットを備える塗装システムであって、
塗料の液滴を吐出する複数のノズルを有する塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、
前記塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、
前記塗装ヘッドの作動を制御するヘッド制御部、および前記ロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を前記塗装ロボットが備え、
前記ノズルが開口しているノズル形成面を払拭するための払拭手段を有し、
前記ロボットアーム制御部は、
少なくとも前記車両毎の塗装前に、前記ノズル形成面が前記払拭手段で払拭されるように、前記ロボットアームの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記ロボットアーム制御部は、
前記車両毎の塗装後に、前記ノズル形成面が前記払拭手段で払拭されるように、前記ロボットアームの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項3】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記ロボットアーム制御部は、
前記車両を塗装する複数の塗装パスのうち、特定の塗装パスの塗装が終了して次の塗装パスに移行する間に、前記ノズル形成面が前記払拭手段で払拭されるように、前記ロボットアームの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項4】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記ロボットアーム制御部は、
同一の前記塗料を用いた塗装であって、特定の塗装部位への塗装が終了した後に異なる塗装部位への塗装に移行する間、または特定の塗装種類の塗装が終了した後に異なる種類の塗装に移行する間に、前記ノズル形成面が前記払拭手段で払拭されるように、前記ロボットアームの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項5】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記制御部が前記塗装ヘッドへ前記塗料を充填したと判断した場合、
前記ロボットアーム制御部は、前記ノズル形成面が前記払拭手段で払拭されるように、前記ロボットアームの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装システム。
【請求項6】
請求項1記載の塗装システムであって、
前記ロボットアーム制御部が所定の角度を超えて前記塗装ヘッドを傾斜させた場合に、
前記ロボットアーム制御部は、前記ノズル形成面が前記払拭手段で払拭されるように、前記ロボットアームの作動を制御する、
ことを特徴とする塗装システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ロボットを備える塗装システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両の塗装ラインにおいては、ロボットを用いたロボット塗装が主流となっている。このロボット塗装に関する構成の一例として、たとえば特許文献1には、ノズル吐出面の表面を洗浄するノズル吐出面洗浄手段を備えるようにしても良いことに関して記載されている。このノズル吐出面洗浄手段として、特許文献1では、ゴム等のような柔軟性を有する材質から構成されるワイパー部材を備え、そのワイパー部材によって、ノズル吐出面に付着している塗料等をこすり取るワイピング装置に関して記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2021/028983号公報(段落0139等参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示の構成では、具体的にどのようなタイミングで、ノズル形成面を拭き取るのかについて、何ら開示されていない。そのため、塗装品質の向上が十分に測れない可能性がある。
【0005】
本発明は上記の事情にもとづきなされたもので、ノズル形成面の適切なタイミングでの拭き取りによって、塗装品質の向上を図ることが可能な塗装システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の観点によると、車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボットを備える塗装システムであって、塗料の液滴を吐出する複数のノズルを有する塗装ヘッドを備える塗装ヘッドユニットと、塗装ヘッドユニットを先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニットを所望の位置へ移動させるロボットアームと、塗装ヘッドの作動を制御するヘッド制御部、およびロボットアームの作動を制御するロボットアーム制御部を備える制御部と、を塗装ロボットが備え、ノズルが開口しているノズル形成面を払拭するための払拭手段を有し、ロボットアーム制御部は、少なくとも車両毎の塗装前に、ノズル形成面が払拭手段で払拭されるように、前記ロボットアームの作動を制御する、ことを特徴とする塗装システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、ノズル形成面の適切なタイミングでの拭き取りによって、塗装品質の向上を図ることが可能な塗装システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る塗装ロボットの全体構成を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す塗装ロボットを備える塗装システムの概略的な構成を示す図である。
【
図3】
図1に示す塗装ロボットが備える塗装ヘッドユニットのうち、塗料を吐出させるノズル形成面を正面視した状態を示す図である。
【
図4】
図1に示す塗装ロボットにおいて、各ノズルへ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
【
図5】1に示す塗装ロボットにおいて、列方向供給流路、ノズル加圧室および列方向排出流路付近の構成を示す断面図である。
【
図6】
図3に示す塗装ヘッドユニットとは異なる他の塗装ヘッドユニットにおけるノズル形成面の構成を示す平面図である。
【
図7】本実施の形態において、車両への塗装前に払拭手段でノズル形成面を払拭するイメージを示す図である。
【
図8】本実施の形態において、車両への塗装後に払拭手段でノズル形成面を払拭するイメージを示す図である。
【
図9】本実施の形態において、塗装パスの間に払拭手段でノズル形成面を払拭するイメージを示す図である。
【
図10】本実施の形態において、車両の異なる部位への塗装に移行する際に払拭手段でノズル形成面を払拭するイメージを示す図である。
【
図11】本実施の形態において、特定の塗装種類の塗装が終了した後に異なる種類の塗装へ移行する際に払拭手段でノズル形成面を払拭するイメージを示す図である。
【
図12】本実施の形態において、塗装ヘッドへ塗料を充填した後に払拭手段でノズル形成面を払拭するイメージを示す図である。
【
図13】本実施の形態において、所定の傾斜角度を超えて塗装ヘッドを傾斜させた際に払拭手段でノズル形成面を払拭するイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施の形態に係る塗装システム1および塗装ロボット10について、図面に基づいて説明する。なお、以下の説明においては、必要に応じて、X方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の長手方向とし、X1側は
図3における右側、X2側は
図3における左側とする。また、Y方向はノズル形成面52(塗装ヘッド53)の短手方向(幅方向)とし、Y1側は
図3における紙面上側、Y2側は
図3における紙面下側とする。
【0010】
(1.塗装システム1および塗装ロボット10の概要について)
本実施の形態の塗装システム1および塗装ロボット10は、自動車製造の工場における塗装ラインに位置する車両または車両部品(以下、車両の一部となる車両部品も車両として説明する)といった塗装対象物に対して、「塗装」を行うものであり、塗膜を塗装対象物の表面に形成して、その表面の保護や美観を与えることを目的としている。したがって、所定時間毎に、塗装ラインに沿って移動してくる車両に対し、一定の時間内に所望の塗装品質にて、塗装を行う必要がある。
【0011】
また、本実施の形態の塗装システム1および塗装ロボット10では、上述した塗膜を形成するのみならず、各種のデザインや画像を、車両や車両部品といった塗装対象物に対して形成することが可能である。なお、塗装対象物は、車両や車両部品には限られず、自動車以外の各種部品(一例としては、飛行機や鉄道の外装部品)等、塗装を行う必要があるものであれば良い。
【0012】
(1-1.塗装システム1および塗装ロボット10の全体構成について)
図1は、本発明の一実施の形態に係る塗装ロボット10の全体構成を示す概略図である。
図2は、
図1に示す塗装ロボット10を備える塗装システム1の概略的な構成を示す図である。
図2に示すように、塗装システム1は、塗装ロボット10と、画像処理装置200と、払拭手段300とを備えている。
【0013】
(1-2.塗装ロボット10について)
塗装ロボット10は、
図1に示すように、ロボット本体20と、塗装ヘッドユニット50とを主要な構成要素としている。
図1に示す塗装ロボット10は、その一例として、6軸の垂直多関節ロボットを示しているが、当該塗装ロボット10は、6軸以外の垂直多関節型、水平多関節型、直交ロボット等、どのようなタイプのロボットでも良い。
【0014】
(1-3.ロボット本体20について)
図1に示すように、ロボット本体20は、基台21と、第1~第6回転軸22a~22fと、脚部23と、第1回動アーム24と、第2回動アーム25と、回転アーム26と、リスト部27と、これらを駆動させるモータM1~M6(
図2参照)と、を主要な構成要素としている。なお、脚部23からリスト部27までの部分は、ロボットアームR1に対応するが、基台21等のようなそれ以外の部分も、ロボットアームR1に対応するものとしても良い。
【0015】
これらのうち、基台21は床面等の設置部位に設置される部分であるが、この基台21が設置部位に対して走行可能であっても良い。また、脚部23は、基台21から上部に向かい立設された部分であり、モータM1(
図2参照)の駆動によって第1回転軸22aを介して基台21に対して回転可能に設けられている。なお、脚部23は、基台21に対して回転しないように構成しても良い。
【0016】
また、脚部23の上端には、モータM2の駆動によって第2回転軸22bを介して第1回動アーム24が回動可能に設けられている。さらに、第1回動アーム24の先端側には、モータM3の駆動によって第3回転軸22cを介して第2回動アーム25が回動可能に設けられている。
【0017】
また、第2回動アーム25の先端側には、回転アーム26が第2回動アーム25の中心軸周りに回転可能に設けられている。この回転アーム26は、モータM4の駆動によって、第4回転軸22dを介して回転可能となっている。また、回転アーム26の先端側には、リスト部27が設けられている。このリスト部27は、モータM5およびモータM6の駆動によって、たとえば2つ等の複数の異なる向きの軸部を中心に、回転運動を可能としている。
図1においては、その回転運動が可能な回転軸を、それぞれ第5回転軸22eおよび第6回転軸22fとしている。それにより、塗装ヘッドユニット50の向きを精度良くコントロールすることが可能となっている。なお、軸部の個数は、2つ以上であれば幾つでも良い。
【0018】
また、リスト部27には、塗装ヘッドユニット50が取り付けられているが、この塗装ヘッドユニット50は、リスト部27に対して着脱自在に設けられていても良い。
【0019】
(1-4.塗料・洗浄液供給部40について)
図2に示すように、塗装システム1および塗装ロボット10には、塗料・洗浄液供給部40が設けられている。塗料・洗浄液供給部40は、塗装ヘッドユニット50に向けて塗料または洗浄液を供給するための部分である。このため、塗料・洗浄液供給部40は、不図示の塗料貯留部から塗料を供給する、または不図示の洗浄液貯留部から洗浄液を供給するための供給路41(
図4参照)と、不図示のポンプと、不図示の弁等と、吐出されなかった塗料または洗浄済みの洗浄液を回収するための戻り流路42とを備えている。
【0020】
ここで、塗料・洗浄液供給部40には、切替制御弁45が設けられている。切替制御弁45は、不図示の塗料貯留部から塗料を供給するのか、または不図示の洗浄液貯留部から洗浄液を供給するのかを切り替えるための制御弁であり、後述する塗料・洗浄液供給制御部80での制御によって作動する。このような切替制御弁45を備えることで、塗料・洗浄液供給部40では、塗料と洗浄液のいずれかを選択的に供給することが可能となっている。
【0021】
なお、塗料が塗装ロボット10の外部から供給される構成を採用する場合には、塗装ロボット10は、塗料を貯留する部分を備えなくても良く、塗装ロボット10の外部に塗料を貯留する部分を備えても良い。
【0022】
(1-5.塗装ヘッドユニットについて)
次に、塗装ヘッドユニット50について説明する。
図3は、塗装ヘッドユニット50のうち、塗料を吐出させるノズル形成面52を正面視した状態を示す図である。
図3に示すように、塗装ヘッドユニット50は、不図示のヘッドカバーを備え、そのヘッドカバー内に、種々の構成が内蔵されている。
図3に示すように、ノズル形成面52には、ノズル54が塗装ヘッドユニット50の長手方向に対して傾斜する方向に連なるノズル列55が複数設けられている。かかるノズル列55には、本実施の形態では、主走査方向(Y方向)の一方側(Y2側)に存在する第1ノズル列55Aと、主走査方向の他方側(Y1側)に存在する第2ノズル列55Bとが設けられている。
【0023】
なお、塗料を吐出する場合、第1ノズル列55Aにおける隣り合うノズル54から吐出される液滴の間に、第2ノズル列55Bにおけるノズル54から吐出される液滴が着弾されるように、各ノズル54の駆動タイミングが制御される。それにより、塗装の際にドット密度を向上させることができる。
【0024】
ところで、
図3に示すように、ノズル形成面52には、単一の塗装ヘッド53が存在している。しかしながら、ノズル形成面52には、複数の塗装ヘッド53から構成されるヘッド群が存在するようにしても良い。この場合、一例として、複数の塗装ヘッド53を位置合わせしつつ千鳥状に配置する構成が挙げられるが、ヘッド群における塗装ヘッド53の配置は千鳥状でなくても良い。
【0025】
図4は、各ノズル54へ塗料を供給する概略的な構成について示す図である。
図5は、列方向供給流路58、ノズル加圧室59および列方向排出流路60付近の構成を示す断面図である。
図4および
図5に示すように、塗装ヘッド53は、供給側大流路57と、列方向供給流路58と、ノズル加圧室59と、列方向排出流路60と、排出側大流路61とを備えている。供給側大流路57は、上記の供給路41から塗料が供給される流路である。また、列方向供給流路58は、供給側大流路57内の塗料が、分流される流路である。
【0026】
また、ノズル加圧室59は、列方向供給流路58とノズル供給流路59aを介して接続されている。それにより、ノズル加圧室59には、列方向供給流路58から塗料が供給される。このノズル加圧室59は、ノズル54の個数に対応して設けられていて、内部の塗料を後述する圧電基板62を用いてノズル54から吐出させることができる。
【0027】
また、ノズル加圧室59は、ノズル排出流路59bを介して列方向排出流路60と接続されている。したがって、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59内からノズル排出流路59bを介して、列方向排出流路60へと排出される。また、列方向排出流路60は、排出側大流路61と接続されている。排出側大流路61は、それぞれの列方向排出流路60から、排出された塗料が合流する流路である。この排出側大流路61は、上記の戻り流路42と接続されている。
【0028】
このような構成により、供給路41から供給された塗料は、供給側大流路57、列方向供給流路58、ノズル供給流路59aおよびノズル加圧室59を経て、ノズル54から吐出される。また、ノズル54から吐出されなかった塗料は、ノズル加圧室59からノズル排出流路59b、列方向排出流路60および排出側大流路61を経て、戻り流路42へと戻される。
【0029】
なお、
図4に示す構成では、1本の列方向供給流路58には、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されている。しかしながら、1本の列方向供給流路58に、複数本(たとえば2本)の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。また、複数本の列方向供給流路58に、1本の列方向排出流路60が対応するように配置されていても良い。
【0030】
また、
図5に示すように、ノズル加圧室59の天面(ノズル54とは反対側の面)には、圧電基板62が配置されている。この圧電基板62は、圧電体である2枚の圧電セラミック層63a,63bを備え、さらに共通電極64と、個別電極65とを備えている。圧電セラミック層63a,63bは、外部から電圧を印加することで、伸縮可能な部材である。このような圧電セラミック層63a,63bとしては、強誘電性を有する、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系、NaNbO3系、BaTiO3系、(BiNa)NbO3系、BiNaNb5O15系等のセラミックス材料を用いることができる。
【0031】
また、
図5に示すように、共通電極64は、圧電セラミック層63aと圧電セラミック層63bの間に配置されている。また、圧電基板62の上面には、共通電極用の表面電極(不図示)が形成されている。これら共通電極64と共通電極用の表面電極とは、圧電セラミック層63aに存在する不図示の貫通導体を通じて、電気的に接続されている。また、個別電極65は、上記のノズル加圧室59と対向する部位にそれぞれ配置されている。さらに、圧電セラミック層63aのうち、共通電極64と個別電極65とに挟まれた部分は、厚さ方向に分極している。したがって、個別電極65に電圧を印加すると、圧電効果によって圧電セラミック層63aが歪む。このため、所定の駆動信号を個別電極65に印加すると、ノズル加圧室59の体積を減少させるように圧電セラミック層63bが相対的に変動し、それによって塗料が吐出される。
【0032】
なお、
図5において、共通電極64がノズル加圧室59の天面に配置されているが、共通電極64は、
図5に示すような、ノズル加圧室59の天面に配置されている構成には限られない。たとえば、共通電極64は、ノズル加圧室59の側面(上記の天面と直交または概ね直交する面)に配置される構成を採用しても良く、その他、塗料をノズル54から良好に吐出可能であれば、どのような構成を採用しても良い。
【0033】
(1-6.塗装ヘッドユニットの他の構成について)
次に、塗装ヘッドユニット50の他の構成について説明する。
図6は、他の塗装ヘッドユニット50のノズル形成面52の構成を示す平面図である。
図6に示すように、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;Y方向)に沿って並ぶことでノズル列55を構成するようにしても良い。なお、
図6に示す構成では、複数のノズル54が塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に並んでノズル列55を構成しているが、1つの(単一の)ノズル54のみが塗装ヘッド53の短手方向(幅方向;主走査方向)に配置される構成としても良い。すなわち、ノズル列55が1つのノズル54から構成されていても良い。
【0034】
また、
図6に示すような塗装ヘッド53を用いて車両に塗装を行う場合、塗装ヘッド53の長手方向が、塗装ヘッド53の主走査方向に対して若干傾斜させた状態で塗装を実行するようにしても良い。たとえば、
図3に示す塗装ヘッド53の構成では、ノズル列55は主走査方向に対して所定の角度だけ傾斜しているとすると、
図6に示す塗装ヘッド53の短手方向を、塗装ヘッド53の主走査方向に対して所定の角度だけ傾斜させるようにすればよい。このように傾斜させる場合には、各ノズル54からの塗料の吐出タイミングを調整するだけで、
図3に示す塗装ヘッド53と同等の塗装を実現することができる。
【0035】
(1-7.塗装システム1の制御的な構成について)
次に、塗装システム1の作動を制御するための制御的な構成について説明する。なお、以下に説明する制御的な構成は、制御部に対応する。
図2に示すように、塗装ロボット10は、ロボットアーム制御部70と、塗料・洗浄液供給制御部80と、ヘッド制御部90と、主制御部100とを備えている。また、塗装ロボット10は、画像処理装置200に接続され、さらに払拭手段300を備えることで、塗装システム1を構成している。
【0036】
なお、ロボットアーム制御部70、塗料・洗浄液供給制御部80、ヘッド制御部90、主制御部100、および後述する画像処理部210は、CPU(Central Processing Unit)、記憶部位(ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)、不揮発メモリ等)等のメモリ、その他の要素から構成されている。なお、画像処理部210は、画像処理性能に優れたCPUと共に、またはCPUに代えて、GPU(Graphics Processing Unit)を用いるようにしても良い。
【0037】
また、塗装ロボット10には、図示を省略する各種のセンサも備えていて、それら各センサからの出力が、ロボットアーム制御部70、塗料・洗浄液供給制御部80、ヘッド制御部90、および主制御部100の何れかに入力される。各種のセンサとしては、たとえば加速度センサ、角速度センサ、各駆動部の位置を検出する位置検出センサ、イメージセンサ等が挙げられるが、これら以外のセンサを用いても良い。
【0038】
これらのうち、ロボットアーム制御部70は、上述したモータM1~M6の駆動を制御する部分である。このロボットアーム制御部70は、メモリ71を備えていて、メモリ71には、ロボットティーチングによって作成されたプログラムおよびデータが記憶されている。
【0039】
そして、ロボットアーム制御部70では、メモリ71に記憶されたプログラムやデータ、および画像処理装置200の画像処理部210での画像処理に基づいて、モータM1~M6の駆動を制御する。その制御により、塗装ヘッドユニット50は、塗装を実行するための所望の位置を、所望の速度で通過したり、所定の位置で停止することができる。なお、メモリ71は、塗装ロボット10が備えていても良いが、塗装ロボット10の外部にメモリ71が存在し、そのメモリ71に対して、有線または無線の通信手段を介して、情報の送受信を可能としても良い。
【0040】
また、塗料・洗浄液供給制御部80は、塗装ヘッドユニット50への塗料または洗浄液の供給を制御する部分であり、具体的には、塗料・洗浄液供給部40が備えるポンプや弁等の作動を制御する。また、塗料・洗浄液供給制御部80は、切替制御弁45の作動を制御して、不図示の塗料貯留部と不図示の洗浄液貯留部から、塗料と洗浄液のいずれかが選択的に供給される状態とする。
【0041】
なお、塗料・洗浄液供給制御部80は、塗料または洗浄液が供給される塗装ヘッドユニット50に対して、定圧にて塗料または洗浄液が供給されるように、上記のポンプや弁の作動を制御することが好ましい。なお、塗料・洗浄液供給制御部80は、圧力制御部に対応する。
【0042】
また、ヘッド制御部90は、画像処理部210での画像処理に基づいて、塗装ヘッドユニット50内の圧電基板62の作動を制御する部分である。
【0043】
また、主制御部100は、上記のモータM1~M6、塗料・洗浄液供給部40および圧電基板62が協働して塗装対象物に対して塗装が実行されるように、上述したロボットアーム制御部70、塗料・洗浄液供給制御部80、ヘッド制御部90に所定の制御信号を送信する部分である。
【0044】
また、塗装システム1には、画像処理装置200が設けられている。画像処理装置200は、画像処理部210と、メモリ220とを備えている。画像処理部210は、塗装ヘッド53が塗装を実行する経路である塗装パス毎の画像データを作成する部分である。
【0045】
また、メモリ220は、塗装パス毎の画像データを塗装順序に対応して記憶する部分である。
【0046】
なお、画像処理装置200は、たとえばコンピュータが対応するが、そのコンピュータは、塗装ロボット10の一部の構成要素であっても良く、塗装ロボット10とは別体的に設けられていても良い。画像処理装置200が塗装ロボット10とは別体的に設けられている場合、画像処理装置200と塗装ロボット10の間で、有線通信または無線通信により、データの送受信が行われる。なお、画像処理装置200が塗装ロボット10とは別体的に設けられていても、塗装ロボット10の概念に含めるようにしても良く、塗装ロボット10の概念に含めないようにしても良い。
【0047】
(1-8.払拭手段300について)
次に、払拭手段300について説明する。払拭手段300は、塗装ヘッド53によって車両の塗装を行う塗装ラインの外部(すなわち、車両の塗装を行う部位と干渉しない部位)に設けられている。この払拭手段300は、ノズル形成面52の払拭を行う手段であり、例えば、ワイヤとスポンジ等のうち少なくとも1つを備えている。
【0048】
この払拭手段300は、ノズル形成面52を払拭するために、例えば長尺状または平面状の払拭部310を備えている。したがって、払拭部にノズル形成面52を接触させた状態で、ノズル形成面52を移動させるようにロボットアームR1を作動させることで、ノズル形成面52の払拭が可能となっている。
【0049】
(2.作用について)
以上のような構成の塗装システム1および塗装ロボット10の作用について、以下に説明する。
【0050】
(a)車両C1への塗装前におけるノズル形成面52の払拭
図5に示すような塗装ヘッド53においては、車両C1(
図7参照)への塗装を行う前に、ノズル形成面52に、ノズル54の開口から溢れた液滴が付着していると、ノズル54から液滴が吐出される際に、その液滴を巻き込んで吐出されてしまう虞がある。その場合、液滴のサイズが変わってしまったり、予定していた着弾位置とは異なる位置に液滴が着弾してしまい、塗装品質が悪化してしまう虞がある。また、ノズル54の開口の周囲に、ノズル54から溢れた液滴が付着していると、ノズル54からの液滴の吐出が阻害されて、液滴が吐出され難くなる虞もある。
【0051】
そこで、本実施の形態では、
図7に示すように、車両C1毎の塗装前に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにしている。
【0052】
かかるノズル形成面52の払拭においては、主制御部100からの指令により、ロボットアーム制御部70は、ロボットアームR1を作動させて、塗装を行う塗装ラインの外部に塗装ヘッド53を移動させる。そして、その塗装ラインの外部に設けられている払拭手段300の払拭部310に、ノズル形成面52を押し付け、その押し付け状態のまま、ノズル形成面52を移動させる。それにより、払拭手段300(払拭部310)によって、ノズル形成面52の払拭を行う。
【0053】
かかる払拭手段300での払拭により、車両C1の塗装を行う前にノズル形成面52に付着した塗料が除去される。このため、ノズル54から液滴を吐出して車両C1の塗装を行う際に、ノズル形成面52に付着している塗料を巻き込んで液滴が吐出されるのが防止される。それにより、車両C1の塗装品質を向上させることが可能となっている。
【0054】
なお、以下の説明においても、上記と同様に、主制御部100からの指令により、ロボットアーム制御部70がロボットアームR1を作動させて、払拭手段300の払拭部310に、ノズル形成面52を押し付け、その押し付け状態のまま、ノズル形成面52を移動させる。それにより、払拭手段300(払拭部310)によって、ノズル形成面52の払拭がなされる。
【0055】
(b)車両C1の塗装後におけるノズル形成面52の払拭
車両C1の塗装前に、上記のようにノズル形成面52を払拭した場合において、次の車両C1の塗装前に、ある時間長さ以上の時間が経過してしまう場合がある。このような時間経過を経た場合においては、ノズル形成面52に付着している液滴が、乾いて固化してしまう虞がある。その場合、次の車両C1の塗装を行う前に、払拭手段300でノズル形成面52を払拭しても、液滴の固化した固化物が除去されない虞がある。
【0056】
そこで、
図8に示すように、車両C1の塗装が終了した後に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにしても良い。ただし、ある車両C1の塗装が終了してから、次の車両C1の塗装開始までの時間が、さほど長くはない場合には、車両C1の塗装後における払拭手段300でのノズル形成面52の払拭を省略するようにしても良い。また、ある車両C1の塗装が終了してから、次の車両C1の塗装開始までの時間が、上記よりも長時間となる場合には、ノズル形成面52の乾燥を防ぐために、払拭手段300で定期的に払拭するようにしても良い。
【0057】
(c)塗装パスの間でのノズル形成面52の払拭
また、車両C1を複数の塗装パスで塗装する際に、
図9に示すように、ある塗装パスの塗装が終了し、次の塗装パスに移行する間に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにしても良い。この場合において、塗装ヘッド53が往復移動するうちの単方向のみで塗装する場合、それぞれの塗装パスの塗装が終了する毎に、払拭手段300でノズル形成面52の払拭を行うことが好ましい。
【0058】
しかしながら、塗装パスの塗装が終了する毎に払拭手段300でノズル形成面52の払拭を行う場合には、1台の車両C1の塗装終了までに、時間がかかってしまう虞がある。そのため、複数の塗装パスを1つの塗装パス区画とし、その塗装パス区画の塗装が終了する毎に、払拭手段300でノズル形成面52の払拭を行うようにしても良い。
【0059】
また、塗装ヘッド53が往復移動するうちの双方向で塗装する場合においても、それぞれ往路の塗装パスおよび復路の塗装パスの塗装が終了する毎に、払拭手段300でノズル形成面52の払拭を行うようにしても良い。
【0060】
しかしながら、往路の塗装パスおよび復路の塗装パスの塗装が終了する毎に、払拭手段300でノズル形成面52の払拭を行う場合には、1台の車両C1の塗装終了までに、時間がかかってしまう虞がある。そのため、往復の塗装パスを1つの塗装パス区画とし、その塗装パス区画の塗装が終了する毎に、払拭手段300でノズル形成面52の払拭を行うようにしても良い。また、往路の塗装パスおよび復路の塗装パスに関係なく、複数の塗装パスを1つの塗装パス区画とし、その塗装パス区画の塗装が終了する毎に、払拭手段300でノズル形成面52の払拭を行うようにしても良い。
【0061】
(d)車両C1の異なる部位への塗装に移行する際のノズル形成面52の払拭
また、
図10に示すように、同一の塗料を用いた塗装において、特定の塗装部位への塗装が終了した後に異なる塗装部位への塗装に移行するまでの間に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにしても良い。このような場合としては、車両C1の右側の塗装を行い、その後に払拭手段300でノズル形成面52を払拭し、その払拭後に車両C1の左側に塗装を行うような場合が挙げられる。また、車両C1の前側の塗装と後側の塗装の間に払拭手段300でノズル形成面52の払拭を行う場合も挙げられる。しかしながら、異なる塗装部位への塗装に移行するまでの間であれば、これらには限られない。
【0062】
(e)特定の塗装種類の塗装が終了した後に異なる種類の塗装に移行する際のノズル形成面52の払拭
また、
図11に示すように、特定の塗装種類の塗装が終了した後に異なる種類の塗装に移行するまでの間に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにしても良い。このような場合としては、例えば、ルーフやボンネット等の部位をべた塗りで塗装した後に、文字、ロゴやマーク等のような解像度の高い塗装(印刷)を行うのに際して、そのような解像度の高い塗装(印刷)を行う前に払拭手段300でノズル形成面52を払拭する等の場合が挙げられる。しかしながら、このような場合には限られない。
【0063】
なお、
図11においては、車両C1のリヤ部分の塗装が終了した後に、「4WD TURBO」というデザインされた文字(ロゴ)が印刷されている状態を示している。
【0064】
(f)塗装ヘッド53へ塗料を充填した後のノズル形成面52の払拭
また、塗装ヘッド53に塗料を充填した場合には、ノズル54から塗料が溢れてしまい、ノズル形成面52に塗料の液滴が付着していることが多い。そこで、
図12に示すように、主制御部100が塗装ヘッド53へ塗料を充填したと判断した場合、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにしても良い。なお、
図12の左側には、塗料タンク110から塗料・洗浄液供給部40を介して塗料が塗装ヘッド53へ供給されるイメージも、併せて示している。
【0065】
(g)所定の角度を超えて塗装ヘッド53を傾斜させた際のノズル形成面52の払拭
また、塗装ヘッド53の傾斜角度が大きくなると、水頭圧差によって、ノズル54から塗料が吐出してしまう虞がある。そこで、
図13に示すように、所定の角度を超えて塗装ヘッド53を傾斜させた場合に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにしても良い。
【0066】
特に、塗装ヘッド53が長手方向(
図3におけるX方向)において傾斜する場合に、塗装ヘッド53内の高低差が大きくなるので、塗装ヘッド53の長手方向における傾斜角度が、所定の角度を超えた場合に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにすることが好ましい。しかしながら、塗装ヘッド53の短手方向(
図3におけるY方向)における傾斜角度が、所定の角度を超えた場合に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭するようにしても良い。
【0067】
(h)塗装ヘッド53への塗料の供給圧力に基づくノズル形成面52の払拭
塗装で用いられる塗料の種類によっては、塗装ヘッド53への塗料の供給圧力よりも、塗料の回収圧力を強く設定する必要がある。このような場合においては、ノズル54から空気を吸い込む可能性が高いため、気泡が発生し易い状態となる。そこで、かかる塗料種では、ノズル形成面52の表面を払拭する前に、ノズル54から塗料を吐出させる液滴吐出の制御を行い、その後に払拭手段300(払拭部310)でノズル形成面52を払拭するようにするのが好ましい。
【0068】
(3.付記)
上述した実施の形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
[1]すなわち、車両の塗装部位への塗装を行う塗装ロボット10を備える塗装システム1であって、塗料の液滴を吐出する複数のノズル54を有する塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、塗装ヘッド53の作動を制御するヘッド制御部90、およびロボットアームR1の作動を制御するロボットアーム制御部70を塗装ロボット10が備え、ノズル54が開口しているノズル形成面52を払拭するための払拭手段300を有し、ロボットアーム制御部70は、少なくとも車両C1毎の塗装前に、ノズル形成面52が払拭手段300で払拭されるように、ロボットアームR1の作動を制御する。
【0069】
このように、少なくとも車両C1毎の塗装前に、払拭手段300によるノズル形成面52の払拭動作が実施される。このため、ノズル形成面52に液滴が溢れて付着していたとしても、そのようなノズル形成面52に付着している液滴を除去できる。したがって、ノズル形成面52に付着している液滴を巻き込んで液滴が吐出されるのを防止できるので、車両C1における塗装品質を向上させることができる。
【0070】
[2]また、上記の実施の形態においては、上記の[1]に記載の内容に加え、ロボットアーム制御部70は、車両C1毎の塗装後に、ノズル形成面52が払拭手段300で払拭されるように、ロボットアームR1の作動を制御することが好ましい。
【0071】
このように構成する場合には、車両C1の塗装の際の拭き返しによってノズル形成面52に付着した液滴や、塗装している際にノズル形成面52に溢れた液滴を、払拭手段300で良好に除去できる。
【0072】
[3]また、上記の実施の形態においては、上述した[1]と[2]、またはそれらの組み合わせに記載の内容に加え、ロボットアーム制御部70は、車両C1を塗装する複数の塗装パスのうち、特定の塗装パスの塗装が終了して次の塗装パスに移行する間に、ノズル形成面52が払拭手段300で払拭されるように、ロボットアームR1の作動を制御することが好ましい。
【0073】
このように制御することで、ある特定の塗装パスでの塗装の際にノズル形成面52に付着した液滴を、払拭手段300で良好に除去することができる。そのため、次の塗装パスでの塗装においては、ノズル形成面52に付着している液滴を巻き込んで液滴が吐出されるのを防止できるので、塗装品質を向上させることができる。
【0074】
[4]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[3]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、ロボットアーム制御部70は、同一の塗料を用いた塗装であって、特定の塗装部位への塗装が終了した後に異なる塗装部位への塗装に移行する間、または特定の塗装種類の塗装が終了した後に異なる種類の塗装に移行する間に、ノズル形成面52が払拭手段300で払拭されるように、ロボットアームR1の作動を制御することが好ましい。
【0075】
このように、同一の塗料を用いた塗装においては、特定の塗装部位への塗装が終了した後に異なる塗装部位への塗装に移行する間に、ノズル形成面52に付着した液滴を、払拭手段300で良好に除去することができる。
【0076】
また、特定の塗装種類の塗装が終了した後に異なる種類の塗装に移行する間に、ノズル形成面52に付着した液滴を、払拭手段300で良好に除去することができる。
【0077】
[5]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[4]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、主制御部100が塗装ヘッド53へ塗料を充填したと判断した場合、ロボットアーム制御部70は、ノズル形成面52が払拭手段300で払拭されるように、ロボットアームR1の作動を制御することが好ましい。
【0078】
このように、塗装ヘッド53へ塗料を充填した後に、ノズル形成面52を払拭手段300で払拭することで、ノズル形成面52に付着した液滴を、払拭手段300で良好に除去することができる。そのため、実際に車両C1への塗装を行うまでの間に、塗料が乾燥してしまい、塗装前の払拭では塗料を十分に拭き取れない事態が生じるのを防止可能となる。
【0079】
[6]また、上記の実施の形態においては、上述した上記の[1]から[5]のいずれかに記載またはそれらの組み合わせた内容に加え、ロボットアーム制御部70が所定の角度を超えて塗装ヘッド53を傾斜させた場合に、ロボットアーム制御部70は、ノズル形成面52が払拭手段300で払拭されるように、ロボットアームR1の作動を制御することが好ましい。
【0080】
このように、ロボットアーム制御部70が所定の角度を超えて塗装ヘッド53を傾斜させた場合、水頭圧差によってノズル54から塗料が吐出した場合に、ノズル形成面52に付着した液滴を、払拭手段300で良好に除去することができる。そのため、実際に車両C1への塗装を行うまでの間に、塗料が乾燥してしまい、塗装前の払拭では塗料を十分に拭き取れない事態が生じるのを防止可能となる。
【0081】
(4.変形例について)
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態以外に、種々変形可能である。以下に、変形例について説明する。
【0082】
上述した実施の形態では、塗装ヘッド53は、圧電基板62を用いてノズル54から液滴を吐出するインクジェット方式を採用している。しかしながら、塗装ヘッドは、インクジェット方式には限られず、ディスペンサー方式を用いても良い。
【符号の説明】
【0083】
1…塗装システム、10…塗装ロボット、20…ロボット本体、21…基台、22a…第1回転軸、22b…第2回転軸、22c…第3回転軸、22d…第4回転軸、22e…第5回転軸、22f…第6回転軸、23…脚部、24…第1回動アーム、25…第2回動アーム、26…回転アーム、27…リスト部、40…塗料・洗浄液供給部、41…供給路、42…戻り流路、45…切替制御弁、50…塗装ヘッドユニット、52…ノズル形成面、53…塗装ヘッド、54…ノズル、55…ノズル列、55A…第1ノズル列、55B…第2ノズル列、57…供給側大流路、58…列方向供給流路、59…ノズル加圧室、59a…ノズル供給流路、59b…ノズル排出流路、60…列方向排出流路、61…排出側大流路、62…圧電基板、63a…圧電セラミック層、63b…圧電セラミック層、64…共通電極、65…個別電極、70…ロボットアーム制御部、71…メモリ、80…塗料・洗浄液供給制御部(圧力制御部に対応)、90…ヘッド制御部、100…主制御部、110…塗料タンク、200…画像処理装置、210…画像処理部、220…メモリ、300…払拭手段、310…払拭部
【要約】
【課題】ノズル形成面の適切なタイミングでの拭き取りによって、塗装品質の向上を図ることが可能な塗装システムを提供することを目的とする。
【解決手段】塗装システム1は、塗料の液滴を吐出する複数のノズル54を有する塗装ヘッド53を備える塗装ヘッドユニット50と、塗装ヘッドユニット50を先端に装着すると共に、当該塗装ヘッドユニット50を所望の位置へ移動させるロボットアームR1と、塗装ヘッド53の作動を制御するヘッド制御部90、およびロボットアームR1の作動を制御するロボットアーム制御部70を備える制御部と、を塗装ロボット10が備え、ノズル形成面52を払拭するための払拭手段300を有し、ロボットアーム制御部70は、少なくとも車両毎の塗装前に、ノズル形成面52が払拭手段300で払拭されるように、ロボットアームR1の作動を制御する。
【選択図】
図2