IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日揮グローバル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-溶接自動化装置および溶接自動化方法 図1
  • 特許-溶接自動化装置および溶接自動化方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-20
(45)【発行日】2024-10-01
(54)【発明の名称】溶接自動化装置および溶接自動化方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 37/00 20060101AFI20240924BHJP
【FI】
B23K37/00 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024507471
(86)(22)【出願日】2022-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2022012866
(87)【国際公開番号】W WO2023175976
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】519355493
【氏名又は名称】日揮グローバル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】綾 真一
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-321092(JP,A)
【文献】特開平08-294781(JP,A)
【文献】特開2015-226966(JP,A)
【文献】特開2000-141087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接対象物の溶接を自動的に行う溶接自動化装置であって、
前記溶接対象物は、第1部品と第2部品とを備え、
前記溶接自動化装置は、マテリアルハンドリングロボットと、複数の溶接ロボットとして第1溶接ロボット及び第2溶接ロボットと、制御装置と、を備え、
前記マテリアルハンドリングロボットは、前記複数の溶接ロボットのそれぞれに対する前記第1部品の運搬機能と、前記複数の溶接ロボットのそれぞれに対する前記第2部品の運搬機能と、前記複数の溶接ロボットのいずれかに対して運搬された前記第1部品に対する前記第2部品の位置決め保持機能と、を備え、
前記複数の溶接ロボットのそれぞれは、前記マテリアルハンドリングロボットから運搬された前記溶接対象物の溶接機能として、前記マテリアルハンドリングロボットが前記位置決め保持機能を実行している間に、前記第1部品と前記第2部品とを仮溶接する仮溶接機能と、前記位置決め保持機能を要することなく、前記第1部品と前記第2部品とを本溶接する本溶接機能と、を備え、
前記制御装置は、前記複数の溶接ロボットのうち異なる溶接ロボットに対しては、前記溶接対象物の運搬機能を異なる時間に実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御し、前記溶接対象物の運搬機能を実行する時間とは異なる時間において、前記位置決め保持機能を実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御し、
前記第1溶接ロボットが前記本溶接機能を実行している間、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記第2溶接ロボットに対する前記第1部品の運搬機能、前記第2部品の運搬機能、および前記位置決め保持機能を実行し、かつ、前記第2溶接ロボットは、前記マテリアルハンドリングロボットが前記第2溶接ロボットに対する前記位置決め保持機能を実行している間に、前記仮溶接機能を実行し、前記仮溶接機能の実行が完了すると、前記本溶接機能を実行し、
前記第2溶接ロボットが前記本溶接機能を実行している間、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記第1溶接ロボットに対する前記第1部品の運搬機能、前記第2部品の運搬機能、および前記位置決め保持機能を実行し、かつ、前記第1溶接ロボットは、前記マテリアルハンドリングロボットが前記第1溶接ロボットに対する前記位置決め保持機能を実行している間に、前記仮溶接機能を実行し、前記仮溶接機能の実行が完了すると、前記本溶接機能を実行することを特徴とする溶接自動化装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記マテリアルハンドリングロボットが一の溶接ロボットについて前記溶接対象物を運搬するとき、他の溶接ロボットのうち溶接対象物がセットされている溶接ロボットについては溶接機能を実行するように制御することを特徴とする請求項1に記載の溶接自動化装置。
【請求項3】
前記溶接自動化装置は、前記溶接対象物をセットするセット治具を備え、
前記マテリアルハンドリングロボットは、前記制御装置の制御に応じて、前記セット治具にセットされた前記溶接対象物を前記複数の溶接ロボットのいずれかに運搬することを特徴とする請求項1または2に記載の溶接自動化装置。
【請求項4】
前記溶接自動化装置は、溶接後の前記溶接対象物を外部に搬出するコンベア装置を備え、
前記マテリアルハンドリングロボットは、前記コンベア装置に対する前記溶接対象物の運搬機能を備え、
前記制御装置は、前記溶接ロボットに対する前記溶接対象物の運搬機能を実行する時間とは異なる時間において、前記コンベア装置に対する前記溶接対象物の運搬機能を実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の溶接自動化装置。
【請求項5】
前記溶接対象物は、配管部材であることを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の溶接自動化装置。
【請求項6】
前記溶接機能を実行する前に、前記溶接対象物の種類を自動的に特定する、前記溶接対象物の特定機能を有することを特徴とする請求項1~のいずれか1項に記載の溶接自動化装置。
【請求項7】
溶接対象物の溶接を自動的に行う溶接自動化方法であって、
前記溶接対象物は、第1部品と第2部品とを備え、
前記溶接自動化方法は、マテリアルハンドリングロボットと、複数の溶接ロボットとして第1溶接ロボット及び第2溶接ロボットと、制御装置と、を利用し、
前記マテリアルハンドリングロボットは、前記複数の溶接ロボットのそれぞれに対する前記第1部品の運搬機能と、前記複数の溶接ロボットのそれぞれに対する前記第2部品の運搬機能と、前記複数の溶接ロボットのいずれかに対して運搬された前記第1部品に対する前記第2部品の位置決め保持機能と、を備え、
前記複数の溶接ロボットのそれぞれは、前記マテリアルハンドリングロボットから運搬された前記溶接対象物の溶接機能として、前記マテリアルハンドリングロボットが前記位置決め保持機能を実行している間に、前記第1部品と前記第2部品とを仮溶接する仮溶接機能と、前記位置決め保持機能を要することなく、前記第1部品と前記第2部品とを本溶接する本溶接機能と、を備え、
前記制御装置は、前記複数の溶接ロボットのうち異なる溶接ロボットに対しては、前記溶接対象物の運搬機能異なる時間に実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御し、前記溶接対象物の運搬機能を実行する時間とは異なる時間において、前記位置決め保持機能を実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御し、
前記第1溶接ロボットが前記本溶接機能を実行している間、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記第2溶接ロボットに対する前記第1部品の運搬機能、前記第2部品の運搬機能、および前記位置決め保持機能を実行し、かつ、前記第2溶接ロボットは、前記マテリアルハンドリングロボットが前記第2溶接ロボットに対する前記位置決め保持機能を実行している間に、前記仮溶接機能を実行し、前記仮溶接機能の実行が完了すると、前記本溶接機能を実行し、
前記第2溶接ロボットが前記本溶接機能を実行している間、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記第1溶接ロボットに対する前記第1部品の運搬機能、前記第2部品の運搬機能、および前記位置決め保持機能を実行し、かつ、前記第1溶接ロボットは、前記マテリアルハンドリングロボットが前記第1溶接ロボットに対する前記位置決め保持機能を実行している間に、前記仮溶接機能を実行し、前記仮溶接機能の実行が完了すると、前記本溶接機能を実行することを特徴とする溶接自動化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接自動化装置および溶接自動化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
資源開発、プラント建設等の現場では種々の構造物を建設する必要がある。その際、市場から規格化されて供給される製品に限らず、構造物の設計に応じた種々の部材を作製する必要があり、費用や時間を要している。また、熟練した作業員の確保が容易でない場合もあるため、工期の短縮、省力化、品質の安定等の改善が求められている。
【0003】
例えば、配管の溶接に関して、特許文献1には、溶接ロボットと制御回路を備えた自動溶接システムが記載されている。また、特許文献2には、配管を位置決めして溶接する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2020/0230732号明細書
【文献】国際公開第2021/233979号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造物の建設に必要となる配管等の溶接対象物は多様な形状を有し、規格的な大量生産には適していない。溶接ロボット等の産業用ロボットは、汎用的な作業が可能であるが、高価である。そのため、産業用ロボットを利用した自動化システムにおいて、作業効率の向上による低コスト化が望まれる。
【0006】
本発明の課題は、産業用ロボットを利用しても、作業効率の向上による低コスト化が可能な溶接自動化装置および溶接自動化方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、溶接対象物の溶接を自動的に行う溶接自動化装置であって、前記溶接自動化装置は、マテリアルハンドリングロボットと、複数の溶接ロボットと、制御装置と、を備え、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記複数の溶接ロボットのそれぞれに対する前記溶接対象物の運搬機能を備え、前記複数の溶接ロボットのそれぞれは、前記マテリアルハンドリングロボットから運搬された前記溶接対象物の溶接機能を備え、前記制御装置は、前記複数の溶接ロボットのうち異なる溶接ロボットに対しては、前記溶接対象物の運搬機能を異なる時間に実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御することを特徴とする溶接自動化装置である。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記制御装置は、前記マテリアルハンドリングロボットが一の溶接ロボットについて前記溶接対象物を運搬するとき、他の溶接ロボットのうち溶接対象物がセットされている溶接ロボットについては溶接機能を実行するように制御することを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の態様は、第1または第2の態様において、前記溶接自動化装置は、前記溶接対象物をセットするセット治具を備え、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記制御装置の制御に応じて、前記セット治具にセットされた前記溶接対象物を前記複数の溶接ロボットのいずれかに運搬することを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の態様は、第1~3のいずれか1の態様において、前記溶接自動化装置は、溶接後の前記溶接対象物を外部に搬出するコンベア装置を備え、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記コンベア装置に対する前記溶接対象物の運搬機能を備え、前記制御装置は、前記溶接ロボットに対する前記溶接対象物の運搬機能を実行する時間とは異なる時間において、前記コンベア装置に対する前記溶接対象物の運搬機能を実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の第5の態様は、第1~4のいずれか1の態様において、前記溶接対象物は、第1部品と第2部品とを備え、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記複数の溶接ロボットのそれぞれに対する前記第1部品の運搬機能と、前記複数の溶接ロボットのそれぞれに対する前記第2部品の運搬機能と、前記複数の溶接ロボットのいずれかに対して運搬された前記第1部品に対する前記第2部品の位置決め保持機能と、を備え、前記複数の溶接ロボットのそれぞれは、前記マテリアルハンドリングロボットが前記位置決め保持機能を実行している間に、前記第1部品と前記第2部品とを仮溶接する仮溶接機能と、前記位置決め保持機能を要することなく、前記第1部品と前記第2部品とを本溶接する本溶接機能と、を備え、前記制御装置は、前記溶接対象物の運搬機能を実行する時間とは異なる時間において、前記位置決め保持機能を実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の第6の態様は、第1~5のいずれか1の態様において、前記溶接対象物は、配管部材であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第7の態様は、第1~6のいずれか1の態様において、前記溶接機能を実行する前に、前記溶接対象物の種類を自動的に特定する、前記溶接対象物の特定機能を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の第8の態様は、溶接対象物の溶接を自動的に行う溶接自動化方法であって、前記溶接自動化方法は、マテリアルハンドリングロボットと、複数の溶接ロボットと、制御装置と、を利用し、前記マテリアルハンドリングロボットは、前記複数の溶接ロボットのそれぞれに対する前記溶接対象物の運搬機能を備え、前記複数の溶接ロボットのそれぞれは、前記マテリアルハンドリングロボットから運搬された前記溶接対象物の溶接機能を備え、前記制御装置は、異なる溶接ロボットに対する前記溶接対象物の運搬機能を相互に異なる時間に実行するように、前記マテリアルハンドリングロボットを制御することを特徴とする溶接自動化方法である。
【発明の効果】
【0015】
第1の態様によれば、マテリアルハンドリングロボットが複数の溶接ロボットに対して効率的に溶接対象物を運搬することができるので、産業用ロボットを利用しても、作業効率の向上による低コスト化が可能になる。
【0016】
第2の態様によれば、マテリアルハンドリングロボットが一の溶接ロボットについて溶接対象物を運搬するとき、他の溶接ロボットのうち溶接対象物がセットされている溶接ロボットは溶接機能を実行するので、産業用ロボットを利用しても、作業効率の向上による低コスト化が可能になる。
【0017】
第3の態様によれば、溶接ロボットに分配すべき溶接対象物をセット治具にセットすれば、マテリアルハンドリングロボットに運搬させることができるので、溶接対象物の供給が容易になる。
【0018】
第4の態様によれば、溶接後の溶接対象物の搬出を、マテリアルハンドリングロボットがコンベア装置を用いて実施することができるので、溶接対象物の搬出が容易になる。
【0019】
第5の態様によれば、溶接対象物が第1部品と第2部品とを備え、溶接ロボットだけでは仮溶接時に第1部品に対する第2部品の位置決め保持機能を有しない場合も、マテリアルハンドリングロボットが位置決め保持機能を実施することができるので、溶接対象物が複数の部品を含む場合の溶接の自動化が容易になる。
【0020】
第6の態様によれば、配管部材の溶接の自動化が容易になる。
【0021】
第7の態様によれば、溶接対象物が複数の種類を有する場合でも、溶接の自動化が容易になる。
【0022】
第8の態様によれば、マテリアルハンドリングロボットが複数の溶接ロボットに対して効率的に溶接対象物を運搬することができるので、産業用ロボットを利用しても、作業効率の向上による低コスト化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】実施形態の溶接自動化装置を例示する配置図である。
図2】実施形態の溶接自動化方法を例示する工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0025】
図1に、実施形態の溶接自動化装置10の配置図を例示する。溶接自動化装置10は、溶接対象物の溶接を自動的に行うことができる。溶接自動化装置10は、複数の溶接ロボット11,12と、マテリアルハンドリングロボット13と、制御装置14と、を備えている。
【0026】
複数の溶接ロボット11,12のそれぞれは、マテリアルハンドリングロボット13から運搬された溶接対象物の溶接機能を備える。また、マテリアルハンドリングロボット13は、複数の溶接ロボット11,12のそれぞれに対する溶接対象物の運搬機能を備える。
【0027】
溶接ロボット11,12として用いることが可能なロボットとしては、特に限定されないが、作業用のアーム11a,12aを少なくとも1つ備える産業用ロボットが好ましい。溶接ロボット11,12は、アーム11a,12aを1つ備える単腕型のロボットでもよく、アーム11a,12aを2つ備える双腕型のロボットでもよい。複数の溶接ロボット11,12は、同じ型式のロボットであることが好ましいが、同等の機能を有するなら型式の異なるロボットであってもよい。
【0028】
溶接ロボット11,12のアーム11a,12aは、ロボット本体11b,12bからの伸縮または屈曲を自在にして構成されている。ロボット本体11b,12bは、アーム11a,12aを所望の方向に回転させることが可能であってもよい。アーム11a,12aの回転角度は水平面内の全方位(360°)であってもよく、360°未満の所定の範囲内であってもよい。
【0029】
溶接ロボット11,12のアーム11a,12aは、複数の軸を備える多関節アームであってもよい。多関節アームは、例えばサーボモータ等で動作させることができる。溶接ロボット11,12のアーム11a,12aの先端部には、溶接トーチ(図示せず)等の溶接器具が取り付けられている。
【0030】
溶接ロボット11,12は、溶接棒、溶接ワイヤー等の溶加材を備えてもよい。溶加材は、加熱により溶融して、溶接対象物に付着し、溶接箇所を補強することができる。溶接対象物の母材の一部が溶加材と共に溶融し、一体的に凝固した溶接部が形成されてもよい。溶加材を用いることなく、溶接対象物の母材の一部を溶融させることで、溶接部が形成されてもよい。
【0031】
溶接ロボット11,12は、制御部11c,12cを備えている。制御部11c,12cは、制御信号を出力して、アーム11a,12aやロボット本体11b,12bにおける溶接ロボット11,12の動作を制御することができる。
【0032】
マテリアルハンドリングロボット13として用いることが可能なロボットとしては、特に限定されないが、作業用のアーム13aを少なくとも1つ備える産業用ロボットが好ましい。マテリアルハンドリングロボット13は、アーム13aを1つ備える単腕型のロボットでもよく、アーム13aを2つ備える双腕型のロボットでもよい。
【0033】
マテリアルハンドリングロボット13のアーム13aは、ロボット本体13bからの伸縮または屈曲を自在にして構成されている。ロボット本体13bは、アーム13aを所望の方向に回転させることが可能であってもよい。アーム13aの回転角度は水平面内の全方位(360°)であってもよく、360°未満の所定の角度範囲内であってもよい。
【0034】
マテリアルハンドリングロボット13のアーム13aは、複数の軸を備える多関節アームであってもよい。多関節アームは、例えばサーボモータ等で動作させることができる。マテリアルハンドリングロボット13のアーム13aの先端部には、溶接対象物を保持することが可能なハンド(図示せず)等の物品保持器具が取り付けられている。
【0035】
マテリアルハンドリングロボット13は、制御部13cを備えている。制御部13cは、制御信号を出力して、アーム13aやロボット本体13bにおけるマテリアルハンドリングロボット13の動作を制御することができる。
【0036】
溶接自動化装置10は、複数の溶接ロボット11,12およびマテリアルハンドリングロボット13を統合的に制御するため、制御装置14を備えている。以下の説明では、溶接ロボット11,12およびマテリアルハンドリングロボット13を総称して、「ロボット11,12,13」という場合がある。
【0037】
制御装置14は、各ロボット11,12,13の制御部11c,12c,13cに対して信号を送信してもよい。また、制御装置14は、各ロボット11,12,13の制御部11c,12c,13cから信号を受信してもよい。
【0038】
制御装置14は、例えばプログラムを有する電子回路を含んでもよい。制御装置14は、必要に応じて、記憶装置を持ってよい。記憶装置は、例えば、半導体メモリー、磁気ハードディスク等を用いて実現することができる。
【0039】
制御装置14は、異なる溶接ロボット11,12に対しては、溶接対象物の運搬機能を異なる時間に実行するように、マテリアルハンドリングロボット13を制御する。これにより、マテリアルハンドリングロボット13が複数の溶接ロボット11,12に対して効率的に溶接対象物を運搬することができるので、産業用ロボットを利用しても、作業効率の向上による低コスト化が可能になる。
【0040】
詳しくは後述するが、マテリアルハンドリングロボット13は、同時に複数の溶接ロボット11,12に対して運搬機能を実行する必要がないように制御される。例えば、第1溶接ロボット11および第2溶接ロボット12が配置されている場合、マテリアルハンドリングロボット13は、第1溶接ロボット11に対して運搬機能を実行する時間と、第2溶接ロボット12に対して運搬機能を実行する時間とが重ならないように制御される。
【0041】
マテリアルハンドリングロボット13が異なる溶接ロボット11,12に対して運搬機能を実行する際、姿勢の変更、方向転換等に時間を要する場合は、必要なタイムラグや余裕が確保されてもよい。
【0042】
溶接ロボット11,12の数は、マテリアルハンドリングロボット13の数より多くされている。このため、制御装置14は、複数の溶接ロボット11,12が共通のマテリアルハンドリングロボット13から溶接対象物を繰り返し受け取るように、ロボット11,12,13を制御する。
【0043】
各溶接ロボット11,12が前に溶接対象物を受け取ってから、次の溶接対象物を受け取るまでの時間は、1つの作業サイクルと認識される。各溶接ロボット11,12は、作業サイクルごとに溶接対象物の溶接を完了する必要がある。
【0044】
1つの作業サイクルに対応する溶接対象物は、溶接に必要な1つまたは1組の物品をいう。1つの作業サイクルに対応する溶接対象物の数は、特に限定されないが、1つでも複数でもよい。後述する第1部品および第2部品は、合わせて1組の溶接対象物を構成する例である。
【0045】
溶接ロボット11,12のそれぞれは、マテリアルハンドリングロボット13が他の溶接ロボット11,12に対する運搬機能を実行している間に、溶接対象物の溶接を完了する必要がある。このため、制御装置14は、溶接対象物を受け取った溶接ロボット11,12に対して、マテリアルハンドリングロボット13による次回の溶接対象物の運搬機能を実行する対象とならないうちに溶接対象物の溶接を完了するように制御する。
【0046】
制御装置14は、マテリアルハンドリングロボット13が溶接対象物の運搬機能を実行する対象を、溶接ロボット11,12のうちいずれか一つに特定する。以下の説明では、溶接ロボット11,12のうち、溶接対象物の運搬機能を実行する対象に特定された一つの溶接ロボットを「運搬対象ロボット」といい、運搬対象ロボットを除く、残りの溶接ロボットを「運搬対象外ロボット」という場合がある。
【0047】
例えば、第1溶接ロボット11と第2溶接ロボット12とが交互に、運搬対象ロボットとして特定される。溶接ロボットの数が3以上の場合も、制御装置14は、事前に第1、第2、第3等の番号を各溶接ロボットに割り振り、運搬対象ロボットを同じ順序で繰り返し特定することが好ましい。
【0048】
例えば、制御装置14は、マテリアルハンドリングロボット13が一の溶接ロボット11,12について溶接対象物を運搬するとき、他の溶接ロボット11,12のうち溶接対象物がセットされている溶接ロボット11,12については溶接機能を実行するように制御してもよい。つまり、運搬対象ロボットについて溶接対象物が運搬されるときに、運搬対象外ロボットに溶接対象物がセットされていないなら、運搬対象外ロボットが溶接機能を実行する必要はない。運搬対象外ロボットに溶接対象物がセットされているなら、運搬対象外ロボットが溶接機能を実行するように制御することが好ましい。
【0049】
より具体的には、例えば、マテリアルハンドリングロボット13が第1溶接ロボット11と第2溶接ロボット12とについて交互に溶接対象物を運搬する場合を、次の(A)および(B)のように分けて説明する。
【0050】
(A)第1溶接ロボット11について溶接対象物が運搬されるときは、第2溶接ロボット12は溶接対象物がセットされているときに限り、溶接機能を実行する。例えば、最初に第1溶接ロボット11に溶接対象物が運搬されるときには、第2溶接ロボット12に溶接対象物がセットされる前であるため、第2溶接ロボット12は溶接機能を実行する必要はない。それ以外の場合には、第2溶接ロボット12に溶接対象物がセットされているので、第1溶接ロボット11について溶接対象物が運搬されるときには、第2溶接ロボット12が溶接機能を実行するように制御される。
【0051】
(B)第2溶接ロボット12について溶接対象物が運搬されるときは、第1溶接ロボット11は溶接対象物がセットされているときに限り、溶接機能を実行する。例えば、最後に第2溶接ロボット12に溶接対象物が運搬されるときには、第1溶接ロボット11は、最後の溶接作業を完了した後に溶接機能を実行する必要はない。それ以外の場合には、第1溶接ロボット11に溶接対象物がセットされているので、第2溶接ロボット12について溶接対象物が運搬されるときには、第1溶接ロボット11が溶接機能を実行するように制御される。
【0052】
マテリアルハンドリングロボット13が全ての溶接ロボット11,12に対して溶接対象物の運搬機能を実行した以降において、制御装置14は、運搬対象外ロボットに対し、先にマテリアルハンドリングロボット13から運搬されている溶接対象物の溶接機能を実行するように制御することが好ましい。
【0053】
いずれかの溶接ロボットに作業の不具合、故障等のトラブルが生じた場合は、その溶接ロボットに対する運搬機能を実行しない等の計画変更を適宜実施することも可能である。例えば、溶接ロボットの数が3つで作業を開始した後に、途中で1つの溶接ロボットにトラブルが生じた後は、残り2つの溶接ロボットで作業を継続してもよい。トラブルが生じた溶接ロボットは、運搬対象ロボット、運搬対象外ロボットのいずれからも除外してもよい。
【0054】
運搬対象ロボットは、マテリアルハンドリングロボット13が溶接対象物の運搬機能を実行している間、待機状態となってもよく、溶接作業の準備を実行していてもよい。
【0055】
制御装置14は、運搬対象外ロボットの動作状況に応じて、新たに溶接機能を開始するように制御してもよく、実行中の溶接機能を継続するように制御してもよい。制御装置14が溶接機能の継続を指令しなくても、運搬対象外ロボットが実行中の溶接機能を継続するように動作するときは、運搬対象外ロボットに対する新たな指令をしないように制御してもよい。
【0056】
制御装置14は、同一の運搬対象ロボットに対して、溶接対象物の運搬機能を続けて実行するようにマテリアルハンドリングロボット13を制御するときは、そのうち適宜の工程において、運搬対象外ロボットの溶接機能に対する制御を実行してもよい。例えば、同一の運搬対象ロボットに対して、第1部品および第2部品を順に運搬するときは、第1部品または第2部品のいずれの運搬中でも、運搬対象外ロボットが溶接機能を実行するように制御してよい。さらに、運搬対象ロボットから溶接後の溶接対象物を回収するときに、運搬対象外ロボットが溶接機能を実行するように制御してもよい。
【0057】
運搬対象外ロボットは、マテリアルハンドリングロボット13が運搬対象ロボットに対する運搬機能を実行している時間の少なくとも一部において、溶接機能を実行していることが好ましい。運搬対象ロボットに対する運搬機能を実行している時間の一部において、運搬対象外ロボットの溶接機能が実行されていなくてもよい。
【0058】
ここで、運搬対象ロボットに対する運搬機能を実行している時間とは、運搬対象ロボットに向けて溶接前の溶接対象物の運搬機能を実行している時間、運搬対象ロボットから溶接後の溶接対象物の運搬機能を実行している時間、運搬対象ロボットが溶接した溶接対象物を外部に搬出するための運搬機能を実行している時間から選択される、少なくとも1つが挙げられる。運搬対象外ロボットにより溶接機能が実行される時間は、運搬対象ロボットに対する運搬機能の実行中とは異なる時間を含んでもよい。
【0059】
マテリアルハンドリングロボット13が複数配置される場合において、それぞれのマテリアルハンドリングロボット13が複数の溶接ロボット11,12と共同して作業をするように、チームを編成してもよい。その場合は、複数のチームを共通の制御装置14に制御させてもよい。同一の制御装置14が制御対象とするチームの数は任意であり、1でも2以上でもよい。
【0060】
複数のチームが編成される場合、上述の制御方法は、チームごとに独立して実行することができる。例えば、第1マテリアルハンドリングロボットが第1および第2溶接ロボットと共同で溶接作業を実施し、第2マテリアルハンドリングロボットが第3および第4溶接ロボットと共同で溶接作業を実施してもよい。
【0061】
例示のチーム編成において、第1マテリアルハンドリングロボットに関する運搬対象ロボットは、第1および第2溶接ロボットが交互に特定される。第2マテリアルハンドリングロボットに関する運搬対象ロボットは、第3および第4溶接ロボットが交互に特定される。各マテリアルハンドリングロボットに関する運搬外対象ロボットも、マテリアルハンドリングロボットごとに特定される。
【0062】
各チームには、マテリアルハンドリングロボットの数より多い数の溶接ロボットが配置される。例えば、各チームに1つのマテリアルハンドリングロボットが属する場合、各チームに属する溶接ロボットの数は、2以上であれば任意である。各チームが同数の溶接ロボットを備えてもよい。チームごとに溶接ロボットの数が異なってもよい。
【0063】
<セット治具>
溶接自動化装置10は、溶接前の溶接対象物をセットするセット治具15を備えてもよい。セット治具15に対して溶接対象物をセットする作業は、溶接自動化装置10の運転を監視する作業とともに、作業員が実施してもよい。作業員がロボット11,12,13に接近する必要がないように、ロボット11,12,13の周囲に安全柵、囲い等を設置してもよい。
【0064】
セット治具15は、マテリアルハンドリングロボット13のアーム13aが到達可能な位置に配置されている。これにより、マテリアルハンドリングロボット13は、セット治具15から溶接対象物を取得する機能を備えることができる。
【0065】
さらに制御装置14は、マテリアルハンドリングロボット13が、セット治具15にセットされた溶接対象物を複数の溶接ロボット11,12のいずれかに運搬するように制御してもよい。
【0066】
セット治具15は、溶接対象物を1つセットすることが可能な治具でもよく、複数の溶接対象物をセットすることが可能な治具でもよい。溶接対象物が複数の溶接ロボット11,12のいずれに供給されるかを区別することなく、溶接対象物をセットすることが可能な治具であることが好ましい。
【0067】
溶接自動化装置10がセット治具15を備えることにより、作業員は、溶接ロボット11,12に分配すべき溶接対象物をセット治具15にセットするだけで、マテリアルハンドリングロボット13に溶接対象物を運搬させることができる。これにより、溶接ロボット11,12に対する溶接対象物の供給が容易になる。
【0068】
セット治具15は、溶接対象物を所定の向きにセットすることが可能な治具であることが好ましい。これにより、セット治具15にセットされた溶接対象物をマテリアルハンドリングロボット13が容易に取り出すことができる。
【0069】
マテリアルハンドリングロボット13は、テーブル、トレイのように、溶接対象物を任意の向きに配置することが可能な器具から溶接対象物を取り出す機能を有してもよい。その場合も、溶接対象物がセット治具15に所定の向きにセットされていることにより、取り出し時間を短縮することができる。
【0070】
セット治具15に溶接対象物がセットされる向きおよび位置は、所定の許容範囲を有することが好ましい。例えば、筒状、棒状など、所定の方向に中心軸を有する形状である場合は、中心軸方向が許容範囲内にセットされることが好ましい。板状、枠状など、所定の向きに広がる平面を有する形状である場合は、平面の法線方向が許容範囲内にセットされることが好ましい。
【0071】
セット治具15の許容範囲としては特に限定されないが、角度の場合は例えば許容範囲の上限値が1~30°程度であってもよく、位置の場合は許容範囲の上限値が1~100mm程度であってもよい。セット治具15が許容範囲を有することにより、作業者が溶接対象物をセットする作業を容易にすることができる。
【0072】
セット治具15が溶接対象物を所定の向きに保持するための構造は、特に限定されないが、マテリアルハンドリングロボット13のハンドがセット治具15にセットされた溶接対象物を取り出すための空間を確保することが好ましい。例えば、溶接対象物の長さ方向、幅方向、軸方向、周方向、径方向等から選択される方向の一部分において、溶接対象物を保持する形状を有し、それ以外の部分にハンドの変位を許容する空間を確保してもよい。
【0073】
セット治具15が溶接対象物を保持する形状としては、特に限定されないが、凹部、凸部、段差、フック等が挙げられる。具体例としては、溶接対象物の下部の形状に合わせた凹部をセット治具15に形成し、凹部の上方にハンドの変位を許容する空間を確保してもよい。
【0074】
<コンベア装置>
溶接自動化装置10は、溶接後の溶接対象物を外部に搬出するコンベア装置16を備えてもよい。コンベア装置16により搬出される溶接後の溶接対象物は、溶接対象物の溶接により得られる溶接製品であってもよい。
【0075】
コンベア装置16は、マテリアルハンドリングロボット13のアーム13aが到達可能な位置に配置されている。これにより、マテリアルハンドリングロボット13は、コンベア装置16に対する溶接対象物の運搬機能を備えることができる。
【0076】
コンベア装置16としては、特に限定されないが、形状の定まった物品の運搬に適した装置が好ましく、具体的には、例えばベルトコンベア、ローラーコンベア、チェーンコンベア、ターンテーブル等が挙げられる。コンベア装置16が、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0077】
コンベア装置16により物品が運搬される軌道の形状は、特に限定されず、直線状でも、曲線状でもよい。コンベア装置16が、リフト、シュートなど、上下方向の移動が可能な機構を含んでもよい。コンベア装置16がパケット、バケツ等、物品を収容する所定の容器を備え、容器の移動を通じて物品を運搬してもよい。
【0078】
さらに制御装置14は、溶接ロボット11,12に対する溶接対象物の運搬機能を実行する時間とは異なる時間において、コンベア装置16に対する溶接対象物の運搬機能を実行するように、マテリアルハンドリングロボット13を制御してもよい。これにより、溶接後の溶接対象物からなる製品の搬出を、マテリアルハンドリングロボット13がコンベア装置16を用いて自動的に実施することができるので、溶接対象物の搬出が容易になる。
【0079】
<位置決め保持機能>
溶接対象物は、第1部品と第2部品とを備えてもよい。この場合、マテリアルハンドリングロボット13は、複数の溶接ロボット11,12のそれぞれに対する第1部品の運搬機能と、複数の溶接ロボット11,12のそれぞれに対する第2部品の運搬機能と、複数の溶接ロボット11,12のいずれかに対して運搬された第1部品に対する第2部品の位置決め保持機能と、を備えることができる。位置決め保持機能が不要な場合は、位置決め保持機能を実行しない選択をしてもよい。
【0080】
溶接対象物が第1部品と第2部品とを備える場合、複数の溶接ロボット11,12のそれぞれは、マテリアルハンドリングロボット13が位置決め保持機能を実行している間に、第1部品と第2部品とを仮溶接する仮溶接機能と、位置決め保持機能を要することなく、第1部品と第2部品とを本溶接する本溶接機能と、を備えることができる。
【0081】
仮溶接機能は、例えば第1部品と第2部品との位置関係が保持可能となる程度に、第1部品および第2部品の接触箇所の一部を、点状に溶接してもよい。仮溶接機能は、1箇所の仮溶接を実行してもよく、2箇所以上の仮溶接を実行してもよい。
【0082】
本溶接機能は、第1部品および第2部品の接合強度が確保するように、溶接することが好ましい。本溶接機能では、第1部品および第2部品の接触箇所の少なくとも一部を、線状または面状に溶接してもよい。第1部品および第2部品の間に、フィレット、オーバーラップ等の継手構造が形成されることが好ましい。
【0083】
さらに制御装置14は、溶接対象物の溶接に位置決め保持機能が必要な場合、溶接対象物の運搬機能を実行する時間とは異なる時間において、位置決め保持機能を実行するように、マテリアルハンドリングロボット13を制御する。溶接ロボット11,12が仮溶接時に複数の部品の位置決め保持機能を有しない場合も、マテリアルハンドリングロボット13が位置決め保持機能を実施することができる。これにより、溶接対象物が複数の部品を含む場合の溶接の自動化が容易になる。
【0084】
溶接対象物は、3以上の部品から構成されてもよい。例えば、溶接対象物が第1部品と第2部品と第3部品とを備えてもよい。この場合、マテリアルハンドリングロボット13は、複数の溶接ロボット11,12のそれぞれに対して、第1部品の運搬機能と、第2部品の運搬機能と、溶接ロボット11,12に対して運搬された第1部品に対する第2部品の位置決め保持機能と、第3部品の運搬機能と、溶接ロボット11,12に対して運搬された第1部品または第2部品に対する第3部品の位置決め保持機能と、を備えることができる。
【0085】
溶接ロボット11,12は、マテリアルハンドリングロボット13が第2部品の位置決め保持機能を実行している間に、第1部品と第2部品とを仮溶接してもよい。また、溶接ロボット11,12は、マテリアルハンドリングロボット13が第3部品の位置決め保持機能を実行している間に、第1部品または第2部品と第3部品とを仮溶接してもよい。
【0086】
第1部品または第2部品に対する第3部品の位置決め保持機能は、第1部品と第2部品との間で少なくとも仮溶接が完了した後に実行されることが好ましい。第3部品が、第1部品に溶接される部分と第2部品に溶接される部分とを有してもよい。
【0087】
溶接対象物が3以上の部品から構成される場合、マテリアルハンドリングロボット13は、溶接ロボット11,12に対して先に運搬された部品と、新たに運搬する部品との位置決め保持機能を有してもよい。この位置決め保持機能は、溶接ロボット11,12が先に運搬された部品と、新たに運搬する部品との仮溶接を完了するまで継続されることが好ましい。
【0088】
マテリアルハンドリングロボット13が、第1溶接ロボット11のために位置決め保持機能を実行している間、第2溶接ロボット12は、本溶接機能を実行していてもよい。また、マテリアルハンドリングロボット13が、第2溶接ロボット12のために位置決め保持機能を実行している間、第1溶接ロボット11は、本溶接機能を実行していてもよい。
【0089】
<各工程の実施例>
図2に、実施形態の溶接自動化方法の工程図を例示する。この工程図は、上から下に向けて時間が経過するように作成されている。図2は、上部に示すロボット11,12,13およびコンベア装置16について、各工程の時間的な前後関係を示す。なお、本発明は、図2に示す具体例に限定されるものではない。
【0090】
図2の工程図において、溶接ロボット11,12は、第1部品と第2部品とを仮溶接する仮溶接工程S1-4,S2-4と、第1部品と第2部品とを本溶接する本溶接工程S1-5,S2-5とを実行する。
【0091】
図2の工程図において、マテリアルハンドリングロボット13は、第1部品の運搬工程S1-1,S2-1と、第2部品の運搬工程S1-2,S2-2と、第1部品に対する第2部品の位置決め工程S1-3,S2-3と、溶接後の製品を溶接ロボット11,12から回収する製品回収工程S1-6,S2-6と、コンベア装置16に溶接後の製品を運搬する製品排出工程S1-7,S2-7とを実行する。
【0092】
次に、マテリアルハンドリングロボット13が、第1溶接ロボット11および第2溶接ロボット12の溶接機能をどのようにサポートするかについて説明する。
【0093】
まず、マテリアルハンドリングロボット13は、制御装置14の制御に応じて、第1溶接ロボット11に第1部品を供給するため、第1部品の運搬工程S1-1を実行する。この際、第1部品は、第1溶接ロボット11がアーム11aを用いて作業することができるように、適宜の位置に配置される。第1部品を保持するための治具(図示せず)を第1溶接ロボット11の作業空間に配置してもよい。
【0094】
第1部品の運搬工程S1-1の後に、マテリアルハンドリングロボット13は、制御装置14の制御に応じて、第1溶接ロボット11に第2部品を供給するため、第2部品の運搬工程S1-2を実行する。そして、マテリアルハンドリングロボット13は、制御装置14の制御に応じて、第1溶接ロボット11に対して供給された第1部品に対する第2部品の位置決め工程S1-3を実行する。
【0095】
第1部品に対する第2部品の位置決め保持が、マテリアルハンドリングロボット13により実行されるので、部品の位置や向きを精密に位置決めすることができる。第1溶接ロボット11は、マテリアルハンドリングロボット13が位置決め保持機能を実行している間に、仮溶接工程S1-4を実行する。
【0096】
仮溶接工程S1-4が完了すると、第1溶接ロボット11に対して供給された第1部品および第2部品は、位置決め保持機能を要することなく、第1溶接ロボット11の作業が可能な状態となる。そこで、第1溶接ロボット11が本溶接工程S1-5を実行している間、マテリアルハンドリングロボット13は、第1溶接ロボット11のサポートとは異なる作業を行うことができる。
【0097】
具体的には、第1溶接ロボット11が本溶接工程S1-5を実行している間、マテリアルハンドリングロボット13は、第2溶接ロボット12に対する第1部品の運搬工程S2-1、第2部品の運搬工程S2-2、および位置決め工程S2-3を実行することができる。第2溶接ロボット12におけるこれらの工程は、第1溶接ロボット11における第1部品の運搬工程S1-1、第2部品の運搬工程S1-2、および位置決め工程S1-3と同様に実施することができる。
【0098】
第2溶接ロボット12は、マテリアルハンドリングロボット13が位置決め保持機能を実行している間に、仮溶接工程S2-4を実行する。第2溶接ロボット12の仮溶接工程S2-4は、第1溶接ロボット11の仮溶接工程S1-4と同様に実施することができる。
【0099】
仮溶接工程S2-4が完了すると、第2溶接ロボット12に対して供給された第1部品および第2部品は、位置決め保持機能を要することなく、第2溶接ロボット12の作業が可能な状態となる。そこで、第2溶接ロボット12が本溶接工程S2-5を実行している間、マテリアルハンドリングロボット13は、第2溶接ロボット12のサポートとは異なる作業を行うことができる。
【0100】
第1溶接ロボット11が本溶接工程S1-5を完了し、かつ、第2溶接ロボット12が仮溶接工程S2-4を完了したとき、マテリアルハンドリングロボット13は、制御装置14の制御に応じて、第1溶接ロボット11が溶接した製品を取り出す製品回収工程S1-6を実行し、さらに、その製品をコンベア装置16に運搬する製品排出工程S1-7を実行する。
【0101】
第2溶接ロボット12が本溶接工程S2-5を実行している間、マテリアルハンドリングロボット13は、第1溶接ロボット11に対する第1部品の運搬工程S1-1、第2部品の運搬工程S1-2、および位置決め工程S1-3を実行することができる。第1溶接ロボット11は、マテリアルハンドリングロボット13が位置決め保持機能を実行している間に、仮溶接工程S1-4を実行する。
【0102】
第2溶接ロボット12が本溶接工程S2-5を完了し、かつ、第1溶接ロボット11が仮溶接工程S1-4を完了したとき、マテリアルハンドリングロボット13は、制御装置14の制御に応じて、第2溶接ロボット12が溶接した製品を取り出す製品回収工程S2-6を実行し、さらに、その製品をコンベア装置16に運搬する製品排出工程S2-7を実行する。
【0103】
以降は同様の工程を繰り返すことにより、マテリアルハンドリングロボット13は、第1溶接ロボット11および第2溶接ロボット12の溶接機能を交互にサポートすることができる。
【0104】
各溶接ロボット11,12の仮溶接工程S1-4,S2-4および本溶接工程S1-5,S2-5は、溶接対象物を加熱して溶接する時間だけでなく、その前後の時間を含んでもよい。例えば、溶接トーチの昇温に要する時間、溶接後に溶融金属の凝固に要する時間などが挙げられる。また、本溶接工程S1-5,S2-5は、溶接後の製品の温度がマテリアルハンドリングロボット13の取り出しを許容する程度に低下するまでの時間を含んでもよい。
【0105】
溶接作業は、高温となり得る器具および材料を取り扱う観点からも、比較的高度の熟練を要する。また、溶接作業の前後で温度を上昇または低下させるにも一定の時間を要する。そこで、溶接作業を溶接ロボット11,12に実行させると共に、マテリアルハンドリングロボット13に複数の溶接ロボット11,12の溶接作業をサポートさせることにより、作業効率の向上による低コスト化が可能になる。
【0106】
溶接対象物は、ロボット11,12,13による取り扱いが可能な材質、寸法などを有する物品、部品等であれば、特に限定されないが、例えば、配管部材であってもよい。これにより、配管部材の溶接の自動化が容易になる。他の種類の溶接対象物としては、配電部材、計装部材、標識部材、足場部材などが挙げられる。
【0107】
溶接自動化装置10は、溶接対象物の特定機能を有してもよい。溶接対象物の特定機能は、溶接機能を実行する前に、溶接対象物の種類を自動的に特定する機能である。これにより、溶接対象物が複数の種類を有する場合でも、溶接の自動化が容易になる。
【0108】
溶接対象物の特定機能を実行するとき、溶接自動化装置10は、溶接対象物の画像を撮影し、溶接対象物のサンプルを与えるデータベースと照合してもよい。また、溶接対象物の重量、寸法などのパラメータを計測することで、溶接対象物の種類を区別してもよい。
【0109】
溶接ロボット11,12が溶接対象物の特定機能を有してもよい。マテリアルハンドリングロボット13が溶接対象物の特定機能を有してもよい。セット治具15に溶接対象物の特定装置を取り付けることで、溶接対象物の特定機能を実現してもよい。溶接対象物の特定装置としては、センサ等の検知装置、カメラ等の撮像装置等が挙げられる。
【0110】
溶接ロボット11,12以外の要素が溶接対象物の特定機能を実行する場合、特定された溶接対象物の種類を制御装置14に送信してもよい。これにより、制御装置14は、特定された溶接対象物の種類に応じて、溶接ロボット11,12の溶接機能を制御することができる。
【0111】
配管部材の場合、配管の径、肉厚等に応じて、溶接対象物の種類が多数になる場合がある。また、配管の周囲に溶接される部材として、配管を所定の位置に取り付けるための各種金具類が挙げられる。配管部材をその付属部材と溶接するときには、流路に沿った軸線方向に溶接してもよい。
【0112】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、各実施形態における構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【0113】
特に図示しないが、実施例にならって、マテリアルハンドリングロボットが、3以上の溶接ロボットの溶接機能を順次にサポートするような制御も可能である。マテリアルハンドリングロボットが、特定の溶接ロボットのために運搬機能または位置決め保持機能を実行している間に、他の溶接ロボットが、本溶接機能を実行していてもよい。
【0114】
特定の溶接ロボットのための運搬機能は、特定の溶接ロボットに溶接対象物を供給する機能と、特定の溶接ロボットが溶接した製品を取り出す機能であってもよい。特定の溶接ロボットのための運搬機能は、さらに、特定の溶接ロボットが溶接した製品をコンベア装置に排出する機能を含んでもよい。特定の溶接ロボットのための位置決め保持機能は、特定の溶接ロボットに対して先に運搬された部品と、新たに運搬する部品との位置決め保持機能であってもよい。
【0115】
例えば、マテリアルハンドリングロボットが、第1~第3の溶接ロボットを順次にサポートする場合は、次のような制御も考えられる。
【0116】
(1)まず、マテリアルハンドリングロボットは、第1溶接ロボットに溶接対象物を運搬し、位置決め保持機能により、第1溶接ロボットの仮溶接機能をサポートする。
(2)第1溶接ロボットが本溶接機能の前半部を実行している間に、マテリアルハンドリングロボットは、第2溶接ロボットに溶接対象物を運搬し、位置決め保持機能により、第2溶接ロボットの仮溶接機能をサポートする。
(3)第1溶接ロボットが本溶接機能の後半部を実行し、第2溶接ロボットが本溶接機能の前半部を実行している間に、マテリアルハンドリングロボットは、第3溶接ロボットに溶接対象物を運搬し、位置決め保持機能により、第3溶接ロボットの仮溶接機能をサポートする。
【0117】
(4)第2溶接ロボットが本溶接機能の後半部を実行し、第3溶接ロボットが本溶接機能の前半部を実行している間に、マテリアルハンドリングロボットは、第1溶接ロボットが溶接した製品を運搬した後、第1溶接ロボットに溶接対象物を運搬し、位置決め保持機能により、第1溶接ロボットの仮溶接機能をサポートする。
(5)第3溶接ロボットが本溶接機能の後半部を実行し、第1溶接ロボットが本溶接機能の前半部を実行している間に、マテリアルハンドリングロボットは、第2溶接ロボットが溶接した製品を運搬した後、第2溶接ロボットに溶接対象物を運搬し、位置決め保持機能により、第2溶接ロボットの仮溶接機能をサポートする。
(6)第1溶接ロボットが本溶接機能の後半部を実行し、第2溶接ロボットが本溶接機能の前半部を実行している間に、マテリアルハンドリングロボットは、第3溶接ロボットが溶接した製品を運搬した後、第3溶接ロボットに溶接対象物を運搬し、位置決め保持機能により、第3溶接ロボットの仮溶接機能をサポートする。
【0118】
これ以降は(4)~(6)の工程を繰り返すことにより、マテリアルハンドリングロボットは、第1~第3溶接ロボットの溶接機能を順次にサポートすることができる。
【0119】
(1)~(3)の工程は、マテリアルハンドリングロボットが複数の溶接ロボットのそれぞれに対して、最初に溶接対象物の運搬機能を実行する過程である。これらの工程では、運搬対象外ロボットのうち、溶接対象物がセットされている溶接ロボットは溶接機能(より詳しくは本溶接機能)を実行するように制御される。運搬対象ロボットは、最初の溶接対象物がセットされた後に仮溶接機能を実行する。
【0120】
(4)~(6)の工程は、マテリアルハンドリングロボットが複数の溶接ロボットの全てに対して溶接対象物の運搬機能を実行した以降の過程である。これらの工程では、全ての溶接ロボットに溶接対象物がセットされている。運搬対象外ロボットはそれぞれ溶接機能(より詳しくは本溶接機能)を実行するように制御される。運搬対象ロボットは、先に溶接が完了した製品が搬出され、さらに次の溶接対象物がセットされた後に仮溶接機能を実行する。
【0121】
さらに溶接自動化装置10の運転を終了する前に、第1~第3の溶接ロボットの順に最後の溶接対象物を供給する場合は、次の(7)~(9)のような制御も考えられる。これらの工程では、運搬対象外ロボットのうち、溶接対象物がセットされている溶接ロボットは溶接機能(より詳しくは本溶接機能)を実行するように制御される。運搬対象ロボットは、最後に溶接した製品が搬出されると、運転を終了する。
【0122】
(7)第2溶接ロボットが本溶接機能の後半部を実行し、第3溶接ロボットが本溶接機能の前半部を実行している間に、マテリアルハンドリングロボットは、第1溶接ロボットが最後に溶接した製品を運搬する。第1溶接ロボットは、溶接対象物がセットされていないので、運転を終了することができる。
(8)第3溶接ロボットが本溶接機能の後半部を実行している間に、マテリアルハンドリングロボットは、第2溶接ロボットが最後に溶接した製品を運搬する。第2溶接ロボットは、溶接対象物がセットされていないので、運転を終了することができる。
(9)最後にマテリアルハンドリングロボットは、第3溶接ロボットが最後に溶接した製品を運搬する。第3溶接ロボットは、溶接対象物がセットされていないので、運転を終了することができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明により溶接される製品の用途は特に限定されないが、資源開発、プラント建設等の現場における各種の部材の製造に適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
10…溶接自動化装置、11,12…溶接ロボット、11a,12a…溶接ロボットのアーム、11b,12b…溶接ロボットのロボット本体、11c,12c…溶接ロボットの制御部、13…マテリアルハンドリングロボット、13a…マテリアルハンドリングロボットのアーム、13b…マテリアルハンドリングロボットのロボット本体、13c…マテリアルハンドリングロボットの制御部、14…制御装置、15…セット治具、16…コンベア装置、S1-1,S2-1…第1部品の運搬工程、S1-2,S2-2…第2部品の運搬工程、S1-3,S2-3…位置決め工程、S1-4,S2-4…仮溶接工程、S1-5,S2-5…本溶接工程、S1-6,S2-6…製品回収工程、S1-7,S2-7…製品排出工程。
図1
図2