(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】皮膚外用剤組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/34 20060101AFI20240925BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240925BHJP
A61K 8/31 20060101ALI20240925BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20240925BHJP
A61Q 19/10 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A61K8/34
A61K8/81
A61K8/31
A61K8/37
A61Q19/10
(21)【出願番号】P 2020113504
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】399091120
【氏名又は名称】株式会社ピカソ美化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】八木 伸夫
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 悠生
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-037531(JP,A)
【文献】特開2008-231010(JP,A)
【文献】特表2022-520309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0333340(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0023592(US,A1)
【文献】70% Alcohol Gel, ID#7638071,Mintel GNPD [online],2020年5月,[検索日:2024年2月5日],2020年05月
【文献】Gentle Exfoliator, ID#4276503,Mintel GNPD [online],2016年9月,[検索日:2024年2月5日]
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
A61P 31/02
A61L 2/18
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エタノール、(B)油剤、(C)ポリアクリレートクロスポリマー-6
及び(D)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーを含有してなる皮膚外用剤組成物で
あって、
前記皮膚外用剤組成物における(A)エタノールの含有量が45~65質量%であり、
前記皮膚外用剤組成物における(C)ポリアクリレートクロスポリマー-6の含有量が0.3~2.5質量%であり、
前記(B)油剤としてオリーブ果実油、流動パラフィン(ミネラルオイル)、ワセリン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル及びトリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)からなる群から選ばれた少なくとも1種の油剤が用いられていることを特徴とする皮膚外用剤組成物。
【請求項2】
洗い流さないことを特徴とする請求項
1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項4】
前記皮膚外用剤組成物における(D)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーの含有量が0.3~2質量%である請求項1~3の何れかに記載の皮膚外用剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
身体に適用する外用剤に求められる主な機能の一つに潤いの付与がある。このような保湿効果は、肌が乾燥し易い冬場において特に期待されている。しかし、皮膚外用剤の中でも、手や指先などの消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄に用いる皮膚外用剤においては、泡立てて汚れや菌等を洗い落とし、使用後の肌に潤いを付与する従来の皮膚外用剤に置き換わり、近年では、手軽に消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄ができ、かつ、速乾性に優れた効果を発揮する洗い流し不要の皮膚外用剤が主流となりつつある。
【0003】
このような簡便な皮膚外用剤の多くは、塗布後の速乾性を高めるとともに、消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄といった効果を十分に発揮させるべく、エタノールが高配合されている(例えば、特許文献1~4を参照)。しかしながら、エタノールを高配合した場合には、消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄といった効果に優れる反面、塗布時に液垂れが生じ易く、使用感が悪くなるといった問題がある。また、エタノールによる過度な脱脂により、使用後の肌がカサつき、肌荒れを引き起こし易くなり、肌状態を悪化させるといった問題もある。
【0004】
これら種々の問題を解決するために、肌のカサつきや肌荒れを改善し、十分な潤いを付与することのできる量の油分を配合すると、消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄といった効果が十分に得られ難くなるだけでなく、速乾性が著しく悪化し、使用後の肌にヌルつきやベタつきが生じてしまうといった問題がある。さらに、油分の配合量しだいでは製剤中に安定に配合することができず、分離や離液が生じ易くなり、製剤安定性に劣るといった問題も生じる。そのため、速乾性と、肌状態の悪化を抑える潤いを付与する効果の双方を充足する皮膚外用剤を開発することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-143878号公報
【文献】特開2011-219410号公報
【文献】特開2014-224160号公報
【文献】特開2015-078171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、塗布後の速乾性に優れるだけでなく、過度な脱脂を抑えて最適な潤いを付与することができる、製剤安定性に優れた皮膚外用剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、(A)エタノール、(B)油剤、(C)ポリアクリレートクロスポリマー-6および(D)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーを含有してなる皮膚外用剤組成物を提供する。
【0008】
上記成分(A)の含有量が、40~70質量%であることが好ましい。
【0009】
上記成分(B)が、油脂、ロウ類、炭化水素油および脂肪酸エステル油から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0010】
上記皮膚外用剤組成物は、洗い流さないことが好ましい。
【0011】
上記皮膚外用剤組成物は、手指の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の皮膚外用剤組成物は、上記構成要件を満たすことにより、製剤の分離や離液がなく、格段に優れた製剤安定性を発揮させることができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の皮膚外用剤組成物は、塗布時の垂れ落ちがなく、延展性が良好であるとともに、塗布後の速乾性に優れた効果を発揮する。加えて、本発明の皮膚外用剤組成物は、速乾性を阻害することなく、肌にヌルつきやベタつきのない最適な潤いを付与することができ、過度な脱脂を抑えることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の皮膚外用剤組成物は、(A)エタノール、(B)油剤、(C)ポリアクリレートクロスポリマー-6および(D)(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーを含有することを特徴とする。
【0015】
以下、本発明の皮膚外用剤組成物に用いられる各成分の詳細を説明する。
【0016】
[成分(A):エタノール]
上記成分(A)は、エタノールである。本発明では、成分(A)を用いることにより、塗布後の速乾性を高めることができるとともに、消毒効果、殺菌効果、殺ウイルス効果、又は洗浄効果を発揮させることができる。
【0017】
本発明の皮膚外用剤組成物中の成分(A)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、速乾性を付与する観点、並びに消毒効果、殺菌効果、殺ウイルス効果又は洗浄効果を発揮させる観点から、組成物100質量%中、40質量%以上が好ましく、より好ましくは45質量%以上である。また、過度な脱脂を抑える観点、並びに製剤安定性の観点から、組成物100質量%中、70質量%以下が好ましく、より好ましくは65質量%以下である。これらの観点から、成分(A)の含有量は、好ましくは40~70質量%、より好ましくは45~65質量%である。なお、上記成分(A)の含有量は、純分に換算した量である。
【0018】
[成分(B):油剤]
上記(B)成分は、油剤である。本発明では、成分(B)を用いることにより、塗布後の肌に最適な潤いを付与することができ、過度な脱脂による肌のカサつきや肌荒れを防ぐことができる。
【0019】
用いられる成分(B)は、室温で液状の油剤であっても、室温でペースト状の油剤であっても、室温で固形の油剤であっても特に限定されずに用いることができ、例えば、油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、脂肪酸エステル油、シリコーン油、ポリオキシプロピレンブチルエーテルなどが挙げられる。これら成分(B)は1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。なお、本発明において「室温」とは、1~30℃の温度を言う。
【0020】
具体的な油脂としては、例えば、ヒマワリ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、オリーブ果実油、ヤシ油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ホホバ油、椿油、ミンク油、シアバターなどが挙げられる。
【0021】
具体的なロウ類としては、例えば、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ミツロウ、コメヌカロウ、セラックロウ、鯨ロウ、ラノリンなどが挙げられる。
【0022】
具体的な炭化水素油としては、例えば、イソドデカン、イソヘキサデカン、イソヘキサドデカン、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、合成スクワラン、植物性スクワラン、スクワラン、セレシン、パラフィン、流動パラフィン(ミネラルオイル)、流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレン末、ポリエチレンワックス、ワセリン、フィッシャー・トロプシュワックスなどが挙げられる。
【0023】
具体的な高級脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ウンデシレン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
【0024】
具体的な高級アルコールとしては、例えば、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、セトステアリルアルコール、オクチルデカノール、デシルテトラデカノールなどが挙げられる。
【0025】
具体的な脂肪酸エステル油としては、例えば、ネオペンタン酸イソデシル、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、オレイン酸オレイル、ミリスチン酸オクチルドデシル、オレイン酸オクチルドデシル、イソステアリン酸エチル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソセチル、イソステアリン酸オクチルドデシル、2-エチルヘキサン酸セチル、2-エチルヘキサン酸セトステアリル、トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、トリイソパルミチン酸グリセリル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸イソセチル、オクタン酸イソステアリル、ジオレイン酸エチレングリコール、ジカプリル酸プロピレングリコール、ジカプリン酸プロピレングリコール、ジ(カプリル/カプリン酸)プロピレングリコール、イソステアリン酸プロピレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ヒドロキシステアリン酸水添ヒマシ油、テトラミリスチン酸ペンタエリスリチル、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、テトラ(ヒドロキシステアリン酸/イソステアリン酸)ジペンタエリスリチル、ヘキサヒドロキシステアリン酸ジペンタエリスリチル、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルなどが挙げられる。
【0026】
具体的なシリコーン油としては、例えば、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチコノール、25℃における粘度が例えば1mPa・s以上10mPa・s未満のジメチルポリシロキサン、25℃における粘度が例えば10mPa・s以上6,000mPa・s未満のジメチルポリシロキサン、25℃における粘度が例えば6,000mPa・s以上20,000,000mPa・s以下であり、かつ数平均重合度が650以上である高重合ジメチルポリシロキサンなど鎖状シリコーン油;メチルシクロポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサンなどの環状シリコーン油;アミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、アミノエチルアミノプロピルメチルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体などアミノ変性シリコーン油;カルボキシ変性シリコーン油、脂肪酸エステル変性シリコーン油、アルコール変性シリコーン油、エポキシ変性シリコーン油、フッ素変性シリコーン油、アルキル変性シリコーン油などが挙げられる。
【0027】
ポリオキシプロピレンブチルエーテルとしては、酸化プロピレンの平均重合度が12~52のポリオキシプロピレンブチルエーテルが例示でき、具体的には、例えば、ポリオキシプロピレンブチルエーテル(12P.O.)、ポリオキシプロピレンブチルエーテル(17P.O.)、ポリオキシプロピレンブチルエーテル(20P.O.)、ポリオキシプロピレンブチルエーテル(24P.O.)、ポリオキシプロピレンブチルエーテル(33P.O.)、ポリオキシプロピレンブチルエーテル(40P.O.)、ポリオキシプロピレンブチルエーテル(52P.O.)などが挙げられる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤組成物においては、速乾性に悪影響を及ぼさずに、肌に最適な潤いを付与する観点から、上記した成分(B)の中でも、油脂、ロウ類、炭化水素油および脂肪酸エステル油から選ばれる少なくとも1種を好適に用いることができる。これら好適な成分(B)の中でも、オリーブ果実油、ラノリン、流動パラフィン(ミネラルオイル)、ワセリン、ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチルおよびトリ2-エチルヘキサン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)の群から選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。なお、成分(B)は、市販品を用いることができる。
【0029】
本発明の皮膚外用剤組成物中の成分(B)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、ヌルつきやベタつきのないしっとりとした潤いを付与する観点から、組成物100質量%中、1質量%以上が好ましく、より好ましくは2質量%以上である。また、ヌルつきやベタつきを抑える観点、並びに製剤安定性の観点から、組成物100質量%中、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。これらの観点から、成分(B)の含有量は、好ましくは1~15質量%、より好ましくは2~10質量%である。なお、上記成分(B)の含有量は、純分に換算した量であり、本発明の皮膚外用剤組成物中に配合される全ての成分(B)の含有量の合計量である。
【0030】
[成分(C):ポリアクリレートクロスポリマー-6]
上記成分(C)は、ポリアクリレートクロスポリマー-6である。本発明では、成分(C)を用いることにより、製剤の分離や離液がなく、優れた製剤安定性を発揮させることができる。加えて、塗布時の液垂れがなく、優れた延展性を発揮させることができる。なお、本発明において「延展性」とは、肌上で均一に延び広がることを言う。
【0031】
上記成分(C)は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第2巻,CTFA,2014年,p.2683):POLYACRYLATE CROSSPOLYMER-6(ポリアクリレートクロスポリマー-6)で表記される、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウムと、ジメチルアクリルアミドと、メタクリル酸ラウリルと、メタクリル酸ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテルを必須のモノマー成分とし、トリアクリル酸トリメチロールプロパンで架橋したクロスポリマーである。
【0032】
なお、上記成分(C)は市販品を用いることができる。POLYACRYLATE CROSSPOLYMER-6の市販品としては、例えば、SEPIMAX ZEN(商品名,SEPPIC社製)などが挙げられる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤組成物中の成分(C)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、製剤安定性を付与する観点、並びに塗布時の垂れ落ちを抑制する観点から、組成物100質量%中、0.3質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。また、延展性の観点から、組成物100質量%中、2.5質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下である。これらの観点から、成分(C)の含有量は、好ましくは0.3~2.5質量%、より好ましくは0.5~2質量%である。なお、上記成分(C)の含有量は、純分に換算した量である。
【0034】
[成分(D):(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー]
上記成分(D)は、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーである。本発明では、成分(D)を用いることにより、製剤の分離や離液がなく、優れた製剤安定性を発揮させることができる。加えて、塗布時の液垂れがなく、優れた延展性を発揮させることができる。
【0035】
上記成分(D)は、INCI名(International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,第15版,第1巻,CTFA,2014年,p.194):AMMONIUM ACRYLOYLDIMETHYLTAURATE/VP COPOLYMERで表記される、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウムと、ビニルピロリドンの共重合体である。
【0036】
なお、上記成分(D)は市販品を用いることができる。(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーの市販品としては、例えば、Aristoflex AVC(商品名,クラリアントジャパン社製)などが挙げられる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤組成物中の成分(D)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、製剤安定性を付与する観点、並びに塗布時の垂れ落ちを抑制する観点から、組成物100質量%中、0.3質量%以上が好ましく、より好ましくは0.5質量%以上である。また、延展性の観点から、組成物100質量%中、2質量%以下が好ましく、より好ましくは1.5質量%以下である。これらの観点から、成分(D)の含有量は、好ましくは0.3~2質量%、より好ましくは0.5~1.5質量%である。なお、上記成分(D)の含有量は、純分に換算した量である。
【0038】
本発明の皮膚外用剤組成物では、格段に優れた製剤安定性を発揮させ、塗布時の延展性を更に良好とする観点から、上記した成分(C)の含有量と成分(D)の含有量の質量含有比(C/D)が、0.5~2.5の範囲を満たすことが好ましく、0.7~2の範囲を満たすことがより好ましい。
【0039】
本発明の皮膚外用剤組成物は、上記した如く、成分(C)であるポリアクリレートクロスポリマー-6と、成分(D)である(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーとを併用して用いることにより、格段に優れた製剤安定性と、格段に優れた延展性を発揮させることができ、延いては、速乾性と最適な潤いの双方を兼ね備える皮膚外用剤組成物を提供することが可能となる。
【0040】
本発明の皮膚外用剤組成物には、上記した成分(A)、成分(B)、成分(C)および成分(D)に加えて、消毒、殺菌、殺ウイルスといった効果をより一層高める観点から、成分(E)として殺菌成分および/又は殺ウイルス成分(ただし、上記成分(A)を除く)を含有させることができる。
【0041】
[成分(E):殺菌成分および/又は殺ウイルス成分]
用いられる成分(E)は、化粧品、医薬部外品、指定医薬部外品、医薬品、雑貨に配合することができ、かつ、殺菌作用および/又は殺ウイルス作用を奏する成分であれば特に限定されないが、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化リゾチウム、ハロカルバン、トリクロロカルバニリド、塩酸クロルヘキシジン、イソプロピルメチルフェノール、フェノールスルホン酸アルミニウム、トリクロサン、グルコン酸クロルヘキシジン、ミョウバン、酸化チタン、酸化銀、銀担持ゼオライト、銀担持シリカ、クワエキス、ユーカリエキス、ローズマリーエキス、緑茶エキス(チャ葉エキス)、ブドウ種子エキス、グレープフルーツ種子エキスなどが挙げられる。これら成分(E)は1種を単独で用いても良く、2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。
【0042】
本発明の皮膚外用剤組成物中の成分(E)の含有量は、所望の効果が十分に発揮されるのであれば特に限定されないが、通常、消毒効果、殺菌効果、殺ウイルス効果を更に高める観点から、組成物100質量%中、0.0001質量%以上が好ましく、より好ましくは0.001質量%以上である。また、製剤安定性の観点から、組成物100質量%中、5質量%以下が好ましく、より好ましくは4質量%以下である。これらの観点から、成分(E)の含有量は、好ましくは0.0001~5質量%、より好ましくは0.001~4質量%である。
【0043】
[その他成分]
本発明の皮膚外用剤組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、上記した成分の他に、例えば、界面活性剤、多価アルコール、皮膜形成剤、清涼剤、香料などを目的に応じて適宜配合することができる。
【0044】
本発明の皮膚外用剤組成物の残部には精製水が用いられる。精製水の含有量は、特に限定されないが、速乾性の観点、並びに潤い付与の観点から、20~50質量%であることが好ましく、より好ましくは25~45質量%である。
【0045】
本発明の皮膚外用剤組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、公知の方法により製造することができる。具体的には、例えば、上記各構成成分を混合し、公知の方法、例えば、ディスパーミキサー、ホモミキサー、ディスパーミルなどを用いて攪拌する方法が挙げられるが、本発明はこれら製造方法にのみ限定されるものではない。
【0046】
本発明の皮膚外用剤組成物の性状は、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、塗布時の液垂れを抑える観点から、ジェル状、ジェルクリーム状、若しくはクリーム状であることが好ましい。また、粘度は、特に限定されないが、10,000~19,000mPa・sの範囲内であることが好ましい。
【0047】
本発明の皮膚外用剤組成物は、洗い流しを行っても、洗い流しを行わなくとも、所望の効果が十分に付与されるのであれば特に限定されないが、塗布後の速乾性に優れ、かつ、速乾性を阻害することなく肌にヌルつきやベタつきのない最適な潤いを付与することができることから、洗い流しを行わずに使用することが望ましい。
【0048】
本発明の皮膚外用剤組成物は、上記した成分(A)であるエタノールの効果を最大限に発揮させる観点、並びに使用感に優れる観点から、手指の消毒、殺菌、殺ウイルス又は洗浄に用いることが最も好ましい。また、本発明の皮膚外用剤組成物は、化粧品、医薬部外品、指定医薬部外品、医薬品、雑貨の何れの形態であっても良い。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。なお、配合量は、特記しない限り「質量%」を表す。また、評価はすべて、20℃、湿度50%の恒温恒湿の一定条件下で実施した。
【0050】
実施例および比較例では、下記の成分を用いた。
【0051】
[成分(B)]
オリーブ果実油〔商品名;NIKKOL オリーブ油,日光ケミカルズ社製〕
ラノリン〔商品名;CRODALAN SWL-SO-(JP),クローダジャパン社製〕
流動パラフィン(ミネラルオイル)〔商品名;モレスコホワイト P-70,MORESCO社製〕
ワセリン〔商品名;CROLATUM V-SO-(JP),クローダジャパン社製〕
ヘキサ(ヒドロキシステアリン酸/ステアリン酸/ロジン酸)ジペンタエリスリチル〔商品名;コスモール168ARV,日清オイリオ社製〕
トリ2-エチルヘキサン酸グリセリル〔商品名;MYRITOL GTEH,BASFジャパン社製〕
【0052】
[成分(C)]
ポリアクリレートクロスポリマー-6(POLYACRYLATE CROSSPOLYMER-6)〔商品名;SEPIMAX ZEN,SEPPIC社製〕
【0053】
[成分(D)]
(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー〔商品名;Aristoflex AVC,クラリアントジャパン社製〕
【0054】
[成分(E)]
緑茶エキス〔商品名;緑茶抽出液BG,丸善製薬社製〕
ブドウ種子エキス〔商品名;ブドウ種子エキス,サビンサジャパンコーポレーション社製〕
【0055】
(試料の調製1)
表1および表2に記した組成に従い、実施例1~7および比較例1~7の皮膚外用剤組成物を常法に準じて調製し、下記評価に供した。結果を表1および表2に併記する。なお、表中の配合量は、全て純分に換算した値である。
【0056】
(試験例1:製剤安定性の評価)
実施例および比較例で得られた各試料を、140mL容の透明ガラス容器にそれぞれ封入し、40℃の恒温槽に夫々2週間保存したときの剤の状態を目視観察して、以下の評価基準に従って評価した。
【0057】
<製剤安定性の評価基準>
○(良好):分離や離液が認められず、製造直後の性状を維持している
△(不十分):若干の分離や離液が認められるが、性状を維持している
×(不良):性状を維持していない、又は明らかな分離や離液が認められる
【0058】
(試験例2:塗布時の「垂れ落ち」と「延展性」の評価)
官能評価パネル10名により、実施例および比較例で得られた各試料1gを、左右何れか一方の手の平に塗布後、残る一方の手を用いてすり合わせるように両手の平、甲、指先に馴染ませてもらい、その時の「垂れ落ち」「延展性」について下記評価基準に従い官能評価した。
なお、試験例1の製剤安定性の評価にて「×(不良)」の試料については、試験に供することができないため、下記評価試験を実施していない。
【0059】
<垂れ落ちの評価基準>
○(良好):10名中8名以上が、手からの垂れ落ちがないと回答
△(不十分):10名中5~7名が、手からの垂れ落ちがないと回答
×(不良):10名中4名以下が、手からの垂れ落ちがないと回答
【0060】
<延展性の評価基準>
○(良好):10名中8名以上が、延展性に優れる(均一に延び広がる)と回答
△(不十分):10名中5~7名が、延展性に優れる(均一に延び広がる)と回答
×(不良):10名中4名以下が、延展性に優れる(均一に延び広がる)と回答
【0061】
(試験例3:速乾性の評価)
上記試験例2のパネルと同じ評価パネル10名により、試験例2の評価直後の肌状態について下記評価基準に従い官能評価した。
なお、試験例1の製剤安定性の評価にて「×(不良)」の試料については、試験に供することができないため、下記評価試験を実施していない。
【0062】
<速乾性の評価基準>
○(良好):10名中8名以上が、延展時の濡れた感じがなく、乾くのが早い(速乾性に優れる)と回答
△(不十分):10名中5~7名が、延展時の濡れた感じがなく、乾くのが早い(速乾性に優れる)と回答
×(不良):10名中4名以下が、延展時の濡れた感じがなく、乾くのが早い(速乾性に優れる)と回答
【0063】
(試験例4:肌状態の評価)
上記試験例2のパネルと同じ評価パネル10名により、試験例3の評価1分後の肌状態について下記評価基準に従い官能評価した。
なお、試験例1の製剤安定性の評価にて「×(不良)」の試料については、試験に供することができないため、下記評価試験を実施していない。
【0064】
<肌状態の評価基準>
○(良好):10名中8名以上が、カサカサ感(過度に脱脂された感)がなく、ヌルつきやベタつきのないしっとりとした潤いがあると回答
△(不十分):10名中5~7名が、カサカサ感(過度に脱脂された感)がなく、ヌルつきやベタつきのないしっとりとした潤いがあると回答
×(不良):10名中4名以下が、カサカサ感(過度に脱脂された感)がなく、ヌルつきやベタつきのないしっとりとした潤いがあると回答
【0065】
【0066】
【0067】
表1および表2に示された結果から、各実施例で得られた皮膚外用剤組成物は、各比較例で得られたものと対比して、製剤の分離や離液がなく、格段に優れた製剤安定性を発揮していることが分かる。また、塗布時の液垂れがなく、延展性が良好であり、塗布後の速乾性に優れた効果を発揮していることも分かる。加えて、速乾性が良いにもかかわらず、過度の脱脂を抑え、肌にヌルつきやベタつきのないしっとりとした潤いが付与されていることも分かる。
【0068】
これら結果からも明らかな通り、本発明の皮膚外用剤組成物は、従来の試みでは困難であった、速乾性と、肌状態の悪化を抑えることのできる最適な潤いを付与するという双方の効果に十分に満足のいくものであることが分かる。