(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】梱包緩衝材の合わせ面固定構造
(51)【国際特許分類】
B65D 81/02 20060101AFI20240925BHJP
【FI】
B65D81/02 200
(21)【出願番号】P 2020210769
(22)【出願日】2020-12-18
【審査請求日】2023-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000100746
【氏名又は名称】アイコム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】水木 健二
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-143294(JP,A)
【文献】特開2006-131289(JP,A)
【文献】特開2011-240949(JP,A)
【文献】特開2008-230671(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0060537(US,A1)
【文献】中国実用新案第212048692(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/50
B65D 81/00-81/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの内壁と、それに連なる複数の側壁と、前記内壁の外側に重ね合わされる外壁と、により筒状又は箱状に形成された梱包緩衝材の合わせ面固定構造であって、
前記外壁の一端部から延設された部材に台形状の切込みにより形成した押込み部と、
前記内壁に連続する1つの側壁に、高さ方向上下に分断可能な形状に切込みされた切込み部と、を備え、
前記押込み部が前記切込み部に押し込まれたとき、
前記押込み部に対し、前記切込み部の上下に分断された部位の上部が、前記押込み部に対して楔として作用し、
前記切込み部の上下に分断された部位の下部が、前記押込み部に沿って押し込まれ、元に戻ろうとすることで前記押込み部を前記切込み部上部に向けて押し当てることで、前記切込み部の上下に分断された部位が前記押込み部の抜け止めをする規制片となる、ことを特徴とする梱包緩衝材の合わせ面固定構造。
【請求項2】
前記押込み部は、前記外壁の一端部側を下底とし、該下底よりも長い上底を持つ台形状に形成され、
前記切込み部は、高さ方向上方が広がったH字形状の切込みにより形成されていることを特徴とする請求項1記載の梱包緩衝材の合わせ面固定構造。
【請求項3】
前記筒状又は箱状に形成された梱包緩衝材は、前記外壁の一端部から延設された部材を共通の底壁として一対連立して設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の梱包緩衝材の合わせ面固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、梱包緩衝材の合わせ面を固定する固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の梱包緩衝材にあっては、筒状又は箱状に形成された段ボール箱でもって商品などの周囲を囲んで保護する。このような梱包緩衝材の筒状部又は箱状部の緩衝材の合わせ面は、段ボール自身の反発を押さえて形状を保持するため、テープ類や接着剤などを用いて固定する必要があった。この場合、用済み後の処理時に有害ガスやダイオキシンを発生する問題がある。そこで、テープ類や接着剤などを用いることなく筒状部又は箱状部の合わせ面を固定するロック構造が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に示されるロック構造においては、包装箱の筒状部の合わせ面が内側壁と外側壁とから成り、内側壁から天壁に亘って開口した連結穴に、外側壁に形成した差込片を折曲状態で差し込み、天壁に設けた規制片を前記折曲状態の差込片に当接させることで、内側壁と外側壁とが重ね合わせられた状態を保持するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に示されるようなロック構造は、開口した連結穴を有していることから、包装箱を製造するために、切込みを入れた後に、不要な部分を取り除く工程が必要であり、工程の増加や段ボール屑が生じる。また、差込片を規制片で押さえるだけのロック構造であり、規制片が楔として機能しないので、振動等でロックが解除され易い問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するものであり、製造時に筒状緩衝材の合わせ面の近くに切込みを入れるだけで、不要な部分を取り除く工程等が不要となり、また押込み部を切込み部に押込むだけの簡単な作業で、合わせ面を強固に固定することができる、梱包緩衝材の合わせ面固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも一つの内壁と、それに連なる複数の側壁と、前記内壁の外側に重ね合わされる外壁と、により筒状又は箱状に形成された梱包緩衝材の合わせ面固定構造であって、
前記外壁の一端部から延設された部材に台形状の切込みにより形成した押込み部と、
前記内壁に連続する1つの側壁に、高さ方向上下に分断可能な形状に切込みされた切込み部と、を備え、
前記押込み部が前記切込み部に押し込まれたとき、前記押込み部に対し、前記切込み部の上下に分断された部位の上部が、前記押込み部に対して楔として作用し、
前記切込み部の上下に分断された部位の下部が、前記押込み部に沿って押し込まれ、元に戻ろうとすることで前記押込み部を前記切込み部上部に向けて押し当てることで、前記切込み部の上下に分断された部位が前記押込み部の抜け止めをする規制片となる、ことを特徴とするものである。
【0008】
上記梱包緩衝材の合わせ面固定構造において、前記押込み部は、前記外壁の一端部側を下底とし、該下底よりも長い上底を持つ台形状に形成され、前記切込み部は、高さ方向上方が広がったH字形状の切込みにより形成されているものが望ましい。
【0009】
上記梱包緩衝材の合わせ面固定構造において、前記筒状又は箱状に形成された梱包緩衝材は、前記外壁の一端部から延設された部材を共通の底壁として一対連立して設けられているものが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、緩衝材の合わせ面の近くに切込み部と押込み部とを切って構成しているので、固定構造を設けるために段ボールを刳り貫く必要がなく、抜き工程が不要となる。また、作業者は押込み部を手指で切込み部に押込むだけの簡単な作業で、合わせ面を強固にロックすることができ、しかも一旦ロックすると外れにくく緩みなども発生しにくいため、製造作業現場でも扱いやすく作業効率の面でも有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装箱を示す斜視図。
【
図4】(a)は同包装箱の合わせ面固定前の斜視図、(b)は同包装箱の合わせ面固定途上の斜視図、(c)は同包装箱の合わせ面固定後の斜視図。
【
図5】(a)は同包装箱の合わせ面固定前の断面図、(b)は同包装箱の合わせ面固定後の断面図。
【
図6】(a)(b)は同包装箱の合わせ面を固定する作業要領を示す斜視図。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る包装箱を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(一実施形態の構成)
以下、本発明の一実施形態に係る包装箱について図面を参照して説明する。
図1は実施形態に係る包装箱1の外観を示す。
図2は、包装箱1を構成する段ボール2の展開状態を示す。
図1において、包装箱1は、梱包緩衝材である1枚の段ボール2(
図2)を折り畳んで形成され、長さ方向(D)に細長い角筒状に形成された筒状部1A,1Bを備える。筒状部1A,1Bの各々は、梱包緩衝材の合わせ面固定構造10を備える。なお、
図1の矢印Dは包装箱1の長さ方向を、矢印Hは高さ方向を、矢印Wは幅方向を示す。
【0013】
筒状部1A,1Bは、包装箱1の幅方向(W)の両側に左右対称に一対、連立して設けられている。包装箱1は、例えば電子機器を収納するために用いられる場合、筒状部1A,1Bの各内部空間は付属品等を収納し、筒状部1A,1Bの間の空間は電子機器本体を収納する。なお、包装箱1は、必ずしも本実施例のように連立した一対の筒状部1A,1Bを備えている必要はなく、いずれか1つだけでも構わない。以下では一方の筒状部1Aを主に説明する。
【0014】
筒状部1Aは、一つの内壁11と、それに順次連なる側壁12、天壁13、及び他側壁14と、内壁11の外側に重ね合わされる外壁15とにより筒状(本実施形態では角筒状)に形成されている。側壁12、天壁13、及び他側壁14は、いずれも側壁として位置付けられるものであり、筒状となるには、重ね合わされる内壁11と外壁15の他に、2個以上の側壁があればよい。本実施形態では、筒状部1Aと筒状部1Bとを一対連立して構成するため、外壁15は、その一端部から延設されて共通の底壁として設けられている。内壁11と外壁15の重ね合わせ範囲をW1で示す。
【0015】
合わせ面固定構造10は、内壁11と外壁15の重ね合わせを固定するためのものであり、外壁15の一端部から延設された部材(底壁)に切込みにより形成した押込み部16と、内壁11に連続する1つの側壁12に形成した切込み部17と、を備えている。押込み部16は、台形状の切込み16aにより構成される。但し、台形の下底16b(
図2参照)は繋ぎ部であり、切り込まれない。切込み部17は、側壁12に高さ方向上下に分断可能な形状の切込み17aにより構成される。外壁15の一端部とは、内壁11から側壁12が立ち上がる矢印Cで示す位置の、罫線L1に平行な長さ方向Dに沿う部位である。
【0016】
切込み部17は、内壁11からの側壁12の立ち上がり部位近くで長さ方向Dの中央付近に設けられ、押込み部16は、切込み部17に対応する位置に設けられる。押込み部16が、切込み部17に押し込まれたとき、切込み部17は高さ方向上下に分断され、この上下に分断された部位が、押込み部16の抜け止めをする規制片となり、合わせ面を固定する。なお、
図1は、合わせ面固定構造10が合わせ面を固定する前の状態を示している。
【0017】
図2において、段ボール2は、段ボールシートをダイカッター等で矩形状に打ち抜くことにより形成される。段ボール2は、波状の中芯2a(一部破断して示す)に表ライナーと裏ライナーとを貼り合わせたものである。段ボール2は、一端側から順次連なる内壁11、側壁12、天壁13、他側壁14、及び外壁15の各領域(筒状部1Aとなる)を有し、さらに、この外壁15から他端側に向かって他側壁14、天壁13、側壁12、及び内壁11の各領域(筒状部1Bとなる)を有している。各領域の境界には、破線で示す谷折り用の罫線L1~L8が、段ボール2を厚み方向に潰すことにより形成される。このような段ボール2により、上述の一対連立して設けられる筒状部1A,1Bを備えた包装箱1を組み立てることができる。
【0018】
筒状部1A,1B(
図1参照)の各押込み部16は、共通の底壁となっている外壁15に台形状の切込み16aにより線対称的に設けられる。切込み16aの台形状の下底16bは、切り込まれることなく繋ぎ部となり、他側壁14と外壁15との境界である罫線L4,L5から、内壁11と外壁15の重ね合わせ範囲W1だけ離れた矢印Cで示す位置に設けられる。切込み部17は、切込み17aの下端が罫線L1,L8に掛かるように設けられる。なお、切込み16aと切込み17aの形成、及び罫線L1~L8の潰しは、段ボールシートを打ち抜く際に同時に行われる。
【0019】
(作用効果)
上述した包装箱1によれば、内壁11と外壁15との合わせ面固定構造10を構成する切込み部17と押込み部16とを切込みにより構成しているので、合わせ面固定構造10を設けるために段ボールを刳り貫く必要がなく、抜き工程が不要となる。また、作業者は押込み部16を手指で切込み部17に押込むだけの簡単な作業で、合わせ面を強固にロックすることができ、一旦ロックすると外れにくく、緩みなども発生しにくいため、製造作業現場でも扱いやすく作業効率の面でも有利となる。
【0020】
従来の接着剤を用いて固定する構造では、接着剤の硬化に時間がかかるが、本実施形態では手指で押し込むだけで瞬時に固定できる。テープ類を用いて固定した場合、梱包材がゴミとして廃棄されるとき、テープ類を剥がして廃棄しないと焼却時に有毒ガスを発生するが、本実施形態では、テープ類、接着剤を用いないので、環境にも優しくクリーンでリサイクルにも適し、また、刃を入れるだけで抜きの必要がなく、緩衝材作成時の段ボール屑の削減に貢献できる。本実施形態では、一箇所の固定で従来構成の二箇所分レベルの固定力が得られ、また、省スペース化が図れ、また、合わせ面同士のアソビが少なく多用途での使用が可能となる。
【0021】
(段ボールの詳細構成)
図3は、段ボール2の一部を拡大して示している。
図3において、外壁15に設けられる押込み部16の切込み16aは、繋ぎ部となる下底16bと、下底16bよりも長い上底16cを持つ台形状に形成される。切り込みを入れるのは、上底16cとその両端の斜辺である。切込み部17の切込み17aは、高さ方向上方が広がったH字形状に形成され、H字の横辺17bの上部17cと、下部17dとに分断可能とされている。H字の下端が罫線L1に掛かるように設けられている。
【0022】
ここに、押込み部16の台形状の切込み16aの台形高さと、切込み部17のH字形状の切込み17aの高さとは、略同等とされている。また、台形の下底16bと、H字の下端とは、略同等の幅寸法とされている。台形の上底16cは、H字の横辺17bの寸法よりも大きく、H字の広がった上端の幅寸法と同等とされている。この構成により、押込み部16を切込み部17に押し込んだとき、切込み部17は容易に高さ方向上下に分断され、かつ押込み部16が分断された切込み部17内に篏合して抜け止め(ロック)される。
【0023】
(合わせ面固定構造)
図4(a)~(c)は、合わせ面固定構造10により合わせ面を固定する様子を示す。
図4(a)は固定前、(b)は固定途上、(c)は固定後の各状態である。
図4(a)に示されるように、押込み部16の台形状の切込み16aと、切込み部17のH字形状の切込み17aとは、各々の下端同士が対向した状態にある。この状態から
図4(b)に示されるように、切込み16aを割いて押込み部16を下底16bから上端部を湾曲させ持ち上げ、さらに、
図4(c)に示されるように、押込み部16を切込み部17に押し込む。これにより、H字形状の切込み17aは裂けて、押込み部16の台形の上底16c部分が切込み部17内に篏合する。押込み部16は元に戻ろうとするが、H字形状の上部17cが楔のように作用して篏合状態を保持し、よって、合わせ面固定構造10は、内壁11と外壁15の重ね合わせ状態(ロック)を保持する。
【0024】
図5(a)は包装箱1の合わせ面固定前の断面、(b)は包装箱1の合わせ面固定後の断面を示す。押込み部16が持ち上げられ、切込み部17に押し込まれることで、合わせ面固定構造10による、内壁11と外壁15の重ね合わせロック状態が保持される。
【0025】
図6(a)(b)は包装箱1の合わせ面を固定する作業要領を示す。外壁15の底面側から押込み部16を作業者の指Fで押し上げ、さらに切込み部17に押し込む。このように、押込み部16及び切込み部17が、指Fで押し上げ、押し込み可能な程度の大きさに形成されていることで、作業性が良好となる。
【0026】
ここに、例えば、内壁11と外壁15の重ね合わせ範囲W1が狭く、もしくは筒状部1Aと筒状部1Bとの間の空間が狭く、仮に、この狭い空間で合わせ面固定を行う構造であると、指を差し込むことができないため、作業性が良くない。それに対し、本実施形態の合わせ面固定構造では、重ね合わせ範囲W1が狭くとも、また筒状部1Aと筒状部1Bとの間の空間が狭くとも、合わせ面固定は、外壁15の底面側の広い空間からアクセスして行えるので、作業性が良い。
【0027】
(他の実施形態)
図7は、他の実施形態に係る包装箱1を示す。
図8は、この包装箱1を構成する段ボール2を示す。この包装箱1は、段ボール2を折り畳んで形成され、長さ方向(D)に細長い角筒状に形成された一つの筒状部から成る。筒状部は、内壁11と、それに順次連なる側壁12、天壁13、及び他側壁14と、内壁11の外側に重ね合わされる外壁15とにより形成されている。
【0028】
合わせ面固定構造10は、外壁15の一端部から延設して形成した押込み部16と、側壁12に形成した切込み部17と、を備えている。押込み部16は、切込みはなく、段ボールシートを打ち抜く際に形成される。その他の構成は、前述の実施形態と同様であり、同等の効果が得られる。押込み部16について請求項で言う「切込みにより形成した」は、このような段ボールシートの打ち抜きにより形成する場合を含む。
【0029】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限られず、種々の変形が可能である。例えば、筒状部1A,1Bが長さ方向Dに長いときは、長さ方向Dに複数の合わせ面固定構造10を設けてもよい。また、押込み部16の台形状の切込み16a、及び切込み部17の高さ方向上方が広がったH字形状の切込み17aは、それら各々と同等の作用を持つ形状であれば任意に変形可能である。また、上記では筒状部を有している包装箱1について説明したが、筒状部の両端開口部を塞ぐ蓋を段ボールに一体に設けて箱状体とした包装箱であっても構わない。
【符号の説明】
【0030】
1 包装箱
1A 筒状部
1B 筒状部
10 合わせ面固定構造
11 内壁
12 側壁
13 天壁
14 他側壁
15 外壁
16 押込み部
16a 台形状の切込み
16b 下底(繋ぎ部)
16c 上底
17 切込み部
17a 切込み
17b H字の横辺
17c 上部
17d 下部
2 段ボール(梱包緩衝材)
2a 中芯
C 内壁11から側壁12が立ち上がる位置
D 包装箱1の長さ方向
H 包装箱1の高さ方向
W 包装箱1の幅方向
W1 重ね合わせ範囲
L1~L8 罫線
F 指