(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】生体情報計測装置、生体情報管理システム、及び、生体情報計測装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240925BHJP
A61B 5/318 20210101ALI20240925BHJP
【FI】
A61B5/00 D
A61B5/318
(21)【出願番号】P 2019209869
(22)【出願日】2019-11-20
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江副 美佳
(72)【発明者】
【氏名】鮫島 充
(72)【発明者】
【氏名】小高 心哉
【審査官】北島 拓馬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0211665(US,A1)
【文献】国際公開第2016/136051(WO,A1)
【文献】米国特許第04350164(US,A)
【文献】特開平02-154740(JP,A)
【文献】特開2005-211388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00 - 5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体情報を計測可能なセンサと、少なくとも前記センサによって計測された生体情報を保存する記憶手段と、他の情報処理端末と通信を行うための通信手段と、前記生体情報の計測処理を実行する制御手段と、
少なくとも前記生体情報の計測処理の実行時における計測終了までの時間を計測する計時手段と、前記センサによって計測された前記生体情報の解析を行う解析手段と、を備える生体情報計測装置であって、
前記制御手段は、前記生体情報の計測処理を実行する際に、
前記生体情報計測装置と前記他の情報処理端末との通信が確立していない場合には、前記他の情報処理端末との通信接続を確立するための処理を継続的に実行するとともに、計測された前記生体情報を前記記憶手段に逐次的に保存する処理を実行し、
前記生体情報計測装置と前記他の情報処理端末との通信が確立している場合には、少なくとも、前記生体情報の計測処理の状況を示す情報であ
って、前記生体情報の計測終了までの時間、前記解析を実行中である旨の情報、前記解析が終了したことを示す情報のいずれかを含むステータス情報を前記他の情報処理端末に送信する処理を実行する、
ことを特徴とする、生体情報計測装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記解析手段による前記解析の終了後において、前記生体情報計測装置と前記他の情報処理端末との通信が確立している場合には、前記解析手段による前記解析の結果を示す解析結果情報を、前記情報処理端末に送信する処理を実行する、
ことを特徴とする、請求項
1に記載の生体情報計測装置。
【請求項3】
前記生体情報計測装置は、携帯型心電計測装置であり、
前記生体情報は、心電波形である、
ことを特徴とする、請求項1
又は2に記載の生体情報計測装置。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれか一項に記載の生体情報計測装置と、該生体情報計測装置と通信可能に構成された情報処理端末を有する、情報管理システム。
【請求項5】
前記情報処理端末は、出力手段を備えており、
前記ステータス情報はストリーミング方式によって送受信され、
前記情報処理端末が前記ステータス情報を受信した場合には、前記ステータス情報が前
記出力手段から逐次出力される、
ことを特徴とする請求項
4に記載の情報管理システム。
【請求項6】
前記情報処理端末は、スマートフォンである、
ことを特徴とする、請求項
4又は
5に記載の情報管理システム。
【請求項7】
情報処理端末と通信可能な生体情報計測装置を制御する方法であって、
前記情報処理端末と通信接続を確立するための処理を実行する接続ステップと、
前記情報処理端末との通信接続確立の成否に関わらず生体情報を計測する
とともに、前記生体情報の計測終了までに要する時間を算出する計測ステップと、
前記計測ステップにおいて計測された前記生体情報を逐次的に記憶する記憶ステップと、
前記記憶ステップにおいて記憶された前記生体情報を解析する、解析ステップと、を有しており、
前記情報処理端末と通信接続が確立されることにより前記接続ステップが終了した場合には、当該通信接続確立以後の前記生体情報の計測の状況を示す情報であ
って、前記生体情報の計測終了までの時間、前記解析を実行中である旨の情報、前記解析が終了したことを示す情報のいずれかを含むステータス情報を、前記情報処理端末に送信するステータス情報送信ステップをさらに実行する、
ことを特徴とする、生体情報計測装置の制御方法。
【請求項8】
前記生体情報計測装置は、携帯型心電計測装置であり、
前記生体情報は、心電波形である、
ことを特徴とする、請求項
7に記載の生体情報計測装置の制御方法。
【請求項9】
前記生体情報計測装置である通信手段を備える携帯型心電計測装置に、請求項
7又は8の生体情報計測装置の制御方法に記載の各ステップを実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘルスケア関連の技術分野に属し、特に、生体情報計測装置、生体情報管理システム、及び、生体情報計測装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、血圧値、心電波形などの、個人の身体・健康に関する情報(以下、生体情報ともいう)を計測装置によって計測し、当該計測結果を情報処理端末で記録、分析することで、健康管理を行うことが普及しつつある。
【0003】
上記のような計測装置の一例として、日常生活において胸部の痛みや動悸などの異常発生時にすぐに心電波形を測定する携帯型の心電測定装置が提案されており、心疾患の早期発見や適切な治療への貢献が期待されている(例えば、特許文献1、2など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-420号公報
【文献】国際公開第2015/35251号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には本体にセンサ部、制御部、入力部、表示部、タイマ部を備え、心電波形の計測から測定中の表示、解析結果の表示、結果の記憶等を同一本体で行う携帯型の心電測定装置が記載されている。このような構成であるため、測定、表示、記憶などの全ての処理を当該装置のみで完結させることが可能ではあるものの、これらの機能に係る構成を全て備えるため、装置が大型化し、携帯するのに不便という問題がある。
【0006】
一方、特許文献2には、本体にセンサ部、制御部、タイマ部、送信部を備え、計測した心電波形データを超音波や赤外線、Bluetooth(登録商標)などの無線通信機能により、別体の情報処理端末(スマートフォンなどを含む)に送信して、当該端末の表示手段によって各種表示を行い、情報の記憶も情報処理端末側で行う心電計測装置が開示されている。これによると、計測装置自体には表示部を備えないため、装置の小型化が可能である。しかしながら、特許文献2に記載の技術によると、携帯型心電装置から心電波形を送信し、情報処理端末側のアプリケーションで測定開始と測定終了を決定し表示しているので、携帯型心電装置が測定可能な状態になっても、情報処理端末との通信の確立、及び、情報処理端末のアプリケーションを介した測定開始指示が実行されるまでは、心電装置による測定を行うことができず、ユーザーにとって不便という問題があった。
【0007】
上記のような従来の技術に鑑み、本発明は、生体情報計測装置において、単独で計測処理を行うことができ、かつ計測処理の段階に関わらず情報処理端末と通信接続して用いることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係る生体情報計測装置は、
生体情報を計測可能なセンサと、少なくとも前記センサによって計測された生体情報を保存する記憶手段と、他の情報処理端末と通信を行うための通信手段と、前記生体情報の計測処理を実行する制御手段と、を備える生体情報計測装置であって、
前記制御手段は、前記生体情報の計測処理を実行する際に、
前記生体情報計測装置と前記他の情報処理端末との通信が確立していない場合には、前記他の情報処理端末との通信接続を確立するための処理を継続的に実行するとともに、計測された前記生体情報を前記記憶手段に逐次的に保存する処理を実行し、
前記生体情報計測装置と前記他の情報処理端末との通信が確立している場合には、少なくとも、前記生体情報の計測処理の状況を示す情報であるステータス情報を前記他の情報処理端末に送信する処理を実行する。
【0009】
ここで、生体情報とは、生体活動を示す各種の情報であり、例えば、心電波形、体温、脈拍、血圧、などを例示することができる。このような構成によると、情報処理端末との通信確立を待たずとも生体情報の計測を実行でき、情報処理端末との通信が確立された場合には、接続確立後随時、情報処理端末において計測に係る情報を確認することができる。
【0010】
また、前記生体情報計測装置は、少なくとも前記生体情報の計測処理の実行時における計測終了までの時間を計測する、計時手段をさらに備え、
前記生体情報の計測が終了するまでに前記他の情報処理端末に対して送信される前記ステータス情報には、前記計時手段によって計測された前記生体情報の計測終了までの時間が含まれるものであってもよい。
【0011】
このような構成であると、計測に時間のかかる身体情報の計測の際に情報処理端末でデータ計測終了までの時間を確認することができ、いつ計測が終了するのかが不明なことによる不安感、苛立ち等を抑止することができる。
【0012】
また、前記生体情報計測装置は、前記センサによって計測された前記生体情報の解析を行う解析手段をさらに備え、
前記生体情報の計測が終了した後に前記情報処理端末に対して送信される前記ステータス情報には、前記解析手段による前記生体情報の解析に係る解析関連情報が含まれる、ものであってもよい。
【0013】
また、前記解析手段による前記解析の実行中に送信される前記解析関連情報は、解析処理を実行中である旨の情報であり、
前記解析手段による前記解析の終了後に送信される前記解析関連情報は、前記生体情報の解析が終了したことを示す情報であってもよい。
【0014】
また、前記制御手段は、前記解析手段による前記解析の終了後において、前記生体情報計測装置と前記他の情報処理端末との通信が確立している場合には、前記解析手段による前記解析の結果を示す解析結果情報を、前記情報処理端末に送信する処理を実行してもよい。
【0015】
このような構成であると、単に生体情報を計測するのとは異なり、ユーザーは計測されたデータの解析情報を得ることができる。また、ユーザーは情報処理端末において、解析処理を行っている際の計測装置の処理の状況を確認することができ、計測装置の挙動が不明であることによる不安感などを抑止することができる。
【0016】
また、前記生体情報計測装置は、携帯型心電計測装置であり、
前記生体情報は、心電波形であってもよい。
【0017】
また、本発明に係る生体情報管理システムは、前記の生体情報計測装置と、該生体情報計測装置と通信可能に構成された情報処理端末を有する。
【0018】
また、前記生体情報管理システムにおける前記情報処理端末は、出力手段を備えており、
前記ステータス情報はストリーミング方式によって送受信され、
前記情報処理端末が前記ステータス情報を受信した場合には、前記ステータス情報が前記出力手段から逐次出力される、ものであってもよい。
【0019】
このような構成であると、比較的データ容量の小さなデータをストリーミング方式で情報処理端末に送信することにより、情報処理端末におけるタイムリーな情報の閲覧が可能になる。
【0020】
また、前記生体情報管理システムにおける前記情報処理端末は、スマートフォンであってもよい。
【0021】
また、本発明に係る生体情報計測装置の制御方法は、
情報処理端末と通信可能な生体情報計測装置を制御する方法であって、
前記情報処理端末と通信接続を確立するための処理を実行する接続ステップと、
前記情報処理端末との通信接続確立の成否に関わらず生体情報を計測する計測ステップと、
前記計測ステップにおいて計測された前記生体情報を逐次的に記憶する記憶ステップと、を有しており、
前記情報処理端末と通信接続が確立されることにより前記接続ステップが終了した場合には、当該通信接続確立以後の前記生体情報の計測の状況を示す情報であるステータス情報を、前記情報処理端末に送信するステータス情報送信ステップをさらに実行する。
【0022】
また、前記計測ステップにおいては、前記生体情報の計測終了までに要する時間が取得され、
前記計測ステップが終了するまでに前記情報処理端末に送信される前記ステータス情報には、前記計測ステップにおいて取得される、前記生体情報計測終了までに要する時間を示す情報が含まれる、ものであってもよい。
【0023】
また、前記生体情報計測装置の制御方法は、前記記憶ステップにおいて記憶された前記生体情報を解析する、解析ステップをさらに有しており、
前記計測ステップ終了後に前記情報処理端末に送信される前記ステータス情報には、前記解析ステップにおける前記生体情報の解析に係る解析関連情報が含まれる、ものであってもよい。
【0024】
また、前記解析ステップの開始から終了までの間に前記情報処理端末に送信される前記解析関連情報は、解析処理を実行中である旨の情報であり、
前記解析ステップ終了後に前記情報処理端末に送信される前記解析関連情報は、前記生体情報の解析が終了したことを示す情報であってもよい。
【0025】
また、本発明は、上記の方法を心電計測装置に実行させるためのプログラム、そのようなプログラムを非一時的に記録したコンピュータ読取可能な記録媒体として捉えることもできる。
【0026】
また、上記構成及び処理の各々は技術的な矛盾が生じない限り互いに組み合わせて本発明を構成することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、生体情報計測装置において、単独で計測処理を行うことができ、かつ計測処理の段階に関わらず情報処理端末と通信接続して用いる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態に係る生体情報管理システムの概略を説明する図である。
【
図2】
図2Aは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す正面図である。
図2Bは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す背面図である。
図2Cは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す左側面図である。
図2Dは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す右側面図である。
図2Eは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す平面図である。
図2Fは、実施形態に係る携帯型心電計測装置の構成を示す底面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る携帯型心電計測装置における心電波形計測処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る生体情報管理システムにおいて、携帯型心電計とスマートフォンとを通信接続する場合の、それぞれの処理の流れの一部を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る生体情報管理システムにおいて、携帯型心電計とスマートフォンとを通信接続する場合の、それぞれの処理の流れの一部を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、実施形態に係る携帯型心電計測装置でBLE通信を行う際の処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【
図7】
図7Aは、実施形態に係るスマートフォンで、心電波形解析中表示を行う際の画面の一例を示す図である。
図7Bは、実施形態に係るスマートフォンで、心電波形解析結果表示を行う際の画面の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態係るスマートフォンで、心電波形表示を行う際の画面の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、実施形態に係る生体情報管理システムにおいて、携帯型心電計とスマートフォンとを通信接続する場合の、処理の流れ他の例の一部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
<実施形態1>
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0030】
(システム構成)
図1は本実施形態に係る生体情報管理システム1の構成例を示す概略図である。
図1に示すように、生体情報管理システム1は、生体情報計測装置の一例としての携帯型心電計10と、情報処理端末の一例としてのスマートフォン20を含み、これらが通信接続可能に構成されている。
【0031】
(心電計測装置)
図2は、本実施形態における携帯型心電計10の構成を示す図である。
図2Aは本体の正面を示す正面図であり、同様に
図2Bは背面図、
図2C左側面図、
図2Dは右側面図、
図2Eは平面図、
図2Fは底面図、となっている。
【0032】
携帯型心電計10の底面には、心電計測時に身体の左側に接触させる左側電極12aが設けられており、反対側面の上面側には、同様に右手人差し指の中節を接触させる第一右
側電極12bと、右手人指し指の基節を接触させる第二右側電極12cが設けられている。なお、第一右側電極12bはGND電極としての機能を果たす電極である。
【0033】
心電計測時には、右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、第一右側電極12b、第二右側電極12cに正しく接触するように携帯型心電計10の上面部に配置する。そのうえで、左側電極を所望の計測法に対応する一の皮膚に接触させる。例えば、いわゆるI誘導で計測を行う場合には、左側電極を左手の掌に当てて接触させ、いわゆるV4誘導で計測を行う場合には、左胸部の心窩部やや左方・乳頭下方の肌に接触させる。
【0034】
また、携帯型心電計10の左側面には各種の操作部、及びインジケータが配置されている。具体的には、電源スイッチ16、電源LED16a、BLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy)通信ボタン17、BLE通信LED17a、メモリー残表示LED18、電池交換LED19、等を備えている。
【0035】
また、携帯型心電計10の正面には、計測状態通知LED13、解析結果通知LED14、が設けられ、携帯型心電計10の背面には、バッテリーの収容口、電池カバー15が配置されている。
【0036】
また、
図1には携帯型心電計10の機能構成を示すブロック図が記載されている。
図1に示すように、携帯型心電計10は制御部101、電極部12、アンプ部102、AD(Analog to Digital)変換部103、タイマ部104、記憶部105、表示部106、操作部107、電源部108、通信部10
9、解析部110の各機能部を備える構成となっている。
【0037】
制御部101は、携帯型心電計10の制御を司る手段であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)などを含んで構成される。制御部101は、操作部107を介してユーザーの操作を受け付けると、所定のプログラムに従って心電計測、情報通信など各種の処理を実行するように携帯型心電計10の各構成要素を制御する。なお、所定のプログラムは後述の記憶部105に保存され、ここから読み出される。
【0038】
また、制御部101は、機能モジュールとして、心電波形の解析を行う解析部110を備えている。解析部110は計測された心電波形について、波形の乱れの有無などを解析し、少なくとも計測時の心電波形が正常か否かの結果をアウトプットする。
【0039】
電極部12は、左側電極12a、第一右側電極12b、第二右側電極12cからなり、心電波形の検出するセンサとして機能する。アンプ部102は、電極部12から出力された信号を増幅する機能を有している。AD変換部103は、アンプ102で増幅されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、制御部101へ伝送する機能を有している。
【0040】
タイマ部104はRTC(Real Time Clock)を参照して、時間を計測する機能を有している。後述するように、例えば、心電計測時に計測終了までの時間をカウントし、これをアウトプットする。
【0041】
記憶部105は、RAM(Random Access Memory)などの主記憶装置を含んで構成され、アプリケーションプログラム、計測心電波形、解析結果などの各種の情報を記憶する。また、RAMに加えて、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を備えていても良い。
【0042】
表示部106は、前述の電源LED16a、BLE通信LED17a、メモリー残表示LED18、電池交換LED19などを含んで構成され、LEDの点灯、点滅などによっ
て装置の状態をユーザーに伝達する。また、操作部107は、電源スイッチ16、通信ボタン17等を含み、ユーザーからの入力操作を受け付け、制御部101に操作に応じた処理を実行させるための機能を有する。
【0043】
電源部108は、装置の稼働に必要な電力を供給するバッテリーを含んで構成される。バッテリーは、例えばリチウムイオンバッテリーなどの二次電池であっても良いし、一次電池としても良い。
【0044】
通信部109は、無線通信用のアンテナを含み、少なくともBLE通信により、後述する情報処理端末などの他の機器と通信する機能を有する。また、有線による通信のための端子を備えていても良い。
【0045】
(情報処理端末)
情報処理端末の一例であるスマートフォン20は、
図1に示すように、制御部21、通信部22、タッチパネルディスプレイ23、記憶部24、を含んで構成される。制御部21はスマートフォン20の制御を司る手段であり、例えばCPUなどを含んで構成され、記憶部24に格納された各種プログラムを実行することにより、これらに応じた機能を発揮する。通信部22は、無線通信用のアンテナを含み、携帯型心電計10などの他の機器、無線基地局との通信を行う機能である。また、有線通信のための端子を備えていてもよい。
【0046】
タッチパネルディスプレイ23は、出力手段の一つとしての表示手段と入力手段とを兼ねており、後述するように、携帯型心電計10と通信接続が確立されている場合には、計測終了時までの残り時間などのステータス情報、心電波形のグラフデータ、などを表示することができる。その他、各種の入力用画像を介してユーザーからの操作を受け付ける。
【0047】
記憶部24は、RAMなどの主記憶装置の他、例えばフラッシュメモリなどの長期記憶媒体を含んで構成され、アプリケーションプログラム、計測心電波形、解析結果などの各種の情報を記憶する。
【0048】
(携帯型心電計を用いた心電計測処理)
次に、心電計測を行う際の携帯型心電計10の動作について、
図1、
図2及び
図3に基づいて説明する。
図3は、携帯型心電計10を用いて心電計測を行う際の処理の手順を示すフローチャートである。
【0049】
ユーザーはまず、計測に先立ち、電源スイッチ16を操作し携帯型心電計10の電源をONにする。そうすると、電源LEDが点灯して電源がONであることを表示する。そして、右手で携帯型心電計10を保持し、右手人差し指を、12b、12cに接触させ、計測を行う箇所の肌に、12aを接触させる。そうすると、制御部101は電極部12を介して接触状態を検出し(S1101)、正しく電極が接触された状態で所定時間が経過したか否かを判定する処理を行う(S1102)。ここで、制御部101は所定時間が経過していないと判断すれば所定時間が経過するまで同じ処理を繰り返し、所定時間が経過したと判断すると、ステップS1103に進み、実際の心電計測を実行する。
【0050】
制御部101は、心電計測を行っている間は、随時計測値を記憶部105に保存するとともに、本体正面の計測状態通知LED13を所定のリズムで点滅させることにより、心電計測中であることを表示する(S1104)。
【0051】
次に、制御部101は心電計測の時間が所定の計測時間(例えば30秒)を経過したか否かを判定する処理を行う(ステップS1105)。ここで、まだ所定の時間を経過して
いないと判断した場合には、ステップS1103に戻って以降の処理を繰り返す。一方、所定の計測時間が経過したと判断した場合には、計測を終了するとともに、計測状態通知LED13の点滅を終了する処理を行う(ステップS1106)。
【0052】
次に、制御部101の解析部110により、記憶部105に保存された計測データ(心電波形)の解析が行われ(S1107)、解析結果は、心電波形と共に長期記憶装置に保存される(S1108)。そして、制御部101は、解析結果通知LED14により、解析の結果を表示して(S1109)、一連の処理を終了する。なお、解析結果の表示は、例えば、心電波形に異常がみられる場合のみLEDを点灯するのであっても良いし、解析結果に応じた点灯・点滅方法によりLEDを点灯させるようにしても良い。
【0053】
(情報処理端末との連携)
以上のように、携帯型心電計10は、それ単体でも心電計測、計測データの解析及び解析結果の表示を行うことが可能であるが、情報処理端末と通信接続して用いることで、より利便性を高めることができる。以下、
図4から
図9に基づいて、スマートフォン20と通信接続して携帯型心電計10を用いる場合について説明する。
【0054】
図4及び
図5は、携帯型心電計10とスマートフォン20とをBLE通信で連携させて心電計測を行う場合のそれぞれの処理の流れと、機器間の情報の伝達のタイミングを示す図である。なお、携帯型心電計10の処理の流れについて、上述したものについては同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0055】
ユーザーが携帯型心電計10の電源スイッチ16を操作して電源をONにすると、携帯型心電計10において、BLE通信のためのサブルーチンの処理が実行される(S1201)。
【0056】
図6は当該サブルーチンの処理の流れを示すフローチャートである。携帯型心電計10の制御部101は、電源がONされると、通信部109からBLE通信のためのアドバタイズ信号を発信する(S1901)。次に、制御部101は他の情報処理端末からBLE通信の接続要求を受
信したか否かの判定を行う(S1902)。ここで、BLE通信の接続要求を受信していないと判断すると、所定時間の経過、或いは操作部107の操作により、BLE通信の処理がキャンセルされるまで同様の処理を繰り返す。一方、BLE通信の接続要求を受信したと判断した場合には、ステップS1903に進み、当該接続要求を送信した機器とのBLE接続を行う。BLE通信接続が確立されると、制御部101はサブルーチンを終了する。なお、当該サブルーチンの開始トリガーは電源ONに限らず、例えばBLE通信ボタン17の操作によるものであってもよい。
【0057】
一方、ユーザーはスマートフォン20を、携帯型心電計10とBLE通信が可能な状態にする。具体的にはタッチパネルディスプレイ23を操作して、設定メニュー等から、BLE接続設定をONにする。或いは、携帯型心電計10と連携するための専用のアプリケーションプログラムを起動させることによってBLE接続設定をONにするのであってもよい。
【0058】
BLE接続設定がONになると、スマートフォン20の制御部21は、通信部22を介してBLE通信のためのアドバタイズ信号を受信し(S2101)、携帯型心電計10に対して、BLEの接続要求を送信する(S2102)。そして、携帯型心電計10とBLE接続を行い(S2103。上記S1903に対応。)、通信開始要求を送信する(S2104)。
【0059】
一方、携帯型心電計10の制御部101は電極接触状態を検出(S1101)した後、
BLE接続済みか否かを判定する処理を行う(S1202)。ここで、BLE接続されていると判断した場合には、電極接触状態に係る情報がスマートフォン20に向けて送信され(S1203)、スマートフォン20において当該情報が受信される(S2105)。なお、仮にステップS1202で、BLE接続されていないと判断された場合には、ステップS1203の処理を飛ばして、S1102に進み、電極接触状態で所定時間が経過したか否かの判定処理を行う。
【0060】
電極接触状態の情報を受信したスマートフォン20では、タッチパネルディスプレイ23に電極接触状態が表示される。例えば、「電極は適切に接触しています」或いは「電極は正しく接触していません」などのメッセージを表示してもよい。
【0061】
一方、携帯型心電計10の制御部101はステップS1103で心電計測を実行し、BLE接続済みか否かを判定する処理を行う(S1204)。ここで、BLE接続済みであると判断すると、スマートフォン20に対して、心電計測時間(計測終了までの残り時間)を送信する処理を実行する(S1205)。BLE接続されていないと判断した場合には、ステップS1105に進み、所定の計測時間が経過したか否かを判定する処理を行う。
【0062】
ステップS1205で、携帯型心電計10から送信された心電計測時間は、スマートフォン20において受信され(S2107)、タッチパネルディスプレイ23に心電計測時間が表示される(S2108)。具体的には、例えば「心電計測終了まで〇〇秒」というようなカウントダウンのメッセージが表示されるようにしてもよい。
【0063】
携帯型心電計10は解析部110において心電波形の解析を行い(S1107)、解析処理の実行中、BLE接続されているスマートフォン20があれば、解析中である旨の情報を送信する(S1206)。スマートフォン20の制御部21は、通信部22を介して当該解析中である旨の情報を受信すると(S2109)、タッチパネルディスプレイ23に当該情報を表示する(S2110)。
図7Aに解析中である旨の情報が表示された画面の例を示す。
【0064】
また、携帯型心電計10の制御部101は心電波形の解析が終了すると、当該情報を保存し(S1108)、LEDの点灯により解析結果を表示する(S1109)とともに、BLE接続されているスマートフォン20があれば、当該解析結果を送信する処理を実行する(S1207)。なお、解析結果の送信に先立ち、解析処理が終了したことを示す情報を送信するようにしてもよい。
【0065】
スマートフォン20の制御部21は、送信された解析結果を通信部22を介して受信すると(S2111)、当該結果をタッチパネルディスプレイ23に表示させる(S2112)。
図7Bに解析結果が表示された画面の一例を示す。一方、携帯型心電計10の制御部101は、BLE接続されているスマートフォン20があれば、心電波形のデータを送信する(S1208)。ここで、スマートフォン20の制御部21はタッチパネルディスプレイ23に解析結果の表示を継続しつつ、バックグラウンドで通信部22を介して心電波形のデータを受信する(S2113)。このように、情報量が多く送受信に時間のかかる心電波形のデータの送信中に、心電波形の解析結果のみを先に表示することにより、送受信が完了するまでの待ち時間に対するユーザーのストレスを軽減することができる。なお、ステップS1208において、記憶部105に未送信の解析結果が存在する場合には、当該解析結果を心電波形データとともに送信するようにしてもよい。
【0066】
スマートフォン20の制御部21は心電波形のデータを全て受信すると、心電波形をタッチパネルディスプレイ23に表示させる(S2114)。
図8にステップS2114で
表示される画面の一例を示す。その後、通信部22を介して携帯型心電計10に通信終了要求を送信して(S2115)、BLE接続を切断し(S2116)、スマートフォン20側の処理を終了する。なおスマートフォン20において受信した解析結果、心電波形データといった各種情報は、記憶部24に保存し、有効活用することができる。
【0067】
一方、携帯型心電計10の制御部101はステップS1208の後、心電波形のデータ(及び解析結果)が全て送信されたか否かを判定する処理を実行する(S1209)。ここで、未送信の心電波形データ(及び解析結果)があると判断すれば、ステップS1208に戻って以降の処理を繰り返す。一方、心電波形データ(及び解析結果)が全て送信されたと判断した場合には、スマートフォン20からの通信終了要求の受信を待って、BLE接続を切断し(S1210)、携帯型心電計10側の処理を終了する。
【0068】
以上、本実施形態で説明した携帯型心電計10、及び生体情報管理システム1によれば、スマートフォン20などの情報処理端末と連携して用いることにより、心電波形データ等の各種データをディスプレイに表示させて閲覧することができる。また、受信したデータを保存して、アプリケーションプログラムなどを用いて有効活用することもできる。
【0069】
一方、携帯型心電計10はスマートフォン20とは独立して、心電波形の計測および保存、心電波形データの解析、解析結果の表示および保存、が可能であるため、スマートフォン20との通信確立を待つことなく、任意のタイミングで心電計測することが可能である。
【0070】
また、携帯型心電計10とスマートフォン20とを通信接続する場合であっても、計測処理の開始の段階から通信が確立されている必要はなく、携帯型心電計10による計測処理の途中からでもスマートフォン20との通信接続を行うことができる。
図9は、携帯型心電計10の計測処理の途中から、スマートフォン20のBLE接続設定がONになった場合の処理を示すフローチャートである。
図9において、ここまでで既に説明した処理と同様の処理には同じ符号を付している。
図9に示すように、スマートフォン20は、携帯型心電計10のステップS1102の後にBLE接続要求を行い、その後BLE接続が確立されている。なお、
図9中の結合子以降の処理は既に説明したフローと同一であるため、記載を省略する。
【0071】
このように、本実施形態に係る携帯型心電計10及び生体情報管理システム1によれば、情報処理端末との通信確立を待たずとも生体情報の計測を実行でき、情報処理端末との通信が確立された場合には、接続確立後随時、情報処理端末において、計測に係る情報を確認することができる。
【0072】
なお、上記実施形態において、電極接触状態、心電計測時間、解析中画面情報、解析結果情報、などのステータス情報と、心電波形データとは異なる送受信方式によって送受信されてもよい。具体的には、比較的データ容量の小さいステータス情報を、ストリーミング形式で送受信し、データ容量の大きい心電波形データを高速データ通信によって、送受信するようにしてもよい。
【0073】
<その他>
上記の各例の説明は、本発明を例示的に説明するものに過ぎず、本発明は上記の具体的な形態には限定されない。本発明は、その技術的思想の範囲内で種々の変形及び組み合わせが可能である。
【0074】
例えば、計測装置は携帯型心電計以外に、血圧計、体組成計、脈拍計、体温計などの他の生体情報測定機器であってもよい。即ち、計測対象となる生体情報も心電波形に限られ
ず、血圧、脈拍などであってもよい。なお、上記の例ではシステムを構成する計測装置は携帯型心電計のみであったが、複数の異なる計測装置を含んでシステムが構成されてもよい。
【0075】
また、情報処理端末はスマートフォンにかぎらず、タブレット端末などの他の携帯情報処理端末であってもよいし、据置型の端末であってもよい。また、通信部は、BLE通信を行うためのものに限らず、Wi-Fi(登録商標)、赤外線通信など他の無線通信を行うことが可能なアンテナであってもよい。また、有線接続による通信を行う物であってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1・・・生体情報管理システム
10・・・携帯型心電計
13・・・計測状態通知LED
14・・・解析結果通知LED
15・・・電池カバー
16・・・電源スイッチ
16a・・・電源LED
17・・・通信ボタン
17a・・・BLE通信LED
18・・・メモリー残表示LED
19・・・電池交換LED