(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】練り込み用油中水型乳化組成物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240925BHJP
A21D 2/16 20060101ALI20240925BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20240925BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20240925BHJP
A23G 3/34 20060101ALI20240925BHJP
A23G 3/40 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/16
A21D13/80
A21D13/00
A23G3/34 102
A23G3/40
(21)【出願番号】P 2020040404
(22)【出願日】2020-03-10
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中野 幹生
(72)【発明者】
【氏名】熨斗 洋星
(72)【発明者】
【氏名】佐野 亘彬
【審査官】澤田 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-050322(JP,A)
【文献】特開2017-118849(JP,A)
【文献】特開2018-157771(JP,A)
【文献】特開2016-202169(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A21D,A23D,A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全構成脂肪酸に対し、ラウリン酸含量が5~25重量%、パルミチン酸含量が5~25重量%及びステアリン酸含量が10~35重量%であり、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比率が0.5~3であり、上昇融点が30~40℃であり、20℃におけるSFCが20~50%、35℃におけるSFCが12%以下であるエステル交換油脂A、液状油、および生クリームを含有することを特徴とする、練り込み用油中水型乳化組成物。
【請求項2】
エステル交換油脂Aを10~70重量%、および液状油を10~70重量%含有する請求項1記載の練り込み用油中水型乳化組成物。
【請求項3】
請求項1又は2記載の練り込み用油中水型乳化組成物を使用して焼き菓子のしっとり感を付与または増強する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は練り込み用油中水型乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
マドレーヌやフィナンシェ、パウンドケーキといった焼き菓子は嗜好性が高く、常に風味や食感の優れたものが求められ、それに応じて種々の研究開発がなされてきた。特に近年は自然な乳風味が感じられ、しっとりとした食感が強く感じられる焼き菓子が求められてきている。また、焼き菓子はギフトとしても人気があり、しっとりとした食感をできるだけ維持する方法が模索されている。
【0003】
たとえば、しっとりとした食感とざらつきのない良好な口どけを有する焼き菓子としては特許文献1がある。ここでは、穀粉を実質的に含まない焼き菓子であって、40~80質量%の脂質、1~10質量%のタンパク質、5~25質量%の糖質を含んでおり、前記脂質には、構成脂肪酸として炭素数6~12の中鎖脂肪酸を有するトリアシルグリセロールが前記油脂の50質量%以上含まれている、焼き菓子が開示されている。
また、長期保存してもしっとりとして、軟らかい食感が持続する焼き菓子に関しては特許文献2がある。ここでは、穀粉100質量部に対して70~180質量部の油脂を含み、該油脂中の液状油脂の含有量が35~65質量%であり、該油脂が、連続相が油脂である可塑性油脂組成物、起泡性油脂、及び水中油型乳化物に由来することを特徴とする焼き菓子生地が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開2016/010103号公報
【文献】特開2015-195746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の課題は、自然な乳風味が感じられ、しっとりとした食感が強く感じられ、さらにその良好な食感を長期間維持することができる焼き菓子を簡便に調製できる練り込み用油中水型乳化組成物を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、課題の解決に向け鋭意検討を行った。
特許文献1では、穀粉を実質的に含まない焼き菓子のため、汎用性に欠けるものであった。
また、特許文献2では、油脂として、連続相が油脂である可塑性油脂組成物、起泡性油脂、及び水中油型乳化物を使用する必要があり、焼き菓子の製造工程が煩雑であった。
そのため、本発明者はさらに検討を行ったところ、本願発明の油中水型乳化組成物を使用することにより、焼成後に良好なしっとり感と口溶けの良い焼き菓子を製造することができる。また、その良好な食感を長期間維持することができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)全構成脂肪酸に対し、ラウリン酸含量が5~25重量%、パルミチン酸含量が5~25重量%及びステアリン酸含量が10~35重量%であり、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比率が0.5~3であり、上昇融点が30~40℃であり、20℃におけるSFCが20~50%、35℃におけるSFCが12%以下であるエステル交換油脂A、液状油、および生クリームを含有することを特徴とする、練り込み用油中水型乳化組成物、
(2)エステル交換油脂Aを10~70重量%、および液状油を10~70重量%含有する(1)記載の練り込み用油中水型乳化組成物、
(3)(1)又は(2)記載の練り込み用油中水型乳化組成物を使用した焼き菓子、
(4)(1)又は(2)記載の練り込み用油中水型乳化組成物を使用して焼き菓子のしっとり感を付与または増強する方法、
に関するものである。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の練り込み用油中水型乳化組成物を使用することにより、焼成後に良好なしっとり感と口溶けの良い焼き菓子を製造することができる。また、その良好な食感を長期間維持することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物とは、マドレーヌ等の焼き菓子の練り込み用に使用できる乳化組成物であり、通常は油中水型の乳化物である。ここで、乳化とは、油中水型乳化であり、油中水型または油中水中油型の何れでも構わない。なお、本発明でいう油中水型乳化組成物の水相とは、油中水型乳化組成物における、水および液糖に溶解する成分が混合した状態のものであり、乳化油脂組成物を加熱融解して乳化状態を破壊した際に、水を主体とした部分として分離し、認識されるものである。
【0010】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、全構成脂肪酸に対し、ラウリン酸含量が5~25重量%、パルミチン酸含量が5~25重量%及びステアリン酸含量が10~35重量%、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比率が0.5~3、上昇融点が30~40℃、および20℃SFCが20~50%、35℃SFCが12%以下であるエステル交換油脂Aを含有する。また、本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、上述のエステル交換油Aを10.0~70.0重量%含有することが好ましく、より好ましくは15.0~65.0重量%、さらに好ましくは18.0~60.0重量%含有する。
【0011】
本発明におけるエステル交換反応は、ナトリウムメチラートなどの化学的触媒による方法でも、リパーゼなどの酵素による方法でもよく、また、非選択的なランダム化反応であっても、位置特異性のある選択的なエステル交換反応であってもよいが、非選択的なランダム化反応であるのが好ましい。
【0012】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、常温(20℃)において流動性を有する液状油を含有する。具体的には、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボガドオイル、へーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、エゴマ油、アマニ油、パーム油の分別低融点部、シアオレイン、及び中鎖脂肪酸トリグリセリド等を挙げることができ、これらを単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。さらに、これら液状油を混合してエステル交換した油脂が、常温(20℃)において流動性を有する場合には使用することもできる。また、本発明の油中水型乳化組成物は、上述の液状油を10.0~70.0重量%含有することが好ましく、より好ましくは15.0~65.0重量%、さらに好ましくは18.0~60.0重量%含有する。
【0013】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、上述のエステル交換油脂および液状油を含有する以外は特に制限されることはなく、その他の油脂を添加してもよい。添加するその他の油脂としては、食用油脂であればいかなる油脂でもよいが、例えば、パーム油、パーム核油、ヤシ油、シア脂、サル脂、マンゴー油、イリッペ脂、カカオ脂、豚脂(ラード)、牛脂、乳脂等の動植物性油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1種以上の処理を施した加工油脂が挙げられる。これらの油脂を単独で用いることもでき、又は2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0014】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、生クリームを含有する。ここで、生クリームとは、生乳または牛乳等から分離して得られる天然の生クリームであっても、天然生クリームの乳化系を破壊し再構成して得られるクリームであっても構わない。たとえば、一般的に市販されている油分18重量%以上の生クリームであれば特に限定されることはないが、より好ましくは油分が30~50重量%の生クリームである。また、本発明の油中水型乳化組成物は、生クリームを3~30重量%含有することが好ましく、より好ましくは5~26重量%、さらに好ましくは8~23重量%含有する。
【0015】
さらに、本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、バター製造時(チャーニング時)に副産物として生じるバターミルクを乾燥させたバターミルクパウダーを含有することが好ましい。また、本発明の油中水型乳化組成物は、バターミルクパウダーを0.2~3.0重量%含有することが好ましく、より好ましくは0.3~2.5重量%、さらに好ましくは0.5~2.0重量%含有することにより、乳風味とコク味を増強することができる。
【0016】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、水分が5~30重量%であることが好ましく、より好ましくは8~26重量%、最も好ましくは10~23重量%である。油中水型乳化組成物の水分が、この範囲にあると菓子用生地調製時の作業性が良好で、かつ焼き菓子の食感がしっとりした食感のものが得られる点で好ましい。ここで、水分が少なすぎると、油中水型乳化組成物がもろい物性となる場合がある。逆に水分が多すぎると、得られる焼き菓子が目の詰まった、硬い食感となってしまう場合がある。なお、上記水分には上記生クリーム、バターミルクパウダー、および後述するその他の成分等に由来する水分も勘案するものとする。
【0017】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物に使用する油相は、20℃におけるSFC(固体脂含量)が5~35%であることが好ましく、より好ましくは6.5~30%である。ここで、20℃におけるSFCが高すぎると、油中水型乳化組成物が硬くなりすぎる場合がある。一方、20℃におけるSFCが低すぎると、油中水型乳化組成物が軟らかすぎて、作業時に生地がべたついたり、焼き菓子の浮きに影響を及ぼす場合がある。ここで、本発明でいう練り込み用油中水型乳化組成物の油相とは、油脂および油脂に融解する成分が混合した状態のものであり、油中水型乳化組成物を加熱融解して乳化状態を破壊した際に、油脂を主体とした部分として分離し、認識されるものである。そのため、SFCの測定は生クリームおよびバターの乳脂分も勘案したものである。
【0018】
また、本発明の練り込み用油中水型乳化組成物に使用する油相は、30℃におけるSFCが10%以下であることが好ましく、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下である。ここで、30℃におけるSFCが高すぎると、得られる油中水型乳化組成物及び焼き菓子の口溶けが悪化してしまう場合があるので好ましくない。
【0019】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、乳化剤を添加しても良い。乳化剤としてはレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、シュガーエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよび酢酸モノグリセリド、酒石酸モノグリセリド、酢酸酒石酸混合モノグリセリド、クエン酸モノグリセリド、ジアセチル酒石酸モノグリセリド、乳酸モノグリセリド、コハク酸モノグリセリド、リンゴ酸モノグリセリド等各種有機酸モノグリセリド、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0020】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物は、上記以外のその他の成分として、通常、油中水型乳化組成物に配合される成分を配合することができる。その他の成分としては、糖類、増粘安定剤、カゼインナトリウムやカゼインカルシウム等のカゼイネート、食塩、塩化カリウム等の塩味剤、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、ステビア、アスパルテーム等の甘味料、β‐カロテン、カラメル、紅麹色素等の着色料、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、香料、調味料、pH調整剤、食品保存料、果実、果汁、コーヒー、ナッツペースト、香辛料、ココアマス、ココアパウダー、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材や食品添加物が挙げられる。
【0021】
本発明の練り込み用油中水型乳化組成物の製造方法は、以下に例示するような、一般的な方法を採用することができる。まず、設定された配合において、油脂および油脂に融解する成分、たとえば油溶性乳化剤、を油脂に融解し油相とする。油相は、油脂が完全に融解された状態とする。これは、油脂の融点にも依存するが、概ね55~75℃である。一方、設定された配合において、水および水に溶解する成分、たとえば水溶性の風味素材などは水に混合し水相とする。なお、液糖を使用して、水を使用しない配合においては、液糖に水溶性の成分を溶解ないし混合することになる。
【0022】
油相および水相の準備が終了した後、油相を攪拌しながら水相を添加することで、油中水型に略乳化した「調合液」を得る。このとき、攪拌が不十分、あるいは油相の温度が低すぎる場合は、乳化が反転する場合もあるので、十分に攪拌しかつ、十分な温度に保つ必要である。
【0023】
調合液はポンプにより送液し、適宜殺菌装置等を通過させた後、油中水型乳化組成物の製造装置へ供される。油中水型乳化組成物の製造装置へ供される直前の段階では、調合液は溶解状態で、かつ40~70℃である必要があり、より望ましくは55~65℃である。
【0024】
油中水型乳化組成物の製造装置としては、冷却機能を有する各種のものを使用することができる。具体的には、コンビネーター、パーフェクター、ボテーター等の掻き取り式急冷混和機を備えた装置を例示することができる。これらの装置により、一例として、調合液を1~8℃/秒の速度で、冷却装置の出口で3~20℃まで冷却する。冷却速度が遅すぎると、粒状結晶が発生しやすくなる場合があり、また冷却速度が速すぎると、不必要により大きな冷却エネルギーが必要となる場合がある。
【0025】
本発明における焼き菓子用生地とは、穀粉類および油中水型乳化組成物等の原材料を混合して捏ねあげた、焼成前の生地混合物のことである。また、原材料である穀粉類は、あらかじめ水や他の原材料とある程度捏ねあげていても良いし、α化などを施していても良い。
【0026】
本発明における焼き菓子とは、小麦粉を原料として焼成前の総水分が35重量%未満である菓子用生地を焼成して製造されるものであれば、特にその他の限定はなく、例えば、スポンジケーキ類であるショートケーキ等、バターケーキ類であるパウンドケーキやマドレーヌ、フィナンシェ、バウムクーヘン等、フィュタージュ類であるワッフル類、タルトやミルフィーユ等、デザート菓子類、ドーナツ類、ビスケット類であるビスケットやクッキー等、饅頭、和菓子類である月餅等、またはそれらにチョコレートやクリーム、ジャム、あんこ等のフィリングをコーティング、サンド、注入、包あんした加工品等、いかなる菓子でもよい。
特に、小麦粉として薄力粉を用いる焼き菓子類であるバターケーキ類であるパウンドケーキやマドレーヌ、フィナンシェ、バウムクーヘン等に好適である。
【0027】
本発明において、焼き菓子用生地の製造方法は特に制限されることはなく、例えば、オールインミックス法、後粉法、シュガーバッター法、フラワーバッター法等が使用できる。
【実施例】
【0028】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
なお、油脂の脂肪酸組成、上昇融点及び及びSFCは下記の方法で測定したものである。
脂肪酸組成:日本油化学協会基準油脂分析試験法(1996年版)2.4.1.2メチルエステル化法(三フッ化ホウ素メタノール法)に規定の方法に準じて測定した。
上昇融点:日本油化学協会基準油脂分析試験法(1996年版)2.2.4.2(上昇融点)に規定の方法に準じて測定した。
SFC:AOCS Official Method第5版Cd16-81に準じて、60℃で60分温調して油脂を融解させ、0℃で60分保持することにより固化し、さらに各測定温度で30分温調後に測定したものである。
【0029】
エステル交換油の調製
【0030】
(エステル交換油脂Aの調製)
パーム油分別低融点部(沃素価67)34部、パーム核油分別低融点部(沃素価26)30部、菜種極度硬化油(沃素価1.2)27部及び菜種油9部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油としてエステル交換油脂A-1を得た。得られたエステル交換油脂A-1は、全構成脂肪酸に対し、ラウリン酸含量が11.4重量%、パルミチン酸含量が15.1重量%及びステアリン酸含量が27.9重量%、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比率が1.8、上昇融点が34.9℃、および20℃SFCが40.0%、35℃SFCが8.6%であった。
【0031】
パーム油分別低融点部(沃素価67)44部、パーム核オレイン(沃素価26)40部及び菜種極度硬化油(沃素価1.2)16部を混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油としてエステル交換油脂A-2を得た。得られたエステル交換油脂A-2は、全構成脂肪酸に対し、ラウリン酸含量が15.3重量%、パルミチン酸含量が18.6重量%及びステアリン酸含量が18.0重量%、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比率が1.0、上昇融点が33.2℃、および20℃SFCが27.9%、35℃SFCが2.6%であった。
【0032】
液状油としては、精製菜種油を使用した。
【0033】
精製コーン油と中鎖脂肪酸トリグリセリド(構成脂肪酸はカプリル酸が約60%、カプリン酸が約40%)を重量比95:5の割合で混合し、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として常温(20℃)において流動性を有するエステル交換液状油を得た。
【0034】
パーム油(沃素価52)50部、パームステアリン(沃素価42)10部とパーム核オレイン(沃素価26)40部の混合油脂を、ナトリウムメチラートを触媒としてランダムエステル交換反応を行い、その後、常法通り脱色、脱臭を行い、精製油として中融点エステル交換油脂Bを得た。得られたエステル交換油脂Bは、全構成脂肪酸に対し、ラウリン酸含量が15.0重量%、パルミチン酸含量が33.0重量%及びステアリン酸含量が4.5重量%、ステアリン酸/パルミチン酸の重量比率が0.1、上昇融点が33.5℃、および20℃SFCが32.5%、35℃SFCが2.5%であった。
【0035】
パーム核ステアリンとしては、パーム核油を分別して得られる硬質部(沃素価7)を使用した。
【0036】
検討1 練り込み用油中水型乳化組成物の調製
下記「油中水型乳化組成物の調製法」に従い、表1各配合の練り込み用油中水型乳化組成物を調製した。
「油中水型乳化組成物の調製法」
1.食用油脂を60~70℃で融解または温調後に混合油を調製し、そこへ油溶性の乳化剤を添加することで油相を調製した。
2.水へ、水相原料に分類される原料を添加、溶解した。
3.攪拌中の油相へ水相を添加し、混合した。ここで得られる混合液を調合液と称する。
4.調合液を油中水型乳化組成物製造装置(コンビネーター)へ供し、油中水型乳化組成物を得た。
5.ダンボールケースへ充填し、3~7℃にて冷蔵した。
【0037】
表1 練り込み用油中水型乳化組成物の配合
・単位は重量%である。
・乳化剤としては、不飽和脂肪酸モノグリセリドと大豆レシチンを使用した。
【0038】
【0039】
薄力粉25部、グラニュー糖25部、全卵25部、ベーキングパウダー0.5部の割合でミキサーを使用して攪拌しながら、この中に練り込み用油中水型乳化組成物(融解して50℃に温調)25部を徐々に加えてマドレーヌ生地を調製した。この練り上げた生地を30分以上休ませた後、マドレーヌ型に約30gずつ流し込み、上火190℃/下火170℃、15分間の条件でオーブン焼成することによりマドレーヌを調製した。
【0040】
実施例1の練り込み用油中水型乳化組成物を使用して、実施例1のマドレーヌ(焼き菓子)を調製した。
【0041】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、実施例2を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2のマドレーヌを調製した。
【0042】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、実施例3を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例3のマドレーヌを調製した。
【0043】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、実施例4を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例4のマドレーヌを調製した。
【0044】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、実施例5を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例5のマドレーヌを調製した。
【0045】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、実施例6を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例6のマドレーヌを調製した。
【0046】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、実施例7を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例7のマドレーヌを調製した。
【0047】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、実施例8を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例8のマドレーヌを調製した。
【0048】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、比較例1を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1のマドレーヌを調製した。
【0049】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、比較例2を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例2のマドレーヌを調製した。
【0050】
練り込み用油中水型乳化組成物を実施例1に代えて、比較例3を使用した以外は、実施例1と同様にして比較例3のマドレーヌを調製した。
【0051】
「マドレーヌの風味評価法」
表3の配合で調製したマドレーヌは、洋菓子素材の開発に従事し、日々、試作された洋菓子の官能評価を行っている5名により、調製したマドレーヌサンプルを1日後、及び7日後に官能評価を行い、食感(しっとり感)と乳風味について下記の基準で評価を行った。それぞれについて1.0~5.0の評点を合議にて決定し、結果を表3にまとめた。評価の結果として、1日後の評価として4.0以上であり、7日後の評価として3.0点以上を合格とした。
食感の評価基準
しっとりしていて柔らかい)5.0>4.0>3.0>2.0>1.0(硬くパサつく
乳風味の評価基準
甘い香りと自然な乳風味)5.0>4.0>3.0>2.0>1.0(味が薄く、重い
【0052】
【0053】
以上のように、すべての実施例では、1日後の評価として4.0以上であり、7日後の評価として3.0点以上を満たしていた。これに対して、比較例1では、生クリームを含むため乳風味は合格だが、エステル交換油Aを含まないためしっとり感が1日後、7日後共に合格基準を下回る結果であった。また、比較例2および3では、エステル交換油Aを含むため1日後のしっとり感は合格だが、7日目は合格基準を下回る結果であり、乳風味も生クリームを含まないため、1日目で合格基準を下回る結果であった。