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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】液状コーヒーホワイトナー
(51)【国際特許分類】
   A23C 11/10 20210101AFI20240925BHJP
   A23L 11/60 20210101ALI20240925BHJP
   A23L 11/65 20210101ALI20240925BHJP
   A23F 5/24 20060101ALN20240925BHJP
   A23L 2/38 20210101ALN20240925BHJP
【FI】
A23C11/10
A23F5/24
A23L2/38 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020040406
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021136974
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】315015162
【氏名又は名称】不二製油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐本 裕美
(72)【発明者】
【氏名】垣本 淳
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-008719(JP,A)
【文献】特開2006-158295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C
A23F
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
9重量%以下の皮なしのナッツペースト、7~35重量%の植物性油脂(ナッツペーストからのナッツ油を除く)、および下記イ、ロ、ハいずれか1つを含有することを特徴とする液状コーヒーホワイトナー。(但し、ナッツペーストにおけるナッツから栗を除く。)
イ:HLB9以上のショ糖脂肪酸エステル
ロ:HLB4~8のショ糖脂肪酸エステルおよびHLB9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル
ハ:HLB4~8のショ糖脂肪酸エステルおよびレシチン
【請求項2】
9重量%以下の皮なしのナッツペースト、7~35重量%の植物性油脂(ナッツペーストからのナッツ油を除く)、および下記イ、ロ、ハいずれか1つを含有することを特徴とする液状コーヒーホワイトナー。(但し、ナッツペーストにおけるナッツはアーモンド、及びヘーゼルナッツから選ばれる1以上である。)
イ:HLB9以上のショ糖脂肪酸エステル
ロ:HLB4~8のショ糖脂肪酸エステルおよびHLB9以上のポリグリセリン脂肪酸エステル
ハ:HLB4~8のショ糖脂肪酸エステルおよびレシチン
【請求項3】
pH調整剤を含有する請求項1又は2に記載の液状コーヒーホワイトナー。
【請求項4】
動物性原料を使用しない請求項1又は2に記載の液状コーヒーホワイトナー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液状コーヒーホワイトナーに関する。
【背景技術】
【0002】
コーヒークリームやコーヒーフレッシュなどの液状コーヒーホワイトナーは、コーヒーや紅茶などの飲料だけでなく、コーヒーゼリー、プリン、フルーツゼリーの上掛けなどにも利用され、コーヒーなどの苦味に乳のマイルド感を付与することができ、家庭やカフェ、レストラン、コンビニエンスストアなどで広く消費者に利用されている。
【0003】
コーヒーホワイトナーとは、水と油を含む水中油型乳化物であり、一般に脱脂粉乳や全粉乳等の乳固形分を配合することにより乳風味を付与していた。しかし、最近では多くの消費者が乳製品代替品を求める傾向が認められ、植物性成分を使用したコーヒーホワイトナーが求められるようになってきている。
【0004】
このような状況下、例えば、特許文献1では、植物性成分である豆乳を使用し、HLBが12以上、グリセリンの重合度が5~10、および構成脂肪酸が、オレイン酸及び/又は炭素数12~14の飽和脂肪酸であるポリグリセリン脂肪酸エステルを含有するコーヒーホワイトナーが開示されている。また、特許文献2では、食用ナッツと、高アシルジェランガムと、エンドウ豆タンパク質と、緩衝剤と、を含む液体天然植物性クリーマー組成物が開示されている。さらに、特許文献3では、食用ナッツと、高アシルジェランガムと、アラビアガムと、緩衝剤と、を含む液体天然植物性クリーマー組成物が開示されている。
しかし、植物性成分を使用したコーヒーホワイトナーでは、使用した植物性タンパク質に由来するオフフレーバーが生じやすい、乳固形分を配合したコーヒーホワイトナーに比べて、コク味が十分でないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-158295号公報
【文献】特表2019-509028号公報
【文献】特表2019-512211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、コーヒーや紅茶などの飲料に添加した際に良好なナッツ風味およびコク味が感じられ、クリーミングや沈殿が生じることがない液状コーヒーホワイトナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対し鋭意検討を行った結果、液状コーヒーホワイトナーにナッツペースト、植物性油脂(ナッツペーストからのナッツ油を除く)、および特定の乳化剤を用いることにより、コーヒーや紅茶などの飲料に加えた際に良好なナッツ風味およびコク味が感じられ、クリーミングや沈殿が生じることがないという知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、本発明は
(1)9重量%以下の皮なしのナッツペースト、7~35重量%の植物性油脂(ナッツペーストからのナッツ油を除く)、および下記イ、ロ、ハいずれか1つを含有することを特徴とする液状コーヒーホワイトナー、
イ:高HLBのショ糖脂肪酸エステル
ロ:中HLBのショ糖脂肪酸エステルおよび高HLBのポリグリセリン脂肪酸エステル
ハ:中HLBのショ糖脂肪酸エステルおよびレシチン、
(2)pH調整剤を含有する(1)記載のコーヒーホワイトナー
(3)動物性原料を使用しない(1)または(2)記載のコーヒーホワイトナー、
(4)(1)から(3)のいずれか1つに記載の液状コーヒーホワイトナーを配合し、加熱殺菌して調製された飲料、
に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、コーヒーや紅茶などの飲料に加えた際に良好なナッツ風味、および植物性油脂によるコク味が感じられ、クリーミングや沈殿が生じることがない液状コーヒーホワイトナーを得ることができる。また、本発明の液状コーヒーホワイトナーを添加する事により、ナッツペーストを直接添加した場合に比べて、少ないナッツ固形分にも関わらず、良好なナッツ風味を有するコーヒーや紅茶等の飲料を簡便に調製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0011】
本発明の液状コーヒーホワイトナーは、皮なしのナッツペーストを含有する。皮つきのナッツペーストを使用した場合には、液状コーヒーホワイトナーにおいて皮由来の沈殿を生じることがあるため、好ましくない。
【0012】
本発明においてナッツとは、各種のナッツ類が例示でき、例えばアーモンド、ヘーゼルナッツ、ブラジルナッツ、クルミ、マカダミアナッツ、カシューナッツ、落花生、栗、ピスタチオ、ペカン及びこれらの組み合わせであってもよい。また、これらのナッツ類を脱脂したものであってもよい。
【0013】
本発明においてナッツペーストとは、原料となる上述のナッツを三本ロールなどの公知磨砕手段を用いて磨砕してペースト状にしたものであり、無脂ナッツ固形物がそれぞれのナッツから得られる油中に分散または懸濁している。そのため、本発明のナッツペーストは、製造工程で20メッシュをパスし、ナッツの粒感が無く、なめらかな口当たりである。なお、本発明においてナッツ固形分とは、ナッツペースト中の水分を除いた値であり、無脂ナッツ固形分およびナッツ油の総和である。
【0014】
また、本発明においてナッツペーストは、原料となるナッツのローストの程度や原産地などにより限定されることはない。そのため、ロースト程度が低い、またはローストしていない天然(生の)ナッツから調製されたペーストだけでなく、ロースト程度を高くして、ナッツ自体が着色して、ナッツ独自の匂いが強いペーストを使用することができる。さらに、これらのロースト程度の異なるナッツペーストを任意に混合して使用することもできる。
【0015】
本発明の液状コーヒーホワイトナーにおいて、9重量%以下のナッツペーストを含量する。より好ましくは、液状コーヒーホワイトナー中のナッツペースト含量は1~8重量%、さらに好ましくは2~7重量%である。ナッツペーストが下限値より少ないと、ナッツ風味が弱い場合があり、逆に、上限値より多いと乳化安定性が劣る場合がある。
【0016】
本発明の液状コーヒーホワイトナーは、ナッツ由来原料からのナッツ油に加えて、植物性油脂を含有する。本発明において植物性油脂は、特に制限されることはなく、例えば、コーン油、ごま油、こめ糠油、ベニバナ油、綿実油、ひまわり油、菜種油、ヤシ油、パーム油、パーム核油、オリーブオイル、ピーナッツオイル、アーモンドオイル、アボガドオイル、へーゼルナッツオイル、ウォルナッツオイル、エゴマ油等の植物性油脂並びにこれらを水素添加、分別及びエステル交換から選択される1種以上の処理を施した加工油脂、または中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が挙げられる。これらの油脂を単独で用いることもでき、または2種以上を組み合わせて用いることもできる。なかでも、ラウリン系油脂であるヤシ油、パーム核油及びこれらの加工油脂、または中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)が、水中油型乳化物に適した物性と風味、安定性が得られる点で好ましい。
【0017】
また、本発明の液状コーヒーホワイトナーにおいて、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)の含量は0.5重量%以上が好ましく、より好ましくはMCT含量が1重量%以上であり、さたに好ましくは2重量%以上である。MCT含量が下限値より少ないと、コク味の付与効果が弱い場合がある。
【0018】
本発明でいう中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)とは、炭素数8及び10の飽和脂肪酸で構成されたトリグリセリドを意味し、炭素数8及び10の飽和脂肪酸の合計量が、全構成脂肪酸の98質量%以上である。本発明において、中鎖脂肪酸トリグリセリドを構成する脂肪酸により特に制限されるものではないが、なかでも構成脂肪酸として炭素数8と10の脂肪酸を50:50~80:20の範囲で含むことが好ましい。より好ましくは、炭素数8と10の脂肪酸を60:40~70:30で含むことが好ましく、最も好ましくは60:40である。
【0019】
本発明の液状コーヒーホワイトナーにおいて、植物性油脂の含量は液状コーヒーホワイトナー中7.0~35.0重量%、好ましくは8.5~33重量%、より好ましくは10~30重量%である。植物性油脂が下限値より少ないと、コク味の付与効果が弱い場合があり、逆に、上限値より多いと乳化安定性が劣る場合がある。なお、ここでいう植物性油脂とは、ナッツペーストからのナッツ油を除くものとする。
【0020】
本発明の液状コーヒーホワイトナーの総油分は、8~45重量%であることが好ましい。より好ましくは10~42重量%、さらに好ましくは12~38重量%である。なお、本発明において総油分とは、ナッツペーストからのナッツ油および植物性油脂の総和である。
【0021】
本発明の液状コーヒーホワイトナーは、乳化剤として下記イ、ロ、ハいずれか1つを含有する。
イ:高HLBのショ糖脂肪酸エステル
ロ:中HLBのショ糖脂肪酸エステルおよび高HLBのポリグリセリン脂肪酸エステル
ハ:中HLBのショ糖脂肪酸エステルおよびレシチン、
【0022】
本発明の液状コーヒーホワイトナーにおいて、高HLBのショ糖脂肪酸エステル(イ)を使用する場合の高HLBとは、HLB値9以上であり、より好ましくはHLB値が10以上である。また、ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸が炭素数として14~18の飽和脂肪酸であることが好ましい。これらの高HLBのショ糖脂肪酸エステルを、2種以上併用して使用することもできる。本発明において高HLBのショ糖脂肪酸エステルの含量は、液状コーヒーホワイトナー中0.03~1.0重量%が好ましく、より好ましくは0.05~0.7重量%である。
【0023】
本発明の液状コーヒーホワイトナーにおいて、中HLBのショ糖脂肪酸エステルを使用する場合には、高HLBのポリグリセリン脂肪酸エステル(ロ)、またはレシチン(ハ)を併用する必要がある。本発明において、中HLBとはHLB値が4~8である。また、ショ糖脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、炭素数として14~18の飽和脂肪酸であることが好ましい。これらの中HLBのショ糖脂肪酸エステルを、2種以上併用して使用することもできる。本発明において中HLBのショ糖脂肪酸エステルの含量は、液状コーヒーホワイトナー中0.03~1.0重量%が好ましく、より好ましくは0.05~0.7重量%である。
【0024】
本発明の液状コーヒーホワイトナーにおいては、中HLBのショ糖脂肪酸エステルに併用する高HLBとは、HLB値が9以上であり、より好ましくはHLB値が10以上である。また、ポリグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、炭素数として14~18の飽和脂肪酸であることが好ましい。これらのポリグリセリン脂肪酸エステルとしては、ジグリセリンモノステアレート、テトラグリセリンモノステアレート、ペンタグリセリンモノステアレート、ヘキサグリセリンモノステアレート、デカグリセリンモノステアレート等が例示でき、2種以上併用して使用することもできる。本発明においてポリグリセリン脂肪酸エステルの含量は、液状コーヒーホワイトナー中0.03~1.0重量%が好ましく、より好ましくは0.05~0.7重量%である。
【0025】
本発明の液状コーヒーホワイトナーにおいて、中HLBのショ糖脂肪酸エステルと併用するレシチンとは、一般に入手し易い大豆レシチン、卵黄レシチン、及びこれらの分画レシチンあるいは酵素分解したリゾレシチンのような改質レシチンが例示できる。これらのレシチンを、2種以上併用して使用することもできる。本発明において中HLBのショ糖脂肪酸エステルと併用する場合のレシチンの含量は、液状コーヒーホワイトナー中0.03~1.0重量%が好ましい。
【0026】
本発明の液状コーヒーホワイトナーは、pH調整剤を含有することが好ましい。本発明のpH調整剤は特に限定はされないが、例えば、クエン酸三ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム(無水)、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウムを1種または2種以上使用することができる。
【0027】
本発明の液状コーヒーホワイトナーは、動物性原料を含有しないことが好ましい。本発明において動物性原料とは、乳由来の原料であるバター、クリーム、バターミルク、チーズ、クリームチーズ、濃縮ホエー,ホエー蛋白濃縮物、ホエー蛋白質分離物などの乳清、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、乳飲料、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、発酵乳、トータルミルクプロテイン、カゼイン、乳脂、調製乳脂等またはこれらを粉体加工したもの、および豚脂や牛脂といった動物性油脂等が挙げられる。
【0028】
本発明の液状コーヒーホワイトナーには、1種または2種以上の糖類を添加してもよい。添加する糖類は特に限定されないが、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、オリゴ糖、還元糖ポリデキストロース、ソルビトール、還元乳糖、トレハロース、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、ステビア、アスパルテーム、糖アルコール等が例示できる。
【0029】
本発明の液状コーヒーホワイトナーには、例えば、上述以外の酸化防止剤、増粘多糖類、塩類、香料成分、着色料、酸味料、保存料、栄養強化剤等の一般的なコーヒーホワイトナーに使用される添加物を、本発明の効果を妨げない範囲で適宜配合することができる。酸化防止剤としては、特に制限されることはなく、トコフェロール、アスコルビン酸及びその塩、並びにアスコルビルパルミテートのようなエステル等を例示することができる。
【0030】
本発明の液状コーヒーホワイトナーには、1種または2種以上の増粘多糖類を使用することもできる。添加する増粘多糖類は特に限定されないが、増粘多糖類としては、ジェランガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、プルラン、グァーガム、サイリウムシードガム、水溶性大豆多糖類、カラギーナン、タマリンド種子ガム及びタラガムが例示できる。
【0031】
本発明の液状コーヒーホワイトナーの製造方法について説明する。例えば、水を60~70℃に加熱しながら乳化剤、及びpH調整剤等の添加物を加えて攪拌し、溶解あるいは分散させた水相を調整後、あらかじめ調合した油相を添加し、予備乳化を行う。予備乳化後、ホモゲナイザーにて均質化し、バッチ式殺菌法、または間接加熱方式あるいは直接加熱方式によるUHT滅菌処理法にて滅菌し、再びホモゲナイザーにて均質化し冷却する。本発明のコーヒーホワイトナーは、上記以外の当業者に公知の方法によっても製造する事ができる。
【0032】
本発明の液状コーヒーホワイトナーは、例えばこれを収納した容器と併せて流通することもできる。本発明の液状コーヒーホワイトナーは、加熱滅菌され、無菌充填することができるため、保存、輸送が容易であり、必要な時直ぐに利用できる利点がある。充填法としては、コーヒーホワイトナーをあらかじめ加熱滅菌した後に無菌的に容器に充填する方法(例えばUHT滅菌とアセプティック充填を併用する方法)、またはコーヒーホワイトナーを容器に充填した後、容器と共に加熱滅菌する方法(例えばレトルト殺菌)などが採用できる。なお、UHT滅菌法では、間接加熱方式および直接加熱方式のどちらも使用することができる。
【0033】
本発明の液状コーヒーホワイトナーは、コーヒー、紅茶、抹茶、緑茶、ほうじ茶、ココア等の飲料に添加、または混合する事により良好なナッツ風味、および植物性油脂によるコク味が感じられ、クリーミングや沈殿を生じることがない。本発明の液状コーヒーホワイトナーの添加量としては、1~30重量%が好ましく、より好ましくは3.5~28重量%、さらに好ましくは5~26重量%である。コーヒーホワイトナーの添加量が下限値より少ないと、ナッツ風味および植物性油脂によるコク味の付与効果が弱い場合があり、逆に上限値を超えると、油っぽく感じる場合がある。
【0034】
本発明でいう飲料の加熱殺菌とは、適用されるべき法規(日本にあっては食品衛生法)に定められた条件に適合するものであれば特に限定されるものではない。例えば、レトルト殺菌法、高温短時間殺菌法(HTST法)、超高温殺菌法(UHT法)などを挙げることができる。また、容器詰飲料の容器の種類に応じて加熱殺菌法を適宜選択することも可能であり、例えば、PETボトルを飲料容器として用いる場合などはUHT殺菌が好ましい。また、加熱装置や加熱方式にも特に制限はなく、例えば、直接水蒸気を吹き込むスチームインジェクション式や飲料を水蒸気中に噴射して加熱するスチームインフュージョン式などの直接加熱方式、プレートやチューブなど表面熱交換器を用いる間接加熱方式など公知の方法を採用することができる。
【実施例
【0035】
以下に本発明の実施例を記載するが、この発明の技術思想がこれらの例示によって限定されるものではない。尚、特に示さない限り、部、%等は重量基準による。
【0036】
(コーヒー飲料の評価方法)
まず、参考例として下表1に示すように、ナッツ固形分が約1.0重量%となるように各種ナッツ素材を添加したコーヒー飲料を調整し、以下の方法で乳化安定性の評価を行った。得られたコーヒー飲料は5℃、55℃それぞれに1週間静置後、カップに開けて目視にて性状の評価を行った。
【0037】
次に、得られたコーヒー飲料(参考例1~4)について、ナッツ風味、コク味の評価を行った。なお、各サンプルの乳化安定性及び官能評価は、日々、クリーム素材の開発に従事し、試作されたクリームの官能評価を行っているパネラー5名により、通常のコーヒー飲料をイメージしながら、以下の基準で合議性により決定した。

コーヒー飲料の安定性) 3~4を合格とした。
4:クリーミングおよび沈殿が認められない
3:クリーミングおよび/または沈殿がわずかに認められるが、振るとなくなる
2:クリーミングおよび/または沈殿・凝集物が少し認められ、振ってもなくならない
1:クリーミングおよび/または沈殿・凝集物が多く認められ、振ってもなくならない
ナッツ風味) 2~3を合格とした。
3:ナッツ風味を強く感じる
2:ナッツ風味を感じる
1:ナッツ風味が弱い、または感じられない
コク味) 2~3を合格とした。
3:コク味を強く感じる
2:コク味を感じる
1:コク味が感じられない
総合評価) 良好を合格とした。
良好:ナッツ風味、およびコク味が感じれられ、乳化安定性に優れている
可:ナッツ風味、またはコク味が弱い、または乳化安定性が若干劣る
不適:ナッツ風味、およびコク味が感じられない、または乳化安定性が劣る

実験1 各種ナッツ素材を添加したコーヒー飲料
【0038】
コーヒーエキス(Brix25.5、高砂香料工業株式会社製)3.00部、水94.79部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB13)0.10部、ショ糖脂肪酸エスエル(HLB5)0.10部、カラギーナン0.01部、及びアーモンドペースト皮なし(東海ナッツ株式会社製、固形分98.8重量%)1.00部を加えて、65℃で10分調合した後、液のpHが6.8になるように炭酸水素ナトリウムを添加し、15MPaで均質化し、容器に充填後レトルト殺菌(121℃、30分)し、冷却することにより参考例1のコーヒー飲料を調製した。
【0039】
アーモンドペースト皮なしをヘーゼルナッツペースト皮なし(東海ナッツ株式会社製、固形分99.0重量%)にした以外は、参考例1と同様にして参考例2のコーヒー飲料を得た。
【0040】
アーモンドペースト皮なしをピスタチオペースト皮なし(東海ナッツ株式会社製、固形分97.8重量%)にした以外は、参考例1と同様にして参考例3のコーヒー飲料を得た。
【0041】
水を85.74部、アーモンドミルク(筑波乳業株式会社製、「濃いアーモンドミルク~まろやかプレーン~」、ナッツ固形分9.2重量%)を11.00部とした以外は、参考例1と同様にして参考例4のコーヒー飲料を得た。なお、アーモンドミルク中のナッツ固形分は、栄養成分表示より算出した。
【0042】
表1 各種ナッツ素材を添加したコーヒー飲料の配合
コーヒー飲料のpHが6.8になるように炭酸水素ナトリウムを添加し調整した。
【0043】
表2 コーヒー飲料での評価
【0044】
以上のように、コーヒー飲料にナッツ固形分を約1.0重量%添加しても、ナッツ風味は十分に付与出来なかった。また、ナッツペーストおよび市販のナッツミルクを直接添加するだけでは、コク味および乳化安定性を満足するコーヒー飲料を調製することはできなかった。

実験2 ナッツペーストを使用した液状コーヒーホワイトナー
【0045】
下表3に示すように、本発明の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
水80.55部にショ糖脂肪酸エステル(HLB16)0.20部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB5)0.20部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB13)0.10部、pH調整剤0.21部(クエン酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム)、セルロース0.15部、キサンタンガム0.05部、グアーガム0.03部、ネイティブジェランガム0.01部を添加混合、溶解し水相とした。また、融解した精製ヤシ油(ヨウ素価8.5)15.00部、アーモンドペースト皮なし3.50部を混合して、油相とした。次に、予備乳化タンクで水相と油相を60℃、20分間高速攪拌し予備乳化を行った後、プレート式熱交換機にて70~80℃まで予備加熱を行い、超高温滅菌装置(岩井機械工業(株)製)(直接蒸気吹き込み方式)によって、140~150℃まで加熱した。さらに殺菌保持チューブであるホールディングチューブにて140~150℃で3~12秒間保持し、蒸発冷却し70~80℃まで冷却した。その後、再均質化して、再びプレート冷却装置にて10℃以下に冷却する事により、実施例1の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0046】
植物性油脂として精製ヤシ油を精製パーム核油(ヨウ素価17.5)とした以外は、実施例1と同様にして実施例2の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0047】
水を65.55部、植物性油脂として精製ヤシ油を30.0部とした以外は、実施例1と同様にして実施例3の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0048】
アーモンドペースト皮なしをアーモンドペースト生皮なし(ユニオン商事株式会社製、固形分98.0重量%)とした以外は、実施例1と同様にして実施例4の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0049】
アーモンドペースト皮なしをヘーゼルナッツペースト皮なしにして、水を80.55部とした以外は、実施例1と同様にして実施例5の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0050】
精製ヤシ油15.0部を精製ヤシ油12.0部、中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT、C8:C10=60:40)3.0部とした以外は、実施例1と同様にして実施例6の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0051】
ネイティブジェランガムを無添加とし、水を80.56部とした以外は、実施例1と同様にして実施例7の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0052】
ショ糖脂肪酸エステル(HLB5)、およびポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB13)を無添加とし、水を80.85部とした以外は、実施例1と同様にして実施例8の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0053】
ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB13)を無添加とし、水を80.85部、ショ糖脂肪酸エステル(HLB16)0.1部、およびショ糖脂肪酸エステル(HLB5)0.1部とした以外は、実施例1と同様にして実施例9の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0054】
ショ糖脂肪酸エステル(HLB16)を無添加とし、水を80.75部とした以外は、実施例1と同様にして実施例10の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0055】
ショ糖脂肪酸エステル(HLB16)、およびポリグリセリン脂肪酸エステルを無添加とし、水を80.80部、およびレシチンを0.05部とした以外は、実施例1と同様にして実施例11の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0056】
精製ヤシ油15.0部を5.0部、水を90.55部とした以外は、実施例1と同様にして比較例1の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0057】
アーモンドペースト皮なしをアーモンドペーストロースト皮つき(固形分98.0重量%)とした以外は、実施例1と同様にして比較例2の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0058】
ショ糖脂肪酸エステルを無添加にし、水を80.95部とした以外は、実施例1と同様にして比較例3の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0059】
ショ糖脂肪酸エステル(HLB16)、およびポリグリセリンス脂肪酸エステルを無添加にし、水を80.85部とした以外は、実施例1と同様にして比較例4の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0060】
アーモンドペースト皮なしを10.0部、および水を74.05部とした以外は、、実施例1と同様にして比較例5の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0061】
ショ糖脂肪酸エステル、およびポリグリセリン脂肪酸エステルを無添加にし、水を81.00部、レシチンを0.05部とした以外は、実施例1と同様にして比較例6の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0062】
ショ糖脂肪酸エステル、およびポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB13)を無添加にし、水を80.95部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB8.4)を0.10部とした以外は、実施例1と同様にして比較例7の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0063】
ショ糖脂肪酸エステル(HLB16)、およびポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB13)を無添加にし、水を80.75部、ポリグリセリン脂肪酸エステル(HLB8.4)を0.10部とした以外は、実施例1と同様にして比較例8の液状コーヒーホワイトナーを調製した。
【0064】
得られた液状コーヒーホワイトナー(実施例1~11、比較例1~8)について、前述のコーヒー飲料と同じパネラー、基準による合議性により、乳化安定性、ナッツ風味、コク味の評価を決定した。なお、得られた液状コーヒーホワイトナーを十分冷やした(3~7℃)後、100mlビーカーに50ml分注し攪拌子と共に、室温にて20分間シェイカーにより衝撃を与え続けて評価を行った。

ホワイトナーの安定性) 3~4を合格とした。
4:流動性を保っており良好
3:許容範囲
2:粘度が高く、不安定
1:固化
【0065】
表3 液状コーヒーホワイトナーの配合と評価



実験3 各種液状コーヒーホワイトナーを添加したコーヒー飲料
【0066】
下表4に示すように、本発明で得られた液状コーヒーホワイトナー(実施例1~11、比較例1~8)5.0部を添加して、参考例と同様のコーヒー飲料を調製した。ここで、コーヒー飲料中のナッツ固形分は、比較例5が0.50重量%であった以外は、0.175重量%であった。なお、実施例1の液状コーヒーホワイトナーを添加した飲料を実施例1のコーヒー飲料とし、以下同様に記載した。
【0067】
表4 各種液状コーヒーホワイトナーを添加したコーヒー飲料の配合
コーヒー飲料のpHが6.8になるように炭酸水素ナトリウムを添加し調整した。
【0068】
上記実験2で得られた液状コーヒーホワイトナー(実施例1~11、比較例1~8)を添加して得られたコーヒー飲料について、上記の基準に従った評価結果を下表5に示す。なお、各サンプルの官能評価は、参考例のコーヒー飲料と比較しながら、合議性により決定した。
【0069】
表5 コーヒー飲料の評価


【0070】
コーヒーエキス3.0部を水97.0部で希釈して調製したコーヒーに、実施例1の液状コーヒーホワイトナー20.0部を添加混合し、加熱殺菌をせずに実施例12のコーヒー飲料を調製した。このコーヒー飲料は、強いナッツ風味および植物性油脂によるコク味が感じられ、クリーミングや沈殿が生じることもなく、良好であった。
【0071】
結果と考察
以上の結果から明らかなように、本発明の液状コーヒーホワイトナーをコーヒーに添加した際、良好なナッツ風味および植物性油脂によるコク味の付与効果が認められ、乳化安定性も良好であった。また、本発明の液状コーヒーホワイトナーを添加する事により、ナッツペーストを直接添加した参考例の場合に比べて、非常に少ないナッツ固形分にも関わらず、良好なナッツ風味を有するコーヒーを簡便に調製することができた。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明により、コーヒーや紅茶等の飲料に添加する事により、良好なナッツ風味および植物性油脂によるコク味が感じられ、クリーミングや沈殿が生じることがない液状コーヒーホワイトナーを製造することができる。また、本発明の液状コーヒーホワイトナーを添加する事により、少ないナッツ固形分にも関わらず、良好なナッツ風味を有するコーヒーや紅茶等の飲料を調製することができる。さらに、ナッツ風味を強化したい場合には、実施例12のように本発明の液状コーヒーホワイトナーを適宜増量することにより簡便に調製することができる。