(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 69/00 20060101AFI20240925BHJP
C08L 67/02 20060101ALI20240925BHJP
C08G 63/672 20060101ALI20240925BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240925BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C08L69/00
C08L67/02
C08G63/672
C08J5/18 CEZ
C08J5/18 CFD
C08L101/00
(21)【出願番号】P 2020099382
(22)【出願日】2020-06-08
【審査請求日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】P 2019115149
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【氏名又は名称】大野 玲恵
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】池田 真一
(72)【発明者】
【氏名】永井 雅之
(72)【発明者】
【氏名】森下 隆実
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-246925(JP,A)
【文献】特開平10-251500(JP,A)
【文献】特開2015-030830(JP,A)
【文献】特開2005-002237(JP,A)
【文献】特表2018-538402(JP,A)
【文献】特開2021-001309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 69/00
C08L 67/00-67/08
C08G 63/00-63/91
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂(A)と重縮合体(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物(C)であって、
前記熱可塑性樹脂組成物(C)が、
前記ポリカーボネート樹脂(A)40~99重量%と
前記重縮合体(B)60~1重量%とを含み、かつ
前記重縮合体(B)が、ポリエステル樹脂(B1)、ポリカーボネート樹脂(B2)、又はポリエステルカーボネート樹脂(B3)から選ばれ、
前記ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を
65~
75モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~
20モル%で含み、
前記ポリカーボネート樹脂(B2)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を
10~
30モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~
20モル%
、
(iii)ビスフェノールAを50~90モル%で含み、
前記ポリエステルカーボネート樹脂(B3)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を
60~100モル%で含
み、
前記ポリカーボネート樹脂(A)がビスフェノールのポリ炭酸エステルであり、
前記スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(a1)が、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンであり、
前記スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(b1)が、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサンであり、
前記脂環族ジオール(b2)が、1,4-シクロヘキサンジメタノールであり、
前記ポリエステル樹脂(B1)のジカルボン酸構成単位が、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、および1,4-シクロヘキサンジカルボン酸残基のうち少なくとも1種から選ばれるジカルボン酸単位であり、
前記ポリエステルカーボネート(B3)のジカルボン酸構成単位が、脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)を含み、
前記脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)が、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルである、熱可塑性樹脂組成物(C)。
【請求項2】
前記ビスフェノールが、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールZ、ビスフェノールCD、ビスフェノールC、ビスフェノールIOTD、ビスフェノールIBTDおよびビスフェノールMIBKからなる群より選択される、請求項
1に記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【請求項3】
前記ポリエステル樹脂(B1)がそのジオール構成単位中に、
前記スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)、
前記スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び
前記脂環族ジオール(b2)
を含む、請求項1
または2に記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【請求項4】
下記(i)~(iii)の物性を有する、請求項1
~3のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
(i)示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が130℃以上
(ii)1mm厚の射出成形体の全光線透過率が87%以上、かつ曇価が4%以下
(iii)臨界角法で測定される屈折率が1.45~1.60
【請求項5】
請求項1
~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて得られ、500μm厚のシートの全光線透過率が87%以上である、シート。
【請求項6】
請求項1
~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて得られ、50μm厚のフィルムの曇価が4%以下である、フィルム。
【請求項7】
請求項1
~4のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)と熱可塑性樹脂組成物(D)とのブレンド組成物(E)であって、前記熱可塑性樹脂組成物(C)と前記熱可塑性樹脂組成物(D)の臨界角法で測定される屈折率値の差が0.02以下である、ブレンド組成物(E)。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂組成物(D)が、ポリエーテルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物である、請求項
7に記載のブレンド組成物(E)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物に関する。より詳細には、本発明は、ポリカーボネート樹脂の透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもポリカーボネート樹脂の屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有するポリカーボネート樹脂系熱可塑性樹脂組成物、並びに当該熱可塑性樹脂組成物を用いてなる射出成形体、シート及びフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂(以下「PC」ということがある。)は耐熱性、耐衝撃性、透明性などの特長からエクステリア、電子電気用途、光ディスク基板等の分野で使用されてきた。更に、それらの特長を生かした自動車用途、医療材料用途への応用が広がると共に、PCの透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもPCの屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有する熱可塑性樹脂組成物への要望が高まっている。
【0003】
PCの屈折率は1.58~1.59程度であり、その屈折率を調整するためにポリエチレンテレフタラート(以下「PET」ということがある。)をPCの改質剤とすることも可能であるが、PETを添加することでPCの透明性が著しく損なわれることが知られている。この対策として、溶融混合時の滞留時間を長くする方法や溶融混合時の触媒としてTi系触媒を用いる方法が検討されている。しかしながら、この方法によっては、透明性は十分とはいえず、更に、熱分解による組成物の黄変や、分解によりアルデヒドなどのガスが生ずるという問題があった。更にPETのガラス転移温度(Tg)が比較的低いために樹脂組成物の耐熱性が著しく低下するという問題があった。
【0004】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(以下「PBT」ということがある。)をPCの改質剤とした場合、比較的透明性が得られているものの、透明性が十分とは言えず、加えて、耐熱性も著しく低下するという問題があった。また、ジオール構成単位の40モル%を1,4-シクロヘキサンジメタノール単位とした変性PETとPCとの熱可塑性樹脂組成物が提案されているが(特許文献1参照)、この樹脂組成物は、透明性は良好であるものの、耐熱性が低下するという問題があった。
【0005】
ポリカーボネート樹脂と特定の共重合ポリエステル樹脂とからなる透明性に優れた熱可塑性樹脂組成物、並びに当該熱可塑性樹脂組成物を用いてなる射出成形体、シート及びフィルムに関する技術が提案されているが(特許文献2参照)、耐熱性は不十分であり、当該共重合ポリエステル樹脂の屈折率が大きいため、ベース樹脂であるPCの屈折率調整のためにはより多くの共重合ポリエステル樹脂を溶融混合する必要があり、この場合にPCの透明性を維持することはできなかった。従って、PCの透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもPCの屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有するポリエステル樹脂添加ポリカーボネート樹脂系熱可塑性樹脂組成物は知られていない。
【0006】
また、熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂(以下「PE」ということがある。)、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂(以下「PEC」ということがある。)などが知られている(特許文献3~7)。しかしながら、これらの熱可塑性樹脂をPCの改質剤として用い、PCの透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもPCの屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有するポリカーボネート樹脂系熱可塑性樹脂組成物は知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-63641号公報
【文献】特開2003-246925号公報
【文献】特許第4062416号公報
【文献】特許第5445652号公報
【文献】特開2014-044394号公報
【文献】特表2016-525610号公報
【文献】特表2018-504497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の如き状況に鑑み、PCの透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもPCの屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有するPC系熱可塑性樹脂組成物、並びに当該熱可塑性樹脂組成物を用いてなる射出成形体、シート及びフィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため種々検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂と、ジオール構成単位として特定の環状アセタール骨格を有するジオールを一定割合含む重縮合体とを配合して得られる熱可塑性樹脂組成物が、PCの透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもPCの屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有することを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の<1>~<21>の態様を含む。
【0011】
<1>
ポリカーボネート樹脂(A)と重縮合体(B)とを含む熱可塑性樹脂組成物(C)であって、
熱可塑性樹脂組成物(C)が、ポリカーボネート樹脂(A)40~99重量%と重縮合体(B)60~1重量%とを含み、かつ
重縮合体(B)が、ポリエステル樹脂(B1)、ポリカーボネート樹脂(B2)、又はポリエステルカーボネート樹脂(B3)のうち少なくとも1種の樹脂から選ばれ、
前記ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を61~100モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~39モル%で含み、
前記ポリカーボネート樹脂(B2)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を1~100モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~99モル%で含み、
前記ポリエステルカーボネート樹脂(B3)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を1~100モル%で含む、
熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0012】
<2>
ポリカーボネート樹脂(A)が、一般式(1)及び/又は(2)で表される繰返し単位から構成されるポリカーボネート樹脂である、上記<1>に記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【化1】
【化2】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の非環状炭化水素基、炭素数5~10の脂環式炭化水素基から選ばれ;
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の非環状炭化水素基、ハロゲン原子、置換または非置換のフェニル基から選ばれ;
m及びnはそれぞれ独立して1または2であり;
kは4または5である。)
【0013】
<3>
ポリカーボネート樹脂(A)がビスフェノールのポリ炭酸エステルである、上記<1>に記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0014】
<4>
前記ビスフェノールが、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールZ、ビスフェノールCD、ビスフェノールC、ビスフェノールIOTD、ビスフェノールIBTDおよびビスフェノールMIBKからなる群より選択される、上記<3>に記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0015】
<5>
前記スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(a1)が、一般式(3)で表される、上記<1>ないし<4>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【化3】
(式中、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、炭素数が1~10の非環状炭化水素基、炭素数が3~10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6~10の芳香族炭化水素基から選ばれる特性基を表す。)
【0016】
<6>
前記スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(b1)が、一般式(4)で表される、上記<1>ないし<5>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【化4】
(式中、
R
5は前記と同様であり;
R
7は炭素数が1~10の非環状炭化水素基、炭素数が3~10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6~10の芳香族炭化水素基から選ばれる特性基を表す。)
【0017】
<7>
前記脂環族ジオール(b2)が、一般式(5)で表される、上記<1>ないし<6>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【化5】
(式中、
R
8、R
9、R
10及びR
11はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6の非環状炭化水素基から選ばれ;
p、q、r及びsはそれぞれ独立して、0、1または2である。)
【0018】
<8>
ポリエステルカーボネート(B3)のジカルボン酸構成単位が、脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)を含む、上記<1>ないし<7>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0019】
<9>
前記脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)が、一般式(6)で表される、上記<1>ないし<8>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【化6】
(式中、
R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、およびR
13それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6の非環状炭化水素基から選ばれ;
p及びqはそれぞれ独立して、0、1または2である。)
【0020】
<10>
前記スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(a1)が、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンである、上記<1>ないし<9>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0021】
<11>
前記スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(b1)が、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサンである、上記<1>ないし<10>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0022】
<12>
前記脂環族ジオール(b2)が、1,4-シクロヘキサンジメタノールである、上記<1>ないし<11>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0023】
<13>
前記脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)が、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルである、上記<8>に記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0024】
<14>
ポリエステル樹脂(B1)がそのジオール構成単位中に、
スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)、及び
スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)
を含む、上記<1>ないし<13>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0025】
<15>
ポリエステル樹脂(B1)がそのジオール構成単位中に、
スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)、
スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び
脂環族ジオール(b2)
を含む、上記<1>ないし<13>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0026】
<16>
ポリエステル樹脂(B1)のジカルボン酸構成単位がテレフタル酸残基、イソフタル酸残基、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸残基のうち少なくとも1種から選ばれるジカルボン酸単位である、<1>ないし<15>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
【0027】
<17>
下記(i)~(iii)の物性を有する、上記<1>ないし<16>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)。
(i)示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が130℃以上
(ii)1mm厚の射出成形体の全光線透過率が87%以上、かつ曇価が4%以下
(iii)臨界角法で測定される屈折率が1.45~1.60
【0028】
<18>
上記<1>ないし<17>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて得られ、500μm厚のシートの全光線透過率が87%以上である、シート。
【0029】
<19>
上記<1>ないし<17>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて得られ、50μm厚のフィルムの曇価が4%以下である、フィルム。
【0030】
<20>
上記<1>ないし<17>のいずれかに記載の熱可塑性樹脂組成物(C)と熱可塑性樹脂組成物(D)とのブレンド組成物(E)であって、前記熱可塑性樹脂組成物(C)と前記熱可塑性樹脂組成物(D)の臨界角法で測定される屈折率値の差が0.02以下である、ブレンド組成物(E)。
【0031】
<21>
前記熱可塑性樹脂組成物(D)が、ポリエーテルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物である、上記<20>に記載のブレンド組成物(E)。
【発明の効果】
【0032】
本発明により、ポリカーボネート樹脂の透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもポリカーボネート樹脂の屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有するポリカーボネート樹脂-熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
1.熱可塑性樹脂組成物(C)
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)と重縮合体(B)とを含む。
【0034】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)40~99重量%と重縮合体(B)60~1重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)40~95重量%と重縮合体(B)60~5重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)50~99重量%と重縮合体(B)50~1重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)50~95重量%と重縮合体(B)50~5重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)60~99重量%と重縮合体(B)40~1重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)60~95重量%と重縮合体(B)40~5重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)70~99重量%と重縮合体(B)30~1重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)70~95重量%と重縮合体(B)30~5重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)75~99重量%と重縮合体(B)25~1重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)75~95重量%と重縮合体(B)25~5重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)80~99重量%と重縮合体(B)20~1重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)80~95重量%と重縮合体(B)20~5重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)90~99重量%と重縮合体(B)10~1重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)90~95重量%と重縮合体(B)10~5重量%とを含んでよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)95~99重量%と重縮合体(B)5~1重量%とを含んでよい。
【0035】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)において、ポリカーボネート樹脂(A)と重縮合体(B)との配合比を上記の範囲に調整することにより、ポリカーボネート樹脂の屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有するポリカーボネート樹脂-熱可塑性樹脂組成物を得ることができる。また、屈折率を適切に調整できることにより、他の樹脂組成物とのブレンド組成物を作製した場合にも、透明性を担保することができる。
【0036】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂(A)と重縮合体(B)とを常法により混練することにより得ることができる。
【0037】
2.ポリカーボネート樹脂(A)
本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)は、一般式(1)及び/又は(2)で表される繰返し単位から構成され得る。
【化7】
【化8】
(式中、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の非環状炭化水素基、炭素数5~10の脂環式炭化水素基から選ばれ;
R
3及びR
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の非環状炭化水素基、ハロゲン原子、置換または非置換のフェニル基から選ばれ;
m及びnはそれぞれ独立して1または2であり;
kは4または5である。)
【0038】
本発明の一実施形態において、上記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4の非環状炭化水素基、炭素数5~7の脂環式炭化水素基から選ばれ得る。
【0039】
本発明の一実施形態において、上記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシルであってよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルであってよい。
【0040】
本発明の一実施形態において、上記一般式(1)及び(2)中、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4の非環状炭化水素基、ハロゲン原子、置換または非置換のフェニル基から選ばれ得る。
【0041】
本発明の一実施形態において、上記一般式(1)及び(2)中、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、クロロ、フルオロ、ブロモ、ヨード、フェニルであってよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチルであってよい。
【0042】
本発明において、ポリカーボネート樹脂(A)は、ビスフェノールのポリ炭酸エステルであってよい。
【0043】
本発明の一実施形態において、ビスフェノールは、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールZ、ビスフェノールCD、ビスフェノールC、ビスフェノールIOTD、ビスフェノールIBTDおよびビスフェノールMIBKからなる群より選択され得るが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の一実施形態において、ポリカーボネート樹脂(A)は、ビスフェノールAのポリ炭酸エステルであってよい。
【0045】
本発明において用いられるポリカーボネート樹脂(A)は、常法により製造することができる。
【0046】
3.重縮合体(B)
本発明において、重縮合体(B)は、下記のポリエステル樹脂(B1)、ポリカーボネート樹脂(B2)、又はポリエステルカーボネート樹脂(B3)のうち少なくとも1種の樹脂から選択される。重縮合体(B)は、いずれも、常法により製造することができる。
【0047】
(1)ポリエステル樹脂(B1)
本発明において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)と、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)と
を含み得る。ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、上記以外のジオールを追加で含んでもよい。
【0048】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を、60モル%超、例えば61モル%、62モル%、63モル%、64モル%、65モル%、66モル%、67モル%、68モル%、69モル%、70モル%、71モル%、72モル%、73モル%、74モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、95モル%、99モル%、100モル%で含有してよい。
【0049】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を、40モル%未満、例えば39モル%、38モル%、37モル%、36モル%、35モル%、34モル%、33モル%、32モル%、31モル%、30モル%、29モル%、28モル%、27モル%、26モル%、25モル%、20モル%、15モル%、10モル%、5モル%、1モル%、0モル%で含有してよい。
【0050】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を61~100モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~39モル%で含んでよい。
【0051】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を65~100モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~35モル%で含んでよい。
【0052】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を70~100モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~30モル%で含んでよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を75~100モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~25モル%で含んでよい。
【0054】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)、及び
スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)
を含む。
【0055】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)は、そのジオール構成単位中に、
スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)、
スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び
脂環族ジオール(b2)
を含む。
【0056】
本発明の一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)のジカルボン酸構成単位は、テレフタル酸残基、イソフタル酸残基、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸残基のうち少なくとも1種から選ばれるジカルボン酸単位であってよい。本発明の好ましい一実施形態において、ポリエステル樹脂(B1)のジカルボン酸構成単位は、テレフタル酸残基、又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸残基であってよい。
【0057】
(2)ポリカーボネート樹脂(B2)
本発明において、ポリカーボネート樹脂(B2)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)と、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)と
を含み得る。ポリエステル樹脂(B2)は、そのジオール構成単位中に、上記以外のジオールを追加で含んでもよい。
【0058】
本発明の一実施形態において、ポリカーボネート樹脂(B2)は、そのジオール構成単位中に、(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を、0モル%超、例えば1モル%、2モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、95モル%、98モル%、99モル%、100モル%で含有してよい。
【0059】
本発明の一実施形態において、ポリカーボネート(B2)は、そのジオール構成単位中に、(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を、100モル%未満、例えば99モル%、98モル%、95モル%、90モル%、85モル%、80モル%、75モル%、70モル%、65モル%、60モル%、55モル%、50モル%、45モル%、40モル%、35モル%、30モル%、25モル%、20モル%、15モル%、10モル%、5モル%、2モル%、1モル%、0モル%で含有してよい。
【0060】
本発明の一実施形態において、ポリカーボネート樹脂(B2)は、そのジオール構成単位中に、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を1~100モル%、
(ii)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)、及び/又は脂環族ジオール(b2)を0~99モル%で含んでよい。
【0061】
(3)ポリエステルカーボネート樹脂(B3)
本発明の一実施形態において、ポリエステルカーボネート樹脂(B3)は、そのジオール構成単位として、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)
を含み得る。
【0062】
本発明の一実施形態において、ポリエステルカーボネート樹脂(B3)は、そのジオール構成単位中に、(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を、0モル%超、例えば1モル%、2モル%、5モル%、10モル%、15モル%、20モル%、25モル%、30モル%、35モル%、40モル%、45モル%、50モル%、55モル%、60モル%、65モル%、70モル%、75モル%、80モル%、85モル%、90モル%、95モル%、98モル%、99モル%、100モル%で含有してよい。
【0063】
本発明の一実施形態において、ポリエステルカーボネート樹脂(B3)は、そのジオール構成単位において、
(i)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)を1~100モル%で含んでよい。
【0064】
本発明の一実施形態において、ポリエステルカーボネート樹脂(B3)は、そのジカルボン酸構成単位として、脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)を含んでよい。ポリエステル樹脂(B3)は、そのジオール構成単位中に、上記以外のジオールを追加で含んでもよい。
【0065】
(4)スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール(a1)
本発明において、スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(a1)は、一般式(3)で表され得る。
【化9】
(式中、R
5及びR
6はそれぞれ独立して、炭素数が1~10の非環状炭化水素基、炭素数が3~10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6~10の芳香族炭化水素基から選ばれる特性基を表す。)
【0066】
本発明の一実施形態において、上記一般式(3)中、R5及びR6は、それぞれ独立して、炭素数1~4の非環状炭化水素基、炭素数が5~7の脂環式炭化水素基、及びフェニレン基から選ばれ得る。
【0067】
本発明の一実施形態において、上記一般式(3)中、R5及びR6はそれぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はこれらの構造異性体、例えば、ジメチルエチレニル基、イソプロピレン基、イソブチレン基、フェニレン基であってよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R5及びR6は、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ジメチルエチレニル基であってよい。
【0068】
本発明の一実施形態において、スピロ環含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(a1)は、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンである。
【0069】
(5)スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール(b1)
本発明において、スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(b1)は、一般式(4)で表され得る。
【化10】
(式中、
R
5は前記と同様であり;
R
7は炭素数が1~10の非環状炭化水素基、炭素数が3~10の脂環式炭化水素基、及び炭素数が6~10の芳香族炭化水素基から選ばれる特性基を表す。)
【0070】
本発明の一実施形態において、上記一般式(4)中、R5は、炭素数1~4の非環状炭化水素基、炭素数が5~7の脂環式炭化水素基、及びフェニレン基から選ばれ得る。
【0071】
本発明の一実施形態において、上記一般式(4)中、R5は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基又はこれらの構造異性体、例えば、ジメチルエチレニル基、イソプロピレン基、イソブチレン基、フェニレン基であってよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R5は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ジメチルエチレニル基であってよい。
【0072】
本発明の一実施形態において、上記一般式(4)中、R7は、水素原子、炭素数1~4の非環状炭化水素基、炭素数が5~7の脂環式炭化水素基、及び置換または非置換のフェニル基から選ばれ得る。
【0073】
本発明の一実施形態において、上記一般式(4)中、R7は、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、フェニル、o-メチルフェニル、m-メチルフェニル、p-メチルフェニルであってよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R7は、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、フェニルであってよい。
【0074】
本発明の一実施形態において、スピロ環非含有環状アセタール骨格を有するジオール成分(b1)は、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサンである。
【0075】
(6)脂環族ジオール(b2)
本発明において、脂環族ジオール(b2)は、一般式(5)で表され得る。
【化11】
(式中、
R
8、R
9、R
10及びR
11はそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6の非環状炭化水素基から選ばれ;
p、q、r及びsはそれぞれ独立して、0、1または2である。)
【0076】
本発明の一実施形態において、上記一般式(5)中、R8、R9、R10及びR11は、水素原子、炭素数1~4の非環状炭化水素基から選ばれ得る。
【0077】
本発明の一実施形態において、上記一般式(5)中、R8、R9、R10及びR11はそれぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルであってよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチルであってよい。
【0078】
本発明の一実施形態において、脂環族ジオール(b2)は、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロペンタンジメタノール、1,3-シクロブタンジメタノール、1,3-シクロブタンジオール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールであってよいが、これらに限定されない。
【0079】
本発明の一実施形態において、脂環族ジオール(b2)は、1,4-シクロヘキサンジメタノールである。
【0080】
(7)脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)
本発明において、脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)は、一般式(6)で表される。
【化12】
(式中、
R
8、R
9、R
10、R
11、R
12、およびR
13それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6の非環状炭化水素基から選ばれ;
p及びqはそれぞれ独立して、0、1または2である。)
【0081】
本発明の一実施形態において、上記一般式(6)中、R8、R9、R10、R11、R12、およびR13は、水素原子、炭素数1~4の非環状炭化水素基から選ばれ得る。
【0082】
本発明の一実施形態において、上記一般式(6)中、R8、R9、R10、R11、R12、およびR13はそれぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシルであってよいが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、R8、R9、R10及びR11は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソブチルであってよい。
【0083】
本発明の一実施形態において、脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジエチルであってよいが、これらに限定されない。
【0084】
本発明の一実施形態において、脂環族ジカルボン酸又はそのジエステル(b3)は、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルである。
【0085】
4.熱可塑性樹脂組成物(C)の物性
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、ポリカーボネート樹脂の透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもポリカーボネート樹脂の屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、下記の項目により評価した。
【0086】
(1)ガラス転移温度(Tg)
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、ガラス転移温度が90℃以上160℃以下であってよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ガラス転移温度が、例えば90℃以上、95℃以上、100℃以上、105℃以上、110℃以上、115℃以上、120℃以上、125℃以上、130℃以上、135℃以上、140℃以上、145℃以上、150℃以上などであってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、ガラス転移温度が、例えば110℃以上130℃未満、130℃以上140℃未満、140℃以上149℃未満、149℃以上160℃以下などであってよいが、これらの範囲に限定されない。
【0087】
ガラス転移温度は、常法により測定することができる。ガラス転移温度は、例えば示差走査型熱量計を用いて測定することができる。
【0088】
(2)全光線透過率
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、1mm厚の射出成形体の全光線透過率が87%以上であってよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、1mm厚の射出成形体の全光線透過率が、例えば87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などであってよい。
【0089】
全光線透過率は、常法により測定することができる。全光線透過率は、例えばJIS K7105に準じ、日本電色工業(株)社製の色彩・濁度同時測定器(型式:COH-400)を用いて測定することができる。
【0090】
(3)曇価
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、1mm厚の射出成形体の曇価が4%以下であってよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、1mm厚の射出成形体の全光線透過率が、例えば4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、0.5%、0.3%、0.1%、0%などであってよい。
【0091】
曇価は、常法により測定することができる。曇価は、例えばJIS K7105に準じ、日本電色工業(株)社製の色彩・濁度同時測定器(型式:COH-400)を用いて測定することができる。
【0092】
(4)屈折率
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、臨界角法で測定される屈折率が1.45~1.60であってよい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、臨界角法で測定される屈折率が、例えば1.45~1.60、1.45~1.58、1.45~1.57、1.45~1.56、1.45~1.55、1.45~1.54、1.45~1.50、1.50~1.60、1.50~1.58、1.50~1.57、1.50~1.56、1.50~1.55、1.50~1.54、1.54~1.60、1.54~1.58、1.54~1.57、1.54~1.56、1.54~1.55、1.55~1.60、1.55~1.58、1.55~1.57、1.55~1.56、1.56~1.60、1.56~1.58、1.56~1.57、1.57~1.60、1.57~1.58、1.58~1.60、1.59~1.60などであってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、臨界角法で測定される屈折率が、例えば1.50以上1.54未満、1.54以上1.56未満、1.56以上1.57未満、1.57以上1.58未満などであってよいが、これらに限定されない。
【0093】
本発明において、屈折率は、臨界角法で、1.0mm厚の射出成形体を使用して、JISK7142に準じ、(株)アタゴ製の多波長アッベ屈折計(型式:DR-M2)を用いて測定することができるが、この方法に限定されない。
【0094】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、
(i)示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が130℃以上
(ii)1mm厚の射出成形体の全光線透過率が87%以上、かつ曇価が4%以下
(iii)臨界角法で測定される屈折率が1.45~1.60
であってよい。
【0095】
本発明の別の実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、
(i)示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が149℃以上160℃以下
(ii)1mm厚の射出成形体の全光線透過率が87%以上、かつ曇価が4%以下
(iii)臨界角法で測定される屈折率が1.57以上1.58以下
であってよい。
【0096】
本発明のさらに別の実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、
(i)示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が140℃以上149℃未満
(ii)1mm厚の射出成形体の全光線透過率が87%以上、かつ曇価が4%以下
(iii)臨界角法で測定される屈折率が1.56以上1.57未満
であってよい。
【0097】
本発明のさらにまた別の実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)は、
(i)示差走査型熱量計で測定されるガラス転移温度が130℃以上140℃未満
(ii)1mm厚の射出成形体の全光線透過率が87%以上、かつ曇価が4%以下
(iii)臨界角法で測定される屈折率が1.54以上1.56未満
であってよい。
【0098】
5.熱可塑性樹脂組成物(C)を用いたシート
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて、シートを作製することができる。本発明の一実施形態において、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて得られるシートは、500μm厚のシートの全光線透過率が87%以上であってよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて得られるシートは、500μm厚のシートの全光線透過率が、例えば87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、100%などであってよい。
【0099】
6.熱可塑性樹脂組成物(C)を用いたフィルム
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて、フィルムを作製することができる。本発明の一実施形態において、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて得られるフィルムは、50μm厚のフィルムの曇価が4%以下であってよい。本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)を用いて得られるフィルムは、50μm厚のフィルムの曇価が、例えば4.0%、3.5%、3.0%、2.5%、2.0%、1.5%、1.0%、0.5%、0.3%、0.1%、0%などであってよい。
【0100】
7.他の熱可塑性樹脂組成物(D)とのブレンド組成物(E)
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)は、他の熱可塑性樹脂組成物(D)とブレンドすることにより、ブレンド組成物(E)を製造することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)と、他の熱可塑性樹脂組成物(D)とは、常法によりブレンドすることができる。
【0101】
本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)と前記熱可塑性樹脂組成物(D)の臨界角法で測定される屈折率値の差が0.02以下であることができる。熱可塑性樹脂組成物(C)と前記熱可塑性樹脂組成物(D)の屈折率値の差が0.02以下であれば、ブレンドすることにより得られるブレンド組成物(E)の透明性を担保することができる。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(C)と前記熱可塑性樹脂組成物(D)の臨界角法で測定される屈折率値の差は、例えば0.02、0.01、0.005、0.002、0などであってよい。
【0102】
本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)とブレンドすることによりブレンド組成物(E)を製造するために用いる他の熱可塑性樹脂組成物(D)は、前述のように、熱可塑性樹脂組成物(C)との屈折率値の差が0.02以下であり、耐熱性を損なわないものが好ましい。本発明の一実施形態において、熱可塑性樹脂組成物(D)は、ポリエーテルエステル樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物であってよい。
【実施例】
【0103】
次に、本発明を実施例、比較例により更に具体的に説明する。尚、実施例、比較例の評価に用いた試料の合成方法、及びその物性の測定方法は次の通りである。また、略記の意味を記載する。
・DMT:テレフタル酸ジメチル
・TBT:テトラ-n-ブチルチタネート
・EG:エチレングリコール
・1,4-CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール
・SPG:3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン
・TEP:リン酸トリエチル
・DOG:5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサン
【0104】
1.重縮合体(B)の製造
本発明において、重縮合体(B)は、上述のように、ポリエステル樹脂(B1)、ポリカーボネート樹脂(B2)、又はポリエステルカーボネート樹脂(B3)のうち少なくとも1種の樹脂から選ばれ得る。
【0105】
(ポリエステル樹脂(B1-1)の製造(製造例1))
充填塔式精留塔、分縮器、全縮器、コールドトラップ、攪拌翼、加熱装置、及び窒素導入管を備えた30リットル(L)のポリエステル製造装置にDMT(31.7モル)、酸化ゲルマニウム(0.016モル)、TBTのEG溶液(TBTとして0.0019モル)、ならびに1,4-CHDM及びEGの混合溶液(1,4-CHDMが6.5モル、EGが28.1モル)を仕込んだ。常圧、窒素雰囲気下で225℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を85モル%以上とした後、酢酸カリウムのEG溶液(酢酸カリウムとして0.0063モル)を加えた。185℃までの降温と同時に13.3kPaまでの減圧を行うことでEGを系外に抜き出した。復圧後にSPG(22.5モル)を投入した。225℃までの昇温と13.3kPaまでの減圧を徐々に行うことでエステル交換反応を進行させた後、再度復圧してTEP(0.098モル)添加した。再度13.3kPaまで減圧後、最終的に280℃、0.3kPa以下で重縮合反応を行った。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、本発明のポリエステル樹脂(B1-1)を得た。
【0106】
(ポリエステル樹脂(B1-2)の製造(製造例2))
DMTを30.7モル、酸化ゲルマニウムを0.015モル、TBTのEG溶液を(TBTとして0.0018モル)、1,4-CHDM及びEGの混合溶液を(1,4-CHDMが6.3モル、EGが25.7モル)、酢酸カリウムのEG溶液を(酢酸カリウムとして0.0061モル)、SPGを23.4モル、ならびにTEPを0.095モルとした他は、製造例1と同様の操作を行い、ポリエステル樹脂(B1-2)を得た。
【0107】
(ポリエステル樹脂(B1-3)の製造(製造例3))
充填塔式精留塔、分縮器、コールドトラップ、攪拌翼、加熱装置、及び窒素導入管を備えた1リットル(L)のポリエステル製造装置にDMT(1.1モル)、酸化ゲルマニウム(0.00055モル)、TBTのEG溶液(TBTとして0.00007モル)、ならびに1,4-CHDM及びEGの混合溶液(1,4-CHDMが0.22モル、EGが0.97モル)を仕込んだ。常圧、窒素雰囲気下で225℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を70モル%以上とした後、酢酸カリウムのEG溶液(酢酸カリウムとして0.0002モル)を加えた。185℃までの降温と同時に13.3kPaまでの減圧を行うことでEGを系外に抜き出した。復圧後にSPG(0.72モル)を投入した。225℃までの昇温と13.3kPaまでの減圧を徐々に行うことでエステル交換反応を進行させた後、再度復圧してTEP(0.0034モル)添加した。再度13.3kPaまで減圧後、最終的に280℃、0.3kPa以下で重縮合反応を行った。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、本発明のポリエステル樹脂(B1-3)を得た。
【0108】
(ポリエステル樹脂(B1-4)の製造(製造例4))
充填塔式精留塔、分縮器、コールドトラップ、攪拌翼、加熱装置、及び窒素導入管を備えた1リットル(L)のポリエステル製造装置にDMT(1.0モル)、DOG(0.21モル)、酸化ゲルマニウム(0.00051モル)、TBTのEG溶液(TBTとして0.00006モル)、ならびにEG(0.90モル)を仕込んだ。常圧、窒素雰囲気下で225℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を70モル%以上とした後、酢酸カリウムのEG溶液(酢酸カリウムとして0.0002モル)を加えた。185℃までの降温と同時に13.3kPaまでの減圧を行うことでEGを系外に抜き出した。復圧後にSPG(0.72モル)を投入した。225℃までの昇温と13.3kPaまでの減圧を徐々に行うことでエステル交換反応を進行させた後、再度復圧してTEP(0.0031モル)添加した。再度13.3kPaまで減圧後、最終的に280℃、0.3kPa以下で重縮合反応を行った。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、本発明のポリエステル樹脂(B1-4)を得た。
【0109】
(ポリエステル樹脂(B1-5)の製造(製造例5))
充填塔式精留塔、分縮器、コールドトラップ、攪拌翼、加熱装置、及び窒素導入管を備えた1リットル(L)のポリエステル製造装置にDMT(1.0モル)、酸化ゲルマニウム(0.00052モル)、TBTのEG溶液(TBTとして0.00006モル)、DOG(0.11モル)ならびに1,4-CHDM及びEGの混合溶液(1,4-CHDMが0.14モル、EGが0.92モル)を仕込んだ。常圧、窒素雰囲気下で225℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を70モル%以上とした後、酢酸カリウムのEG溶液(酢酸カリウムとして0.0002モル)を加えた。185℃までの降温と同時に13.3kPaまでの減圧を行うことでEGを系外に抜き出した。復圧後にSPG(0.74モル)を投入した。225℃までの昇温と13.3kPaまでの減圧を徐々に行うことでエステル交換反応を進行させた後、再度復圧してTEP(0.0032モル)添加した。再度13.3kPaまで減圧後、最終的に280℃、0.3kPa以下で重縮合反応を行った。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、本発明のポリエステル樹脂(B1-5)を得た。
【0110】
(ポリエステル樹脂(B1-6)の製造(製造例6))
充填塔式精留塔、分縮器、コールドトラップ、攪拌翼、加熱装置、及び窒素導入管を備えた1リットル(L)のポリエステル製造装置にDMT(1.5モル)、酸化ゲルマニウム(0.00073モル)、TBTのEG溶液(TBTとして0.00009モル)、ならびに1,4-CHDM及びEGの混合溶液(1,4-CHDMが0.15モル、EGが1.47モル)を仕込んだ。常圧、窒素雰囲気下で225℃まで昇温し、エステル交換反応を行った。ジカルボン酸成分の反応転化率を70モル%以上とした後、酢酸カリウムのEG溶液(酢酸カリウムとして0.0003モル)を加えた。185℃までの降温と同時に13.3kPaまでの減圧を行うことでEGを系外に抜き出した。復圧後にSPG(0.45モル)を投入した。225℃までの昇温と13.3kPaまでの減圧を徐々に行うことでエステル交換反応を進行させた後、再度復圧してTEP(0.0045モル)添加した。再度13.3kPaまで減圧後、最終的に280℃、0.3kPa以下で重縮合反応を行った。徐々に反応物の粘度が上昇し、適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、本発明のポリエステル樹脂(B1-6)を得た。
【0111】
(ポリカーボネート樹脂(B2-1)の製造(製造例7))
スピログリコールを2kg(6.57モル)、ビスフェノールAを643g(2.82モル)、ジフェニルカーボネート2.1kg(9.72モル)、および炭酸水素ナトリウム0.0047g(5.6×10-5モル)を攪拌機および留出装置付きの10リットル反応器に入れ、窒素雰囲気150Torrの下1時間かけて215℃ に加熱し撹拌した。その後、215℃、150Torrの条件下で20分間保持しエステル交換反応を行った。さらに10分かけて230℃まで昇温し、230℃、150Torrの条件下で1時間保持し、エステル交換反応を進行させた。その後、10分かけて240℃に昇温し、240℃で50分間エステル交換反応を進行させた。その後、10分かけて100Torrに調整し、240℃、100Torrで20分間保持した。その後、10分かけて40Torrに調整し、240℃、40Torrで30分間保持した。更に20分かけて1Torr以下とし、240℃、1Torr以下の条件下で1時間撹拌下重合反応を行った。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリカーボネート樹脂(B2-1)を得た。
【0112】
(ポリカーボネート樹脂(B2-2)の製造(製造例8))
スピログリコールを1.5kg(4.9モル)、ビスフェノールAを1.12kg(4.9モル)、ジフェニルカーボネートを2.2kg(10.2モル)、および炭酸水素ナトリウムを0.0050g(5.9×10-5モル)とした他は、製造例7と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂(B2-2)を得た。
【0113】
(ポリカーボネート樹脂(B2-3)の製造(製造例9))
スピログリコールを300g(0.99モル)、ビスフェノールAを2.02kg(8.87モル)、ジフェニルカーボネートを2.2kg(10.2モル)、および炭酸水素ナトリウムを0.0050g(5.9×10-5モル)とした他は、製造例7と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂(B2-3)を得た。
【0114】
(ポリカーボネート樹脂(B2-4)の製造(製造例10))
スピログリコールを1200g(3.9モル)、ビスフェノールAを1.5kg(6.6モル)、ジフェニルカーボネートを2.9kg(13.6モル)、および炭酸水素ナトリウムを0.0066g(7.9×10-5モル)とし、同時に1,4-CHDMを380g(2.6モル)加えた他は、製造例7と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂(B2-4)を得た。
【0115】
(ポリカーボネート樹脂(B2-5)の製造(製造例11))
スピログリコールを1200g(3.9モル)、ビスフェノールAを1.5kg(6.6モル)、ジフェニルカーボネートを2.9kg(13.6モル)、および炭酸水素ナトリウムを0.0066g(7.9×10-5モル)とし、同時にDOGを570g(2.6モル)加えた他は、製造例7と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂(B2-5)を得た。
【0116】
(ポリカーボネート樹脂(B2-6)の製造(製造例12))
スピログリコールを1200g(3.9モル)、ビスフェノールAを1.5kg(6.6モル)、ジフェニルカーボネートを2.9kg(13.6モル)、および炭酸水素ナトリウムを0.0066g(7.9×10-5モル)とし、同時に1,4-CHDMを190g(1.3モル)およびDOGを290g(1.3モル)加えた他は、製造例7と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂(B2-6)を得た。
【0117】
(ポリカーボネート樹脂(B2-7)の製造(製造例13))
スピログリコールの代わりに1,4-CHDMを948g(6.6モル)、ビスフェノールAを1.5kg(6.6モル)、ジフェニルカーボネートを2.9kg(13.6モル)、および炭酸水素ナトリウムを0.0066g(7.9×10-5モル)とした他は、製造例7と同様の操作を行い、ポリカーボネート樹脂(B2-7)を得た。
【0118】
(ポリエステルカーボネート樹脂(B3-1)の製造(製造例14))
撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた1リットル反応器に、SPG300g(0.99モル)、DMT96g(0.29モル)、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル41g(0.20モル)およびジブチルスズオキシド0.08gを仕込み、窒素雰囲気下で温度180~230℃で6時間反応しメタノールを留出させた。得られたプレポリマーの末端水酸基価は3.0であった。次いで、プレポリマー300gにジフェニルカーボネート57g(0.26モル)を添加し温度230~240℃で最終的に1mmHgの減圧とし5時間反応した。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリエステルカーボネート樹脂(B3-1)を得た。
【0119】
(ポリエステルカーボネート樹脂(B3-2)の製造(製造例15))
撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた1リットル反応器に、SPG300g(0.99モル)、CHDM47g(0.33モル)、DMT128g(0.66モル)およびジブチルスズオキシド0.09gを仕込み、窒素雰囲気下で温度180~230℃で6時間反応しメタノールを留出させた。得られたプレポリマーの末端水酸基価は2.8であった。次いで、プレポリマー300gにジフェニルカーボネート53g(0.25モル)を添加し温度230~240℃で最終的に1mmHgの減圧とし5時間反応した。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリエステルカーボネート樹脂(B3-2)を得た。
【0120】
(ポリエステルカーボネート樹脂(B3-3)の製造(製造例16))
撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた1リットル反応器に、SPG300g(0.99モル)、CHDM95g(0.66モル)、DMT160g(0.82モル)およびジブチルスズオキシド0.11gを仕込み、窒素雰囲気下で温度180~230℃で6時間反応しメタノールを留出させた。得られたプレポリマーの末端水酸基価は3.0であった。次いで、プレポリマー300gにジフェニルカーボネート57g(0.26モル)を添加し温度230~240℃で最終的に1mmHgの減圧とし5時間反応した。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリエステルカーボネート樹脂(B3-3)を得た。
【0121】
(ポリエステルカーボネート樹脂(B3-4)の製造(製造例17))
撹拌機、分溜コンデンサー、温度計、ガス導入管を付けた1リットル反応器に、CHDM100g(0.69モル)、EG129g(2.1モル)、DMT270g(1.4モル)およびジブチルスズオキシド0.09gを仕込み、窒素雰囲気下で温度180~230℃で6時間反応しメタノールを留出させた。得られたプレポリマーの末端水酸基価は3.1であった。次いで、プレポリマー300gにジフェニルカーボネート59g(0.27モル)を添加し温度230~240℃で最終的に1mmHgの減圧とし5時間反応した。反応終了後、反応器内に窒素を吹き込み加圧にし、生成した樹脂をペレタイズしながら抜き出し、ポリエステルカーボネート樹脂(B3-4)を得た。
【0122】
(重縮合体(B)の評価)
重縮合体(B)の評価は以下の方法で行った。なお、評価結果は表1、表2および表3に示す。
【0123】
(1)重縮合体のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位ならびに脂環族ジオール単位
重縮合体のジオール構成単位中の環状アセタール骨格を有するジオール単位ならびに脂環族ジオール単位を1 H-NMR測定にて算出した。測定装置はBRUKER製、AVANCEIII500を用い、500MHzで測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。
【0124】
(2)ガラス転移温度
重縮合体のガラス転移温度(Tg)は、(株)島津製作所製、DSC/TA-50WSを使用し、試料約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(50ml/min)気流中、昇温速度20℃/minで測定した。DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。
【0125】
尚、表1、表2および表3中、1,4-シクロヘキサンジメタノールを「CHDM」と、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカンを「SPG」と、5-メチロール-5-エチル-2-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-1,3-ジオキサンを「DOG」、ビスフェノールAを「BPA」と略記する。
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
製品1として、三菱ガス化学(株)製、ポリエステル樹脂(商品名:ALTESTER(登録商標)「S3000」、ジオール成分共重合率:SPG30mol%、EG70mol%、Tg:103℃)を使用した。
【0130】
製品2として、イーストマンケミカル社製、ポリエステル樹脂(商品名:EASTAR(登録商標)「GN001」、ジオール成分共重合率:CHDM43mol%、EG57mol%、Tg:83℃)を使用した。
【0131】
【0132】
〔実施例1~84、比較例1~12〕
ポリカーボネート樹脂として、(A-1):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロン(登録商標)S-3000)、(A-2):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロン(登録商標)H-4000)、ならびに(A-3):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製、ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロン(登録商標)E-2000)を使用した。
【0133】
2.熱可塑性樹脂組成物(C)の作製
表5~表24に記載する量のポリカーボネート樹脂(A)、重縮合体(B)をタンブラーにより混合した。この樹脂混合物を、二軸押出し機(スクリュー径:20mm、L/D:25)を用いてシリンダー温度265~285℃、ダイ温度265~285℃、スクリュー回転数50rpmの条件で溶融混合した。
【0134】
3.射出成形体の作製
熱可塑性樹脂組成物(C)をスクリュー式射出成形機(スクリュー径:28mm、型締力:490kN)により、シリンダー温度260~280℃、金型温度30~70℃の条件で1.0mm厚の各種試験片を成形した。
【0135】
4.シートの作製
熱可塑性樹脂組成物(C)を二軸押出し機(スクリュー径:29.75mm、L/D:30)を用いてTダイ法によりシリンダー温度265~285℃、Tダイ温度265~285℃、スクリュー回転数50rpmの条件で500μm厚のシートを作製した。
【0136】
5.フィルムの作製
上記に記載の条件で作製した500μm厚のシートを熱可塑性樹脂組成物(C)のガラス転移温度より10~20℃高い温度で3.0×3.0倍に同時二軸延伸を行い、50μm厚のフィルムを作製した。
【0137】
〔評価方法〕
実施例1~84、及び比較例1~12の樹脂組成物の評価方法は以下の通りである。なお、評価結果は表5~表24にまとめて示す。
【0138】
(1)曇価、全光線透過率:1.0mm厚の射出成形体、500μm厚のシート、50μm厚のフィルムをそれぞれ使用して、JIS K7105に準じて行った。使用した測定装置は、日本電色工業(株)社製の色彩・濁度同時測定器(型式:COH-400)である。
【0139】
(2)屈折率:1.0mm厚の射出成形体を使用して、JIS K7142に準じて行った。使用した測定装置は、(株)アタゴ製の多波長アッベ屈折計(型式:DR-M2)である。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
〔実施例85〕
(1)熱可塑性樹脂組成物(D)の屈折率測定
熱可塑性樹脂組成物(D)として、(D-1):竹本油脂(株)製、ポリエーテルエステル樹脂(商品名:エレカット(登録商標)R02)を使用した。このものをスクリュー式射出成形機(スクリュー径:28mm、型締力:490kN)により、シリンダー温度260℃、金型温度50℃の条件で1.0mm厚の試験片に成形した。作製した成形品を(株)アタゴ製の多波長アッベ屈折計(型式:DR-M2)によりJIS K7142に準じて屈折率の測定を行った。得られた屈折率値は1.560であった。
【0161】
(2)熱可塑性樹脂組成物(C)の作製
ポリカーボネート樹脂(A)として(A-1):三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製ポリカーボネート樹脂(商品名:ユーピロン(登録商標)S-3000)を60wt%、ならびに重縮合体(B)としてB1-1(表1、製造例1)を40wt%、をタンブラーにより混合した。この樹脂混合物を二軸押出し機(スクリュー径:20mm、L/D:25)を用いてシリンダー温度265℃、ダイ温度265℃、スクリュー回転数50rpmの条件で溶融混合し、熱可塑性樹脂組成物を(C-6)を得た(表5)。続いて、スクリュー式射出成形機(スクリュー径:28mm、型締力:490kN)により、シリンダー温度265℃、金型温度50℃の条件で1.0mm厚の試験片に成形した。作製した成形品を(株)アタゴ製の多波長アッベ屈折計(型式:DR-M2)によりJIS K7142に準じて屈折率の測定を行った。得られた屈折率値は1.560であった。
【0162】
(3)ブレンド組成物(E)の射出成形体の作製
前記熱可塑性樹脂組成物(D-1)として20wt%ならびに前記熱可塑性樹脂組成物(C-6)として80wt%、をタンブラーにより混合した。この樹脂混合物をスクリュー式射出成形機(スクリュー径:28mm、型締力:490kN)により、シリンダー温度265℃、金型温度50℃の条件で1.0mm厚の各種試験片を成形した。
【0163】
〔評価方法〕
実施例85のブレンド組成物の評価方法は以下の通りである。なお、評価結果を表25に示す。
【0164】
(1)曇価、全光線透過率:1.0mm厚の射出成形体を使用して、JIS K7105に準じて行った。使用した測定装置は、日本電色工業(株)社製の色彩・濁度同時測定器(型式:COH-400)である。
【0165】
(2)屈折率:1.0mm厚の射出成形体を使用して、JIS K7142に準じて行った。使用した測定装置は、(株)アタゴ製の多波長アッベ屈折計(型式:DR-M2)である。
【0166】
【0167】
上記の通り、本発明の熱可塑性樹脂組成物(C)、および他の熱可塑性樹脂組成物(D)とのブレンド組成物(E)は、ポリカーボネート樹脂の透明性を維持しつつ、より少ないアロイ比でもポリカーボネート樹脂の屈折率を調整できるだけでなく、高い耐熱性を有することができる。