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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】カメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20240925BHJP
   G03B 17/02 20210101ALI20240925BHJP
   G03B 17/55 20210101ALI20240925BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240925BHJP
   H04N 23/50 20230101ALI20240925BHJP
   H04N 23/52 20230101ALI20240925BHJP
   H04N 23/57 20230101ALI20240925BHJP
【FI】
G02B7/02 F
G03B17/02
G03B17/55
G03B30/00
H04N23/50
H04N23/52
H04N23/57
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020105725
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000669
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 功二
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 広器
(72)【発明者】
【氏名】宮脇 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】和田 章良
(72)【発明者】
【氏名】脇山 悟
(72)【発明者】
【氏名】青山 和弘
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-031937(JP,A)
【文献】特表2008-524832(JP,A)
【文献】特開2009-297385(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0075113(KR,A)
【文献】特開2015-026946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0172393(US,A1)
【文献】特開2020-015421(JP,A)
【文献】特開2007-266380(JP,A)
【文献】特開2005-167610(JP,A)
【文献】特開昭55-048953(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0126272(US,A1)
【文献】米国特許第06791072(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02- 7/16
G03B 15/00
G03B 17/02
G03B 17/55
G03B 30/00
H01L 27/14-27/148
H04N 5/30- 5/33
H04N 23/50-23/52
H04N 23/57
H04N 25/00-25/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象範囲の光像(3)を撮像するように、構成されるカメラモジュール(1)であって、
前記撮像対象範囲から前記光像が入射するレンズ部材(10)と、
前記レンズ部材とは反対側へ湾曲する湾曲部(203)を有し、前記レンズ部材を通して前記湾曲部に結像される前記光像を撮影するイメージャ(20)と、
前記レンズ部材及び前記イメージャの間を光学的に結合し、前記レンズ部材から前記イメージャへ前記光像を透過させる透光部材(40)と、
前記イメージャの外周部(202)を保持する保持部(601)、並びに前記保持部の内周側に形成されて放熱流体(2603)の対流する流体空間部(602)を、前記湾曲部の透光部材とは反対側に有する台座(60)と、を備え
前記イメージャにおける前記湾曲部と、前記イメージャの前記外周部を前記保持部により保持する前記台座との間には、前記湾曲部の凸面が露出して前記凸面から放熱を受ける液状の前記放熱流体が封入される前記流体空間部が、形成されるカメラモジュール。
【請求項2】
前記保持部は、前記イメージャにおいて前記撮像対象範囲からの前記光像の結像が外れる前記外周部を、保持する請求項1に記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記イメージャとワイヤボンディングされる撮像基板(30)を、さらに備え、
筒状の前記保持部が内周側に形成する前記流体空間部には、前記撮像基板が前記湾曲部とは反対側から露出する請求項1又は2に記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記台座と共に前記撮像基板に固定され、前記レンズ部材及び前記透光部材を保持する鏡筒(50)を、さらに備える請求項に記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記レンズ部材は、前記イメージャ側へ向かって凸の出射レンズ面(101)を有し、前記光像に対して正のパワーを与える請求項1~のいずれか一項に記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記透光部材は、前記出射レンズ面に対して面合わせされる入射凹面(400)と、前記湾曲部に対して面合わせされる出射凸面(401)とを、有する請求項に記載のカメラモジュール。
【請求項7】
前記出射レンズ面と前記入射凹面とは、機械的に接合される請求項に記載のカメラモジュール。
【請求項8】
車両の外界における前記撮像対象範囲を撮像するように、構成される請求項1~のいずれか一項に記載のカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
撮像対象範囲の光像を撮像するように、構成されるカメラモジュールは、広く知られている。例えば特許文献1に開示されるカメラモジュールでは、イメージャのうち入射窓とは反対側へ向かって湾曲する湾曲部に、光像が結像されることで、撮像が実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-192074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示のカメラモジュールにおいて、入射窓の封止ガラスとイメージャの湾曲部との間には、空間部が存在する。イメージャの発生した熱は、この空間部に放射されると想定される。しかし、光像が結像される湾曲部よりも光像の入射側に位置する空間部では、イメージャからの放熱による高温空気の屈折率が変化することに起因して、光像入射における光学特性も変化してしまう。この場合、光像に対する撮影精度の悪化が懸念される。
【0005】
本開示の課題は、撮影精度及び放熱性を両立させるカメラモジュールを、提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、課題を解決するための本開示の技術的手段について、説明する。尚、特許請求の範囲及び本欄に記載された括弧内の符号は、後に詳述する実施形態に記載された具体的手段との対応関係を示すものであり、本開示の技術的範囲を限定するものではない。
【0007】
本開示の第一態様は、
撮像対象範囲の光像(3)を撮像するように、構成されるカメラモジュール(1)であって、
撮像対象範囲から光像が入射するレンズ部材(10)と、
レンズ部材とは反対側へ湾曲する湾曲部(203)を有し、レンズ部材を通して湾曲部に結像される光像を撮影するイメージャ(20)と、
レンズ部材及びイメージャの間を光学的に結合し、レンズ部材からイメージャへ光像を透過させる透光部材(40)と、
イメージャの外周部(202)を保持する保持部(601)、並びに保持部の内周側に形成されて放熱流体(2603)の対流する流体空間部(602)を、湾曲部の透光部材とは反対側に有する台座(60)と、を備え
イメージャにおける湾曲部と、イメージャの外周部を保持部により保持する台座との間には、湾曲部の凸面が露出して凸面から放熱を受ける液状の放熱流体が封入される流体空間部が、形成されるカメラモジュールである。
【0008】
このような第一態様によると、撮像対象範囲から光像が入射するレンズ部材と、当該レンズ部材を通して湾曲部に結像される光像を撮影するイメージャとの間は、レンズ部材からイメージャへ光像を透過させる透光部材により、光学的に結合される。これによれば、湾曲部よりも光像の入射側では、屈折率の安定し易い透光部材により、光像入射における光学特性の変化を抑制することができる。
【0009】
しかも第一態様によると、湾曲部の透光部材とは反対側において、イメージャの外周部を保持する保持部の内周側には、放熱流体の対流する流体空間部が形成される。これによれば、湾曲部から流体空間部へ放射された熱が放熱流体へと伝達することで、対流する当該放熱流体により放熱性を発揮することができる。
【0010】
以上の如き第一態様では、光学特性の変化抑制による高い撮影精度を、放熱性と両立させることが可能となる。
【0011】
本開示の第二態様は、車両の外界における撮像対象範囲を撮像するように、構成されるカメラモジュールである。この第二態様によると、高温となり易い車両にあっても、上述した第一態様の原理から、光学特性の変化抑制による高い撮影精度を、放熱性と両立させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第一実施形態のカメラモジュールを示す縦断面図である。
図2】第一実施形態のカメラモジュールにより撮影される光像を示す模式図である。
図3】第一実施形態のカメラモジュールによる光学的構造を説明するための模式図である。
図4】第二実施形態のカメラモジュールを示す縦断面図である。
図5図1の変形例を示す縦断面図である。
図6図1の変形例を示す縦断面図である。
図7図1の変形例を示す縦断面図である。
図8図1の変形例を示す縦断面図である。
図9図1の変形例を示す縦断面図である。
図10図1の変形例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、複数の実施形態を図面に基づき説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことで、重複する説明を省略する場合がある。各実施形態において構成の一部分のみを説明している場合、当該構成の他の部分については、先行して説明した他の実施形態の構成を適用することができる。また、各実施形態の説明において明示している構成の組み合わせばかりではなく、特に組み合わせに支障が生じなければ、明示していなくても複数の実施形態の構成同士を部分的に組み合わせることができる。
【0014】
(第一実施形態)
図1に示す第一実施形態のカメラモジュール1は、撮像対象範囲からの光像3(後述の図2参照)を撮影するように、構成されている。カメラモジュール1は、車両に搭載されることで、当該車両の外界を撮像対象範囲として撮像する。カメラモジュール1は、レンズ部材10、イメージャ20、撮像基板30、透光部材40、鏡筒50及び台座60を備えている。
【0015】
レンズ部材10は、撮像対象範囲からの光路上に配置される。レンズ部材10は、例えばガラス等といった低熱膨張係数且つ高屈折率の透明な透光性硬質材料により、形成されている。レンズ部材10は、イメージャ20に対して一段のシングルレンズを、構成している。レンズ部材10において片面は、撮像対象範囲側へ向かって凸状に湾曲する凸レンズ面を、入射レンズ面100として形成している。レンズ部材10において逆面は、撮像対象範囲とは反対側へ向かって凸状に湾曲する凸レンズ面を、出射レンズ面101として形成している。これら各レンズ面100,101の形状は、図1の縦断面を含む任意の縦断面においてカーブした、非球面形状又は球面形状を呈している。このように第一実施形態のレンズ部材10は、両側に凸の両凸レンズである。
【0016】
レンズ部材10の光軸は、撮像対象範囲からイメージャ20までの光軸Alと一致している。レンズ部材10には、図2に示すような撮像対象範囲からの光像3が、光軸Alに沿って入射する。そこでレンズ面100,101の共同によりレンズ部材10は、撮像対象範囲からの光像3に対して、図3に示すような光学的に正のパワーを与えて、イメージャ20側へと透過させる。このようなレンズ部材10において特に出射レンズ面101は、イメージャ20側へ向かって凸の、湾曲光学面であるといえる。
【0017】
図1に示すイメージャ20は、撮像対象範囲からの光路上のうち、レンズ部材10を挟んで撮像対象範囲とは反対側に配置される。イメージャ20は、例えばシリコンウェハ等に撮像素子200が実装されてなる、薄膜半導体デバイスである。イメージャ20は、湾曲部203を有している。湾曲部203は、レンズ部材10とは反対側へ向かって、実質一定厚のアーチ状に湾曲している。ここで第一実施形態の湾曲部203は、イメージャ20の全体により構成されている。これによりイメージャ20は、全体としてアーチ状を呈している。
【0018】
湾曲部203の片面は、レンズ部材10とは反対側へ向かって凹状に湾曲する、入射凹面204を形成している。湾曲部203の逆面は、レンズ部材10とは反対側へ向かって凸状に湾曲する、放熱凸面205を形成している。これら各面204,205の形状は、図1の縦断面を含む任意の縦断面においてカーブした、非球面形状又は球面形状である。特に入射凹面204は、レンズ部材10のうち出射レンズ面101に対して、実質補完関係のカーブ形状、又は緩やかな若しくは急なカーブ形状を呈している。
【0019】
撮像素子200は、例えばCCD又はCMOS等といった、カラー式若しくはモノクロ式の半導体素子である。撮像素子200は、マトリクス状に配置される複数画素を、有している。撮像素子200は、湾曲部203に内包されている。撮像素子200の撮像面は、入射凹面204の少なくとも一部を構成することで、凹状に湾曲している。撮像素子200の撮像面において光像3を感知可能な有効撮影領域は、撮像対象範囲からイメージャ20までの光軸Alに対して、実質同軸上に位置決めされている。ここで第一実施形態の撮像素子200は、イメージャ20の外周部202と一致する湾曲部203の外周部206よりも内周側に、有効撮影領域を形成している。即ち、撮像素子200の有効撮影領域は、湾曲部203において外周部206を除く内周側部分に、形成されている。
【0020】
図3に示すように撮像素子200には、レンズ部材10を通した撮像対象範囲からの光像3が、光軸Alに沿って入射する。このとき、レンズ部材10の正パワーによって光像3は、湾曲部203のうち、撮像素子200の有効撮影領域に結像される。一方で撮像対象範囲からの光像3は、湾曲部203のうち、撮像素子200の有効撮影領域よりも外周側となる外周部206には実質結像されない。そこで撮像素子200は、有効撮影領域に結像された光像3を撮影することで、撮像対象範囲を撮像してなる撮像信号を出力する。
【0021】
図1に示す撮像基板30は、撮像対象範囲からイメージャ20までの光路からは外れて、配置される。撮像基板30は、イメージャ20を挟んでレンズ部材10とは反対側に位置決めされている。撮像基板30は、撮像対象範囲からの光軸Alに対しては実質垂直方向に広がる平板状を全体として呈した、回路基板である。撮像基板30は、例えばステンレス鋼(SUS)等といった高熱伝導性の硬質材料から形成されるベース基板300と、軟質のフレキシブルプリント基板(FPC)301とを、一体に組み合わせてなる。撮像基板30のうちフレキシブルプリント基板301には、同基板30の一部として撮像回路302が内包又は実装されている。
【0022】
撮像回路302は、複数の回路素子から構成されている。撮像回路302は、イメージャ20の外周部202(即ち第一実施形態では、湾曲部203の外周部206)に対して、さらに外周側となる箇所303でワイヤボンディングされている。これにより撮像回路302は、イメージャ20の撮像素子200と電気接続されている。撮像回路302は、撮像素子200による撮像を制御する。これにより撮像回路302は、撮像素子200から出力される撮像信号を、処理する。さらに撮像回路302は、撮像素子200からの撮像信号を画像処理することで、撮像対象範囲の撮像結果を表す画像信号を、生成してもよい。
【0023】
透光部材40は、撮像対象範囲からの光路上のうち、レンズ部材10とイメージャ20との間に配置される。透光部材40は、例えばガラス等といった低熱膨張係数の透明な透光性硬質材料により、形成されている。透光部材40は、レンズ部材10とイメージャ20とにより挟持される厚肉板状を、呈している。
【0024】
透光部材40の片面は、レンズ部材10とは反対側且つイメージャ20側へ向かって凹状に湾曲する、入射凹面400を形成している。透光部材40の逆面は、レンズ部材10とは反対側且つイメージャ20側へ向かって凸状に湾曲する、出射凸面401を形成している。これら各面400,401の形状は、図1の縦断面を含む任意の縦断面においてカーブした、非球面形状又は球面形状である。特に入射凹面400は、レンズ部材10のうち出射レンズ面101に対して、実質補完関係のカーブ形状を呈している。一方で出射凸面401は、イメージャ20のうち入射凹面204に対して、実質補完関係のカーブ形状を呈している。
【0025】
入射凹面400は、出射レンズ面101に同軸上に面合わせされている。ここで第一実施形態の入射凹面400は、レンズ部材10の出射レンズ面101に対して、例えば光学接着剤等により機械的に接合固定されることで、透光部材40をレンズ部材10と一体化させている。一方で出射凸面401は、入射凹面204に同軸上に面合わせされている。ここで第一実施形態の出射凸面401は、イメージャ20の入射凹面204に対して、機械的には別体のまま重ねられている。
【0026】
こうした構成により透光部材40は、レンズ部材10とイメージャ20との間を、光学的に結合している。透光部材40は、レンズ部材10を通した撮像対象範囲からの光像3を、光軸Alに沿ってレンズ部材10からイメージャ20へと透過させる。
【0027】
鏡筒50は、撮像対象範囲からイメージャ20までの光路の周囲と、当該光路からは外れた箇所とに跨って、配置される。鏡筒50は、要素10,20,30,40の外周側に位置決めされている。鏡筒50は、例えば熱硬化性樹脂等といった低熱膨張係数の遮光性硬質材料により、形成されている。鏡筒50は、全体として両側開口の段付筒状を呈している。
【0028】
鏡筒50において小径側の開口縁部500は、レンズ部材10及び透光部材40に外嵌固定されている。鏡筒50において大径側端面は、撮像基板30のうち、フレキシブルプリント基板301のベース基板300とは反対側表面304に対して、面合わせ状態で接合固定されている。これらにより、鏡筒50の保持するレンズ部材10及び透光部材40は、当該鏡筒50を介して撮像基板30にも保持されている。
【0029】
台座60は、撮像対象範囲からイメージャ20までの光路からは外れて、配置される。台座60は、イメージャ20の湾曲部203を挟んでレンズ部材10及び透光部材40とは反対側であって、当該湾曲部203と撮像基板30のフレキシブルプリント基板301との間に位置決めされている。台座60は、例えば熱硬化性樹脂等といった低熱膨張係数の遮光性硬質材料により、形成されている。台座60は、全体として両側開口のストレート筒状を呈している。台座60は、保持部601と流体空間部602とを、有している。
【0030】
保持部601は、台座60において筒状の周壁部乃至は側壁部により、構成されている。保持部601の片端面は、イメージャ20の外周部202(即ち第一実施形態では、湾曲部203の外周部206)における放熱凸面205に対して、面合わせ状態で接合固定されている。これにより保持部601は、イメージャ20において撮像対象範囲からの光像3の結像が実質外れる外周部202を、保持している。保持部601の逆端面は、撮像基板30のうちフレキシブルプリント基板301の表面304に対して、上述の鏡筒50と共に、面合わせ状態で接合固定されている。これにより、保持部601の保持するイメージャ20は、当該保持部601を介して撮像基板30にも保持されている。
【0031】
流体空間部602は、保持部601の内周側に形成されている。流体空間部602は、保持部601とイメージャ20の湾曲部203と撮像基板30のフレキシブルプリント基板301とにより、区画されている。湾曲部203において保持部601の片側開口を全体的に覆う放熱凸面205は、保持部601の内周側における流体空間部602に、露出している。フレキシブルプリント基板301において湾曲部203とは反対側から保持部601の逆側開口を全体的に覆う表面304も、流体空間部602に、露出している。これらにより流体空間部602には、撮像素子200及び撮像基板30に発生する熱が、それぞれ放熱凸面205及び表面304から放射される。そこで流体空間部602には、放熱凸面205及び表面304からの放熱により対流する放熱流体603が、封入されている。ここで第一実施形態の放熱流体603としては、空気が採用されている。
【0032】
以上説明した第一実施形態によると、撮像対象範囲から光像3が入射するレンズ部材10と、当該レンズ部材10を通して湾曲部203に結像される光像3を撮影するイメージャ20との間は、レンズ部材10からイメージャ20へ光像3を透過させる透光部材40により、光学的に結合される。これによれば、湾曲部203よりも光像3の入射側では、屈折率の安定し易い透光部材40により、光像入射における光学特性の変化を抑制することができる。
【0033】
しかも第一実施形態によると、湾曲部203の透光部材40とは反対側において、イメージャ20の外周部202を保持する保持部601の内周側には、放熱流体603の対流する流体空間部602が形成される。これによれば、湾曲部203から流体空間部602へ放射された熱が放熱流体603へと伝達することで、対流する当該放熱流体603により放熱性を発揮することができる。
【0034】
以上の如き第一実施形態では、光学特性の変化抑制による高い撮影精度を、放熱性と共に両立させることが可能となる。
【0035】
第一実施形態による流体空間部602には、放熱流体603としての空気が封入される。これによれば、放熱性を確保する構造の製造性及び生産性を、向上させることが可能となる。
【0036】
第一実施形態による保持部601は、イメージャ20において撮像対象範囲からの光像3の結像が外れる外周部202を、保持する。これによれば、光像3の結像が外れる外周部202を除いて、同像3の結像されることになる湾曲部203を、流体空間部602に露出させることができる。故に、高い撮影精度と高い放熱性とを両立して担保することが可能となる。
【0037】
第一実施形態においてイメージャ20とワイヤボンディングされる撮像基板30は、筒状保持部601の内周側に形成される流体空間部602に、湾曲部203とは反対側から露出している。これによれば、撮像基板30から流体空間部602へ放射される熱も、放熱流体603へと伝達することで、対流する当該放熱流体603による放熱性を発揮することができる。故に、光学特性の変化抑制による高い撮影精度を、高い放熱性と共に両立させることが可能となる。
【0038】
第一実施形態によると、イメージャ20の湾曲部203を保持する台座60と共に撮像基板30へと固定される鏡筒50によって、レンズ部材10及び透光部材40が保持される。これによれば、レンズ部材10とイメージャ20とを、透光部材40を挟んで光学的に精確に位置決めすることができる。故に、光学特性の変化抑制と相まって、撮影精度を高めることが可能となる。
【0039】
第一実施形態によると、イメージャ20側へ向かって凸の出射レンズ面101を有したレンズ部材10は、光像3に対して正のパワーを与える。これによれば、レンズ部材10とは反対側へ湾曲する湾曲部203との共同により、小型のイメージャ20であっても、撮像対象範囲を決める画角を広角化することができる。故に、広い撮像対象範囲からの光像入射における光学特性の変化を抑制して、撮影精度を高めることが可能となる。
【0040】
第一実施形態による透光部材40では、レンズ部材10の出射レンズ面101に対して入射凹面400が面合わせされると共に、イメージャ20の湾曲部203に対して出射凸面401が面合わせされる。これによれば、レンズ部材10とイメージャ20とを、透光部材40を挟んで光学的に精確に位置決めすることができる。それと共に、イメージャ20における湾曲部203の湾曲形状を、広角化に必要な形状に精確に保持することができる。故に、光学特性の変化抑制と相まって、撮影精度を高めることが可能となる。
【0041】
第一実施形態によると、透光部材40の入射凹面400とレンズ部材10の出射レンズ面101とは、機械的に接合される。これによれば、レンズ部材10とイメージャ20とを、透光部材40を挟んで高精度に位置決めすることができる。故に、光学特性の変化抑制と相まって、高い撮影精度を担保することが可能となる。
【0042】
第一実施形態のカメラモジュール1は、車両の外界における撮像対象範囲を撮像するように、構成される。これによれば、高温となり易い車両にあっても、上述した原理から、光学特性の変化抑制による高い撮影精度を、放熱性と両立させることが可能となる。
【0043】
(第二実施形態)
図4に示すように第二実施形態は、第一実施形態の変形例である。
【0044】
第二実施形態の流体空間部602には、イメージャ20の湾曲部203における放熱凸面205からの放熱と、撮像基板30のフレキシブルプリント基板301における表面304からの放熱により対流するように、放熱流体2603としての液体が封入されている。この放熱流体2603は、10W/m・K以上の高い熱伝導率を有した液体金属、例えば液状のGa-In-Sn合金等であることが好ましい。
【0045】
このように第二実施形態の流体空間部602には、放熱流体2603としての液体が封入される。これによれば、高い放熱性を発揮することが可能となる。
【0046】
(他の実施形態)
【0047】
以上、複数の実施形態について説明したが、本開示は、それらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態及び組み合わせに適用することができる。
【0048】
第一及び第二実施形態の変形例では、図5に示すようにレンズ部材10が、出射レンズ面101のみ凸の片凸レンズであってもよい。この場合に入射レンズ面100は、レンズ部材10の透過させる光像3に正パワーが与えられる限りにおいて、同図の平レンズ面であってもよいし、図示はしないが凹レンズ面であってもよい。
【0049】
第一及び第二実施形態の変形例では、図6に示すようにイメージャ20において、台座60の保持部601により保持される外周部202が、平板状に形成されていてもよい。この場合にイメージャ20において湾曲部203は、同図の如く外周部202よりも内周側に、形成されるとよい。またこの場合、イメージャ20の外周部202よりも内周側において湾曲部203の少なくとも一部に、撮像素子200の有効撮影領域が形成されるとよい。
【0050】
第一及び第二実施形態の変形例では、図7に示すように撮像基板30として、例えば樹脂、セラミックス乃至はアルミナ等の基材にプリント配線の施されたプリント基板305が、採用されてもよい。この場合に表面304は、プリント基板305の片面により構成されるとよい。
【0051】
第一及び第二実施形態の変形例では、図8に示すように、互いに機械的に接合固定されるレンズ部材10及び透光部材40のうち一方(同図は透光部材40の例)が、鏡筒50により保持されていなくてもよい。第一及び第二実施形態の変形例では、レンズ部材10の出射レンズ面101に対して、透光部材40の入射凹面400が、機械的には別体のまま重ねられていてもよい。
【0052】
第一及び第二実施形態の変形例では、イメージャ20の入射凹面204に対して透光部材40の出射凸面401が、例えば光学接着剤等により機械的に接合固定されていてもよい。この場合には、図9に示すように、鏡筒50が省かれていてもよい。
【0053】
第一実施形態の変形例では、図10に示すように台座60において、内部の流体空間部602と外部とを連通する通気孔604が、保持部601に設けられていてもよい。この場合には同図に示すように、鏡筒50において内部と外部とを連通する通気孔501が、設けられるとよい。
【0054】
第二実施形態の変形例では、放熱流体2603としての液体が液体金属以外の、例えば水であってもよい。第一及び第二実施形態の変形例では、車両以外にカメラモジュール1が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1 カメラモジュール、3 光像、10 レンズ部材、20 イメージャ、30 撮像基板、40 透光部材、50 鏡筒、60 台座、101 出射レンズ面、202 外周部、203 湾曲部、400 入射凹面、401 出射凸面、601 保持部、602 流体空間部、603,2603 放熱流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10