(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】配線モジュール及び弾性止水部材
(51)【国際特許分類】
H02G 15/04 20060101AFI20240925BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20240925BHJP
H02G 15/013 20060101ALI20240925BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20240925BHJP
H02G 3/04 20060101ALI20240925BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20240925BHJP
H01B 7/282 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
H02G15/04
H02G3/22
H02G15/013
H02G1/14
H02G3/04 087
H01B7/00
H01B7/282
(21)【出願番号】P 2020106241
(22)【出願日】2020-06-19
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100117662
【氏名又は名称】竹下 明男
(74)【代理人】
【氏名又は名称】福市 朋弘
(72)【発明者】
【氏名】小森 洋和
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-191528(JP,A)
【文献】特開2014-143889(JP,A)
【文献】国際公開第2015/199055(WO,A1)
【文献】特開2007-273861(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第10349440(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/04
H02G 3/22
H02G 15/013
H02G 1/14
H02G 3/04
H01B 7/00
H01B 7/282
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線部材と、
前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成された弾性止水部材と、
を備え、
前記弾性止水部材に、その外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成され、
前記配線部材のうちの長手方向の一部が前記貫通収容部内に収容された状態で、前記スリットが閉じた状態に保たれて
おり、
前記配線部材は、複数の線状配線部材と、前記複数の線状配線部材を覆う被覆部材とを含み、前記被覆部材の端部から前記複数の線状配線部材が延出しており、
前記貫通収容部は、前記被覆部材の端部を覆う被覆部材収容凹部と、前記被覆部材収容凹部と連続する複数の貫通部とを含み、
前記複数の貫通部は、前記複数の線状配線部材に対応して設けられ、
前記スリットは、前記弾性止水部材の外周部から前記被覆部材収容凹部に至るベーススリット部と、前記ベーススリット部から複数に分かれて前記弾性止水部材の外周部から前記複数の貫通部のそれぞれに至る複数の個別スリット部とを含む、配線モジュール。
【請求項2】
配線部材と、
前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成された弾性止水部材と、
を備え、
前記弾性止水部材に、その外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成され、
前記配線部材のうちの長手方向の一部が前記貫通収容部内に収容された状態で、前記スリットが閉じた状態に保たれており、
前記配線部材は、線状配線部材と奥側線状配線部材とを含み、
前記貫通収容部は、前記線状配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通部と、前記奥側線状配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な奥側貫通部とを含み、
前記スリットは、前記弾性止水部材の外周部から前記貫通部に至る部分に形成され、
前記弾性止水部材に、前記貫通部から前記奥側貫通部に至る奥側スリットが形成されている、配線モジュール。
【請求項3】
配線部材と、
前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成された弾性止水部材と、
を備え、
前記弾性止水部材に、その外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成され、
前記配線部材のうちの長手方向の一部が前記貫通収容部内に収容された状態で、前記スリットが閉じた状態に保たれており、
互いに合体可能な第1外装部材と第2外装部材とを含む外装部材をさらに備え、
前記第1外装部材と前記第2外装部材とが合体した状態で、前記第1外装部材と前記第2外装部材との間に前記スリットを閉じた状態で前記弾性止水部材が収容される、配線モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載の配線モジュールであって、
前記弾性止水部材は、その外周部のうち前記スリットの外向き部分を前記第1外装部材から外部に露出させた状態で、前記第1外装部材にセットされる、配線モジュール。
【請求項5】
請求項3又は請求項4に記載の配線モジュールであって、
前記外装部材は、前記第1外装部材と前記第2外装部材とが合体した状態で、前記スリットを閉じる方向に締付ける力を作用させる、配線モジュール。
【請求項6】
配線部材に装着される弾性止水部材であって、
前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成され、
外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成さ
れ、
前記貫通収容部は、一方側に開口する被覆部材収容凹部と、前記被覆部材収容凹部の奥側と連続する複数の貫通部とを含み、
前記スリットは、前記弾性止水部材の外周部から前記被覆部材収容凹部に至るベーススリット部と、前記ベーススリット部から複数に分かれて前記弾性止水部材の外周部から前記複数の貫通部のそれぞれに至る複数の個別スリット部とを含む、弾性止水部材。
【請求項7】
配線部材に装着される弾性止水部材であって、
前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成され、
外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成され、
前記貫通収容部は、前記配線部材における線状配線部材の長手方向の一部を収容可能な貫通部と、前記配線部材における前記線状配線部材とは別の線状配線部材の長手方向の一部を収容可能な奥側貫通部とを含み、
前記スリットは、前記弾性止水部材の外周部から前記貫通部に至る部分に形成され、
前記貫通部から前記奥側貫通部に至る奥側スリットがさらに形成されている、弾性止水部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配線モジュール及び弾性止水部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、多芯ケーブルに適用されるゴム栓を開示している。ゴム栓は、多芯ケーブルにおけるシースの端部に外嵌されるシース外嵌部を有すると共に、シースの端部から導出された複数の電線のそれぞれが貫通される複数の貫通孔を有する電線貫通部とを有する構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、多芯ケーブルを伝う水の侵入を抑制するため、電線がゴム栓の貫通孔に貫通する構成が採用される。
【0005】
ここにおいて、配線部材を、弾性止水部材の貫通孔に容易に貫通できるようにすることが望まれている。
【0006】
そこで、本開示は、弾性止水部材を配線部材に容易に装着できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の配線モジュールは、配線部材と、前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成された弾性止水部材と、を備え、前記弾性止水部材に、その外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成され、前記配線部材のうちの長手方向の一部が前記貫通収容部内に収容された状態で、前記スリットが閉じた状態に保たれている、配線モジュールである。
【0008】
また、本開示の弾性止水部材は、配線部材に装着される弾性止水部材であって、前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成され、外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成された、弾性止水部材である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、弾性止水部材を配線部材に容易に装着できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2は配線モジュールを示す分解斜視図である。
【
図3】
図3は配線モジュールを示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は弾性止水部材を第1外装部材にセットした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0012】
本開示の配線モジュールは、次の通りである。
【0013】
(1)配線部材と、前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成された弾性止水部材と、を備え、前記弾性止水部材に、その外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成され、前記配線部材のうちの長手方向の一部が前記貫通収容部内に収容された状態で、前記スリットが閉じた状態に保たれている、配線モジュールである。本開示によると、配線部材のうちの長手方向の一部はスリットを通じて貫通収容部内に容易に収容される。このため、弾性止水部材が配線部材に容易に装着される。
【0014】
(2)(1)の配線モジュールであって、前記配線部材は、複数の線状配線部材と、前記複数の線状配線部材を覆う被覆部材とを含み、前記被覆部材の端部から前記複数の線状配線部材が延出しており、前記貫通収容部は、前記被覆部材の端部を覆う被覆部材収容凹部と、前記被覆部材収容凹部と連続する複数の貫通部とを含み、前記複数の貫通部は、前記複数の線状配線部材に対応して設けられ、前記スリットは、前記弾性止水部材の外周部から前記被覆部材収容凹部に至るベーススリット部と、前記ベーススリット部から複数に分かれて前記弾性止水部材の外周部から前記複数の貫通部のそれぞれに至る複数の個別スリット部とを含んでもよい。これにより、被覆部材の端部及び複数の線状配線部材のそれぞれについて、スリットを経由して被覆部材収容凹部及び複数の貫通部に収容して止水することが可能となる。
【0015】
(3)(1)又は(2)の配線モジュールであって、前記配線部材は、線状配線部材と奥側線状配線部材とを含み、前記貫通収容部は、前記線状配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通部と、前記奥側線状配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な奥側貫通部とを含み、前記スリットは、前記弾性止水部材の外周部から前記貫通部に至る部分に形成され、前記弾性止水部材に、前記貫通部から前記奥側貫通部に至る奥側スリットが形成されていてもよい。貫通部から奥側貫通部に至る奥側スリットが形成されているため、弾性止水部材の外周部に至るスリットを少なくできる。これにより、止水性を高めることができる。
【0016】
(4)(1)から(3)のいずれか1つの配線モジュールであって、互いに合体可能な第1外装部材と第2外装部材とを含む外装部材をさらに備え、前記第1外装部材と前記第2外装部材とが合体した状態で、前記第1外装部材と前記第2外装部材との間に前記スリットを閉じた状態で前記弾性止水部材が収容されていてもよい。弾性止水部材を外装部材に収容することで、スリットが閉じた状態に保たれる。
【0017】
(5)(4)の配線モジュールであって、前記弾性止水部材は、その外周部のうち前記スリットの外向き部分を前記第1外装部材から外部に露出させた状態で、第1外装部材にセットされてもよい。これにより、弾性止水部材を第1外装部材にセットした状態で、配線部材の長手方向の一部を、スリットを介して貫通収容部内に収容することができる。このため、弾性止水部材が第1外装部材と共に容易に保持された状態で、弾性止水部材が配線部材に容易に装着される。
【0018】
(6)(4)又は(5)の配線モジュールであって、前記外装部材は、前記第1外装部材と前記第2外装部材とが合体した状態で、前記スリットを閉じる方向に締付ける力を作用させるものであってもよい。これにより、スリットがより確実に閉じられるため、止水性が向上する。
【0019】
また、本開示の弾性止水部材は次の通りである。
【0020】
(7)配線部材に装着される弾性止水部材であって、前記配線部材のうちの長手方向の一部を収容可能な貫通収容部が形成され、外周部から前記貫通収容部に至るスリットが形成された、弾性止水部材である。本開示によると、配線部材のうちの長手方向の一部はスリットを通じて貫通収容部内に容易に収容される。このため、弾性止水部材が配線部材に容易に装着される。
【0021】
(8)(7)の弾性止水部材であって、前記貫通収容部は、一方側に開口する被覆部材収容凹部と、前記被覆部材収容凹部の奥側と連続する複数の貫通部とを含み、前記スリットは、前記弾性止水部材の外周部から前記被覆部材収容凹部に至るベーススリット部と、前記ベーススリット部から複数に分かれて前記弾性止水部材の外周部から前記複数の貫通部のそれぞれに至る複数の個別スリット部とを含んでもよい。これにより、被覆部材の端部及び複数の線状配線部材のそれぞれについて、個別に止水が可能となる。
【0022】
(9)(7)又は(8)の弾性止水部材であって、前記貫通収容部は、前記配線部材における線状配線部材の長手方向の一部を収容可能な貫通部と、前記配線部材における前記線状配線部材とは別の線状配線部材の長手方向の一部を収容可能な奥側貫通部とを含み、前記スリットは、前記弾性止水部材の外周部から前記貫通部に至る部分に形成され、前記貫通部から前記奥側貫通部に至る奥側スリットがさらに形成されていてもよい。貫通部から奥側貫通部に至る奥側スリットが形成されているため、弾性止水部材の外周部に至るスリットを少なくできる。これにより、止水性を高めることができる。
【0023】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の配線モジュール及び弾性止水部材の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0024】
[実施形態]
以下、実施形態に係る配線モジュール10について説明する。
図1は配線モジュール10を示す斜視図である。
図2及び
図3は配線モジュール10を示す分解斜視図である。
図2は第2外装部材62側から斜視図であり、
図3は第1外装部材52から見た斜視図である。各図において配線部材20の一部が示されている。
【0025】
配線モジュール10は、配線部材20と、弾性止水部材30とを備える。本実施形態では、配線モジュール10は、さらに外装部材50を備える。配線部材20が弾性止水部材30を貫通する。弾性止水部材30によって、配線部材20の周囲を伝った水の侵入が抑制される。弾性止水部材30が外装部材50内に収容される。これにより、配線部材20が弾性止水部材30を貫通した状態が保たれる。
【0026】
各部構成について説明する。
【0027】
配線部材20は、線状配線部材22を含む。配線部材20は、1つの線状配線部材22を含んでいてもよいし、複数の線状配線部材22を含んでいてもよい。本実施形態では、配線部材20が、複数(ここでは2つ)の線状配線部材22を含む例が説明される。配線部材20は、さらに、奥側線状配線部材23を含む。ここでは、配線部材20は、複数(ここでは2つ)の奥側線状配線部材23を含む例が説明される。配線部材20において、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23が1つずつ設けられてもよい。奥側線状配線部材23が省略されてもよい。
【0028】
線状配線部材22及び奥側線状配線部材23は、電気を伝送する線状の媒体であり、例えば、芯線と、芯線の周囲を覆う被覆とを備える電線である。本実施形態では、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23が一般的な電線である例で説明される。線状配線部材及び奥側線状配線部材は、複数の電線をシースで覆ったケーブルであってもよい。線状配線部材及び奥側線状配線部材は、編組等の電磁シールド層を有していてもよい。線状配線部材及び奥側線状配線部材は、内部導体の周囲を外部導体で覆い、その周囲をさらに、シースで覆った同軸ケーブルであってもよい。線状配線部材及び奥側線状配線部材は、信号線であってもよいし、電源線であってもよい。
【0029】
本実施形態では、複数の線状配線部材22は、互いに太さが異なる線状配線部材を含む。以下の説明において、説明の便宜上、太い方の線状配線部材22a、細い方の線状配線部材22bとして区別されることがある。複数の奥側線状配線部材23は、互いに太さが異なる奥側線状配線部材を含む。以下の説明において、説明の便宜上、太い方の奥側線状配線部材23a、細い方の奥側線状配線部材23bとして区別されることがある。なお、太い方の線状配線部材22aと太い方の奥側線状配線部材23aとは同じ太さである。また、細い方の線状配線部材22bと細い方の奥側線状配線部材23bとは同じ太さである。各線状配線部材及び各奥側線状配線部材の太さは任意である。
【0030】
配線部材20は、複数の線状配線部材22の延在方向の一部を覆う被覆部材24を含む。被覆部材24は、さらに、複数の奥側線状配線部材23の延在方向の一部を覆う。被覆部材24は、例えば、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23の周囲に軟化溶融した樹脂を押出被覆等することによって形成されるシースである。被覆部材24は、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23における延在方向の一部を部分的に覆うものであればよい。例えば、被覆部材24は、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23に対して重なった状態で螺旋巻された粘着テープであってもよい。被覆部材24は、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23に外装されたコルゲートチューブ、樹脂チューブ、樹脂シート等であってもよい。線状配線部材22及び奥側線状配線部材23のうち被覆部材24によって覆われた部分は、当該被覆部材24によって束ねられた状態に保たれている。
【0031】
被覆部材24の端部から複数の線状配線部材22が延出している。被覆部材24の端部から奥側線状配線部材23も延出している。本実施形態では、被覆部材24の端部から2つの線状配線部材22a、22bが延出すると共に、2つの奥側線状配線部材23a、23bが延出している。
【0032】
図4は弾性止水部材30を示す平面図である。
図5は弾性止水部材30を示す正面図である。
図6は
図5のVI-VI線断面図である。
図7は
図4のVII-VII線断面図である。
図6では外装部材50が2点鎖線で示される。
図7では、貫通収容部32内に収容された配線部材20の断面が図示され、外装部材50が2点鎖線で示される。
【0033】
図1から
図7に示すように、弾性止水部材30は、シリコーンゴム等の弾性材料によって形成された部材である。本実施形態では、弾性止水部材30は、円柱状に形成されている。より具体的には、弾性止水部材30は、円柱状部分30aと、延長部分30bとを含む。円柱状部分30aに対して線状配線部材22及び奥側線状配線部材23が延出する側の部分に延長部分30bが形成されている。延長部分30bは、円柱状部分30aよりも細い。ここでは、円柱状部分30aの横断面(その軸に対して直交する面における断面)は円形であり、延長部分30bの横断面の外縁は4つの円の外縁が連なった形状に形成されている。延長部分30bの外周面を規定する部分的な円周は、後述する貫通部34及び奥側貫通部35と同心円状に形成される。弾性止水部材30は、その他、楕円柱状、角筒状に形成されていてもよい。弾性止水部材30に、貫通収容部32が形成されている(
図6参照)。貫通収容部32は、弾性止水部材30の軸方向に沿って貫通している。貫通収容部32は、配線部材20のうちの長手方向の一部を収容可能に形成されている。
【0034】
本実施形態では、配線部材20のうち被覆部材24の端部24aと、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23のうち被覆部材24の端部24aから延出する部分とが、弾性止水部材30に収容される。
【0035】
より具体的には、貫通収容部32は、被覆部材収容凹部33と、複数の貫通部34とを含む。本実施形態では、貫通収容部32は、複数の奥側貫通部35を含む。
【0036】
被覆部材収容凹部33は、被覆部材24の端部24aを覆う形状に形成されている。より具体的には、被覆部材収容凹部33は、弾性止水部材30の軸方向一端部から凹む円柱状の空間に形成されている。被覆部材収容凹部33の内周部には、内周側に向けて突出する環状突部33pが形成されている(
図6参照)。環状突部33pは、リップと呼ばれることもある部分である。環状突部33pの内径は、被覆部材24の外径よりも小さく形成されている。ここで、環状突部33pは、被覆部材収容凹部33の軸方向に分散するように複数(3つ)形成されている。
【0037】
配線部材20のうち被覆部材24の端部24aの部分が被覆部材収容凹部33内に収容されると、環状突部33pの先端部が、弾性変形しつつ当該端部24aの周囲に密着する。これにより、被覆部材24の外周を水が伝うことが抑制される。
【0038】
複数の貫通部34は、被覆部材収容凹部33と連続して設けられた貫通孔である。ここでは、複数の貫通部34は、被覆部材収容凹部33の底から弾性止水部材30の他端部に向けて貫通する孔である。複数の貫通部34は、複数の線状配線部材22に対応して設けられる。ここでは、複数の貫通部34は、2つの線状配線部材22に対応して並列状態で2つ設けられる。以下の説明において、太い方の線状配線部材22aに対応するものを貫通部34a、細い方の線状配線部材22bに対応するものを貫通部34bとして符号によって区別する場合がある。貫通部34aは、貫通部34bよりも大きい。
【0039】
貫通部34aの内周部には、内周側に向けて突出する環状突部34apが形成されている。環状突部34apは、リップと呼ばれることもある部分である。環状突部34apの内径は、線状配線部材22aの外径よりも小さく形成されている。ここで、環状突部34apは、貫通部34aの軸方向に分散するように複数形成されている。線状配線部材22aのうち被覆部材24側の部分が貫通部34a内に収容されると、環状突部34apの先端部が弾性変形した状態で当該線状配線部材22aの周囲に密着する。これにより、線状配線部材22aの外周を水が伝うことが抑制される。
【0040】
同様に、貫通部34bの内周部には、内周側に向けて突出する環状突部34bpが形成されている。環状突部34bpは、リップと呼ばれることもある部分である。環状突部34bpの内径は、線状配線部材22bの外径よりも小さく形成されている。ここで、環状突部34bpは、貫通部34bの軸方向に分散するように複数形成されている。線状配線部材22bのうち被覆部材24側の部分が貫通部34b内に収容されると、環状突部34bpの先端部が弾性変形した状態で、当該線状配線部材22bの周囲に密着する。これにより、線状配線部材22bの外周を水が伝うことが抑制される。
【0041】
奥側貫通部35は、被覆部材収容凹部33と連続して設けられた貫通孔である。ここでは、複数(2つ)の奥側貫通部35は、被覆部材収容凹部33の底から弾性止水部材30の他端部に向けて貫通する孔である。複数の奥側貫通部35は、複数の奥側線状配線部材23に対応して設けられる。ここでは、複数の奥側貫通部35は、2つの奥側線状配線部材23に対応して2つ並列状に設けられる。以下の説明において、太い方の奥側線状配線部材23aに対応するものを奥側貫通部35a、細い方の奥側線状配線部材23bに対応するものを奥側貫通部35bという場合がある。奥側貫通部35aは、奥側貫通部35bよりも大きい。
【0042】
奥側貫通部35aは、上記貫通部34aと同様形状である。奥側貫通部35bは、上記貫通部34bと同様形状である。太い方の奥側貫通部35aは、同じく太い方の貫通部34aの隣に設けられる。細い方の奥側貫通部35bは、同じく細い方の貫通部34bの隣に設けられる。このため、太い方の貫通部34a及び太い方の奥側貫通部35aが弾性止水部材30の一側に偏って設けられ、細い方の貫通部34b及び細い方の奥側貫通部35bが弾性止水部材30の他側に偏って設けられる。
【0043】
被覆部材24の端部24aが被覆部材収容凹部33に収容された状態で、太い方の線状配線部材22a及び太い方の奥側線状配線部材23aが上記貫通部34a及び奥側貫通部35aに貫通した状態で収容される。また、細い方の線状配線部材22b及び細い方の奥側線状配線部材23bが貫通部34b及び奥側貫通部35bに貫通した状態で収容される。この状態で、被覆部材24の端部24a、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23のうち被覆部材24寄りの部分が弾性止水部材30によって止水される。このため、配線部材20を伝った水の侵入が抑制される。また、被覆部材24の端部24aの開口は、被覆部材24の端部24aの止水箇所(特に被覆部材収容凹部33による止水箇所)と、線状配線部材22及び奥側線状配線部材23のうち被覆部材24寄りの部分の止水箇所(特に、貫通部34a、34b及び奥側貫通部35a、35b等による止水箇所)とに対して内側に位置する。このため、被覆部材24の端部24aの開口からの水の侵入も抑制される。
【0044】
弾性止水部材30に、その外周部から貫通収容部32に至るスリット36が形成される。スリット36は、貫通収容部32の延びる方向全体に亘るように形成される。このため、配線部材20の長手方向の一部は、スリット36を通って貫通収容部32内に収容され得る。
【0045】
本実施形態では、スリット36は、ベーススリット部37と、複数の個別スリット部38a、38bとを含む。
【0046】
ベーススリット部37は、弾性止水部材30の外周部から被覆部材収容凹部33に至るスリットである。より具体的には、ベーススリット部37は、弾性止水部材30のうち一端寄りの部分に形成される。ベーススリット部37は、弾性止水部材30の外周部から被覆部材収容凹部33に向い、かつ、弾性止水部材30の中心軸と平行な方向に沿うように形成されている。
【0047】
複数の個別スリット部38a、38bは、ベーススリット部37からY字状に分れて延びている。複数の個別スリット部38a、38bは、弾性止水部材30の外周部から複数(ここでは2つ)の貫通部34a、34bに至るように形成されている。より具体的には、個別スリット部38aは、弾性止水部材30の外周部から貫通部34aに向いかつ弾性止水部材30の中心軸と平行な方向に沿うスリット部分を含む。個別スリット部38bは、弾性止水部材30の外周部から貫通部34bに向いかつ弾性止水部材30の中心軸と平行な方向に沿うスリット部分を含む。個別スリット部38a、38bとベーススリット部37とは、弾性止水部材30の外側から見てY字状なして繋がっている。
【0048】
また、弾性止水部材30には、貫通部34a、34bから奥側貫通部35a、35bに至る奥側スリット39a、39bが形成されている。ここでは、貫通部34aから奥側貫通部35aに向いかつ弾性止水部材30の軸方向と平行な方向に沿う奥側スリット39aが形成されている。また、貫通部34bから奥側貫通部35bに向いかつ弾性止水部材30の軸方向と平行な方向に沿う奥側スリット39bが形成されている。
【0049】
そして、被覆部材24の端部24aがベーススリット部37を介して被覆部材収容凹部33内に収容される。また、太い方の奥側線状配線部材23aが、個別スリット部38aから貫通部34a、さらに、奥側スリット39aを介して、奥側貫通部35a内に収容される。同様に、細い方の奥側線状配線部材23bが、個別スリット部38bから貫通部34b、さらに、奥側スリット39bを介して、奥側貫通部35b内に収容される。また、太い方の線状配線部材22aが、個別スリット部38aを介して貫通部34a内に収容される。同様に、細い方の線状配線部材22bが、個別スリット部38bを介して貫通部34b内に収容される。これにより、弾性止水部材30が配線部材20の長手方向の一部に装着される。
【0050】
弾性止水部材30の外周部に、第1外側環状突部42と、第2外側環状突部43とが形成されている。第1外側環状突部42は、弾性止水部材30の外周部のうち被覆部材収容凹部33の外側部分に形成される。弾性止水部材30の軸方向において、第1外側環状突部42と環状突部33pとは少なくとも部分的に重複して設けられることが好ましい。第1外側環状突部42は、弾性止水部材30のうち円柱状部分30aの外周側部分にその周方向に沿って突出する環状形状に形成される。ここでは、第1外側環状突部42は複数形成されている。第2外側環状突部43は、弾性止水部材30の外周部のうち貫通部34a、34b及び奥側貫通部35a、35bの外周側部分に形成される。弾性止水部材30の軸方向において、第2外側環状突部43と環状突部34ap、34bpとは少なくとも部分的に重複して設けられることが好ましい。第2外側環状突部43は、弾性止水部材30のうち円柱状部分30aの外周部にその周方向に沿って突出する環状形状に形成される。ここでは、第2外側環状突部43が複数形成されている。
【0051】
また、弾性止水部材30の外周部のうちスリット36が形成された部分とは反対側の部分にセット突部44が形成される。セット突部44は、基部44aと、頭部44bとを含む。基部44aは、弾性止水部材30の外周部から突出している。頭部44bは、基部44aの先端部から基部44aの外周側に突出している。頭部44bは、円ではない形状、例えば、長円形状に形成される。この頭部44bは、外装部材50におけるセット凹部57に嵌め込まれる。
【0052】
上記のように配線部材20のうちの長手方向の一部が貫通収容部32内に収容された状態で、スリット36が閉じた状態に保たれる。本実施形態では、外装部材50によってスリット36が閉じた状態に保たれる。
【0053】
外装部材50は、弾性止水部材30の周りを覆ってスリット36を閉じた状態に保つ役割を果すことができる部材である。本実施形態では、外装部材50は、互いに合体可能な第1外装部材52と、第2外装部材62とを含む。第1外装部材52と第2外装部材62とが合体した状態で、それらの間に弾性止水部材30が収容される。第1外装部材52と第2外装部材62とを合体状態に保とうとする力が、弾性止水部材30を圧縮し、これにより、スリット36が閉じた状態に保たれる。
【0054】
より具体的には、第1外装部材52と第2外装部材62とは、それぞれ樹脂等によって形成された部材である。
【0055】
第1外装部材52は、底板部53と、一対の側壁部54とを含む。底板部53は、方形板状に形成されている。底板部53の両側部に一対の側壁部54が立設されている。側壁部54の外面に合体用突部54pが形成されている。合体用突部54pは、側壁部54の先端側に向けて徐々に突出寸法が小さくなる形状に形成されている。合体用突部54pの両側方外側にガイド突部54qが形成されている。ガイド突部54qは、側壁部54の基端側から先端側に向う細長い突部形状に形成されている。
【0056】
底板部53の長手方向中間部に、半円周面状の止水部材分割保持面55fが形成されている。止水部材分割保持面55f内に、弾性止水部材30の円柱状部分30aを縦割した半分の部分が収容される。
【0057】
止水部材分割保持面55fの一端部に第1位置決め部55aが設けられる。第1位置決め部55aは、止水部材分割保持面55fの内周面よりも内側に突出するU字状に形成される。第1位置決め部55a内には、被覆部材24を配置可能な凹部が形成されている。底板部53の一端部に、被覆部材24を収容可能な半筒状保持部56aが形成されている。半筒状保持部56aは、第1位置決め部55aの外側に位置している。半筒状保持部56aの内周面には、その周方向に沿った突部が形成されている。弾性止水部材30から延出する配線部材20のうち被覆部材24の部分が、第1位置決め部55aを通って半筒状保持部56a内に保持される。
【0058】
止水部材分割保持面55fの他端部に第2位置決め部55bが設けられる。第2位置決め部55bは、止水部材分割保持面55fの内周面よりも内側に突出するU字状に形成される。第2位置決め部55b内には、弾性止水部材30のうちの延長部分30bを配置可能な凹部が形成されている。底板部53のうち第2位置決め部55bの外側部分に、第2位置決め部55bの幅方向中間の位置を通る仕切部55cが突設される。弾性止水部材30から延出する線状配線部材22及び奥側線状配線部材23のうち太い方の線状配線部材22a及び太い方の奥側線状配線部材23aと、細い方の線状配線部材22b及び細い方の奥側線状配線部材23bとが、仕切部55cによって仕切られつつ外方に延出する。
【0059】
底板部53のうち止水部材分割保持面55fに、セット凹部57が形成されている。セット凹部57は、上記セット突部44を嵌込可能な形状に形成されている。ここでは、セット凹部57は、セット突部44に応じた長円形状に形成されている。セット凹部57は、止水部材分割保持面55fから見て凹んでいればよく、有底の穴であってもよいし、貫通する孔であってもよい。ここでは、セット凹部57は、止水部材分割保持面55fから外側に向けて貫通する孔である。
【0060】
弾性止水部材30は、そのセット突部44がセット凹部57に嵌め込まれた状態で、上記止水部材分割保持面55fにセットされる。この状態では、弾性止水部材30のうちセット突部44側の半分程度の部分が止水部材分割保持面55f内に収容される。この状態で、弾性止水部材30の一端面が第1位置決め部55aに接触した状態になる。また、弾性止水部材30のうちの延長部分30bが第2位置決め部55b内に収容され、弾性止水部材30の円柱状部分30aと延長部分30bとの境界の外向き段部が、第2位置決め部55bに接触した状態となる。これにより、第1外装部材52に対して弾性止水部材30がその軸方向において位置決めされる。スリット36は、弾性止水部材30のうちセット突部44とは反対側の部分に形成されている。このため、弾性止水部材30の外周部のうちスリット36の外向き部分は、底板部53とは反対側で外部に露出した状態とされる。このため、第1外装部材52にセットされた弾性止水部材30に対して、スリット36を通じて、配線部材20の一部を弾性止水部材30の貫通収容部32内に収容させることができる。
【0061】
第2外装部材62は、天井板部63と、一対の側壁部64とを含む。天井板部63は、上記底板部53と同様の方形板状に形成されている。天井板部63の両側部から一対の側壁部64が突出している。側壁部64の外面に合体用凹部64paが形成されている。ここでは、側壁部64の外面からその先端側に向けて合体用延長片64pが形成されている。合体用延長片64pの先端部に、上記合体用突部54pを配置可能な合体用凹部64paが形成されている。第1外装部材52上に第2外装部材62が重ねられた状態で、一対の側壁部54の先端縁と一対の側壁部64の先端縁とが対向配置される。なお、一対の側壁部64の先端部の重なり片が、一対の側壁部54の先端縁の外側に被さる。この状態で、合体用延長片64pの先端部が合体用突部54pを乗越えて、合体用突部54pが合体用凹部64pa内に入り込んだ状態となる。これにより、合体用突部54pが合体用凹部64paに抜け止状態に引っ掛かり、第1外装部材52と第2外装部材62との合体状態が維持される。
【0062】
天井板部63の長手方向中間部に、半円周面状の止水部材分割保持面65fが形成されている。止水部材分割保持面65f内に、弾性止水部材30の円柱状部分30aを縦割した半分の部分が収容される。上記止水部材分割保持面55fと止水部材分割保持面65fとで形成される円柱状空間内に、弾性止水部材30の円柱状部分30aが収容される。
【0063】
第1外装部材52と第2外装部材62との合体状態で、止水部材分割保持面55fの奥部分と止水部材分割保持面65fの奥部分との距離は、円柱状部分30aにおける第1外側環状突部42及び第2外側環状突部43の直径よりも小さい。また、止水部材分割保持面55f、65fの曲率半径は、円柱状部分30aにおける第1外側環状突部42及び第2外側環状突部43の半径よりも小さい。このため、第1外側環状突部42と第2外装部材62とが合体した状態で、円柱状部分30aのうち第1外側環状突部42及び第2外側環状突部43に収縮力が作用する。この収縮力は、スリット36を閉じる方向に締付ける力として、弾性止水部材30に作用する。
【0064】
止水部材分割保持面65fの一端部に第1位置決め部65aが設けられる。第1位置決め部65aは、止水部材分割保持面65fの内周面よりも内側に突出する弧状に形成される。第1外装部材52と第2外装部材62とが合体した状態で、第1位置決め部55a、65aが弾性止水部材30の一端面の環状領域に接触して、弾性止水部材30の位置決めを行う。天井板部63の一端部に、半筒状保持部56aと同様構成の半筒状保持部66aが形成されている。第1外装部材52と第2外装部材62とが合体した状態で、半筒状保持部56a、66aが被覆部材24を挟込んで保持する。
【0065】
止水部材分割保持面65fの他端部に仕切壁部65bが設けられる。仕切壁部65bには、上記第2位置決め部55b及び延長部分30bを配置可能な凹部が形成されている。第1外装部材52と第2外装部材62とが合体した状態で、第2位置決め部55b及び延長部分30bが仕切壁部65bの凹部内に配置される。この状態で、仕切壁部65bが外装部材50の内外空間を仕切る。
【0066】
このように構成された配線モジュール10の製造方法例について説明する。
【0067】
被覆部材24の端部から線状配線部材22及び奥側線状配線部材23が延出した配線部材20を準備する。
【0068】
セット突部44をセット凹部57に嵌め込むようにして、弾性止水部材30を第1外装部材52にセットする。この状態では、
図8に示すように、弾性止水部材30のうちスリット36が形成された部分が、底板部53に対して反対側を向いている。このため、スリット36の外側開口が底板部53とは反対側に露出している。弾性止水部材30のうちセット突部44側の半分程度の領域が第1外装部材52の止水部材分割保持面55f内に収容されており、その反対側の部分は外方に露出している。このため、弾性止水部材30は、スリット36を広げるように弾性変形することができる。
【0069】
上記状態で、被覆部材24の端部24aがベーススリット部37に押込まれて、被覆部材収容凹部33内に収容される(
図8の矢符P1参照)。また、奥側線状配線部材23a、23bが、個別スリット部38a、38bに押込まれ(
図8の矢符P2、P3参照)、貫通部34a、34b及び奥側スリット39a、39bを経て、奥側貫通部35a、35b内に収容される。この後、線状配線部材22a、22bが、個別スリット部38a、38bに押込まれ、貫通部34a、34b内に収容される。これにより、配線部材20の一部が弾性止水部材30の貫通収容部32に収容された状態、即ち、弾性止水部材30が配線部材20に装着された状態となる。
【0070】
この後、第1外装部材52及び弾性止水部材30上に、第2外装部材62が被せられ、合体用突部54pが合体用凹部64paに抜け止状態に引っ掛った状態とされる。これにより、第1外装部材52と第2外装部材62とが合体状態に保たれる。すると、止水部材分割保持面55f、65f内に円柱状部分30aが圧縮され、スリット36が閉じた状態に保たれる。
【0071】
このように構成された配線モジュール10は、例えば、ABS(アンチロックブレーキシステム)用の配線等、車両における足回りの用配線として用いられ得る。かかる配線では、車体外において、被水する環境下で用いられる可能性があるため、上記のように止水性を高めることが有効である。
【0072】
この配線モジュール10及び弾性止水部材30によると、配線部材20のうち長手方向の一部は、スリット36を通じて貫通収容部32内に容易に収容される。このため、配線部材を貫通孔にその軸方向に沿って挿入する作業等が不要となり、弾性止水部材30が配線部材20に容易に装着される。
【0073】
また、弾性止水部材30には被覆部材収容凹部33と複数の貫通部34a、34bとが形成されている。スリット36として、被覆部材収容凹部33に至るベーススリット部37と、複数の貫通部34a、34bのそれぞれに至る個別スリット部38a、38bとが形成されている。このため、被覆部材24の端部24aについては、ベーススリット部37を通じて被覆部材収容凹部33内に収容させることができる。複数の線状配線部材22a、22bについては、それぞれ個別スリット部38a、38bを通じて、貫通部34a、34b内に収容させることができる。このため、被覆部材24から複数の線状配線部材22a、22bが延出する構成においても、スリット36を通じて、被覆部材24の端部24aを被覆部材収容凹部33内に収容し、線状配線部材22a、22bを貫通部34a、34bに収容することができる。これにより、被覆部材24の端部24a及び複数の線状配線部材22a、22bのそれぞれについて、個別に止水が可能となる。この場合、被覆部材24の端部24aの開口を通じた水の侵入が有効に抑制される。
【0074】
また、貫通部34a、34bから奥側貫通部35a、35bに至る奥側スリット39a、39bが形成されている。このため、奥側線状配線部材23a、23bについては、個別スリット部38a、38b、貫通部34a、34b及び奥側スリット39a、39bを経由して奥側貫通部35a、35b内に配置される。これにより、奥側貫通部35a、35bのためだけに、弾性止水部材30の外周に至るスリットを形成する必要がなくなる。つまり、弾性止水部材30に形成される貫通部34a、34b及び奥側貫通部35a、35bの数に比して、弾性止水部材30の外周に開く個別スリット部38a、38bの数を少なくすることができる。これにより、止水性を高めることができる。
【0075】
また、弾性止水部材30を第1外装部材52と第2外装部材62との間に収容してそれらを合体すれば、スリット36が閉じた状態に保たれるので、配線モジュール10の製造が容易となる。
【0076】
しかも、第1外装部材52と第2外装部材62とが合体した状態で、スリット36を閉じる方向に弾性止水部材30が締付けられれば、スリット36がより確実に閉じられる。これにより、止水性が向上する。
【0077】
また、次に述べる複数の要因のうちの少なくとも1つによって弾性止水部材30を掴み難いことが考えられる。例えば、弾性止水部材30が掴み難いほどに小さい場合である。例えば、弾性止水部材30が円柱状の部材であり、しっかりと掴むのに手がかりとなる凹凸形状又は面が無い場合である。また、弾性止水部材30がシリコーンゴム等の滑りやすい材料で形成されていれば、弾性止水部材30を掴み難い。このような場合において、また、弾性止水部材30が第1外装部材52にセットされていれば、弾性止水部材30を第1外装部材52と共に掴みやすい。そして、弾性止水部材30を第1外装部材52と共に掴んだ状態で、配線部材20の長手方向の一部を、スリット36に押込んで貫通収容部32内に収容することができる。これにより、弾性止水部材30が配線部材20に容易に装着される。
【0078】
[変形例]
上記実施形態において、配線部材が被覆部材を備えていることは必須ではない。配線部材は、1つの電線のみを備えていてもよい。この場合、弾性止水部材には、当該1つの電線を貫通させる1つの貫通収容部が形成されていればよい。この場合、弾性止水部材には、1つのスリットのみが形成されればよい。
【0079】
本実施形態では、配線部材20の長手方向の中間部の止水を行う構造が説明された。特に、被覆部材24の端部24aの開口からの水の侵入を抑制する構造が説明された。本弾性止水部材による止水構造は、配線部材の端部におけるコネクタに対する止水構造として適用されてもよい。この場合、弾性止水部材は、コネクタハウジングに収容されてもよい。
【0080】
本実施形態では、弾性止水部材30が第1外装部材52と第2外装部材62との間に収容される構成が説明された。弾性止水部材は、1つの部材に形成された凹部に嵌め込まれる構成であってもよい。外装部材は、スリット36を閉じた状態に保つ部材であればよく、例えば、弾性止水部材30の周りを覆うように巻付けられた粘着テープであってもよい。
【0081】
なお、上記実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組合わせることができる。
【符号の説明】
【0082】
10 配線モジュール
20 配線部材
22(22a、22b) 線状配線部材
23(23a、23b) 奥側線状配線部材
24 被覆部材
24a 端部
30 弾性止水部材
30a 円柱状部分
30b 延長部分
32 貫通収容部
33 被覆部材収容凹部
33p(34ap,34bp) 環状突部
34(34a,34b) 貫通部
35(35a,35b) 奥側貫通部
36 スリット
37 ベーススリット部
38a,38b 個別スリット部
39a,39b 奥側スリット
42 第1外側環状突部
43 第2外側環状突部
44 セット突部
44a 基部
44b 頭部
50 外装部材
52 第1外装部材
53 底板部
54,64 側壁部
54p 合体用突部
54q ガイド突部
55a,65a 第1位置決め部
55b 第2位置決め部
55c 仕切部
55f,65f 止水部材分割保持面
56a,66a 半筒状保持部
57 セット凹部
62 第2外装部材
63 天井板部
64p 合体用延長片
64pa 合体用凹部
65b 仕切壁部