(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】放射線硬化型インクジェットインク組成物およびインクジェット方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20240925BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 120
B41M5/00 100
(21)【出願番号】P 2020108575
(22)【出願日】2020-06-24
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】小池 直樹
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 徹
(72)【発明者】
【氏名】餘田 敏行
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/014659(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/197852(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/077364(WO,A1)
【文献】特開2021-042321(JP,A)
【文献】特開2021-042322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/
B41M 5/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニルメチルオキサゾリジノンと、ビニルエーテル基を2つ以上有するモノマーと、を
含み、
前記ビニルエーテル基を2つ以上有するモノマーの含有量が、総量に対して
5質量%以
上30質量%以下であ
り、
前記ビニルメチルオキサゾリジノンの含有量が、総量に対して5質量%以上40質量%
以下であり、
単官能(メタ)アクリレートモノマーをさらに含む、
放射線硬化型インクジェットインク組成物。
【請求項2】
ビニルメチルオキサゾリジノンと、ビニルエーテル基を2つ以上有するモノマーと、を
含み、
下記式(1)で表されるモノマーをさらに含む、放射線硬化型インクジェットインク組
成物。
H
2C=CR
1-CO-OR
2-O-CH=CH-R
3 ・・・(1)
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数2以上20以下の2価の有機
残基であり、R
3は水素原子または炭素数1以上11以下の1価の有機残基である。)
【請求項3】
下記式(1)で表されるモノマーをさらに含む、請求項1に記載の放射線硬化型インク
ジェットインク組成物。
H
2C=CR
1-CO-OR
2-O-CH=CH-R
3 ・・・(1)
(式中、R
1は水素原子またはメチル基であり、R
2は炭素数2以上20以下の2価の有機
残基であり、R
3は水素原子または炭素数1以上11以下の1価の有機残基である。)
【請求項4】
前記式(1)で表されるモノマーの含有量が、総量に対して10質量%以上50質量%
以下である、請求項2または3のいずれか1項に記載の放射線硬化型インクジェットイン
ク組成物。
【請求項5】
前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとして、芳香族基を有する単官能(メタ)ア
クリレートモノマーを含む、請求項
1に記載の放射線硬化型インクジェットインク組成物
。
【請求項6】
蛍光増白剤をさらに含む、請求項1から請求項
5のいずれか1項に記載の放射線硬化型
インクジェットインク組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項
6のいずれか1項に記載の放射線硬化型インクジェットインク組成
物をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、
前記記録媒体に付着された前記放射線硬化型インクジェットインク組成物に対して、放
射線を照射する工程と、を含むインクジェット方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化型インクジェットインク組成物およびインクジェット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルやジビニルエーテル系化合物をモノマーとして含む放射線硬化型インクジェットインク組成物が知られていた。上記モノマーは、他の放射線硬化用のモノマーと比べて低粘度であり、上記インク組成物の低粘度化に寄与してインクジェットヘッドからの吐出性を向上させる。例えば、特許文献1には、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、およびジビニルエーテル系化合物としてトリエチレングリコールジビニルエーテルを含む活性エネルギー硬化型インクジェットインキ組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の活性エネルギー硬化型インクジェットインキ組成物では、粘度を低減させながら硬化後の塗膜の密着性を向上させることが難しいという課題があった。詳しくは、ジプロピレングリコールジアクリレートなどの比較的に高粘度のモノマーを併用しているため、粘度が増大し易かった。また、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルやジビニルエーテル系化合物は官能基を複数有している。そのため、単官能モノマーと比べて、塗膜と記録媒体との密着性が確保し難かった。すなわち、低粘度かつ塗膜の密着性に優れた放射線硬化型インクジェットインク組成物が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
放射線硬化型インクジェットインク組成物は、ビニルメチルオキサゾリジノンと、ビニルエーテル基を2つ以上有するモノマーと、を含む。
【0006】
インクジェット方法は、上記の放射線硬化型インクジェットインク組成物をインクジェットヘッドから吐出して、記録媒体に付着させる工程と、前記記録媒体に付着された前記放射線硬化型インクジェットインク組成物に対して、放射線を照射する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係るインクジェットプリンターの構成を示す概略斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.放射線硬化型インクジェットインク組成物
本実施形態に係る放射線硬化型インクジェットインク組成物は、重合性化合物、光重合開始剤、色材、および各種添加剤などを含む。本実施形態の放射線硬化型インクジェットインク組成物は、後述するインクジェット方法を用いて、サイネージなどの印刷や3D造形などに適用が可能である。以降の説明において、本実施形態の放射線硬化型インクジェットインク組成物を単にインクともいう。以下、インクに含まれる各種成分について説明する。
【0009】
1.1.重合性化合物
重合性化合物は重合性の官能基を有する。一般に、重合性化合物には、官能基を1つ有する単官能モノマーと、官能基を複数有する多官能モノマーとが含まれる。以下に述べる本実施形態の各重合性化合物は、1種類以上を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0010】
本実施形態で適用される重合性化合物は、放射線が照射されると官能基の重合反応により硬化する。これによってインクから塗膜が形成される。放射線としては、紫外線、電子線、赤外線、可視光線、エックス線などが挙げられる。これらの中でも、放射線のピーク波長に対して良好な硬化性を有する材料や、放射線源を入手し易いことから、放射線として紫外線を用いることが好ましい。
【0011】
本実施形態のインクは、重合性化合物として、ビニルメチルオキサゾリジノン(CAS番号:3395-98-0)と、ビニルエーテル基を2つ以上有するモノマーと、を含む。また、インクは、重合性化合物として、下記式(1)で表されるモノマー、および単官能(メタ)アクリレートモノマーをさらに含んでもよい。ここで、ビニルエーテル基を2つ以上有するモノマーを、ビニルエーテル基を複数有するモノマーともいい、式(1)で表されるモノマーを式(1)のモノマーともいう。
H2C=CR1-CO-OR2-O-CH=CH-R3 ・・・(1)
(式中、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は炭素数2以上20以下の2価の有機残基であり、R3は水素原子または炭素数1以上11以下の1価の有機残基である。)
【0012】
重合性化合物の官能基が(メタ)アクリロイル基である場合には、インクの硬化性の観点からアクリロイル基であることが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリロイルは、アクリロイルおよびそれに対応するメタクリロイルのうちの少なくともいずれかを指し、(メタ)アクリレートは、アクリレートおよびそれに対応するメタクリレートのうちの少なくともいずれかを指し、(メタ)アクリルは、アクリルおよびそれに対応するメタクリルのうちの少なくともいずれかを指す。
【0013】
1.1.1.ビニルメチルオキサゾリジノン
ビニルメチルオキサゾリジノンは、官能基としてビニル基を有する窒素含有単官能モノマーである。ビニルメチルオキサゾリジノンは、単官能モノマーでありながら比較的に低粘度であるため、インクの粘度低減に寄与する。また、ビニルメチルオキサゾリジノンは、塗膜と記録媒体との密着性や塗膜の耐擦過性を向上させる。また、ビニルメチルオキサゾリジノンと、後述する単官能(メタ)アクリレートモノマーとを組み合わせて用いることにより、塗膜の延伸性が向上する。
【0014】
インクにおけるビニルメチルオキサゾリジノンの含有量は、インクの総量に対して、好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上35質量%以下であり、さらにより好ましくは15質量%以上30質量%以下である。上記含有量が規定値以上であることにより、インクの粘度をより低減させると共に、塗膜の密着性および耐擦過性をさらに向上させることができる。上記含有量が規定値以下であることにより、インクの保存安定性を向上させることができる。
【0015】
1.1.2.ビニルエーテル基を複数有するモノマー
ビニルエーテル基を2つ以上有するモノマーは、官能基であるビニルエーテル基を複数有する多官能モノマーである。ビニルエーテル基を複数有するモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、トリプロピレングリコールジビニルエーテル、および1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルなどのジビニルエーテル系化合物、トリメチロールエタントリビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、およびグリセリントリビニルエーテルなどのトリビニルエーテル化合物、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテルなどのテトラビニルエーテル化合物、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテルなどが挙げられる。これらのモノマーは、一般的な単官能モノマーと比べて比較的に低粘度であり、インクの粘度低減に寄与する。
【0016】
これらのうち、インクの粘度低減および硬化性の観点から、ジエチレングリコールジビニルエーテルおよび1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルが好ましく、トリエチレングリコールジビニルエーテルがより好ましい。
【0017】
インクにおけるビニルエーテル基を複数有するモノマーの含有量は、インクの総量に対して、好ましくは5質量%以上30質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上25質量%以下であり、さらにより好ましくは15質量%以上20質量%以下である。上記含有量が規定値以上であることにより、インクの粘度をさらに低減することができる。上記含有量が規定値以下であることにより、放射線照射によるインクの硬化性を向上させることができる。インクの硬化性向上は、塗膜の形成速度の増大に寄与して、塗膜を含む印刷物などの製造に要する時間が短縮される。
【0018】
1.1.3.式(1)のモノマー
式(1)のモノマーは、官能基として(メタ)アクリロイル基と、ビニルエーテル基などの炭素原子間に不飽和二重結合を有する官能基とを各1つ有する。式(1)において、R2で表される炭素数2から20の2価の有機残基としては、炭素数2から20の直鎖状、分枝状または環状の、置換されていてもよいアルキレン基、構造中にエーテル結合、エステル結合を少なくとも1種有する、置換されていてもよい炭素数2から20のアルキレン基、炭素数6から11の、置換されていてもよい2価の芳香族基が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、およびブチレン基などの炭素数2から6のアルキレン基、オキシエチレン基、オキシn-プロピレン基、オキシイソプロピレン基、およびオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2から9のアルキレン基が好ましい。さらに、インクの低粘度化、およびインクの硬化性向上の観点から、R2が、オキシエチレン基、オキシn-プロピレン基、オキシイソプロピレン基、およびオキシブチレン基などの構造中にエーテル結合による酸素原子を有する炭素数2から9のアルキレン基である、グリコールエーテル鎖を有するものがより好ましい。
【0020】
式(1)において、R3で表される炭素数1から11の1価の有機残基としては、炭素数1から10の直鎖状、分枝状または環状の、置換されていてもよいアルキル基、炭素数6から11の、置換されていてもよい芳香族基が挙げられる。これらの中でも、メチル基またはエチル基である炭素数1から2のアルキル基、フェニル基およびベンジル基などの炭素数6から8の芳香族基が好ましい。
【0021】
上記の各有機残基が置換されていてもよい基である場合、その置換基は、炭素原子を含む基および炭素原子を含まない基に分けられる。上記置換基が炭素原子を含む基である場合、該炭素原子は有機残基の炭素数にカウントされる。炭素原子を含む基としては、特に限定されないが、例えばカルボキシ基、アルコキシ基が挙げられる。炭素原子を含まない基としては、特に限定されないが、例えば水酸基、ハロ基が挙げられる。
【0022】
式(1)のモノマーの具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(ビニロキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(イソプロペノキシエトキシエトキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、および(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコールモノビニルエーテルが挙げられる。これらの具体例のうち、インクにおける硬化性と粘度とのバランスのとり易さから、アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルが特に好ましい。
【0023】
式(1)のモノマーは、一般的な単官能モノマーと比べて比較的に低粘度であり、インクの粘度の低減に寄与する。また、放射線の照射による硬化性にも優れる。これらにより、インクの粘度をさらに低減すると共に塗膜形成時の硬化性を向上させることができる。
【0024】
インクにおける式(1)のモノマーの含有量は、インクの総量に対して、好ましくは10質量%以上50質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上45質量%以下であり、さらにより好ましくは30質量%以上40質量%以下である。上記含有量が規定値以上であることにより、インクの粘度がより低減されることに加えて放射線照射によるインクの硬化性をさらに向上させることができる。上記含有量が規定値以下であることにより、インクの臭気が低減されると共に、塗膜と記録媒体との密着性が向上する。
【0025】
1.1.4.単官能(メタ)アクリレートモノマー
単官能(メタ)アクリレートモノマーは官能基として(メタ)アクリロイル基を1つ有する。インクに単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いることにより、塗膜における架橋密度が抑えられて塗膜の延伸性を向上させることができる。
【0026】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、環状エーテル構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、および架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーなどが挙げられる。
【0027】
これらのうち、インクは、単官能(メタ)アクリレートモノマーとして芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましい。芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーは、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤などの、芳香族基を有する光重合開始剤の溶解性に優れる。そのため、上記の光重合開始剤を併用して、放射線照射によるインクの硬化性を向上させることができる。
【0028】
芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、アルコキシ化2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、アルコキシ化ノニルフェニル(メタ)アクリレート、p-クミルフェノールEO変性(メタ)アクリレート、および2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
これらの中でも、上述した光重合開始剤の溶解性の観点から、ベンジル(メタ)アクリレートもしくはフェノキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、フェノキシエチル(メタ)アクリレートがより好ましく、フェノキシエチルアクリレート(2-フェノキシエチルアクリレート)がさらにより好ましい。
【0030】
インクにおける芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、インクの総量に対して、好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上35質量%以下であり、さらにより好ましくは15質量%以上30質量%以下である。これによれば、芳香族基を有する光重合開始剤の溶解性がさらに向上する。また、塗膜の延伸性が向上すると共に、インクの硬化性、塗膜の密着性および耐擦過性も向上する。
【0031】
脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリル酸-1,4-ジオキサスピロ[4,5]デシ-2-イルメチル、ジシクロペンタニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートなどが挙げられる。
【0032】
これらの中でも、インクの硬化性および塗膜の耐擦過性の観点から、イソボルニルアクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレートが好ましい。
【0033】
環状エーテル構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーと、ビニルメチルオキサゾリジノンとをインクに併用することにより、インクの臭気が低減されることに加えて、塗膜の密着性および擦過性が向上する。
【0034】
架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーにおける架橋縮合環構造とは、2つ以上の環状構造が1対1で辺を共有すると共に、同じ環状構造または異なる環状構造の、互いに隣接しない2つ以上の原子を連結した構造を指す。架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、下記式(a)、(b)の架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。これらの架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーと、ビニルメチルオキサゾリジノンとを併用することにより、塗膜における、耐擦過性および延伸性が向上し、記録媒体との密着性がさらに向上する。
【0035】
【0036】
【0037】
脂環構造、環状エーテル構造、および架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーを用いる場合の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは5質量%以上40質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上35質量%以下であり、さらにより好ましくは15質量%以上30質量%以下である。これによれば、塗膜の延伸性がより向上すると共に、インクの硬化性、塗膜の密着性および耐擦過性が向上する。
【0038】
上記の単官能(メタ)アクリレートモノマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0039】
その他の単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、2-エチルヘキシルアクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの直鎖または分岐鎖を含む脂肪属基を有する(メタ)アクリレート、ラクトン変性可とう性(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
1.1.5.その他の重合性化合物
インクは、上記重合性化合物以外のその他の重合性化合物として、以下に挙げる単官能モノマー、多官能モノマー、およびオリゴマーを含んでもよい。その他の重合性化合物が有する官能基としては、放射線によって重合反応が可能であれば特に限定されず、公知の重合性の官能基が採用可能である。
【0041】
単官能モノマーとしては、例えば、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルカルバゾール、N-ビニルアセトアミドおよびN-ビニルピロリドンなどの窒素含有単官能ビニルモノマー、アクリロイルモルフォリンなどの窒素含有単官能アクリレートモノマー、(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライド4級塩などの(メタ)アクリルアミドなどの窒素含有単官能アクリルアミドモノマー、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、およびマレイン酸などの不飽和カルボン酸、該不飽和カルボン酸の塩、不飽和カルボン酸のエステル、ウレタン、アミドおよび無水物、アクリロニトリル、スチレン、種々の不飽和ポリエステル、不飽和ポリエーテル、不飽和ポリアミド、不飽和ウレタンなどが挙げられる。なお、ビニルメチルオキサゾリジノンは、窒素含有単官能ビニルモノマーの範疇であるが、本明細書では含めないものとする。
【0042】
多官能モノマーとしては、例えば、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジメタアクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO(エチレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO(プロピレンオキサイド)付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどの2官能(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、およびカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの3官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの多官能モノマーの中でも、トリプロピレングリコールジアクリレート、プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレートが好ましい。
【0043】
多官能モノマーをインクに添加する場合の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは2質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上15質量%以下であり、さらにより好ましくは2質量%以上10質量%以下である。これによれば、インクの硬化性が向上する。
【0044】
オリゴマーは、重合性化合物を構成成分とする多量体であって、1つ以上の官能基を有する化合物を指す。なお、ここでいう重合性化合物は、上述した重合性化合物に限定されない。本明細書では、分子量が1000以下の重合性化合物をモノマーとし、分子量が1000を超えるものをオリゴマーとする。
【0045】
オリゴマーとしては、例えば、繰り返し構造がウレタンであるウレタンアクリレートオリゴマー、繰り返し構造がエステルであるポリエステルアクリレートオリゴマー、および繰り返し構造がエポキシ基を有する重合性化合物に由来するエポキシアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0046】
これらの中でもウレタンアクリレートオリゴマーが好ましい。ウレタンアクリレートオリゴマーでは、芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーが好ましく、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましい。また、ウレタンアクリレートオリゴマーが有する官能基の数は、4つ以下であることが好ましく、2つ以下であることがより好ましい。これによれば、インクの粘度の増大が抑えられると共に、インクの硬化性および塗膜の密着性が向上する。
【0047】
オリゴマーをインクに添加する場合の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらにより好ましくは2質量%以上7質量%以下である。これによれば、インクの粘度の増大がより抑えられると共に、インクの硬化性と塗膜の密着性とがさらに向上する。
【0048】
1.2.光重合開始剤
光重合開始剤は、放射線の照射によって活性種を生じ、該活性種によって重合性化合物の重合反応を促進させる機能を有する。光重合開始剤から生じる活性種は、具体的には、ラジカル、酸、および塩基などである。
【0049】
光重合開始剤としては、上記機能を有していれば特に限定されないが、例えばアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、アルキルフェノン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤などの公知の光重合開始剤が挙げられる。これらの中でも、チオキサントン系光重合開始剤が好ましく、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤がより好ましい。これによれば、インクの硬化性、特にUV-LED(紫外線発光ダイオード)光を採用する硬化プロセスにおける硬化性が向上する。光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0051】
アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤として市販品を適用してもよい。上記市販品としては、例えば、IGM RESINS B.V.社のOmnirad(登録商標) 819(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド)、Omnirad 1800(ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイドと、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトンとの質量比25:75の混合物)、Omnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)、Lambson Group Ltd.社のSpeedcure(登録商標) TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド)などが挙げられる。
【0052】
インクに含まれるアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは3質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上12質量%以下であり、さらにより好ましくは7質量%以上10質量%以下である。これによれば、インクの硬化性が向上すると共に、光重合開始剤の溶解性が確保される。
【0053】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、および2-クロロチオキサントンなどが挙げられる。
【0054】
チオキサントン系光重合開始剤として市販品を適用してもよい。上記市販品としては、例えば、Lambson Group Ltd.社のSpeedcure(登録商標) DETX(2,4-ジエチルチオキサントン)などが挙げられる。
【0055】
チオキサントン系光重合開始剤をインクに用いる場合の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上3質量%以下である。これによればインクの硬化性が向上する。
【0056】
1.3.色材
色材はインクから形成される塗膜を着色する。インクの塗膜が着色されることにより、記録媒体の着色や、記録媒体上へのカラー画像などの形成が可能となる。色材には顔料または染料を用いる。なお、本発明のインクは、色材を含有することに限定されず、色材を含有しないクリアインクであってもよい。
【0057】
1.3.1.顔料
顔料は、インクの塗膜における色材の耐光性を向上させる。顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれも採用可能である。
【0058】
顔料としては、公知の有機顔料、無機顔料のいずれも採用可能である。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料などのアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、イソインドリン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料などの多環式顔料、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキなどの染料レーキ顔料、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料などが挙げられる。無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化クロムなどの金属酸化物顔料、カーボンブラックなどが挙げられる。また、パール顔料やメタリック顔料などの光輝顔料を用いてもよい。
【0059】
黒色顔料としては、C.I.(Colour Index Generic Name)ピグメントブラック1,7,11が挙げられる。この中でも、C.I.ピグメントブラック7であるカーボンブラックを用いることが好ましい。
【0060】
カーボンブラックの具体例としては、三菱化学社の、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200Bなど、コロンビアカーボン社の、Raven(登録商標)5750,5250,5000,3500,1255,700など、CABOT社の、Rega1(登録商標)400R,330R,660R、Mogul(登録商標)L、Monarch(登録商標)700,800,880,900,1000,1100,1300,1400など、Degussa社の、Color Black FW1,FW2,FW2V,FW18,FW200,S150,S160,S170、Printex(登録商標)35,U,V,140U、SpecialBlack 6,5,4A,4が挙げられる。
【0061】
白色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントホワイト 6,18,21が挙げられる。
【0062】
イエロー色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー 1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,16,17,24,34,35,37,53,55,65,73,74,75,81,83,93,94,95,97,98,99,108,109,110,113,114,117,120,124,128,129,133,138,139,147,151,153,154,155,167,172,180が挙げられる。
【0063】
マゼンタ色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド 1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,40,41,42,48(Ca),48(Mn),57(Ca),57:1,88,112,114,122,123,144,146,149,150,166,168,170,171,175,176,177,178,179,184,185,187,202,209,219,224,245、またはC.I.ピグメントバイオレット 19,23,32,33,36,38,43,50が挙げられる。
【0064】
シアン色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー 1,2,3,15,15:1,15:2,15:3,15:34,15:4,16,18,22,25,60,65,66、C.I.バットブルー 4,60が挙げられる。
【0065】
上記以外の色用の顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン 7,10、C.I.ピグメントブラウン 3,5,25,26、C.I.ピグメントオレンジ 1,2,5,7,13,14,15,16,24,34,36,38,40,43,63が挙げられる。
【0066】
顔料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。顔料を用いる場合には、後述する分散剤を併用してもよい。また、顔料の平均粒子径は、300nm以下が好ましく、50nm以上200nm以下であることがより好ましい。顔料の平均粒子径が上記の範囲内にあると、インクの吐出性や分散安定性などが向上すると共に、塗膜における画像の画質が優れたものとなる。なお、ここでいう平均粒子径とは、動的光散乱法により測定された体積基準粒度分布(50%)を指す。
【0067】
顔料をインクに添加する場合の含有量は、インクの総量に対して、0.2質量%以上20.0質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上15.0質量%以下であり、さらにより好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0068】
1.3.2.染料
染料としては、公知の、酸性染料、直接染料、反応性染料、および塩基性染料が採用可能である。染料は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0069】
染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクトブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35が挙げられる。
【0070】
染料をインクに添加する場合の含有量は、インクの総量に対して、0.2質量%以上20.0質量%以下であり、好ましくは1.0質量%以上20.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上15.0質量%以下であり、さらにより好ましくは1.0質量%以上10.0質量%以下である。
【0071】
1.4.添加剤
インクは、添加剤として蛍光増白剤を含むことが好ましい。また、インクは、必要に応じて、分散剤、重合禁止剤、界面活性剤、光増感剤などのその他の添加剤を含んでもよい。
【0072】
1.4.1.蛍光増白剤
蛍光増白剤は、例えば、300nmから450nm付近の波長の光を吸収して、400nmから500nm付近の波長の蛍光を放出する。すなわち、放射線として紫外線を用いる場合に、蛍光増白剤はインクに照射される紫外線の長波長領域を増大させて硬化性を向上させる。
【0073】
蛍光増白剤としては、例えば、ナフタレンベンゾオキサゾリル誘導体、チオフェンベンゾオキサゾリル誘導体、スチルベンベンゾオキサゾリル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゼン及びビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾールー2-イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン-5,5'-ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、およびピリドトリアゾールなどが挙げられる。蛍光増白剤は、1種類以上を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0074】
蛍光増白剤には市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、クラリアントジャパン社のTELALUX(登録商標) OB(2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン)、KCB(1,4-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)ナフタレン)などが挙げられる。
【0075】
インクに含まれる蛍光増白剤の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは0.07質量%以上0.70質量%以下であり、より好ましくは0.10質量%以上0.50質量%以下である。これによればインクの硬化性が向上する。
【0076】
1.4.2.その他の添加剤
分散剤は、顔料に対してインク中での分散性を付与する。分散剤を用いることによって、顔料がインク中に安定的に分散され、インクにおける保管時の耐沈降性やインクジェットヘッドからの吐出安定性などが向上する。
【0077】
分散剤としては、例えば、高分子分散剤などの、顔料分散液の調製に慣用される公知の分散剤が挙げられる。該分散剤の具体例としては、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマーおよびコポリマー、アクリル系ポリマーおよびコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミノ系ポリマー、含珪素ポリマー、含硫黄ポリマー、含フッ素ポリマー、およびエポキシ樹脂のうち1種類以上を主成分とするものが挙げられる。分散剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0078】
高分子分散剤としては、市販品を用いてもよく、例えば、味の素ファインテクノ社のアジスパー(登録商標)シリーズ、Lubrizol社のSolsperse36000などのソルスパース(登録商標)シリーズ、BYK Additives&Instruments社のディスパービックシリーズ、楠本化成社のディスパロン(登録商標)シリーズなどが挙げられる。
【0079】
インクに含まれる分散剤の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは0.05質量%以上1.00質量%以下であり、より好ましくは0.10質量%以上0.50質量%以下である。これによれば、インクの保存安定性や吐出安定性がより向上する。
【0080】
重合禁止剤は、保管時などにおける重合性化合物の意図しない重合反応の進行を抑えて、インクの保存安定性を向上させる。重合禁止剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0081】
重合禁止剤としては、特に限定されないが、例えば、4-メトキシフェノール(ヒドロキノンモノメチルエーテル)、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、ヒドロキノン、クレゾール、t-ブチルカテコール、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-ブチルフェノール)、および4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、ヒンダードアミン化合物、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、または2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシルの誘導体などが挙げられる。
【0082】
上記重合禁止剤の中でも、2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル又はその誘導体が好ましい。2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシルの誘導体としては、特に制限されないが、例えば、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-(2-クロロアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-シアノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-ヒドロキシベンゾエート-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-(2-ヨードアセトアミド)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-イソチオシアネート-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル、4-(2-プロピニルオキシ)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシルが挙げられる。このなかでも、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシルがより好ましい。これらを用いることにより、インクの保存安定性がより向上する。
【0083】
重合禁止剤をインクに添加する場合の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは0.05質量%以上1.00質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上0.50質量%以下である。
【0084】
界面活性剤は塗膜の耐擦過性を向上させる。界面活性剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤が挙げられる。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤が好ましく、ポリエステル変性シリコーンまたはポリエーテル変性シリコーンであることがより好ましい。このような界面活性剤としては、市販品が採用可能であり、例えば、BYK Additives&Instruments社の、BYK(登録商標)-347、-348、BYK-UV3500、-3510、-3530などのポリエステル変性シリコーン、BYK-3570などのポリエーテル変性シリコーンが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0085】
界面活性剤をインクに添加する場合の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは0.1質量%以上1.0質量%以下であり、より好ましくは0.2質量%以上0.8質量%以下である。
【0086】
光増感剤は、放射線を吸収して励起状態となり、光重合開始剤からの活性種の発生を促進する。光増感剤としては、脂肪族アミン、芳香族基を含むアミン、ピペリジン、エポキシ樹脂とアミンの反応生成物、およびトリエタノールアミントリアクリレートなどのアミン化合物、アリルチオ尿素、o-トリルチオ尿素などの尿素化合物、ナトリウムジエチルジチオフォスフェート、芳香族スルフィン酸の可溶性塩などのイオウ化合物、N,N-ジエチル-p-アミノベンゾニトリルなどのニトリル系化合物、トリ-n-ブチルフォスフィン、ナトリウムジエチルジチオフォスファイドなどのリン化合物、ミヒラーケトン、N-ニトリソヒドロキシルアミン誘導体、オキサゾリジン化合物、テトラヒドロ-1,3-オキサジン化合物、ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドとジアミンの縮合物などの窒素化合物、四塩化炭素、ヘキサクロロエタンなどの塩素化合物などが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0087】
光増感剤をインクに添加する場合の含有量は、インクの総量に対して、好ましくは0.5質量%以上3.0質量%以下である。
【0088】
2.インクの調製方法
インクの調製では、上述した各成分を混合し、各成分が均一に混合されるよう十分に撹拌する。なお、インクの調製過程において、光重合開始剤と重合性化合物の少なくとも一部とを混合した混合物に対して、超音波処理および加温処理の少なくとも何れかを施してもよい。これにより、調製されたインク中の溶存酸素量が低減されて、インクの吐出安定性や保存安定性が向上する。
【0089】
3.インクの物性
インクの25℃における粘度は、30mPa・s(ミリパスカル秒)以下であることが好ましく、25mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることがさらにより好ましく、15mPa・s以下であることが特に好ましい。これによれば、インクジェットヘッドからのインクの吐出性が向上して、インク液滴の飛行曲がりや飛散の発生を抑えることができる。なお、インクの粘度は、アントンパール社の粘弾性測定装置 レオメータMCR-301を用いて、インクの設定温度25℃にて、Shear Rateを10から1000に上げていき、Shear Rateが200の時の粘度を読み取ることにより測定される。
【0090】
インクの20℃における表面張力は、好ましくは20mN/m以上40mN/m以下である。これによれば、撥液処理されたインクジェットヘッドのノズル面に対して、インクが濡れ難くなる。そのため、インクジェットヘッドからインクが正常かつ適量吐出されて、インク液滴の飛行曲がりや飛散を抑えることができる。なお、インクの表面張力は、協和界面科学社の自動表面張力計CBVP-Zを用いて、20℃の環境下で白金プレートをインクで濡らしたときの表面張力を確認することにより測定される。
【0091】
4.インクジェット装置
後述する本実施形態のインクジェット方法に用いるインクジェット装置について、シリアルタイプのインクジェットプリンターを例示し、
図1を参照して説明する。
図1では、各部材を認識可能な程度の大きさとするため、各部材の尺度を実際とは異ならせている。
【0092】
本実施形態に係るインクジェットプリンター1は、いわゆるシリアルタイプのプリンターと呼ばれるものである。シリアルプリンターとは、所定の方向に移動するキャリッジにインクジェットヘッドが搭載されており、キャリッジの移動に伴ってインクジェットヘッドが移動しながら印刷を行うプリンターをいう。以降、インクジェットプリンター1を単にプリンター1ともいう。
【0093】
図1に示すように、プリンター1は、インクジェットヘッド3、キャリッジ4、主走査機構5、プラテンローラー6、光源11、プリンター1全体の動作を制御する、図示しない制御部などを有している。キャリッジ4は、インクジェットヘッド3および光源11を搭載すると共に、インクジェットヘッド3に供給されるインクが収容された、容器としてのインクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7eを着脱可能である。
【0094】
主走査機構5は、キャリッジ4に接続されたタイミングベルト8、タイミングベルト8を駆動するモーター9、ガイド軸10を有している。ガイド軸10は、キャリッジ4の支持部材として、キャリッジ4の走査方向である主走査方向に架設されている。キャリッジ4は、タイミングベルト8を介してモーター9によって駆動され、ガイド軸10に沿って往復移動が可能である。これにより、主走査機構5は、キャリッジ4を主走査方向に往復移動させる。
【0095】
プラテンローラー6は、インクが付着される記録媒体2を、主走査方向と直交する副走査方向に搬送する。そのため、記録媒体2は、記録媒体2の長さ方向と略一致する副走査方向に搬送される。キャリッジ4は、記録媒体2の幅方向と略一致する主走査方向に往復移動が可能である。そのため、インクジェットヘッド3および光源11は、記録媒体2に対して、主走査方向および副走査方向へ相対的に走査が可能となっている。
【0096】
インクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7eは、独立した5つのインクカートリッジである。インクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7eには、色材を含むインクであるカラーインクと、色材を含まないインクであるクリアインクとが収容される。
【0097】
例えば、インクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7eに、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローなどの色を呈するカラーインクと、クリアインクと、を個別に収容してインクセットとして用いることが可能である。
図1では、インクカートリッジの数を5個としているが、これに限定されるものではない。また、クリアインクのインクカートリッジは省略されてもよく、ホワイトインクなどの別の色のインクのインクカートリッジを備えていてもよい。
【0098】
インクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7eの底部には、収容されたインクをインクジェットヘッド3へ供給するための、図示しない供給口が設けられている。
【0099】
インクカートリッジ7aからインクカートリッジ7eの部材には、インク成分の蒸発や変質、インクの成分による該部材の変質などが起こり難い形成材料を用いる。本実施形態では、インクの容器としてインクカートリッジを例示したが、これに限定されず、インクの容器としては、インクカートリッジの他に、インクパック、インクボトルなどを用いてもよい。
【0100】
キャリッジ4の、記録媒体2と対向する側には、インクジェットヘッド3と光源11とが配置されている。インクジェットヘッド3は、記録媒体2と対向する面に、図示しないノズル面を有している。ノズル面には、フッ素化合物およびシリコーン化合物を含む高分子膜、またはニッケルおよびフッ素化合物を含む共析メッキ膜などを、撥液膜として形成してもよい。また、図示を省略するが、ノズル面には、複数の吐出ノズルから成るノズル列が、各インクに対応して個別に配置されている。各インクは、それぞれインクカートリッジ7a,7b,7c,7d,7eからインクジェットヘッド3に供給され、インクジェットヘッド3内の図示しないアクチュエーターによって、吐出ノズルから液滴として吐出される。吐出されたインクの液滴は、記録媒体2に着弾して付着される。
【0101】
インクジェットヘッド3では、駆動手段であるアクチュエーターとして圧電素子を用いているが、これに限定されない。駆動手段には、例えば、アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、加熱によって生じる気泡によってインクを液滴として吐出させる電気熱変換素子を用いてもよい。
【0102】
光源11は、インクジェットヘッド3と主走査方向に並んで配置される。光源11は、放射線照射装置であり、例えば、UV-LEDなどの図示しない発光素子を備えている。光源11から照射される放射線は、紫外線に限定されず、赤外線、電子線、可視光線、エックス線などであってもよい。ここで、光源11には、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザー)などの発光素子に代えてランプなどを用いてもよいが、小型化やコスト低減などの観点から発光素子を用いることが好ましい。
【0103】
記録媒体2に付着されたインクの液滴に対して、光源11から放射線が照射されることにより、インク中の重合性化合物の光重合反応が進行し、インクの液滴が硬化してインクの塗膜が形成される。これにより、記録媒体2の着色、記録媒体2上への画像、色彩、文字、模様などの形成やクリアインクの塗膜の形成が成される。
【0104】
光源11は、インクジェットヘッド3に対して、主走査方向に並んで配置されることに限定されない、光源11は、インクジェットヘッド3に対して、記録媒体2が搬送される方向と逆の副走査方向にオフセットされていてもよい。なお、光源11は、キャリッジ4に配置されることに限定されず、キャリッジ4と別体であってもよい。
【0105】
本実施形態では、インクジェット装置としてオンキャリッジタイプのプリンター1を例示したが、これに限定されない。インクジェット装置は、例えば、インクの容器がキャリッジに搭載されない、ラージフォーマットプリンターのようなオフキャリッジタイプであってもよい。また、本実施形態で用いるインクジェット装置は、シリアルプリンターに限定されるものではなく、インクジェットヘッドが記録媒体2の幅と同等以上に広く形成され、インクジェットヘッドが移動せずに印刷を行うラインヘッドプリンターであってもよい。
【0106】
5.記録媒体
記録媒体2は、インクと記録媒体とから作製される印刷物の用途などに応じて、適宜選択される。記録媒体2の形成材料としては、特に限定されないが、例えばポリ塩化ビニル(塩ビ)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのプラスチック類、およびこれらの表面が加工処理されているもの、ガラス、紙、金属、木材などが挙げられる。
【0107】
記録媒体2の形態としては、例えば、ロール状または単票状のシート、ボード、および布などが挙げられる。
【0108】
6.インクジェット方法
本実施形態に係るインクジェット法は、上述したインクをプリンター1のインクジェットヘッド3から吐出して、記録媒体2に付着させる塗布工程と、記録媒体2に付着されたインクに対して、放射線を照射する硬化工程と、を含む。
【0109】
6.1.塗布工程
塗布工程では、カラーインクをプリンター1のインクジェットヘッド3から記録媒体2へ吐出して付着させる。詳しくは、圧電素子を駆動させて、インクジェットヘッド3の圧力発生室内に充填されたインクを吐出ノズルから吐出させる。このような吐出方法をインクジェット法ともいう。このとき、記録媒体2の所定位置に対して、キャリッジ4の主走査方向への往復移動を複数回繰り返すマルチパスとしてもよい。すなわち、記録媒体2の副走査方向への搬送を一定期間停止してマルチパスでカラーインクの吐出を行い、その後に記録媒体2を短距離搬送してから再びマルチパスを実施する。
【0110】
記録媒体2に対して、インクジェットヘッド3を相対的に移動させながらカラーインクを付着させることによって、記録媒体2上に、所望の画像などのベースとなる、カラーインクの液層が形成される。
【0111】
6.2.硬化工程
硬化工程では、記録媒体2に形成されたインクの液層から塗膜を形成する。詳しくは、記録媒体2の所定位置に対して、光源11から放射線を記録媒体に向けて照射する。記録媒体2に対する上記放射線の照射領域は、インクが付着された領域が含まれていればよい。放射線の照射によって、記録媒体2上のインクの液層においてインク中の重合性化合物の光重合反応が進行し、インクが硬化して塗膜と成る。
【0112】
なお、クリアインクを塗膜の形成に用いる場合には、カラーインクの塗布工程および硬化工程の前または後に、クリアインクの塗布工程および硬化工程を行ってもよい。
【0113】
本実施形態によれば、以下の効果を得ることができる。
【0114】
インクにおいて、粘度を低減すると共に塗膜の密着性を向上させることができる。すなわち、低粘度かつ塗膜の密着性に優れたインクを提供することができる。
【0115】
インクジェット方法において、インクの粘度が低減されるため、インクジェットヘッド3からのインクの吐出性を向上させることができる。また、記録媒体2との密着性が向上する塗膜を形成することができる。
【0116】
7.実施例および比較例
以下、実施例および比較例を示して、本発明の効果をより具体的に説明する。実施例1から実施例34、および比較例1から比較例4の各インクに関する、組成および評価結果を表1、表2、表3に示す。表1から表3の組成の欄では、数値の単位は質量%であり、数値の記載がない、-表記の欄は含有しないことを意味する。表1から表3では一部の成分の名称に略称を用いている。各略称については後述する。以降、実施例1から実施例34のインクを総称して実施例のインクともいい、比較例1から比較例4のインクを総称して比較例のインクともいい、実施例および比較例のインクを総称してインクともいう。なお、本発明は以下の実施例によって何ら限定されない。
【0117】
7.1.インクの調製
表1から表3の組成にしたがって、各インクを調製した。具体的には、色材である顔料、分散剤、および重合性化合物の一部を秤量して、ビーズミル分散用のタンクに入れた。次いで、該タンクに直径1mmのセラミック製ビーズを入れてビーズミルにて分散させて、顔料が重合性化合物中に分散された各顔料分散液を作製した。
【0118】
上記顔料分散液とは別に、ステンレススチール製の混合物用タンクに、上記顔料分散液に配合した成分以外の、残りの重合性化合物、光重合開始剤、および蛍光増白剤などの添加剤を計り入れた。次いで、メカニカルスターラーを用いて撹拌し、光重合開始剤などの固形分を重合性化合物に完全に溶解させた。次いで、上記顔料分散液を計り入れて、約20℃の環境下でさらに1時間撹拌した。その後、ポアサイズが5μmのメンブレンフィルターにてろ過を実施して、実施例および比較例のインクを各々調製した。
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
表1から表3において用いた略称および商品名の詳細は、以下の通りである。
【0123】
ビニルメチルオキサゾリジノン
・VMOX:ビニルメチルオキサゾリジノン。BASF社。
ビニルエーテル基を複数有するモノマー
・DVE-2:ジエチレングリコールジビニルエーテル。BASF社。
・DVE-3:トリエチレングリコールジビニルエーテル。BASF社。
・CHDM-di:1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル。商品名SR420、サートマー社。
式(1)のモノマー
・VEEA:アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル。商品名、日本触媒社。
芳香族基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー
・PHEA:フェノキシエチルアクリレート。商品名ビスコート#192、大阪有機化学工業社。
脂環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー
・IBXA:イソボルニルアクリレート。大阪有機化学工業社。
・TMCHA:3,3,5-トリメチルシクロヘキシルアクリレート。大阪有機化学工業社。
環状エーテル構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー
・CTFA:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート。商品名ビスコート#200、大阪有機化学工業社。
・MEDOL-10:(2-メチル-2-エチル-1,3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート。商品名、大阪有機化学工業社。
架橋縮合環構造を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー
・FA-512AS:ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート。日立化成社。
その他の重合性化合物 単官能モノマー
・nVC:N-ビニルカプロラクタム。ISPジャパン社。
・ACMO:アクリロイルモルフォリン。KJケミカルズ社。
その他の重合性化合物 多官能モノマー
・TPGDA:トリプロピレングリコールジアクリレート。商品名ビスコート#310HP、大阪有機化学工業社。
・NPG(2PO)DA:プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート。商品名SR9003、サートマー社。
その他の重合性化合物 オリゴマー
・EC6101:脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー。商品名ETERCURE(登録商標)6101、長興材料工業社。
・CN9893:脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー。商品名、サートマー社。
【0124】
光重合開始剤
・Omnirad 819:商品名。ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド。IGM RESINS B.V.社。
・Speedcure TPO:商品名。2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド。Lambson Group Ltd.社。
・Speedcure(登録商標) DETX:商品名。2,4-ジエチルチオキサントン。Lambson Group Ltd.社。
【0125】
蛍光増白剤
・TELALUX(登録商標) OB:(2,5-ビス(5-tert-ブチル-2-ベンゾオキサゾリル)チオフェン)。商品名、クラリアントジャパン社。
・TELALUX(登録商標) KCB(1,4-ビス(2-ベンゾオキサゾリル)ナフタレン)。商品名、クラリアントジャパン社。
【0126】
重合禁止剤
・LA-7RD:4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシル)。商品名アデカスタブ(登録商標)LA-7RD、ADEKA社。
・MEHQ:4-メトキシフェノール。関東化学社。
【0127】
界面活性剤
・BYK-UV3500:シリコーン系界面活性剤。商品名、BYK Additives&Instruments社。
【0128】
顔料
・PB-15:3:C.I.ピグメントブルー15:3。クラリアントジャパン社。
【0129】
分散剤
・Solsperse(登録商標)36000:商品名、Lubrizol社。
【0130】
ここで、実施例1のインクは、ビニルエーテル基を複数有するモノマーとしてDVE-3を用い、式(1)のモノマーとしてVEEAを用い、単官能(メタ)アクリレートとして芳香族基を有するPHEAを用いた水準である。
【0131】
実施例2のインクは、実施例1のインクに対して、VMOXを増量し、VEEAおよびPHEAを減量した水準である。
【0132】
実施例3のインクは、実施例2のインクに対して、VMOXを増量し、PHEAを減量した水準である。
【0133】
実施例4のインクは、実施例1のインクに対して、VMOXを減量し、PHEAを増量した水準である。
【0134】
実施例5のインクは、実施例4のインクに対して、VMOXを減量し、PHEAを増量した水準である。
【0135】
実施例6のインクは、実施例1のインクに対して、DVE-3をDVE-2に代えた水準である。
【0136】
実施例7のインクは、実施例1のインクに対して、DVE-3をCHDM-diに代えた水準である。
【0137】
実施例8のインクは、実施例1のインクに対して、ビニルエーテル基を複数有するモノマーとしてDVE-2、DVE-3、およびCHDM-diを併用した水準である。
【0138】
実施例9のインクは、実施例1のインクに対して、DVE-3を増量し、VEEAを減量した水準である。
【0139】
実施例10のインクは、実施例9のインクに対して、DVE-3を増量し、VEEAを減量した水準である。
【0140】
実施例11のインクは、実施例1のインクに対して、DVE-3を減量し、その減量分を、その他の重合性化合物の多官能モノマーであるNPG(2PO)DAで代替した水準である。
【0141】
実施例12のインクは、実施例11のインクに対して、DVE-3を減量し、NPG(2PO)DAを増量した水準である。
【0142】
実施例13のインクは、実施例11のインクに対して、DVE-3およびPHEAを増量し、VEEAを減量した水準である。
【0143】
実施例14のインクは、実施例13のインクに対して、VEEAを配合せず、VMOXおよびDVE-3を増量した水準である。
【0144】
実施例15のインクは、実施例1のインクに対して、VMOX、DVE-3、およびPHEAを減量し、VEEAを増量した水準である。
【0145】
実施例16のインクは、実施例15のインクに対して、VMOXを減量し、VEEAを増量した水準である。
【0146】
実施例17のインクは、実施例15のインクに対して、VMOXおよびDVE-3を増量し、VEEAおよびPHEAを減量した水準である。
【0147】
実施例18のインクは、実施例15のインクに対して、VMOXおよびVEEAを減量し、DVE-3およびPHEAを増量した水準である。
【0148】
実施例19のインクは、実施例1のインクに対して、単官能(メタ)アクリレートとして脂環構造を有するIBXAを用いた水準である。
【0149】
実施例20のインクは、実施例19のインクに対して、VMOXを増量し、IBXAを減量した水準である。
【0150】
実施例21のインクは、実施例19のインクに対して、VMOXおよびVEEAを減量し、IBXAを増量した水準である。
【0151】
実施例22のインクは、実施例1のインクに対して、単官能(メタ)アクリレートとして脂環構造を有するTMCHAを用いた水準である。
【0152】
実施例23のインクは、実施例1のインクに対して、単官能(メタ)アクリレートとして環状エーテル構造を有するCTFAを用いた水準である。
【0153】
実施例24のインクは、実施例23のインクに対して、VMOXを増量し、CTFAを減量した水準である。
【0154】
実施例25のインクは、実施例23のインクに対して、VMOXおよびVEEAを減量し、CTFAを減量した水準である。
【0155】
実施例26のインクは、実施例1のインクに対して、単官能(メタ)アクリレートとして環状エーテル構造を有するMEDOL-10を用いた水準である。
【0156】
実施例27のインクは、実施例1のインクに対して、単官能(メタ)アクリレートとして架橋縮合環構造を有するFA-512ASを用いた水準である。
【0157】
実施例28のインクは、実施例27のインクに対して、FA-512ASを減量して、PHEA、IBXA、およびCTFAを併用した水準である。
【0158】
実施例29のインクは、実施例11のインクに対して、DVE-3を増量して、VEEAおよびNPG(2PO)DAを減量した水準である。
【0159】
実施例30のインクは、実施例29のインクに対して、NPG(2PO)DAをTPGDAで代替した水準である。
【0160】
実施例31のインクは、実施例1のインクに対して、VEEAを減量し、その減量分を、その他の重合性化合物のオリゴマーであるEC6101で代替した水準である。
【0161】
実施例32のインクは、実施例1のインクに対して、VEEAを減量し、その減量分を、その他の重合性化合物のオリゴマーであるCN9893で代替した水準である。
【0162】
実施例33のインクは、実施例1のインクに対して、VEEAを減量し、その減量分を、NPG(2PO)DAおよびEC6101で代替した水準である。
【0163】
実施例34のインクは、実施例1のインクに対して、蛍光増白剤をTELALUX OBからTELALUX KCBに代えた水準である。
【0164】
比較例1のインクは、実施例1のインクに対して、VMOXを配合せず、PHEAを増量した水準である。
【0165】
比較例2のインクは、実施例1のインクに対して、DVE-3を配合せず、その減量分をNPG(2PO)DAで代替した水準である。
【0166】
比較例3のインクは、比較例1のインクに対して、PHEAを減量し、その減量分を、その他の重合性化合物の単官能モノマーであるnVCで代替した水準である。
【0167】
比較例4のインクは、比較例1のインクに対して、PHEAを減量し、その減量分を、その他の重合性化合物の単官能モノマーであるACMOで代替した水準である。
【0168】
7.2.評価
実施例および比較例の各インクについて、以下に述べる評価を行い、その評価結果を表1から表3の評価結果の欄に記載した。
【0169】
7.2.1.インクの粘度
上述したインクの粘度の測定方法により、インク調製後1時間以内にインクの25℃の粘度を測定して、次の評価基準にしたがって評価した。なお、当評価のインクの粘度を、後段の保存安定性評価におけるインクの初期粘度とした。
評価基準
AA:粘度が15mPa・s以下である。
A :粘度が15mPa・s超20Pa・s以下である。
B :粘度が20mPa・s超25mPa・s以下である。
C :粘度が25mPa・s超30mPa・s以下である。
D :粘度が30mPa・s超である。
【0170】
7.2.2.塗膜の臭気
バーコーターを用いて、インクを記録媒体上に厚さが10μmとなるように塗布した。記録媒体には、塩ビフィルムとして、MACtac社の商品名 JT5829Rを用いた。次いで、UV-LEDを用い、400mJ/cm2のエネルギーで放射線を照射してインクの塗膜を形成した。次いで、塗膜から発生する臭気について約25℃の環境下で官能評価を行い、次の評価基準にしたがって評価した。
評価基準
A:無臭である、または辛うじて感知できる臭いである。
B:何の臭いか分かる弱い臭いである。
C:容易に感知できる臭いである。
D:強い臭いである、または強烈な臭いである。
【0171】
7.2.3.インクの硬化性
まず、インクジェット方法にて記録媒体にインクを印刷した。具体的には、記録媒体として、MACtac社のポリ塩化ビニルフィルム JT5829Rを用いた。インクジェット装置として、セイコーエプソン社のインクジェットプリンター PX-G930を用いた。インクの印刷パターンは、横600dpi(dots per inch)、縦600dpiの記録解像度でベタ画像とした。該プリンターには、プラスチックフィルムを記録媒体とするための改造、および放射線硬化型のインクを吐出するための改造が施されている。
【0172】
次に、記録媒体上に塗布されたインクについて硬化性を評価した。具体的には、光源装置として395nmのピーク波長を有するUV-LEDにて、照射するエネルギーを変えて記録媒体上のインクに照射した。そして、インクがタックフリーになって塗膜が形成された照射エネルギーを調査した。インクがタックフリーとなるのに要した照射エネルギーについて、以下の評価基準に従って評価した。
評価基準
A:照射エネルギーが200mJ/cm2未満である。
B:照射エネルギーが200mJ/cm2以上350mJ/cm2未満である。
C:照射エネルギーが350mJ/cm2以上500mJ/cm2未満である。
D:照射エネルギーが500mJ/cm2以上である。
【0173】
7.2.4.塗膜の密着性
上記インクの硬化性評価と同様にして、ポリ塩化ビニルフィルム JT5829R上にインクを塗布した。次いで、上記UV-LEDを用いて400mJ/cm2の照射エネルギーにて塗膜を形成した。得られた塗膜に対して、JIS K5600-5-6に準じてクロスカット試験を実施して、塗膜と記録媒体との密着性を評価した。
【0174】
詳しくは、切込み工具としてカッターを適用し、塗膜に対してカッターの刃を垂直に当てて塗膜に切込みを複数入れた。切込みは、隣り合う切込み間の距離を1mmとして、10×10の升目状の格子とした。該格子に対して、長さを75mmに切断した、幅25mmの透明粘着テープを貼り付けて、塗膜との隙間が無くなるように十分に指で擦って押圧した。次いで、上記テープを貼り付けてから5分以内に、上記テープと塗膜面との成す角度が約60°となるように上記テープ端部を持ち上げて、0.5秒から1.0秒のうちに瞬時に上記テープを塗膜から引き剥がした。その後、塗膜の剥離状況を目視にて観察して、以下の評価基準に従って評価した。
評価基準
AA:格子には塗膜の剥離が認められない。
A :格子の10%未満に塗膜の剥離が認められる。
B :格子の10%以上35%未満に塗膜の剥離が認められる。
C :格子の35%以上50%未満に塗膜の剥離が認められる。
D :格子の50%以上に塗膜の剥離が認められる。
【0175】
7.2.5.インクの保存安定性
インクの保存安定性の指標として、60℃にて14日間放置した後の、インクの粘度変化を調査した。具体的には、インクを30mlの褐色ガラス管瓶に入れて密封して、60℃に温度調節した恒温槽に14日間投入した。次いで、恒温槽から取り出してから25℃まで放冷した後、上述した方法にて粘度を測定して放置後の粘度とした。上記インクの初期粘度に対する放置後の粘度の変化率を計算して、以下の評価基準に従って評価した。
評価基準
A:粘度の変化率が+5%未満である。
B:粘度の変化率が+5%以上+10%未満である。
C:粘度の変化率が+10%以上である。
【0176】
7.2.6.評価結果のまとめ
表1、表2、および表3に示したように、実施例のインクの粘度は、実施例11、12、14、33以外で良に相当するB評価以上となった。特に、実施例3、17、20、24は、秀に相当するAA評価となった。実施例11、12、14、33は、可に相当するC評価となった。また、実施例の塗膜の密着性は、実施例4、5以外で優に相当するA評価以上となった。特に、実施例31、33は、秀に相当するAA評価となった。実施例4は良に相当するB評価となり、実施例5は可に相当するC評価となった。これにより、実施例のインクは、低粘度かつ塗膜の密着性に優れるものであることが示された。
【0177】
実施例のインクの臭気は、実施例12、16以外で良に相当するB評価以上となり、実施例12、16では可に相当するC評価となった。実施例のインクの硬化性は、実施例10以外で良に相当するB評価以上となり、実施例10では可に相当するC評価となった。実施例のインクの保存安定性は、実施例2、3以外で良に相当するA評価となり、実施例2で可に相当するB評価となり、実施例3で不可に相当するC評価となった。以上から、実施例のインクは、臭気、硬化性、および保存安定性を向上させ易いものであることが示された。
【0178】
一方、比較例のインクでは、粘度または密着性のいずれかが不可に相当するD評価となり、粘度低減と塗膜の密着性とが相容れないことが分かった。
【符号の説明】
【0179】
1…インクジェットプリンター、2…記録媒体、3…インクジェットヘッド。