(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20240925BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20240925BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20240925BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20240925BHJP
C08K 5/548 20060101ALI20240925BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L9/00
C08K3/36
C08K3/04
C08K5/548
B60C1/00 Z
B60C1/00 A
(21)【出願番号】P 2020119398
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 顕哉
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123260(JP,A)
【文献】特開2018-065954(JP,A)
【文献】特開2006-083393(JP,A)
【文献】特開2017-101142(JP,A)
【文献】特開2020-100847(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143380(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08K
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカ
及びカーボンブラックを含む充填材と、シランカップリング剤とを含み、
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴム及び前記ブタジエンゴムの合計含有量は、10質量%以上であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が90質量部以上
、前記カーボンブラックの含有量が1質量部以上50質量部以下であり、
前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含
み、
前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量、液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量、オイルの含有量が以下の(式1)、(式2)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
(式1)
シリカの含有量>液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量>オイルの含有量
(式2)
液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量/オイルの含有量≧2.5
【請求項2】
スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカ及びカーボンブラックを含む充填材と、シランカップリング剤とを含み、
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴム及び前記ブタジエンゴムの合計含有量は、10質量%以上であり、
前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が90質量部以上、前記カーボンブラックの含有量が1質量部以上50質量部以下であり、
前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含み、
前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量、液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量が以下の(式3)を満たすタイヤ用ゴム組成物。
(式3)
1.0<シリカの含有量/液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量≦3.5
【請求項3】
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が50~90質量%、前記ブタジエンゴムの含有量が10~40質量%である請求項1
又は2記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴム及び前記ブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上である請求項1
~3のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記充填材100質量%中のシリカ含有率が50質量%以上である請求項1~
4のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記シリカが窒素吸着比表面積160m
2/g以上のシリカを含む請求項1~
5のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3~30質量部である請求項1~
6のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記ゴム成分100質量部に対する水酸化アルミニウムの含有量が15~50質量部である請求項1~
7のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量、液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量、オイルの含有量が以下の(式1)、(式2)を満たす請求項
2記載のタイヤ用ゴム組成物。
(式1)
シリカの含有量>液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量>オイルの含有量
(式2)
液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量/オイルの含有量>1.2
【請求項10】
前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量、液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量が以下の(式3)を満たす請求項
1記載のタイヤ用ゴム組成物。
(式3)
シリカの含有量/液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量>1.0
【請求項11】
前記ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量、液状ポリマーの含有量が、以下の(式4)を満たす請求項1~
10のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
(式4)
液状ポリマーの含有量/樹脂成分の含有量>1.0
【請求項12】
前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量-液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量が20質量部以上である請求項1~
11のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項13】
前記ゴム成分100質量部に対する液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量-オイルの含有量が5質量部以上である請求項1~
12のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項14】
前記ゴム成分100質量部に対する可塑剤の含有量が30質量部以上である請求項1~
13のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項15】
更に、チウラム系加硫促進剤を含む請求項1~
14のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項16】
前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量が110質量部以上である請求項1~15のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項17】
前記ゴム成分100質量部に対する充填材の含有量が120質量部以上である請求項1~16のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項18】
前記ゴム成分100質量部に対する水酸化アルミニウムの含有量が5質量部以上である請求項1~17のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項19】
前記ゴム成分100質量部に対するオイルの含有量が50質量部以下である請求項1~18のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項20】
前記ゴム成分100質量部に対する液状ポリマーと樹脂成分との合計含有量が10質量部以上100質量部以下である請求項1~19のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項21】
前記シリカ100質量部に対する前記有機珪素化合物の含有量が0.1質量部以上50質量部以下である請求項1~20のいずれかに記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項22】
請求項1~
21のいず
れかに記載のゴム組成物をトレッドに用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりウェット路面での高速旋回性能を向上させるために、シリカの高充填配合を採用する技術、樹脂を配合する技術などが知られているが、シリカを高充填とすると分散性が悪化傾向にあり、高速旋回性能に改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、ウェット路面における高速旋回性能を向上するタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカを含む充填材と、シランカップリング剤とを含み、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むタイヤ用ゴム組成物に関する。
【0005】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴムの含有量が50~90質量%、前記ブタジエンゴムの含有量が10~40質量%であることが好ましい。
【0006】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量%中の前記スチレンブタジエンゴム及び前記ブタジエンゴムの合計含有量が80質量%以上であることが好ましい。
【0007】
前記ゴム組成物は、前記充填材100質量%中のシリカ含有率が50質量%以上であることが好ましい。
【0008】
前記ゴム組成物は、前記シリカが窒素吸着比表面積160m2/g以上のシリカを含むことが好ましい。
【0009】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量が3~30質量部であることが好ましい。
【0010】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対する水酸化アルミニウムの含有量が15~50質量部であることが好ましい。
【0011】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量、液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量、オイルの含有量が以下の(式1)、(式2)を満たすことが好ましい。
(式1)
シリカの含有量>液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量>オイルの含有量
(式2)
液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量/オイルの含有量>1.2
【0012】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量、液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量が以下の(式3)を満たすことが好ましい。
(式3)
シリカの含有量/液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量>1.0
【0013】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量、液状ポリマーの含有量が、以下の(式4)を満たすことが好ましい。
(式4)
液状ポリマーの含有量/樹脂成分の含有量>1.0
【0014】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量-液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量が20質量部以上であることが好ましい。
【0015】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対する液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量-オイルの含有量が5質量部以上であることが好ましい。
【0016】
前記ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対する可塑剤の含有量が30質量部以上であることが好ましい。
【0017】
前記ゴム組成物は、更に、チウラム系加硫促進剤を含むことが好ましい。
【0018】
本発明はまた、前記ゴム組成物をトレッドに用いたタイヤに関する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカを含む充填材と、シランカップリング剤とを含み、前記ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量が90質量部以上であり、前記シランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むタイヤ用ゴム組成物であるので、ウェット路面における高速旋回性能を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、所定量のシリカを含む充填材と、シランカップリング剤とを含み、該シランカップリング剤がアルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むタイヤ用ゴム組成物である。前記ゴム組成物は、ウェット路面における高速旋回性能に優れている。
【0021】
前述の作用効果が得られる理由は必ずしも明らかではないが、以下のメカニズムにより奏するものと推察される。
シランカップリング剤としてアルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を用いると、化合物中の長鎖により、大量のシリカがスチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムのブレンドゴム中に均一に分散する。特に、オイルが少なく、レジン(固体/液体)が多い場合は、混合時のせん断変形が伝わりやすくなり、より効果的になるため、レジン及びシリカの分散が顕著に高められる。その結果、ゴムの追従性が向上すると共に、ポリマー及びシリカ間で形成された長鎖のシランカップリング剤による結合が大変形時においても切断されることなく、結合による力が発揮されるため、反力も向上し、ウェット路面における高速旋回性能が向上する。従って、以上の作用機能の発揮により、前記ゴム組成物により、ウェット路面における高速旋回性能が顕著に改善されると推察される。
【0022】
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、ゴム成分として、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)を含有する。
【0023】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0024】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、1H-NMR測定によって測定できる。
【0025】
SBRのビニル結合量は、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは7質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは13質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0026】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填材と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性BR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0027】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0028】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0029】
前記ゴム組成物がSBRを含む場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。上限は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは85質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0030】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BRは、シス含量が90質量%以上のハイシスBRを含むことが好ましい。該シス含量は、95質量%以上がより好ましい。なお、シス含量は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0031】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。
変性BRとしては、変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。
【0032】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0033】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。上限は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは40質量%以下、特に好ましくは30質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0034】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量%中のSBR及びBRの合計含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、最も好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0035】
SBR、BR以外に使用可能なゴム成分としては、例えば、他のジエン系ゴムを使用できる。他のジエン系ゴムとしては、イソプレン系ゴム、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、イソプレン系ゴムが好ましい。
【0036】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
前記ゴム組成物がイソプレン系ゴムを含む場合、ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0038】
(シリカ)
前記ゴム組成物には、充填材としてシリカが配合される。使用可能なシリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
シリカの窒素吸着比表面積(N2SA)は、好ましくは50m2/g以上、より好ましくは150m2/g以上、更に好ましくは160m2/g以上、特に好ましくは180m2/g以上であり、210m2/g以上でもよい。シリカのN2SAの上限は特に限定されないが、好ましくは600m2/g以下、より好ましくは350m2/g以下、更に好ましくは260m2/g以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
なお、シリカのN2SAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0040】
前記ゴム組成物において、シリカの含有量(シリカの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以上、好ましくは100質量部以上、より好ましくは110質量部以上、更に好ましくは120質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは170質量部以下、特に好ましくは150質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。なお、上記微粒子シリカの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0041】
(シランカップリング剤)
前記ゴム組成物に使用されるシランカップリング剤は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含むものである。このような有機珪素化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。前記有機珪素化合物のなかでも、下記平均組成式(I)で表される有機珪素化合物が好ましい。
【化1】
(式中、xは、硫黄原子の平均個数を表し、3.5以上である。mは、6以上の整数を表す。R
1~R
6は、同一若しくは異なって炭素数1~6のアルキル基又はアルコキシ基を表し、R
1~R
3の少なくとも1つ及びR
4~R
6の少なくとも1つが前記アルコキシ基である。なお、R
1~R
6は、前記アルキル基又は前記アルコキシ基が結合した環構造を形成したものでもよい。)
【0042】
xは、前記有機珪素化合物の硫黄原子の平均個数を表す。xは、3.5以上12以下が好ましい。ここで、硫黄原子の平均個数、珪素原子の個数は、蛍光X線により組成物中の硫黄量、珪素量を測定しそれぞれの分子量より換算した値である。
【0043】
mは、6以上の整数を表し、好ましくは6以上14以下である。
【0044】
アルキル基(R1~R6)の炭素数に関し、好ましくは炭素数1以上5以下である。アルキル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
【0045】
アルコキシ基(R1~R6)は、好ましくは炭素数1以上5以下である。アルコキシ基中の炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基等が挙げられる。
【0046】
R1~R3の少なくとも1つ及びR4~R6の少なくとも1つが炭素数1~6のアルコキシ基であり、好ましくは、R1~R3、R4~R6のそれぞれ2つ以上が炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0047】
なお、R1~R6は、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基が結合した環構造を形成したものでもよい。例えば、(i)R1がエトキシ基、R2がメチル基が結合した環構造、(ii)R1がエチル基、R2がメチル基が結合した環構造、を形成する場合、それぞれ、R1及びR2で「-O-C2H4-CH2-」、「-C2H4-CH2-」という2価の基が形成され、Siに結合した構造が挙げられる。
【0048】
前記有機珪素化合物は、例えば、特開2018-65954号公報に記載の製造方法で調製できる。具体的には、特開2018-65954号公報に記載の式(I-1)のハロゲン基含有有機珪素化合物、及びNa2Sで表される無水硫化ソーダ、更に必要により硫黄を反応させることにより、前記有機珪素化合物を製造することが可能である。上記反応を行う際、スルフィド鎖の調整のため、硫黄の添加は任意であり、所望の平均組成式(I)の化合物となるように、平均組成式(I-1)の化合物と無水硫化ソーダと必要により硫黄との配合量から決定すればよい。例えば、平均組成式(I)の化合物のxを3.5にしたい場合、無水硫化ソーダ1.0molと、硫黄2.5molと、式(I-1)の化合物2.0molとを反応させればよい。
【0049】
そして、シランカップリング剤としてアルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物、すなわち、長鎖シランカップリング剤を用いると、化合物中のアルコキシ基がシリカ表面の水酸基と反応することで、シリカ表面を疎水化し、かつ該化合物の炭素鎖が長いことに起因して従来のシランカップリング剤よりも疎水化の影響が大きくなるため、シリカの分散性が顕著に向上し、大量のシリカがスチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムのブレンドゴム中に均一に分散させることが可能となる。また、ポリマー及びシリカ間で形成された長鎖のシランカップリング剤による結合が大変形時においても切断されることなく、結合による力が発揮されるため、反力も向上する。従って、このような長鎖シランカップリング剤を用いることで、ウェット路面における高速旋回性能が顕著に改善される。
【0050】
前記ゴム組成物において、前記有機珪素化合物の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。なお、前記平均組成式(I)で表される有機珪素化合物の含有量も同様の範囲が望ましい。
【0051】
前記ゴム組成物は、アルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物以外の他のシランカップリング剤を含んでもよい。
他のシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量(前記有機珪素化合物、他のシランカップリング剤の総量)は、シリカ100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上、特に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下、特に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0053】
(他の充填材)
シリカ以外の他の充填材としては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどの無機フィラー等が挙げられる。なかでも、カーボンブラック、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0054】
前記ゴム組成物において、充填材の含有量(充填材の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは90質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは110質量部以上、特に好ましくは120質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは250質量部以下、より好ましくは200質量部以下、更に好ましくは170質量部以下、特に好ましくは150質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0055】
前記ゴム組成物において、充填材100質量%中のシリカ含有率は、ウェット路面における高速旋回性能の観点から、50質量%以上が好ましく、80質量%以上が好ましく、85質量%以上が更に好ましい。上限は特に限定されないが、98質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましい。
【0056】
前記ゴム組成物に使用可能なカーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱ケミカル(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、50m2/g以上が好ましく、70m2/g以上がより好ましく、90m2/g以上が更に好ましい。また、上記N2SAは、200m2/g以下が好ましく、150m2/g以下がより好ましく、130m2/g以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0058】
前記ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0059】
水酸化アルミニウムとしては特に限定されず、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0060】
水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は、好ましくは0.6μm以上、より好ましくは0.7μm以上である。また、水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、更に好ましくは1.3μm以下、特に好ましくは1.2μm以下である。上記範囲内であると、効果がより良好に得られる傾向がある。
なお、本明細書において、水酸化アルミニウムの平均一次粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
【0061】
前記ゴム組成物において、水酸化アルミニウムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0062】
(可塑剤)
前記ゴム組成物には、可塑剤を配合してもよい。可塑剤とは、ゴム成分に可塑性を付与する材料であり、例えば、液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)、樹脂成分(常温(25℃)で液体状態の樹脂、常温(25℃)で固体状態の樹脂)等が挙げられる。
【0063】
前記ゴム組成物において、可塑剤の含有量(可塑剤の総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは35質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは200質量部以下、より好ましくは150質量部以下、更に好ましくは120質量部以下、特に好ましくは100質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0064】
前記ゴム組成物に使用可能な液体可塑剤(常温(25℃)で液体状態の可塑剤)としては特に限定されず、オイル、液状ポリマーなどが挙げられる。液状ポリマーとしては、例えば、液状ゴム、液状ファルネセン系ポリマーが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0065】
ゴム組成物において、液体可塑剤の含有量(オイル、液状ゴム、液状ファルネセン系ポリマーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上、特に好ましくは20質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは50質量部以下、特に好ましくは35質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0066】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。
【0067】
プロセスオイルは、その分子構造的に芳香族系炭化水素(CA)、パラフィン系炭化水素(CP)、ナフテン系炭化水素(CN)を含有し、その含有比率CA(質量%)、CP(質量%)、CN(質量%)に応じてアロマオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイルに大別されるが、上記ゴム組成物は、芳香族系炭化水素の含有率が20質量%以上であるオイルを含有することが望ましい。
【0068】
上記オイルの芳香族系炭化水素の含有率は、好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。また該含有率は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
本明細書において、オイルの芳香族系炭化水素の含有率は環分析法(n-d-M法)(ASTM D3238)で測定することができる。
【0069】
ゴム組成物において、オイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、更に好ましくは7質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。なお、オイルの含有量には、油展オイルに含まれるオイルも含まれる。
【0070】
液状ゴムとしては、例えば、アセトンで抽出可能な液状ジエン系ゴムが挙げられる。具体的には、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)等の液状ジエン系ゴムが挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0071】
ゴム組成物において、液状ゴムの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは35質量部以下、特に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。なお、液状ジエン系ゴムの含有量も同様の範囲が望ましい。
【0072】
液状ファルネセン系ポリマーとは、ファルネセンを重合することで得られる重合体であり、ファルネセンに基づく構成単位を有する。ファルネセンには、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)やβ-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などの異性体が存在するが、以下の構造を有する(E)-β-ファルネセンが好ましい。
【化2】
【0073】
液状ファルネセン系ポリマーは、ファルネセンの単独重合体(ファルネセン単独重合体)でも、ファルネセンとビニルモノマーとの共重合体(ファルネセン-ビニルモノマー共重合体)でもよい。
【0074】
ビニルモノマーとしては、スチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、α-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、4-tert-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、ビニルエチルベンゼン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、tert-ブトキシスチレン、ビニルベンジルジメチルアミン、(4-ビニルベンジル)ジメチルアミノエチルエーテル、N,N-ジメチルアミノエチルスチレン、N,N-ジメチルアミノメチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2-t-ブチルスチレン、3-t-ブチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン、ビニルトルエン、ビニルピリジン、ジフェニルエチレン、3級アミノ基含有ジフェニルエチレンなどの芳香族ビニル化合物や、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン化合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、ブタジエンが好ましい。すなわち、ファルネセン-ビニルモノマー共重合体としては、ファルネセンとブタジエンとの共重合体(ファルネセン-ブタジエン共重合体)が好ましい。
【0075】
ファルネセン-ビニルモノマー共重合体において、ファルネセンとビニルモノマーとの質量基準の共重合比(ファルネセン/ビニルモノマー)は、40/60~90/10が好ましい。
【0076】
液状ファルネセン系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が3000~30万のものを好適に使用できる。液状ファルネセン系ポリマーのMwは、好ましくは8000以上、より好ましくは10000以上であり、また、好ましくは10万以下、より好ましくは6万以下、更に好ましくは5万以下である。
【0077】
ゴム組成物において、液状ファルネセン系ポリマーの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは35質量部以下、特に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0078】
ゴム組成物において、液状ポリマーの含有量(液状ゴム、液状ファルネセン系ポリマーの総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは35質量部以下、特に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0079】
ゴム組成物において、前記樹脂成分の含有量(常温(25℃)で液体状態の樹脂、常温(25℃)で固体状態の樹脂の総量)は、好ましくは5質量部以上、より好ましくは15質量部以上、更に好ましくは20質量部以上、特に好ましくは25質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、特に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0080】
樹脂成分の常温(25℃)で液体状態の樹脂としては、液状樹脂が挙げられる。液状樹脂は、軟化点が常温以下の常温で液体状態のものでもよい。液状樹脂としては、テルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、これらの水素添加物も使用可能である。
【0081】
ゴム組成物において、液状樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは8質量部以上、更に好ましくは10質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは35質量部以下、特に好ましくは25質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0082】
樹脂成分の常温(25℃)で固体状態の樹脂(以下、「固体樹脂」とも称する)としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、テルペン系樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、樹脂は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ウェット路面における高速旋回性能の耐久性の観点から、芳香族ビニル重合体、テルペン系樹脂が好ましい。
【0083】
前記ゴム組成物において、固体樹脂の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、更に好ましくは15質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下、特に好ましくは50質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。なお、芳香族ビニル重合体、テルペン系樹脂の含有量も同様の範囲が望ましい。
【0084】
固体樹脂の軟化点は、60℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。上限は、160℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、115℃以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好なウェット路面における高速旋回性能が得られる傾向がある。
なお、樹脂成分の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0085】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0086】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。
【0087】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。
【0088】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。
【0089】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。
【0090】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。
【0091】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、これらの水素添加物などが挙げられる。なかでも、DCPD樹脂、水添DCPD樹脂が好ましい。
【0092】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。また、これらの水素添加物も使用できる。
【0093】
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(C5H8)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C10H16)、セスキテルペン(C15H24)、ジテルペン(C20H32)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0094】
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0095】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
【0096】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0097】
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0098】
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0099】
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0100】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。
【0101】
前記ゴム組成物において、前記液状ポリマー(液状ゴム、液状ファルネセン系ポリマー)と、前記樹脂成分(常温(25℃)で液体状態の樹脂、常温(25℃)で固体状態の樹脂)との合計含有量(総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは20質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは70質量部以下、特に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェット路面における高速旋回性能が向上する傾向がある。
【0102】
上記可塑剤としては、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業、ノバレス・ルトガース社等の製品を使用できる。
【0103】
前記ゴム組成物は、ウェット路面における高速旋回性能の観点から、ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)と、ゴム成分100質量部に対する前記液状ポリマー及び前記樹脂成分の合計含有量(質量部)と、ゴム成分100質量部に対する前記オイルの含有量とが、以下の(式1)を満たすことが好ましい。
(式1)
シリカの含有量>液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量>オイルの含有量
【0104】
前記ゴム組成物は、ウェット路面における高速旋回性能の観点から、ゴム成分100質量部に対する前記液状ポリマー及び前記樹脂成分の合計含有量(質量部)と、ゴム成分100質量部に対する前記オイルの含有量(質量部)とが、以下の(式2)を満たすことが好ましい。
(式2)
液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量/オイルの含有量>1.2
液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量/オイルの含有量は、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.5以上、更に好ましくは2.8以上、特に好ましくは3.2以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは10.0以下、より好ましくは6.0以下、更に好ましくは5.0以下、特に好ましくは4.0以下である。
【0105】
前記ゴム組成物は、ウェット路面における高速旋回性能の観点から、ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部)と、ゴム成分100質量部に対する前記液状ポリマー及び前記樹脂成分の合計含有量(質量部)とが、以下の(式3)を満たすことが好ましい。
(式3)
シリカの含有量/液状ポリマー及び樹脂成分の合計含有量>1.0
液状ポリマー及び樹脂の合計含有量/オイルの含有量は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.4以上、更に好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.6以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは8.0以下、より好ましくは5.0以下、更に好ましくは4.0以下、特に好ましくは3.5以下である。
【0106】
前記ゴム組成物は、ウェット路面における高速旋回性能の観点から、ゴム成分100質量部に対する前記樹脂成分の含有量(質量部)と、ゴム成分100質量部に対する前記液状ポリマーの含有量(質量部)とが、以下の(式4)を満たすことが好ましい。
(式4)
樹脂成分の含有量/液状ポリマーの含有量>1.0
樹脂成分の含有量/液状ポリマーの含有量は、好ましくは1.1以上、更に好ましくは1.2以上である。上限は特に限定されないが、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下、更に好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。
【0107】
前記ゴム組成物において、前記シリカの含有量(ゴム成分100質量部に対する前記シリカの含有量(質量部))-前記液状ポリマー及び前記樹脂成分の合計含有量(ゴム成分100質量部に対する前記液状ポリマー及び前記樹脂成分の合計含有量(質量部))は、20質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましい。上限は、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、65質量部以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好なウェット路面における高速旋回性能が得られる傾向がある。
【0108】
前記ゴム組成物において、前記液状ポリマー及び前記樹脂成分の合計含有量(ゴム成分100質量部に対する前記液状ポリマー及び前記樹脂成分の合計含有量(質量部))-前記オイルの含有量(ゴム成分100質量部に対する前記オイルの含有量(質量部))は、5質量部以上が好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上が更に好ましい。上限は、60質量部以下が好ましく、45質量部以下がより好ましく、35質量部以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、良好なウェット路面における高速旋回性能が得られる傾向がある。
【0109】
(他の材料)
前記ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0110】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0111】
前記ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
【0112】
前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。前記ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0113】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、NOF社、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0114】
前記ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。前記ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0115】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0116】
前記ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。前記ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0117】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0118】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0119】
前記ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な性能を付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
【0120】
前記ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。
【0121】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0122】
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
前記ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1.0質量部以上、更に好ましくは1.5質量部以上である。上限は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。
【0123】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、ベンゾチアゾール系加硫促進剤が好ましい。
【0124】
前記ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0125】
前記ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0126】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0127】
前記ゴム組成物を適用できる部材としては、トレッド(キャップトレッド)、サイドウォール、ベーストレッド、ビードエイペックス、クリンチエイペックス、インナーライナー、アンダートレッド、ブレーカートッピング、プライトッピング、トレッド等、空気入りタイヤの各部材に好適に使用できる。なかでも、トレッド(キャップトレッド)に好適に使用できる。
【0128】
タイヤは、ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を未加硫の段階でトレッド等の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、タイヤが得られる。
【0129】
タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤに好適に使用できる。
【実施例】
【0130】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0131】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR:日本ゼオン(株)製のSBR1502(非油展、スチレン含有量25質量%)
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のウベポールBR150B(シス含量97質量%)
カーボンブラック:三菱ケミカル(株)製のシーストN220(N2SA114m2/g)
シリカ:エボニックデグサ社製のウルトラシル9100GR(N2SA235m2/g)
有機珪素化合物1:下記製造例1で合成したシランカップリング剤
有機珪素化合物2:エボニックデグッサ社製のSi266(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製のハイジライトH-43(平均一次粒子径1μm)
固体樹脂1:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンTO125(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点125℃)
固体樹脂2:ヤスハラケミカル(株)製のYSレジンPX1150(ポリテルペン(β-ピネン樹脂)、軟化点115℃)
液状樹脂1:CrayValley社製のRicon340(C9留分/C5留分コポリマー樹脂、ガラス転移温度-35℃、Mw1200)
液状樹脂2:ノバレス・ルトガース社製のC10(クマロン・インデン樹脂)
オイル:三共油化工業(株)製のA/Oミックス(オイル、芳香族系炭化水素の含有率29質量%)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD))
ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエースワックス
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤NS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS))
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(ジフェニルグアニジン)
加硫促進剤TBzTD:三新化学工業(株)製のサンセラーTBZTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)
【0132】
(製造例1:有機珪素化合物1の合成)
撹拌機、還流冷却器、滴下ロートおよび温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、無水硫化ソーダ78.0g(1.0モル)、硫黄80.3g(2.5モル)およびエタノール480gを仕込み、80℃に加熱した。その中に、6-クロロヘキシルトリエトキシシラン566g(2.0モル)を滴下投入し、80℃にて10時間加熱撹拌した。この反応液を、濾過板を用いて加圧濾過することで、反応の進行とともに生成した塩が除去された濾液を得た。得られた濾液を100℃まで加熱し、10mmHg以下の減圧下でエタノールを留去することで、反応生成物として有機珪素化合物1(シランカップリング剤)を得た。得られた有機珪素化合物1は、化合物中に含まれる硫黄量が18.5質量%であり、有機珪素化合物1分子中に含まれる平均の硫黄の原子数Xは3.5であり、mの値は6であった。
【0133】
<実施例及び比較例>
各表に示す配合処方に従い、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、ポリマーや配合薬品添加し、150℃の条件下で3分間混練りし、混練り物を得た。硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、100℃の条件下で2分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。得られた各未加硫ゴム組成物をそれぞれキャップトレッドの形状に成型し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせて170℃で15分間加硫することにより、試験タイヤ(タイヤサイズ:195/65R15)を製造した。
【0134】
得られた試験タイヤについて、以下の評価を行った。評価結果を各表に示した。なお、表1、2は、それぞれ比較例1-1、2-2を基準比較例とした。
【0135】
<ウェット路面における高速旋回性能>
国産2000ccの自動車の全輪に試験タイヤを装着し、ウェット路面上において時速60kmから徐々に速度を上げながら定常円旋回させ、ドライバーがスリップを感じた速度を、基準比較例を100として指数化した。指数が大きいほど、ウェット路面における高速旋回性能が優れている。
(高速旋回性能)=(各試験タイヤにおけるドライバーがスリップを感じた速度km/h)/(基準比較例におけるドライバーがスリップを感じた速度km/h)×100
【0136】
【0137】
【0138】
各表より、スチレンブタジエンゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分と、所定量のシリカを含む充填材と、シランカップリング剤とを含み、該シランカップリング剤がアルコキシシリル基及び硫黄原子を含み、かつアルコキシシリル基及び硫黄原子を連結する炭素原子の数が6個以上である有機珪素化合物を含む実施例のタイヤは、ウェット路面における高速旋回性能に優れていた。