(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-24
(45)【発行日】2024-10-02
(54)【発明の名称】加熱装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240925BHJP
G03G 15/20 20060101ALI20240925BHJP
B41J 29/00 20060101ALI20240925BHJP
【FI】
B41J2/01 125
G03G15/20 505
B41J29/00 H
(21)【出願番号】P 2020127723
(22)【出願日】2020-07-28
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 光介
(72)【発明者】
【氏名】小寺 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】山下 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】中山 信行
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特許第4079981(JP,B1)
【文献】特開2005-289059(JP,A)
【文献】特開2006-240204(JP,A)
【文献】特開2010-234743(JP,A)
【文献】特開平08-059016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
G03G 15/20
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される被搬送材の上面を非接触で加熱する加熱部と、
該被搬送材の下面に対して開口する複数の送風孔を通じて該下面に送風する送風部であって、該複数の送風孔は、該被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士が、該搬送方向に対する交差方向にずれて配置されている前記送風部と、
を備え、
前記加熱部は、赤外線ヒータであり、
前記送風部は、前記赤外線ヒータにて上面が加熱された前記被搬送材の下面に風を当てる
加熱装置。
【請求項2】
前記被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士は、孔全体が前記交差方向へずれて配置されている
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔と、
該一対の送風孔に対して前記交差方向に隣接する一対の送風孔と、の各々を結ぶ線によって、平行四辺形が形成される
請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔と、
該一対の送風孔に対して前記交差方向に隣接する一対の送風孔と、の各々を結ぶ線によって、方形以外の形が形成される
請求項1又は2に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記複数の送風孔は、
前記送風孔が該交差方向に沿って複数配置された列を有し、
該列が該搬送方向に複数配置され、
前記搬送方向に隣接する列同士における最も近い送風孔同士が、前記交差方向にずれて配置されている
請求項1~4のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項6】
前記送風部は、
前記被搬送材における搬送方向の下流側部分を保持し且つ該被搬送材における搬送方向の上流側部分を非保持の状態で搬送される被搬送材の該下面に送風し、該被搬送材における搬送方向の上流側部分を浮上させる
請求項1~5のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項7】
前記被搬送材としての記録媒体に画像を形成する画像形成部と、
前記画像形成部によって画像が形成された被搬送材の上面を非接触で加熱する請求項1~6のいずれか1項に記載の加熱装置と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、未定着の画像を有するカット紙の両面に搬送部材が接触しないように、該カット紙の搬送方向先端を保持して搬送する非接触搬送手段と、該非接触搬送手段により搬送状態にある前記カット紙を非接触で加熱する非接触加熱手段と、を有する定着装置において、前記非接触加熱手段により加熱状態にある前記カット紙に対して、表面と裏面とにそれぞれ気体を吹き付ける気体吹き付け手段を有することを特徴とする定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬送される被搬送材の上面を非接触で加熱する加熱部と、該被搬送材の下面に対して開口する複数の送風孔を通じて該下面に送風する送風部と、を備える加熱装置において、被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士が、搬送方向に沿って配置されていると、搬送方向に対する交差方向において、被搬送材の温度ムラが生じる場合がある。
【0005】
本発明は、被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士が搬送方向に沿って配置される構成に比べ、被搬送材の搬送方向に対する交差方向における温度ムラを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様は、搬送される被搬送材の上面を非接触で加熱する加熱部と、該被搬送材の下面に対して開口する複数の送風孔を通じて該下面に送風する送風部であって、該複数の送風孔は、該被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士が、該搬送方向に対する交差方向にずれて配置されている前記送風部と、を備える。
【0007】
第2態様では、前記被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士は、孔全体が前記交差方向へずれて配置されている。
【0008】
第3態様では、前記被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔と、該一対の送風孔に対して前記交差方向に隣接する一対の送風孔と、の各々を結ぶ線によって、平行四辺形が形成される。
【0009】
第4態様では、前記被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔と、該一対の送風孔に対して前記交差方向に隣接する一対の送風孔と、の各々を結ぶ線によって、方形以外の形が形成される。
【0010】
第5態様では、前記複数の送風孔は、前記送風孔が該交差方向に沿って複数配置された列を有し、該列が該搬送方向に複数配置され、前記搬送方向に隣接する列同士における最も近い送風孔同士が、前記交差方向にずれて配置されている。
【0011】
第6態様では、前記送風部は、前記被搬送材における搬送方向の下流側部分を保持し且つ該被搬送材における搬送方向の上流側部分を非保持の状態で搬送される被搬送材の該下面に送風し、該被搬送材における搬送方向の上流側部分を浮上させる。
【0012】
第7態様は、前記被搬送材としての記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部によって画像が形成された被搬送材の上面を非接触で加熱する第1態様~第5態様のいずれか1つの態様に係る加熱装置と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
第1態様の構成によれば、被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士が搬送方向に沿って配置される構成に比べ、被搬送材の搬送方向に対する交差方向における温度ムラが抑制される。
【0014】
第2態様の構成によれば、被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士における孔の一部が、交差方向に重なっている構成に比べ、被搬送材の搬送方向に対する交差方向における温度ムラが抑制される。
【0015】
第3態様の構成によれば、該線によって台形が形成される構成に比べ、被搬送材の搬送方向に対する交差方向における温度ムラが抑制される。
【0016】
第4態様の構成によれば、該線によって方形が形成される構成に比べ、被搬送材の搬送方向に対する交差方向における温度ムラが抑制される。
【0017】
第5態様の構成によれば、搬送方向に隣接する列同士における最も近い送風孔同士が、搬送方向に沿って配置される構成に比べ、被搬送材の搬送方向に対する交差方向における温度ムラが抑制される。
【0018】
第6態様の構成によれば、被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士が搬送方向に沿って配置される構成に比べ、複数の送風孔からの送風による被搬送材の浮上量の交差方向におけるムラが抑制される。
【0019】
第7態様の構成によれば、被搬送材の搬送方向に隣接する最も近い送風孔同士が搬送方向に沿って配置された加熱装置を備える構成に比べ、被搬送材の画像の搬送方向に対する交差方向における加熱ムラが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【
図2】第1実施形態に係る加熱装置の構成を示す概略図である。
【
図3】第1実施形態に係るチェーングリッパの構成を示す斜視図である。
【
図4】第1実施形態に係る送風装置の構成を示す斜視図である。
【
図5】第1実施形態に係る送風孔の配置形態を示す平面図である。
【
図6】比較例に係る送風孔の配置形態を示す平面図である。
【
図7】変形例に係る送風孔の配置形態を示す平面図である。
【
図8】第2実施形態に係る画像形成装置の構成を示す概略図である。
【
図9】第2実施形態に係るトナー像形成部の構成を示す概略図である。
【
図10】第2実施形態に係る定着ユニットの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。なお、各図に示す矢印Hは鉛直方向であって装置上下方向を示し、矢印Wは、水平方向であって装置幅方向を示し、矢印Dは、装置前後方向(装置奥行方向)を示す。
【0022】
<第1実施形態>
(画像形成装置10)
本実施形態に係る画像形成装置10の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置10の構成を示す概略図である。
【0023】
図1に示される画像形成装置10は、シート状の被搬送材の一例としての記録媒体に画像を形成する画像形成装置である。具体的には、画像形成装置10は、記録媒体の一例としての用紙Pにインクを用いて画像を形成するインクジェット式の画像形成装置である。さらに具体的には、画像形成装置10は、
図1に示されるように、収容部50と、排出部52と、画像形成部12と、加熱装置100と、冷却部90と、搬送装置16と、を有している。以下、画像形成装置10の各部(収容部50、排出部52、画像形成部12、加熱装置100、冷却部90及び搬送装置16)について説明する。
【0024】
(収容部50)
図1に示される収容部50は、用紙Pを収容する機能を有している。画像形成装置10では、収容部50は、複数(例えば2つ)が備えられている。この複数の収容部50から選択的に用紙Pが送り出される。用紙Pとしては、例えば、予め定められた大きさ(すなわちサイズ)とされた枚葉紙(いわゆるカット紙)が用いられる。
【0025】
(排出部52)
図1に示される排出部52は、画像が形成された用紙Pが排出される部分である。画像形成装置10では、加熱装置100で画像が加熱された後に、冷却部90で冷却された用紙Pが排出部52に排出される。
【0026】
(画像形成部12)
図1に示される画像形成部12は、記録媒体に画像を形成する画像形成部の一例である。具体的には、画像形成部12は、インクを用いて用紙Pに画像を形成する。さらに具体的には、画像形成部12は、
図1に示されるように、インクを吐出する吐出部14Y、14M、14C、14K(以下、14Y~14Kという)を有している。また、画像形成部12は、転写ドラム13と、対向ロール15と、を有している。
【0027】
転写ドラム13は、搬送装置16で搬送される用紙Pの搬送経路上に設けられており、該用紙Pの上方側を向く面(以下「上面」という)に接触する位置に配置されている。この転写ドラム13は、
図1におけるE方向へ回転駆動する。対向ロール15は、転写ドラム13に対向して転写ドラム13の下側に配置されている。具体的には、対向ロール15は、転写ドラム13に対して予め定められた圧力にて接触している。なお、搬送装置16が用紙Pを搬送する方向を「搬送方向」という。各図では、搬送方向が矢印X方向にて示されている。
【0028】
各吐出部14Y~14Kは、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のインク滴を、転写ドラム13の外周面に吐出して、転写ドラム13の外周面に画像を形成する。吐出部14Y~14Kは、この順で、転写ドラム13の回転方向(E方向)の下流側へ向かって配置されている。また、各吐出部14Y~14Kは、転写ドラム13の軸方向に沿って長さを有している。各吐出部14Y~14Kは、サーマル方式、圧電方式等の公知の方式にて、ノズル(図示省略)からインク滴を転写ドラム13の外周面に吐出する。
【0029】
画像形成部12では、各吐出部14Y~14Kが、各色のインク滴を転写ドラム13の外周面に吐出して、転写ドラム13の外周面に画像を形成する。さらに、画像形成部12では、転写ドラム13の外周面に形成された画像を、転写ドラム13と対向ロール15との間を通過する用紙Pに転写する。これにより、用紙Pの上面に画像が形成される。なお、対向ロール15には、搬送装置16の後述のグリッパ76との干渉を抑制するための凹部17が形成されている。該グリッパ76は、転写ドラム13と対向ロール15との間を通過する際に、凹部17に入り込んだ状態で通過する。
【0030】
(加熱装置100)
図2は、加熱装置100の構成を示す概略図である。加熱装置100は、
図1に示されるように、画像形成部12に対する搬送方向下流側に配置されている。
【0031】
加熱装置100は、用紙Pを加熱する装置である。具体的には、加熱装置100は、用紙P上のインクを加熱により乾燥させる機能を有している。さらに具体的には、加熱装置100は、
図2に示されるように、加熱部102と、送風装置160と、を備えている。
【0032】
加熱部102は、搬送装置16(具体的には、後述の搬送機構60)によって搬送される用紙Pの上面を非接触で加熱する機能を有している。具体的には、加熱部102は、画像形成部12によって画像が形成された用紙Pの上面を非接触で加熱する。さらに具体的には、加熱部102は、反射板104と、複数のヒータ106(加熱源)と、金網112と、を備えている。なお、送風装置160の構成については後述する。
【0033】
反射板104は、ヒータ106からの赤外線を下方側(すなわち、搬送装置16によって搬送される用紙P側)へ反射する機能を有している。この反射板104は、下方側が開放された箱状に形成されている。反射板104は、例えばアルミニウム板等の金属板を用いて形成されている。
【0034】
ヒータ106は、用紙Pの幅方向(以下「紙幅方向」という場合がある)に沿って長さを有する円柱状の赤外線ヒータである。ヒータ106は、反射板104の内部に搬送方向に沿って、複数並べられている。なお、紙幅方向は、搬送方向と交差する交差方向(具体的には、直交する方向)である。各図では、紙幅方向が矢印Y方向にて示されている。
【0035】
金網112は、反射板104の下方側の開口に配置されている。これにより、金網112は、反射板104の内部と、反射板104の外部とを仕切っている。そして、金網112は、搬送装置16によって搬送される用紙Pとヒータ106との接触を防止している。
【0036】
(冷却部90)
冷却部90は、
図1に示されるように、加熱装置100に対する搬送方向下流側に配置されている。この冷却部90は、搬送方向に並んでいる複数(例えば2つ)の冷却ロール92を備えている。
【0037】
冷却ロール92は、金属等により形成された円筒状のロールで構成されている。冷却ロール92は、その内部で空気や水などの冷媒が流通することで、冷媒との熱交換により用紙Pを冷却する構成とされている。
【0038】
(搬送装置16)
図1に示される搬送装置16は、用紙Pを搬送する装置である。具体的には、搬送装置16は、
図1に示されるように、搬送機構60と、反転機構80と、を有している。
【0039】
(搬送機構60)
図1に示される搬送機構60は、用紙Pを搬送する機構である。具体的には、搬送機構60は、収容部50に収容された用紙Pを画像形成部12へ搬送し、画像形成部12に用紙Pを通過させる。また、搬送機構60は、用紙Pを画像形成部12から加熱装置100へ搬送し、加熱装置100に用紙Pを通過させる。すなわち、搬送機構60は、画像が形成された用紙Pを加熱装置100において搬送する機能を有している。
【0040】
また、搬送機構60では、画像形成部12及び加熱装置100において、用紙Pの一方の面を上方側へ向けて搬送する。当該一方の面は、画像形成部12において、画像が形成される画像面であり、且つ加熱装置100において加熱される面である。
【0041】
具体的には、搬送機構60は、
図1に示されるように、送出ロール62と、複数の搬送ロール64と、チェーングリッパ66と、を有している。なお、搬送機構60は、搬送部の一例である。搬送機構60の構成要素であるチェーングリッパ66を搬送部の一例と把握してもよい。
【0042】
送出ロール62は、収容部50に収容された用紙Pを送り出す。複数の搬送ロール64は、送出ロール62が送り出した用紙Pをチェーングリッパ66へ搬送する。
【0043】
チェーングリッパ66は、
図2及び
図3に示されるように、用紙Pの前端部(すなわち、搬送方向の下流部)を保持して用紙Pを搬送する搬送部である。チェーングリッパ66は、具体的には、
図2及び
図3に示されるように、一対のチェーン72と、保持部材(把持部材)としてのグリッパ76と、を備えている。
【0044】
一対のチェーン72は、
図1に示されるように、環状に形成されている。この一対のチェーン72は、装置前後方向(
図1のD方向)に間隔をおいて配置されている(
図3参照)。そして、一対のチェーン72の各々は、
図1に示されるように、対向ロール15に対する軸方向の一端側及び他端側に配置された一対のスプロケット(図示省略)と、装置前後方向に間隔をおいて配置された一対のスプロケット73、74に巻き掛けられている。これらの一対のスプロケットのいずれかが回転することで、チェーン72が矢印C方向へ周回する構成とされている(
図1参照)。なお、各図では、スプロケット73、74の外周に設けられる歯を省略して図示している。
【0045】
一対のチェーン72には、
図3に示されるように、グリッパ76が取り付けられた取付部材75が装置前後方向に沿って掛け渡されている。取付部材75は、チェーン72の周方向(周回方向)に沿って予め定められた間隔で複数が一対のチェーン72に固定されている(
図1及び
図2参照)。なお、各図では、チェーン72の図示を簡略化するため、チェーン72をブロック状に示している。
【0046】
グリッパ76は、
図3に示されるように、装置前後方向に沿って予め定められた間隔で複数が取付部材75に取り付けられている。グリッパ76は、用紙Pの前端部を保持(把持)する機能を有している。具体的には、グリッパ76は、
図2及び
図3に示されるように、爪76Aと爪台76Bとを有している。グリッパ76では、爪76Aと爪台76Bとの間に用紙Pの前端部を挟むことで用紙Pを保持する構成とされている。このグリッパ76は、例えば、爪76Aが爪台76Bに対してバネ等により押し付けられると共に、カム等の作用により爪76Aが爪台76Bに対して開閉される。このように、本実施形態では、用紙Pに対する搬送方向の下流側に配置されたグリッパ76が、用紙Pの搬送方向の下流側から用紙Pの前端部を保持する。
【0047】
そして、チェーングリッパ66は、
図2に示されるように、グリッパ76が用紙Pの前端部を保持した状態で、チェーン72が矢印C方向へ周回することで、用紙Pの一方の面を上方側へ向けた状態で該用紙Pを搬送する。このとき、チェーングリッパ66は、用紙Pの後端側部分を非保持の状態で該用紙Pを搬送する。すなわち、用紙Pは、後端側部分が拘束されずに、自由状態のまま搬送される。これにより、用紙Pは、一方の面を上方側へ向けた状態で画像形成部12及び加熱装置100を通過する。
【0048】
なお、用紙Pの前端部は、被搬送材における搬送方向の下流側部分の一例である。用紙Pの後端側部分は、被搬送材における搬送方向の一端側部分の一例であり、被搬送材における搬送方向の上流側部分の一例である。また、搬送機構60において用紙Pが搬送される搬送経路の一部が、
図1において一点鎖線にて示されている。
【0049】
(送風装置160)
図2に示される送風装置160は、送風部の一例である。送風装置160は、
図2に示されるように、側面視にて(すなわち、装置前後方向に見て)、チェーン72の内側(内周側)であって、加熱部102の下方側に配置されている。すなわち、側面視にて、チェーン72の一部が、加熱部102と送風装置160との間に配置される。これにより、チェーングリッパ66によって搬送される用紙Pは、加熱部102と送風装置160との間を通過する。
【0050】
送風装置160は、チェーングリッパ66によって搬送される用紙Pの下面に対して送風する装置である。具体的には、送風装置160は、
図2に示すように、ファン161と、装置本体166と、送風板180と、を有している。装置本体166は、上方側が開放された箱状に形成されている。具体的には、装置本体166は、平面視にて枠状に形成された側壁163と、板状の底壁162と、を有している。底壁162の搬送方向の中央部であって、装置前後方向の中央部には、開口部164が形成されている。この開口部164に対してファン161が取り付けられている。ファン161は、駆動により、開口部164を通じて装置本体166の内部へ送風する。
【0051】
ファン161には、一例として、軸方向へ送風する軸流送風機が用いられている。なお、ファン161としては、多翼送風機(例えば、シロッコファン)などの、遠心方向へ送風する遠心送風機を用いてもよく、送風する送風機であればよい。なお、ファン161は、送風機の一例である。
【0052】
送風板180は、装置本体166の上部開口を塞ぐように、側壁163の上端に取り付けられている。これにより、装置本体166は、開口部164及び後述の送風孔182を除いて密閉されている。
【0053】
送風板180は、上下方向の厚み方向とする板状に形成されており、加熱部102に対向する対向面181を有している。対向面181は、上方側を向いており、加熱部102と送風板180との間を搬送される用紙Pの下面に対向する。
【0054】
送風板180は、金属板で構成されている。この送風板180は、ヒータ106からの赤外線を上方側(チェーングリッパ66によって搬送される用紙P側)へ反射する反射板としての機能も有している。
【0055】
送風板180には、上下方向に貫通する複数の送風孔182が形成されている。すなわち、複数の送風孔182は、対向面181に設けられており、加熱部102と送風板180との間を搬送される用紙Pの下面に対して開口している。
【0056】
この送風孔182は、
図4に示されるように、搬送方向及び紙幅方向に沿って、二次元状(マトリックス状)に配置されている。なお、
図4では、チェーングリッパ66及び送風装置160の各部を簡略化して示している。
【0057】
送風装置160では、ファン161の駆動により、装置本体166の内部に流入した空気を、チェーングリッパ66によって搬送される用紙Pの下面に対して、複数の送風孔182を通じて送風する(
図2参照)。これにより、チェーングリッパ66で前端部が保持された用紙Pの後端側部分が、送風板180の対向面181から浮上し、送風板180の対向面181に対して非接触となる。すなわち、用紙Pは、チェーングリッパ66及び送風装置160により、送風板180の対向面181に対して非接触の状態で搬送される。
【0058】
ここで、複数の送風孔182は、
図5に示されるように、送風孔182が紙幅方向(Y方向)に沿って複数配置された列185を有し、列185が、搬送方向(X方向)に複数配置されている。複数の列185の各々において、送風孔182は、予め定められたピッチ(すなわち配置間隔)で紙幅方向に沿って等間隔で配置されている。また、複数の列185の各々において等間隔で配置される送風孔182のピッチは、列185間で同じとされている。1ピッチとは、送風孔182の孔中心間の距離であり、
図5において符号1Pで示す距離である。なお、1ピッチの距離は一例として10mm以上、30mm以下とされ、送風孔182の孔径は、一例として、1.0mm以上、1.5mm以下とされる。また、
図5では、列185を構成する複数の送風孔182の一部(具体的には、5個の送風孔182)が図示されている。
【0059】
さらに、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士が、紙幅方向にずれて配置されている。搬送方向に隣接する送風孔182は、搬送方向において隣り合う送風孔182であり、搬送方向において上流側又は下流側の最も近い位置に配置された送風孔182である。例えば、送風孔182(B)に隣接する送風孔182は、列185(A)に属する複数の送風孔182、及び、列185(C)に属する複数の送風孔182である。送風孔182(B)に最も近い送風孔182は、列185(A)に属する複数の送風孔182のうち、送風孔182(A)である。また、送風孔182(B)に最も近い送風孔182は、列185(C)に属する複数の送風孔182のうち、送風孔182(C)である。
【0060】
そして、本実施形態では、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士である「送風孔182(A)と送風孔182(B)」が、紙幅方向にずれて配置されている。搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士である「送風孔182(B)と送風孔182(C)」が紙幅方向にずれて配置されている。
【0061】
また、本実施形態では、搬送方向に隣接する列185同士における最も近い送風孔182同士が、紙幅方向にずれて配置されているともいえる。搬送方向に隣接する列185とは、搬送方向において隣り合う列185であり、搬送方向において上流側又は下流側の最も近い位置に配置された列185である。例えば、列185(B)に隣接する列185は、列185(A)及び列185(C)である。
【0062】
列185(B)の送風孔182(B)を基準に見た場合、列185(B)に隣接する列185(A)に属する送風孔182(A)が最も近い送風孔182である。また、送風孔182(B)を基準に見た場合、列185(B)に隣接する列185(C)に属する送風孔182(C)が最も近い送風孔182である。すなわち、搬送方向に隣接する列185同士における最も近い送風孔182同士とは、例えば、送風孔182(A)と送風孔182(B)であり、送風孔182(B)と送風孔182(C)である。
【0063】
そして、本実施形態では、搬送方向に隣接する列185同士における最も近い送風孔182同士である「送風孔182(A)と送風孔182(B)」が、紙幅方向にずれて配置されている。搬送方向に隣接する列185同士における最も近い送風孔182同士である「送風孔182(B)と送風孔182(C)」が紙幅方向にずれて配置されている。
【0064】
さらに、本実施形態では、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))は、孔全体が紙幅方向へずれて配置されている。すなわち、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士は、紙幅方向に予め定められた間隔DLを有して配置されている。換言すれば、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士は、搬送方向に見て、重なっていない。
【0065】
搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士は、具体的には、1/4ピッチ(
図5において符号1/4Pで示す間隔)ずつ、紙幅方向に徐々にずれて配置されている。すなわち、本実施形態では、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士は、同じピッチずつ、紙幅方向に徐々にずれて配置されている。なお、本実施形態では、「1/4ピッチ>孔径」、「1/4ピッチ=間隔DL+孔径」の関係を有している。また、
図5において符号1/2Pで示す間隔は、半ピッチを示している。
【0066】
さらに、本実施形態では、搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))と、該一対の送風孔に対して紙幅方向に隣接する一対の送風孔(例えば、送風孔182(E)及び送風孔182(F))と、の各々を結ぶ線LAによって、平行四辺形が形成される。平行四辺形は、方形以外の形の一例である。方形とは、4つの角が直角の四角形である。方形には、正方形及び長方形が含まれる。該線LAは、送風孔182の孔中心を結ぶ線である。
【0067】
(反転機構80)
図1に示される反転機構80は、加熱装置100によって画像が加熱された用紙Pの表裏を反転させる機構である。具体的には、反転機構80は、
図1に示されるように、複数(例えば、2つ)の搬送ロール82と、反転装置84、複数(例えば、7つ)の搬送ロール86と、有している。
【0068】
複数の搬送ロール82は、加熱装置100から送られた用紙Pを反転装置84へ搬送する。反転装置84は、用紙Pの表裏を反転させる。複数の搬送ロール86は、反転装置84で表裏が反転された用紙Pをチェーングリッパ66へ搬送する。すなわち、複数の搬送ロール86は、表裏が反転された用紙Pをチェーングリッパ66に受け渡す機能を有している。
【0069】
このように、反転機構80は、加熱部102と対向面181との間を通過した用紙Pの上下を反転させて、チェーングリッパ66に受け渡すことで、チェーングリッパ66は、受け渡された用紙Pを、加熱乾燥された画像が形成された面を下方側に向けて、再び、画像形成部12を経て、加熱部102と対向面181との間へ搬送する。なお、反転機構80において用紙Pが搬送される搬送経路の一部が、
図1において一点鎖線にて示されている。
【0070】
(本実施形態に係る作用)
本実施形態では、
図1に示される収容部50から送り出された用紙Pは、複数の搬送ロール64で搬送され、チェーングリッパ66へ受け渡される。チェーングリッパ66へ受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ66によって用紙Pの前端部を保持し且つ後端側部分を非保持の状態で、画像形成部12へ搬送される。一方、画像形成部12では、各吐出部14Y~14Kが、各色のインク滴を転写ドラム13の外周面に吐出して、転写ドラム13の外周面に画像を形成する。画像形成部12を搬送される用紙Pは、転写ドラム13の外周面に形成された画像が転写され、画像が形成される。画像が形成された用紙Pは、
図2に示されるように、チェーングリッパ66によって、加熱装置100のヒータ106に画像面が対向した状態で搬送され、加熱装置100の加熱により画像が乾燥される。
【0071】
用紙Pの片面にのみ画像を形成する場合は、加熱装置100で画像が乾燥された用紙Pが、冷却部90の冷却ロール92で冷却された後、排出部52へ排出される。
【0072】
用紙Pの両面に画像を形成する場合には、片面の画像が乾燥された用紙Pは、
図1に示される反転機構80によって、表裏が反転された後、再びチェーングリッパ66に受け渡される。チェーングリッパ66に受け渡された用紙Pは、既に形成された画像を下方側に向けた状態で画像形成部12へ搬送され、用紙Pの上面に転写ドラム13から画像が転写され、画像が形成される。画像が形成された用紙Pは、前述と同様に、加熱装置100の加熱により乾燥された後、冷却部90の冷却ロール92で冷却されて、排出部52へ排出される。
【0073】
ここで、本実施形態では、
図5に示されるように、複数の送風孔182は、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))が紙幅方向にずれて配置されている。さらに言えば、本実施形態では、搬送方向に隣接する列185同士における最も近い送風孔182同士(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))が、紙幅方向にずれて配置されている。
【0074】
例えば、
図6に示されるように、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))が搬送方向に沿って配置される構成では、送風孔182が配置された配置位置において用紙Pに風が当たることで、配置位置で温度が下がり、用紙Pの紙幅方向において、温度ムラが生じる。すなわち、
図6に示されるように、送風孔182が配置された配置位置で用紙Pの温度が下がり、該配置位置間の送風孔182が配置されていない非配置位置では、用紙Pの温度が高いままで維持される。
図6には、用紙Pの温度が下がる部分を温度「低」で示され、用紙Pの温度が高いまま維持される部分を温度「高」で示されている。なお、
図6に示される構成は、搬送方向に隣接する列185同士における最も近い送風孔182同士が、搬送方向に沿って配置される構成ともいえる。
【0075】
これに対して、本実施形態では、
図5に示されるように、複数の送風孔182は、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))が紙幅方向にずれて配置されているので、送風により温度が下がる用紙Pの部分が、
図6に示される構成に比べ、紙幅方向に分散される。
【0076】
このため、本実施形態の構成によれば、
図6に示される構成に比べ、用紙Pの紙幅方向における温度ムラが抑制される。すなわち、本実施形態の構成によれば、
図6に示される構成に比べ、用紙Pの紙幅方向に温度が局所的に高い部分や低い部分が発生せず、
図5の温度「中」で示されるように、用紙Pの紙幅方向に温度が平均化される。
【0077】
また、本実施形態では、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))は、孔全体が紙幅方向へずれて配置されている。このため、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士孔の一部が、紙幅方向に重なっている構成に比べ、用紙Pの紙幅方向における温度ムラが抑制される。
【0078】
また、本実施形態では、搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))と、該一対の送風孔に対して紙幅方向に隣接する一対の送風孔(例えば、送風孔182(E)及び送風孔182(F))と、の各々を結ぶ線LAによって、平行四辺形が形成される。
【0079】
例えば、
図7に示されるように、搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))と、該一対の送風孔に対して紙幅方向に隣接する一対の送風孔(例えば、送風孔182(E)及び送風孔182(F))と、の各々を結ぶ線LAによって、台形が形成される構成では、紙幅方向において送風孔182の配置に偏りが生じる。例えば、
図7に示される構成では、列185(B)において、送風孔182の配置間隔が偏っている。このため、
図7に示される構成では、用紙Pに風が当たる位置に偏りが生じ、温度ムラが生じやすい。また、搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))と、該一対の送風孔に対して紙幅方向に隣接する一対の送風孔(例えば、送風孔182(E)及び送風孔182(F))と、の各々を結ぶ線LAによって、方形が形成される構成(すなわち、
図6に示される構成)も、前述のとおり、温度ムラが生じやすい。
【0080】
これに対して、本実施形態では、該一対の送風孔(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))と、該一対の送風孔に対して紙幅方向に隣接する一対の送風孔(例えば、送風孔182(E)及び送風孔182(F))と、の各々を結ぶ線LAによって、平行四辺形が形成されるので、送風孔182が紙幅方向において、
図6及び
図7に示される構成に比べ、分散して配置される。このため、本実施形態の構成によれば、
図6及び
図7に示される構成に比べ、用紙Pの紙幅方向における温度ムラが抑制される。
【0081】
以上のように、本実施形態では、用紙Pの紙幅方向における温度ムラが抑制されるので、用紙Pに形成された画像の紙幅方向における加熱ムラが抑制される。また、本実施形態では、送風孔182が紙幅方向において、分散して配置されるので、用紙Pに風が当たる位置が紙幅方向において分散されるので、複数の送風孔182からの送風による用紙Pの浮上量の紙幅方向におけるムラが抑制される。
【0082】
<第2実施形態>
(画像形成装置200)
第1実施形態では、画像形成装置10は、用紙Pにインクを用いて画像を形成するインクジェット式の画像形成装置であったが、画像形成装置としては、これに限られない。画像形成装置の一例としては、例えば、電子写真式の画像形成装置であってもよく、画像を形成する装置であればよい。第2実施形態では、電子写真式の画像形成装置200について説明する。
図8は、本実施形態に係る画像形成装置200の構成を示す概略図である。なお、第1実施形態と同一機能を有する部分については、同一符号を付して、適宜、説明を省略する。
【0083】
画像形成装置200は、画像形成部12に替えて画像形成部212を有している。また、画像形成装置200は、定着ユニット120(定着装置の一例)を備えている。
【0084】
(画像形成部212)
図8に示される画像形成部212は、記録媒体に画像を形成する画像形成部の一例である。具体的には、画像形成部212は、電子写真方式により用紙Pにトナー像を形成する機能を有している。さらに具体的には、画像形成部212は、
図8に示されるように、トナー像を形成するトナー像形成部20と、トナー像形成部20で形成されたトナー像を用紙Pに転写する転写装置30と、を有している。
【0085】
(トナー像形成部20)
トナー像形成部20は、色ごとにトナー像を形成するように複数備えられている。画像形成装置10では、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の計4色のトナー像形成部20が備えられている。
図8に示す(Y)、(M)、(C)、(K)は、上記各色に対応する構成部分を示している。
【0086】
各色のトナー像形成部20は、用いるトナーを除き基本的に同様に構成されている。具体的には、各色のトナー像形成部20は、
図9に示されるように、
図9における矢印A方向に回転する感光体ドラム21(感光体)と、感光体ドラム21を帯電させる帯電器22と、を有している。さらに、各色のトナー像形成部20は、帯電器22によって帯電された感光体ドラム21を露光して感光体ドラム21に静電潜像を形成する露光装置23と、露光装置23によって感光体ドラム21に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置24と、を有している。
【0087】
(転写装置30)
図8に示される転写装置30は、各色の感光体ドラム21のトナー像を、中間転写体に重畳して一次転写し、該重畳されたトナー像を用紙Pに二次転写する機能を有している。具体的には、転写装置30は、
図8に示されるように、中間転写体としての転写ベルト31と、一次転写ロール33と、転写部35と、を備えている。
【0088】
一次転写ロール33は、感光体ドラム21に形成されたトナー像を、感光体ドラム21と一次転写ロール33との間の一次転写位置T(
図9参照)で転写ベルト31に転写する機能を有している。
【0089】
転写ベルト31は、
図8に示されるように、無端状を成し、複数のロール32に巻き掛けられて姿勢が決められている。転写ベルト31は、複数のロール32の少なくとも1つが回転駆動されることで、矢印B方向へ周回し、一次転写された画像を二次転写位置NTへ搬送する。
【0090】
転写部35は、転写ベルト31に転写されたトナー像を用紙Pに転写する機能を有している。転写部35は、具体的には、二次転写部34と、対向ロール36と、を有している。
【0091】
対向ロール36は、転写ベルト31に対向するように、転写ベルト31の下側に配置されている。二次転写部34は、
図8に示されるように、対向ロール36との間に転写ベルト31が配置されるように、転写ベルト31の内側に配置されている。二次転写部34は、具体的には、コロトロンで構成されている。転写部35では、転写ベルト31に転写されたトナー像が、二次転写部34の放電により発生された静電力により、二次転写位置NTを通過する用紙Pに転写される。
【0092】
(定着ユニット120)
図10に示される定着ユニット120は、用紙Pの画像を用紙Pに定着する定着部である。具体的には、定着ユニット120は、用紙Pに接触して用紙Pを加熱及び加圧することで、トナー像を用紙Pに定着する機能を有している。本実施形態では、加熱装置100によって用紙Pが予備加熱され、定着ユニット120が該用紙Pを定着する。
【0093】
本実施形態では、加熱及び加圧を行う定着ユニット120を用いて説明するが、加熱は必ずしも必要でなく、前工程の加熱装置100で溶融したトナーの表面性の向上、例えばグロスの調整を目的とすれば、加圧部による加圧が行われる形態のみでも適用可能である。
【0094】
この定着ユニット120は、
図10に示されるように、用紙Pの搬送方向において、加熱装置100の下流側に配置されている。具体的には、定着ユニット120は、加熱ロール130と、加圧ロール140と、従動ロール150と、を有している。
【0095】
(加熱ロール130)
図10に示される加熱ロール130は、加熱装置100に対する搬送方向下流側に配置され、用紙Pに接触して用紙Pを加熱する機能を有している。この加熱ロール130は、用紙Pの上面に接触するように、装置前後方向を軸方向として配置されている。
【0096】
また、加熱ロール130は、円筒状の基材132と、基材132の外周に形成されたゴム層134と、ゴム層134の外周に形成された離型層136と、基材132の内部に収容されたヒータ138(加熱源)と、を有している。ヒータ138は、例えば、単一又は複数のハロゲンランプで構成されている。
【0097】
(従動ロール150)
図10に示される従動ロール150は、加熱ロール130の外周面における用紙Pに対する接触領域以外の領域に接触するように、装置前後方向を軸方向として配置されている。また、従動ロール150は、円筒状の基材152と、基材152の内部に収容されたヒータ154(加熱源)と、を有している。この従動ロール150は、加熱ロール130に従動して回転し、加熱ロール130を加熱する。
【0098】
(加圧ロール140)
図10に示される加圧ロール140は、加熱ロール130との間に用紙Pを挟んで用紙Pを加圧する機能を有している。この加圧ロール140は、加熱ロール130の下側に装置前後方向を軸方向として配置されている。
【0099】
加圧ロール140は、円筒状の基材142と、基材142の外周に形成されたゴム層144と、ゴム層144の外周に形成された離型層146と、を有している。
【0100】
加圧ロール140の周長は、グリッパ76がチェーン72に配置された配置間隔と同じとされている。また、
図10に示されるように、加圧ロール140の外周面には、装置前後方向に延びる凹部148が形成されている。
【0101】
そして、用紙Pの前端部を保持するグリッパ76が、加圧ロール140と加熱ロール130との間を通過する場合に、当該グリッパ76が凹部148に入り込むように構成されている。
【0102】
なお、定着ユニット120では、加圧ロール140が、駆動部(図示省略)によって回転駆動され、その加圧ロール140に従動して加熱ロール130が回転し、その加熱ロール130に従動して従動ロール150が回転する。
【0103】
(本実施形態に係る作用)
本実施形態では、
図8に示される収容部50から送り出された用紙Pは、複数の搬送ロール64で搬送され、チェーングリッパ66へ受け渡される。チェーングリッパ66へ受け渡された用紙Pは、チェーングリッパ66によって用紙Pの前端部を保持し且つ後端側部分を非保持の状態で、二次転写位置NTへ搬送され、転写ベルト31からトナー像が用紙Pの上面に転写される。トナー像が転写された用紙Pは、
図10に示されるように、チェーングリッパ66によって、加熱装置100のヒータ106に画像面が対向した状態で搬送され、トナー像が加熱される。
【0104】
加熱装置100でトナー像が加熱された用紙Pは、さらにチェーングリッパ66によって、定着ユニット120に搬送され、加熱ロール130及び加圧ロール140で挟まれて加圧及び加熱される。これにより、トナー像が用紙Pに定着される。用紙Pの片面にのみ画像を形成する場合は、トナー像が定着された用紙Pは、
図8に示される冷却部90の冷却ロール92で冷却された後、排出部52へ排出される。
【0105】
用紙Pの両面に画像を形成する場合には、片面に画像が定着された用紙Pは、
図8に示される反転機構80によって、表裏が反転された後、再びチェーングリッパ66に受け渡される。チェーングリッパ66に受け渡された用紙Pは、定着済のトナー画像を下方側に向けた状態で、二次転写位置NTへ搬送され、転写ベルト31からトナー像が用紙Pの上面に転写される。
【0106】
トナー像が転写された用紙Pは、前述と同様に、加熱装置100で加熱された後、加熱ロール130及び加圧ロール140で挟まれて加圧及び加熱されて、トナー像が用紙Pに定着される。トナー像が定着された用紙Pは、冷却部90の冷却ロール92で冷却された後、排出部52へ排出される。
【0107】
本実施形態においても、
図5に示されるように、複数の送風孔182は、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))が紙幅方向にずれて配置されているので、送風により温度が下がる用紙Pの部分が、
図6に示される構成に比べ、紙幅方向に分散される。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、
図6に示される構成に比べ、用紙Pの紙幅方向における温度ムラが抑制される。このように、本実施形態においても、第1実施形態と同様の作用を有する。
【0108】
(送風孔182の配置の変形例)
また、本実施形態では、複数の列185の各々において、送風孔182が紙幅方向に等間隔で配置されていたが、これに限られない。例えば、列185の各々において、送風孔182が紙幅方向に第1間隔と、第1間隔よりも広い第2間隔とで配置される構成であってもよい(
図7参照)。
【0109】
また、本実施形態では、複数の列185の各々において等間隔で配置される送風孔182の配置間隔は、列185間で同じとされていたが、これに限られず、送風孔182の配置間隔が、列185間で異なっていてもよい。
【0110】
また、本実施形態では、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))は、孔全体が紙幅方向へずれて配置されていたが、これに限られない。例えば、搬送方向に隣接する最も近い送風孔182同士孔の一部が、紙幅方向に重なっている構成であってもよい。
【0111】
また、本実施形態では、搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))と、該一対の送風孔に対して紙幅方向に隣接する一対の送風孔(例えば、送風孔182(E)及び送風孔182(F))と、の各々を結ぶ線LAによって、平行四辺形が形成されていたが、これに限られない。例えば、
図7に示されるように、搬送方向に隣接する最も近い一対の送風孔(例えば、送風孔182(A)及び送風孔182(B))と、該一対の送風孔に対して紙幅方向に隣接する一対の送風孔(例えば、送風孔182(E)及び送風孔182(F))と、の各々を結ぶ線LAによって、台形が形成される構成であってもよく、方形以外の形であればよい。
【0112】
(搬送機構60の変形例)
上記の第1、第2実施形態では、チェーングリッパ66は、グリッパ76が用紙Pの前端部を保持した状態で、用紙Pを搬送していたが、グリッパ76は、少なくとも、用紙Pの前端側部分を保持していればよい。用紙Pの前端側部分とは、用紙Pにおける搬送方向の中央より下流側(前側)の部分である。
【0113】
また、上記の第1、第2実施形態では、用紙Pに対する搬送方向の下流側に配置されたグリッパ76が、用紙Pの搬送方向の下流側から用紙Pの前端部を保持していたが、これに限られない。グリッパ76は、用紙Pに対する紙幅方向両端側から用紙Pの前端側部分を保持してもよい。
【0114】
また、上記の第1、第2実施形態では、チェーングリッパ66が用紙Pの前端部を保持し且つ後端側部分を非保持の状態で、加熱部102と送風装置160との間に該用紙Pを搬送していたが、これに限られない。例えば、加熱部102と送風装置160との間に一対の搬送ロールで用紙Pを搬送する構成であってもよい。当該構成においても、一対の搬送ロールで用紙Pを挟んで搬送する過程で、用紙Pの前端側部分を保持し且つ後端側部分を非保持で搬送する状態が生じる。
【0115】
さらに、当該構成では、一対の搬送ロールで用紙Pを挟んで搬送する過程で、用紙Pの後端側部分を保持し且つ前端側部分を非保持で搬送する状態が生じる。この場合では、用紙Pの前端側部分が、シート状の被搬送材における搬送方向の一端側部分の一例である。このように、シート状の被搬送材における搬送方向の一端側部分の一例としては、用紙Pの後端側部分だけでなく、用紙Pの前端側部分であってもよい。
【0116】
(被搬送材の変形例)
上記の第1、第2実施形態では、シート状の被搬送材の一例として、用紙Pを用いたが、これに限られない。ここで、「シート状の被搬送材」における「被搬送材」とは、搬送されるものをいう。また、「シート状の被搬送材」における「シート」とは、紙や薄板などをいう。したがって、「シート状」とは、紙や薄板などの形状をいい、その材質は不問である。よって、シート状の被搬送材の一例としては、例えば、耐熱樹脂製のフィルムや、金属フィルムなどであってもよく、搬送されうるシート状のものであればよい。
【0117】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、その主旨を逸脱しない範囲内において種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記に示した変形例は、適宜、複数を組み合わせて構成してもよい。
【符号の説明】
【0118】
10、200 画像形成装置
12、212 画像形成部
100 加熱装置
100 加熱部
160 送風装置(送風部の一例)
182 送風孔
185 列
P 用紙(被搬送材の一例、記録媒体の一例)